オリックス株式会社
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目次
- 1. 事業概要
- 業界の系統分解
- オリックスの事業構成
- 主要取引先
- 競争優位性の比喩的説明
- オリックスの固有事象・資本関係の詳細分析
- 業界のビジネスモデルと着目点
- 2. バリュエーション分析
- ⚠️ 時価総額・株価の基準(本体準拠)
- 主要バリュエーション指標(現値ベース)
- 標準 NC(Net Cash)— 金融業のため非適用
- 広義 NCAV — 金融業のため非適用
- CN-PER(キャッシュニュートラル PER)— 金融業のため非適用
- EV/EBITDA 分析 — 金融業のため非適用
- EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別)— 金融業のため非適用
- 成長率モデル適正 PER(参考)
- DCF 前提入力枠(金融業のため標準DCFは参考外)
- バリュエーション乖離コメント
- 3. 財務分析
- PL — 5期+直近実績+予想(US GAAP、当社株主帰属ベース、百万円)
- BS — 5期+直近開示(当社株主資本ベース、百万円)
- BS 詳細主要科目(百万円、FY2025/3 有報ベース。金融業のため運用資産が主体)
- CF — 5期(百万円)
- 減価償却費明細(百万円、FY2026/3 短信 CF より)
- 受注高・受注残高
- 運転資本分析(CCC)
- 配当推移 — 5期+直近実績+予想
- 経営者予想精度(直近)
- 健全性チェック(金融業=その他金融業 版)
- 4. 同業他社比較
- 競合選定基準
- 最新期比較テーブル
- 競合 3期推移(売上・ROE)
- 運転資本効率(CCC)— 競合比較
- 5. リスク評価
- リスクマトリクス
- リスク因果関係図
- 6. 投資判断
- バリュエーション乖離コメントの補強
- バリュエーション手法別の目標株価
- シナリオ別の詳細根拠
- カタリスト・タイムライン
- 7. 学習コーナー
- 📚 着眼点 1: キャピタルリサイクリングと「一過性益 vs コア利益」の見極め
- 📚 着眼点 2: 金融業に「標準NC」「EV/EBITDA」が効かない理由
- 📚 着眼点 3: ROE を最重要指標に据えた資本政策——銀行譲渡と自社株買いの意味
- 📚 着眼点 4: コングロマリット・ディスカウントと PBR 1.5倍の意味
- 📚 着眼点 5: オリックスの指標ポジショニング(相場観テーブル)
- 🤔 自分への問い
- 参考情報
- ガバナンス情報
- 大株主構成(大量保有報告書ベース、5%以上のグループ)
- データソースの時点差
- 出典一覧
オリックス株式会社(8591)銘柄分析レポート
オリックスは時価総額 65,575 億円 の大型総合金融サービス企業(その他金融業、US GAAP)。
FY2026/3 は営業収益 3.33 兆円(+16%)・当社株主帰属純利益 4,473 億円(+27%)・ROE 10.4% と過去最高益を更新。
現在株価 6,113 円ベースで実績 PER 約15.3倍・予想 PER(FY2027/3)約12.4倍・PBR 約1.50倍・予想配当利回り 約3.06%。
標準NC・広義NCAV・EV/EBITDA は金融業のため非適用(PBR/予想PER/配当利回り/ROE を主軸)。
長期ビジョンは2035/3期 ROE15%・純利益1兆円。
| 指標 | 値 | 評価 |
|---|---|---|
| 時価総額 | 65,575 億円 | 大型 |
| 予 PER(FY2027/3予想) | 約12.4倍 | 適正〜やや割安 |
| 実績 PER(FY2026/3) | 約15.3倍 | 適正 |
| PBR | 約1.50倍 | 適正 |
| 配当利回り(FY2027/3予想) | 約3.06% | 中位 |
| ROE(FY2026/3) | 10.4% | 良好 |
| 健全性スコア | N/A(金融業) | 業態版参照 |
1. 事業概要
業界の系統分解
「その他金融業」のうちオリックスが属する大手ノンバンク・総合金融サービスは、出自によって性格が大きく異なる。
第一に「メガバンク系リース」(三菱HCキャピタル、東京センチュリーの一部、みずほリース)は、親銀行の顧客基盤と低コスト調達を強みとする一方、グループ方針に成長領域が制約されやすい。
第二に「商社系」(伊藤忠系の東京センチュリー等)は事業会社ネットワークを生かした投資・トレーディングに強い。
第三が「独立系総合金融」で、オリックスはこの代表格である。
特定の親会社を持たず、リースを起点に不動産・事業投資・コンセッション(関西3空港)・環境エネルギー・生命保険・銀行・海外アセットマネジメント(ORIX USA/Europe)へと事業を多角化させてきた。
独立系であることは「制約のない投資自由度」と「資本コスト・格付規律を自ら課す必要」の両面を意味する。
オリックスは「事業価値創造(自ら事業を保有・育成して売却益を得る)」と「顧客課題解決(金融・サービス提供)」の2つのビジネスモデルを掛け合わせ、リース会社というより「キャピタルリサイクリング型の投資・運営会社」へと進化している。
FY2026/3 のキャピタルゲイン(投資売却益)が約1,966億円に達したこと(Greenko Energy 株式譲渡益約950億円を含む)は、この性格を端的に示している(出典: stocktitan.net IX 6-K, investing.com 決算カンファレンス)。
オリックスの事業構成
直近期(FY2026/3、US GAAP 10セグメント、税引前セグメント利益ベース)のセグメント別構成は以下のとおり。
get_segments は非開示のため FY2026/3 決算短信のセグメント情報より。
セグメント利益=当社株主帰属税引前利益相当額(税金・非支配持分除く)。
| セグメント | FY2025/3 利益(百万円) | FY2026/3 利益(百万円) | 増減率 | FY2026/3 資産(百万円) | 資産構成比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 法人営業・メンテナンスリース | 90,329 | 100,740 | +12% | 1,876,895 | 10.8% |
| 不動産 | 70,541 | 78,509 | +11% | 1,235,906 | 7.1% |
| 事業投資・コンセッション | 98,872 | 125,611 | +27% | 1,050,561 | 6.0% |
| 環境エネルギー | -4,923 | 115,772 | 黒字転換 | 1,018,777 | 5.8% |
| 保険 | 74,399 | 102,891 | +38% | 3,198,270 | 18.3% |
| 銀行・クレジット | 29,291 | 27,212 | -7% | 3,236,799 | 18.6% |
| 輸送機器 | 67,420 | 66,608 | -1% | 1,211,335 | 6.9% |
| ORIX USA | 39,915 | 954 | -98% | 1,940,471 | 11.1% |
| ORIX Europe | 44,373 | 63,051 | +42% | 801,175 | 4.6% |
| アジア・豪州 | 34,451 | 51,249 | +49% | 1,865,277 | 10.7% |
