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住友倉庫

【経済・倉庫・運輸関連業】倉庫・運輸関連業銘柄レポート更新 2026-07-05

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目次
  1. 1. 事業概要
  2. 2. バリュエーション分析
  3. ⚠️ 時価総額・株価の基準(必須)
  4. 標準NC(Net Cash)計算 — 5期推移(百万円)
  5. 広義NCAV計算 — 5期推移(百万円)
  6. CN-PER(キャッシュニュートラルPER)
  7. EV/EBITDA分析(競合比較、億円)
  8. EV/EBITDA感度テーブル(NC定義別、住友倉庫、億円)
  9. 成長率モデル適正PER(参考)
  10. DCF前提入力枠(空欄許容)
  11. バリュエーション乖離コメント
  12. 3. 財務分析
  13. 3-1. PL — 5期+予想(百万円)
  14. 3-2. BS — 5期(百万円)
  15. 3-3. BS詳細主要科目 — 5期(百万円)
  16. 3-4. CF — 5期(百万円)
  17. 3-5. 減価償却費明細 — 5期(百万円)
  18. 3-6. 受注高・受注残高
  19. 3-7. 運転資本分析(CCC=売上債権回転日数+棚卸資産回転日数−仕入債務回転日数)
  20. 3-8. 配当推移 — 5期+予想
  21. 3-9. 経営者予想精度(FY2026期中予想 vs 実績)
  22. 3-10. 健全性チェック(事業会社基準・9項目)
  23. 4. 同業他社比較
  24. 競合選定基準
  25. 最新期比較テーブル(FY2026・現値バリュエーション反映)
  26. 競合3期推移(売上・営業利益率)
  27. 運転資本効率(CCC)— 競合比較(FY2026、日数)
  28. 5. リスク評価
  29. 6. 投資判断
  30. 7. 学習コーナー
  31. 参考情報
  32. 出典一覧

住友倉庫(9303)銘柄分析レポート

SUMMARY

現値時価総額 2,890億円(株価3,800円×発行済76,056,857株、market_data_as_of 2026-07-03)。
予想PER 16.6倍(会社予想EPS228.68円ベース。時価総額÷予想純利益ベースでは16.8倍)、予想EV/EBITDA 14.6倍、配当利回り 2.71%
標準NC比率は −13.6%(ネットデット)、広義NCAVは投資有価証券主体で +13.7% (政策保有株の評価益依存)。
健全性スコア 93/100・creditスコア88(格付S)。

指標 評価
時価総額 2,890 億円 中型
予 PER 16.6倍 適正
予 EV/EBITDA 14.6倍 中位〜やや割高
配当利回り 2.71% 中位
標準 NC 比率 −13.6% ネットデット
広義 NCAV 比率 13.7% 低〜中
健全性スコア 93/100 高い

1. 事業概要

住友倉庫は1899年(明治32年)創業の住友グループ総合物流企業であり、東証プライム市場に上場する倉庫・運輸関連業の一角を占める。
倉庫・物流業界は大きく(1)財閥系総合物流企業(三菱倉庫・三井倉庫ホールディングス・住友倉庫)、(2)港湾特化型総合物流企業(上組)、(3)食品・低温物流専業(キユーソー流通システム等)、(4)陸運専業(日本通運・センコー等)に系統分解できる。
住友倉庫はこのうち(1)財閥系総合物流に属し、倉庫業を祖業としながら港湾運送・国際輸送・陸上運送を束ねる物流事業と、都心部の自社不動産を活用する不動産事業を二本柱とする点が特徴である。
三菱倉庫・三井倉庫HDと同様に「物流+不動産」の複合ビジネスモデルを取るが、不動産事業の構成比(住友倉庫5.3%)は三菱倉庫より小さく、物流事業への依存度が相対的に高い。

事業構成(FY2026/3、定量分析のセグメントテーブルをそのまま引用)は以下の通り。

セグメント 売上高(百万円) 構成比 営業利益(百万円) 営業利益率 減価償却(百万円) 設備投資(百万円)
物流事業 185,909 94.7% 13,538 7.28% 8,200 6,013
不動産事業 10,335 5.3% 4,383 42.41% 2,409 20,670
調整額(全社費用) −6,509
連結計 196,244 100% 11,413 5.82%

※13,538+4,383−6,509=11,412 ≒ 11,413(丸め誤差1百万円)。

物流事業 収入内訳(有報MD&A、営業収益ベース):

内訳 金額(百万円) 前年比
倉庫収入 33,402 +3.9%
港湾運送収入 33,610 +3.3%
国際輸送収入 54,596 −0.5%
陸上運送ほか収入 64,308 +1.8%

国際輸送(546億円、物流事業内で最大)は微減(−0.5%)となっており荷動きの正常化・運賃調整の影響がうかがえる一方、倉庫収入・港湾運送は堅調な伸び(+3.9%・+3.3%)である。
不動産事業は売上構成比5.3%にすぎないが、営業利益率42.41%と物流事業(7.28%)の約6倍の収益性を誇り、営業利益の絶対額(4,383百万円)は物流事業(13,538百万円)の約3割に達する。
この高収益不動産事業の存在が、総合物流企業のバリュエーションを歪めやすい一因である(詳細はセクション7着眼点②)。

市場分野別の動向(定性情報、2026年7月時点のWeb検索に基づく)は以下の通り。

市場分野 動向 住友倉庫への影響
首都圏物流施設 2026年Q1空室率9.2%(前期比−0.6pt)、実質賃料4,530円/坪(+0.9%)。JLL・CBRE等各社レポートで賃料上昇基調 大型賃貸倉庫の稼働率・賃料上昇に追い風
関西物流施設 2026年Q1空室率2.2%(前期比−1.5pt)、新規供給3棟が満床で竣工 不動産事業の高収益性を下支え
国際輸送(フォワーディング) 荷動きの正常化・運賃調整 国際輸送売上546億円(−0.5%)に反映
3PL・物流子会社M&A AZ-COM丸和HD(樋口物流サービス子会社化)、センコーグループ(Umiosロジ)、澁澤倉庫(名鉄ワールドトランスポート)等、業界再編が相次ぐ 総合力・住友グループ基盤での差別化が一段と重要に
メガプラットフォーマー参入 Amazon Supply Chain Services(2026年5月発表)が外部荷主向けに自社物流網を開放 3PL・フォワーディング領域における新たな競合脅威
海外物流(インド・東南アジア) 上組がインドSaurashtra Freightを子会社化するなど各社が新興国物流を強化 住友倉庫も中計で海外投資300億円(インド・ベトナム中心)を計画

