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三菱倉庫

【経済・倉庫・運輸関連業】倉庫・運輸関連業銘柄レポート更新 2026-06-01

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目次
  1. 1. 事業概要
  2. 業界の系統分解
  3. 三菱倉庫の事業構成
  4. 主要取引先
  5. 競争優位性の比喩的説明
  6. 三菱倉庫の固有事象・資本関係の詳細分析
  7. 業界のビジネスモデルと着目点
  8. 2. バリュエーション分析
  9. 時価総額・株価の基準(本体準拠)
  10. 標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移
  11. 広義 NCAV 計算 — 5期推移
  12. CN-PER(キャッシュニュートラル PER)
  13. EV/EBITDA 分析
  14. EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別)
  15. 成長率モデル適正 PER(参考)
  16. DCF 前提入力枠(空欄許容)
  17. バリュエーション乖離コメント
  18. 3. 財務分析
  19. PL — 5期(EDINET FY2021/3〜FY2025/3)+ FY2026/3 実績(TDNet)+ FY2027/3 予想
  20. BS — 5期(億円, EDINET)
  21. BS 詳細主要科目(億円) — 5期
  22. CF — 5期(億円, EDINET)
  23. 減価償却費明細(億円) — 5期
  24. 受注高・受注残高
  25. 運転資本分析(CCC)
  26. 配当推移 — 5期 + FY2026/3 実績 + FY2027/3 予想
  27. 経営者予想精度(3期分)
  28. 健全性チェック(事業会社基準)
  29. 4. 同業他社比較
  30. 競合選定基準
  31. 最新期比較テーブル(FY2025/3 財務 × 2026-06-01 現値)
  32. 競合 3期推移(売上・営業利益率)
  33. 運転資本効率(CCC)— 競合比較
  34. 5. リスク評価
  35. リスクマトリクステーブル
  36. リスク因果関係の図
  37. 最大リスクの深掘り
  38. 6. 投資判断
  39. バリュエーション乖離コメントの補強
  40. バリュエーション手法別の目標株価
  41. シナリオ別の詳細根拠
  42. 推奨アクションの構造化
  43. カタリスト・タイムライン
  44. 7. 学習コーナー
  45. 📚 着眼点 1: 「一過性利益」が作る低PERの見抜き方
  46. 📚 着眼点 2: ネットデット企業に NC・NCAV 軸を当てはめない
  47. 📚 着眼点 3: 不動産併営モデルの「利益の質」とディフェンシブ性
  48. 📚 着眼点 4: 中期経営計画の「非連続成長」をどう検証するか
  49. 📚 着眼点 5: 三菱倉庫の指標ポジショニング(相場観テーブル)
  50. 🤔 自分への問い
  51. 参考情報
  52. ガバナンス情報テーブル
  53. 大株主構成テーブル
  54. 社外取締役の視点
  55. 免責事項
  56. データソースの時点差テーブル
  57. 出典一覧

三菱倉庫株式会社(9301)銘柄分析レポート

SUMMARY

三菱倉庫は東証プライム上場の総合物流大手で、物流事業(売上構成比約84%)と高採算の不動産事業(同約16%) の二本柱を持つ三菱グループ企業。
時価総額 5,147億円 の中型株。
現値ベースの予 PER は会社予想 EPS に asset-sale 益が混在するため見かけ上低く出るが、経常利益ベースの正常化収益で見ると割安ではない。
標準 NC は −490.7億円(ネットデット) で、現預金より有利子負債が大きいキャッシュリッチ型ではない点に注意。
FY2026/3(TDNet 2026-04-30 開示)は投資有価証券売却益により純利益 +71.9%の547.7億円、FY2027/3 は経常ほぼ横ばい予想。
配当は FY2026/3 ¥38 → FY2027/3 予想 ¥44 への増配 方針。

指標 評価
時価総額 5,147 億円 中型
予 PER(FY2026 実績 NI ベース) 9.4倍 見かけ割安(一過性益込み)
予 EV/EBITDA(FY2025 ベース) 14.8倍 やや割高
配当利回り(FY2027 予想 ¥44) 2.93% 中位
標準 NC 比率 −9.5% ネットデット
広義 NCAV 比率 大幅マイナス 該当せず(資産集約型)
PBR 1.76倍 解散価値超
ROE(FY2025/3) 10.9% 中位

1. 事業概要

業界の系統分解

倉庫・総合物流業界は、出自によって大きく3系統に分類できる。

三菱倉庫はこのうち 財閥系倉庫の筆頭格 に位置する。
物流(売上構成比83.7%)で規模を確保しつつ、都心優良不動産(構成比16.3%だが高採算)で収益の質を底上げする構造は、上組型の「現場効率」モデルとも、フォワーディング型の「資産軽量」モデルとも異なる。
三菱倉庫の競争力は「立地・グループ基盤・不動産含み益」という、後発が容易に複製できない蓄積資産にある。

三菱倉庫の事業構成

セグメント別売上構成(FY2025/3)

出典: 三菱倉庫 決算(lnews.jp / cargo-news.online 報道、FY2025/3 連結)。
営業利益のセグメント別内訳は会社開示の構成比レンジ(物流 50-70%台 / 不動産 20-40%台)を併記。

セグメント 売上高(億円) 構成比 営業利益率の特徴
物流事業 2,376.9 83.7% 全社の売上の大宗。倉庫・陸運・港湾・国際輸送。利益率は不動産より低い
うち倉庫事業 (+2.0% YoY) 中核。医薬・化学品保管に強み
うち陸上運送事業 (+7.2% YoY)
うち港湾運送事業 (−4.1% YoY)
うち国際運送取扱事業 (+23.6% YoY) 国際フォワーディング、最も高成長
不動産事業 463.8 16.3% 横浜ベイクォーター・日本橋/東京ダイヤビルディング等。高採算(全社営業利益の20-40%台を稼得)
合計 2,840.7 100.0%

注: FY2025/3 連結営業収益 2,840.7億円のうち物流 2,376.9億円は報道値、不動産 463.8億円は差額。
不動産事業は売上構成比16%だが利益貢献度はそれを上回り、当社の収益の質を支える。

市場分野別の成長動向(FY2025/3 実績ベース):

事業分野 動向 コメント
国際運送取扱(フォワーディング) ◎急成長(+23.6%) 国際物流需要を取り込み最も伸びた
陸上運送 ○堅調(+7.2%) 国内配送ネットワーク
倉庫事業 ○微増(+2.0%) 中核だが成熟。医薬・化学品保管に強み
港湾運送 △減(−4.1%) 取扱量減
不動産事業 △ほぼ前期並み 横浜ベイクォーター等の賃貸。高採算で利益貢献は売上比以上

