第1号 半導体は「どの工程」が一番儲かるのか — FP&A目線で読む半導体バリューチェーン
第3章ケース:ニッチ市場の競争力と、成長余地を分ける
タツモの決算説明資料は、Temporary Bonding / Debonding(仮接合・剥離)をWLP・PLPなど先端パッケージングの用途とともに説明しています。
ここを出発点に、装置の用途別に需要を考えます。
まず「どの製品市場か」を固定します。
仮接合・剥離とHybrid Bondingは、接合に関わるというだけで同一市場にはできません。
装置単体の市場、周辺工程を含む市場、材料やサービスを含む市場でもTAMは変わります。
旧版の市場350〜600億円、シェア約90%、Hybrid Bondingの成長率21%とEVG82%は、対象年・範囲・原典表を特定できないため不採用としました。
次に、既存顧客への販売、新しい用途への展開、競合からの置き換えを分けます。
高いシェアがあると仮定しても、その市場が停滞すれば成長は止まります。
一方、既存製品で強いことが新市場でも勝てる証明にはなりません。
技術適合、顧客認定、量産採用、受注、売上計上を順に追う必要があります。
最後に、成長の売上効果とキャッシュ負担を分けます。
量産採用が増えても、先に仕掛品と売掛金が増えれば現金は遅れて入ります。
TAMから企業価値へ一足飛びに進まず、「用途別需要→受注→粗利→運転資本→投資後CF」の順でつなぎます。
ニッチ企業を読むうえでは、強い製品があることと、持続的に現金を増やせることの両方を確かめるのが要点です。
まとめ:このフレームは半導体以外でも使える
今日の3条件と5着眼点は、半導体に限らず、あらゆる業界の「利益の地図」を描くのに使えます。気になる会社があれば、次のチェックリストで読んでみてください。
- 価格決定力:その製品は替えがきくか。値段を自分で決められるか
- 資本集約度:利益を生むのにどれだけ設備が要るか(CapEx/売上)。利益は現金になっているか(FCF)
- シクリカル耐性:景気・投資サイクルのどこにいるか。構造需要はあるか
- PERの罠:好況の低PER/不況の高PERに騙されていないか(サイクル中央値で見る)
- 受注残:未来の売上は細っていないか
- 棚卸資産:仕掛品の増減はCFのどの局面を示すか
- TAM:シェアの高さに、市場の大きさは見合っているか
「市場が伸びる会社」と「儲かる会社」は違う――この一点を分解できるだけで、ニュースの見え方が変わります。
最後に質問です。あなたが今いちばん気になっている会社は、3条件のうちどれが強く、どれが弱いでしょうか。コメントで教えてください。次回は、この読み方を別の業界(たとえば食品や商社)に当てはめてみます。
本記事は公開情報(各社の有価証券報告書・決算説明資料、SEMI等の市場調査)に基づく分析教材であり、特定銘柄の投資を推奨するものではありません。
投資判断はご自身の責任でお願いします。
財務数値は各社FY2025実績(EDINET)、市場規模・成長率は各種調査機関の2025〜2030年見通しに基づきます。
出典・比較上の注意
- 会社間の利益率ランキングは不採用。DISCOの利益率は上記決算資料の当期値。各社の決算期・事業範囲の違いにも注意が必要です
- 工程分類: レーザーテック ACTIS、ディスコ工程資料、アドバンテスト Semiconductor Test、タツモ決算説明資料
- 市場見通し: SEMIの半導体製造装置市場予測、TSMCのCoWoS能力計画、各社の先端パッケージング関連開示。将来値は予測であり実績ではない
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