みずほリース
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- まず見る1. 事業概要
- 次に読むその他金融業 の業界ハブ
目次
- 1. 事業概要
- 業界の系統分解
- みずほリースの事業構成
- 主要取引先
- 競争優位性の比喩的説明
- みずほリースの固有事象・資本関係の詳細分析
- 業界のビジネスモデルと着目点
- 2. バリュエーション分析
- 時価総額・株価の基準
- 標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移(百万円)
- 広義 NCAV 計算 — 5期推移(百万円)
- CN-PER(キャッシュニュートラル PER)
- EV/EBITDA 分析(参考・リース業特殊)
- EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別・百万円→億円)
- 成長率モデル適正 PER(参考)
- DCF 前提入力枠(空欄許容)
- バリュエーション乖離コメント
- 3. 財務分析
- PL — 5期 + 来期予想(百万円)
- BS — 5期(百万円)
- BS 詳細主要科目(百万円) — 5期
- CF — 5期(百万円)
- 減価償却費明細(リース・割賦セグメント・百万円) — 5期
- 受注高・受注残高
- 運転資本分析(CCC)
- 配当推移 — 5期 + 予想
- 経営者予想精度(直近通期)
- 健全性チェック(業態版・その他金融業)
- 4. 同業他社比較
- 競合選定基準
- 最新期比較テーブル
- 競合 3期推移(売上・営業利益率)
- 運転資本効率(CCC)— 競合比較
- 5. リスク評価
- リスクマトリクステーブル
- リスク因果関係の mermaid 図
- 最大リスクの深掘り
- バリュートラップリスクの深掘り
- 6. 投資判断
- バリュエーション乖離コメントの補強
- バリュエーション手法別の目標株価
- シナリオ別の詳細根拠
- 推奨アクションの構造化
- カタリスト・タイムライン
- 7. 学習コーナー
- 📚 着眼点 1: なぜリース会社の「営業 CF マイナス」は危険信号ではないのか
- 📚 着眼点 2: 自己資本比率10.3%を「危険」と読んではいけない理由
- 📚 着眼点 3: 「2大株主+A種種類株式」という資本構造の読み方
- 📚 着眼点 4: ファイナンスセグメントの「営業利益率39.1%」が示す収益の二層構造
- 📚 着眼点 5: みずほリースの指標ポジショニング(相場観テーブル)
- 🤔 自分への問い
- 参考情報
- ガバナンス情報テーブル
- 大株主構成テーブル(大量保有報告書ベース・5%以上)
- 社外取締役の視点
- 免責事項
- データソースの時点差テーブル
- 出典一覧
みずほリース(8425)銘柄分析レポート
みずほリースはみずほFG(25.96%)と丸紅(20.0%)を2大株主とする総合リース大手(売上 9,216 億円・FY2026/3)。
現値時価総額 3,508 億円 は実績 PER 7.4倍・PBR 0.82倍 と低評価圏で、配当利回り 4.07% は高水準。
リース業は有利子負債 3.5 兆円を事業基盤とする高レバレッジ業態(自己資本比率 10.3%)のため、ネットキャッシュ系2軸(標準 NC 比率 −965%・広義 NCAV 比率 −220%)は構造的に大幅マイナスとなり投資判断の主軸にはしない。
EV/EBITDA はリース資産の減価特性上、製造業と同列比較不可。
| 指標 | 値 | 評価 |
|---|---|---|
| 時価総額(現値) | 3,508 億円 | 中型 |
| 実績 PER(現値) | 7.4倍 | 割安 |
| EV/EBITDA(参考) | 約58倍 | リース業は非適用的 |
| 配当利回り | 4.07% | 高利回り |
| 標準 NC 比率 | −965% | 高レバレッジで大幅マイナス(非適合) |
| 広義 NCAV 比率 | −220% | 同上 |
| 健全性スコア | N/A(金融業) | 業態版参照 |
注: 時価総額・株価・倍率はすべて market_data_as_of=2026-06-24 の現値(株価1,252円・自己株控除後発行済株式280,186,810株)基準。
EDINET get_company.marketCap(3,940億・期末固定値)は約12%高く、バリュエーションには使用していない。
1. 事業概要
業界の系統分解
日本の総合リース業界は、出自によって大きく3系統に分かれる。
第一が「独立系」(オリックス=1964年設立の業界首位、リース・投資・生命保険まで多角化)。
第二が「銀行・金融グループ系」(三井住友ファイナンス&リース=SMBCグループ、三菱HCキャピタル=三菱UFJリースと日立キャピタルの2021年統合体、そしてみずほリース=みずほFG系)。
第三が「商社・事業会社ハイブリッド系」(東京センチュリー=伊藤忠系の商社金融融合型、2009年合併で成立)。
銀行系の強みは親銀行の巨大な顧客基盤への低コストアクセスと資金調達力であり、弱みは商社的な事業目利き力・海外ネットワークの相対的な薄さである。
商社系の強みはトレーディング由来の事業投資力と海外拠点網だが、資金調達基盤では銀行系に劣る。
みずほリースが特異なのは、2024年6月の丸紅との資本業務提携によって「銀行系(みずほFG)」と「商社系(丸紅)」の両系統の強みを併せ持つハイブリッドへと自らを再定義した点にある。
出典: 就職活動支援 unistyle リース業界研究 / FISCO Research Memo
みずほリースの事業構成
| セグメント | 売上高(百万円) | 構成比 | 営業利益(百万円) | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| リース・割賦 | 863,468 | 93.7% | 26,851 | 3.1% |
| ファイナンス | 43,492 | 4.7% | 17,010 | 39.1% |
| その他 | 14,632 | 1.6% | 1,933 | 13.2% |
| 合計 | 921,592 | 100.0% | 45,794※ | — |
注: セグメント営業利益合計は調整前。
連結営業利益 44,674 とは全社調整差あり。
リース・割賦が売上の9割超を占めるが営業利益率は3.1%と薄く、ファイナンス(営利率39.1%)が利益の柱。
両セグメントの利益率格差が収益構造の特徴。
上記のセグメント別売上構成(FY2026/3)の通り、リース・割賦が売上の93.7%(8,635 億円)を占めるが営業利益率は3.1%と薄く、ファイナンス(売上構成比4.7%だが営業利益率39.1%)が利益の柱という二層構造である。
会社の事業区分(有報)では「リース・割賦」(不動産・産業/工作機械・情報関連機器・輸送用機器・環境/エネルギー設備のリース及び割賦)、「ファイナンス」(不動産・船舶・航空機・環境/エネルギー分野への貸付・出資・ファクタリング)、「その他」(中古物件売買・発電事業)の3区分。
事業分野別(会社 IR の管理区分・FY2026/3 売上総利益ベース)では、国内リース事業が382 億円(前期比+30 億円)、不動産・環境エネルギー事業が305 億円(うち不動産289 億円・環境エネルギー16 億円)、海外・航空機事業が175 億円(−10 億円)という構成。
市場分野別の成長動向は以下の通り。
| 事業分野 | 成長性 | コメント(FY2026/3) |
|---|---|---|
| 国内リース | ○ 堅調 | 設備投資底堅く売上総利益+30 億円。モビリティ・レンタル強化(ピー・シー・エス子会社化) |