| セグメント利益合計 | 544,668 | 732,597 | +35% | 17,435,466(セグメント資産計) | 100% |
FY2026/3 は10セグメント体制で、セグメント利益合計 7,326億円(+35%)。
資産規模では銀行・クレジット(18.6%)と保険(18.3%)が二大セグメントだが、利益では事業投資・コンセッション(1,256億円)・環境エネルギー(1,158億円、黒字転換)・保険(1,029億円)が牽引した。
利益のセグメント分散が効いており、特定事業への依存度が低いのが特徴である。
| 市場分野 | FY2026/3 動向 | 評価 |
|---|---|---|
| 事業投資・コンセッション | +27%、持分法益・売却益寄与 | ◎ 成長エンジン |
| 環境エネルギー | 黒字転換(Greenko譲渡益等) | ◎ 一過性寄与大 |
| 保険(オリックス生命) | +38%、生保料収入・運用益増 | ◎ 安定成長 |
| ORIX Europe(アセットマネジメント) | +42%、為替・売却益 | ○ 好調 |
| アジア・豪州 | +49%、持分法益・売却益 | ○ 好調 |
| 法人営業・MTリース | +12%、コア事業堅調 | ○ 堅調 |
| 不動産 | +11%、サービス収入増 | ○ 堅調 |
| 輸送機器(航空機・船舶) | -1%、横ばい | △ 横ばい |
| 銀行・クレジット | -7%、譲渡予定で縮小局面 | △ 戦略的縮小 |
| ORIX USA | -98%、のれん・無形減損527億円 | × 大幅減益 |
注: EDINET get_financials の最新通期は FY2025/3(financials_as_of: 2025-03-31)。
FY2026/3 のセグメント・実績は TDNet 決算短信(2026-05-11 開示)の通期実績であり、有報未提出のため財務テーブル(PL/BS/CF)は FY2021/3〜FY2025/3 の5期構成を維持している。
本セクションの FY2026/3 はすべて短信由来。
主要取引先
オリックスは特定大口顧客への依存がなく、国内の中堅・中小企業から個人(生命保険・カードローン)、海外機関投資家(ORIX USA/Europe のアセットマネジメント受託)まで顧客基盤が極めて分散している。
これがB2B重厚長大型の同業と異なる収益安定性の源泉である。
一方、投資先・提携先としては Avolon Holdings(航空機リース)、Greenko Energy(再エネ、FY2026 に売却)、関西エアポート(コンセッション)、大京(不動産)、Elawan Energy(欧州再エネ)等が事業ポートフォリオの中核を成す。
FY2026/3 期末で連結子会社 1,163社・持分法関連会社 124社という広大な事業群を抱える(出典: EDINET 有報 事業の内容)。
競争優位性の比喩的説明
オリックスの参入障壁は「金融免許の束 × 事業運営ノウハウ × 出口(売却)の目利き」の三重構造にある。
たとえるなら、不動産・空港・再エネ・生保・銀行という異なる『お店』を同時に運営できる『総合商業施設のオーナー兼デベロッパー』である。
単なるリース会社(テナントに設備を貸すだけ)なら模倣されやすいが、自ら事業を仕込み・育て・高値で売り抜ける『キャピタルリサイクリング』の回転力は、50年以上の投資実績と多様な人材なしには再現できない。
これが ROE 改善の核であり、メガバンク系リースが真似しにくい独立系の強みである。
オリックスの固有事象・資本関係の詳細分析
最大の固有事象は2つ。
第一に オリックス銀行の大和証券グループへの譲渡(譲渡価額3,700億円、FY2027/3 に売却益約1,242億円計上見込み)。
これは「銀行業の規制資本・低 ROE を切り離し、高 ROE のキャピタルリサイクリング事業に資本を再配分する」資本効率重視の象徴である(出典: orix.co.jp ニュースリリース 260427、kabutan.jp 8591)。
第二に 1億株・2,500億円を上限とする大型自社株買い(発行済自己株除く9.1%、取得期間2026/5/22〜2027/3/31)(出典: newsweekjapan.jp, reuters via Yahoo)。
発行済株式の約1割を消却すれば EPS・ROE を機械的に押し上げる。
資本関係では特定の親会社・安定株主が不在で、外国人機関投資家(ブラックロック系7.3%、三井住友トラストAM 5.2%等)が主要株主という、独立系大型株の典型である。
業界のビジネスモデルと着目点
総合金融の収益は「①金融収益(リース・貸付の利鞘)」「②オペレーティング・リース収益(資産保有収益)」「③サービス収入(手数料・運営)」「④投資売却益(キャピタルゲイン)」「⑤保険・運用益」の5本柱で構成される。
オリックスは①②の安定収益で下支えしつつ、③④の伸びで成長を作る「ハイブリッド型」。
利益の質を見るうえでは「経常的なセグメント利益」と「一過性の売却益・減損」を分けて評価することが肝要であり、FY2026/3 の高増益にも Greenko 売却益等の一過性寄与が含まれる点に注意が必要である。
2. バリュエーション分析
⚠️ 時価総額・株価の基準(本体準拠)
バリュエーション指標の時価総額・株価は 現値マーケットデータ(market_data_as_of: 2026-06-07、直近営業日終値ベース) を使用する。
EDINET get_company.marketCap(=FY2025/3 期末固定値 3.58 兆円)は使わない(株価変動で破綻するため。乖離 +83%)。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 現在株価(円) | 6,113 |
| 現値時価総額(百万円) | 6,557,465 |
| 現値時価総額(億円) | 65,575 |
| 発行済株式数(株、market_cap算出ベース) | 1,072,708,118 |
| 参考: EDINET marketCap(FY2025/3 期末値・使用せず) | 3,578,900 百万円 |
内部整合性チェック(±5% 以内):
- 現在株価 6,113 × 発行済株式数 1,072,708,118 = 65,575 億円 ≒ 現値時価総額 ✓
- 予想 PER 12.4 × 予想 EPS 494 ≒ 6,126 円 ≒ 現在株価 6,113 ✓
- PBR 1.50 × BPS 4,080.24 ≒ 6,120 円 ≒ 現在株価 6,113 ✓
主要バリュエーション指標(現値ベース)
| 指標 | 算出式 | 値 |
|---|---|---|
| 実績 PER(FY2026/3) | 6,113 ÷ EPS 400.27 | 約 15.3 倍 |
| 予想 PER(FY2027/3) | 6,113 ÷ 予想EPS 494(=530,000百万÷1,072,708,118株) | 約 12.4 倍 |
| PBR(FY2026/3 BPS 4,080.24) | 6,113 ÷ 4,080.24 | 約 1.50 倍 |
| 配当利回り(FY2026/3 実績 156.10) | 156.10 ÷ 6,113 | 約 2.55% |
| 配当利回り(FY2027/3 予想 187.36) | 187.36 ÷ 6,113 | 約 3.06% |
| ROE(FY2026/3、当社株主資本ベース) | 短信開示 | 10.4% |
