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株式会社バンダイナムコホールディングス

【経済・その他製品】その他製品銘柄レポート更新 2026-06-20

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目次
  1. 1. 事業概要
  2. 業界の系統分解
  3. 株式会社バンダイナムコホールディングスの事業構成
  4. 主要取引先
  5. 競争優位性
  6. 株式会社バンダイナムコホールディングスの固有事象・資本関係
  7. 業界のビジネスモデルと着目点
  8. 2. バリュエーション分析
  9. 時価総額・株価の基準
  10. 標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移
  11. 広義 NCAV 計算 — 5期推移
  12. CN-PER(キャッシュニュートラル PER)
  13. EV/EBITDA 分析
  14. EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別)
  15. 成長率モデル適正 PER(参考)
  16. DCF 前提入力枠(空欄許容)
  17. バリュエーション乖離コメント
  18. 3. 財務分析
  19. PL — 5期(FY2021〜FY2025)+ FY2026実績 + FY2027予想
  20. BS — 5期(FY2021〜FY2025) + FY2026/3 参考
  21. BS 詳細主要科目(百万円) — 5期
  22. CF — 5期
  23. 減価償却費明細(百万円) — 5期
  24. 受注高・受注残高
  25. 運転資本分析(CCC)
  26. 配当推移 — FY2024〜FY2027予想(分割調整後 DPS)
  27. 経営者予想精度(3期分)
  28. 健全性チェック(事業会社基準・9項目)
  29. 4. 同業他社比較
  30. 競合選定基準
  31. 最新期比較テーブル
  32. 競合 3期推移(売上・営業利益率)
  33. 運転資本効率(CCC)— 競合比較
  34. 5. リスク評価
  35. リスクマトリクステーブル
  36. リスク因果関係図
  37. 最大リスクの深掘り
  38. 6. 投資判断
  39. バリュエーション乖離コメントの補強
  40. バリュエーション手法別の目標株価
  41. シナリオ別の詳細根拠
  42. 推奨アクションの構造化
  43. カタリスト・タイムライン
  44. 7. 学習コーナー
  45. 📚 着眼点 1: なぜ「IP 軸戦略」がバンダイナムコの PER を下支えしつつ、爆発力を削ぐのか
  46. 📚 着眼点 2: バンダイナムコのネットキャッシュ3,610億円と CN-PER の読み方
  47. 📚 着眼点 3: デジタル事業の「リピートタイトル」という利益変動の震源
  48. 📚 着眼点 4: 自己資本比率72%・実質無借金がもたらす「資本効率のジレンマ」
  49. 📚 着眼点 5: バンダイナムコの指標ポジショニング(相場観テーブル)
  50. 🤔 自分への問い
  51. 参考情報
  52. ガバナンス情報テーブル
  53. 大株主構成テーブル(FY2025/3 前後、出典: the-shashi.com / buffett-code)
  54. 社外取締役の視点
  55. 免責事項
  56. データソースの時点差テーブル
  57. 出典一覧

株式会社バンダイナムコホールディングス(7832)銘柄分析レポート

SUMMARY

玩具・ゲーム・IP を束ねる総合エンタメ大手。
FY2026/3 は売上 1兆3,482億円(+8.6%)・営業利益 2,019億円(+8.3%)と過去最高を更新したが、FY2027/3 会社予想は営業利益 1,850億円(-8.3%)と減益計画。
現値時価総額 23,031億円(株価3,591円)、予想 PER(FY2027)17.7倍・実績 PER 16.4倍とゲーム系同業(コナミ31.7倍・任天堂29.3倍)対比で割安。
EV/EBITDA 8.0倍、配当利回り 2.03%、標準 NC 比率 15.7%。
自己資本比率72.3%・実質無借金でバランスシートは盤石。
広義 NCAV は流動資産内訳が非開示のため算出不能。

指標 評価
時価総額(現値) 23,031 億円 大型
予 PER(FY2027/3予想) 17.7倍 適正〜やや割安
予 EV/EBITDA 8.0倍 割安
配当利回り 2.03% 中位
標準 NC 比率 15.7% 中程度
広義 NCAV 比率 —(流動資産内訳非開示)
健全性 自己資本比率72.3%・実質無借金 高い

1. 事業概要

業界の系統分解

エンターテインメント産業は、収益源の置き方で大きく 3 系統に分かれる。
第一が「ハードウェア+自社ソフト型」で、自社プラットフォーム(ゲーム機)を持ち、その上で動くソフトの利幅を取る任天堂・ソニーがこれにあたる。
第二が「IP(知的財産)軸の多メディア展開型」で、人気キャラクターという無形資産を起点に、玩具・ゲーム・映像・イベント・アミューズメントへと横展開して各チャネルでマネタイズする。
第三が「単一コンテンツ集中型」で、ゲームやアニメなど特定領域に経営資源を集中させるコナミ・カプコン・セガサミーが該当する。

バンダイナムコは、明確に第二の「IP 軸戦略」の代表企業である。
ゲーム機というハードを持たず、ガンダム・ドラゴンボール・ワンピース・ウルトラマン・たまごっき等の IP を「軸」に据え、トイホビー(玩具・プラモデル)、デジタル(家庭用・モバイルゲーム)、映像音楽(アニメ・音楽・ライブ)、アミューズメント(ガシャポン・施設)という複数チャネルで同じ IP を多面的に収益化する。
この構造は、ハード世代交代の波(任天堂が直面する Switch 後継機リスクのような)を受けにくく、収益のボラティリティが構造的に低いという特徴を持つ。

株式会社バンダイナムコホールディングスの事業構成

セグメント別売上構成(FY2026/3、TDNet 短信ベース)

セグメント 売上高(百万円) 構成比 セグメント利益(百万円) 利益率
トイホビー事業 673,968 46.9% 126,938 18.8%
デジタル事業 476,592 33.1% 56,682 11.9%
アミューズメント事業 152,747 10.6% 10,106 6.6%
映像音楽事業 95,506 6.6% 12,181 12.8%
その他事業 38,973 2.7% 2,819 7.2%

注: FY2026/3(決算短信 2026-05-13 開示)ベース。
構成比はセグメント単純合計(1,437,786 百万円)に対する比率。
セグメント利益合計は全社調整・消去前のため連結営業利益(201,900 百万円)とは一致しない。
トイホビー(ガンダム等 IP 玩具)が売上・利益の最大の柱、デジタル(家庭用・モバイルゲーム)が第2の柱。