| 不動産 | ◎ 好調 | 売上総利益+15 億円。自社ブランド MipLa(オフィス)・Malien(物流)展開 |
| 航空機 | ◎ 急伸 | 丸紅共同出資の持分法 Aircastle 通じ業績大きく伸長 |
| ファイナンス | ○ 高採算 | 営業利益率39.1%。海外再エネ・蓄電池への投資 |
| 環境エネルギー | △ 横ばい | 売上総利益−2 億円。再エネ容量1,185MW・武雄蓄電所商業運転開始 |
注: EDINET get_financials の最新通期は FY2026/3(financials_as_of: 2026-03-31)。
本セクションの事業分野別売上総利益は会社 IR(2026年5月14日 決算 IR 資料)の管理区分であり、財務テーブル(PL/BS/CF)の EDINET セグメント区分とは集計単位が異なる。
出典: FISCO Research Memo(5)
主要取引先
リース業の顧客は特定の大口に依存せず広く分散するのが特徴で、みずほリースの場合はみずほ銀行の取引先(中堅・大企業)が中核的な営業母集団となる。
営業貸付金の業種別残高(FY2026/3・MD&A)では不動産業が35.6%と最大、運輸・通信業20.2%、金融・保険業12.5%が続く。
航空機リースは丸紅との共同出資 Aircastle Limited(持分法)を通じて航空会社向けに供与。
取引の特徴は、リース取引が平均5年程度(営業貸付金の1件当たり平均期間5.20年)の長期にわたり信用を供与する「ストック型」である点で、契約残高(営業資産残高3.4兆円)が将来収益の基盤として積み上がる。
競争優位性の比喩的説明
みずほリースの参入障壁は「2つの実家を持つ子会社」の構造にたとえられる。
普通のリース会社は親が1つ(銀行か商社のどちらか)だが、みずほリースはみずほFG(資金調達と顧客紹介の実家)と丸紅(海外案件と事業投資の目利きの実家)という性格の異なる2つの実家を持つ。
新規参入者が同等の調達コスト(FY2026/3 平均調達金利1.34%)と海外/航空機の案件パイプラインを同時にゼロから築くのは事実上不可能であり、これが低自己資本比率(10.3%)でも3.4兆円の営業資産を回せる信用力の源泉となっている。
みずほリースの固有事象・資本関係の詳細分析
2024年6月、丸紅がみずほリース株式の20.0%を取得して事実上の筆頭株主級となり、みずほFG(グループ合算25.96%)と並ぶ「2大株主体制」が成立した。
さらに2026年5月発表の中期経営計画2028に合わせ、(1) みずほFGを割当先とする議決権のない A種種類株式 32,000,000株の第三者割当増資(2026年7月1日払込予定)による資本増強、(2) みずほFG保有の普通株式8.7%相当を日鉄興和不動産へ譲渡し議決権比率を最適化、という資本再編が進む。
戦略的意義は、みずほFGの議決権を抑えつつ自己資本を厚くし(中計2028で自己資本比率12%程度を目標)、不動産事業の協業パートナー(日鉄興和不動産)を株主に取り込む点にある。
「親の支配を緩めながら、事業パートナーを株主の輪に招き入れる」資本政策であり、低 PBR(0.82倍)脱却に向けた自己資本充実の布石と読める。
出典: 日本M&Aセンター ニュース / 財経新聞 中計2028
業界のビジネスモデルと着目点
リース業の収益構造は「低利で資金調達し、利鞘を乗せて設備を貸す」スプレッドビジネスと、「リース満了物件の中古売却益・事業投資のキャピタルゲイン」の二本柱。
成長ドライバーは営業資産残高の積み増しであり、そのため営業 CF は構造的にマイナス(資産を買い続ける)、財務 CF で借入調達して賄う。
みずほリースが特に強みを発揮しているのは航空機(Aircastle)と不動産・再エネへのファイナンス/投資で、これらは利鞘ビジネスより高採算(ファイナンスセグメント営業利益率39.1%)だが、資産価値変動リスク(航空機市況・不動産市況)も負う。
中計2028では純利益600億円(FY2026/3 実績476億円から+26%)を掲げ、インオーガニック投資(M&A・アライアンス)と非金融領域拡大を成長エンジンと位置づけている。
出典: みずほリース IR
2. バリュエーション分析
時価総額・株価の基準
バリュエーション指標の時価総額・株価は現値マーケットデータ(market_data_as_of=2026-06-24)を採用。
EDINET get_company.marketCap(決算期末固定値)は株価変動でバリュエーションが破綻するため使用しない。
- 現在株価: 1,252 円
- 現値時価総額: 350,794 百万円(≈3,508 億円)= 1,252 × 280,186,810
- 発行済株式数(自己株控除後): 280,186,810 株
内部整合性チェック(±5% 以内):
- 株価 1,252 × 280,186,810 = 350,794 百万円 ≒ 現値時価総額(一致)✅
- 実績 PER 7.37倍 × EPS 169.98 = 1,253 円 ≒ 株価 1,252 円(乖離 +0.1%)✅
- PBR 0.819倍 × BPS 1,527.83 = 1,251 円 ≒ 株価 1,252 円(乖離 −0.1%)✅
来期(FY2027/3)会社予想は本データセットに含まれず(Q4短信の翌期予想未取得)。
疑似精度を避けるため、予想ベースの倍率は作成せず、直近実績(FY2026/3)ベースの実績 PER を主指標とする。
標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移(百万円)
標準 NC = 現預金 + 短期有価証券 − 有利子負債。
短期有価証券はみずほリースの財務に計上なし(—)。
有利子負債は短期借入金 + 1年内返済長期借入金 + 長期借入金 + 社債 + CP + 1年内償還社債(FY2026/3 は MD&A 開示の有利子負債合計 3,474,058 を採用)。
投資有価証券は含めない。
| 項目 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 |
|---|---|---|---|---|---|
| 現預金 | 24,502 | 33,453 | 56,194 | 67,999 | 88,801 |
| 短期有価証券 | — | — | — | — | — |
| 有利子負債(合計) | 2,290,290 | 2,411,746 | 2,744,266 | 3,178,107 | 3,474,058 |
| 標準 NC | −2,265,788 | −2,378,293 | −2,688,072 | −3,110,108 | −3,385,257 |
| 標準 NC 比率(÷現値時価総額3,508億) | — | — | — | — | −965% |
注: FY2022〜FY2025 の有利子負債は科目積み上げ(短期借入+1年内長期借入+長期借入+社債+CP+1年内社債)。
リース業は有利子負債で資産を積み増す事業モデルのため標準 NC は構造的に大幅マイナス。
標準 NC 比率は現値時価総額(FY2026/3 のみ算出)に対する比率。
広義 NCAV 計算 — 5期推移(百万円)
広義 NCAV = 流動資産 + 投資有価証券 × 0.7 − 負債合計。
| 項目 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 |
|---|---|---|---|---|---|
| 流動資産 | 2,166,681 | 2,279,668 | 2,378,063 | 2,542,515 | 2,602,449 |
| 投資有価証券 × 0.7 | 142,558 | 168,433 | 214,466 | 264,050 | 346,679 |
