建設
目次
建設
1. 定義と本質
建設業は、土木・建築の請負工事を行う業界。受注産業であり、受注高・受注残高が将来売上のリードインジケーター。
業態の三分:
- ゼネコン(スーパーゼネコン): 鹿島・大林・大成・清水・竹中の5社。大型建築・土木に強い
- 準大手・中堅ゼネコン: 戸田・前田・五洋・西松等
- 専門工事・サブコン: 電気・空調・内装等の専門領域。受注はゼネコン経由が中心
FP&A視点の本質: 「受注高・受注残高」「進行基準(IFRS 15)」「完成工事原価率」「立替工事高」が決定要因。受注時の利益率が確定するため、原価管理の精度が利益に直結。
2. 計算式・データソース
主要 KPI
| KPI | 計算式 | 典型レンジ |
|---|---|---|
| 受注高 | 期中受注総額 | 開示 |
| 受注残高 | 受注高 − 売上計上額 | 売上の1-2倍 |
| Book-to-Bill | 受注高 / 売上 | 0.9-1.2 |
| 完成工事粗利率 | 完成工事総利益 / 完成工事高 | 5-12% |
| 完成工事高 | 売上計上額 | 開示 |
| 未成工事支出金 | 仕掛中の工事原価 | BS 流動資産 |
| 立替工事高 | 売上債権 − 前受金 | 運転資本の塊 |
| 自己資本比率 | 自己資本 / 総資産 | 30-50% |
受注高の質
受注高 = 公共工事 + 民間建築 + 民間土木 + 海外
公共工事比率が高い企業は景気変動に強い、民間比率が高い企業は変動が大きい。
3. 業界別の典型レンジ・落とし穴
業態別の特徴
| 業態 | PER | EV/EBITDA | ROE | 完成工事粗利率 |
|---|---|---|---|---|
| スーパーゼネコン | 8-15倍 | 5-8倍 | 8-12% | 8-12% |
| 準大手ゼネコン | 7-12倍 | 4-7倍 | 6-10% | 6-10% |
| 中堅ゼネコン | 6-10倍 | 3-6倍 | 5-8% | 5-8% |
| 専門工事 | 8-15倍 | 5-8倍 | 6-12% | 8-15% |
| 設備工事 | 10-18倍 | 6-10倍 | 8-15% | 10-18% |
落とし穴
- 会計利益の遅行: 進行基準で利益計上 → 受注時の利益見積もりが甘いと数年後に損失
- 不採算工事の損失処理: 大型工事の損失は数十億〜数百億 → 一発で利益吹き飛ぶ
- 資材高騰の影響: 受注時固定価格の場合、資材高騰で利益が圧迫
- 下請構造の労務リスク: 専門工事会社の倒産で工期遅延・追加費用
- 公共/民間の比率変動: 公共工事削減期は中堅ゼネコンが苦戦
- 立替工事高の運転資本圧迫: 大型工事は立替金が膨らむ → 短期借入依存
- 建設業法の規制: 主任技術者・監理技術者の人数制限が成長制約
- 2024年問題: 残業規制で工期延長リスク
4. 実例(既存業界レポートとリンク)
- スペース — ディスプレイ施工の受注産業特性
- FP&Aカード共通スキーマ §3 運転資本論点 — 立替工事高
- 関連: 運転資本・キャッシュコンバージョン / KPIツリー
5. 自分への問い(理解度確認 3問)
- 受注高 / 売上 = 1.2(Book-to-Bill)を「強い」と評価できる条件は? 業態・サイクル位置を考慮して。
- 大型工事で 100 億円の損失計上が発表された場合、投資家として最初に確認すべきは? 単発か構造的かの判定基準は?
- 完成工事粗利率が 10% から 8% に低下した場合、原因として考えられるドライバーを 5 つ挙げよ。
関連
- FP&Aカード共通スキーマ §1 §3 §6 §7
- 運転資本・キャッシュコンバージョン / 予実差異分析 / 感応度・シナリオ分析