金融
目次
金融(銀行・保険)
1. 定義と本質
銀行: 預金を集め、貸出・有価証券投資で運用する金融仲介業。保険: 保険料を集め、運用と保険金支払で利益を出すビジネス。両者とも「負債が原資」「規制業種」の点で他業種と決定的に異なる。
業態の二分:
- 銀行: メガバンク(金融グループ) / 地銀 / 信託 / ネット銀行 / 信金
- 保険: 生保(メットライフ・第一生命等) / 損保(東京海上・MS&AD・SOMPO) / 専業(ソニー生命・かんぽ)
FP&A視点の本質: 「自己資本比率規制(BIS規制 / SMR / ESR)」「金利リスク」「信用コスト」「逆ザヤ」が決定要因。一般事業会社の財務分析の枠組みは通用しない。
2. 計算式・データソース
銀行の主要 KPI
| KPI | 計算式 | 典型レンジ |
|---|---|---|
| 業務純益 | 業務粗利益 − 営業経費 | 開示 |
| OHR(経費率) | 経費 / 業務粗利益 | 50-70% |
| 預貸金利ザヤ | 貸出利回り − 預金利回り | 0.5-1.5% |
| 不良債権比率 | 不良債権 / 総貸出 | 1-3% |
| 信用コスト率 | 信用コスト / 平均貸出 | 0.1-0.5% |
| 自己資本比率 | Tier1 / リスクアセット | 8-15% |
| ROE | 純利益 / 自己資本 | 5-10% |
| PBR | 株価 / BPS | 0.3-0.7(地銀は0.3-0.5) |
保険の主要 KPI
| KPI | 計算式 | 典型レンジ |
|---|---|---|
| ESR(経済価値ベース SMR) | 自己資本/必要資本 | 150-300% |
| 損害率(損保) | 保険金 / 保険料 | 60-70% |
| 事業費率(損保) | 事業費 / 保険料 | 25-35% |
| コンバインドレシオ | 損害率 + 事業費率 | 95-105% |
| 新契約 ANP(生保) | 新契約年換算保険料 | 開示 |
| エンベディッドバリュー(EV、生保) | 修正純資産 + 保有契約価値 | 時価ベース |
3. 業界別の典型レンジ・落とし穴
業態別の特徴
| 業態 | PER | PBR | ROE | 主要リスク |
|---|---|---|---|---|
| メガバンク | 8-12倍 | 0.5-0.8 | 6-8% | 金利リスク・与信集中 |
| 地銀 | 7-10倍 | 0.3-0.5 | 4-6% | 地域経済・統合圧力 |
| 信託 | 10-15倍 | 0.7-1.0 | 7-10% | 資産運用残高 |
| 損保 | 10-15倍 | 0.7-1.2 | 8-12% | 自然災害・リスク管理 |
| 生保 | 8-12倍 | 0.4-0.7 | 6-9% | 金利上昇・解約 |
| ネット銀行 | 15-25倍 | 1.5-3.0 | 10-15% | 成長性・信用コスト |
落とし穴
- 売上=経常収益で他業種比較不能: 銀行の経常収益は受取利息含む → 売上ではなく業務純益で見る
- OCI(その他包括利益)の振れ: 有価証券評価益が大きい → 会計利益と経済利益の乖離
- 金利上昇のシナリオ依存性: 緩やかな上昇は利ザヤ改善、急激な上昇は債券評価損
- 自然災害ショック: 損保は数年に一度の大災害で利益が吹き飛ぶ
- 逆ザヤ(生保の構造問題): 高利回り保証契約の残存 → 運用利回りで吸収できない
- PBR 1.0 倍未満の常態化: 自己資本が積み上がるが運用先がない → 株主還元強化が必要
- 規制変化の影響: バーゼル III、IFRS 17、ESR 等の規制で財務指標が大きく変わる
4. 実例(既存業界レポートとリンク)
- 31_その他金融業(M&A仲介) — 仲介サイドの収益構造
- FP&Aカード共通スキーマ §7 規制・産業政策 — バーゼル III・IFRS 17
- 関連: 配賦ロジック §銀行 — 内部移転価格・拠点別収益性
5. 自分への問い(理解度確認 3問)
- 銀行の PBR が 0.5 倍であることをどう解釈するか? 「割安」と「構造的な低評価」の違いを説明せよ。
- 金利が 1% 上昇した場合、メガバンクの業績にどう影響するか? 短期(債券評価損)と中期(利ザヤ改善)の両方で。
- 損保の自然災害リスクをどう評価すべきか? 単年の高損害率を一時的と見るか、構造的悪化と見るかの判定基準は?
関連
- FP&Aカード共通スキーマ §2 §5 §7
- 類似企業比較分析(CCA) / 感応度・シナリオ分析