事業の二大柱は トイホビー事業(FY2026/3 売上6,739億円・利益率18.8%)デジタル事業(同4,765億円・利益率11.9%) である。
トイホビーは玩具・プラモデル・カプセルトイ・カードゲーム・食玩を含み、利益率が18.8%と全社で最も高く、かつ安定している。
ガンダムのプラモデル(ガンプラ)に代表される「組み立てる楽しみ+コレクション性」を持つ製品は、為替や景気よりも IP の人気サイクルに業績が連動し、しかも在庫リスクの割に利幅が厚い。

一方、デジタル事業は家庭用ゲーム(『エルデンリング』シリーズ等)とモバイルゲームから成り、ヒットタイトルの有無で業績が大きく振れる。
FY2026/3 はリピートタイトル(前年のヒット作の継続販売)の減少でセグメント利益が前年比17.3%減と落ち込んだ。
これが FY2027/3 全社減益予想(営業利益-8.3%)の主因である。

市場分野 成長動向 コメント
トイホビー(ガンダム/DB/ワンピース) ◎好調 8期連続最高益。海外比率拡大が継続ドライバー
デジタル(家庭用ゲーム) △振れ大 大型新作の有無で利益が乱高下。FY2026 は反動減
デジタル(モバイル) ○堅調 『SDガンダム ジージェネ エターナル』等が寄与
アミューズメント ○回復 4期連続最高益。ガシャポン・直営店が牽引
映像音楽(アニメ・ライブ) ○堅調 『Gundam GQuuuuuuX』『ラブライブ!』が貢献

主要取引先

バンダイナムコは BtoC(最終消費者向け)色が強く、特定の大口取引先への依存度は低い。
玩具は量販店・専門店・EC、ゲームはプラットフォーマー(Sony・任天堂・Steam・App Store / Google Play)を通じて販売される。
むしろ重要なのは IP のライセンス元・共同保有者 との関係で、ガンダムは自社オリジナル IP だが、ドラゴンボール・ワンピース・鬼滅の刃などは集英社・東映アニメーション等の原作・アニメ製作サイドとのライセンス関係の上に成り立つ。
この「IP を握る側との長期的な信頼関係」が、替えの利かない参入障壁になっている。

競争優位性

TIP

バンダイナムコの堀(moat)を一言でいえば「自前の IP 工場と、それを売り切る全チャネルの両方を持っていること」である。
たとえるなら、人気漫画の原作権を持ちながら、同時にその漫画を玩具にもゲームにもアニメにもイベントにもできる「フルライン工房」だ。
ディズニーが映画 IP をテーマパーク・グッズ・配信に展開するのと同じ構造を、日本のアニメ・キャラクター文化の中心で築いている。
新規参入者が同じことをやろうとしても、(1) 数十年かけて育てた IP(ガンダムは1979年〜)、(2) ガンプラの金型・生産ノウハウ、(3) 全チャネルの販路、の3つを同時に揃えるのは事実上不可能である。

株式会社バンダイナムコホールディングスの固有事象・資本関係

TIP

資本面の特記事項として、任天堂が大株主に名を連ねている(保有比率約1.78%) 点が挙げられる。
これは敵対的な関係ではなく、過去のゲーム機ソフト供給を通じた長年の協業関係の名残であり、業界内の「緩やかな相互信頼」を象徴する。
また、2023年4月の 1株→3株の株式分割 は、1単元あたりの投資金額を下げて個人株主(=ファン=顧客)を増やす狙いで、これは「Connect with Fans」という中期ビジョンと一貫している。
ファンを株主にすることでブランドへのロイヤルティを資本市場にも取り込む、IP 企業ならではの資本政策である。

業界のビジネスモデルと着目点

IP 軸ビジネスの収益構造の本質は「一度生んだ IP の限界費用がゼロに近い」点にある。
ガンダムという IP を作るのに要した初期投資(アニメ制作費)は1979年に回収済みで、以後は玩具・ゲーム・映像が出るたびにライセンス的な利益が積み上がる。
バンダイナムコが強いのは、この「枯れない IP」をガンダムだけでなく複数(ドラゴンボール、ワンピース、ウルトラマン等)持ち、各 IP が年商1,000億円超の柱に育っている多様性である。
着目点は「新規 IP を育てる打率」と「既存 IP の海外展開余地(中期計画の海外売上比率50%目標)」の2つで、ここが今後の成長の天井を決める。

TIP

IP 軸ビジネスの本質は「同じ素材を何度も売れること」にある。
ガンダムというキャラクターは、プラモデルにすれば玩具、ゲームにすればソフト、アニメにすれば映像、フィギュアにすればコレクター商品、と何度でも姿を変えて売れる。
普通の製造業が「1個作って1個売る」のに対し、IP 企業は「1つの IP から無数の商品が生まれる」。
バンダイナムコはこの「化ける素材」を複数の太い柱として持っているからこそ、1つの IP が陰っても他で補える強靱さを獲得している。


2. バリュエーション分析

時価総額・株価の基準

全バリュエーション指標は 現値マーケットデータ(market_data_as_of=2026-06-20、時価総額 2,303,145 百万円 / 株価 3,591円 / 発行済 641,365,963株) を使用する。
EDINET 期末時価は使わない。

内部整合性チェック(±5%):

標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移

項目 FY2021/3 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3
現預金(百万円) 203,701 277,891 276,288 311,261 360,960
短期有価証券(百万円)
有利子負債(百万円) 20,617 21,054 10,773 ≒0 ≒0
標準 NC(百万円) 183,084 256,837 265,515 311,261 360,960
標準 NC比率(÷現値時価総額) 15.7%

表注: 有利子負債は snapshot で FY2024/3 以降 null(IBD ソース unavailable)。
当社は実質無借金(FY2026/3 自己資本比率72.3%)のため 0 とみなした。
短期有価証券は snapshot に項目なし(「—」)。
標準 NC 比率は直近期(FY2025/3 標準NC 360,960)を現値時価総額 2,303,145 で除して算出(15.7%)。

広義 NCAV 計算 — 5期推移

項目 FY2021/3 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3
流動資産
投資有価証券×0.7
負債合計(総資産−純資産) 259,966 320,069 341,639 348,399 424,557
広義 NCAV 算出不能 算出不能 算出不能 算出不能 算出不能

表注: 負債合計は 総資産−純資産 で算出可能だが、流動資産・投資有価証券の個別値が snapshot/短信非開示のため広義 NCAV は算出不能。
本銘柄は大型株かつネットキャッシュ潤沢のため標準 NC を主軸に評価する。
EDINET DB MCP 復旧時に get_financials の BS 明細で再算出予定。

