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コクヨ株式会社

【経済・その他製品】その他製品銘柄レポート更新 2026-07-04

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目次
  1. 1. 事業概要
  2. 業界の系統分解
  3. コクヨの事業構成(FY2025・4セグメント)
  4. 主要取引先
  5. コクヨの固有事象・資本関係の詳細分析
  6. 業界のビジネスモデルと着目点
  7. 2. バリュエーション分析
  8. ⚠️ 時価総額・株価の基準(必須・本体準拠)
  9. 標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移(百万円)
  10. 広義 NCAV 計算 — 5期推移(百万円)
  11. CN-PER(キャッシュニュートラル PER)
  12. EV/EBITDA 分析(億円)
  13. EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別、コクヨ)
  14. 成長率モデル適正 PER(参考)
  15. DCF 前提入力枠(空欄許容)
  16. バリュエーション乖離コメント
  17. 3. 財務分析
  18. PL — 5期+予想(百万円)
  19. BS — 5期(百万円)
  20. BS 詳細主要科目(百万円) — 5期
  21. CF — 5期(百万円)
  22. 減価償却費明細(百万円) — 5期
  23. 受注高・受注残高(ファニチャー事業のみ・受注生産型)
  24. 運転資本分析(CCC = 売上債権回転日数 + 棚卸資産回転日数 − 仕入債務回転日数)
  25. 配当推移 — 5期+予想(分割調整後DPS, 円)
  26. 経営者予想精度(2期分・データ取得範囲内)
  27. 健全性チェック(事業会社基準)
  28. 4. 同業他社比較
  29. 競合選定基準
  30. 最新期比較テーブル
  31. 競合3期推移(売上高 億円 / 営業利益率)
  32. 運転資本効率(CCC)— 競合比較
  33. 5. リスク評価
  34. リスクマトリクステーブル
  35. リスク因果関係
  36. 6. 投資判断
  37. バリュエーション乖離の定性分析(NC比率と資本効率のねじれ)
  38. バリュエーション手法別の目標株価
  39. シナリオ別の詳細根拠
  40. カタリスト・タイムライン
  41. 7. 学習コーナー
  42. 📚 着眼点1: NC比率39%なのにPBR1.41倍にしか評価されない「バリュートラップ」の構造
  43. 📚 着眼点2: 大量保有報告書の読み方 — Oasisという物言う株主の観察ポイント
  44. 📚 着眼点3: CN-PER(キャッシュニュートラルPER)で見る「本当の割高・割安」
  45. 📚 着眼点4: 受注残高の伸びと中期経営計画の「答え合わせ」
  46. 📚 着眼点5: コクヨの指標ポジショニング(相場観テーブル)
  47. 🤔 自分への問い(C-3・必須3問)
  48. 参考情報
  49. ガバナンス情報テーブル
  50. 大株主構成テーブル
  51. 社外取締役の視点
  52. 免責事項
  53. データソースの時点差テーブル
  54. 出典一覧

コクヨ株式会社(7984)銘柄分析レポート

SUMMARY

現値ベースの時価総額は 3,512.6 億円(中型)。
予想PER 17.3 倍は東証プライム平均対比おおむね適正水準、予想EV/EBITDA 6.2 倍は同業対比割安圏。
標準NC比率 39.0%・広義NCAV比率 44.4% とキャッシュリッチな財務体質で、健全性スコアは 88/100(格付S)。
予想配当利回り 2.96%(累進配当・連結配当性向50%目安)。
1:4株式分割(2026/1/1効力)を経て、EDINET由来の marketCap・配当性向は分割artifactのため不採用、全指標を現値ベースで統一。

指標 評価
時価総額 3,512.6 億円 中型
予 PER 17.3倍 適正
予 EV/EBITDA 6.2倍 割安
配当利回り 2.96% 中位
標準 NC 比率 39.0% 高い
広義 NCAV 比率 44.4% 高い
健全性スコア 88/100 高い

1. 事業概要

業界の系統分解

事務用品・オフィス家具業界は大きく4つの系統に分解できる。

コクヨはこの4系統のうちメーカー系・文具専業系・EC通販系・小売系(インテリア)の4つを同時に持つ唯一のコングロマリット型企業である。
同社はこの構造を「森林経営モデル」と自称し、収益の柱(高木=ファニチャー)、キャッシュフローの下支え(低木=ビジネスサプライ流通)、ブランド力の源泉(草花=ステーショナリー)を組み合わせた事業ポートフォリオ経営を志向している(出典: 中期経営計画|コクヨ)。

コクヨの事業構成(FY2025・4セグメント)

セグメント 売上高(百万円) 構成比 営業利益(百万円) 営業利益率 前年比(売上)
ファニチャー事業 170,635 47.4% 26,175 15.3% +6.3%
ビジネスサプライ流通事業 102,618 28.5% 5,463 5.3% +10.2%
ステーショナリー事業 62,770 17.4% 7,092 11.3% −1.5%
インテリアリテール事業 23,609 6.6% 718 3.0% +11.5%