主要取引先については、有報開示の範囲では個社名は非公表だが、住友グループ各社(住友商事・住友金属鉱山・住友生命保険等)との長期的な物流委託関係が事業基盤の一角を占めるとみられ、住友グループの一員としての取引継続性・与信面の安定が強みとなる。
また港湾運送事業は港湾運送事業法に基づく免許事業であり、新規参入には行政上のハードルがある。

競争優位性の比喩

住友倉庫の参入障壁は「三重の堀」に例えられる。
第一の堀は港湾運送事業法に基づく限定ライセンス(新規参入が事実上困難)、第二の堀は都心部・臨海部に長年蓄積してきた自社保有不動産(保管用面積133万㎡、代替困難な立地)、第三の堀は住友グループという長期的荷主基盤である。
この三重の堀が、物流事業の営業利益率7%台という決して高くない収益性にもかかわらず、JCR長期発行体格付AA−・自己資本比率61.2%という健全な財務基盤を支えている。

固有事象・資本関係

住友倉庫は投資有価証券(政策保有株)を2,163億円(crossShareholdingTotalBookValue、FY2026)保有し、この5年で+96%膨張した。
これは住友グループ各社との持ち合い構造の反映であり、株高局面ではBSを大きく押し上げる一方、資本効率(ROE)を希薄化させる構造的要因ともなっている。
加えて都心部の自社ビル・倉庫用地に含み益を有するとみられ、簿価に表れない実質資産価値がPBR0.92倍という評価に十分反映されていない可能性がある。

業界のビジネスモデルとしては、倉庫・港湾・国際輸送・陸運を垂直統合することで荷主に対するワンストップサービスを提供し、荷動きの季節変動・景気変動に対して事業ポートフォリオの分散で耐性を持たせる点が特徴である。
加えて不動産事業を併営することで、物流事業の利益変動を不動産の安定収益で平準化する「両利きの経営」がこの業態の伝統的な収益モデルとなっている。
着目点としては、物流事業の利益率の変化(労務費・燃料費・地代家賃の転嫁力)と、不動産事業の新規開発・資産回転ビジネスの進捗を継続的にモニタリングすることが重要である。

中期経営計画「2026-2030」(2026年3月31日策定、「Moving Forward to 2030」の最終フェーズ)では、5年累計で設備投資1,650億円(うち成長投資1,250億円・基盤更新投資400億円、内訳は海外300億円・国内950億円)を計画し、2030年度目標として連結営業収益2,800億円(FY2026/3比+44%)・営業利益160億円・ROE8%を掲げる(日本経済新聞LNEWS)。
不動産事業では大型賃貸倉庫への投資拡大に加え、オフィス・商業施設の資産回転型ビジネスを推進する方針が示されている。

⚠️FY整合性注記: 本レポート中の全ての財務数値はFY2026/3(2026年3月期)を最新期として統一し、相対表記(前期・当期等)は用いない。


2. バリュエーション分析

⚠️ 時価総額・株価の基準(必須)

本レポートの全バリュエーション指標(標準NC比率/広義NCAV比率/CN-PER/EV/EBITDA/予想PER/配当利回り/PBR)は、現値マーケットデータ(market_data_as_of: 2026-07-03、直近営業日金曜終値) を使用する。
EDINET get_company の marketCap(有報期末 2026-03-31 固定値 309,525百万円)は使用しない

内部整合性チェック:

標準NC(Net Cash)計算 — 5期推移(百万円)

(定義: 現預金 + 短期有価証券 − 有利子負債。有利子負債=借入金+社債+CP、リース債務除く。出典: get_financials)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
現預金 40,840 46,521 47,947 44,950 39,070
短期有価証券
有利子負債 86,099 82,411 91,180 79,410 78,494
標準NC −45,259 −35,890 −43,233 −34,460 −39,424
標準NC比率(対現値MC289,016百万)※ −15.7% −12.4% −15.0% −11.9% −13.6%

※過年度も分母は現値時価総額289,016百万円に統一(時系列内の相対比較を優先し、市場変動要因を分離するための処理。各年時点の時価総額ではない点に注意)。全期ネットデット。

広義NCAV計算 — 5期推移(百万円)

(定義: 流動資産 + 投資有価証券×0.7 − 負債合計。出典: get_financials)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
流動資産 79,648 92,016 83,068 83,787 76,262
投資有価証券×0.7 77,442 78,872 110,037 108,952 151,409
負債合計 159,775 156,846 172,116 165,702 188,026
広義NCAV −2,685 14,042 20,989 27,037 39,645
広義NCAV比率(対現値MC289,016百万)※ −0.9% 4.9% 7.3% 9.4% 13.7%

※分母は標準NCと同一の現値時価総額。5期で投資有価証券が110,631→216,299百万円(+96%、政策保有株の株高評価)へ急増しており、広義NCAVの拡大は主にこの評価益要因による。

CN-PER(キャッシュニュートラルPER)

指標
予想PER(会社予想EPSベース) 16.6倍
標準NC比率(標準NC÷時価総額) −13.6%(ネットデット)
CN-PER(標準NCベース) 19.1倍(=(289,016−(−39,424))÷17,200)
参考: CN-PER(広義NCAVベース) 14.5倍(=(289,016−39,645)÷17,200)

EV/EBITDA分析(競合比較、億円)

指標 住友倉庫 三井倉庫HD 上組 三菱倉庫
時価総額(億円) 2,890 2,677 5,161 5,407
標準NC(億円) −394 −320 +157 −427
EV(億円) 3,284 2,997 5,004 5,834
EBITDA(億円) 225 335 504 336
EV/EBITDA 14.6倍 8.9倍 9.9倍 17.3倍*

*三菱倉庫のEV/EBITDA17.3倍はEBITDA・EVとも通常営業ベースの数値であり特別利益の影響を受けないが、同社のPER・ROEは特別利益(政策保有株売却益等)で嵩上げされている点に注意(後述4章で表注)。