FY2026/3(TDNet 2026-04-30 開示)は営業収益が前期比 −3.7% の2,734.5億円とやや減収だったが、投資有価証券売却益により親会社株主帰属純利益は +71.9% の547.7億円へ急増した。
本業(物流)は微増・不動産は減収という地味な実態の一方、保有資産(政策保有株式・固定資産)の売却で利益が嵩上げされた構図である。

主要取引先

競争優位性の比喩的説明

競争優位の本質: 「動かせない資産」の二重構造

三菱倉庫の堀(moat)は2層ある。
1層目は 都心一等地の不動産 ―― 横浜ベイクォーターや日本橋の自社ビルは、明治以来の倉庫用地を再開発したもので、いま同じ立地を新規取得するのは事実上不可能。
これは「先に良い席に座った者勝ち」の不動産ゲームで、後発は同じ盤面に座れない。
2層目は 医薬品物流の認証・ノウハウ ―― GDP 準拠の温度管理倉庫は、建設費だけでなく「事故ゼロの実績」という信用の蓄積が必要で、製薬会社は一度任せた物流業者を簡単には替えない。
立地と信用、どちらも「お金を積めばすぐ買える」ものではない点が堀の源泉である。

三菱倉庫の固有事象・資本関係の詳細分析

中期経営計画[2025-2030]: 「非連続な成長」への賭け

2025年2月28日に公表された経営計画[2025-2030]は、当社の歴史的な戦略転換である。
2030年度に事業利益630億円(FY2024 225億の約2.8倍)、純利益410億円を掲げ、6年間で総投資額約5,900億円を投じる。
利益構成比を物流65%・不動産30%・新規5%へ再設計し、(1)1,000億円規模の大型M&A、(2)賃貸用物流施設(物流不動産)への本格参入、(3)医薬品物流の欧米展開、(4)グリッド蓄電池など新規事業、を打ち出した。
従来の「堅実な財閥系倉庫」から「自ら資産を回転させ非連続成長を狙う」企業への変身宣言であり、成功すればROE・株価の再評価、失敗すれば過剰投資・のれん減損のリスクを孕む。

業界のビジネスモデルと着目点

倉庫・総合物流業の収益は、(A)倉庫保管・荷役のストック型フィー、(B)輸送・フォワーディングのフロー型フィー、(C)不動産賃貸のストック型賃料、の3層で構成される。
景気感応度は (B) フォワーディング > (A) 倉庫 > (C) 不動産 の順。
三菱倉庫は (C) 不動産を厚く持つことで景気下押し局面の利益の底が堅く、ディフェンシブ性が高い。
一方で資産集約型ゆえに ROE・資本効率は構造的に上がりにくく、PBR が1倍台に留まりやすい業態でもある。
当社が中計で「資産回転」「政策保有株削減」を掲げるのは、この資本効率の宿題に正面から取り組む姿勢の表れである。


2. バリュエーション分析

時価総額・株価の基準(本体準拠)

バリュエーション指標の時価総額・株価は 現値マーケットデータ(market_data_as_of: 2026-06-01) を使用する。EDINET スナップの期末固定値は使わない。

内部整合性チェック(±5% 以内):

注: 発行済株式数は EDINET スナップの shares_outstanding が年度間で非連続(FY2024 79,584千株 → FY2025 378,882千株)であり、FY2025 期中に株式分割が反映されたとみられる。
本レポートの EPS/BPS/DPS は全て現在の発行済株式数 342,809,476 株に統一して算出している。

標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移

標準 NC = 現預金 + 短期有価証券 − 有利子負債。
有利子負債は snapshot の interest_bearing_debt(jgaap_components: 短期借入金+1年内返済長期借入金+長期借入金+社債)。
投資有価証券は含めない。
短期有価証券は snapshot に独立フィールドがないため「—(0)」。
出典: EDINET DB snapshot(E04283_FY*.json)。

項目(億円) FY2021/3 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3
現預金 613.7 525.0 623.0 584.4 610.1
短期有価証券
有利子負債 1,023.5 1,029.0 1,015.9 1,093.6 1,100.7
標準 NC −409.9 −503.9 −392.9 −509.2 −490.7
標準 NC比率(÷現値時価総額) −8.0% −9.8% −7.6% −9.9% −9.5%

全期にわたり標準 NC はマイナス(ネットデット)。
三菱倉庫は倉庫・不動産という資産集約型ビジネスで、設備・不動産を有利子負債で賄う構造。
「NC が溜まった割安小型株」の枠組みは当社には当てはまらない。

広義 NCAV 計算 — 5期推移

広義 NCAV = 流動資産 + 投資有価証券 × 0.7 − 負債合計。

注: CLIスナップショット経路では流動資産・投資有価証券・負債合計の個別科目が取得できていない(snapshot は集計値のみ保持)。
広義 NCAV は算出不能項目を埋めない。
総資産 6,260.6 億円に対し純資産 2,928.9 億円・負債 3,331.7 億円であり、固定資産(倉庫・不動産)が資産の過半を占める資産構成のため、流動資産から負債合計を引く広義 NCAV は大幅マイナスとなる。
バリュエーション上は NCAV 軸は無効とし、EV/EBITDA・PER・PBR を主軸とする。

項目(億円) FY2021/3 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3
流動資産 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得
投資有価証券×0.7 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得
負債合計 2,712.1 2,904.1 2,917.7 3,867.8 3,331.7
広義 NCAV 大幅マイナス 大幅マイナス 大幅マイナス 大幅マイナス 大幅マイナス
広義 NCAV比率 該当せず 該当せず 該当せず 該当せず 該当せず

CN-PER(キャッシュニュートラル PER)

標準 NC がマイナス(ネットデット)のため、CN-PER は通常の「キャッシュ控除で実質 PER が下がる」方向ではなく、ネットデットを上乗せした実質 PER が見かけ PER より高くなる方向に働く。

指標
予想 PER(FY2026/3 実績 NI 547.7億 ベース) 9.4 倍
標準 NC 比率(標準NC ÷ 時価総額) −9.5%
CN-PER(標準 NC ベース)= PER ×(1−NC比率) 10.3 倍
参考: CN-PER(経常215億ベースの正常化 NI 約148億で再計算) 約 38 倍

注: FY2026/3 の純利益 547.7億は投資有価証券売却益を含む一過性嵩上げ。
経常利益 215億をベースに税率31%概算で正常化純利益 約148億とすると、現値時価総額に対する正常化 PER は約34.7倍、CN-PER は約38倍となり、リカーリング収益で見れば割安ではない。