CN-PER(キャッシュニュートラル PER)

指標
予想 PER(FY2027/3予想) 17.7 倍
標準 NC 比率(360,960 ÷ 2,303,145) 15.7%
CN-PER(標準 NC ベース) 14.9 倍
参考: CN-PER(広義 NCAV ベース) 算出不能(NCAV 非算出)

CN-PER = (現値時価総額 2,303,145 − 標準NC 360,960) ÷ FY2027/3予想純利益 130,000 = 14.9倍。
ネットキャッシュを控除した実質 PER は表面 PER 17.7倍より約 3 ポイント低い。

EV/EBITDA 分析

指標 バンダイナムコ コナミ(9766) 任天堂(7974) セガサミー(6460)
時価総額(億円・現値) 23,031 23,627 81,574 4,287
標準 NC(億円) 3,610
EV(億円) 19,422
EBITDA(億円) 2,421
EV/EBITDA 8.0倍

表注: EV = 現値時価総額 − 標準NC(実質無借金のためネットキャッシュ控除)。
EBITDA = FY2026/3 営業利益 2,019億 + 減価償却費 約402億(FY2025/3 実績 40,216 百万円で近似)= 約2,421億。
競合の標準NC/EBITDA は個別 BS 明細未取得のため「—」。

EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別)

NC 定義 NC(億円) EV(億円) EV/EBITDA
標準 NC(現預金−有利子負債、実質無借金) 3,610 19,422 8.0倍
広義 NCAV(流動資産内訳非開示) 算出不能

成長率モデル適正 PER(参考)

理論 PER = 1 / (r − g)、r = 株主資本コスト(仮定8%)。

成長率仮定 理論 PER 備考
g = 0%(ゼロ成長) 12.5 倍 PER 下限の目安
g = 3%(インフレ並み) 20.0 倍
g = 5%(中程度成長) 33.3 倍
過去5期 売上 CAGR(FY2021→FY2025: 740,903→1,241,513 = +13.8%/年) 発散(g>r) 実績の高成長が持続するなら理論 PER はレンジ上限を大きく超える=株価に成長余地。ただし FY2027 は減益予想で持続性に留意

過去5期の売上 CAGR は +13.8%、純利益 CAGR は +27.5%(FY2021→FY2025)。
簡易理論モデルでは g が r(8%)を上回り PER が発散するため、実際には会社予想の減益(FY2027)が示すとおり成長率の鈍化を織り込む必要がある。

DCF 前提入力枠(空欄許容)

⚠️ 前提値の自信が低い項目は空欄のまま 要調査。勝手に数値生成しない。

項目 出典/備考
無リスク金利(%) 要調査 日本10年国債利回り(1.0-1.5%レンジ想定)
β 要調査 類似ゲーム/IP 銘柄から推定
市場リスクプレミアム(%) 5-6 日本市場慣行値
株主資本コスト Ke(%) 上記から算出 Ke = Rf + β × ERP
負債コスト Kd 税引後(%) N/A 実質無借金
自己資本比率(時価ベース) ≒100% 実質無借金
WACC(%) ≒ Ke 実質無借金のため WACC ≒ Ke
永続成長率 g(%) 要調査 IP ライセンスの持続性・少子化影響を参考に
法人税率(%) 30 日本標準実効税率。海外比率を考慮
明示予測期間(年) 5

5期 FCF 入力枠(FCF = NOPAT + 減価償却費 − 設備投資 − 運転資本増加):

t+1 t+2 t+3 t+4 t+5
FCF(百万円) 要調査 要調査 要調査 要調査 要調査

計算式: 企業価値 = Σ FCF_t/(1+WACC)^t + TV/(1+WACC)^nTV(永続成長) = FCF_{n+1}/(WACC-g)

参照: DCF分析 / WACC算出 / ターミナルバリュー / 感応度・シナリオ分析

バリュエーション乖離コメント

3手法の結果を事実ベースで並置する:

  1. NC考慮 EV/EBITDA 法: EV/EBITDA 8.0倍は国内大型エンタメとして割安水準。ネットキャッシュ3,610億円を控除済み。
  2. CN-PER 法: 表面予想 PER 17.7倍 → CN-PER 14.9倍。ネットキャッシュ控除で約3ポイント低下するが、NC比率15.7%は「キャッシュリッチで PER が割高に見える」というほどの大きさではない。
  3. 成長率モデル適正 PER(参考): 過去 CAGR(売上+13.8%/利益+27.5%)が持続するなら理論 PER は青天井だが、会社の FY2027 減益予想(営利-8.3%)はその持続性に疑問を投げる。

→ 乖離パターン: EV/EBITDA と CN-PER では同業比割安だが、成長率モデルでは「過去の高成長が一巡し減益局面に入る」シグナルが出ており、割安に見える PER が成長鈍化を織り込んだ結果なのか、過度な悲観なのかの判断が論点(投資判断で深掘り)。


3. 財務分析

PL — 5期(FY2021〜FY2025)+ FY2026実績 + FY2027予想

項目 FY2021/3 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3実績 FY2027/3予想
売上高(百万円) 740,903 889,273 990,090 1,050,209 1,241,513 1,348,200 1,350,000
営業利益(百万円) 84,654 125,496 116,472 90,682 180,229 201,900 185,000
経常利益(百万円) 87,612 133,612 128,007 104,156 186,470 189,500 190,000
当期純利益(百万円) 48,897 92,754 90,353 101,491 129,301 140,600 130,000
EPS(円・分割調整後) 197.88 217.49 202.69
営業利益率 11.4% 14.1% 11.8% 8.6% 14.5% 15.0% 13.7%
前年比(売上) +20.0% +11.3% +6.1% +18.2% +8.6% +0.1%
前年比(営利) +48.2% -7.2% -22.1% +98.7% +8.3% -8.3%

表注: FY2021〜FY2025 は snapshot(EDINET 有報確定値)、FY2026/3 は TDNet 決算短信実績(有報未提出)、FY2027/3 は会社予想。
EPS は FY2024/3 以前の確定値が snapshot に無いため「—」(株式分割の影響で単純算出が困難)。
FY2025/3=197.88円・FY2026/3=217.49円・FY2027/3予想=202.69円 は短信値。