| DOE(FY2025/3) | get_company | 約 3.35% |
標準 NC(Net Cash)— 金融業のため非適用
⚠️ オリックスは総合金融サービス業(その他金融業、US GAAP)。
長短借入債務 6.54 兆円・預金 2.63 兆円が事業の根幹であり、運用資産(営業貸付金 4.17 兆円・リース投資・投資有価証券 3.31 兆円)と一体。
製造業向けの「標準NC=現預金+短期有価証券−有利子負債」は構造的に大幅マイナスとなり、投資判断指標として非適用。
| 項目 | FY2025/3 |
|---|---|
| 現金及び現金等価物(百万円) | 1,321,983 |
| 長短借入債務(有利子負債、百万円) | 6,282,798 |
| 参考: 標準NC(=現預金−長短借入債務) | -4,960,815 |
| 判定 | ⚠️ 金融業のため非適用(参考値) |
広義 NCAV — 金融業のため非適用
⚠️ 同上。流動資産・負債合計が金融債権・調達と一体のため非適用。
| 項目 | FY2025/3 |
|---|---|
| 流動資産(百万円) | 3,248,697 |
| 投資有価証券 × 0.7(百万円) | 約 2,264,183(投資有価証券 3,234,547 × 0.7) |
| 負債合計(百万円) | 12,776,469 |
| 参考: 広義NCAV | -7,263,589 |
| 判定 | ⚠️ 金融業のため非適用(参考値) |
CN-PER(キャッシュニュートラル PER)— 金融業のため非適用
標準NCが大幅マイナスのため CN-PER は意味をなさない。金融業のため非適用。投資判断は予想 PER(約12.4倍)・PBR(約1.50倍)・ROE(10.4%)を用いる。
EV/EBITDA 分析 — 金融業のため非適用
⚠️ 金融業は支払利息が営業費用の一部(FY2026/3 支払利息 193,889百万円)であり EBITDA 概念が不適合。
EV/EBITDA は 非適用。
同業比較は PBR・ROE・配当利回りで行う(セクション4)。
EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別)— 金融業のため非適用
| NC 定義 | 判定 |
|---|---|
| 標準 NC | 金融業のため非適用 |
| 広義 NCAV | 金融業のため非適用 |
成長率モデル適正 PER(参考)
理論 PER = 1 / (r − g)。r = 株主資本コスト(仮定 8%)。
| 成長率仮定 | 理論 PER | 備考 |
|---|---|---|
| g = 0%(ゼロ成長) | 12.5 倍 | PER 下限の目安 |
| g = 3%(インフレ並み) | 20.0 倍 | |
| g = 5%(中程度成長) | 33.3 倍 | |
| EPS 過去4期 CAGR(FY2021 155.54 → FY2025 307.74) | 実績 CAGR 約 +18.6%/年 | g>r となり定常モデル不成立(高成長局面) |
注: 直近の EPS CAGR は環境エネルギー黒転や売却益等の一過性要因を含むため、定常成長モデルの単純当てはめは不適。実績 PER 15.3倍は g=0〜3% 相当の評価水準。
DCF 前提入力枠(金融業のため標準DCFは参考外)
⚠️ 金融業は FCF(営業CF−設備投資)概念や運転資本増減が事業会社と異なり、標準 DCF は不適合。
本来は残余利益モデル(RIM)や配当割引モデル(DDM)が適切。
前提値は疑似精度を避け要調査とする。
⚠️ Ke 算出式(CAPM): Ke = Rf + β × ERP
| 項目 | 値 | 出典/備考 |
|---|---|---|
| 無リスク金利 Rf(%) | 要調査 | 日本10年国債利回り(1.0-1.5% 想定) |
| β | 要調査 | get_analysis のセクター β または類似企業から推定 |
| 市場リスクプレミアム ERP(%) | 5-6 | 日本市場慣行値 |
| 株主資本コスト Ke(%) | 上記から算出 | Ke = Rf + β × ERP |
| 負債コスト Kd 税引後(%) | 要調査 | 支払利息/平均有利子負債 ×(1−t) |
| WACC(%) | 要調査(金融業のため参考外) | |
| 永続成長率 g(%) | 要調査 | |
| 法人税率(%) | 30 | 海外比率高く実効税率は要確認(FY2026 法人税等233,103/税前691,431=33.7%) |
| 明示予測期間(年) | 5 |
5期 FCF 入力枠(金融業のため標準FCFは不適合):
| 期 | t+1 | t+2 | t+3 | t+4 | t+5 |
|---|---|---|---|---|---|
| FCF(百万円) | 要調査 | 要調査 | 要調査 | 要調査 | 要調査 |
参照: DCF分析 / WACC算出 / ターミナルバリュー / 感応度・シナリオ分析
バリュエーション乖離コメント
- 実績 PER 15.3倍 vs 予想 PER 12.4倍の差は FY2027/3 会社予想(純利益 +18.5%)を織り込んだもの。
- PBR 約1.50倍は ROE 10.4% を前提とすると、残余利益的に「ROE > 株主資本コスト(仮定8%)」を反映した妥当圏。
- 標準NC・EV/EBITDA は金融業のため非適用。投資判断は PBR・予想PER・ROE・配当の3軸で行う。乖離・割安度の深掘りは投資判断セクションで補強する。
3. 財務分析
PL — 5期+直近実績+予想(US GAAP、当社株主帰属ベース、百万円)
| 項目 | FY2021/3 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 実績 | FY2027/3 予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 営業収益(百万円) | 2,292,357 | 2,508,043 | 2,663,659 | 2,814,361 | 2,874,821 | 3,330,831 | — |
| 営業利益(百万円・短信値) | — | — | — | 331,826 | 331,826※ | 456,248 | — |
| 税引前当期純利益(百万円) | 287,561 | 509,447 | 392,178 | 469,975 | 480,463 | 691,431 | — |
| 当社株主帰属純利益(百万円) | 192,384 | 317,376 | 290,340 | 346,132 | 351,630 | 447,265 | 530,000 |
| EPS(円) | 155.54 | 259.37 | 231.35 | 298.55 | 307.74 | 400.27 | 約494 |
| 前年比(営業収益) | — | +9.4% | +6.2% | +5.7% | +2.1% | +15.9% | — |
| 前年比(純利益) | — | +65.0% | -8.5% | +19.2% | +1.6% | +27.2% | +18.5% |
※ FY2025/3 営業利益 331,826 は FY2026/3 短信の前期比較値。
FY2024/3 以前の get_financials は US GAAP のため営業利益が個別計上されず「—」。
営業利益は US GAAP 区分(営業収益−営業費用)で短信開示の FY2025/3=331,826・FY2026/3=456,248 を採用。