(セグメント営業利益合計39,448百万円は全社費用・消去前のため連結営業利益26,247百万円と一致しない。ファニチャー事業のみ受注生産あり: 受注高21,965百万円[+22.2%]/受注残4,688百万円[+51.9%]。FY2025よりワークスタイル/ライフスタイル領域区分を廃し4事業セグメントへ変更)

2025年よりワークスタイル/ライフスタイル領域区分を廃止し、以下の4事業に再編済み(再掲)。

セグメント 売上高(百万円) 構成比 営業利益(百万円) 利益率 特記事項
ファニチャー事業 170,635 47.4% 26,175 15.3% 利益の柱。中国香港ASEAN展開。受注高21,965(+22.2%)/受注残4,688(+51.9%)
ビジネスサプライ流通事業 102,618 28.5% 5,463 5.3% カウネット、購買管理PF「べんりねっと」。低採算だが増収+10.2%
ステーショナリー事業 62,770 17.4% 7,092 11.3% Campusブランド、中国女子文具、インド。高採算だが横ばい-1.5%
インテリアリテール事業 23,609 6.6% 718 3.0% アクタス(インテリアショップ)

営業利益率で見ればステーショナリー(11.3%)・ファニチャー(15.3%)が稼ぎ頭で、規模の大きいビジネスサプライ流通は低採算という構図が明確である。

市場分野別の成長動向(FY2025時点)

市場分野 動向 コメント
国内オフィス家具(新設・リニューアル) ◎ 好調 出社回帰・ハイブリッドワーク定着で「体験価値」志向のオフィス投資が拡大。都心Aグレードオフィスへの「質への逃避」が顕著(出典: オフィス家具市場レポート2025-2026
中国ファニチャー △ 減速 中国景気減速で法人設備投資が鈍化。ASEAN案件獲得で一部相殺
国内文具(少子化) ▼ 構造縮小 少子化で国内文具市場は緩やかに縮小、海外(中国・インド)シフトが加速
海外文具(中国・インド) ◎ 成長 中国上海「Campus STYLE」直営店展開、インドはカムリン経由で中間層向けBtoC市場を攻略中(出典: ジェトロ・インド市場戦略
ビジネスサプライ流通 ○ 一時的追い風 FY2025は同業他社の不正アクセス事案による代替需要で一時的に伸長。構造要因ではない点に注意

⚠️ FYラベル整合性の注記

本セクションの財務数値は全てFY2025(2025年12月期)実績(financials_as_of: 2025-12-31)ベースであり、「前期」「当期」等の相対表記は用いていない。
会社予想として言及する場合は必ず「FY2026会社予想」と明記する。
第4次中期経営計画「Unite for Growth 2027」内の「2024年見込み」はコクヨが2024年11月27日の中計公表時点で示した2024年12月期の見込み値であり、FY2025実績とは基準時点が異なるため区別して引用する(出典: 中期経営計画策定に関するお知らせ PDF)。

主要取引先

取引関係の特徴として、ファニチャー事業の大型オフィス案件は一度受注すると設計・施工・アフターメンテナンスまで長期継続する「替えが利きにくい」性質を持つ一方、ビジネスサプライ流通(カウネット)は価格競争に晒されやすく、他社の障害・不正アクセス事案で顧客が一時的に流入するなどチャネルの流動性が高い点が対照的である。

TIP

競争優位性の比喩的説明: コクヨの強みは「家具を売る」ことではなく「オフィスという空間を丸ごと設計・施工・運用する能力」にある。
これは注文住宅の工務店が単に建材を売るのではなく、設計士・施工管理・アフターケアまで一気通貫で担うのに近い。
一括請負できる企業は限られており、これが新規参入を阻む実質的な参入障壁になっている。
加えて「カウネット」という通販チャネルを自前で持つことで、大型案件(ファニチャー)と日常消耗品(ビジネスサプライ流通)の両方から顧客接点を確保しており、単一事業の同業他社にはない「入口の多さ」が強みである。

コクヨの固有事象・資本関係の詳細分析

TIP

Oasis Managementの介入という最大の固有事象: 香港拠点のアクティビストファンドOasis Management Company Ltd.は、2024年11月に大量保有5.02%で最初に登場して以降、段階的に買い増しを続けている。
日本経済新聞は2026年2月時点で議決権ベース約10.28%へ達し「筆頭株主(信託口を除く)」になったと報じており、2026年5月13日付変更報告書では保有比率10.52%(46,372,700株)まで積み上がっている(出典: 日本経済新聞「オアシス、コクヨ株を約10%に買い増し」)。
保有目的には「取締役会実効性向上・コーポレートガバナンス改善・事業ポートフォリオ全体見直し(一部事業撤退・ベストオーナー探索含む)・資本政策見直し・上場維持是非の検討・M&A戦略見直し・ROE向上・株主還元強化・バランスシート最適化」と明記され、今後12か月で保有比率5%超の追加取得を予定とも記載されている。
皮肉な点として、コクヨ自身が2019年にぺんてるへ敵対的買収を仕掛けた「攻める側」だった経緯があり、いま自らがアクティビストの標的となっている構図は業界内でも話題になっている(出典: note「オアシスがコクヨ株10%取得で筆頭株主に」)。
会社側もこれに呼応する形で、自己株取得350億円・政策保有株式のさらなる売却・累進配当・大阪旧本社不動産の売却方針を打ち出しており、NC比率39.0%・広義NCAV比率44.4%という潤沢な資産をどう市場評価に転換するかがコクヨの資本市場ストーリーの中心テーマになっている