| 負債合計 | 2,518,007 | 2,678,800 | 3,033,536 | 3,496,566 | 3,720,787 |
| 広義 NCAV | −208,768 | −230,699 | −441,007 | −690,001 | −771,659 |
| 広義 NCAV 比率(÷現値時価総額) | — | — | — | — | −220% |
CN-PER(キャッシュニュートラル PER)
標準 NC が大幅マイナスのため CN-PER = 実績PER ×(1 − NC比率)は NC 比率が負で実績 PER より大きくなる。形式上算出するが、下記の業態不適合により投資判断には用いない。
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 実績 PER(現値) | 7.4 倍 |
| 標準 NC 比率(標準NC ÷ 現値時価総額) | −965% |
| CN-PER(標準 NC ベース)= 7.4 ×(1−(−9.65)) | 約 78.8 倍(形式値・非適合) |
| 参考: CN-PER(広義 NCAV ベース)= 7.4 ×(1−(−2.20)) | 約 23.7 倍(形式値・非適合) |
⚠️ NC/NCAV 系2軸バリュエーションは本来「ネットキャッシュ豊富な小型株」向けの指標であり、レバレッジを事業モデルとするリース業(自己資本比率 10.3%・有利子負債 3.5 兆円)には構造的に不適合で大幅マイナスとなる。
形式上は算出したが、本銘柄では投資判断の主軸にしない(実績 PER・PBR・配当利回りを主軸とする)。
EV/EBITDA 分析(参考・リース業特殊)
EV = 現値時価総額 + 純有利子負債(有利子負債3,474,058 − 現預金88,801 = 3,385,257)。
EBITDA = 営業利益 + 減価償却費。
リース業はオペレーティングリース資産の減価償却が売上原価に内包され、減価償却の捕捉範囲が製造業と異なるため、EV/EBITDA は製造業と同列比較できない。
各社とも同様に高 EV となる。
| 指標 | みずほリース | 三菱HCキャピタル | 東京センチュリー |
|---|---|---|---|
| 時価総額(億円) | 3,508(現値) | 14,784(期末参考) | 9,911(期末参考) |
| 純有利子負債(億円) | 33,853 | 約93,140 | 約56,997 |
| EV(億円) | 約37,361 | 約107,924 | 約66,908 |
| EBITDA(営利+減価・億円) | 約643 | (減価明細範囲差で省略) | (同左) |
| EV/EBITDA | 約58倍(参考値) | 比較不可(基準差) | 比較不可(基準差) |
注: 競合は時価総額が期末 marketCap(参考)のため厳密な現値比較ではない。リース業の EV/EBITDA は指標としての解釈に限界があり、本レポートでは PER・PBR を主軸とする。
EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別・百万円→億円)
| NC 定義 | NC(億円) | EV(億円) | EV/EBITDA |
|---|---|---|---|
| 標準 NC(現預金 − 有利子負債) | −33,853 | 37,361 | 約58倍 |
| 広義 NCAV(流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計) | −7,717 | 11,224 | 約17倍 |
注: いずれもリース業の業態特性により参考値。
成長率モデル適正 PER(参考)
理論 PER = 1 /(r − g)。r = 株主資本コスト(仮定 8%)。
| 成長率仮定 | 理論 PER | 備考 |
|---|---|---|
| g = 0%(ゼロ成長) | 12.5 倍 | PER 下限の目安 |
| g = 3%(インフレ並み) | 20.0 倍 | |
| g = 5%(中程度成長) | 33.3 倍 | |
| みずほリース 過去5期 純利益 CAGR | (実績) | FY2022→FY2026 純利益 14,902→47,609、年率約33.7%。ただし FY2022 が anomaly low(outlier)のため参考扱い |
注: 実績 PER 7.4倍 はゼロ成長理論 PER(12.5倍)をも下回る低評価。
DCF 前提入力枠(空欄許容)
⚠️ 前提値の自信が低いため空欄は「要調査」と明記。⚠️ リース業は営業 CF が構造的にマイナス(資産積み増しのため)で、標準的な FCF ベース DCF は不適合。参考枠として残す。
推定値の算出式(参考):
- 株主資本コスト Ke = 無リスク金利 + β × 市場リスクプレミアム
- 負債コスト(税引後)= 支払利息 / 平均有利子負債 ×(1 − 法人税率)。FY2026/3 支払利息 6,980。
- WACC = Ke × E/(E+D) + Kd(税引後) × D/(E+D)
| 項目 | 値 | 出典/備考 |
|---|---|---|
| 無リスク金利(%) | 要調査 | 日本10年国債利回り(1.0-1.5%レンジ想定) |
| β | 要調査 | get_analysis または類似企業 |
| 市場リスクプレミアム(%) | 5-6 | 日本市場慣行値 |
| 株主資本コスト Ke(%) | 上記から算出 | Ke = Rf + β × ERP |
| 負債コスト Kd 税引後(%) | 要調査 | 支払利息6,980/有利子負債3,474,058 ≈ 0.20% ×(1−0.30) ≈ 0.14%(簿価ベース・調達金利1.34%が実態) |
| 自己資本比率(時価ベース) | 算出 | E=3,508億 / (E+D=3,508+33,741億) |
| WACC(%) | 上記から算出 | |
| 永続成長率 g(%) | 要調査 | |
| 法人税率(%) | 30 | 日本標準実効税率 |
| 明示予測期間(年) | 5 |
5期 FCF 入力枠(リース業は営業 CF マイナスのため標準 FCF 不適合):
| 期 | t+1 | t+2 | t+3 | t+4 | t+5 |
|---|---|---|---|---|---|
| FCF(百万円) | 要調査 | 要調査 | 要調査 | 要調査 | 要調査 |
計算式: 企業価値 = Σ FCF_t/(1+WACC)^t + TV/(1+WACC)^n、TV = FCF_{n+1}/(WACC−g)
参照: DCF分析 / WACC算出 / ターミナルバリュー / 感応度・シナリオ分析
バリュエーション乖離コメント
- NC 考慮 EV/EBITDA 法: EV/EBITDA 約58倍(リース業の減価特性で過大・指標限界あり)。
- CN-PER 法: 標準 NC が大幅マイナスのため形式値78.8倍と PER を押し上げ(NC系不適合)。
- 成長率モデル適正 PER: ゼロ成長理論12.5倍に対し実績 PER 7.4倍 は低評価。
事実の並置: NC/NCAV 系2軸は高レバレッジのリース業に構造的不適合で大幅マイナス。
EV/EBITDA はリース資産の減価特性で製造業と同列比較不可。
一方、実績 PER 7.4倍・PBR 0.82倍 は理論下限を下回る低評価で、配当利回り 4.07% は高水準。
低 PBR の背景(自己資本比率の低さ・ROE 低下傾向)の解釈は投資判断セクションで深掘り。
3. 財務分析
PL — 5期 + 来期予想(百万円)
| 項目 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 実績 | FY2027/3 予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 554,809 | 529,700 | 656,127 | 695,423 | 921,592 | 会社予想未開示 |