BS — 5期+直近開示(当社株主資本ベース、百万円)
| 項目 | FY2021/3 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 開示 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 総資産(百万円) | 13,563,082 | 14,280,684 | 15,289,385 | 16,322,100 | 16,866,251 | 18,002,776 |
| 流動資産(百万円) | 2,613,035 | 2,816,736 | 3,343,838 | 3,091,109 | 3,248,697 | — |
| 負債合計(百万円) | 10,534,626 | 10,976,488 | 11,745,778 | 12,380,634 | 12,776,469 | 13,378,965 |
| 株主資本(当社株主資本合計、百万円) | 3,028,456 | 3,304,196 | 3,543,607 | 3,941,466 | 4,089,782 | 4,482,500 |
| 自己資本比率(当社株主資本/総資産) | 22.3% | 23.1% | 23.2% | 24.1% | 24.2% | 24.9% |
| BPS(円) | 2,487.77 | 2,732.88 | 2,868.13 | 3,422.94 | 3,599.24 | 4,080.24 |
注: 全期「当社株主資本合計(owners' equity、非支配持分除く)」で統一。
FY2026/3 の資本合計(非支配持分含む)は 4,573,068 百万円(非支配持分 90,568 + 当社株主資本 4,482,500)。
ROE/BPS は当社株主資本ベース。
BS 詳細主要科目(百万円、FY2025/3 有報ベース。金融業のため運用資産が主体)
| 項目 | FY2025/3 |
|---|---|
| 現金及び現金等価物 | 1,321,983 |
| 投資有価証券 | 3,234,547 |
| 営業貸付金(FY2026/3 開示) | 4,173,582 |
| オペレーティング・リース投資(FY2026/3 開示) | 2,152,820 |
| リース純投資(FY2026/3 開示) | 1,247,491 |
| 長短借入債務(有利子負債) | 6,282,798 |
| 預金 | 2,449,812 |
| 利益剰余金 | 976,192 |
CF — 5期(百万円)
| 項目 | FY2021/3 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業 CF(百万円) | 1,102,414 | 1,103,370 | 913,088 | 1,243,402 | 1,300,193 |
| 投資 CF(百万円) | -1,209,990 | -808,846 | -1,098,478 | -1,372,803 | -1,309,695 |
| 財務 CF(百万円) | 39,884 | -306,618 | 438,308 | -85,477 | 149,322 |
| FCF(営業+投資、百万円) | -107,576 | 294,524 | -185,390 | -129,401 | -9,502 |
注: 金融業は投資 CF に営業貸付実行・リース資産購入が含まれ恒常的にマイナス(積極投資型)。
製造業の FCF とは意味が異なる(FCF マイナス=事業縮小ではない)。
FY2026/3 開示: 営業 CF 1,369,567 / 投資 CF -1,114,671 / 財務 CF -160,535。
減価償却費明細(百万円、FY2026/3 短信 CF より)
| FY2025/3 | FY2026/3 |
|---|---|
| 399,527 | 404,791 |
注: 主にオペレーティング・リース資産・事業用資産の減価償却。
受注高・受注残高
該当なし(非受注産業 — リース・総合金融サービス業)。
運転資本分析(CCC)
非適用。オリックスは金融業であり主資産が営業貸付金・リース投資・投資有価証券。製造業型の売上債権・棚卸資産・仕入債務による CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)概念が構造的に不適合。
配当推移 — 5期+直近実績+予想
| 項目 | FY2021/3 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 実績 | FY2027/3 予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1株配当(円) | 78.0 | 85.6 | 85.6 | 98.6 | 120.01 | 156.10 | 187.36 |
| 配当利回り(現値6,113円ベース) | — | — | — | — | 1.96% | 2.55% | 約3.06% |
| 配当性向 | — | — | — | — | 約39% | 39.0% | 約39%(方針) |
注: 配当方針「配当性向39% もしくは前期実績の高い方」+ 機動的自社株買い。
FY2021→FY2026 で 1株配当 78.0→156.10 円と倍増(連続増配基調)。
配当利回りは現在株価 6,113 円基準で算出。
経営者予想精度(直近)
| 期 | 予想時点 | 予想純利益(百万円) | 実績純利益(百万円) | 乖離率 |
|---|---|---|---|---|
| FY2026/3 | FY2026/3 Q3短信(2026-02-09) | 440,000 | 447,265 | +1.7%(上振れ) |
注: get_earnings の Q3 短信通期予想(440,000)に対し実績 447,265 で +1.7% 上振れ。
それ以前の予想は本取得データに含まれず予想精度データは限定的。
総じて保守的予想→小幅上振れの傾向。
健全性チェック(金融業=その他金融業 版)
⚠️ オリックスは金融業(その他金融業、US GAAP)。
事業会社基準(自己資本比率 > 40% / 有利子負債 < 現預金 / 流動比率 > 150% 等)は高レバレッジの金融業に構造的に成立しないため一切適用しない。
frontmatter・サマリーの healthScore は N/A。
以下を健全性の本指標とする。
| チェック項目(その他金融業版) | 値 | 判定 |
|---|---|---|
| ROE(東証定義・当社株主資本ベース、FY2026/3) | 10.4%(東証プライム基準クリア) | ✅ |
| 自己資本比率(会計ベース、FY2026/3) | 24.9%(金融業として標準〜やや低め) | ⚠️ |
| 信用格付 A格相当の財務健全性維持(会社方針) | 中期方針として明示・維持 | ✅ |
| D/E 比率(長短借入債務(預金除く)/株主資本、FY2025/3) | 1.5 倍(前期 1.6 倍から低下) | ✅ |
| 営業 CF 黒字継続(5期) | 5期連続プラス(91万〜137万百万円) | ✅ |
| 純資産(株主資本)増加トレンド | 5期連続増加(3.0兆→4.5兆) | ✅ |
| 配当連続性(増配基調) | FY2021→FY2026 増配継続 | ✅ |
| 純利益が税前利益を上回る年の有無(特別利益依存) | FY2026 は特別損益・売却益寄与大→反動減に留意 | ⚠️ |