業界のビジネスモデルと着目点

オフィス家具業界の収益構造は、①新設・リニューアル案件の受注生産(利益率が高いが景気敏感)、②日用品・消耗品の通販流通(利益率は低いが安定的なリカーリング収益)、③文具ブランドのライセンス収益的性格(一度定着したブランド・製品仕様は長期にわたり継続購入される)の3層で構成される。
コクヨはこの3層すべてに事業を持つことで、ファニチャー事業の景気敏感性をビジネスサプライ流通・ステーショナリーの安定収益で緩和する構造を作っている。
成長ドライバーは国内では「出社回帰に伴うオフィス再投資」、海外では「中国・インドの中間層拡大に伴う文具需要」であり、コクヨは前者をファニチャー事業、後者をステーショナリー事業(カムリン、Campus STYLE)で捉えている。

TIP

4事業ポートフォリオの意味: 単一事業の同業他社(三菱鉛筆=文具専業、イトーキ=家具専業)と異なり、コクヨは高利益率事業(ファニチャー15.3%・ステーショナリー11.3%)と低採算だが安定的な事業(ビジネスサプライ流通5.3%)を併せ持つ。
これは「稼ぎ頭の事業と、景気変動を吸収するクッション役の事業」を意図的に組み合わせるポートフォリオ経営であり、単独事業のバリュエーションでは測れない複合的な収益構造を理解する必要がある。


2. バリュエーション分析

⚠️ 時価総額・株価の基準(必須・本体準拠)

EDINET get_companymarketCap(有報期末固定値・分割artifact混入=3,855億円/evEbitda 8.10)は不採用
全バリュエーション指標は market_data_as_of=2026-07-04 時点の現値マーケットデータを使用する。

内部整合性チェック(±5%以内で整合、全て✅):

チェック項目 算式 結果 判定
株価×株式数 ≒ 時価総額 827.1円 × 424,687,291株 351,258.9百万円 ≒ 351,258.8百万円(±0.0%)
予想PER×予想EPS ≒ 株価 17.3倍 × 47.9円 828.6円 ≒ 827.1円(±0.2%)
PBR×BPS ≒ 株価 1.41倍 × 584.97円 824.8円 ≒ 827.1円(±0.3%)

標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移(百万円)

⚠️ 有利子負債 = 短期借入金3,369 + 1年内返済予定長期借入金85 + 長期借入金16(FY2025内訳)。投資有価証券は含めない。

項目 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
現預金 100,575 98,351 115,161 132,080 110,606
短期有価証券 30,604 29,996 30,086 30,106 29,959
有利子負債 9,320 9,467 9,238 4,176 3,470
標準 NC 121,859 118,880 136,009 158,010 137,095
標準 NC比率(現値時価総額基準) 39.0%

(標準NC比率は現値時価総額との対比であり過去期は時価が不定のため直近期のみ表示。標準NC=1,371億円)

広義 NCAV 計算 — 5期推移(百万円)

項目 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
流動資産 203,154 215,001 230,157 252,884 242,888
投資有価証券×0.7 31,528 24,902 28,078 15,653 12,615
負債合計 94,471 97,921 104,986 98,897 99,591
広義 NCAV 140,211 141,982 153,249 169,640 155,912
広義 NCAV比率(現値時価総額基準) 44.4%

(広義NCAV=1,559億円。投資有価証券45,040→18,022百万円は政策保有株の継続売却を反映)

CN-PER(キャッシュニュートラル PER)

指標
予想 PER 17.3 倍
標準 NC 比率(標準NC ÷ 時価総額) 39.0%
CN-PER(標準 NC ベース) 10.5 倍(=(351,258.8−137,095)÷20,300)
参考: CN-PER(広義 NCAV ベース) 9.6 倍(=(351,258.8−155,912)÷20,300)

EV/EBITDA 分析(億円)

指標 コクヨ オカムラ イトーキ 三菱鉛筆
時価総額(億円) 3,512.6 2,121.6 1,350.5 1,345.2
標準 NC(億円) 1,371.0 19.1 −132.3(純負債) 178.9
EV(億円) 2,141.6 2,102.5 1,482.8 1,166.3
EBITDA(億円) 343.5 318.6 176.5 145.8
EV/EBITDA 6.2倍 6.6倍 8.4倍 8.0倍

(競合の標準NC(億円)は最新期比較テーブルの標準NC比率×時価総額から逆算。EBITDAはEV÷EV/EBITDA[最新期比較テーブル掲載値]から逆算。コクヨEBITDA=営業利益262.5+減価償却81.0=343.5億円)

EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別、コクヨ)

NC 定義 NC(億円) EV(億円) EV/EBITDA
標準 NC(現預金+短期有価証券−有利子負債) 1,371.0 2,141.6 6.2倍
広義 NCAV(流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計) 1,559.1 1,953.5 5.7倍

成長率モデル適正 PER(参考)

理論 PER = 1 / (r − g)。r = 株主資本コスト(仮定8%)、g = 利益成長率。

成長率仮定 理論 PER 備考
g = 0%(ゼロ成長) 12.5 倍 PER 下限の目安
g = 3%(インフレ並み) 20.0 倍
g = 5%(中程度成長) 33.3 倍
コクヨの過去5期CAGR(純利益ベース) 算出不可(発散) g=11.9%(FY2021→FY2025純利益CAGR、13,703→21,473百万円)>r=8%仮定のため 1/(r−g) が負値となり無意味。実績成長率が仮定コストを上回っていた事実のみ表示

DCF 前提入力枠(空欄許容)

⚠️ 疑似精度禁止: 自信の低い項目は「要調査」のまま。

項目 出典/備考
無リスク金利(%) 1.5 日本10年国債利回り目安(有報リスク項「長期金利上昇傾向」記載)
β 要調査 get_analysis にβ提供なし
市場リスクプレミアム(%) 5-6 日本市場慣行値
株主資本コスト Ke(%) 要調査 算式: Ke = 1.5% + β × 5.5%(β確定後に算出)
負債コスト Kd 税引後(%) 3.1 支払利息155 ÷ 有利子負債3,470 ≒4.5%(税前)× (1−30%)
自己資本比率(時価ベース) 99.0% E/(E+D) = 351,258.8 / (351,258.8+3,470)
WACC(%) 要調査 Ke未確定のため算出不可。実質無借金(D比率0.98%)のためWACC≈Ke
永続成長率 g(%) 要調査
法人税率(%) 30 実効税率実績 FY2025 30.4%
明示予測期間(年) 5 標準

5期 FCF 入力枠:

t+1 t+2 t+3 t+4 t+5
FCF(百万円) 要調査 要調査 要調査 要調査 要調査

(第4次中計「成長投資700億+定常190億」を予定するが前提多く要調査。参考起点: 営業CF直近144億円・設備投資112億円[FY2025 capex 13,434百万円])

参照: DCF分析 / WACC算出 / ターミナルバリュー / 感応度・シナリオ分析

バリュエーション乖離コメント

  1. NC考慮 EV/EBITDA法: 6.2倍(競合レンジ6.6-8.4倍の下限)。
  2. CN-PER法: 標準NCベース10.5倍・広義NCAVベース9.6倍。予想PER17.3倍からNC分を控除すると実質PERは大きく低下。
  3. 成長率モデル: 過去5期純利益CAGR11.9%はr=8%仮定を上回り式が発散、ターミナル成長率前提への感応度が高いことを示す。

事実の並置: EV/EBITDA法・CN-PER法はいずれも「時価総額に対しNC比率39.0%・広義NCAV比率44.4%が大きく、キャッシュ控除後の実質バリュエーションは表面PER・EV/EBITDAより低い」という同方向の結果を示す。
成長率モデルは実績成長率が高水準だった一方、仮定コスト8%との比較では発散するため単純適用不可。


3. 財務分析

PL — 5期+予想(百万円)

項目 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026予
売上高 320,170 300,929 328,753 338,837 359,876 390,000
営業利益 20,004 19,128 23,830 22,531 26,247 27,000
経常利益 16,415 21,161 25,989 24,410 27,222 26,800
当期純利益 13,703 18,237 19,069 21,787 21,473 20,300
EPS(円、分割調整後) 30.6 41.7 43.5 50.4 48.3 47.9
営業利益率 6.2% 6.4% 7.2% 6.6% 7.3% 6.9%
前年比(売上) −6.0% +9.2% +3.1% +6.2% +8.4%予
前年比(営利) −4.4% +24.6% −5.5% +16.5% +2.9%予

(FY2024は賃貸不動産の表示方法変更で組替後。純利益FY2025 −1.4%は前年の固定資産売却益15,231百万円の反動、FY2026予−5.5%も同要因の反動継続。1:4株式分割[FY2025末=2026/1/1効力]によりFY2024以前のEPSは分割調整後で統一表示。調整後EPSはFY2024の50.4円をピークに以降微減)

BS — 5期(百万円)

項目 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
総資産 324,576 337,538 358,412 362,959 355,048
流動資産 203,154 215,001 230,157 252,884 242,888
固定資産 121,421 122,537 128,254 110,075 112,160
負債合計 94,471 97,921 104,986 98,897 99,591
純資産 230,105 239,617 253,426 264,062 255,457
自己資本比率 70.4% 70.4% 70.3% 71.8% 70.9%
BPS(円、分割調整後) 516.4 540.5 579.9 603.5 585.0

