C-2_ケースクイズ
目次
C-2 ケースクイズ
企業名・業界名を伏せた財務サマリーや状況記述から、業態・業界・サイクル位置・適切な評価手法を推定する判断問題集。
標準フォーマット: 演習フォーマット(4点セット + 3レベル制) 合格基準: 各問題70点以上。
優秀基準: 85点以上。
🟦 問題1(初級): 評価手法の選択
所要時間目安: 10 分
問題
以下のプロファイルを持つ企業 X に対して、最も適切な第一指標を1つ選び、理由を説明しなさい。
企業 X のプロファイル:
- 売上高: 80 億円(前年比 +45%)
- 営業利益: −8 億円(赤字)
- ARR: 72 億円(前年比 +50%)
- NRR: 115%
- MRR チャーン率: 0.8%
- 現金残高: 30 億円(月次バーンレート 2 億円)
選択肢:
- PER(Price to Earnings Ratio)
- EV / EBITDA
- EV / ARR(Revenue Multiple)
- PBR(Price to Book Ratio)
- EV / NCAV
ヒント
- 利益がマイナスの成長企業に PER は使えない
- ARR を持つ企業はサブスクリプション収益があるため「ストック指標」で評価する
- FP&Aカード共通スキーマ §5「適切な評価手法」の SaaS 型を参照
- Rule of 40 = 売上成長率 + 営業利益率
模範解答
選択: ③ EV / ARR
理由:
- 営業利益はマイナスのため PER は計算不能(分母がゼロ以下)
- EBITDA もマイナスのため EV/EBITDA も不適
- 事業の本質価値は「積み上がったサブスクリプション収益の持続性」にある。ARR 72 億が収益の主体
- NRR 115% は「既存顧客だけで年 15% の自然成長」を示す良質なビジネス → ARR ベースの評価が信頼できる
- Rule of 40 チェック: 成長率 45% + 利益率(−10%)= 35% → 基準 40% には届いていない
補足:
- 現金 30 億 ÷ バーンレート 2 億 = ランウェイ 15 ヶ月。資金調達 or 黒字化のタイムラインが投資判断に直結
- PBR / EV/NCAV は清算価値評価。成長中の SaaS 企業には不適
採点観点
| # | 観点 | 配点 | 合格基準 |
|---|---|---|---|
| 1 | 正解選択 | 30 | ③ EV/ARR を選択(②も部分可・理由次第) |
| 2 | 不正解の除外理由 | 20 | PER・EV/EBITDA が使えない理由を明示 |
| 3 | 業界文脈 | 20 | SaaS 固有指標(ARR / NRR / Rule of 40)に言及 |
| 4 | データ出典 | 15 | FP&Aカード共通スキーマ §5 または SaaS §評価手法 を引用 |
| 5 | 投資判断 | 15 | ランウェイ計算(15 ヶ月)への言及 |
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不合格の場合: SaaS §評価手法 と FP&Aカード共通スキーマ §5 を復習
🟨 問題2(中級): 業態判定 ─ 財務サマリーから業種を推定
所要時間目安: 25 分
問題
以下の2社(A社・B社)の財務サマリーを見て、それぞれの業態(SaaS型 / SIer型人月 / 半導体装置 / 電子部品量産)を判定し、判断根拠を各社 3 点ずつ挙げなさい。
A 社(直近期):
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 売上高 | 620 億円 |
| 営業利益率 | 62% |
| 1人あたり売上(連結) | 1.2 億円 |
| 設備投資 / 売上比 | 1.8% |
| 棚卸資産回転日数(DIO) | 5 日 |
| 売上債権回転日数(DSO) | 32 日 |
| 前受収益(BS) | 72 億円 |
| 現金及び預金 | 180 億円 |
B 社(直近期):
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 売上高 | 420 億円 |
| 営業利益率 | 13% |
| 1人あたり売上(連結) | 2,800 万円 |
| 設備投資 / 売上比 | 4.5% |
| 棚卸資産回転日数(DIO) | 195 日 |
| 売上債権回転日数(DSO) | 45 日 |
| 前受収益(BS) | 3 億円 |
| 受注残高 | 350 億円(売上の 0.83 倍) |