| 営業利益 | 17,893 | 31,756 | 39,511 | 48,966 | 44,674 | 会社予想未開示 |
| 経常利益 | 20,064 | 40,110 | 50,897 | 66,219 | 64,969 | 会社予想未開示 |
| 当期純利益 | 14,902 | 28,398 | 35,220 | 42,038 | 47,609 | 会社予想未開示 |
| EPS(円) | 308.07※ | 586.75※ | 145.07 | 154.54 | 169.98 | — |
| 営業利益率 | 3.2% | 6.0% | 6.0% | 7.0% | 4.8% | — |
| 前年比(売上) | — | −4.5% | +23.9% | +6.0% | +32.5% | — |
| 前年比(営利) | — | +77.5% | +24.4% | +23.9% | −8.8% | — |
注: ※FY2022/3・FY2023/3 の EPS は株式分割(FY2024/3 期中・分割比率約5.77倍)前の株数ベース。
FY2024/3 以降は分割後株数。
FY2026/3 は売上+32.5%(ファイナンスセグメントの契約実行高+26.6%・航空機/不動産伸長)だが、人件費・物件費増で営業利益は−8.8%。
純利益は政策保有株式売却益で+13.3%。
来期予想は本データに含まれず(Q4短信翌期予想未取得)。
BS — 5期(百万円)
| 項目 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 |
|---|---|---|---|---|---|
| 総資産 | 2,748,810 | 2,954,634 | 3,363,336 | 3,898,061 | 4,175,256 |
| 流動資産 | 2,166,681 | 2,279,668 | 2,378,063 | 2,542,515 | 2,602,449 |
| 固定資産 | 582,128 | 674,965 | 985,272 | 1,355,545 | 1,572,807 |
| 負債合計 | 2,518,007 | 2,678,800 | 3,033,536 | 3,496,566 | 3,720,787 |
| 純資産 | 230,803 | 275,834 | 329,800 | 401,495 | 454,469 |
| 自己資本比率 | 8.0% | 8.9% | 9.2% | 9.8% | 10.3% |
| BPS(円) | 4,536.14※ | 5,427.77※ | 1,270.62 | 1,367.89 | 1,527.83 |
注: 自己資本比率は10%台で漸増もリース業として低水準。※BPS の FY2022/3・FY2023/3 は分割前株数ベース。
BS 詳細主要科目(百万円) — 5期
| 項目 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 |
|---|---|---|---|---|---|
| 投資有価証券 | 203,654 | 240,618 | 306,380 | 377,214 | 495,255 |
| 現預金 | 24,502 | 33,453 | 56,194 | 67,999 | 88,801 |
| 短期有価証券 | — | — | — | — | — |
| 有利子負債(合計) | 2,290,290 | 2,411,746 | 2,744,266 | 3,178,107 | 3,474,058 |
| 売上債権 | 549 | 751 | 1,235 | 2,720 | 9,532 |
| 棚卸資産 | —(リース業のため概念なし) | — | — | — | — |
| 仕入債務 | 34,698 | 24,512 | 27,186 | 30,939 | 35,927 |
CF — 5期(百万円)
| 項目 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業 CF | −68,495 | −117,816 | −192,205 | −393,324 | −18,413 |
| 投資 CF | −27,712 | −17,111 | −51,969 | −53,184 | −106,661 |
| 財務 CF | 99,810 | 143,518 | 266,524 | 457,132 | 146,366 |
| FCF(営業+投資) | −96,207 | −134,927 | −244,174 | −446,508 | −125,074 |
注: リース業は営業資産(リース・割賦・ファイナンス債権)を積み増すため営業 CF は構造的にマイナス。
財務 CF(借入・社債・CP)で資金調達して賄うのがビジネスモデル。
FCF マイナスは事業拡大の裏返しで、製造業の「資金繰り懸念」とは意味が異なる。
減価償却費明細(リース・割賦セグメント・百万円) — 5期
| FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 |
|---|---|---|---|---|
| 14,574 | 14,580 | 15,883 | 18,519 | 19,638 |
注: get_segments のリース・割賦セグメント depreciation。オペレーティングリース資産の減価が中心。
受注高・受注残高
該当なし(非受注産業=リース・金融業)。
なお参考として、FY2026/3 の契約実行高合計は1,984,727百万円(前年比+10.5%)、営業資産残高は3,399,877百万円(前期末比+118,020)。
運転資本分析(CCC)
リース業のため標準的な CCC(売上債権回転 + 棚卸資産回転 − 仕入債務回転)は非適用。
棚卸資産の概念がなく、主要営業資産はリース投資資産・割賦債権・営業貸付金であり、製造業の運転資本サイクルとは構造が異なる。
無理に算出しない。
参考: FY2026/3 営業貸付金残高 727,132百万円(平均約定金利3.63%・1件当たり平均期間5.20年・MD&A 開示)。
配当推移 — 5期 + 予想
| 項目 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 実績 | FY2027/3 予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1株配当(円) | 110.0※ | 147.0※ | 192.0※ | 47.0 | 51.0 | 会社予想未開示 |
| 配当利回り(現値1,252円基準は直近のみ) | — | — | — | — | 4.07% | — |
| 配当性向 | 約36% | 約25% | — | 約30% | 約30% | — |
注: ※株式分割前株数ベースの DPS(FY2024/3 期中分割。分割後 FY2025/3=47.0、FY2026/3=51.0 で増配基調)。
配当性向は約30%で安定。
配当利回り 4.07%(51 ÷ 1,252)は高水準。
経営者予想精度(直近通期)
| 期 | 予想営利 | 実績営利 | 乖離率 | 予想純利 | 実績純利 | 乖離率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| FY2026/3(Q3短信時点 通期見通し) | 45,000 | 44,674 | −0.7% | 45,000 | 47,609 | +5.8% |