(純資産FY2025減少は自己株取得200億円・配当95億円が純利益214億円を上回ったため。BPSのFY2024→25微減も同要因)

BS 詳細主要科目(百万円) — 5期

項目 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
投資有価証券 45,040 35,574 40,112 22,362 18,022
現預金 100,575 98,351 115,161 132,080 110,606
短期有価証券 30,604 29,996 30,086 30,106 29,959
有利子負債 9,320 9,467 9,238 4,176 3,470
売上債権 63,913 68,997 68,551 75,383 82,116
棚卸資産 33,246 40,005 39,717 38,852 41,420
仕入債務 52,475 53,971 55,157 54,357 58,334

(投資有価証券45,040→18,022百万円は政策保有株の継続売却。有利子負債9,320→3,470百万円は実質無借金化。FY2025有利子負債内訳=短期借入3,369+1年内長期85+長期16)

CF — 5期(百万円)

項目 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
営業CF 21,789 9,577 34,739 16,377 14,369
投資CF +2,563 −3,320 −3,798 +12,254 −4,606
財務CF −15,059 −8,991 −14,442 −15,624 −31,649
FCF 24,352 6,257 30,941 28,631 9,763

(FY2025財務CF−31,649百万円=自己株取得200億円+配当95億円。投資CF FY2024+12,254百万円は固定資産・有価証券売却)

減価償却費明細(百万円) — 5期

FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
6,898 6,926 7,485 7,811 8,104

受注高・受注残高(ファニチャー事業のみ・受注生産型)

⚠️ コクヨは非受注産業(家具・文具の見込生産中心)だが、4セグメント中ファニチャー事業のみ受注生産計上あり。他3事業(ビジネスサプライ流通・ステーショナリー・インテリアリテール)は該当なし。

項目 FY-2 FY-1 直近期(FY2025) 前年比
受注高(百万円) データなし データなし 21,965 +22.2%
受注残高(百万円) データなし データなし 4,688 +51.9%
受注残高÷ファニチャー事業売上高 2.75%(4,688÷170,635)

(FY-2/FY-1の絶対値は埋め込みデータに含まれずデータなし。get_segments が提供する直近期数値のみ記載)

運転資本分析(CCC = 売上債権回転日数 + 棚卸資産回転日数 − 仕入債務回転日数)

⚠️ 分母統一ルール: 売上債権回転日数=売上債権÷売上高×365、棚卸資産・仕入債務回転日数=棚卸資産・仕入債務÷売上原価×365(厳密法)。

売上債権回転日数 棚卸資産回転日数 仕入債務回転日数 CCC
FY2025(直近期) 83.3日 70.2日 98.9日 54.6日
FY2024(1期前) データなし(内訳非開示) データなし(内訳非開示) データなし(内訳非開示) 53.6日

(仕入債務回転日数が長く運転資本負担は軽い。FY2024の日数内訳は埋め込みデータに含まれずCCC合計値のみ記載)

配当推移 — 5期+予想(分割調整後DPS, 円)

項目 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026予
1株配当 11.75 14.25 16.63 19.25 24.5 24.5
配当利回り 2.96%※ 2.96%※
配当性向(対調整後EPS) 38% 34% 38% 38% 51% 51%

※現在株価827.1円基準(過去期は当時株価不定のため「—」)。
累進配当方針+連結配当性向50%目安に移行(第4次中計)。
⚠️ EDINET FY2025 dividendPerShare=59.0円は分割前中間46円+分割後期末13円の非整合合算のため不採用。
EDINET側「配当性向122%」「利回り6.75%」も分割artifactにつき不掲載。

経営者予想精度(2期分・データ取得範囲内)

予想売上 実績売上 乖離率 予想営利 実績営利 乖離率
FY2025(期初2025-02公表) 366,000 359,876 −1.7% 24,000 26,247 +9.4%
FY2024(Q3改定2024-11) 338,000 338,837 +0.2% 21,500 22,531 +4.8%

(3期一貫の期初予想は短信取得範囲外のため2期分を掲載。傾向: 増収予想はやや保守的で未達だが、売価改定・コスト規律で利益は上振れ着地。純利益はFY2025予想20,100→実績21,473百万円[+6.8%])

健全性チェック(事業会社基準)

項目 基準 実績(FY2025) 判定
自己資本比率 >40% 70.9%
有利子負債 < 現預金 3,470 < 110,606(百万円) ✅(実質無借金)
流動比率 >150% 242,888/89,112=272%
利益剰余金 >0 211,871百万円
営業CF 3期連続黒字 +34,739/+16,377/+14,369(百万円)
配当 3期連続支払い 継続(累進配当)
EPS前年比 プラス 調整後 50.4→48.3円(−4%) ❌(分割調整後は微減)
ROE >8% 8.3% ✅(辛うじて)
営業利益率 >業界平均 7.3%(業界標準水準、get_analysis準拠)