EV/EBITDA感度テーブル(NC定義別、住友倉庫、億円)

NC定義 NC(億円) EV(億円) EV/EBITDA
標準NC(現預金−有利子負債) −394 3,284 14.6倍
広義NCAV(流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計) 396 2,494 11.1倍

成長率モデル適正PER(参考)

理論PER = 1/(r−g)。r=株主資本コスト仮定8%。

成長率仮定 理論PER 備考
g=0%(ゼロ成長) 12.5倍 PER下限の目安
g=3%(インフレ並み) 20.0倍
g=5%(中程度成長) 33.3倍
住友倉庫 過去5期EPS CAGR(実績) 10.8倍 g=−1.23%(EPS 242.55円→230.86円、FY2022→FY2026、年率)。FY2022-2023は海運事業(コンテナ船市況スーパーサイクル)を含み外れ値と get_analysis が判定済み

DCF前提入力枠(空欄許容)

⚠️ 前提値の自信が低いため、以下は要調査のまま空欄とする(疑似精度を生成しない)。

項目 出典/備考
無リスク金利(%) 要調査 10年国債利回り
β 要調査 get_analysis または類似企業
市場リスクプレミアム(%) 5-6 日本市場慣行値
株主資本コストKe(%) 要調査 Ke = Rf + β × ERP
負債コストKd税引後(%) 要調査 支払利息/有利子負債 × (1−t)
自己資本比率(時価ベース) 要調査 E/(E+D)
WACC(%) 要調査
永続成長率g(%) 要調査 WACC×0.4以下が安全圏
法人税率(%) 30 日本の標準実効税率
明示予測期間(年) 5

5期FCF入力枠(FCF = NOPAT + 減価償却費 − 設備投資 − 運転資本増加):

t+1 t+2 t+3 t+4 t+5
FCF(百万円) 要調査 要調査 要調査 要調査 要調査

計算式: 企業価値 = Σ FCF_t/(1+WACC)^t + TV/(1+WACC)^n、TV(永続成長) = FCF_{n+1}/(WACC−g)

参照: DCF分析 / WACC算出 / ターミナルバリュー / 感応度・シナリオ分析

バリュエーション乖離コメント

  1. EV/EBITDA法: 予想EV/EBITDA14.6倍。競合レンジ8.9〜17.3倍の中位〜やや割高側。
  2. CN-PER法: 標準NCがネットデットのため(−13.6%)、CN-PER(19.1倍)は予想PER(16.6倍)より高い。広義NCAVベースのCN-PER(14.5倍)は逆に予想PERより低く、採用するNC定義でCN-PERの方向性が反転する。
  3. 成長率モデル: 過去5期EPS CAGRは−1.23%(マイナス成長)となり理論PER10.8倍。実績PER16.5倍・予想PER16.6倍はこれを上回る。ただしFY2022-2023は海運事業スーパーサイクルの外れ値を含むため、この理論PERの解釈(コア収益力の評価として妥当か)は定性分析に委ねる。
  4. 広義NCAVは投資有価証券依存で株高局面のみ拡大する性質があり、標準NC(現預金−有利子負債)とは方向性が逆(ネットデットかつNCAVプラス)という事実が並存する。

3. 財務分析

3-1. PL — 5期+予想(百万円)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026 予想FY2027
営業収益 231,461 223,948 184,661 193,398 196,244 200,000
営業利益 27,748 26,090 13,187 13,275 11,413 12,200
経常利益 30,421 29,115 16,880 17,497 15,808 16,100
親会社純利益 19,703 22,455 12,490 20,065 17,668 17,200
EPS(円) 242.55 281.09 158.00 257.32 230.86 228.68
営業利益率 11.99% 11.65% 7.14% 6.86% 5.82% 6.10%
売上総利益 38,426 35,613 22,290 23,196 21,984
減価償却費 9,853 10,010 9,991 10,542 11,129
前年比(売上) −3.25% −17.54% +4.73% +1.47% +1.91%
前年比(営利) −5.98% −49.45% +0.67% −14.03% +6.90%
前年比(経常) −4.29% −42.00% +3.66% −9.66% +1.85%
前年比(純利益) +13.97% −44.38% +60.65% −11.94% −2.65%

⚠️ 期間コンテキスト: FY2022-2023の高収益は海運事業(コンテナ船市況スーパーサイクル)による。
FY2022海運セグメント売上43,608・営利13,152 / FY2023海運売上20,324・営利10,295。
FY2024以降、海運セグメントは消滅(事業縮小・市況剥落)。
get_analysisはFY2022-2023の営業利益をoutlier_high(中央値比2.09倍/1.97倍)と判定。
したがってFY2024以降の減益は海運ブーム剥落による正常化であり、コア物流事業の劣化ではない。

3-2. BS — 5期(百万円)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
総資産 373,720 385,791 436,920 439,847 513,098
流動資産 79,648 92,016 83,068 83,787 76,262
固定資産 294,071 293,774 353,852 356,059 436,835
負債合計 159,775 156,846 172,116 165,702 188,026
純資産 213,945 228,945 264,804 274,145 325,072
非支配株主持分 10,222 11,391 9,560 10,311 11,176
自己資本(純資産−NCI) 203,723 217,554 255,244 263,834 313,896
自己資本比率 54.5% 56.4% 58.4% 60.0% 61.2%
BPS(円) 2,519.25 2,737.57 3,239.67 3,411.77 4,117.89

⚠️ 自己資本比率・BPSは「自己資本=純資産−非支配株主持分」ベース(AOCI含む)。
get_financialsのshareholdersEquity(株主資本174,999百万円、AOCI除外)とは別物のため混同しないこと。
FY2026、総資産+16.7%・純資産+18.6%は主に投資有価証券の評価差額金拡大(後述)による。

3-3. BS詳細主要科目 — 5期(百万円)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
投資有価証券 110,631 112,674 157,195 155,645 216,299
現預金 40,840 46,521 47,947 44,950 39,070
短期有価証券
有利子負債(借入+社債+CP) 86,099 82,411 91,180 79,410 78,494
売上債権 26,238 22,105 19,804 20,876 20,366
棚卸資産 1 1
仕入債務 15,880 12,250 12,093 11,731 12,504