EV/EBITDA 分析

EV = 現値時価総額 − 標準NC(= 時価総額 + ネット有利子負債)。
EBITDA = 営業利益 + 減価償却費(FY2025/3 ベース)。
競合は現値時価総額(2026-06-01)と各社 FY2025/3 snapshot。

指標(億円) 三菱倉庫 上組 住友倉庫 三井倉庫HD
時価総額 5,147.3 4,681.3 2,980.0 2,932.2
標準 NC −490.7 +225.6 −155.1 −526.1
EV 5,637.9 4,455.7 3,135.1 3,458.3
EBITDA 380.0 462.8 238.2 284.2
EV/EBITDA 14.8 9.4 16.0 13.3

注: 上組のみ標準 NC がプラス(キャッシュリッチ・自己資本比率73%)で EV/EBITDA が最も低い。三菱倉庫は EBITDA 規模は最大だが EV も最大で、倍率は中位〜やや高め。

EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別)

NC 定義 NC(億円) EV(億円) EV/EBITDA
標準 NC(現預金−有利子負債) −490.7 5,637.9 14.8
広義 NCAV ベース 算出不能(科目未取得)

成長率モデル適正 PER(参考)

理論 PER = 1 / (r − g)。r = 株主資本コスト(仮定 8%)。

成長率仮定 理論 PER 備考
g = 0%(ゼロ成長) 12.5 倍 PER 下限の目安
g = 3%(インフレ並み) 20.0 倍
g = 5%(中程度成長) 33.3 倍 中計の物流+不動産シナジー成長想定に近い
三菱倉庫 売上 5期 CAGR(FY2021→FY2025 = 7.4%) 経常利益 CAGR は +7.7%(160.1→215.0億, FY2021→FY2026)

DCF 前提入力枠(空欄許容)

疑似精度禁止のため、自信の低い前提値は 要調査 のままとする。

推定値の算出式(参考):

項目 出典/備考
無リスク金利(%) 要調査 日本10年国債利回り(1.0-1.5%レンジ想定)
β 要調査 倉庫・運輸関連業セクター
市場リスクプレミアム(%) 5-6 日本市場慣行値
株主資本コスト Ke(%) 上記から算出 Ke = Rf + β × ERP
負債コスト Kd 税引後(%) 要調査 支払利息/有利子負債 ×(1−t)
自己資本比率(時価ベース) 約 82%(E=5,147 / E+D=5,147+1,101) E/(E+D)
WACC(%) 上記から算出
永続成長率 g(%) 要調査 倉庫+不動産の安定成長性を参考に
法人税率(%) 31 日本の標準実効税率
明示予測期間(年) 5 中計 2025-2030 と整合

5期 FCF 入力枠(FCF = NOPAT + 減価償却費 − 設備投資 − 運転資本増加):

t+1 t+2 t+3 t+4 t+5
FCF(億円) 要調査 要調査 要調査 要調査 要調査

計算式: 企業価値 = Σ FCF_t/(1+WACC)^t + TV/(1+WACC)^nTV = FCF_{n+1}/(WACC−g)

参照: DCF分析 / WACC算出 / ターミナルバリュー / 感応度・シナリオ分析

バリュエーション乖離コメント

3手法の結果を並置する(事実ベース):

  1. EV/EBITDA 法(FY2025 ベース): 14.8倍。同業中位(上組9.4・住友16.0・三井13.3)で、やや割高〜中位。EBITDA 規模は最大だが EV も最大。
  2. CN-PER 法: 見かけ PER 9.4倍はFY2026 純利益に投資有価証券売却益が混入した一過性嵩上げの結果。経常215億ベースの正常化 CN-PER は約38倍で、リカーリング収益では割高水準。
  3. 成長率モデル適正 PER(参考): 売上 CAGR 7.4% を成長率と読むと理論 PER は 33倍超だが、これは持続成長前提に依存。

乖離パターン: 「会社予想 EPS ベースでは見かけ割安(9.4倍)だが、これは資産売却益による一過性の利益嵩上げが効いており、リカーリングの経常利益で正常化すると割安ではない」。
NC 軸は当社がネットデットのため無効。
乖離の解釈・投資判断はリスク評価・投資判断セクションで深掘りする。


3. 財務分析

PL — 5期(EDINET FY2021/3〜FY2025/3)+ FY2026/3 実績(TDNet)+ FY2027/3 予想

EDINET 5期は snapshot 由来。
FY2026/3 実績は TDNet 決算短信(2026-04-30 開示)、FY2027/3 は会社予想(WebSearch: minkabu/トレーダーズ等報道)。

項目(億円) FY2021/3 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3 実績 FY2027/3 予想
営業収益 2,137.3 2,572.3 3,005.9 2,545.1 2,840.7 2,734.5 要再取得
営業利益 117.3 181.4 230.3 189.4 203.1 要再取得 要再取得
経常利益 160.1 231.5 300.5 243.6 186.2 215.0 216.0
当期純利益 391.6 178.9 272.3 277.9 318.6 547.7 要再取得
EPS(円, 現株式数換算) 114.2 52.2 79.4 81.1 92.9 159.8 要再取得
営業利益率 5.5% 7.1% 7.7% 7.4% 7.1%
前年比(営業収益) +20.4% +16.9% −15.3% +11.6% −3.7%
前年比(経常利益) +44.6% +29.8% −18.9% −23.6% +15.5% +0.5%

注: EDINET get_financials の最新通期は FY2025/3(financials_as_of: 2025-03-31)。
FY2026/3 は TDNet 決算短信 2026-04-30 開示の通期実績で、有報未提出のため本セクション以外の財務テーブル(BS/CF/標準NC等)は FY2021/3〜FY2025/3 の 5 期構成を維持する。
FY2026/3 の営業利益・FY2027/3 の各利益線は本分析で一次確認できず「要再取得」。
FY2026/3 純利益 547.7億・経常 215.0億・営業収益 2,734.5億、配当 ¥38、FY2027/3 経常予想 216億・配当予想 ¥44 は確認済み。
FY2025/3 の経常利益186.2億は前期比減だが、税前利益は投資有価証券評価等で492.2億と高く、純利益318.6億に繋がっている(経常と純利益の逆転に注意)。

BS — 5期(億円, EDINET)

項目 FY2021/3 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3
総資産 5,357.6 5,621.9 5,736.9 6,791.4 6,260.6
負債合計 2,712.1 2,904.1 2,917.7 3,867.8 3,331.7
純資産(自己資本) 2,645.5 2,717.8 2,819.2 2,923.6 2,928.9
自己資本比率 49.4% 48.3% 49.1% 43.0% 46.8%
BPS(円, 現株式数換算) 771.7 792.8 822.4 852.8 854.4