(健全性スコア88/100=格付S。留意点: ①ROE8%台で東証プライム基準ぎりぎり、②営業CF3期減少傾向[347→164→144億円]、③調整後EPSはFY2024ピーク後微減。財務基盤は極めて強固だが資本効率が課題。業界(その他製品)平均比較の中央値個別数値はget_analysisになし=データなし)


4. 同業他社比較

競合選定基準

基準 内容
業種 その他製品(オフィス家具・文具・流通の複合体)
時価総額レンジ 対象企業の0.3-5倍(コクヨ3,512.6億円 → 1,053.8億円〜17,563億円)
選定理由 オカムラ(7994): オフィス家具国内トップ級、ファニチャー事業の直接競合(時価総額0.6倍)。イトーキ(7972): オフィス家具・空間構築、ファニチャー事業の直接競合(同0.38倍)。三菱鉛筆(7976): 文具大手・グローバルブランド、ステーショナリー事業の競合(同0.38倍)。コクヨはファニチャー47%+文具・流通の複合体につき、家具2社+文具1社で事業ミックスをカバー

最新期比較テーブル

⚠️ 決算期ズレ: コクヨ・イトーキ・三菱鉛筆はFY2025/12決算、オカムラのみFY2026/3決算(最新開示ベース)。

指標 コクヨ(7984) オカムラ(7994) イトーキ(7972) 三菱鉛筆(7976)
決算期 FY2025/12 FY2026/3 FY2025/12 FY2025/12
時価総額(億円) 3,512.6 2,121.6 1,350.5 1,345.2
売上高(億円) 3,598.8 3,290.3 1,536.8 898.1
営業利益率 7.3% 7.3% 8.9% 10.8%
自己資本比率 70.9% 67.6% 43.5% 76.7%
予想PER 17.3倍 10.1倍 12.0倍 18.9倍
PBR 1.41倍 1.04倍 2.38倍 1.05倍
ROE 8.3% 11.5% 17.7% 4.6%
予想配当利回り 2.96% 4.69% 3.30% 2.04%
EV/EBITDA 6.2倍 6.6倍 8.4倍 8.0倍
標準NC比率 39.0% 0.9% −9.8%(純負債) 13.3%
営業CF(億円) 143.7 272.2 89.4 24.1
FCF(億円) 97.6 218.6 51.0 −55.1

(現値: オカムラ2,241円/イトーキ2,730円/三菱鉛筆2,690円。予想PER・利回りは各社会社予想FY翌期ベース[オカムラ fcstNI21,100・EPS222.87・DPS105/イトーキ fcstNI11,200・EPS226.68・DPS90/三菱鉛筆 fcstNI7,700・EPS142.35・DPS55]。三菱鉛筆FY2025は純利益−44.7%の低調年でPER・ROEが歪む点に留意)

競合3期推移(売上高 億円 / 営業利益率)

企業 3期前 2期前 直近
コクヨ 3,287.5億円(7.2%) 3,388.4億円(6.6%) 3,598.8億円(7.3%)
オカムラ 2,982.9億円(8.1%) 3,145.3億円(7.6%) 3,290.3億円(7.3%)
イトーキ 1,329.9億円(6.4%) 1,384.6億円(7.3%) 1,536.8億円(8.9%)
三菱鉛筆 748.0億円(15.8%) 888.2億円(13.7%) 898.1億円(10.8%)

運転資本効率(CCC)— 競合比較

⚠️ 分母は厳密法(売上債権=売上高ベース、棚卸資産・仕入債務=売上原価ベース)に統一。

指標(日数) コクヨ オカムラ イトーキ 三菱鉛筆 業界中央値
売上債権回転日数 83.3 95.5 81.9 82.6 データなし
棚卸資産回転日数 70.2 41.0 54.2 247.8 データなし
仕入債務回転日数 98.9 45.5 38.5 25.3 データなし
CCC 54.6 91.0 97.6 305.1 データなし

注: CCCはコクヨが4社中最短(仕入債務回転日数が長く運転資本負担が軽い)。三菱鉛筆は在庫水準が突出して重い(完成品在庫の性質)。業界中央値はget_analysisに個別数値なし=データなし。