有利子負債内訳(百万円、リース債務除く):

内訳 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
短期借入金 5,496 13,416 5,174 11,918 9,172
長期借入金 24,103 16,995 39,006 30,492 44,322
社債 47,000 47,000 37,000 25,000 25,000
CP 3,500 5,000
1年内償還予定社債 6,000 10,000 12,000
合計 86,099 82,411 91,180 79,410 78,494

※有報MD&A記載の有利子負債82,177百万円(FY2026)はリース債務含み。本レポートは5期一貫のためリース除き78,494百万円を採用。

⚠️ 投資有価証券の急増: 5期で110,631→216,299百万円(+96%)。
FY2026総資産+16.7%・純資産+18.6%は主に政策保有株の株高評価差額金(その他有価証券評価差額金)によるもので、営業実態ではないBS膨張。
crossShareholdingTotalBookValue FY2026=201,338百万円。
ROE希薄化・資本効率のドラッグ要因。

3-4. CF — 5期(百万円)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
営業CF 31,418 29,816 22,034 31,733 28,162
投資CF −5,879 −4,572 −16,019 −10,045 −20,001
財務CF −10,267 −20,525 −5,015 −25,273 −14,303
FCF(営業+投資) 25,539 25,244 6,015 21,688 8,161
設備投資(capex) 9,298 12,977 21,737 13,805 27,028

3-5. 減価償却費明細 — 5期(百万円)

FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
9,853 10,010 9,991 10,542 11,129

3-6. 受注高・受注残高

該当なし(非受注産業。倉庫・港湾運送・国際輸送・不動産賃貸が主体で受注型製造業ではない)。

3-7. 運転資本分析(CCC=売上債権回転日数+棚卸資産回転日数−仕入債務回転日数)

⚠️ 分母統一(厳密法): 売上債権回転日数=売上債権/売上高×365、仕入債務回転日数=仕入債務/売上原価×365(売上原価=売上高−売上総利益で逆算)。
棚卸資産はFY2025-2026で非開示(—)のため0扱い。

項目 FY2025 FY2026
売上高(百万円) 193,398 196,244
売上原価(百万円、逆算) 170,202 174,260
売上債権(百万円) 20,876 20,366
仕入債務(百万円) 11,731 12,504
売上債権回転日数 39.4日 37.9日
棚卸資産回転日数 0.0日(非開示) 0.0日(非開示)
仕入債務回転日数 25.2日 26.2日
CCC 14.2日 11.7日

3-8. 配当推移 — 5期+予想

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026 予想FY2027
DPS(円) 97 100 101 103 103 103
配当性向 40.0% 35.6% 63.9% 40.0% 44.6% 45.0%
DOE(EDINET基準、自己資本=純資産−NCI) 3.85% 3.66% 3.12% 3.03% 2.50%
配当利回り(現値株価3,800円ベース) 2.71%

中期経営計画2026-2030(有報MD&A/配当政策): 年間配当金下限103円、DOE 3.5%〜4.5%目安、自己株取得350億円目途(計画期間中に機動的)、政策保有株式の縮減方針。
⚠️ DOE基準の分母(株主資本 vs 自己資本(純資産−NCI))で解釈が変わる: EDINET基準DOE(自己資本ベース)は2.5%だが、株主資本174,999百万円ベースなら7,859÷174,999=4.5%。
会社目標DOE3.5-4.5%が増配含意か否かは分母定義次第である。

3-9. 経営者予想精度(FY2026期中予想 vs 実績)

予想売上 実績売上 乖離率 予想営利 実績営利 乖離率 予想経常 実績経常 乖離率 予想純利 実績純利 乖離率
FY2026 197,000 196,244 −0.4% 12,000 11,413 −4.9% 16,300 15,808 −3.0% 17,400 17,668 +1.5%

※Q1-Q3短信時点の期中通期予想との比較(1期分のみ、本データセットの制約)。
売上・経常はやや保守的、営業利益はやや楽観的、純利益はほぼ的中という傾向。
複数年の期首予想時系列は本データセットでは限定的。

3-10. 健全性チェック(事業会社基準・9項目)

# 項目 判定 コメント
1 自己資本比率 > 40% 61.2% 自己資本(純資産−NCI)ベース
2 有利子負債 < 現預金 78,494 > 39,070 ネットデット(標準NC −39,424)
3 流動比率 > 150% 209%
4 利益剰余金 > 0 148,899
5 営業CF 3期連続黒字 FY24:22,034/FY25:31,733/FY26:28,162 5期通じて黒字
6 配当 3期連続支払い FY24-26: 101/103/103円 実際は5期連続(FY22-26: 97→103円)
7 EPS前年比プラス 230.86 < 257.32 FY2026はFY2025比マイナス
8 ROE > 8% 6.1% roeOfficial基準
9 営業利益率 > 業界平均 5.82% 競合3社(7.38%/12.40%/5.82%)と比較し中位〜下位

参考: healthScore 93/100(get_company)・creditスコア88・格付S(get_analysis)・JCR長期発行体格付AA−(有報MD&A)。
事業会社基準は倉庫・運輸関連業に適用(金融業ではないため業態版チェックは非適用)。


4. 同業他社比較

競合選定基準

基準 内容
業種 倉庫・運輸関連(EDINET DB業種分類)
時価総額レンジ 住友倉庫現値MC2,890億円の0.3〜5倍(867億〜14,450億円)— 競合3社(2,677/5,161/5,407億円)はいずれもレンジ内
選定理由 倉庫業・港湾運送業・国際輸送業・不動産事業を持つ倉庫・運輸関連大手上場企業。ID照合済(.out/9303-2026-07-05-verification-20260705-010158.md参照)

最新期比較テーブル(FY2026・現値バリュエーション反映)

指標 住友倉庫 三井倉庫HD 上組 三菱倉庫
時価総額(億円) 2,890 2,677 5,161 5,407
売上高(億円) 1,962 2,995 2,948 2,734
営業利益率 5.82% 7.38% 12.40% 5.82%
自己資本比率 61.2% 45.7% 73.5% 59.3%
PER(予想) 16.6倍 21.3倍 18.9倍 23.3倍
PER(実績) 16.5倍 23.9倍 16.8倍 10.2倍*
PBR 0.92倍 1.92倍 1.30倍 1.43倍
ROE 6.1% 8.6% 8.0% 14.5%*
配当利回り 2.71% 1.38% 3.92% 2.40%
EV/EBITDA 14.6倍 8.9倍 9.9倍 17.3倍
標準NC比率 −13.6% −12.0% +3.0% −7.9%
営業CF(億円) 282 237 357 65*
FCF(億円) 82 141 −249 328*