注: FY2026/3 Q3短信(2026-02-05)の当期通期見通しと実績の比較。
営業利益はほぼ着地、純利益は政策保有株式売却益で上振れ。
それ以前の予想 vs 実績はデータセットに含まれず(データなし)。
健全性チェック(業態版・その他金融業)
⚠️ みずほリースは「その他金融業」であり、事業会社基準(自己資本比率 > 40%・有利子負債 < 現預金・流動比率 > 150% 等)は高レバレッジ構造上 構造的に成立しないため一切適用しない。
frontmatter / サマリーの healthScore は N/A。
EDINET の credit score 35(rating D)も事業会社向けスコアのため参考外。
以下を業態版の健全性指標とする。
| 項目(業態版) | 値 | 判定 |
|---|---|---|
| ROE(FY2026/3) | 11.7% | ✅ 東証プライム基準(8%)クリア |
| 自己資本比率(会計上) | 10.3% | ⚠️ リース業として漸増も低水準(業態内では中位) |
| 純資産トレンド | 5期連続増加(230,803→454,469) | ✅ 内部留保着実に蓄積 |
| 営業資産残高 | 3,399,877百万(+118,020) | ✅ 成長継続 |
| 配当連続性 | 5期連続支払・分割後は増配基調 | ✅ |
| 配当性向 | 約30% | ✅ 適正水準 |
| 資金調達の多様化 | 間接2.34兆 + 直接1.14兆(社債/CP)+ コミットメントライン1.35兆(未実行0.65兆) | ✅ 流動性確保 |
| 中計2025 財務目標 ROA | 実績1.6% vs 目標1.6%以上 | ✅ 達成 |
| 中計2025 財務目標 ROE | 実績11.7% vs 目標12%以上 | ⚠️ 僅差未達 |
注: 事業会社基準は金融業に一切適用しない。リース業はレバレッジを事業モデルとするため、自己資本比率の絶対水準ではなく ROE・資産健全性・資金調達多様性・配当連続性で健全性を評価する。
4. 同業他社比較
競合選定基準
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | その他金融業(総合リース・大手リース会社) |
| 規模レンジ | みずほリース売上0.9兆に対し、三菱HCキャピタル2.2兆・東京センチュリー1.5兆は上位、オリックス3.3兆は最大手 |
| 選定理由 | 三菱HC・東京センチュリーは事業構成(総合リース+ファイナンス+航空機/不動産)が近く規模も比較可能。オリックスは US GAAP・営業利益 null・規模過大で定量比較に不適のため除外(名前のみ言及) |
最新期比較テーブル
| 指標 | みずほリース | 三菱HCキャピタル | 東京センチュリー |
|---|---|---|---|
| 直近期 | FY2026/3 | FY2026/3(短信実績) | FY2026/3 |
| 時価総額(億円) | 3,508(現値2026-06-24) | 14,784(期末参考) | 9,911(期末参考) |
| 売上高(億円) | 9,216 | 22,154 | 14,577 |
| 営業利益率 | 4.8% | 10.9%(240,428/2,215,384) | 10.2% |
| 自己資本比率 | 10.3% | 15.3%(FY2025/3) | 15.5% |
| PER | 7.4倍(現値実績) | 10.7倍(参考) | 8.8倍 |
| PBR | 0.82倍 | 0.81倍(FY2025/3参考) | 0.88倍 |
| ROE | 11.7% | 7.7%(FY2025/3)/ 約8%(FY2026/3) | 9.2%(official 10.4%) |
| 配当利回り | 4.07% | 約4.0%(参考) | 約4.0%(参考) |
| EV/EBITDA | 約58倍(参考・業態特殊) | 比較不可(基準差) | 比較不可(基準差) |
| 標準 NC 比率 | −965% | 大幅マイナス | 大幅マイナス |
| 営業 CF(億円) | −184 | −2,969(FY2025/3) | −769 |
| FCF(億円) | −1,251 | (マイナス) | (マイナス) |
注: 競合の時価総額・PER・PBR・自己資本比率の一部は EDINET 期末値(参考)で、みずほリースの現値とは取得時点が異なる。
みずほリースは規模では大手リース中位だが、ROE 11.7% は三菱HC・東京センチュリーを上回り、PER・PBR は同水準の低評価圏。
営業利益率 4.8% は両社(10%超)を大きく下回る(オペレーティングリース比率の高さ・利益率の薄いリース・割賦が9割を占める構成差)。
競合 3期推移(売上・営業利益率)
| 企業 | 3期前 売上(億円) | 2期前 売上 | 直近 売上 | 3期前 営利率 | 2期前 営利率 | 直近 営利率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| みずほリース | 6,561(FY24/3) | 6,954(FY25/3) | 9,216(FY26/3) | 6.0% | 7.0% | 4.8% |
| 三菱HCキャピタル | 19,506(FY24/3) | 20,908(FY25/3) | 22,154(FY26/3) | 7.5% | 9.0% | 10.9% |
| 東京センチュリー | 13,461(FY24/3) | 13,686(FY25/3) | 14,577(FY26/3) | 7.7% | 8.6% | 10.2% |
注: 三菱HC・東京センチュリーが営業利益率を着実に改善(7%台→10%台)する一方、みずほリースは FY2026/3 に4.8%へ低下。
売上成長率(+32.5%)は3社中最も高いが、利益率では見劣りする。
運転資本効率(CCC)— 競合比較
リース業のため標準 CCC(製造業向け指標)は3社とも非適用。棚卸資産の概念がなく、主要営業資産はリース投資資産・営業貸付金。比較省略。
5. リスク評価
リスクマトリクステーブル
| リスク要因 | 影響度 | 発生可能性 | 具体的影響シナリオ | 対応状況 |
|---|---|---|---|---|
| 金利上昇(資金調達コスト増) | 高 | 高 | 有利子負債3.5兆円・平均調達金利1.34%。日銀利上げで調達金利が上昇しリース料への転嫁が遅れると金利収支が圧迫。FY2026/3 は資金原価上昇が売上総利益を押し下げ | ALM(資産負債統合管理)でマッチング比率を制御・デリバティブヘッジ |
| 信用リスク(貸倒) | 高 | 中 | 平均5年の長期与信。景気後退で顧客倒産が増えると信用コスト急増。FY2026/3 も人件費・物件費に加え信用コスト増が営業減益要因 | 厳格な与信審査・定期モニタリング・物件転用 |
| アセットリスク(航空機・不動産市況) | 高 | 中 | 航空機(Aircastle)・不動産・再エネへの投融資拡大に伴い、資産価値が著しく下落すると減損。FY2026/3 固定資産1.57兆円へ拡大 | 取引先信用力・将来収支の社内管理体制 |
| 大株主の資本政策(みずほFG・丸紅) | 中 | 中 | 25.96%+20.0%の2大株主が方針転換すれば資本政策・経営自由度に影響。A種種類株式発行・株式譲渡で構造変化中 | 議決権比率の最適化を会社主導で実施 |
| 株主還元の見劣り(バリュートラップ) | 中 | 中 | PBR 0.82倍・PER 7.4倍の低評価が継続。ROE 11.7% は中計目標12%に僅差未達。自己資本比率の低さが PBR を抑制 | 中計2028で自己資本比率12%・配当性向30%台前半を維持 |
