📚 業界ノート

第1号 半導体は「どの工程」が一番儲かるのか — FP&A目線で読む半導体バリューチェーン

第1章半導体は「6つの層」でできている

この章の目次
  1. なぜ今、こんなに注目されているのか
  2. 結論を先に:工程の名前だけでは収益力を説明できない
  3. この章の主要出典(2026年9月17日確認)

まず全体像です。半導体産業は、ざっくり6つの層が「素材→道具→製造→設計→仕上げ→製品」とつながってできています。

料理にたとえると、材料メーカーは農家、装置メーカーは厨房機器メーカー、ファウンドリは食品工場、ファブレスはレシピ開発会社、OSATは梱包・配送センターです。
それぞれが分業し、1枚のチップを世界中で受け渡しながら作っています。

図2:半導体バリューチェーン6層マップ

なぜ今、こんなに注目されているのか

理由は一言でいうとAIです。2026年は「AI設備投資のスーパーサイクル」と呼ばれています。

つまり、最終製品(AIサーバー)の爆発的な需要が、設計→製造→装置→材料へと川を遡って投資を呼び込んでいる状態です。半導体の成長は、大きく3つのドライバーに整理できます。

ただし、市場ごとに「成長スピード」は大きく違います。次の図が、半導体の各市場の規模と成長率(CAGR=年平均成長率)の地図です。

図3:市場規模 × 成長率(CAGR) バブルチャート

成長率だけ見るとAI半導体(33%)やSiC(25%)が花形です。ですが――ここが今日のいちばん大事なポイントですが――「市場が伸びること」と「その会社が儲かること」は、まったくの別物です。

結論を先に:工程の名前だけでは収益力を説明できない

連結営業利益率は「連結営業利益÷連結売上高」です。
DISCOの2026年3月期(同社表記FY2025)は、売上高436,889百万円、営業利益184,989百万円で、営業利益率42.3%でした。
これは同社連結全体の実績で、後工程市場全体の利益率ではありません。

比較で最初に揃えるべきなのは、数字の順位よりも、何を売っている会社なのかという定義です。

会社 主な機能・用途 比較で問うこと
レーザーテック EUVマスクの検査 微細化に伴い検査の難度と顧客価値がどう変わるか
ディスコ チップの切断・研削 加工精度、装置、消耗品が収益にどう寄与するか
アドバンテスト ウェハテストと最終テスト テスト時間・複雑性と設備需要の関係
タツモ 貼合・剥離など先端パッケージング装置 製品用途ごとの市場と顧客投資計画

レーザーテックは露光に使うマスクの検査であり、組立・封止という意味の後工程ではありません。
アドバンテストはウェハテストとパッケージ後の最終テストの双方に関わります。
したがって、これらをまとめて「後工程だから高収益」と説明するのは適切ではありません。
価格決定力、必要設備、需要の継続性を各社ごとに検討します。

旧版の12社ランキングは、11社について対象決算期と一次表の対応を固定できていないため掲載を取り下げました。
数値が誤りと確定したわけではありません。
工程分類と、確認できたDISCOの当期値を分けて示します。

この章の主要出典(2026年9月17日確認)

では、利益の差をどう説明すればよいでしょうか。
「市場が大きい・速い」ことと「儲かる」ことがズレるのはなぜか。
ここから先が、この記事の本題です。
利益が貯まる場所を決める「3つの条件」と、決算の読み方を、順に分解していきます。