*三菱倉庫: FY2026純利益54,773百万円・ROE14.5%・実績PER10.2倍は特別利益67,645百万円(政策保有株売却等)による嵩上げで、実態を見るには会社予想FY2027純利益23,000百万円(−58%)ベースの予想PER23.3倍を参照すべき。
営業CF65億円は前期比−78%、FCF328億円は投資CFプラス(資産売却関連の特殊要因)による嵩上げ。
※三菱倉庫は1:5株式分割(FY2024→25)、三井倉庫HDは1:3相当分割履歴。
EPS/BPSは分割後基準。

競合3期推移(売上・営業利益率)

企業 FY2024 売上(百万円) FY2025 売上(百万円) FY2026 売上(百万円) FY2024 営利率 FY2025 営利率 FY2026 営利率
住友倉庫 184,661 193,398 196,244 7.14% 6.86% 5.82%
三井倉庫HD 260,593 280,742 299,472 7.96% 6.35% 7.38%
上組 266,785 279,182 294,758 11.47% 11.85% 12.40%
三菱倉庫 254,507 284,069 273,446 7.44% 7.15% 5.82%

運転資本効率(CCC)— 競合比較(FY2026、日数)

指標(日数) 住友倉庫 上組 三井倉庫HD 三菱倉庫 業界中央値
売上債権回転日数 37.9 60.6 データなし データなし データなし
棚卸資産回転日数 0.0 1.8 データなし データなし データなし
仕入債務回転日数 26.2 32.0 データなし データなし データなし
CCC 11.7 30.4 データなし データなし データなし

注: 三井倉庫HD・三菱倉庫はget_financials FY2026に売上債権(tradeReceivables)が非計上のためCCC算出不可。
住友倉庫(11.7日)は上組(30.4日)より短く、運転資本効率は相対的に良好である。


5. リスク評価

住友倉庫のリスクマトリクスは以下の通り(有報「事業等のリスク」記載項目+定性補強)。

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的影響シナリオ 対応状況
政策保有株式の時価下落 株安局面で投資有価証券評価差額金が急減し、純資産・自己資本比率・BPSが悪化。5年で+96%膨張した2,163億円分の逆流リスク 中期経営計画2026-2030で縮減方針を明示(進捗はセクション6参照)
物流不動産市況の変動 賃料下落・空室率上昇で不動産事業(営業利益率42.41%)の収益性が低下 直近は首都圏・関西とも空室率低下・賃料上昇基調(セクション1参照)
燃料油価格の上昇 国際輸送・港湾運送のコスト増、価格転嫁の遅れで利益率圧迫 有報記載の重要リスク項目、燃料サーチャージ等で一部転嫁
人件費・労務費の上昇(物流の2024年問題含む) ドライバー・倉庫作業員不足による賃金上昇、稼働率低下 モーダルシフト・自動化投資・中継拠点整備(北海道・東北・南九州)で対応中
グローバル経済減速(米関税・中国減速等) 国際輸送・海外現地法人の荷動き減少、国際輸送売上(既に−0.5%)の一段の下振れ 海外投資300億円(インド・ベトナム中心)で新興国荷動きの取り込みを企図
自然災害・情報システム/サイバーリスク 倉庫・港湾施設の被災、情報システム障害による物流停止・情報漏洩 有報記載の重要リスク項目、BCP整備
flowchart TD
A[政策保有株式2,163億円] -->|株価下落| B[投資有価証券評価差額金の減少]
B --> C[純資産・自己資本比率の悪化]
B --> D[BPS低下・PBR評価の一段の圧迫]
E[物流不動産市況の変動] --> F[不動産事業(営業利益率42%)の収益変動]
F --> G[連結営業利益への影響大]
H[燃料油・人件費上昇] --> I[物流事業(営業利益率7.28%)の圧迫]
C --> J[PBR0.92倍のバリュエーション据え置き]
G --> J
I --> J
J -->|カタリスト不在なら継続| K[バリュートラップの長期化]
最大リスク深掘り:政策保有株式の時価変動

住友倉庫の投資有価証券は5年で110,631百万円→216,299百万円(+96%)へ膨張し、FY2026の総資産+16.7%・純資産+18.6%の主因もこの評価差額金増(政策保有株の株高評価)であると定量分析で確認済みである。この構造はBSが「営業実態」ではなく「株式市場の気分」で膨らみ縮む二重の脆弱性を意味する
株安局面では逆に純資産・自己資本比率・BPSが急速に悪化しうる一方、たとえ株安局面でROEの分母(自己資本)が縮小すればROEの数値自体は見かけ上改善するというねじれも生じる。
投資家としては、公表される自己資本比率61.2%やBPS4,117.89円を「政策保有株の含み益込みの数字」として割り引いて評価する必要がある。

バリュートラップリスク深掘り:PBR0.92倍の割安放置

PBR0.92倍は一見して割安に映るが、住友倉庫は標準NCがマイナス(−394億円、ネットデット)であり、いわゆる「解散価値が割安」という典型的なネットネット割安パターンには該当しない。割安の主因はネットキャッシュの過剰放置ではなく、ROE6.1%という資本効率の低さそのものにある
政策保有株216億円が自己資本を膨らませてROEを希薄化させ、東証の資本コスト経営要請に対する縮減が遅れれば、PBR1倍割れが恒常化するバリュートラップに陥りやすい。
逆に、中期経営計画で示された政策保有株縮減・自己株取得350億円・ROE目標8%(2030年度)が着実に実行されれば、PBR再評価のカタリストとなり得る。
アクティビストの明示的な関与が確認できない現状(大量保有報告書ベースでは信託銀行系のみ)では、経営陣自身の資本効率改善への本気度が最大の分岐点となる。