| 流動性リスク(調達途絶) | 高 | 低 | 金融市場混乱で社債/CP/借入が困難化すると3.5兆円の資産を支えられない | コミットメントライン1.35兆円(未実行0.65兆円)確保 |
リスク因果関係の mermaid 図
flowchart TD
A[日銀利上げ・金利上昇] --> B[調達金利1.34%超へ上昇]
B --> C[金利収支の圧迫]
M[景気後退] --> D[顧客倒産・信用コスト増]
M --> E[航空機・不動産市況悪化]
E --> F[アセット減損リスク]
C --> G[営業利益率4.8%の一段低下]
D --> G
F --> G
G --> H[ROE低下・中計600億未達]
H --> I[PBR0.82倍の割安放置継続]
J[ALM・デリバティブヘッジ] -.緩和.-> C
K[厳格与信・モニタリング] -.緩和.-> D
L[自己資本比率12%目標・資本増強] -.緩和.-> I
最大リスクの深掘り
最大の定性リスクは「金利上昇局面でのスプレッド縮小」である。
みずほリースは有利子負債3.5兆円を平均調達金利1.34%で回し、これに利鞘を乗せて稼ぐ。
日銀の利上げが続くと、(1) 短期調達(CP 5,493 億円・短期借入7,670 億円)の金利が即座に上がる一方、固定金利のリース債権(平均5年)への転嫁は契約更改まで遅れる、(2) FY2026/3 は実際に「資金原価が上昇」して売上総利益の伸びを鈍らせ、営業利益が前期比−8.8% となった。
シナリオA(緩やかな利上げ)ではALMヘッジで吸収可能だが、シナリオB(急激な利上げ+景気後退の同時進行)では金利収支圧迫と信用コスト増が重なり、営業利益率4.8%がさらに低下してROEが中計目標(11%以上)を割り込む恐れがある。
バリュートラップリスクの深掘り
第二のリスクは「低 PBR の長期放置(バリュートラップ)」である。
みずほリースは PBR 0.82倍・PER 7.4倍と理論下限(ゼロ成長 PER 12.5倍)を下回る評価に甘んじている。
背景は自己資本比率の低さ(10.3%)とROEの低下傾向(FY2025/3 12.2%→FY2026/3 11.7%・中計目標12%に僅差未達)であり、市場は「資本効率が改善しなければ簿価評価は正当化されない」と見ている。
みずほFG・丸紅という安定株主が合計46% を握るため、アクティビストが資本効率改善を迫る余地は小さく、カタリストは会社自身の資本政策(A種種類株式による増資・自己資本比率12%目標・配当性向30%台前半維持)に依存する。
東証の「資本コスト・株価を意識した経営」要請が後押しとなるかが焦点だが、安定株主比率の高さゆえに改善ペースが緩慢なら割安が長期化しうる。
6. 投資判断
バリュエーション乖離コメントの補強
バリュエーション乖離コメントは「NC/NCAV 系2軸は高レバレッジのリース業に構造的不適合で大幅マイナス。EV/EBITDA はリース資産の減価特性で製造業と同列比較不可。一方、実績 PER 7.4倍・PBR 0.82倍 は理論下限を下回る低評価で、配当利回り 4.07% は高水準」というものだった。
これを定性面から補強する。
低 PBR が放置されている理由は、(1) 自己資本比率10.3%という業態内でも低めの資本水準、(2) ROE が FY2026/3 に低下(12.2%→11.7%)し中計目標12%に届かなかったこと、(3) みずほFG・丸紅で合計46% という安定株主構造ゆえアクティビストによる資本効率改善圧力が働きにくいこと——にある。
成長率前提については、中計2028の純利益600億円(FY2026/3 比+26%・年率約8%)は、航空機/不動産/ファイナンスの高採算分野とインオーガニック投資を前提としており、過去の成長実績(売上 CAGR は二桁)と整合的だが、リース・割賦本業の薄利(営業利益率3.1%)が重しとなる。
総合すると、この乖離は「バリュートラップ寄りの割安」と判断する。
配当利回り4.07%でインカムを確保しつつ、カタリスト(自己資本比率12%達成・ROE改善・増配)の進捗を確認しながら段階的に組み入れる「待ち姿勢+カタリスト確認後の段階買い」が妥当。
即時の大幅な株価訂正を期待する材料は乏しい。
バリュエーション手法別の目標株価
EPS 169.98 円・BPS 1,527.83 円・現在株価1,252 円・ROE 11.7%。来期会社予想 EPS は未開示のため実績 EPS(169.98 円)を基準とする。
PER法(保守的/標準/楽観的)
| シナリオ | 適用 PER | EPS(円) | 目標株価(円) | 現在株価比 |
|---|---|---|---|---|
| 保守的 | 7.0倍(現状レンジ下限) | 169.98 | 1,190 | −5.0% |
| 標準 | 9.0倍(東京センチュリー8.8倍・三菱HC10.7倍の中位) | 169.98 | 1,530 | +22.2% |
| 楽観的 | 11.0倍(自己資本充実でPBR1倍回復=同業上位並み) | 169.98 | 1,870 | +49.4% |
各シナリオの根拠: 保守的=現状の割安評価が継続。
標準=同業3社(みずほ7.4・東京センチュリー8.8・三菱HC10.7)の中位水準への収斂。
楽観的=中計2028で自己資本比率12%・ROE改善が実現し、同業上位の評価倍率へ。
EV/EBITDA法(リース業のため参考扱い)
⚠️ リース業の EV/EBITDA はオペレーティングリース資産の減価特性で過大(約58倍)となり、目標株価算出には不適。
本銘柄では PER 法・PBR 法を主軸とし、EV/EBITDA 法による目標株価は算出しない。
下値メド
PBR 1.0倍 = BPS 1,527.83 円 を理論的下限(資本効率改善が市場に評価された場合の到達点)として提示。
現在株価1,252 円は PBR 0.82倍であり、PBR 1.0倍回復で約+22% の余地。
逆に下値は、ROE低下が続く場合 PBR 0.75倍(約1,146 円)までが直近の下値メド。
シナリオ別の詳細根拠
ベースケース(確率50%): 中計2028の初年度として純利益が会社目標線上(FY2027/3 で500億円台前半)で推移。
前提=金利は緩やかな上昇に留まり ALM ヘッジで金利収支を維持、航空機・不動産が引き続き伸長。
確率の根拠=FY2026/3 で純利益は過去最高476億円を更新し中計の出発点が堅調、経常ROA は中計目標1.7%圏(FY2026/3 実績1.6%)に接近。
投資家の対応=配当利回り4.07%を享受しつつ保有継続、PER 9倍(目標1,530 円)への収斂を待つ。
上振れケース(確率25%): インオーガニック投資(M&A・アライアンス)が成果を上げ、航空機(Aircastle)・不動産協業(日鉄興和不動産)が想定超で寄与。
前提=自己資本比率が12%目標を前倒し達成し、ROEが12%超へ回復、増配。
確率の根拠=丸紅・みずほの2系統ネットワーク活用余地が大きく、A種種類株式による資本増強が自己資本比率改善を後押し。
投資家の対応=PBR1倍回復(PER11倍・目標1,870 円)を見込み、カタリスト確認後に買い増し。
下振れケース(確率25%): 急激な利上げと景気後退が同時進行し、金利収支圧迫+信用コスト増+アセット減損が重なる。
前提=営業利益率が4.8%から一段低下、ROEが10%割れ、中計600億円が未達。
確率の根拠=有利子負債3.5兆円・自己資本比率10.3%の高レバレッジ構造は金利・信用ショックに脆弱、航空機/不動産は市況連動。
投資家の対応=下値メド PBR 0.75倍(約1,146 円)を意識、ポジション縮小または静観。
推奨アクションの構造化
買いの根拠:
- 実績 PER 7.4倍・PBR 0.82倍と理論下限を下回る割安評価、配当利回り4.07%の高インカム
- みずほFG+丸紅の2系統ネットワークという模倣困難な参入障壁、航空機・不動産の成長分野