5. リスク評価

リスクマトリクステーブル

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的影響シナリオ 対応状況
中国景気減速 ファニチャー中国現法の受注減速が連結営業利益(構成比47.4%)を下押しし、FY2026会社予想(営業利益27,000百万円)未達の一因になる ASEAN案件獲得で一部相殺、現地価格改定で対応中
Oasisとの対立激化 大量保有報告書上「今後12か月で保有比率5%超の追加取得」を予定。友好的対話が決裂すれば株主提案・臨時株主総会招集請求・取締役選任議案に発展しガバナンス混乱、株価ボラティリティ上昇 累進配当・自己株取得350億円・政策保有株売却・本社不動産売却で先回り対応中(2026年7月時点は対話継続と見られる)
ビジネスサプライ流通の一時的追い風剥落 FY2025は同業他社の不正アクセス事案による代替需要でQ4営業利益+22.2%と伸長。反動剥落でFY2026同事業の営業利益率5.3%がさらに低下するリスク 低採算体質そのものの構造改革は未着手
政策保有株式の時価変動 小〜中 保有株式の株価下落で評価損計上・自己資本比率70.9%が変動 さらなる売却方針を表明済み(進捗の定量開示は未確認)
為替・長期金利上昇 海外現法(中国・インド・ASEAN)の換算差損、金利上昇によるコスト増 自己資本比率70.9%と財務健全性は高く耐性は相応にある
IT/サイバー・基幹システム刷新 カウネット等EC基盤への不正アクセスで機会損失(同業他社の実例が示す通り影響は大きい) 有報「事業等のリスク」で明記済み、対策投資額は非開示
大阪旧本社跡地売却の執行遅延 迎賓館跡地(2026年9月末引渡予定)・旧本社本館(2027年9月末引渡予定)の契約履行が遅延すれば特別利益計上ずれ・NC活用計画に影響 売買契約は締結済み(合計57億円、出典後述)

リスク因果関係

flowchart TD
    A["中国景気減速"] --> B["中国ファニチャー事業の低迷"]
    C["中東紛争・米関税政策"] --> D["原油高・原材料/物流費の上昇"]
    D --> E["売上総利益率の圧迫"]
    B --> F["セグメント利益の下振れ"]
    E --> F
    F --> G["FY2026会社予想(営業利益270億円)未達リスク"]
    H["Oasis保有比率10.52%・さらなる積み増し表明"] --> I["株主提案・EGM要求の可能性"]
    I --> J["資本政策の急進的見直し圧力"]
    J -.緩和.-> K["自己株取得・政策保有株売却の加速"]
    K -.緩和.-> L["ROE改善・PBR再評価"]
    G --> M["株価下押し・バリュートラップの長期化"]
    F --> M
    J --> M
    L -.緩和.-> M
WARNING

最大リスクの深掘り: Oasisエスカレーションシナリオ

  • シナリオA(確率: 高)友好的対話の継続: 会社側が自己株取得・政策保有株売却・本社不動産売却を自発的に進め、Oasisは対話姿勢を維持。この場合、資本政策の前倒し実施が株価にプラスに働く。
  • シナリオB(確率: 中)株主提案・取締役選任要求: Oasisが2027年3月頃の定時株主総会に向けて独自の取締役候補や資本政策提案を提出。可決には至らずとも会社側の対応方針表明を迫られ、短期的にボラティリティが上昇する。
  • シナリオC(確率: 低〜中、テールリスク)事業ポートフォリオ解体要求: Oasisの保有目的にある「一部事業撤退・ベストオーナー探索」が本格化し、低採算のビジネスサプライ流通事業や資産効率の低いインテリアリテール事業の売却・スピンオフが議論の俎上に載る。実現すれば理論上はROE改善要因だが、実行までの不確実性・実行後の残存事業の成長性への懸念が交錯する。
WARNING

バリュートラップリスクの深掘り 標準NC比率39.0%(1,371億円)・広義NCAV比率44.4%(1,559億円)という極めて高い現金・金融資産の滞留度に対し、2025-2027年累計の株主還元計画は640億円(配当性向50%目安+自己株取得350億円)にとどまる。
単純計算で還元計画の規模はNC全体の半分にも満たず、「株主還元を打ち出してもなおキャッシュリッチな状態が解消しきらない」構造的な緊張関係が残る。
東証が求める「資本コスト経営」の要請、そしてOasisという明確なアクティビストの存在は、この滞留現金が市場評価に転換される数少ないカタリストである。
逆に言えば、Oasisの介入がなければコクヨのNC/NCAVの割安さは長期間市場に無視され続けていた可能性が高く、バリュートラップが顕在化するか投資機会に転じるかはOasisと会社側の資本政策協議の進展次第というのが本レポートの結論である。


6. 投資判断

バリュエーション乖離の定性分析(NC比率と資本効率のねじれ)

コクヨの予想PER 17.3倍・PBR 1.41倍という現在の評価は、標準NC比率39.0%・広義NCAV比率44.4%という資産面の割安さをほとんど織り込んでいない。
一方で、標準NCを時価総額から控除した実質収益倍率であるCN-PER(キャッシュニュートラルPER)は10.5倍にとどまり、同業のオカムラ(予想PER10.1倍)・イトーキ(同12.0倍)と遜色ない水準まで低下する。
つまり表面上のPERは同業比で割高に見えるが、キャッシュを除いた事業価値ベースでは同業並みかそれ以下という二面性がコクヨの評価を理解する鍵である。

この乖離が放置されてきた背景には、①ROE 8.3%(FY2025実績)という資本効率の低さが自己資本比率70.9%という財務健全性の高さと表裏一体であること、②Oasis登場(2024年11月)以前は明確なアクティビストが不在で資本政策見直しの外部圧力が働きにくかったこと、③累進配当という保守的な株主還元方針が「大胆な資本構成改善」への期待を市場に持たせてこなかったこと、の3点が挙げられる。

