医薬
目次
医薬(製薬)
1. 定義と本質
医薬は、新薬・後発医薬品の開発・製造・販売を行う業界。研究開発(R&D)が利益の源泉であり、特許による独占期間と薬価規制が事業構造を規定する。
業態の二分:
- 先発(先発専業 or 新薬中心): 武田・第一三共・アステラス・大塚等。R&D 比率15-20%、超高利益率薬で稼ぐ
- 後発(ジェネリック): 日医工・東和・サワイ等。R&D 比率3-5%、価格競争・量産勝負
- CDMO・CRO: 受託製造・受託開発(富士フイルム・Lonza 等)
FP&A視点の本質: 「特許切れ(パテントクリフ)」「パイプラインの NPV」「薬価改定」が決定要因。R&D は当期費用処理だが、本質は無形資産投資。
2. 計算式・データソース
主要 KPI
| KPI | 計算式 | 典型レンジ |
|---|---|---|
| R&D 比率 | R&D / 売上 | 先発15-20% / 後発3-5% |
| 営業利益率 | 営業利益 / 売上 | 先発20-30% / 後発10-15% |
| パイプライン本数 | 開示(フェーズ別) | 大手30-100本 |
| 主要薬の売上構成比 | トップ3製品の売上 / 総売上 | 先発40-60% |
| 特許残存年数(平均) | 主要薬の残存特許年数 | 5-15年 |
| 海外売上比率 | 海外売上 / 連結売上 | 先発50-80% / 後発10-30% |
パイプライン NPV(簡易)
パイプライン価値 = Σ (ピーク売上 × 営業利益率 × 特許期間 × 成功確率) / (1+WACC)^t
成功確率の業界基準:
- フェーズI: 8-12%
- フェーズII: 15-25%
- フェーズIII: 50-70%
- 申請: 80-90%
3. 業界別の典型レンジ・落とし穴
業態別の特徴
| 業態 | PER | EV/EBITDA | ROE | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 大手先発 | 15-25倍 | 10-15倍 | 8-15% | 20-30% |
| 中堅先発 | 20-40倍 | 12-20倍 | 5-12% | 15-25% |
| バイオ(赤字) | 評価困難 | NM | 赤字 | 赤字 |
| 後発 | 8-15倍 | 6-10倍 | 5-10% | 8-15% |
| CDMO | 20-35倍 | 12-18倍 | 10-15% | 15-25% |
落とし穴
- R&D 当期費用処理の歪み: 会計利益はR&D 投資が増えるほど減るが、企業価値は逆 → R&D 効率(売上 / 累計R&D)も見る
- 特許切れショック: 主要薬の特許切れで売上が 30-50% 蒸発 → 5 年先までパイプラインを見る
- 薬価改定の影響: 日本は2年に1度(最近毎年)薬価引下げ → 国内売上は構造的に減少
- 海外売上比率の重要性: 国内薬価規制を回避するには海外展開必須
- 臨床試験失敗リスク: フェーズIII失敗は数百億の R&D 損失 + 株価半減
- 後発の価格競争: 加算前提が崩れると採算性悪化 → 業界再編進行
- バイオの評価困難: 赤字でも将来性があれば高評価 → DCF / NPV / Real Option で評価
4. 実例(既存業界レポートとリンク)
- FP&Aカード共通スキーマ §6 経営の打ち手 — M&A・パイプライン補強
- FP&Aカード共通スキーマ §7 規制・産業政策 — 薬価制度・特許保護
- 関連: 感応度・シナリオ分析 — パイプライン成功確率の感応度
5. 自分への問い(理解度確認 3問)
- 製薬企業の R&D 比率 20% を「重い」と見るか「妥当」と見るか? その判断軸を 3 つ挙げよ。
- 主要薬の特許切れまで残り 3 年の企業を分析する場合、最も重視すべき指標は? 3 つの優先順位で。
- 後発医薬品の事業モデルが「装置産業」であると説明できるか? 固定費構造との関連で。
関連
- FP&Aカード共通スキーマ §1 §2 §6 §7
- 感応度・シナリオ分析 / DCF分析 / ターミナルバリュー