ヒント
- 業態の識別キーは「利益率 / 1人あたり売上 / 棚卸資産 / 前受収益 / 受注残高」
- DIO が極小(一桁)の企業は在庫を持たないビジネス
- 前受収益(UR: Unearned Revenue)が大きい = サブスクリプション前払いが多い = SaaS
- 受注残高が売上と同等規模 = 受注生産の装置産業
- FP&Aカード共通スキーマ §2 コスト構造原型 / §3 運転資本論点 を参照
模範解答
A 社: SaaS 型
根拠:
- 営業利益率 62%: SaaS の高マージン構造(SIer 5-15%、装置産業 10-20%)。物理在庫なしのソフトウェア業態特有
- DIO 5 日: 棚卸資産がほぼゼロ。ソフトウェアには物理在庫がないため
- 前受収益 72 億円 / 売上比 11.6%: サブスクリプション年払いの前払いが積み上がっている。SaaS の典型的 BS 構造
- (補足)1人あたり売上 1.2 億円は SaaS 上位クラス(SIer業界基礎ガイド_詳細版 §6 の SIer 上位は ~5000 万円)
→ オービック(4733)が近いプロファイル(実際: 営業利益率 64.6%)
B 社: 半導体製造装置(ニッチ型)
根拠:
- DIO 195 日: 仕掛品(製造途中の装置)が巨大。半導体装置は受注から納品まで 6-18 ヶ月かかる典型
- 受注残高 350 億 / 売上 0.83 倍: 受注残高が売上と同規模。典型的な受注産業の構造。製造業 §Book-to-Bill 参照
- 営業利益率 13%: 半導体装置ニッチ型の中位(大手装置 15-25%、ニッチ型 10-20%)
- (補足)設備投資 / 売上比 4.5% は半導体装置の典型レンジ(3-7%)
→ タツモ(6266)に近いプロファイル(2025.12 期: 営業利益率 13.5%、DIO 159 日、設備投資 4.3%)
採点観点
| # | 観点 | 配点 | 合格基準 |
|---|---|---|---|
| 1 | 業態正解(A・B各15) | 30 | A=SaaS型、B=半導体装置型 の両方正解 |
| 2 | 根拠の完全性 | 20 | 各社3点ずつ(計6点)の根拠を数値と連動して記述 |
| 3 | 業界文脈 | 20 | 業態別の典型値(利益率・DIO等のレンジ)と対比 |
| 4 | データ出典 | 15 | 関連スキーマ・横断ナレッジ(SaaS / 製造業)を引用 |
| 5 | 投資判断 | 15 | 「業態が違えば評価手法も変わる」という洞察を記述 |
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🟨 問題3(中級): サイクル位置の判定
所要時間目安: 30 分
問題
以下は半導体製造装置メーカー C 社の 5 期分の財務データである。
現在(直近期)のサイクル位置(底打ち回復 / 上昇中 / ピーク / 調整局面)を判定し、適切な評価手法と株価への期待値を述べなさい。
| 項目 | 5期前 | 4期前 | 3期前 | 2期前 | 直近期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高(億円) | 180 | 230 | 310 | 380 | 340 |
| 営業利益率 | 8% | 12% | 16% | 18% | 14% |
| 営業 CF(億円) | -12 | -8 | 5 | 65 | 72 |
| 棚卸資産(億円) | 95 | 140 | 185 | 155 | 120 |
| 受注残高(億円) | 210 | 280 | 350 | 310 | 290 |
| 会社予想売上高(来期) | — | — | — | — | 330 |
ヒント
- 半導体装置のサイクルは「受注 → 仕掛品膨張 → 納品 → CF改善 → 次の受注」で回る
- 棚卸資産と受注残高の増減方向がサイクルの先行指標
- 営業 CF が赤字 → 黒字転換は「納品完了」の証拠
- 来期の会社予想を慎重に解釈する(経営陣の判断 vs 実際の受注動向)
- 製造業 §受注産業のサイクル / FP&Aカード共通スキーマ §5 を参照
模範解答
サイクル位置の判定: 調整局面(底値付近、ただし悪化継続中)
根拠の整理:
| 指標 | 方向 | 解釈 |
|---|---|---|
| 売上高 | 380 → 340(-10.5%) | ピーク通過後の下落局面 |
| 営業利益率 | 18% → 14% | 売上減に対し固定費が先行 |
| 棚卸資産 | 185 → 120(-35%) | 大型案件が納品完了し仕掛品が急減 |