BS — 5期(FY2021〜FY2025) + FY2026/3 参考

項目 FY2021/3 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3(短信)
総資産(百万円) 732,776 862,650 926,360 971,841 1,102,636 1,190,494
流動資産(百万円)
固定資産(百万円)
負債合計(百万円・総資産−純資産) 259,966 320,069 341,639 348,399 424,557 329,070
純資産(百万円) 472,810 542,581 584,721 623,442 678,079 861,424
自己資本比率 64.5% 62.9% 63.1% 64.2% 61.5% 72.3%
BPS(円・分割調整後) 1,342.11

表注: 流動資産/固定資産の内訳は snapshot/短信非開示(「—」)。
負債合計 = 総資産 − 純資産。
自己資本比率 = 純資産(equity) ÷ 総資産(株主資本基準)。
FY2026/3 で自己資本比率が61.5%→72.3%へ急上昇しているのは純資産が678,079→861,424 百万円へ大幅増加した一方、負債が減少したため。
BPS は FY2026/3 短信値のみ確定。

BS 詳細主要科目(百万円) — 5期

項目 FY2021/3 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3
投資有価証券
現預金 203,701 277,891 276,288 311,261 360,960
短期有価証券
有利子負債 20,617 21,054 10,773 ≒0(非開示) ≒0(非開示)
売上債権
棚卸資産
仕入債務

表注: 現預金(5期)・有利子負債(FY2021〜FY2023)以外の科目は snapshot JSON に項目が無く非開示。
EDINET DB MCP 復旧時に get_financials の BS 明細で補完予定。

CF — 5期

項目 FY2021/3 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3
営業 CF(百万円) 60,484 121,205 95,621 88,910 187,337
投資 CF(百万円) -29,766 -27,143 -40,884 10,141 -62,004
財務 CF(百万円) -19,043 -25,449 -59,521 -75,236 -77,347
FCF(百万円) 30,718 94,062 54,737 99,051 125,333

表注: FCF = 営業CF + 投資CF。
FY2025/3 は営業CF が大きく伸び(187,337)FCF も過去最高の125,333 百万円。
財務CF の継続的なマイナスは配当・自己株取得による株主還元を反映。

減価償却費明細(百万円) — 5期

FY2021/3 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3
24,677 25,728 28,668 38,357 40,216

受注高・受注残高

該当なし(非受注産業)。IP・玩具・ゲームのライセンス/消費財ビジネスが中心で受注残の概念は中核的でない。

運転資本分析(CCC)

算出不能(売上債権・棚卸資産・仕入債務が snapshot/短信非開示)。
EDINET DB MCP 復旧時に get_financials の BS 明細で再算出予定。
当社はトイホビー(玩具製造=在庫保有)とデジタル(在庫小)の混合事業のため、CCC は業態混合の影響を受け解釈に留意が必要。

配当推移 — FY2024〜FY2027予想(分割調整後 DPS)

項目 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3実績 FY2027/3予想
1株配当(円) 68 71 73(中間23+期末50) 中間25(期末別途検討)
配当利回り(現値3,591円基準) 2.03%
配当性向 33.6%(73÷217.49)

表注: FY2021〜FY2023 の DPS は株式分割(2023/4/1 1:3)により単純比較不可のため除外。
配当総額(snapshot)は FY2023/3=47,309・FY2024/3=46,002・FY2025/3=39,918 百万円。
配当利回りは現値株価ベース。
連続増配基調(68→71→73円)。

経営者予想精度(3期分)

予想売上 実績売上 乖離率 予想営利 実績営利 乖離率
FY2025/3 期初予想未取得 1,241,513 期初予想未取得 180,229 大幅上振れ(営利+98.7%・計画大幅超)
FY2026/3 期中増額 1,348,200 期中増額 201,900 増額後着地

表注: 期初予想の具体数値は未取得。
FY2025/3 は『エルデンリング』等の好調で期初計画を大幅超過、FY2026/3 は上期に通期予想を増額した後の着地。
予想精度の定量テーブルは部分データに留まる。

健全性チェック(事業会社基準・9項目)

項目 基準 当社値 判定
自己資本比率 > 40% 40% 72.3%(FY2026/3)
有利子負債 < 現預金 実質無借金 < 現預金3,610億
流動比率 > 150% 150% 算出不能(流動資産内訳非開示) —(判定保留)
利益剰余金 > 0 0 純資産8,614億・潤沢
営業CF 3期連続黒字 FY2023〜FY2025 全黒字
配当 3期連続支払い 継続増配(68→71→73円)
EPS 前年比プラス 197.88→217.49(FY2026)/ FY2027予想は202.69で減益 ⚠️
ROE > 8% 8% 16.3%(FY2026 純利益140,600÷純資産861,424)
営業利益率 > 業界平均 15.0%(FY2026)。コナミ24.2%・任天堂24.3%には劣後、セガサミー11.2%は上回る ⚠️

表注: 流動比率は BS 明細非開示のため判定保留。
上記恒等式チェックを健全性の本指標とする。
FY2027 減益予想と、利益率がゲーム専業(コナミ・任天堂)に劣後する点が留意点だが、財務健全性そのものは極めて高い。


4. 同業他社比較

競合選定基準

基準 内容
業種 エンターテインメント(玩具・ゲーム・IP)。バンダイナムコ=その他製品、コナミ=情報通信、セガサミー=機械、任天堂=その他製品
時価総額レンジ 対象 2.3兆円の 0.3-5 倍 ≒ 0.7兆〜11.5兆。コナミ(2.4兆)・任天堂(8.2兆)は範囲内、セガサミー(0.43兆)はやや下回るが国内エンタメ大手として掲載
選定理由 コナミ=ゲーム+IP の最良ピア(時価総額ほぼ同等)、任天堂=IP/玩具/ゲームのベンチマーク、セガサミー=ゲーム+遊技機の国内大手

最新期比較テーブル

指標 バンダイナムコ コナミ(9766) 任天堂(7974) セガサミー(6460)
時価総額(億円・現値) 23,031 23,627 81,574 4,287
売上高(億円) 13,482(FY26) 4,216(FY25) 11,649(FY25) 4,289(FY25)
営業利益率 15.0% 24.2% 24.3% 11.2%
自己資本比率 72.3% 72.5% 73.2% 59.1%
PER(現値時価÷直近純利益・概算) 16.4倍 31.7倍 29.3倍 9.5倍
PBR 2.68倍
ROE 16.3% 16.4% 11.2% 12.2%
配当利回り 2.03%
EV/EBITDA 8.0倍
標準 NC 比率 15.7%
営業 CF(億円) 1,873(FY25) 1,146(FY25) 121(FY25)
FCF(億円) 1,253(FY25)