注: 流動資産・固定資産の内訳は snapshot に保持されておらず「要再取得」。純資産 = snapshot equity(自己資本)。負債合計 = 総資産 − 純資産で逆算。

BS 詳細主要科目(億円) — 5期

項目 FY2021/3 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3
現預金 613.7 525.0 623.0 584.4 610.1
短期有価証券 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得
有利子負債 1,023.5 1,029.0 1,015.9 1,093.6 1,100.7
投資有価証券 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得
売上債権 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得
棚卸資産 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得
仕入債務 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得

注: 現預金・有利子負債以外の個別科目は CLI スナップショット経路で未取得。投資有価証券(政策保有株式)は当社の資本効率議論で重要だが、本分析では金額未確定(要 EDINET 再取得)。

CF — 5期(億円, EDINET)

項目 FY2021/3 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3
営業 CF 401.8 362.2 404.9 417.7 296.2
投資 CF −140.0 −292.2 −143.8 −314.8 +155.0
財務 CF −52.7 −165.2 −170.7 −148.6 −441.9
FCF(営業+投資) 261.7 70.0 261.1 102.9 451.2

注: FY2025/3 は投資 CF が +155.0億とプラス(投資有価証券・固定資産の売却による)。
財務 CF −441.9億は借入返済・自己株取得・配当の合算とみられる。
FY2025/3 の FCF 451.2億は一過性の資産売却を含むため、平常時の FCF 水準(260億前後)とは性質が異なる。

減価償却費明細(億円) — 5期

FY2021/3 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3
148.6 154.7 157.1 160.4 176.9

受注高・受注残高

該当なし(非受注産業)。倉庫・物流・不動産賃貸はストック型・スポット型収益で受注残高の概念に馴染まない。

運転資本分析(CCC)

分母統一ルール: 売上債権回転日数 = 売上債権/売上高×365、棚卸資産回転日数 = 棚卸資産/売上原価×365、仕入債務回転日数 = 仕入債務/売上原価×365。

注: 売上債権・棚卸資産・仕入債務・売上原価が CLI スナップショット経路で未取得のため、CCC は算出不能(要 EDINET 再取得)。
倉庫・物流業は棚卸資産が極小(自社在庫を持たず顧客貨物を預かる受託モデル)で、CCC は製造業より構造的に短い業態である点のみ事実として付記する。

指標(日数) FY2024/3 FY2025/3 算出式・分母
売上債権回転日数 要再取得 要再取得 売上債権/売上高×365
棚卸資産回転日数 要再取得 要再取得 棚卸資産/売上原価×365
仕入債務回転日数 要再取得 要再取得 仕入債務/売上原価×365
CCC 要再取得 要再取得 上記合算

配当推移 — 5期 + FY2026/3 実績 + FY2027/3 予想

配当総額は EDINET snapshot(dividends_total)。
1株配当は FY2026/3 ¥38・FY2027/3 予想 ¥44 が確認値。
過去期の DPS は配当総額/現株式数の概算(参考値)。

項目 FY2021/3 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3 実績 FY2027/3 予想
配当総額(億円) 51.3 56.4 65.9 77.0 112.4 要再取得 要再取得
1株配当(円) 約15.0 約16.5 約19.2 約22.5 約32.8 38.0 44.0
配当利回り(現値¥1,501.5 基準) 2.18% 2.53% 2.93%
配当性向 13.1% 31.5% 24.2% 27.7% 35.3% 23.8%(NI547.7基準・一過性込み)

注: 1株配当の過去期は配当総額/現株式数の概算で、株式分割前の実額とは一致しない(参考値)。
FY2026/3 ¥38・FY2027/3 予想 ¥44 は会社開示の確認値(増配方針、TDNet 2026-04-30)。

経営者予想精度(3期分)

予想精度データなし(各期の期初会社予想と実績の対比データを本分析で取得できず)。
FY2026/3 は期中に純利益予想を +50億上方修正(投資有価証券売却益、Yahoo報道)した経緯があり、会社予想は保守的に置かれる傾向が示唆される。

健全性チェック(事業会社基準)

出典: EDINET snapshot FY2025/3。

# 項目 基準 実績 判定
1 自己資本比率 > 40% >40% 46.8%
2 有利子負債 < 現預金 IBD<Cash IBD 1,100.7 > Cash 610.1
3 流動比率 > 150% >150% 算出不能(流動資産未取得)
4 利益剰余金 > 0 >0 純資産 2,928.9億・剰余金潤沢
5 営業CF 3期連続黒字 黒字継続 5期連続黒字(296〜418億)
6 配当 3期連続支払い 継続 連続増配中
7 EPS 前年比プラス プラス FY2025 +14.6%、FY2026 +72%
8 ROE > 8% >8% 10.9%(FY2025)
9 営業利益率 > 業界平均 業界比 7.1%(業界中位、上組11.9%には劣後)

健全性総括: 自己資本比率・営業CF・配当継続・ROE は良好。
ただし「有利子負債 < 現預金」は不成立(資産集約型のため構造的)で、当社はキャッシュリッチ型ではなくネットデット型。
財務健全性は高いが「割安バリュー株」の典型像とは異なる。


4. 同業他社比較

競合選定基準

基準 内容
業種 倉庫・運輸関連業(東証33業種)。総合物流+不動産の事業構造が近い倉庫大手
時価総額レンジ 三菱倉庫5,147億の0.3-5倍内(上組4,681・住友2,980・三井2,932・澁澤658)
選定理由 上組=最大の同業・キャッシュリッチ対極例、住友倉庫=不動産併営の近似モデル、三井倉庫HD=フォワーディング比率高い物流特化

最新期比較テーブル(FY2025/3 財務 × 2026-06-01 現値)

指標 三菱倉庫 上組 住友倉庫 三井倉庫HD
時価総額(億円) 5,147.3 4,681.3 2,980.0 2,932.2
売上高(億円) 2,840.7 2,791.8 1,934.0 2,807.4
営業利益率 7.1% 11.9% 6.9% 6.4%
自己資本比率 46.8% 73.3% 38.4% 33.9%
PER(倍) 16.2 17.4 14.8 29.2
PBR(倍) 1.76 0.98 2.38 3.70
ROE 10.9% 7.5% 11.9% 10.6%
配当利回り 2.18%※
EV/EBITDA(倍) 14.8 9.4 16.0 13.3
標準 NC 比率 −9.5% +4.8% −7.5% −18.0%
営業 CF(億円) 296.2 404.1 317.3 219.0
FCF(億円) 451.2 要再取得 要再取得 要再取得