6. 投資判断

定量分析で確定済みのバリュエーション乖離コメント(4点)を引用し、以下に定性補強する(新規の乖離コメント再生成は行わない)。

  1. EV/EBITDA法: 予想EV/EBITDA14.6倍。競合レンジ8.9〜17.3倍の中位〜やや割高側 → 定性補強: 標準NCがネットデットである以上、EV/EBITDA倍率にはネットデット分の負担がすでに反映されている。上組(9.9倍、標準NC比率+3.0%のネットキャッシュ企業)との比較では住友倉庫の14.6倍は明確に割高側に映るが、これは資産の質(不動産含み益・港湾ライセンス)を市場が一定程度評価している面もあり、単純な倍率比較だけで割高と断じるのは早計である。
  2. CN-PER法: 標準NCがネットデットのためCN-PER(19.1倍)は予想PER(16.6倍)より高い。広義NCAVベースCN-PER(14.5倍)は逆に予想PERより低く、採用するNC定義でCN-PERの方向性が反転 → 定性補強: この反転は住友倉庫の資本構造の二面性(現預金基準ではネットデット、政策保有株を含めた広義基準ではネットキャッシュ相当)を端的に示している。政策保有株を「換金可能な資産」とみなすか「事業上動かせない持ち合い株」とみなすかで、投資判断の結論が変わる。縮減方針が示された今、広義NCAVベースの評価がより現実味を帯びつつあると解釈できる。
  3. 成長率モデル: 過去5期EPS CAGR−1.23%(マイナス成長)→理論PER10.8倍。実績PER16.5倍・予想PER16.6倍はこれを上回る。ただしFY2022-2023は海運スーパーサイクルの外れ値を含む → 定性補強: セクション7着眼点④で詳述する通り、FY2022-2023の高収益は海運事業(FY2024以降廃止)由来の一過性要因であり、これを含む5期CAGRを額面通りに「構造的な減益トレンド」と解釈するのは適切でない。物流+不動産の現行2セグメント構成でのコア収益力を測るには、より短い期間・セグメント別の趨勢を見る必要がある。
  4. 広義NCAVの資本構造: 広義NCAVは投資有価証券依存で株高局面のみ拡大し、標準NC(現預金−有利子負債)とは方向性が逆(ネットデットかつNCAVプラス)という事実が並存 → 定性補強: この並存自体が、政策保有株縮減の資本政策上のインパクトの大きさを物語る。仮に政策保有株の一部売却が実行されれば、売却代金は自己株取得や有利子負債圧縮に充当可能であり、標準NCのマイナス幅縮小と広義NCAVの縮小が同時に進むという「収斂」が期待されるカタリストである。

バリュエーション手法別目標株価は、定量分析確定値(EPS228.68円、EBITDA22,542百万円、標準NC−39,424百万円、株式数76,056,857株)のみを用いて以下のシナリオを構築する(独自の新規推定値は用いない)。

PER法3シナリオ

シナリオ 前提PER 適用根拠 EPS(会社予想) 理論株価
保守的 10.8倍 定量分析理論PER(過去5期EPS CAGR−1.23%の成長率モデル) 228.68円 約2,470円
標準 16.6倍 現行予想PER(定量分析確定値、現値ベース)を維持 228.68円 約3,796円
楽観的 18.9倍 競合下位(上組)予想PER水準へのレレーティング 228.68円 約4,322円

EV/EBITDA法3シナリオ(理論株価=(目標EV+標準NC)÷株式数)

シナリオ 適用倍率 適用根拠 目標EV(百万円) 標準NC(百万円) 理論株価
保守的 8.9倍 競合下限(三井倉庫HD予想EV/EBITDA) 約200,624 −39,424 約2,119円
標準 14.6倍 現行予想EV/EBITDA(定量分析確定値) 約329,113 −39,424 約3,809円
楽観的 17.3倍 競合上限(三菱倉庫、特別利益要因を含む点に留意) 約389,977 −39,424 約4,609円

下値メド: PBR1.0倍=BPS4,117.89円(定量分析確定値、現在値3,800円対比+8.4%)。この「下値メド」が現在値のわずか上に位置している点自体が、PBR1倍割れの恒常化=バリュートラップの実態を示している

上振れシナリオ(確率25%)

前提: 政策保有株縮減が加速し自己株取得350億円が実行、DOE運用を株主資本ベースで行うことで実質的な増配観測が強まる。
物流施設市況の追い風(首都圏・関西とも空室率低下)が続く。
理論株価はEV/EBITDA楽観(約4,609円)〜PER楽観(約4,322円)レンジ。
投資家対応: 政策保有株縮減の進捗開示・自己株取得の実施ペースを四半期ごとに確認する。

ベースシナリオ(確率50%)

前提: 会社予想(FY2027/3営業収益2,000億円・営業利益122億円・純利益172億円)並みで着地し、政策保有株の評価は市況次第で横ばい。
理論株価はPER標準(約3,796円)〜EV/EBITDA標準(約3,809円)レンジで、現在値3,800円と概ね整合的。
投資家対応: 配当利回り2.71%を享受しつつ中期経営計画の進捗を見極めるホールド。

下振れシナリオ(確率25%)

前提: 政策保有株の株安で投資有価証券評価差額金が逆流しBSが毀損、物流施設市況の悪化・国際輸送の荷動き減速が重なり、コア収益力(理論PER10.8倍が示唆する水準)に収斂する。
理論株価はPER保守的(約2,470円)〜EV/EBITDA保守的(約2,119円)レンジ。
投資家対応: 政策保有株縮減が進まない場合はバリュートラップの長期化を想定し、損切りラインを事前に設定する。

推奨アクション

買いの根拠: PBR0.92倍・配当利回り2.71%という統計的な割安感に加え、不動産事業(営業利益率42.41%)・港湾運送ライセンスという参入障壁は健在。
中期経営計画2026-2030でROE目標8%(2030年度)・政策保有株縮減・自己株取得350億円が明示された点はカタリスト候補となる。
留意点: 標準NCがネットデットであるため「解散価値の割安さ」を根拠にした買いは成立しにくく、割安の主因は資本効率(ROE6.1%)そのものの低さにある。
カタリストの実現(政策保有株縮減の実績・DOE運用の明確化)を四半期ごとに確認しながら段階的に評価すべき銘柄であり、全力買いではなく分割エントリー・進捗確認型の投資判断が妥当である。

