第1号 半導体は「どの工程」が一番儲かるのか — FP&A目線で読む半導体バリューチェーン
第1章半導体は「6つの層」でできている
まず全体像です。半導体産業は、ざっくり6つの層が「素材→道具→製造→設計→仕上げ→製品」とつながってできています。
- 第1層 材料:シリコンウェーハやレジスト(信越化学、SUMCO、東京応化工業)
- 第2層 製造装置:回路を描く・削る・検査する道具(ASML、東京エレクトロン、ディスコ、レーザーテック、タツモ)
- 第3層 ファウンドリ:設計図どおりにチップを焼く受託工場(TSMC、Samsung)
- 第4層 ファブレス/メモリ:設計だけの会社と記憶専門(NVIDIA、Apple/SK Hynix)
- 第5層 OSAT:チップを切り出して箱に詰める後工程の受託(ASE、Amkor)
- 第6層 最終製品:AIサーバー、スマホ、EV
料理にたとえると、材料メーカーは農家、装置メーカーは厨房機器メーカー、ファウンドリは食品工場、ファブレスはレシピ開発会社、OSATは梱包・配送センターです。
それぞれが分業し、1枚のチップを世界中で受け渡しながら作っています。

なぜ今、こんなに注目されているのか
理由は一言でいうとAIです。2026年は「AI設備投資のスーパーサイクル」と呼ばれています。
- 巨大IT企業(ハイパースケーラー)の設備投資は2025年第3四半期に四半期で初めて10兆円超え。主要4社は2026年に前年比約70%増の約6,000億ドル(約90兆円)規模へ拡大する見通し
- 半導体製造装置の世界販売は2026年に前年比+9%で約1,390億ドル、2027年は過去最高の1,560億ドルへ(SEMI予測)
- AI計算に不可欠なHBM(高速メモリ)の需要が急拡大し、メモリ大手の投資を牽引
- TSMCはAI向け先端パッケージング(CoWoS)の生産能力を2026年末までに月13万枚へ、2024年末比で約4倍に引き上げ
つまり、最終製品(AIサーバー)の爆発的な需要が、設計→製造→装置→材料へと川を遡って投資を呼び込んでいる状態です。半導体の成長は、大きく3つのドライバーに整理できます。
- AI/先端パッケージング:HBMやチップを積み重ねる技術が拡大
- SiCパワー半導体:EVや省エネで電気を制御する次世代チップ
- OSATシフト:製造受託(ファウンドリ)から後工程専門への委託拡大
ただし、市場ごとに「成長スピード」は大きく違います。次の図が、半導体の各市場の規模と成長率(CAGR=年平均成長率)の地図です。

成長率だけ見るとAI半導体(33%)やSiC(25%)が花形です。ですが――ここが今日のいちばん大事なポイントですが――「市場が伸びること」と「その会社が儲かること」は、まったくの別物です。
結論を先に:一番「儲かっている」のは後工程の装置
成長率の話はいったん脇に置いて、「実際にどれだけ儲かっているか」を営業利益率で並べてみます。日本の主要12社のFY2025実績がこちらです。
- レーザーテック(検査)48.8%
- ディスコ(切断・研削)42.4%
- アドバンテスト(テスト)29.3%
- 信越化学(材料・ウェーハ)29.0%
- 東京エレクトロン(前工程装置)28.7%
- SCREEN(洗浄装置)21.7%
- 東京応化工業(材料・レジスト)20.0%
- TOWA(封止装置)16.6%
- タツモ(貼合・剥離装置)13.5%
- 三菱電機(総合電機・パワー)7.1%
- SUMCO(材料・ウェーハ)0.3%
- ローム(パワー半導体)▲8.9%
トップのレーザーテックとボトムのロームの差は57.7ポイント。
同じ業界とは思えない開きです。
そして上位を見ると、AIの花形であるはずの「製造(ファウンドリ)」や「設計」ではなく、検査・切断・テストといった後工程の装置メーカーが利益率の上位を独占していることに気づきます。

ではなぜ、こんな逆転が起きるのか。
「市場が大きい・速い」ことと「儲かる」ことがズレるのはなぜか。
ここから先が、この記事の本題です。
利益が貯まる場所を決める「3つの条件」と、決算の読み方を、順に分解していきます。