- 中計2028で自己資本比率12%・ROE11%以上・純利益600億円という明確な改善目標と資本政策
留意点:
- 高レバレッジ(自己資本比率10.3%)ゆえ金利・信用ショックに脆弱、営業利益率4.8%は同業(10%超)に見劣り
- 安定株主46%でアクティビスト圧力が働きにくく、低PBRが長期化するバリュートラップ懸念
- 来期会社予想が本データ未取得のため、四半期開示での着地確認が必要
カタリスト・タイムライン
| 時期 | イベント | 確認すべき数値 | 株価への影響 |
|---|---|---|---|
| 2026年6月26日 | 定時株主総会(権利付最終日は3月決算のため配当は確定済) | 中計2028の説明・資本政策の議案 | 中 |
| 2026年7月1日 | A種種類株式32,000,000株の第三者割当増資 払込 | 自己資本比率の改善幅(12%目標への進捗) | 中〜高 |
| 2026年7月下旬 | 日鉄興和不動産への普通株式8.7%譲渡の進捗 | 議決権比率・不動産協業の具体策 | 中 |
| 2026年7月末頃 | FY2027/3 第1四半期決算短信 | 中計初年度の進捗・来期通期予想(純利益500億円台か) | 高 |
| 2026年9月30日 | FY2027/3 中間配当 権利確定日(権利付最終日は2営業日前の2026年9月28日頃) | 中間配当額(増配か据置か) | 中 |
| 2026年11月上旬 | FY2027/3 中間決算 | 上期純利益・通期見通し修正の有無 | 高 |
| 2027年2月上旬 | FY2027/3 第3四半期決算 | 9か月純利益・通期着地見込み | 中 |
| 2027年3月31日 | FY2027/3 期末配当 権利確定日(権利付最終日は2027年3月27日頃) | 通期配当(配当性向30%台前半維持か) | 中 |
| 2027年5月中旬 | FY2027/3 通期決算・配当方針 | 純利益 vs 中計線・自己資本比率・ROE改善幅 | 高 |
7. 学習コーナー
📚 着眼点 1: なぜリース会社の「営業 CF マイナス」は危険信号ではないのか
みずほリースの営業 CF は5期連続でマイナス(FY2026/3 −184 億円、FY2025/3 は −3,933 億円)で、FCF も大幅マイナスである。
製造業ならこれは「本業で稼げていない」赤信号だが、リース業では逆の意味を持つ。
リース会社は顧客に貸す設備(営業資産3.4兆円)を絶えず購入し続けるため、その購入額が営業 CF の支出に計上され、構造的にマイナスになる。
資金は財務 CF(借入・社債・CP)で調達して賄うのがビジネスモデルそのものである。
例えるなら、リース会社は「在庫を仕入れて貸す質屋」のようなもの。
質草(リース資産)を仕入れるほど現金は出ていくが、それは事業拡大の証であって資金繰り破綻ではない。
投資家への示唆: みずほリースを評価する際は営業 CF の符号ではなく、(1) 調達金利1.34%とリース利鞘のスプレッド、(2) 営業資産残高の成長(FY2026/3 +1,180 億円)、(3) コミットメントライン1.35兆円という調達余力——を見るべきである。
📚 着眼点 2: 自己資本比率10.3%を「危険」と読んではいけない理由
EDINET の健全性スコアは35(rating D)で、自己資本比率10.3%は事業会社なら明確な危険水準である。
しかしみずほリースは「その他金融業」であり、レバレッジ(他人資本で資産を回す)こそが事業モデルの本質。
みずほリースの自己資本比率10.3%は、三菱HCキャピタル15.3%・東京センチュリー15.5%と比べて低めだが、これは業態内の相対比較で論じるべき数字である。
銀行が自己資本比率4〜8%でも健全とされるのと同じ理屈で、リース会社の健全性は「自己資本の絶対水準」ではなく「資産の質(貸倒の少なさ)」「調達の安定性」「ROEの水準」で測る。
投資家への示唆: みずほリースの中計2028が自己資本比率「12%程度」をわざわざ目標に掲げているのは、業態内で見劣りする資本水準を引き上げて PBR 0.82倍の低評価を脱却する狙いがある。
この目標達成(A種種類株式増資が手段)が低 PBR 是正のカタリストになる。
📚 着眼点 3: 「2大株主+A種種類株式」という資本構造の読み方
みずほリースはみずほFG(グループ25.96%)と丸紅(20.0%)の2大株主を持ち、さらに2026年7月にみずほFGへ議決権のない A種種類株式を発行する。
A種種類株式は「配当は受けるが議決権を持たない株」で、発行体にとっては議決権比率を動かさずに自己資本を増やせる便利な道具である。
たとえるなら、A種種類株式は「口は出さないが出資はしてくれるスポンサー」。
みずほFGは普通株の一部(8.7%)を日鉄興和不動産へ譲って議決権を薄めつつ、議決権なしの A種で資本を厚くする——支配を強めずに財務体質だけ改善する設計である。
投資家への示唆: 普通株主にとっては希薄化(EPS押し下げ)の可能性に注意が必要だが、自己資本比率の改善と不動産協業先の株主化はPBR是正に資する。
種類株の配当条件・転換条項の有無を開示で確認すべき。
📚 着眼点 4: ファイナンスセグメントの「営業利益率39.1%」が示す収益の二層構造
みずほリースの売上の93.7%を占めるリース・割賦の営業利益率はわずか3.1%だが、売上構成比4.7%のファイナンスセグメントは営業利益率39.1%と桁違いに高い。
これはリース・割賦が「薄利多売の利鞘ビジネス」、ファイナンスが「不動産・船舶・航空機への投融資=高採算のキャピタルゲイン型」という性質差を反映している。
飲食店に例えると、リース・割賦は「客数で稼ぐ定食屋」、ファイナンスは「一品単価の高いコース料理」。
売上の見栄えは定食屋が作るが、利益率はコース料理が引っ張る。
投資家への示唆: みずほリースの利益成長は、薄利のリース・割賦をどれだけ高採算のファイナンス・投資(航空機 Aircastle・不動産・再エネ)にシフトできるかにかかる。
中計2028の純利益600億円目標も、このミックス改善が達成の鍵を握る。
セグメント別営業利益の構成比トレンドを追うべき。
📚 着眼点 5: みずほリースの指標ポジショニング(相場観テーブル)
| 指標 | みずほリース | 同業他社平均(三菱HC・東京センチュリー) | 全上場中央値(目安) | 評価コメント |
|---|---|---|---|---|
| 実績 PER | 7.4倍 | 約9.8倍 | 約15倍 | 同業比でも割安だが、ROE改善が見えないと正当化されにくい |
| PBR | 0.82倍 | 約0.85倍 | 約1.2倍 | 業態全体が低PBR。自己資本比率の低さが特に重し |
| ROE | 11.7% | 約8〜10% | 約8% | 同業を上回るが低下傾向で中計目標12%に僅差未達 |
| 自己資本比率 | 10.3% | 約15% | 約40%(事業会社) | 業態内で低め。中計で12%目標=是正の意思 |
| 配当利回り | 4.07% | 約4.0% | 約2% | 高利回りでインカム妙味。配当性向30%台前半 |
| 営業利益率 | 4.8% | 約10% | 業種依存 | 同業比で見劣り。リース・割賦の薄利が要因 |
| EV/EBITDA | 約58倍(参考) | 比較不可 | 業種依存 | リース業は減価特性で過大、指標として非適合 |
| 経常ROA | 1.6% | 約1.7% | 業種依存 | 中計目標1.7%以上に接近 |
| 純利益成長(中計目標) | 476億→600億(+26%) | — | — | 年率約8%。インオーガニック投資前提で実現性は要検証 |
🤔 自分への問い
- 問1: みずほリースの最大の強みは何か? それが 5 年後も強みであり続けるための条件は?