注: PER は FY2025/3 純利益ベース(三菱倉庫 16.2倍)。
サマリーの 9.4倍は FY2026/3 純利益(一過性益込み)ベースで別基準。
※三菱倉庫の配当利回りは FY2025/3 実額ベース。
上組は自己資本比率73%・PBR0.98倍・標準NCプラスの「キャッシュリッチ低PBR」型で、三菱倉庫とは資本構造が対照的。

競合 3期推移(売上・営業利益率)

企業 FY2023 売上 FY2024 売上 FY2025 売上 FY2023 営利率 FY2024 営利率 FY2025 営利率
三菱倉庫 3,005.9 2,545.1 2,840.7 7.7% 7.4% 7.1%
上組 2,741.4 2,667.8 2,791.8 11.5% 11.5% 11.9%
住友倉庫 2,239.5 1,846.6 1,934.0 11.7% 7.1% 6.9%
三井倉庫HD 3,008.4 2,605.9 2,807.4 8.6% 8.0% 6.4%

注: 上組が一貫して営業利益率11%超で最高。三菱倉庫は7%台で安定(規模は最大級)。営業利益率では上組に明確に劣後する一方、不動産の含み・賃貸収益で ROE・PBR では見劣りしない。

運転資本効率(CCC)— 競合比較

売上債権・棚卸資産・仕入債務が各社 snapshot で未取得のため CCC は全社算出不能(要 EDINET 再取得)。
倉庫・物流業は棚卸資産が極小の受託モデルで、CCC は製造業対比で構造的に短い業態である点のみ付記。

指標(日数) 三菱倉庫 上組 住友倉庫 三井倉庫HD 業界中央値
売上債権回転日数 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得 データなし
棚卸資産回転日数 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得 データなし
仕入債務回転日数 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得 データなし
CCC 要再取得 要再取得 要再取得 要再取得 データなし

5. リスク評価

リスクマトリクステーブル

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的影響シナリオ 対応状況
一過性利益への依存 FY2026 純利益547.7億は投資有価証券売却益が主因。売却原資(政策保有株)が枯渇すると純利益が経常水準(215億)へ正常化し、見かけPER9倍→正常化PER34倍へ「割安の幻」が剥落 中計で資産回転を本業化する方針だが恒常化できるか未証明
中計5,900億円投資の回収不確実性 物流不動産・大型M&Aが想定リターンを下回ると、のれん減損・減価償却増で営業利益を圧迫 投資規律・案件選別が鍵。実行はこれから
物流不動産での後発不利 プロロジス・GLP・ESR等の専業大手が市場を先占。後発の三菱倉庫は好立地用地の取得競争・賃料競争で不利 自社保有地・グループ連携で差別化を図る
国内倉庫需要の成熟 国内倉庫事業は+2%の微増に留まり成熟。EC・3PL競争で単価下落圧力 医薬・化学品など高付加価値分野へシフト
金利上昇 有利子負債1,100億円・ネットデット企業のため、金利上昇は支払利息増・不動産評価の逆風 自己資本比率46.8%で耐性はあるが資産集約型ゆえ感応度は相応
親会社・グループ依存 三菱グループ向け取引の比率低下や系列再編が起きれば安定基盤が揺らぐ グループ外・海外顧客の開拓で分散

リスク因果関係の図

flowchart TD
    A[政策保有株式の売却益] -->|FY2026 純利益を+72%嵩上げ| B[見かけPER 9倍の割安感]
    B -->|売却原資が枯渇| C[純利益が経常215億へ正常化]
    C --> D[正常化PER 34倍へ・割安の幻が剥落]
    E[中計5,900億円の大型投資] -->|想定リターン未達| F[のれん減損・減価償却増]
    F --> G[営業利益・ROEの下押し]
    H[物流不動産への後発参入] -->|専業大手が先占| I[賃料・用地競争で不利]
    I --> G
    J[金利上昇] -->|有利子負債1,100億| K[支払利息増・不動産評価逆風]
    K --> G
    L[不動産の安定賃料収益] -.緩和.-> G
    M[医薬品物流の高い参入障壁] -.緩和.-> C
    N[自己資本比率46.8%] -.緩和.-> K

最大リスクの深掘り

最大リスク: 「割安の幻」―― 一過性利益が作る低PERの罠

当社の最大の定性リスクは、FY2026/3 の純利益547.7億円(前期比+71.9%)が 投資有価証券売却益という一過性要因 で嵩上げされている点にある。
この純利益をそのまま使うと予PERは約9倍と「割安」に見えるが、これは罠になりうる。

  • シナリオ①(売却継続): 中計通り政策保有株・低稼働資産の売却を毎期続けられれば、利益水準は維持され低PERが正当化される。ただし売却原資は有限で、いずれ枯渇する。
  • シナリオ②(売却枯渇): 売却益が剥落すると純利益は経常利益215億円水準へ回帰。現値時価総額5,147億に対する正常化PERは約34倍となり、「割安」どころか割高評価に転じる。
  • シナリオ③(投資回収): 売却で得た原資を中計の成長投資(物流不動産・M&A)に振り向け、リカーリング利益を底上げできれば、一過性益が恒常的な成長益に置き換わり再評価。これが会社の描くストーリーだが、実行リスクが高い。 投資家は「見かけのPER9倍」ではなく「経常利益ベースの正常化収益力」で評価すべきで、IR資料の利益の質(一過性 vs リカーリング)を毎期分解して確認する必要がある。
バリュートラップリスク: 資産は厚いが資本効率が上がらない罠

三菱倉庫はネットデット企業(標準NC −490億)であり、「キャッシュが溜まりすぎて使い道がない」典型的バリュートラップとは構造が異なる。
しかし別種のバリュートラップ ―― 資産集約型ゆえにROEが上がらず、PBR1倍台に放置される罠 ―― のリスクを抱える。

  • 都心不動産・倉庫という巨大なバランスシート(総資産6,260億)が ROE の分母を膨らませ、ROE10.9%は業界中位に留まる(資本効率の上組型キャッシュリッチとは別の意味で資本が「眠る」)。
  • 政策保有株式(金額は本分析で未確定だが相応規模と推定)が ROE を希薄化。東証の「資本コスト・株価を意識した経営」要請、政策保有株削減の市場圧力が改善トリガーになりうる。
  • 中計で資産回転・政策保有株削減・株主還元強化(連続増配 ¥38→¥44)を打ち出しており、これが実行されればバリュートラップ脱却の触媒になる。逆に投資が空振りすれば「資産は厚いが報われない」状態が長期化する。