| 受注残高 | 350 → 290(-17%) | 新規受注が減少中。底打ちはまだ先 |
| 営業 CF | -12 → +72 | 納品集中で急改善(サイクル後半の典型) |
サイクル解釈(5期の流れ):
- 5-4期前: 受注拡大 → 棚卸急増 → CF赤字(仕込み期)
- 3-2期前: 売上・利益ピーク → CF黒字転換(納品集中)
- 直近期: 売上・利益ともに減少、受注残も減少 → 調整局面に入っている
- 棚卸 120 億はまだ高水準。来期さらに圧縮されれば CF は維持できるが、受注回復なしでは 2 期後に再び仕掛品不足に陥る
来期予想(330 億)への評価:
- 会社予想 330 億は直近 340 億から -3% の横ばい。実態は受注残 290 億と売上高の乖離が縮まっており、受注残の積み上がりがないと来期以降にさらなる減収リスク
- 経営陣は保守的予想を出す傾向があるが、受注残の動向を来期 1Q で確認するまで判断保留が適切
適切な評価手法:
- サイクル底付近 → PBR(清算価値下支え)+ EV/EBITDA(実績ベース)
- PER は調整期の利益が低く過大評価されるため補助的に使用
- 株価への期待: 受注残高の底打ち(来期 1Q 決算での確認)が最大のカタリスト
採点観点
| # | 観点 | 配点 | 合格基準 |
|---|---|---|---|
| 1 | サイクル位置正解 | 30 | 「調整局面 / 底値付近」の判定と方向性が正しい |
| 2 | 根拠の完全性 | 20 | 棚卸・受注残・CF の3指標を使ってサイクルを説明 |
| 3 | 業界文脈 | 20 | 「受注残高が売上の先行指標」等の半導体装置特有の構造への言及 |
| 4 | データ出典 | 15 | 製造業 または FP&Aカード共通スキーマ を引用 |
| 5 | 投資判断 | 15 | 評価手法の切り替え(PER→PBR/EV)とカタリストを特定 |
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不合格の場合: 製造業 §受注産業・Book-to-Bill と 類似企業比較分析(CCA) §サイクル考慮 を復習
🟥 問題4(上級): 同業2社の比較 ─ どちらに投資するか
所要時間目安: 50 分
問題
以下の同業2社(SIer型ITサービス)のデータから、FP&A視点での比較分析を行い、どちらに投資するかを理由付きで選択しなさい(正解は1つではなく、論拠の質が評価される)。
P 社(大手グループ系 SIer):
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 時価総額 | 5,000 億円 |
| 売上高 | 6,000 億円(前年比 +5%) |
| 営業利益率 | 11% |
| リカーリング売上比率 | 55% |
| ROE | 14% |
| 1人あたり売上 | 3,500 万円 |
| PER | 18 倍 |
| EV/EBITDA | 9.5 倍 |
| 配当利回り | 1.8% |
| のれん | 1,200 億円 |
Q 社(独立系 SIer・中堅):
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 時価総額 | 900 億円 |
| 売上高 | 800 億円(前年比 +12%) |
| 営業利益率 | 14% |
| リカーリング売上比率 | 70% |
| ROE | 20% |
| 1人あたり売上 | 4,200 万円 |
| PER | 22 倍 |
| EV/EBITDA | 11 倍 |
| 配当利回り | 0.9% |
| のれん | 0 円 |
ヒント
- SIer の評価軸: リカーリング比率(ストック化度)/ 1人あたり売上(生産性)/ のれんリスク / ROE
- PER だけで判断しない。成長速度と収益質(リカーリング vs 一過性)を勘案する
- のれんは減損リスクの源。M&A 主導の成長は利益の質が下がりやすい
- SaaS/SIer FP&Aの勘所 §5 評価手法 を参照
- 「割安さ」と「質の高さ」はトレードオフ
模範解答
比較マトリクス(FP&A 7項目対比):
| FP&A 項目 | P 社(大手) | Q 社(独立中堅) | 優位 |
|---|---|---|---|
| 収益ドライバー | 売上 6,000 億の規模 + グループ受注基盤 | 売上 800 億・+12% 高成長 | Q(成長率) |