(自分の答え)
- 問2: 自分なら みずほリース に投資するか? その判断の根拠を 3 行で説明せよ。
(自分の答え)
- 問3: この分析で一番難しかった概念は何か? それを自分の言葉で 1 段落で説明せよ。
(自分の答え)
関連: 演習フォーマット §C-3 / 演習・チェックリスト index
参考情報
ガバナンス情報テーブル
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 上場市場 | 東証プライム(コード8425) |
| 業種 | その他金融業(総合リース) |
| 設立 | 1969年(旧 日本電子計算機リース等を源流とする興銀リース系) |
| 従業員数 | 2,434 名(連結・FY2026/3、平均年齢44.6 歳・平均勤続14 年・平均年収約972 万円) |
| 連結子会社 | 250社(国内202・海外48)、関連会社24社 |
| 会計基準 | 日本基準(JP) |
| 主要取引銀行 | みずほ銀行(親グループ) |
| 海外拠点 | 中国・インド・インドネシア・英国・シンガポール・米国・アイルランド等(航空機/船舶 SPC 含む) |
大株主構成テーブル(大量保有報告書ベース・5%以上)
| 順位 | 株主名 | 保有比率 | 区分 |
|---|---|---|---|
| 1 | みずほフィナンシャルグループ(本体) | 23.09% | 親グループ(戦略保有) |
| 2 | 丸紅株式会社 | 20.0% | 事業会社(提携先) |
| 3 | アセットマネジメントOne | 1.44% | 運用会社(みずほ系) |
| 4 | みずほ信託銀行 | 0.87% | みずほ系(信託) |
| 5 | みずほ証券 | 0.56% | みずほ系 |
| 6 | 第一生命保険 | 4.97%(2021年報告・現況は要確認) | 純投資 |
| — | (その他大株主は5%未満で大量保有報告書なし) | — | — |
注: みずほFGグループ合算は25.96%。
丸紅20.0%と合わせ2大株主で約46%を占める。
アクティビスト・ファンドの大量保有報告は確認されず、安定株主比率が高い。
出典: EDINET get_shareholders(大量保有報告書)。
社外取締役の視点
経営陣に問うべき3つの質問:
- Q1: PBR 0.82倍を1.0倍超へ回復させるロードマップは何か。A種種類株式による自己資本比率12%達成(2026年7月)の後、ROEを中計目標12%以上へ戻す具体策(高採算ファイナンスへのミックスシフト等)を四半期ごとに示せるか。
- Q2: リース・割賦の営業利益率3.1%(同業は10%超)をどう引き上げるのか。薄利の情報・事務用機器(FY2026/3 契約実行高−13.6%)から不動産・航空機・再エネへの資産シフトの数値目標は。
- Q3: 丸紅との資本業務提携のシナジーは航空機(Aircastle)以外でどの分野・どの金額規模で具体化したか。インオーガニック投資600億円目標の達成確度をどう管理しているか。
免責事項
本レポートは EDINET DB・各種公開 IR 資料・Web 公開情報をもとに作成した分析であり、投資勧誘を目的とするものではない。
記載の数値・予想・目標株価は作成時点(2026-06-24)の情報に基づく試算であり、将来の成果を保証しない。
来期(FY2027/3)会社予想は本データセットに含まれず、実績 PER ベースで試算している。
投資判断は自己責任で、最新の有価証券報告書・決算短信を必ず確認すること。
データソースの時点差テーブル
| データ種別 | 基準日 | ソース |
|---|---|---|
| 財務数値(PL/BS/CF 5期) | FY2026/3(2026-03-31) | EDINET get_financials |
| 最新通期実績・決算短信 | FY2026/3(2026-05-14 開示) | EDINET get_earnings / 決算短信 |
| 株価・時価総額 | 2026-06-24(直近営業日終値) | price_fetcher(8425.T) |
| 大株主 | 2026-05-21(最新変更報告書) | EDINET get_shareholders |
| 中期経営計画2028 | 2026-05-14 策定発表 | みずほリース IR / FISCO / 財経新聞 |
| 資本政策(A種種類株式・株式譲渡) | 2026-07-01 払込予定 | 日本M&Aセンター ニュース |
出典一覧
- EDINET DB MCP
get_company(E05426)— 企業基本情報・健全性スコア・最新決算 - EDINET DB MCP
get_financials(E05426, years=5)— 5期財務時系列 - EDINET DB MCP
get_segments(E05426)— セグメント別売上 - EDINET DB MCP
get_analysis(E05426)— 業界ベンチマーク - EDINET DB MCP
get_earnings(E05426, include_qualitative_text=true)— TDNet決算短信・MD&A - EDINET DB MCP
get_shareholders(E05426)— 大株主構成(大量保有報告書) - EDINET DB MCP
get_text_blocks(E05426)— 有報テキスト(事業リスク・MD&A・事業内容) - 競合: EDINET DB MCP
get_financials/get_company(E04788 三菱HCキャピタル・E05346 東京センチュリー) - price_fetcher(8425.T 現値・market_data_as_of=2026-06-24)
- みずほリース IR 中期経営計画
- FISCO Research Memo(みずほグループにおける非金融戦略会社)
- FISCO Research Memo(5)2026年3月期 過去最高純利益
- 日本M&Aセンター みずほFG資本業務提携・丸紅筆頭株主
- 財経新聞 中期経営計画2028
- unistyle リース業界研究(大手7社)