表注: バンダイナムコは FY2026/3 実績+現値、競合は FY2025/3 実績+現値時価総額。
PER は現値時価総額÷直近純利益で概算。
任天堂の FY2025/3 営業CF 121億円は資金運用(投資CF +7,531億の証券償還)と通貨要因による特殊値。
競合の一部指標は BS 明細未取得のため「—」。

競合 3期推移(売上・営業利益率)

企業 3期前 売上 2期前 売上 直近 売上 3期前 営利率 2期前 営利率 直近 営利率
バンダイナムコ 990,090(FY23) 1,050,209(FY24) 1,241,513(FY25) 11.8% 8.6% 14.5%
コナミ 未取得 未取得 421,600(FY25) 24.2%
任天堂 未取得 未取得 1,164,900(FY25) 24.3%

表注: バンダイナムコは snapshot 確定値(FY2023〜FY2025)。競合の過去2期売上は未取得。

運転資本効率(CCC)— 競合比較

算出不能(BS 明細非開示)。EDINET DB MCP 復旧時に補完予定。

指標(日数) バンダイナムコ コナミ 任天堂 セガサミー 業界中央値
売上債権回転日数 データなし
棚卸資産回転日数 データなし
仕入債務回転日数 データなし
CCC データなし

5. リスク評価

リスクマトリクステーブル

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的影響シナリオ 対応状況
デジタル(ゲーム)の業績変動 大型新作の延期・不発でデジタル利益が数百億円規模で振れる。FY2026 はリピート減で利益-17.3%、FY2027 は全社減益予想の主因に タイトルポートフォリオの分散・質重視で平準化を図るが構造的に解消困難
特定 IP(ガンダム)への集中 ガンダム関連は年商1,535億円規模。ファン高齢化や新作の質低下で需要が陰れば全社に波及 新 IP 育成・既存 IP の世代継承(新作アニメ投入)で対応
海外展開の不確実性 海外比率50%目標だが、中国の規制・為替・現地競合で計画未達なら成長率が頭打ち 北米・中国を軸に直営店・現地生産を強化
少子化・玩具市場縮小 国内の主要顧客である子供人口が減少。トイホビーの国内需要が構造的に縮小 ハイターゲット層(大人コレクター)向け製品で単価を引き上げ
キャッシュの滞留(資本効率) 自己資本比率72%・ネットキャッシュ3,610億円。活用が進まないと ROE が頭打ちし市場評価が割安放置に 連続増配・自己株取得を継続。東証「資本コスト経営」要請への対応が問われる
模倣品・知財侵害 海外でのガンプラ・キャラクターグッズの模倣品流通がブランド価値とライセンス収入を毀損 法的措置・正規品流通網の整備

リスク因果関係図

graph TD
    A[ゲーム大型新作の有無] -->|不発・延期| B[デジタル利益の急減]
    B --> C[全社営業利益の減益]
    C --> D[株価の下押し]
    E[ガンダム IP の人気サイクル] -->|陰り| F[トイホビー利益の鈍化]
    F --> C
    G[少子化・国内玩具市場縮小] -.緩和: 大人向け高単価化.-> F
    H[海外展開50%目標] -.成功すれば緩和.-> C
    I[ネットキャッシュ3610億の滞留] --> J[ROE 頭打ち・割安放置]
    K[東証 資本コスト経営要請] -.還元強化で緩和.-> J
    style C fill:#ffd700
    style D fill:#ff9999

最大リスクの深掘り

WARNING

最大の定性リスク=デジタル事業の「ヒット依存」構造 バンダイナムコの利益の振れの震源地は、一貫してデジタル(ゲーム)事業である。
FY2024/3 は営業利益が前年比-22.1%(90,682 百万円)まで落ち込んだが、これは大型タイトルの端境期だった。
逆に FY2025/3 は『エルデンリング』効果で営業利益+98.7%(180,229 百万円)と急回復した。
そして FY2026/3 はリピートタイトルの反動でデジタル利益が-17.3%、FY2027/3 は会社自身が営業利益-8.3%の減益を予想している。
シナリオ分解すると、(1) FY2027 中に大型新作が当たればデジタルが再浮上し会社予想を上振れ、(2) 新作が延期・不発ならデジタルがさらに沈み下振れ、(3) トイホビーの安定成長がデジタルの谷を埋めて会社予想並み、の3つに分かれる。
トイホビーという「安定錨」があるため任天堂やゲーム専業ほど業績が荒れないのが救いだが、それでも年度ごとの利益の山谷は避けられない。

WARNING

バリュートラップ(割安放置)リスク FY2026/3 末の自己資本比率は72.3%、現預金は3,610億円規模(FY2025/3)で実質無借金。
これは財務の盤石さの裏返しで「資本が働いていない」状態でもある。
ROE は16.3%と一見高いが、これは利益水準が高いためで、もしキャッシュをそのまま積み上げ続ければ分母(自己資本)が膨らみ ROE は逓減する。
標準 NC 比率15.7%は時価総額の約6分の1がキャッシュという意味で、「キャッシュを差し引いた実質的な事業価値(CN-PER 14.9倍)」で見れば割安だが、市場がそのキャッシュの活用策を信用しなければ株価は割安なまま放置される。
連続増配(68→71→73円)と自己株取得は実施しているものの、3,610億円のネットキャッシュに対して十分かは議論の余地があり、東証の「資本コストを意識した経営」要請やアクティビスト的ファンドの圧力がカタリストになりうる。


6. 投資判断

バリュエーション乖離コメントの補強

バリュエーション分析で示した3手法の乖離(EV/EBITDA 8.0倍・CN-PER 14.9倍では同業比割安、成長率モデルでは減益局面入りのシグナル)について、定性面から背景を補強する。

第一に、なぜ予想 PER 17.7倍がコナミ31.7倍・任天堂29.3倍より大幅に低いのか
これは市場がバンダイナムコを「成長株」ではなく「安定配当+IP 資産株」として評価しているためである。
ゲーム専業のコナミ(『遊戯王』『ウイイレ』のデジタル化が高採算)や任天堂(Switch 後継機への期待)には明確な成長ストーリーがあるのに対し、バンダイナムコは事業ポートフォリオが分散している分、爆発力に欠ける。
FY2027 が減益予想であることも、成長プレミアムが乗りにくい一因である。