カタリスト・タイムライン:


7. 学習コーナー

📚着眼点①:政策保有株2,163億円が住友倉庫の純資産・ROE・PBRに与える構造的影響

住友倉庫の投資有価証券(政策保有株)は5年で110,631百万円→216,299百万円(+96%)へ膨張した。
政策保有株は会計上、その他有価証券評価差額金として純資産に計上されるため、株高局面では自己資本を押し上げるが、これは営業活動由来の内部留保ではなく市場評価の反映にすぎない。
自己資本が「実力以上に」膨らめば、ROE=当期純利益÷自己資本の分母が過大になり、ROE6.1%という数値は実態のオペレーション効率をやや過小評価している可能性がある。
逆に政策保有株を圧縮すれば自己資本が縮小しROEは数値上改善するが、これは実質的な稼ぐ力の向上を伴わない「見かけの改善」になりうる点に注意が必要である。

着眼点①のポイント

政策保有株を多く持つ企業のROE・PBRを評価する際は、自己資本から政策保有株の含み益相当を除いた「調整後自己資本」でROEを再計算する視点を持つとよい。
縮減が進むほどROEの「質」が向上する(分母が実力値に近づく)ため、縮減方針の実行スピードそのものが投資判断材料になる。

📚着眼点②:不動産事業(営業利益率42%)が総合物流企業の実質バリュエーションを底上げする仕組み

住友倉庫の不動産事業は売上構成比5.3%にすぎないが、営業利益率42.41%・営業利益4,383百万円と、物流事業(構成比94.7%、営業利益率7.28%)と比べて極めて高い収益性を持つ。
連結PERやEV/EBITDAを単一の倍率として見ると、この「利益率の全く異なる2事業の合成値」であることが見えにくくなる。
仮に物流事業と不動産事業を別々の倍率(物流は物流専業他社並み、不動産は不動産会社並み)でSOTP(Sum of the Parts)評価すれば、連結PBR0.92倍という水準が本当に割安なのかどうか、異なる結論が得られる可能性がある。

着眼点②のポイント

「物流+不動産」複合企業を評価する際は、セグメント別営業利益(物流13,538百万円・不動産4,383百万円)に業態別の倍率を当てはめるSOTP思考を持つと、連結ベースの単純比較では見えない実質価値が浮かび上がる。

📚着眼点③:ネットデット企業のNC分析(標準NCマイナスでも広義NCAVプラスの読み方)

住友倉庫は標準NC(現預金−有利子負債)が−39,424百万円とマイナス、すなわちネットデット企業である一方、広義NCAV(政策保有株等を含む広義の純資産価値)は+39,645百万円とプラスである。
この符号の食い違いは、「事業のために借入をしている(設備投資・不動産開発のための負債)」ことと「同時に多額の政策保有株を保有している」ことが並存する構造から生じる。
ネットネット株投資の文脈では標準NCマイナスは通常「割安性の欠如」を意味するが、住友倉庫のようなケースでは広義の資産価値(政策保有株の換金可能性)を別途評価する必要がある。

着眼点③のポイント

NC分析は単一の定義に依存せず、標準NC(現預金基準)と広義NCAV(政策保有株等含む)の両方を併記し、その方向性が一致するか逆行するかを確認する習慣を持つとよい。
逆行する場合は、政策保有株の流動性・売却意思の有無が投資判断の分岐点になる。

📚着眼点④:海運スーパーサイクル剥落による「減益」の正しい解釈(コア収益力vs一過性)

住友倉庫はFY2023まで「海運事業」セグメントを有し、FY2022は海運売上43,608百万円・営業利益13,152百万円、FY2023は海運売上20,324百万円・営業利益10,295百万円と、コンテナ船市況スーパーサイクルの恩恵を受けていた(定量分析 get_analysisでもFY2022-2023の営業利益はoutlier_high判定)。
FY2024以降は物流・不動産の2セグメント体制となり、この特殊要因は消滅している。
したがって、海運事業を含む5期の実績(EPS CAGR−1.23%)を単純に「減益トレンド」と解釈するのは誤りで、実態は「一過性の超過収益の剥落」と「物流・不動産2セグメントでの緩やかな増収減益」が混在した結果である。

着眼点④のポイント

セグメント構成が変化した企業の長期趨勢を見る際は、まず「セグメントの組み替え時点」を特定し、それ以前の実績を単純に延長線上のトレンドとして扱わないことが重要である。
住友倉庫の場合、FY2024以降の物流・不動産2セグメント実績のみでコア収益力を再評価すべきである。

📚着眼点⑤:DOE経営・株主資本配当率という還元指標の分母問題

住友倉庫の中期経営計画はDOE(Dividends on Equity、株主資本配当率)3.5〜4.5%を目安に掲げているが、この分母を「自己資本」(EDINET基準)とするか「株主資本」(174,999百万円ベース)とするかで、現状のDOE水準は2.5%(自己資本ベース)〜4.5%(株主資本ベース)と大きく異なる。
会社目標のDOE3.5〜4.5%が「現状からの増配含意」なのか「株主資本ベースでは概ね現状水準の据え置き」なのかは、この分母定義が公式に明示されない限り判別できない。

着眼点⑤のポイント

DOEやDOE目標を掲げる企業を評価する際は、必ず分母の定義(自己資本 or 株主資本)を確認する。
定義が曖昧なまま「DOE目標=増配確約」と解釈すると、実態は横ばいだったというギャップに直面しうる。

指標ポジショニング相場観テーブル(住友倉庫・倉庫3社平均・全上場中央値の比較)

