📚 業界ナレッジ

ターミナルバリュー

横断ナレッジ01_ファイナンス理論

目次
  1. 1. 定義と本質
  2. 2. 計算式・データソース
  3. 手法A: 永続成長モデル(Gordon Growth Model)
  4. 手法B: Exit Multiple法
  5. 検算: 手法AとBの整合性
  6. 3. 業界別の典型レンジ・落とし穴
  7. 永続成長率 g の業界別目安
  8. 落とし穴
  9. 4. 実例(既存業界レポートとリンク)
  10. 5. 自分への問い(理解度確認 3問)
  11. 関連

ターミナルバリュー(TV: Terminal Value)

1. 定義と本質

ターミナルバリューは、DCF 分析の明示的予測期間(通常 5-10 年)の末尾において、それ以降の永続的なキャッシュフローを現在価値に集約した数値である。

本質: DCF の企業価値の 60-80% を占めることが多く、TV の前提が DCF 評価を実質的に決定する。「TV は DCF の本体である」と言っても過言ではない。

FP&A視点での重要性:


2. 計算式・データソース

手法A: 永続成長モデル(Gordon Growth Model)

TV_n = FCF_{n+1} / (WACC − g)
PV(TV) = TV_n / (1 + WACC)^n

手法B: Exit Multiple法

TV_n = EBITDA_n × Exit Multiple
PV(TV) = TV_n / (1 + WACC)^n

検算: 手法AとBの整合性

両手法で算定した TV が大きく乖離する場合、g または Exit Multiple のどちらかが業界実態と離れている。必ず両方計算してクロスチェック


3. 業界別の典型レンジ・落とし穴

永続成長率 g の業界別目安

業界 g レンジ 根拠
SaaS / 成長IT 3-5% 市場拡大が長期化
半導体・電子部品 1-3% サイクル平均化
製造業(成熟) 0-2% GDP 成長並み
公益・インフラ 0-1% 規制下で成長限定
商社・卸 0-1% 低成長セクター
医薬(後発) 0-2% 価格下落圧力
不動産 0-2% インフレ程度

落とし穴

  1. g を WACC に近づけすぎる: g = 4%, WACC = 5% にすると分母が小さくなり TV が爆発的に膨らむ → g は WACC × 0.4 以下 が安全
  2. GDP 成長率超過は厳禁: g > 長期 GDP 成長率 = 永続的に経済全体を上回る = 数学的におかしい
  3. 明示予測期間が短すぎる: 5年では未到達なまま定常化 → 7-10 年が無難
  4. FCF_{n+1} の正規化: 最終年が一時的な大型投資・資産売却を含む場合は補正が必要
  5. Exit Multiple の時期選定: バブル期の倍率を使うと過大評価

4. 実例(既存業界レポートとリンク)


5. 自分への問い(理解度確認 3問)

  1. TV が DCF 価値の 60-80% を占めるとはどういう意味か? これが意味するリスクは何か?
  2. g = 2%, WACC = 8% で TV を計算せよ。次に g = 3% にすると TV はどう変化するか? 実際の数値で確認。
  3. 手法A(永続成長)と手法B(Exit Multiple)で TV が 30% 乖離した場合、どちらを採用すべきか? その判断基準は?

関連