| コスト構造 | 利益率 11%(人月依存高め) | 利益率 14%(効率高い) | Q |
| 運転資本 | 大企業相手・DSO 長め | 中小企業向けも多く DSO 短め傾向 | 不明(要調査) |
| 資本集約度 | ROE 14%、のれん 1,200 億(減損リスク) | ROE 20%、のれんゼロ(M&A依存なし) | Q |
| 評価手法 | PER 18倍・EV/EBITDA 9.5倍 | PER 22倍・EV/EBITDA 11倍 | P(割安) |
| 経営の打ち手 | グループ依存→独立顧客獲得が課題 | 成長投資継続が前提 | 互角 |
| 規制・産業政策 | 官公庁案件・DX 政策恩恵大 | 民間中心・ニッチ特化 | P(官公庁) |
投資選択の論拠:
推奨: Q 社 (ただし前提付き)
Q 社を選ぶ理由:
- ROE 20% vs P 社 14%: 同一資本で生み出す利益が Q 社の方が 43% 高い
- リカーリング比率 70% > 55%: 収益の安定性・予測可能性が高く、キャッシュフローの確度が高い
- のれんゼロ: 減損リスクなし。利益の質が高い(P 社は M&A コストを利益から回収中)
- 成長率 12% > 5%: 将来の絶対利益額が追いついてくれば、PER の割高は解消する
- PEG レシオ: Q 社 PER 22 ÷ 成長率 12% = 1.83、P 社 PER 18 ÷ 成長率 5% = 3.60 → 成長調整後では Q 社の方が割安
P 社を選ぶ理由(反論):
- 時価総額・売上規模が大きく、安定性・流動性が高い
- 配当利回り 1.8% は Q 社(0.9%)の 2 倍。インカム投資家向き
- 官公庁・大企業からの安定受注基盤はシクリカルリスクを下げる
留意点:
- Q 社の高成長が持続するか確認が必要(ARR や NRR 相当の指標を把握したい)
- のれんゼロは有機成長の証拠だが、規模拡大の手段が限られる可能性もある
採点観点
| # | 観点 | 配点 | 合格基準 |
|---|---|---|---|
| 1 | 比較の構造化 | 30 | 2社を複数指標で対比するテーブルまたは同等の分析 |
| 2 | FP&A 7項目への言及 | 20 | 少なくとも3項目(収益ドライバー・ROE・評価手法)を活用 |
| 3 | 業界文脈 | 20 | リカーリング比率・のれんリスク・PEG レシオ等の SIer 固有論点 |
| 4 | データ出典 | 15 | FP&Aの勘所 §5 を引用 |
| 5 | 投資判断 | 15 | 「どちらが優れているか」ではなく「自分のポートフォリオ目的に合うか」の視点 |
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不合格の場合: FP&Aの勘所 §5-6 と 類似企業比較分析(CCA) を復習
🟥 問題5(上級): CFO として緊急提言を作成せよ
所要時間目安: 60 分
問題
以下のシナリオを読み、あなたが R 社の CFO としてとるべき緊急アクションを3つ提案しなさい。
各アクションについて (a) 目的、(b) 実行方法、(c) 財務インパクトの方向性、(d) リスク を記述すること。
シナリオ: R 社(中堅半導体部品メーカー)
- 主力製品: スマートフォン向けパワー管理 IC(売上の 65%)
- 課題: スマホ市場が世界的に減速し、在庫調整が長期化。主要顧客 3 社から発注量を前年比 40% 削減通告
- 財務状況:
- 現預金: 25 億円
- 月次固定費(人件費・設備償却): 4 億円
- 稼働率: 42%(損益分岐点稼働率: 70%)
- 有利子負債: 80 億円(メイン銀行借入、2 年後に 30 億円返済期日)
- 設備投資計画(年度内残り): 20 億円(次世代品向け投資)
- 棚卸資産: 60 億円(うち評価損リスク品: 推定 15 億円)
- 売上債権: 40 億円
- R 社の状況: 直近 2 四半期連続で営業赤字。株価は年初来 -45%
ヒント
- CFO の最優先は「資金ショートの防止」と「事業継続性の担保」
- 現預金 25 億 ÷ 月次固定費 4 億 = ランウェイ 6.25 ヶ月(設備投資を止めないと)
- 稼働率 42% < BEP 70% → 現在は赤字が確定している構造
- 短期対応(キャッシュ確保)と中期対応(事業ポートフォリオ再編)を分けて考える
- 限界利益と損益分岐点 §BEP計算 / 運転資本・キャッシュコンバージョン §棚卸管理 を参照
模範解答
R 社の緊急財務状況の整理:
| リスク項目 | 深刻度 | 根拠 |
|---|---|---|