第二に、この割安は投資機会かバリュートラップか
判断材料は「海外展開(海外比率50%目標)が本当に成長を再加速させるか」に尽きる。
もし北米・中国でガンダム・ドラゴンボールが現在の倍規模に育てば、PER 17.7倍は割安だったということになる。
逆に国内少子化を海外が補えなければ、低成長+キャッシュ滞留で割安放置が続く。
現時点では「トイホビーの海外成長は実績として進行中(IP 軸戦略で8期連続最高益)」というポジティブ材料があり、単純なバリュートラップとは言い切れない。

第三に、投資家の対応案
FY2027 が減益予想である以上、業績モメンタムの観点では今は待ち姿勢が無難。
ただしデジタルの谷は周期的なものなので、(1) 株価が下値メド(PBR 後述)に近づいた局面での段階買い、(2) 大型ゲーム新作の発表・海外比率の改善というカタリスト待ち、の2つが現実的な戦略となる。

バリュエーション手法別の目標株価

バリュエーション分析の数値(EPS・予想 PER 17.7倍・EV/EBITDA 8.0倍・標準 NC 3,610億円)を用いて算出する。

PER法(保守的/標準/楽観的)

シナリオ 適用 PER EPS(円) 目標株価(円) 現在株価比
保守的 14倍(過去レンジ下限・減益局面の評価) 202.69(FY2027予想) 2,838 -21%
標準 18倍(現状並み・実績EPS反映) 202.69 3,648 +2%
楽観的 22倍(海外成長再加速・同業並み接近) 217.49(FY2026実績) 4,785 +33%

EV/EBITDA法(保守的/標準/楽観的)

シナリオ EV/EBITDA EBITDA(億円) EV(億円) +標準NC=理論時価総額(億円) 理論株価(円) 現在株価比
保守的 7倍 2,421 16,947 20,557 3,205 -11%
標準 8倍 2,421 19,368 22,978 3,583 -0%
楽観的 10倍 2,421 24,210 27,820 4,338 +21%

下値メド

PBR 1.0倍 = BPS 1,342.11円 を理論的下限として提示。
ただし当社は実質無借金・高 ROE のため PBR 1倍まで下がる蓋然性は低く、現実的な下値は PBR 1.8-2.0倍(≒2,400-2,680円)水準が意識されやすい。

シナリオ別の詳細根拠

SUCCESS

ベースケース(確率50%): FY2027 会社予想並み着地(売上1.35兆円・営業利益1,850億円) 前提: トイホビーが8期連続最高益の勢いを維持し(海外 IP 需要が継続)、デジタルはリピート減で減益だが、トイホビー・アミューズメントの安定成長が部分的に補う。
確率の根拠: 会社予想は過去、保守的に置かれる傾向(FY2025 は期初計画を営利+98.7%で大幅超過、FY2026 は期中増額)があり、減益予想1,850億円は「下限の置き方」の可能性が高い。
トイホビーの海外実績(ガンダム年商1,535億円)が下支え。
投資家の対応: 現状維持。
配当(利回り2.03%)を受け取りつつ、デジタルの新作動向を四半期ごとに確認。

INFO

上振れケース(確率25%): デジタル新作ヒット+海外加速で会社予想超過 前提: FY2027 中に大型ゲーム新作(過去の『エルデンリング』級)が当たり、デジタル利益が再浮上。
同時に海外トイホビーが計画を上回る。
確率の根拠: バンダイナムコは2年に一度程度、デジタルで大型ヒットを出す周期があり(FY2022・FY2025)、タイミング的に FY2027-2028 に当たり年が来る可能性。
海外比率50%目標も中期計画で明示。
投資家の対応: 新作発表・予約状況がポジティブなら、PER 楽観シナリオ(4,785円)を視野に押し目買い。

WARNING

下振れケース(確率25%): デジタル新作不発+少子化・海外停滞 前提: ゲーム新作が延期・不発でデジタルがさらに沈み、国内玩具も少子化で鈍化、海外も中国規制等で計画未達。
確率の根拠: デジタルの利益変動は構造的で、過去 FY2024 には営業利益-22.1%の実績がある。
為替円高や中国エンタメ規制も外部リスクとして残る。
投資家の対応: 下値メド(PBR 1.8-2.0倍 ≒ 2,400-2,680円)を意識。
割安感が強まればキャッシュ厚みを根拠に段階買いの好機にもなりうる。

推奨アクションの構造化

SUMMARY

買いの根拠

  • IP 軸戦略による収益の安定性(トイホビーが利益率18.8%の安定錨)
  • 同業(コナミ31.7倍・任天堂29.3倍)対比で PER 17.7倍・CN-PER 14.9倍と割安
  • 自己資本比率72.3%・実質無借金・ネットキャッシュ3,610億円の鉄壁の財務
  • 連続増配(68→71→73円)と配当利回り2.03%

留意点

  • FY2027 は会社予想で減益(営業利益-8.3%)=業績モメンタムは下向き
  • デジタル(ゲーム)のヒット依存で利益が年度ごとに山谷
  • ネットキャッシュ滞留による ROE 頭打ち・割安放置(バリュートラップ)リスク
  • 利益率15.0%はゲーム専業(24%前後)に劣後

カタリスト・タイムライン

時期 イベント 確認すべき数値 株価への影響
2026年6月下旬 定時株主総会 取締役選任・還元方針・資本政策へのスタンス
2026年6月27日(予定) FY2026 期末配当 権利付き最終日(権利確定6月末の2営業日前。要確認) 期末配当50円の権利取り
2026年8月上旬 FY2027 第1四半期決算 デジタル新作の初動、トイホビー海外売上
2026年11月上旬 FY2027 第2四半期決算 上期着地 vs 通期予想、通期予想の増額/減額
2027年2月上旬 FY2027 第3四半期決算 デジタル大型タイトルの販売本数、海外比率の進捗
随時 大型ゲーム新作の発表・発売 予約数・レビュースコア・販売本数
随時 海外展開(北米・中国)の進捗開示 海外売上比率(50%目標に対する実績)
2027年5月中旬 FY2027 通期決算・FY2028 予想 通期着地、FY2028 で増益回帰するか、NC 活用策の有無

7. 学習コーナー

📚 着眼点 1: なぜ「IP 軸戦略」がバンダイナムコの PER を下支えしつつ、爆発力を削ぐのか

バンダイナムコの予想 PER 17.7倍は、ゲーム専業のコナミ(31.7倍)や任天堂(29.3倍)の約半分強である。この差を理解する鍵が「IP 軸戦略」という事業構造だ。