注: 事業会社基準は金融業に一切適用しない。
自己資本比率 24.9% は大手ノンバンク・総合金融として標準的水準(レバレッジ型ビジネスモデル)。
FY2026 の高増益には Greenko 譲渡益(83,135 百万円)等の一過性要因を含む点に留意。
4. 同業他社比較
競合選定基準
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | その他金融業(大手リース・総合金融サービス) |
| 時価総額・売上レンジ | 大手リース・総合金融の代表3社 |
| 選定理由 | 三菱HCキャピタル=総合リース2位・規模最大級の直接競合。東京センチュリー=総合リース大手(伊藤忠・みずほ系)。みずほリース=メガバンク系リースで ROE 比較対象 |
最新期比較テーブル
⚠️ オリックスは US GAAP、競合3社は JP GAAP(営業利益率・PER の単純比較に基準差あり)。
オリックスの時価総額は現値(65,575 億円、2026-06-07)、競合の時価総額は EDINET 期末スナップ(現値ではない・参考値)。
| 指標 | オリックス(8591) | 三菱HCキャピタル(8593) | 東京センチュリー(8439) | みずほリース(8425) |
|---|---|---|---|---|
| 会計基準 | US GAAP | JP GAAP | JP GAAP | JP GAAP |
| 時価総額(億円) | 65,575(現値) | 14,784(EDINET期末・参考) | — | — |
| 売上高/営業収益(億円、直近期) | 33,308(FY2026/3) | 20,908(FY2025/3) | 14,577(FY2026/3) | 9,216(FY2026/3) |
| 当期純利益(億円、直近期) | 4,473(FY2026/3) | 1,352(FY2025/3) | 1,113(FY2026/3) | 476(FY2026/3) |
| ROE(直近期) | 10.4%(FY2026/3) | 7.8%(FY2025/3) | 約7.8%(FY2025/3) | 11.5%(FY2025/3) |
| 自己資本比率(直近期) | 24.9% | 15.2% | 17.1% | 10.3% |
| PER(直近・参考) | 約15.3倍(現値・実績) | 10.7倍(EDINET) | 8.37倍(EDINET) | 6.7倍(EDINET) |
| PBR(直近・参考) | 約1.50倍(現値) | 0.81倍(EDINET期末) | — | — |
| 配当利回り(参考) | 約3.06%(FY2027予想・現値) | 3.97%(EDINET) | 4.24%(EDINET) | 4.54%(EDINET) |
| EV/EBITDA | 金融業のため非適用 | 非適用 | 非適用 | 非適用 |
| 標準 NC 比率 | 金融業のため非適用 | 非適用 | 非適用 | 非適用 |
注: オリックスは規模(売上・純利益)と ROE・PBR で同業内優位。
自己資本比率 24.9% は競合(10-17%)より高く、相対的に低レバレッジ。
PBR 約1.5倍は同業(三菱HC 0.81倍)より高く、収益力・ROE・事業多角化を反映したプレミアム評価。
競合 3期推移(売上・ROE)
| 企業 | 3期前 売上(億円) | 2期前 売上(億円) | 直近 売上(億円) | 3期前 ROE | 2期前 ROE | 直近 ROE |
|---|---|---|---|---|---|---|
| オリックス | 26,637(FY2023/3) | 28,144(FY2024/3) | 28,748→33,308(FY2025/3→FY2026/3) | 8.5% | 9.2% | 8.8%→10.4% |
| 三菱HCキャピタル | 18,962(FY2023/3) | 19,506(FY2024/3) | 20,908(FY2025/3) | 8.2% | 7.7% | 7.8% |
| 東京センチュリー | — | 13,686(FY2025/3) | 14,577(FY2026/3) | — | 7.8% | — |
| みずほリース | — | 6,954(FY2025/3) | 9,216(FY2026/3) | — | 11.5% | — |
運転資本効率(CCC)— 競合比較
非適用(4社とも金融業のため CCC 概念が不適合)。
5. リスク評価
リスクマトリクス
| リスク要因 | 影響度 | 発生可能性 | 具体的影響シナリオ | 対応状況 |
|---|---|---|---|---|
| 信用格付の引き下げ | 高 | 中 | 格下げ→社債・借入の調達コスト上昇→利鞘圧縮。金融業の生命線。オリックス銀行譲渡後の格付影響が論点 | A格相当維持を最重要方針に明記 |
| 投資売却益の反動減 | 高 | 高 | FY2026 の Greenko 等一過性益(約1,966億円)が剥落→FY2027 以降に利益水準の不連続な低下 | キャピタルリサイクリングの継続的な仕込みで平準化 |
| ORIX USA の追加減損 | 中 | 中 | のれん・無形資産(FY2026 で527億円減損)の一段の悪化→米州事業の利益毀損 | 資産入替・第三者運用拡大で資産圧縮 |
| 金利・為替変動 | 中 | 高 | 調達コスト上昇、海外資産の為替換算損益変動。ALM で管理するが全ヘッジではない | ALM 統合管理、一部ヘッジ |
| 不動産・航空機の資産価値下落 | 中 | 中 | 残価リスク顕在化→評価損。景気後退時に複合発生 | 残価見積りの保守化、ポートフォリオ分散 |
| バリュートラップ(資本効率低下) | 中 | 低 | ROE 目標未達→PBR 1倍割れの放置。ただし大型自社株買い・銀行譲渡で能動的に回避中 | ROE 最重要指標化、機動的自社株買い |
リスク因果関係図
flowchart TD
A[世界経済減速・金利高止まり] --> B[投資先・与信先の業況悪化]
A --> C[資産価格下落 不動産・航空機・株式]
B --> D[信用損失引当金の追加計上]
C --> E[評価損・減損 ORIX USAのれん等]
D --> F[セグメント利益の下振れ]
E --> F
A --> G[調達環境悪化]
G --> H[信用格下げ懸念]
H --> I[調達コスト上昇→利鞘圧縮]
I --> F
F --> J[ROE目標 11%未達リスク]
J --> K[PBR 1倍割れ・バリュートラップ]
L[大型自社株買い 9.1%] -.緩和.-> K
M[オリックス銀行譲渡で資本再配分] -.緩和.-> J
N[キャピタルリサイクリング継続] -.緩和.-> F
最大リスク: 「一過性益の剥落による利益の不連続低下」。
FY2026/3 の最高益(純利益4,472億円、+27%)は、Greenko 売却益約950億円を含むキャピタルゲイン約1,966億円や環境エネルギーの黒字転換に支えられている。
シナリオ分解: (a) FY2027/3 は会社予想 5,300億円(+18.5%)だがこれにはオリックス銀行売却益約1,242億円が含まれ、これも一過性。
(b) これら一過性益を除いた「経常的なセグメント利益の地力」が市場予想を下回れば、増益の持続性に疑問が生じ株価調整。
(c) 逆に新たな大型売却・投資の仕込みが続けば「キャピタルリサイクリングの回転」として正当に評価される。
