感応度・シナリオ分析
目次
感応度・シナリオ分析
1. 定義と本質
**感応度分析(Sensitivity Analysis)**は、特定の前提値(WACC・g・売上成長率等)を変化させたときの企業価値の変動を測定する手法。
**シナリオ分析(Scenario Analysis)**は、複数の前提を組み合わせた整合的なケース(ベース/上振れ/下振れ)を構築する手法。
本質: 単一の DCF 価値(point estimate)は 疑似精度(spurious accuracy) に陥りがち。「価値はレンジで考える」ことが投資判断の前提。
FP&A視点での重要性:
- 中期計画策定時の感応度テーブル(売上 ±10% 時の利益への影響)
- 取締役会・投資委員会への提示資料(単一値ではなくレンジ)
- リスク評価(下振れ時に資本コストを下回らないか)
2. 計算式・データソース
一変数感応度
主要変数を 1 つだけ動かして価値変動を測定。棒グラフ(Tornado Chart) で可視化。
例: WACC ±1% 時の DCF 価値変動
| WACC | DCF 価値 | ベースとの差 |
|---|---|---|
| 6% | 1,200億 | +20% |
| 7% (ベース) | 1,000億 | 0% |
| 8% | 850億 | −15% |
二変数感応度
2 変数の組み合わせで マトリクステーブル を作成。
例: WACC × g の DCF 価値(億円)
| g \ WACC | 6% | 7% | 8% |
|---|---|---|---|
| 1% | 1,150 | 980 | 850 |
| 2% | 1,250 | 1,050 | 900 |
| 3% | 1,400 | 1,150 | 970 |
シナリオ分析
整合的な前提セットを 3-5 ケース構築。
| ケース | 売上成長率 | 営業利益率 | WACC | 確率 | DCF 価値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 強気 | 8% | 12% | 6% | 25% | 1,500億 |
| ベース | 5% | 10% | 7% | 50% | 1,000億 |
| 弱気 | 2% | 8% | 8% | 25% | 600億 |
| 期待値 | 1,025億 |
各ケースの確率には データ根拠(IMF予測、業界統計、消費者信頼感指数等)を必須化する。
3. 業界別の典型レンジ・落とし穴
業界別の感応度の高い変数
| 業界 | 最も価値感応度が高い変数 |
|---|---|
| SaaS | NRR / Churn / ARR 成長率 |
| 半導体 | 設備投資 / 在庫評価 / サイクル位置 |
| 製造業 | 売上成長率 / 為替 |
| 商社 | 資源価格 / 配当政策 |
| 医薬(先発) | パイプライン成功確率 / 特許切れ日 |
| 不動産 | キャップレート / 賃料下落率 |
| 建設 | 受注高成長率 / 利益率 |
| 小売 | 既存店売上 / 出店ペース |
落とし穴
- シナリオ間で前提が矛盾: 強気で売上+10% かつ WACC -1% は内部矛盾(成長期待は資本コストを上げる)
- 確率の根拠が「えいや」: 50/30/20 を慣習で決めると説得力ゼロ → IMF予測等の出典必須
- テールリスク無視: 99% シナリオに収まらない極端ケース(金融危機・パンデミック)が落ちる
- 複利効果の見落とし: 売上成長率 -2% を 10 年継続すると利益への影響は予想以上に大きい
- モンテカルロの過信: 数千試行でも前提の正規分布仮定が誤っていれば結果は無意味
4. 実例(既存業界レポートとリンク)
5. 自分への問い(理解度確認 3問)
- 感応度分析とシナリオ分析の違いを 3行で説明せよ。なぜ両方必要なのか?
- 自分が分析した銘柄について、最も価値感応度の高い変数を 1 つ特定し、±20% 動かした時の影響を試算せよ。
- 3シナリオの確率を 30/50/20 に設定する場合、その根拠はどこから引いてくるべきか? 具体的な指標名を 3 つ挙げよ。
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