6. 投資判断

バリュエーション乖離コメントの補強

定量分析の乖離コメント(①EV/EBITDA14.8倍=中位〜やや割高、②見かけPER9.4倍だが正常化CN-PER約38倍、③成長率モデルは持続成長前提に依存)を、定性面から補強する。

バリュエーション手法別の目標株価

定量分析の数値(FY2026 EPS ¥159.8〔一過性込み〕、現値¥1,501.5、BPS¥854.4、EV/EBITDA、標準NC −490.7億)を用いる。
EPS は一過性益を含むため、正常化EPS(経常215億ベース・税率31%で純利益約148億 → EPS約¥43)も併記する。

PER法(保守的/標準/楽観的)

正常化EPS ¥43(リカーリング)を基準に置く。一過性込みEPS¥159.8で評価すると過小評価を招くため。

シナリオ 適用 PER EPS(円) 目標株価(円) 現在株価比
保守的 14倍(同業下位・正常化) 43(正常化) 602 −60%
標準 19倍(IFIS正常化PER水準) 43(正常化) 817 −46%
楽観的 12倍(一過性込みEPS継続) 159.8(一過性込み) 1,918 +28%

各シナリオの根拠: 保守的・標準は「リカーリング収益で評価すると現値は割高で、正常化EPSベースでは下値余地」を示す。
楽観的は「中計で資産回転が本業化し、一過性益が恒常化する」前提で一過性込みEPSに低PERを当てたケース。現値¥1,501.5 は、正常化EPSなら割高・一過性込みEPSなら割安という両極のあいだにあり、PER単独では評価が割れる

EV/EBITDA法(保守的/標準/楽観的)

EBITDA はFY2025/3 の380億円を基準。EV = EV/EBITDA倍率 × EBITDA、理論時価総額 = EV + 標準NC(標準NC −490.7億なので減算)。

シナリオ EV/EBITDA EBITDA(億円) EV(億円) +標準NC=理論時価総額(億円) 理論株価(円) 現在株価比
保守的 9倍(上組並み) 380 3,420 2,929 854 −43%
標準 13倍(三井倉庫並み) 380 4,940 4,449 1,298 −14%
楽観的 16倍(住友倉庫並み) 380 6,080 5,589 1,630 +9%

注: 理論時価総額 = EV − 490.7(ネットデット控除)。
理論株価 = 理論時価総額 ÷ 342,809,476 株。
標準シナリオ(13倍)で理論株価¥1,298 となり、現値¥1,501.5 は EV/EBITDA でも「やや割高〜適正上限」を示す。

下値メド

PBR 1.0倍 = BPS ¥854.4 を理論的下限として提示。
現値¥1,501.5 は PBR1.76倍で、解散価値に対しては74%のプレミアム。
下値メドの¥854 までは約43%の調整余地があるが、不動産含み益を考慮すると実質的な解散価値はBPSより高い可能性がある。

シナリオ別の詳細根拠

ベースケース(50%): 中計を着実に消化し、緩やかに再評価
  • 前提: 物流本業が横ばい〜微増、不動産が安定賃料、政策保有株売却を計画的に継続。FY2027/3 経常216億(会社予想並み)着地。配当 ¥44 達成。
  • 確率の根拠: 会社予想は保守的(FY2026 期中に純利益+50億上方修正の実績)で、経常レベルの予想は達成可能性が高い。財閥系の安定基盤と不動産のディフェンシブ性が利益の底を支える。
  • 投資家の対応: 配当利回り2.9%を享受しつつ、中計進捗(特に物流不動産・M&Aの実行と回収)を四半期ごとに確認。PBR1.2倍(≒¥1,025)近辺まで下げれば押し目買い妙味。
上振れケース(25%): 資産回転が本業化し、ROE・PBRが再評価
  • 前提: 中計の物流不動産・大型M&Aが想定リターンを上げ、政策保有株削減でROEが12-14%へ上昇。東証の資本効率要請への対応が市場に評価され、PBRが2倍超へ。
  • 確率の根拠: 三菱グループの信用力・好立地・医薬品物流の堀があり、実行力次第で達成可能。住友倉庫がPBR2.4倍で評価されている事実が、不動産併営モデルの上値余地を示す。
  • 投資家の対応: 中計の投資回収が数字で見え始めたら増し玉。政策保有株削減・自己株買いの公表はポジティブカタリスト。
下振れケース(25%): 投資空振り+一過性益剥落で「割安の幻」露呈
  • 前提: 大型M&A・物流不動産が回収不足でのれん減損、政策保有株売却が一巡して純利益が経常215億水準へ正常化、市場が正常化PER34倍を嫌気。
  • 確率の根拠: 後発の物流不動産は専業大手(プロロジス・GLP・ESR)に対し用地・賃料で不利。5,900億円という投資規模は規律を欠けば毀損リスクが大きい。
  • 投資家の対応: 下値メドはPBR1.0倍=BPS¥854。ただし不動産含み益で実質解散価値はこれより上。減損・投資空振りの兆候が出たら一旦撤退も選択肢。

推奨アクションの構造化

推奨アクション

買いの根拠:

  • 三菱グループ基盤・都心優良不動産・医薬品物流という複製困難な堀
  • 不動産のディフェンシブ性で利益の底が堅い
  • 連続増配方針(¥38→¥44)、配当利回り2.9%
  • 中計で資本効率改善・株主還元強化に正面から取り組む姿勢

留意点:

  • FY2026 の見かけPER9倍は一過性益による「割安の幻」。経常ベース正常化PERは約34倍で割安ではない
  • 標準NCはマイナス(ネットデット)でキャッシュリッチ割安株ではない
  • 中計5,900億円投資の回収は未証明、物流不動産は後発不利
  • EV/EBITDA標準シナリオ理論株価¥1,298 に対し現値¥1,501.5 はやや割高

総合: 「中計実行を見極めるカタリスト待ち」。現値は積極買いの水準ではなく、PBR1.2倍近辺への調整局面や、資産回転・政策保有株削減の進捗確認後の段階買いが妥当。