投資家は『一過性益を除いたコア利益のトレンド』を毎四半期で追う必要がある。
バリュートラップリスク: オリックスは長年「事業多角化が複雑で評価しにくい(コングロマリット・ディスカウント)」とされ PBR が低位放置されてきた歴史がある。
現在 PBR 約1.50倍は ROE 改善を映して切り上がったが、ROE 目標(2028/3 ≧11%、2035/3 15%)の未達や一過性益依存が露呈すれば再びディスカウントに沈むリスクがある。
緩和材料として、(1)発行済株式の9.1%・2,500億円という大型自社株買い、(2)低 ROE のオリックス銀行切り離し、(3)ROE を最重要指標に据えた資本コスト経営——が能動的に効いている。
東証の「資本コストを意識した経営」要請も追い風。
ただし外国人株主比率が高く特定の安定株主が不在のため、資本効率への市場の視線は厳しく、目標未達は即座に株価で罰せられる構造である。
6. 投資判断
バリュエーション乖離コメントの補強
定量分析は「実績PER 15.3倍 vs 予想PER 12.4倍の差は FY2027/3 増益(+18.5%)の織り込み、PBR 1.50倍は ROE 10.4% を踏まえ残余利益的に妥当圏」と整理した。
これを定性で補強する。
第一に、予想PERが実績PERより低い(=来期増益見込み)背景には、オリックス銀行売却益約1,242億円という確定的な一過性益が FY2027/3 に乗ることがある。
したがって「予想PER 12.4倍」は額面どおりの割安シグナルではなく、一過性益を除いた『コアPER』はもう少し高い可能性がある。
第二に、PBR 1.50倍は同業(三菱HCキャピタル 0.81倍)を大きく上回る。
これは「ROE 10.4% > 株主資本コスト(仮定8%)」のスプレッドと、銀行譲渡・自社株買いによる資本効率改善期待が織り込まれた『正当なプレミアム』と解釈できる。
判断としては、本件は典型的なバリュートラップ(割安放置)ではなく、むしろ「ROE 改善ストーリーが進行中で、自社株買い・事業入替という明確なカタリストを伴う割安〜適正圏」と位置づけられる。
投資家の対応案: ROE 目標の進捗(2028/3 ≧11%)と一過性益を除いたコア利益のトレンドを四半期で確認しながら、自社株買い実行期間(〜2027/3)を需給の下支えと捉えて段階的に取得するのが妥当。
バリュエーション手法別の目標株価
PER法(保守的/標準/楽観的)
EPS は定量分析の値を使用(FY2026/3 実績 EPS 400.27円、FY2027/3 予想 EPS 約494円)。現在株価 6,113円。
| シナリオ | 適用 PER | EPS(円) | 目標株価(円) | 現在株価比 |
|---|---|---|---|---|
| 保守的 | 11倍(一過性益剥落・コア利益ベース、実績EPS適用) | 400.27 | 約4,400 | -28% |
| 標準 | 13倍(過去レンジ中央・予想EPS適用) | 494 | 約6,400 | +5% |
| 楽観的 | 15倍(ROE11%達成・自社株買い消却効果織り込み、予想EPS適用) | 494 | 約7,400 | +21% |
選定根拠: 保守的=一過性益を除いたコア利益への回帰+過去の低PER局面。
標準=直近の実績PER(約15倍)と予想PER(約12倍)の中間で来期増益を織り込んだ水準。
楽観的=ROE目標達成と9.1%自社株買い消却によるEPS押し上げを反映。
PBR法(保守的/標準/楽観的)— EV/EBITDA法の代替(金融業のため)
⚠️ オリックスは金融業のため EV/EBITDA 法は非適用。代わりに金融業の標準である PBR 法(ROE と連動)を用いる。BPS は FY2026/3 値 4,080.24円。
| シナリオ | 適用 PBR | BPS(円) | 理論株価(円) | 現在株価比 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 保守的 | 1.0倍 | 4,080.24 | 約4,080 | -33% | ROEが資本コスト並みに低下した場合の理論下限 |
| 標準 | 1.5倍 | 4,080.24 | 約6,120 | +0% | 現状ROE10.4%を映す水準(現在株価とほぼ一致) |
| 楽観的 | 1.8倍 | 4,080.24 | 約7,340 | +20% | ROE11%超定着+コングロマリット・ディスカウント解消 |
下値メド
PBR 1.0倍 = BPS 4,080.24円(FY2026/3)を理論的下限の目安として提示。これを割り込むのは ROE が株主資本コストを下回ると市場が判断した局面に限られる。
シナリオ別の詳細根拠
上振れケース(25%): ROE が 2028/3 目標の11%を前倒しで定着し、コングロマリット・ディスカウントが解消。
前提: 一過性益を除いたコアのセグメント利益が二桁成長を維持し、9.1%自社株買いが完遂され EPS が機械的に押し上がる。
確率の根拠: 会社予想ROE(FY2026 ベースで11.82%との市場推計あり)が既に目標圏に到達しつつあり、自社株買いは取得期間明示で実行確度が高い。
投資家の対応: PBR 1.8倍・7,300円超を視野に、自社株買い期間中の押し目を拾う。
ベースケース(50%): 会社予想(FY2027/3 純利益5,300億円、+18.5%)並みに着地。
前提: オリックス銀行売却益約1,242億円が予定どおり計上され、コア事業は堅調横ばい〜小幅増益。
確率の根拠: オリックスの予想精度は保守的→小幅上振れ傾向(FY2026 は Q3 予想440,000→実績447,265で+1.7%上振れ)。
配当も「性向39%または前期額の高い方」で増配基調。
投資家の対応: PBR 1.5倍・予想PER 13倍前後の現状水準を適正とみなし保有継続、配当(予想利回り約3.06%)を享受。
下振れケース(25%): 世界経済減速で投資先・与信先が悪化し、ORIX USA の追加減損・信用損失引当金増、一過性益の剥落が重なる。
前提: マクロ悪化で資産価値下落+格下げ懸念→調達コスト上昇。
確率の根拠: 米通商政策・地政学リスクを会社自身がリスク要因として明記、ORIX USA は既に FY2026 で98%減益。
投資家の対応: 下値メドは PBR 1.0倍=BPS 4,080円。
コア利益のトレンド悪化が確認されたら配当下支えを見つつ撤退判断。
推奨アクションの骨子
- 買いの根拠: ①ROE改善ストーリーが進行中(2028/3 ≧11%目標)。②発行済9.1%・2,500億円の大型自社株買いという明確な需給・EPSカタリスト。③低ROEのオリックス銀行切り離しで資本効率改善。④予想配当利回り約3.06%+増配基調。⑤PBR1.5倍は同業比プレミアムだがROEで正当化される。
- 留意点: ①FY2026・FY2027 の高益には一過性の売却益(Greenko、オリックス銀行)が大きく寄与し、コア利益の地力を見極める必要。②ORIX USA の追加減損リスク。③格下げ懸念(金融業の生命線)。④事業が複雑でディスカウントが再燃する余地。
カタリスト・タイムライン
| 時期 | イベント | 確認すべき数値 | 株価への影響 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月22日〜2027年3月31日 | 自社株買い(1億株・2,500億円上限)取得期間 | 取得進捗率・累計取得株数 | 需給の継続的下支え |