| 資金ショートリスク | 🔴 高 | 現預金 25 億 ÷ 固定費 4 億 = 6.3 ヶ月。設備投資 20 億を加えると 2-3 ヶ月でキャッシュアウト |
| 損益分岐点割れ | 🔴 高 | 稼働率 42% < BEP 70%。毎月赤字を垂れ流している |
| 棚卸評価損リスク | 🟠 中 | 15 億円の評価損リスクは現預金 25 億の 60%。引当金計上で自己資本が毀損 |
| 有利子負債返済 | 🟡 中 | 2 年後 30 億円返済。今なら交渉余地あり |
緊急アクション1: 設備投資の即時停止・繰延
- (a) 目的: 現預金の流出を止め、ランウェイを延ばす
- (b) 実行方法: 20 億円の設備投資を半期繰延(またはキャンセル)。取引先・設備会社との交渉。既に発注済みのものは解約違約金を計算の上、コスト比較して判断
- (c) 財務インパクト: 現預金 +20 億 → ランウェイが 6.3 ヶ月から 11.3 ヶ月に延長
- (d) リスク: 次世代品の開発が遅れる。競合他社が先に市場に出る可能性。顧客への信頼失墜リスク
緊急アクション2: メイン銀行への早期交渉(リファイナンス)
- (a) 目的: 2 年後返済 30 億円を 5 年返済に延長し、当面の資金不足を緩和。また、緊急融資枠(コミットメントライン)の設定を依頼
- (b) 実行方法: 2 年後の満期前に先手を打って銀行にリストラクチャリングを申請。業績回復計画書(事業計画)を添付する。財務悪化後では条件が悪化するため今すぐが最良のタイミング
- (c) 財務インパクト: 返済猶予により年間 CF が 15 億円程度改善(30 億 ÷ 2 年 → 6 億 / 年程度に軽減)。コミットメントライン確保で資金調達余力を担保
- (d) リスク: 銀行が拒否する場合は格付け低下・借入コスト上昇。財務制限条項(コベナンツ)の発動リスク。ただし放置して交渉が遅れる方がリスクが高い
緊急アクション3: 在庫の即時評価損計上 + 棚卸消化加速
- (a) 目的: 評価損リスク 15 億円を早期に認識し、財務の「見えないリスク」を顕在化。同時に在庫回転率を上げてキャッシュを回収する
- (b) 実行方法:
- 評価損リスク品 15 億円について棚卸評価損を四半期内に計上(痛みを前倒し)
- 売上債権 40 億円の早期回収交渉(ファクタリングも検討)
- 在庫の値引き販売(原価を下回らない範囲)で流動化
- (c) 財務インパクト: 評価損計上で純資産 -15 億(一時的)、現預金 +40 億(売上債権回収)
- (d) リスク: 評価損計上で短期的な赤字拡大。市場・株主のネガティブ反応(ただし「隠れリスクの開示」として中長期では信頼回復に寄与)
CFO としての優先順位:
- 即日: 設備投資停止判断 → メイン銀行 CFO / 融資担当へのアポ取り
- 1ヶ月以内: 在庫評価・棚卸精査完了 → 評価損計上・銀行交渉本格化
- 3ヶ月以内: リファイナンス完了 + 事業ポートフォリオ見直し(自動車・産業機器向けへのシフト)
採点観点
| # | 観点 | 配点 | 合格基準 |
|---|---|---|---|
| 1 | 財務状況の正確な把握 | 30 | ランウェイ計算・BEP 割れ・棚卸評価損の3点が明示されている |
| 2 | アクションの具体性 | 20 | 3つのアクションに (a)-(d) が全て揃っている |
| 3 | 業界文脈 | 20 | 「CFO が先手を打つタイミング」「BEP稼働率と固定費」等の論点 |
| 4 | データ出典 | 15 | 限界利益と損益分岐点 / 運転資本・キャッシュコンバージョン を引用 |
| 5 | CFO 視点 | 15 | 短期(キャッシュ確保)と中期(事業再建)の優先度が明確 |
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ケースクイズ サマリー
| 問題 | 難易度 | テーマ | 想定時間 |
|---|---|---|---|
| 1 | 🟦 初級 | 評価手法の選択(SaaS) | 10 分 |
| 2 | 🟨 中級 | 業態判定(財務サマリーから推定) | 25 分 |
| 3 | 🟨 中級 | サイクル位置の判定(半導体装置) | 30 分 |
| 4 | 🟥 上級 | SIer 同業2社比較・投資選択 | 50 分 |
| 5 | 🟥 上級 | CFO として緊急アクション3つ提案 | 60 分 |
| 計 | 175 分 |
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