カタリスト・タイムライン

時期 イベント 確認すべき数値 株価への影響
2026年6月下旬 FY2026/3 有価証券報告書提出 セグメント別営業利益・政策保有株式の金額・投資有価証券残高 中(利益の質の検証材料)
2026年6月下旬 定時株主総会 中計進捗・資本政策への質疑
2026年9月末 中間配当 権利確定(権利付き最終日 = 9月26日頃) ¥22(FY2027中間配当予想の目安)
2026年8月5日 FY2027/3 第1四半期決算 物流本業のリカーリング営業利益・一過性益の有無
2026年10〜11月 FY2027/3 第2四半期(中間)決算・中計進捗説明 物流不動産・M&Aの具体案件、政策保有株削減進捗
2027年2月頃 第3四半期決算・通期見通し更新 経常利益の上方/下方修正
2027年3月末 期末配当 権利確定(権利付き最終日 = 3月27日頃) ¥22(FY2027期末配当予想の目安、通期¥44)
2027年4月下旬 FY2027/3 通期決算 経常216億予想の達成、一過性益依存度、FY2028配当
中計期間中(〜2030) 大型M&A・物流不動産案件の公表 投資額・想定IRR・のれん 大(再評価 or 減損の分岐)

7. 学習コーナー

📚 着眼点 1: 「一過性利益」が作る低PERの見抜き方

三菱倉庫での具体例

FY2026/3 の純利益547.7億円(前期比+71.9%)をそのまま使うと予PERは約9倍。
しかしこの急増の主因は 投資有価証券売却益 という一過性要因で、経常利益は215億円(+15.8%)に留まる。

  1. 三菱倉庫での具体例: 純利益547.7億のうち、経常利益215億を超える部分(≒330億)の多くは資産売却・評価益。経常215億を税引後正常化すると純利益は約148億、現値時価総額5,147億に対する正常化PERは約34倍となる。「見かけ9倍」と「正常化34倍」の差が、利益の質のすべてを物語る。
  2. 背景と比喩: PERは「株価÷1株利益」だが、分母の利益が一度きりの臨時収入(家を売った利益のようなもの)で膨らんでいれば、来年は同じ利益が出ない。臨時収入で計算した「割安」は幻。給料(本業=経常利益)で評価し直すのが鉄則。
  3. 投資家への示唆: 三菱倉庫を評価するときは、必ず「経常利益」または「事業利益」ベースで正常化PERを計算し直す。決算短信の特別利益・営業外損益を分解し、一過性益を除いたリカーリング利益で割安度を判断する。

📚 着眼点 2: ネットデット企業に NC・NCAV 軸を当てはめない

三菱倉庫での具体例

当社の標準NC(現預金610億 − 有利子負債1,101億)は −490.7億円のマイナス(ネットデット)。5期すべてマイナスで、「キャッシュが溜まった割安小型株」ではない。

  1. 三菱倉庫での具体例: 倉庫・不動産という資産集約型ビジネスは、巨大な固定資産(倉庫・ビル)を有利子負債で賄うのが当たり前。総資産6,260億のうち固定資産が過半を占め、流動資産から負債を引く広義NCAVは大幅マイナスになる。NC比率−9.5%は「資産を借入で持つ正常な姿」であって異常ではない。
  2. 背景と比喩: 標準NC・NCAVは「会社を今すぐ畳んで現金化したらいくら残るか」を測るバリュー投資の物差し。しかし不動産・設備で稼ぐ会社にこの物差しを当てると、借金で買った資産が全部「マイナス」に見えてしまい、評価を誤る。家を住宅ローンで買った人を「純資産マイナスの貧乏人」と呼ぶようなもの。
  3. 投資家への示唆: 三菱倉庫のような資産集約型はEV/EBITDA・PER・PBR・含み益で評価する。NC・NCAV軸は無効と割り切り、代わりに「不動産の含み益(簿価vs時価)」と「資本効率(ROE/ROIC)」を見る。

📚 着眼点 3: 不動産併営モデルの「利益の質」とディフェンシブ性

三菱倉庫での具体例

不動産事業は売上構成比16.3%(463.8億)に過ぎないが、営業利益では全社の20-40%台を稼ぐ高採算セグメント。横浜ベイクォーター・日本橋ダイヤビルディング等の都心優良物件の賃料が源泉。

  1. 三菱倉庫での具体例: 物流(売上84%)は景気・物量に左右されるフロー収益だが、不動産(売上16%)は長期賃貸契約による安定ストック収益。FY2024に物流が減収(−15%)したときも、不動産が利益の底を支えた。これが当社のROE10.9%・PBR1.76倍を住友倉庫型(不動産併営でPBR2.4倍)に近づける要因。
  2. 背景と比喩: 物流だけの会社は「天気任せの漁師」、不動産を併せ持つ会社は「漁+貸し倉庫の大家」。漁が不漁でも家賃が入るから、収入のブレが小さい。投資家はこの「家賃部分」の安定性に対してプレミアムを払う。
  3. 投資家への示唆: 同業比較では「不動産併営の厚み」で評価が分かれる。三井倉庫HD(物流特化寄り、PBR3.7倍だがPER29倍と利益変動大)と住友倉庫(不動産併営、PBR2.4倍)を見比べ、三菱倉庫の不動産含み益・賃料の安定性が株価にどこまで織り込まれているかを測る。

📚 着眼点 4: 中期経営計画の「非連続成長」をどう検証するか

三菱倉庫での具体例

中計[2025-2030]は事業利益をFY2024 225億→FY2030 630億(2.8倍)、6年で5,900億円投資、物流不動産参入・1,000億級M&Aを掲げる。
これは堅実倉庫からの大転換。

  1. 三菱倉庫での具体例: 2.8倍の利益成長は、本業の自然成長では届かず、M&A・物流不動産・新規事業(グリッド蓄電池)という外部成長に依存する。問われるのは「投じた5,900億円が、想定リターンを生むか」。回収不足ならのれん減損・減価償却増で逆に利益を毀損する。
  2. 背景と比喩: 大型投資計画は「設備投資して工場を倍にすれば売上も倍」という単純計算になりがちだが、現実は「作った工場が稼働率8割なら赤字」。計画の数字より、案件ごとの投資規律(IRRハードルレート)と実行スピードを見る方が重要。
  3. 投資家への示唆: 中計は「掲げた目標値」ではなく「四半期ごとの実行進捗」で評価する。具体的なM&A案件の公表・物流施設の竣工と稼働率・政策保有株削減額を毎期トラッキングし、計画と実績の乖離を早期に察知する。

📚 着眼点 5: 三菱倉庫の指標ポジショニング(相場観テーブル)