| 2026年6月下旬 | 定時株主総会・FY2025有報提出(前年は6/24提出) | 配当確定・新セグメント区分の説明 | 中立〜小ポジ |
| 2026年6月27日前後 | FY2026/3 期末配当 権利付き最終日(権利確定3/31の中間・期末は別、要確認) | 期末配当62.34円の権利取り | 配当取りの需給 |
| 2026年8月上旬 | FY2027/3 第1四半期決算 | コア利益(一過性除く)の前年同期比 | 一過性依存度の初確認 |
| 2026年10月(目途) | オリックス銀行の大和ネクスト銀行への株式譲渡実行 | 売却益約1,242億円の計上時期確定 | ポジ(資本効率改善の確証) |
| 2026年11月上旬 | FY2027/3 第2四半期(中間)決算・中間配当 | ROE進捗・通期予想の修正有無 | 大 |
| 2027年2月上旬 | FY2027/3 第3四半期決算 | 通期予想達成度・自社株買い進捗 | 大 |
| 2027年5月中旬 | FY2027/3 通期決算・FY2028/3 予想 | ROE が11%目標圏か・新区分セグメント開示 | 最大(ROE目標の中間到達確認) |
注: 権利付き最終日は配当権利確定日(中間9月末・期末3月末)の2営業日前。正確な日付は会社IRで要確認。
7. 学習コーナー
📚 着眼点 1: キャピタルリサイクリングと「一過性益 vs コア利益」の見極め
オリックスの FY2026/3 純利益4,472億円(+27%)には、Greenko 株式譲渡益約950億円を含むキャピタルゲイン約1,966億円が乗っている。
つまり最高益の相当部分が「事業を仕込んで高く売る」回転(キャピタルリサイクリング)による一過性益である。
これを定常的な利益と誤認すると、翌期の反動減で「減益=悪化」と早合点しかねない。
たとえるなら、オリックスは『古民家を買って改装し高値で転売する不動産投資家』のような側面を持つ。
転売益が出た年は華々しいが、それは在庫(仕込み案件)を吐き出した結果でもある。
重要なのは『次に売れる物件をどれだけ仕込んでいるか』。
投資家は売却益の大小に一喜一憂せず、毎四半期『一過性を除いたセグメント利益』が積み上がっているかを追うべきである。
投資家への示唆: 決算では「税引前当期純利益」だけでなく、子会社・持分法投資売却損益(FY2026 で1,113億円)や有価証券売却・評価損益(同1,289億円)の内訳を見て、コア利益の伸びを分離して評価する。
📚 着眼点 2: 金融業に「標準NC」「EV/EBITDA」が効かない理由
定量分析で標準NC・広義NCAV・EV/EBITDA をすべて「金融業のため非適用」とした。
オリックスは長短借入債務6.5兆円・預金2.6兆円という巨額の負債を「商品の仕入れ」として使う商売だからである。
製造業なら有利子負債は財務リスクだが、金融業では運用資産(営業貸付金4.2兆円等)とセットの事業そのものである。
製造業の財務分析を金融業に当てはめるのは、『八百屋の在庫回転率の物差しで銀行を測る』ようなもので意味をなさない。
金融業は資産・負債が両建てで膨らむのが正常で、純現金(NC)は必ず大幅マイナスになる。
だからオリックスは PBR・ROE・配当利回り・自己資本比率(規制資本)で見るのが正しい。
投資家への示唆: オリックスを「PERが割安」と単純比較する前に、その PER が一過性益を含むか、ROE の質(レバレッジ依存か収益力か)を確認する。指標選びを間違えると判断を誤る典型例である。
📚 着眼点 3: ROE を最重要指標に据えた資本政策——銀行譲渡と自社株買いの意味
オリックスは「2028/3 ROE≧11%、2035/3 ROE15%・純利益1兆円」を掲げる。
FY2026/3 の ROE は10.4%で目標圏に接近。
ここで効くのが2つの資本政策である。
第一に、低 ROE のオリックス銀行(規制資本を食う割に利幅が薄い)を3,700億円で売却し、資本を高 ROE 事業に回す。
第二に、発行済株式の9.1%(2,500億円)を自社株買い・消却して分母(株主資本・株数)を圧縮し ROE・EPS を機械的に押し上げる。
ROE = 純利益 ÷ 株主資本。
分子(利益)を増やすのは時間がかかるが、分母(資本)を減らせば即座に ROE は上がる。
オリックスは『利益成長(分子)』と『資本効率化=銀行売却+自社株買い(分母)』の両輪を回している。
これは東証の「資本コストを意識した経営」要請への模範的な回答でもある。
投資家への示唆: ROE 目標の達成は「利益の自然成長」だけでなく「資本政策の実行」にも依存する。
自社株買いの取得進捗(〜2027/3)と銀行譲渡の完了(2026年10月目途)は、ROE 目標達成の確度を測る具体的なチェックポイントになる。
📚 着眼点 4: コングロマリット・ディスカウントと PBR 1.5倍の意味
10セグメント・連結子会社1,163社という複雑さゆえ、オリックスは長年「何の会社か分かりにくい」として PBR が低位(1倍前後)に放置されてきた。
これがコングロマリット・ディスカウント(複合企業割引)である。
現在 PBR 約1.50倍は、ROE 改善と資本政策の明確化でディスカウントが一部解消した結果と読める。
同業の三菱HCキャピタルが PBR 0.81倍にとどまるのと対照的である。
多角化企業は『中身の見えない福袋』にたとえられる。
投資家は中身を確かめにくいぶん、合計より安く値付けする(=ディスカウント)。
オリックスは事業の入替(銀行を売る)とROE目標の明示で『福袋の中身を整理して見せる』ことでディスカウントを縮めようとしている。
投資家への示唆: PBR 1.5倍が「割高」か「正当なプレミアム」かは ROE 次第。
ROE が11%超で定着すればさらなる PBR 切り上げ余地があり、未達ならディスカウント再燃。
事業構成のシンプル化(FY2027/3 新セグメント区分)も注視点。
📚 着眼点 5: オリックスの指標ポジショニング(相場観テーブル)
| 指標 | オリックス | 同業他社平均 | 全上場中央値(目安) | 評価コメント |
|---|---|---|---|---|
| 実績PER | 約15.3倍 | 約8-11倍(三菱HC10.7/東京C8.4/みずほ6.7) | 約15倍 | 同業より高いが、ROE・多角化プレミアムを織り込み妥当圏 |
| 予想PER | 約12.4倍 | — | 約14倍 | 一過性益(銀行売却益)を含むため額面より割安感は割引が必要 |
| PBR | 約1.50倍 | 約0.8倍(三菱HC0.81) | 約1.2倍 | ROE10.4%を映すプレミアム。ディスカウント解消の途上 |
| ROE | 10.4% | 約7.8-11.5% | 約8-9% | 同業上位。目標11%超で更なる評価余地 |
| 配当利回り(予想) | 約3.06% | 約4.0-4.5%(同業はPBR低く利回り高い) | 約2.5% | 同業よりやや低いが増配基調+自社株買いで総還元は厚い |
| DOE | 約3.35% | 約3.1-3.5% | 約2-3% | 安定的な株主還元水準 |
| 自己資本比率 | 24.9% | 約10-17% | 業種依存 | 同業比で低レバレッジ=相対的に財務に余裕 |
| EV/EBITDA | 非適用(金融業) | 非適用 | — | 金融業では使わない |
| 標準NC比率 | 非適用(金融業) | 非適用 | — | 金融業では使わない |
🤔 自分への問い
- 問1: オリックスの最大の強みは何か? それが5年後も強みであり続けるための条件は?