指標 住友倉庫 倉庫3社平均(三菱倉庫9301・三井倉庫HD9302・上組9364) 全上場中央値(参考レンジ) 評価コメント
ROE 6.1% 約9.7%(8.6/8.0/14.5*平均、*三菱倉庫は特別利益要因) 約8〜9% 業界内でも見劣り、政策保有株が分母を押し上げる
PBR 0.92倍 約1.55倍(1.92/1.30/1.43平均) 約1.2〜1.3倍 4社中唯一の1倍割れ、資本効率の低さを市場が織り込み
予想PER 16.6倍 約21.2倍(21.3/18.9/23.3平均) 約14〜15倍 業界内では相対的に低いが全体では平均的水準
配当利回り 2.71% 約2.57%(1.38/3.92/2.40平均) 約2.3〜2.5% 業界内でも遜色ない水準
予想EV/EBITDA 14.6倍 約12.0倍(8.9/9.9/17.3平均) 約8〜10倍 業界内中位、ネットデットのため見かけより割高化
自己資本比率 61.2% 約59.5%(45.7/73.5/59.3平均) 約45〜50% 業界内・全体比較でも健全な水準
物流事業営業利益率 7.28% 約8.5%(三井倉庫HD7.38/上組12.40/三菱倉庫5.82平均) 業種差が大きく単純比較不可 中位、港湾特化型(上組)の収益性には見劣り
標準NC比率 −13.6% 約−5.6%(−12.0/+3.0/−7.9平均) 概ね正〜小幅マイナス 4社中最もネットデット比率が大きい
政策保有株依存度(投資有価証券膨張率) +96%(5年) 各社とも高水準(業界共通の構造課題) 業界特有に高い 東証要請への縮減余地は各社共通の論点

🤔自分への問い(模範解答は書かない)

  1. 政策保有株216億円の評価差額を除いた「調整後自己資本」でROEを試算するとしたら、どのような手順で調整すべきか。

(自分の答え)

  1. 不動産事業(営業利益率42%)の含み益を株価に織り込むとしたら、連結PBRとは別にどのようなバリュエーション手法(SOTP等)が適切か。

(自分の答え)

  1. FY2022-2023の海運スーパーサイクルを除いた「コア収益力」の理論PER10.8倍は、そのまま投資判断の基準として使ってよいか、あるいはどのような追加調整が必要か。

(自分の答え)

関連: 同業比較として三菱倉庫(9301)・三井倉庫ホールディングス(9302)・上組(9364)の各社レポートがある場合は併読するとよい(本レポート作成時点では既存レポートの有無は未確認)。


参考情報

ガバナンス情報(Web検索で補完、取得できた範囲で記載)

項目 内容
代表取締役社長 永田昭仁氏(1961年生、京都大学文学部卒、1985年入社、2024年6月より現職)(日本経済新聞
設立 1899年(明治32年)創業
従業員数 4,473名(平均年齢37.9歳、平均勤続12.9年、平均年収8,441千円、定量分析引用)
会計監査人 EY新日本有限責任監査法人(旧新日本監査法人)
主要取引銀行 三井住友銀行等(住友グループ金融機関、Web情報から推定・IR個別開示の逐語確認は未実施)
海外拠点 米欧星(シンガポール)泰(タイ)中等21社(定量分析引用)
格付 JCR長期発行体格付AA−(定量分析引用)

大株主構成(大量保有報告書ベース、上位10名の全量は取得できず判明分のみ記載)

株主 保有比率 出所/時点
三井住友信託銀行 2.07% 大量保有報告書 2025-09-19
三井住友トラスト・アセットマネジメント 2.14% 大量保有報告書 2025-09-19
アモーヴァ・アセットマネジメント 1.08% 大量保有報告書 2025-09-19
(三井住友信託銀行グループ計) 5.29% 上記3社合算
第5位以下(未確認) 有価証券報告書の大株主上位10名リストはAPI非取得。信託銀行口座(日本マスタートラスト信託銀行等)・自己株式・住友グループ生命保険会社・従業員持株会等が一般的に上位を構成する業界慣行はあるが、住友倉庫個別の具体的な株数・比率は本レポート作成時点で独自検証できていない
社外取締役の視点:経営陣に問う3つの質問
  1. 政策保有株216,299百万円の縮減スケジュールを具体的にどう定量化し、いつまでにROE目標8%(2030年度)へ接続するのか。
  2. DOE3.5〜4.5%の分母は自己資本ベースか株主資本ベースか。増配含意があるのかそれとも現状水準の据え置きなのか、明確化する予定はあるか。
  3. 不動産事業(営業利益率42.41%)の含み益・都心保有不動産の実質価値を、開示や資本政策(資産回転型ビジネス等)を通じてどう株価に反映させていくのか。
免責事項

本レポートは定量分析の確定財務数値とWeb検索による定性情報を組み合わせた分析であり、投資助言を目的とするものではない。
バリュエーション目標株価はシナリオに基づく参考値であり、将来の株価を保証するものではない。
投資判断は自己責任で行うこと。
政策保有株・大株主構成等の一部情報は、本レポート作成時点でAPI・無料Web検索経由では完全な検証ができておらず、最終判断には有価証券報告書・適時開示の原典確認を推奨する。

データソースの時点差

データ種別 時点
financials_as_of(有報・PL/BS/CF) 2026-03-31(FY2026/3)
latest_disclosure_as_of(決算短信) 2026-03-31(FY2026/3、短信公表日2026-05-12)
market_data_as_of(株価・時価総額) 2026-07-03
定性情報(本レポートのWeb検索) 2026-07-05

出典一覧

  1. EDINET DB MCP get_company(E04285) — 企業基本情報・健全性スコア93・最新決算
  2. EDINET DB MCP get_financials(E04285, years=5) — PL/BS/CF 5期財務時系列
  3. EDINET DB MCP get_segments(E04285) — セグメント別売上(物流/不動産)
  4. EDINET DB MCP get_analysis(E04285) — creditスコア88・格付S・FY2022-2023 outlier判定
  5. EDINET DB MCP get_earnings(E04285) — TDNet本決算短信(2026-05-12)、経営者予想精度
  6. EDINET DB MCP get_shareholders(E04285) — 大株主構成(三井住友信託銀行グループ計5.29%)
  7. EDINET DB MCP get_text_blocks(E04285) — 事業内容・事業等のリスク・MD&A要点
  8. yfinance(現値マーケットデータ、market_data_as_of 2026-07-03) — 株価3,800円・時価総額289,016百万円
  9. 競合データ: EDINET DB MCP get_company/get_financials(E04284三井倉庫HD、E04345上組、E04283三菱倉庫)、ID照合済 — .out/9303-2026-07-05-verification-20260705-010158.md
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  14. 物流業界のM&A動向【2026年最新】(M&A総合研究所)
  15. 住友倉庫「パーパス」及び「中期経営計画2026-2030」策定のお知らせ(日本経済新聞・適時開示)
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