予実差異分析
目次
予実差異分析(Variance Analysis)
1. 定義と本質
予実差異分析は、予算(Budget)または計画(Plan)と実績(Actual)の差異を、要因別に分解して原因を特定する管理会計手法である。
本質: 単に「売上が予算未達」と言うのではなく「価格要因 vs 数量要因」「為替要因 vs 内部要因」と分解することで、経営判断につながる洞察を引き出す。
FP&A視点での重要性:
- 月次・四半期業績会議の中心議題
- 経営者の予想精度の評価軸
- 中期計画の見直しトリガー(連続未達なら計画修正)
- 投資家との対話(決算説明会の Q&A)
2. 計算式・データソース
売上差異の分解(価格×数量)
売上差異 = 実績売上 − 予算売上
= (実績数量 × 実績単価) − (予算数量 × 予算単価)
価格差異 = (実績単価 − 予算単価) × 実績数量
数量差異 = (実績数量 − 予算数量) × 予算単価
原価差異の分解
原材料費差異 = 価格差異(仕入価格) + 数量差異(消費数量)
労務費差異 = 賃率差異 + 作業時間差異
製造間接費差異 = 予算差異 + 操業度差異 + 能率差異
粗利差異のドライバー分解
粗利差異 = 売上差異 − 売上原価差異
= (価格効果) + (数量効果) + (ミックス効果) + (原価効果) + (為替効果)
ミックス効果: 高利益製品の構成比変化による粗利率変動。
売上予算達成率(典型値)
| 業界 | 達成率 中央値 | コメント |
|---|---|---|
| 半導体・電子部品 | 90-110% | サイクルで上下大 |
| SaaS | 95-105% | 予測しやすい |
| 商社 | 90-115% | 資源価格で変動 |
| 製造業(成熟) | 95-105% | 安定 |
| 建設 | 95-110% | 大型受注のタイミングで上振れ |
| 小売 | 95-105% | 既存店売上で安定 |
3. 業界別の典型レンジ・落とし穴
業界別の予実差異の主要原因
| 業界 | 主要差異要因 |
|---|---|
| SaaS | Churn 率の上振れ/NRR の下振れ/新規 ARR 達成 |
| 半導体装置 | 顧客の設備投資延期/検収タイミングずれ |
| 商社 | 資源価格/為替/投資先の業績 |
| 不動産 | 物件売却タイミング/賃料改定 |
| 建設 | 工事進捗(IFRS 15 のタイミング)/資材高騰 |
| 小売 | 既存店売上/天候/販促効果 |
| 医薬 | 新薬承認のタイミング/薬価改定 |
落とし穴
- 実績ベース予算(保守的): 過去実績を踏襲した予算は差異が小さくなるが、戦略性が消える
- トップダウン予算の過剰: 経営目標を達成するための予算が現場感覚と乖離 → 期中崩壊
- 差異の合計化: 価格効果 +5、数量効果 −5 で差異 0 と報告 → 内部で何が起きているか不明
- 為替差異の独立化: 為替変動を分離せず内部要因と混同 → 経営施策の効果が見えない
- 遅延報告: 月次で出ない予実差異は意思決定に間に合わない → 週次速報の整備
- 改善方向の硬直化: 「未達 → 営業強化」の単線思考 → 価格戦略・製品ミックスの選択肢
- 会社予想の保守バイアス: 上場企業は外部公表予想を未達回避のため低めに設定 → 達成率の解釈に注意
4. 実例(既存業界レポートとリンク)
5. 自分への問い(理解度確認 3問)
- 売上未達の原因が「価格要因 −3%」と「数量要因 +1%」だった場合、経営者として取るべきアクションは? 順番に。
- 会社予想を毎期 90% 達成(保守的)と毎期 110% 達成(積極的)の経営者、投資家としてどちらを評価するか? 理由も含めて。
- 自分の家計予算 vs 実績で予実差異分析をやってみよ。「食費オーバー」を価格/数量で分解できるか?
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