(自分の答え)
- 問2: 自分ならオリックスに投資するか? その判断の根拠を3行で説明せよ。
(自分の答え)
- 問3: この分析で一番難しかった概念は何か? それを自分の言葉で1段落で説明せよ。
(自分の答え)
関連: 演習フォーマット §C-3 / 演習・チェックリスト index
参考情報
ガバナンス情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会計基準 | 米国会計基準(US GAAP)。当社の事業実態を反映するため採用 |
| 設立 | 1964年(オリエント・リース株式会社として)。59年連続黒字の優良企業(出典: risingbull.co.jp) |
| 従業員数 | 33,982名(連結、FY2025/3) |
| 連結子会社 | 1,163社/持分法関連会社 124社(FY2025/3 有報) |
| 取締役構成 | FY2025/3 時点 男性26名・女性3名(女性比率 約10.3%)。指名委員会等設置会社 |
| 海外拠点 | 米州(ORIX USA)、欧州(ORIX Europe N.V.)、アジア・豪州(マレーシア・インドネシア・豪州・中国・韓国・台湾・インド・タイ等) |
| 格付方針 | 信用格付A格相当の財務健全性維持を株主還元の前提条件に明記 |
大株主構成(大量保有報告書ベース、5%以上のグループ)
| 順位 | 株主名 | 保有比率 | 区分 |
|---|---|---|---|
| 1 | ブラックロック・グループ(12社合算) | 7.30% | 外国機関投資家(純投資) |
| 2 | 三井住友トラスト・アセットマネジメント(含むアモーヴァAM) | 5.17% | 国内運用会社(純投資) |
| 3 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ(信託等) | 4.05% | 国内金融グループ(純投資) |
| - | (上記以外) | - | 安定大株主・親会社は不在。外国人持株比率の高い独立系大型株 |
注: アクティビスト・ファンドの大量保有報告は確認されないが、外国人機関投資家比率が高く特定の安定株主が不在のため、資本効率(ROE)への市場の視線は構造的に厳しい。
これが ROE 目標明示・大型自社株買いの背景にある。
出典: EDINET 大量保有報告書。
経営陣に問うべき3つの質問
Q1: FY2026/3 純利益4,472億円のうち、Greenko 等の一過性キャピタルゲイン(約1,966億円)を除いた「コア・セグメント利益」は前年比でどれだけ伸びたのか。
一過性益剥落後の FY2027/3 のコア利益見通しは?
Q2: 2,500億円・9.1%の自社株買い後、オリックス銀行売却で得る3,700億円の資本をどの高ROE事業(事業投資・コンセッション・環境エネルギー等)に再配分するのか。
ROE11%への具体的な分母・分子の寄与分解は?
Q3: オリックス銀行譲渡後、信用格付への影響をどう見込むか。
A格相当維持の蓋然性と、格下げ時の調達コスト上昇インパクトの試算は?
本資料は EDINET DB・適時開示・公開情報をもとにした分析であり、投資勧誘を目的としたものではない。
最終的な投資判断は自己責任で行うこと。
数値は各基準日時点のものであり、最新の開示で更新される可能性がある。
データソースの時点差
| データ種別 | 基準日 | ソース |
|---|---|---|
| 株価・時価総額 | 2026-06-07(直近営業日終値) | price_fetcher(yfinance, 8591.T) |
| 通期財務実績(最新) | FY2026/3(2026-03-31) | TDNet 決算短信〔米国基準〕(2026-05-11 開示) |
| 5期財務時系列 | FY2021/3〜FY2025/3 | EDINET DB get_financials(有報) |
| 定性情報(経営方針・リスク) | FY2025/3 有報(2025-06-24 提出) | EDINET DB get_text_blocks |
| 自社株買い・銀行譲渡 | 2026-04〜05 | オリックス IR・各報道 |
| 大株主 | 2023-05〜2025-09 | EDINET 大量保有報告書 |
出典一覧
- EDINET DB MCP
get_company(E04762)— 企業基本情報・最新財務・健全性スコア・FY2026/3 短信サマリー - EDINET DB MCP
get_financials(E04762, years=5)— FY2021/3〜FY2025/3 財務時系列 - EDINET DB MCP
get_earnings(E04762, include_qualitative_text=true)— FY2026/3 通期決算短信〔米国基準〕(セグメント・BS・PL・CF・予想・後発事象) - EDINET DB MCP
get_analysis(E04762)— 業界ベンチマーク・credit/investment insights - EDINET DB MCP
get_shareholders(E04762)— 大量保有報告書(5%以上) - EDINET DB MCP
get_text_blocks(E04762)— 有報(経営方針・事業の内容・リスク・MD&A) - EDINET DB MCP 競合:
get_financials(E04788)三菱HCキャピタル /get_company(E05346)東京センチュリー /get_company(E05426)みずほリース - price_fetcher(8591.T)(yfinance)— 現値マーケットデータ(株価 6,113 円・時価総額 65,575 億円、2026-06-07)
- kabutan 銀行譲渡・売却益1242億円: https://s.kabutan.jp/news/n202604270949/
- オリックス IR 銀行譲渡リリース: https://www.orix.co.jp/grp/company/newsroom/newsrelease/pdf/260427_ORIXJ.pdf
- Bloomberg 大和3700億円買収: https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-04-27/TE53ITKGZAPY00
- Newsweek Japan 自社株買い9.1%・2500億円: https://www.newsweekjapan.jp/articles/-/321929
- stocktitan ORIX IX 6-K(buyback・dividend・record profit): https://www.stocktitan.net/sec-filings/IX/6-k-orix-corp-current-report-foreign-issuer-8ca143d36781.html
- investing.com 決算カンファレンス(Greenko売却益・セグメント): https://ng.investing.com/news/stock-market-news/earnings-call-transcript-orix-corp-q4-2026-sees-record-profits-stock-surges-93CH-2496980
- EDINET DB FY2026 決算ページ: https://edinetdb.jp/company/E04762/earnings/FY2026
- risingbull 59年連続黒字・配当解説: https://www.risingbull.co.jp/stock/investment-orix