バンダイナムコは1つの IP(例: ガンダム)を玩具・ゲーム・映像・施設の4チャネルで売る。
これは収益を平準化する効果があり、デジタル(ゲーム)が不調な年でもトイホビー(利益率18.8%)が支えるため、任天堂のように「ヒットがなければ赤字寸前まで沈む」極端な振れがない。
FY2026/3 もデジタル利益-17.3%をトイホビー+24.2%が補って全社では増益を達成した。

TIP

たとえるなら、バンダイナムコは「複数の安定した収入源を持つ大家」で、任天堂は「一発当てれば巨額、外せばゼロのギャンブラー」だ。
市場は前者に「安定の対価=低めの PER」を、後者に「爆発の期待=高い PER」を付ける。
これは優劣ではなく、投資家のリスク選好の違いである。
安定を取るなら割安なバンダイナムコ、夢を買うなら任天堂、という棲み分けになる。

投資家への示唆: バンダイナムコの PER 17.7倍を「割安」と見るか「妥当」と見るかは、IP 軸の安定性をどう評価するか次第。
安定キャッシュフロー+増配を重視する投資家にとっては割安、成長スピードを求める投資家には物足りない水準である。

📚 着眼点 2: バンダイナムコのネットキャッシュ3,610億円と CN-PER の読み方

バリュエーション分析で示したとおり、バンダイナムコの標準 NC(ネットキャッシュ)は約3,610億円、時価総額の15.7%を占める。
これを差し引いた実質的な事業価値で計算した CN-PER は14.9倍で、表面の予想 PER 17.7倍より約3ポイント低い。

これが何を意味するか。
株を買うとき、あなたは「事業」と「金庫の中の現金」を同時に買っている。
バンダイナムコの場合、時価総額2.3兆円のうち約3,610億円は実質的に現金(とその等価物)であり、残り約1.94兆円が「IP と事業の値段」だ。
CN-PER は「金庫の現金を除いた、純粋な事業に対していくら払っているか」を示す。

TIP

たとえるなら、3,000万円の家を買ったら金庫に500万円の現金が入っていた、というようなもの。
実質的に家本体には2,500万円しか払っていない。
CN-PER はこの「家本体の値段」に相当する。
バンダイナムコは金庫が厚い(ネットキャッシュが多い)ため、表面 PER より実質 PER が低く出る。

投資家への示唆: ただし「金庫が厚い=必ず割安」ではない。
その現金が配当・自社株買い・成長投資に使われて初めて株主価値になる。
使われずに滞留すれば「宝の持ち腐れ」でバリュートラップになる(着眼点4参照)。
CN-PER の低さは「潜在的な割安」であって「確定した割安」ではない。

📚 着眼点 3: デジタル事業の「リピートタイトル」という利益変動の震源

FY2026/3 のデジタル事業はセグメント利益が前年比17.3%減、FY2027/3 全社減益予想の主因となった。
この背景にある「リピートタイトル」という概念を理解すると、バンダイナムコのゲーム事業の本質が見える。

ゲームの売上は2層に分かれる。
発売初年度の「新作売上」と、翌年以降も売れ続ける「リピート売上(旧作の継続販売・DLC・追加課金)」である。
『エルデンリング』のような大ヒットが出ると、その年だけでなく翌年もリピートで稼げる。
問題は、前年に大ヒットがあると「翌年はその反動でリピートが目減りする」点だ。
FY2025/3 は『エルデンリング』効果で営業利益+98.7%の大豊作、その反動で FY2026/3 はデジタルが減益、という波が生まれた。

TIP

たとえるなら、豊作の翌年は畑が休む農業のようなもの。
大ヒット作という「豊作」の後は、次の種(新作)が実るまでリピートという「貯蔵分」を食いつなぐ。
貯蔵が尽きる端境期に利益が凹む。
これはバンダイナムコの怠慢ではなく、ヒット商売の構造そのものだ。

投資家への示唆: デジタルの減益を「衰退」と誤読しないこと。
重要なのは「次の大型新作のパイプライン」で、これが充実していれば谷は一時的。
四半期決算の新作ラインナップとリピート構成比を追うのが、この銘柄の正しい見方である。

📚 着眼点 4: 自己資本比率72%・実質無借金がもたらす「資本効率のジレンマ」

バンダイナムコの FY2026/3 自己資本比率は72.3%、有利子負債はほぼゼロの実質無借金である。財務の安全性は申し分ないが、投資の観点では「安全すぎることの副作用」も理解する必要がある。

ROE(自己資本利益率)= 純利益 ÷ 自己資本。
バンダイナムコの ROE は16.3%と高いが、これは現状の利益水準が高いおかげだ。
問題は、毎年生み出すキャッシュ(FY2025 の FCF は1,253億円)を配当・自社株買いで還元しきれず社内に積み上げると、分母の自己資本が膨らんで ROE が自然に下がっていく点にある。

TIP

たとえるなら、貯金が多すぎる人。
手元資金が厚いのは安心だが、低金利の預金に置いたままでは「お金に働いてもらっていない」状態だ。
企業も同じで、使わない自己資本は ROE(資本の働きぶり)を押し下げる。
東証が2023年から上場企業に「資本コストを意識した経営」を要請しているのは、まさにこの「貯め込み」を還元・投資に回せという圧力である。

投資家への示唆: バンダイナムコの財務健全性は買いの根拠であると同時に、「キャッシュ活用策が出るか」が株価の上値を決める論点でもある。
増配・大型自社株買い・M&A・海外投資のいずれかでキャッシュが動けば、割安放置の解消(株価上昇)のカタリストになる。
総会での資本政策に関する経営陣の発言が重要なチェックポイントだ。

📚 着眼点 5: バンダイナムコの指標ポジショニング(相場観テーブル)

指標 バンダイナムコ 同業他社平均(ゲーム/エンタメ) 全上場中央値(目安) 評価コメント
予想 PER 17.7倍 約25倍(コナミ31.7・任天堂29.3・セガサミー9.5の散らばり大) 約15倍 IP 軸の安定性ゆえ成長プレミアムが乗りにくく同業より低い。割安だが減益予想が重し
PBR 2.68倍 2-3倍 約1.2倍 高 ROE・無形 IP 資産を反映し市場平均より高い。割高ではなく質の対価
ROE 16.3% 12-16% 約8% 高水準だがキャッシュ滞留で逓減リスク。活用策が ROE 維持の鍵
EV/EBITDA 8.0倍 10-15倍 約8倍 ネットキャッシュ控除後で割安。買収妙味の観点では魅力
配当利回り 2.03% 1.5-2.5% 約2.3% 中位。連続増配基調だが利回り自体は突出せず
自己資本比率 72.3% 60-73% 約40% 業界最高水準の財務健全性。実質無借金
営業利益率 15.0% 11-24% 約7% ゲーム専業(24%)には劣後、セガサミー(11%)は上回る中位
標準 NC 比率 15.7% 時価総額の約6分の1がネットキャッシュ。CN-PER を押し下げる
売上成長率(過去5期CAGR) +13.8% 約3-5% 高成長だが FY2027 は横ばい予想で一巡感