各指標を同業・全上場と比較し、三菱倉庫の立ち位置を評価する。

指標 三菱倉庫 同業他社平均 全上場中央値(目安) 評価コメント
PER(FY2025純利益ベース) 16.2倍 約20倍(上組17・住友15・三井29) 約15倍 業界中位。FY2026一過性益込みなら9倍だが正常化34倍で評価が割れる
PBR 1.76倍 約2.2倍 約1.2倍 全上場比では高いが、不動産含み益・住友倉庫2.4倍を踏まえると上値余地も
ROE 10.9% 約10%(上組7.5・住友11.9・三井10.6) 約8-9% 業界中位。資産集約型ゆえ上組型キャッシュリッチより高いが上値は重い
EV/EBITDA 14.8倍 約13倍(上組9.4・住友16・三井13.3) 約8-10倍 やや割高。EBITDA規模最大だがEVも最大
配当利回り(FY2027予想¥44) 2.93% 約2.5% 約2.3% 中位〜やや高め。連続増配方針が下支え
営業利益率 7.1% 約8%(上組11.9が突出) 上組に劣後。不動産の高採算が全社利益率を支える
自己資本比率 46.8% 約48%(上組73が突出) 約40% 健全。上組のキャッシュリッチには及ばないが財閥系として堅実
売上CAGR(5期) 7.4% コロナ後の国際物流特需込み。中計はこれを上回る非連続成長を企図
標準NC比率 −9.5% マイナス(上組のみ+) ネットデット。資産集約型の正常な姿。NC軸での割安判定は不可

🤔 自分への問い

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関連: 演習フォーマット §C-3 / 演習・チェックリスト index


参考情報

ガバナンス情報テーブル

項目 内容
代表取締役社長 斉藤秀親(2023年4月就任)
設立 1887年(明治20年、旧東京倉庫。1918年「三菱倉庫」へ)
本社所在地 東京都中央区日本橋1-19-1 日本橋ダイヤビルディング
従業員数 連結 5,004名 / 単体 1,009名(2025年3月時点)
上場市場 東証プライム(証券コード 9301)
会計基準 日本基準(JGAAP)
監査法人 要再取得(有報未確認)
主要取引銀行 三菱UFJ銀行ほか三菱系(要有報確認)
海外拠点 中国・米国・東南アジア・欧州(医薬品物流の欧米展開を中計で強化)

大株主構成テーブル

注: 上位10名の具体的な保有比率は本分析で一次確認できず(有報・IRページ未取得)。
三菱グループの相互保有(三菱UFJ銀行・明治安田生命・三菱系事業会社)と、信託銀行の信託口(年金等)が上位を占める典型的な財閥系構成と推定される。
自己株式は27,361,654株(IR開示の保有比率算定除外株数)。
正確な大株主リストは FY2026/3 有報(2026年6月下旬提出見込み)で要確認。

順位 株主名 保有比率 区分
1-10 三菱グループ各社・信託口(推定) 要再取得 事業会社/金融/信託

アクティビストの大量保有報告は本分析では確認されず。ただし東証の資本効率要請を背景に、政策保有株削減・PBR改善を求める一般株主・機関投資家の圧力は今後高まる可能性がある。

社外取締役の視点

経営陣に問うべき 3 つの質問
  • Q1: FY2026/3 純利益547.7億のうち、リカーリング(経常)部分と一過性(資産売却益)部分の内訳は? 中計2030年純利益410億のうち、資産回転益への依存度はどの程度を想定しているか。
  • Q2: 中計5,900億円投資のハードルレート(要求IRR)は何%か。物流不動産でプロロジス・GLP等の専業大手にどう差別化し、どの程度のNOI利回りを見込むのか。
  • Q3: 政策保有株式の残高と縮減目標・期限は? 縮減で得た原資を成長投資・自己株買い・増配のどれに、どの比率で配分するのか。ROE目標(10.9%→?)とPBR改善のKPIを明示してほしい。

免責事項

免責

本レポートは EDINET DB スナップショット(fetched_at 2026-05-17)・price_fetcher 現値(2026-06-01)・公開Web情報に基づく分析であり、投資勧誘を目的としたものではない。
EDINET MCP が本分析で利用不可だったため一部財務科目(流動資産・投資有価証券・売上原価・大株主・FY2026営業利益等)は未取得(「要再取得」と明記)。
最終投資判断は有価証券報告書・決算短信等の一次情報を各自確認のうえ自己責任で行うこと。
FY2026/3 数値は TDNet 報道ベースで、有報未提出のため確定値ではない。

データソースの時点差テーブル

データ種別 基準日 ソース
5期財務(PL/BS/CF) FY2021/3〜FY2025/3 EDINET DB snapshot(E04283_*.json、fetched 2026-05-17)
FY2026/3 実績(経常・純利益・配当) 2026-03-31(TDNet 2026-04-30 開示) WebSearch(minkabu/lnews/Yahoo!ファイナンス等報道)
FY2027/3 予想(経常・配当) 会社予想 WebSearch
現値・時価総額・発行済株式数 2026-06-01 price_fetcher(yfinance)9301.T
競合財務 FY2025/3 EDINET DB snapshot(E04284/85/345/86)
セグメント・中計・ガバナンス 2025-2026 三菱倉庫IR・Wikipedia・各種報道

出典一覧

  1. EDINET DB snapshot E04283_2021-03-31.jsonE04283_2025-03-31.json — 5期財務時系列(source_url: https://edinetdb.jp/v1/companies/E04283/financials、fetched_at 2026-05-17)
  2. EDINET DB snapshot E04284/E04285/E04345/E04286(競合4社)— FY2021/3〜FY2025/3
  3. edinet_screener/factsheets/倉庫・運輸関連業_factsheet_20260518.md — 業界5社サマリー(ROE・自己資本比率の独立計算値)
  4. edinet_screener/price_fetcher.py(yfinance)— 9301.T 他 現値・時価総額・発行済株式数(2026-06-01)
  5. edinet_data/code_mapping.csv — E04283 ⇔ 9301 コード照合
  6. 三菱倉庫 経営計画[2025-2030] — 2030年事業利益630億・総投資5,900億・物流不動産参入
  7. 三菱倉庫 GDP対応 医薬品物流 — GDP準拠温度管理倉庫
  8. 三菱倉庫 会社概要 — 社長・本社・従業員数
  9. Yahoo!ファイナンス 9301 — 株価・業績・配当
  10. minkabu 9301 決算 — FY2026/3 実績・FY2027 予想
  11. LNEWS 三菱倉庫 FY2025/3 決算 — 売上+11.6%・営利+7.2%
  12. カーゴニュース 三菱倉庫 FY2025/3 セグメント — セグメント別
  13. 日本海事新聞 三菱倉庫 新中計 — 総投資5,900億・物流不動産両輪
  14. Wikipedia: Mitsubishi Logistics — 沿革・事業セグメント・主要施設
  15. TradingView: Mitsubishi Logistics FY2026 — 純利益+72%(資産売却益)