評価コメントの総括: バンダイナムコは「財務健全性は業界最高、収益性は中位、バリュエーションは同業比割安」という位置づけ。
割安に見えるのは成長鈍化(FY2027 減益)と利益率の同業劣後を市場が織り込んだ結果であり、海外展開とキャッシュ活用がその割安を解消できるかが投資判断の分かれ目となる。

TIP

指標は「単独の数字」ではなく「同業との相対」で読むのがコツである。
バンダイナムコの PER 17.7倍は全上場中央値(約15倍)より高いので一見割高に見えるが、同業のコナミ31.7倍・任天堂29.3倍と並べると割安に見える。
同じ数字でも「何と比べるか」で評価が180度変わる。
1つの指標に飛びつかず、PER・PBR・ROE・EV/EBITDA を同業と並べて「全体としてどの位置か」を見る訓練が、銘柄の相場観を養う近道になる。

🤔 自分への問い

(自分の答え)

(自分の答え)

(自分の答え)

関連: 演習フォーマット §C-3 / 演習・チェックリスト index


参考情報

ガバナンス情報テーブル

項目 内容
代表取締役社長 浅古有寿(2025年4月1日就任)
取締役会長 川口勝(前社長、2025年4月会長就任)
設立 2005年9月29日(バンダイとナムコの経営統合により持株会社設立)
従業員数 11,345名(FY2025/3、連結)
監査法人 有報記載に基づく(本レポートでは未取得。最新有報で要確認)
主要取引銀行 三菱UFJ銀行等(IR 開示に基づく。本レポートでは個別未取得)
海外拠点 北米・欧州・アジア(中国含む)。中期計画で海外売上比率50%を目標

大株主構成テーブル(FY2025/3 前後、出典: the-shashi.com / buffett-code)

順位 株主名 保有比率 区分
1 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 19.98% 信託(機関投資家の名義集約)
2 日本カストディ銀行(信託口) 8.88% 信託(機関投資家の名義集約)
3 JP MORGAN CHASE BANK 380815 5.07% 外国金融機関
4 有限会社ジル 2.78% 資産管理会社(創業家関連と推定)
5 中村恭子 2.20% 個人
6 野村信託銀行(信託口) 2.13% 信託
7 マル(資産管理会社) 2.04% 資産管理会社
8 STATE STREET BANK WEST CLIENT 1.96% 外国金融機関
9 任天堂 1.78% 事業会社
10 KOREA SECURITIES DEPOSITORY-SAMSUNG 1.55% 外国法人

外国人持株比率は約38.9%、金融機関約35.8%(FY24 構成)。
アクティビストの大量保有は確認されないが、外国人比率の高さと潤沢なネットキャッシュは、将来的に資本効率改善を求める株主提案の土壌となりうる。
任天堂(1.78%)の保有は業界内の協業関係を象徴。

社外取締役の視点

WARNING

経営陣に問うべき3つの質問 Q1: ネットキャッシュ約3,610億円・自己資本比率72%という厚い手元資金を、今後どの優先順位(増配/自社株買い/海外M&A/IP投資)で活用し、ROE 16%をどう維持するのか。
具体的な資本配分計画とその時間軸は? Q2: FY2027 の減益予想(営業利益-8.3%)の主因であるデジタル事業のヒット依存を平準化するため、新作パイプラインとリピート収益の比率をどう設計しているか。
次の『エルデンリング』級の見通しは? Q3: 中期計画の海外売上比率50%目標に対し、中国の規制リスクと為替変動を踏まえた現実的な達成シナリオは何か。
北米・中国それぞれの IP 別の進捗指標は?

免責事項

CAUTION

本レポートは公開情報(EDINET 有報由来の財務 snapshot、TDNet 決算短信、企業 IR、報道)に基づく分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではない。
投資判断は自己責任で行うこと。
本案件は EDINET DB MCP が利用不可だったため、一部の BS 明細・セグメント時系列・予想精度データが非開示/未取得であり、数値は取得可能な範囲に限られる。
最新の正確な数値は各社の有価証券報告書・決算短信の原典を確認されたい。

データソースの時点差テーブル

データ種別 基準日 ソース
5期 PL/BS/CF(FY2021〜FY2025/3) 2025-03-31 EDINET 有報由来 snapshot JSON
FY2026/3 通期実績・FY2027/3 予想・配当・BS サマリ 2026-03-31(短信開示 2026-05-13) TDNet 決算短信
現値株価・時価総額 2026-06-20 price_fetcher / yfinance
セグメント別(FY2026/3) 2026-03-31 決算短信 / gamebiz
大株主構成 FY2025/3 前後 the-shashi.com / buffett-code
ガバナンス(社長交代等) 2025-04-01 企業 IR / 報道
競合財務(コナミ/セガサミー FY2025/3、任天堂 snapshot) 2025-03-31 公式短信要約 / snapshot / yfinance

出典一覧

  1. edinet_screener snapshot JSON snapshots/その他製品/E02481_2021〜2025-03-31.json — EDINET 有報由来 5期 PL/BS/CF(FY2021〜FY2025/3 確定値)
  2. TDNet 決算短信 2026-05-13 — FY2026/3 通期実績・FY2027/3 会社予想・配当・BS サマリ
  3. price_fetcher / yfinance(2026-06-20)— 現値株価・時価総額・発行済株式数(7832 / 6460 / 9766 / 7974)
  4. gamebiz.jp 決算レポート(公式短信ベース)— FY2026/3 セグメント別売上・利益
  5. WebSearch(日経・kabutan 要約・公式 IR)— コナミ/セガサミー FY2025/3 主要財務、デジタル事業の課題
  6. snapshot JSON E02367_2025-03-31.json — 任天堂 FY2025/3 確定値
  7. the-shashi.com / buffett-code — バンダイナムコ大株主構成
  8. 企業 IR・報道(Musicman / 4Gamer / diamond.jp)— ガバナンス(社長交代)・IP 軸戦略・ガンダム年商・海外比率目標