Unite for Growth 2027の成長率前提についても、ファニチャー事業は2024年見込み1,618億円から2027年目標2,190億円へ年平均約10.6%の成長を要求するのに対し、FY2025実績は1,706.35億円(見込み対比+5.5%)にとどまっており、計画ペースの半分程度に鈍化している
中国減速要因を踏まえると、2027年目標未達のリスクは相応にあると判断する。

これらを総合すると、コクヨの乖離は**「投資機会」と「バリュートラップ」の両方の性質を併せ持つ**。
資産価値(NC/NCAV)を基準にすれば明確に割安だが、収益成長・資本効率の観点では市場の慎重な評価にも一定の合理性がある。
したがって投資家の対応としては、全額一括投資よりも段階的な買い増しとカタリスト(Oasisの株主提案動向、自己株取得の進捗、中計中間年の達成度)確認を組み合わせる「待ちながら仕込む」姿勢が妥当と判断する。

バリュエーション手法別の目標株価

PER法(保守的/標準/楽観的)

シナリオ 適用PER EPS(円) 目標株価(円) 現在株価比
保守的 10.1倍(同業下位=オカムラの水準) 47.9 484 -41.5%
標準 13.7倍(同業3社単純平均:オカムラ10.1/イトーキ12.0/三菱鉛筆18.9) 47.9 655 -20.8%
楽観的 18.9倍(同業上位=三菱鉛筆の水準。グローバルブランド・Oasis主導の再評価を想定) 47.9 905 +9.4%

保守〜標準ケースでは現在株価を下回る点に注意。
これはコクヨの表面PER(17.3倍)がすでに同業平均を上回って評価されていることの裏返しであり、表面PERだけで見ると「割高」の可能性があることを示している(CN-PERベースの評価と対比して読む必要がある)。

EV/EBITDA法(保守的/標準/楽観的)

シナリオ EV/EBITDA EBITDA(億円) EV(億円) +標準NC=理論時価総額(億円) 理論株価(円) 現在株価比
保守的 6.2倍(現状据え置き) 343.5 2,141.6 3,512.6 827(現在株価と同水準) ±0%
標準 6.6倍(オカムラ水準) 343.5 2,267.1 3,638.1 857 +3.6%
楽観的 8.4倍(イトーキ水準) 343.5 2,885.4 4,256.4 1,002 +21.2%

EV/EBITDA法は標準NCを加算する方式であるため、キャッシュリッチな構造がそのまま理論株価に反映され、PER法よりも上振れ余地が大きく出る。この非対称性こそがコクヨの「資産は割安・収益倍率は同業並み」という二面性を象徴している

なお、同業3社のうちオカムラのみ3月決算(FY2026/3ベース)であり、コクヨ・イトーキ・三菱鉛筆とは決算期が最大3か月ずれる点に留意されたい。

下値メド

PBR 1.0倍 = BPS 585.0円 を理論的な下値メドとする(現在株価827.1円比 -29.3%)。

参考として、外部アナリストコンセンサス(2026年6月7日時点、株予報Pro/みんかぶ集計)では平均目標株価983円(現在比+22.8%、強気買い1名・中立2名)が示されており、本レポートのEV/EBITDA法楽観ケース(1,002円)に近い水準にある(出典: 株予報Pro コクヨ理論株価)。

シナリオ別の詳細根拠

INFO

ベースケース(確率50%)

  • 前提: FY2026会社予想(売上390,000百万円・営業利益27,000百万円・純利益20,300百万円・EPS47.9円)が概ね達成される。
  • 確率の根拠: FY2025は期初予想(営業利益24,000百万円)に対し実績26,247百万円と+9.4%の上振れ着地を記録しており、コクヨ経営陣には保守的な期初予想を売価改定・コスト規律で超過達成するパターンが定着している。この実績パターンをベースケースの中心に据えた。
  • 投資家の対応: 現状の予想PER17.3倍・PBR1.41倍水準でのホールドが基本。Oasis動向と自己株取得の進捗を四半期ごとに確認する。
SUCCESS

上振れケース(確率25%)

  • 前提: Oasis主導で資本政策が加速(自己株取得の増額・政策保有株式売却の前倒し)し、ファニチャー事業の受注残4,688百万円(+51.9%)が順調に売上化する。
  • 確率の根拠: Oasisは大量保有報告書で「今後12か月で保有比率5%超の追加取得」を明記しており、積み増しペースからは対話の継続的な強まりが示唆される。また受注残の伸び率(+51.9%)は売上高の伸び率(+6.2%)を大きく上回っており、先行指標としてポジティブ。
  • 投資家の対応: EV/EBITDA法標準〜楽観ケース(857円〜1,002円)を目線に、株主還元強化の適時開示(自己株取得枠拡大等)が出たタイミングでの買い増しを検討する。
WARNING

下振れケース(確率25%)

  • 前提: 中国景気減速が深刻化しファニチャー中国事業が下振れ、かつビジネスサプライ流通事業のFY2025一時的追い風(同業他社不正アクセス事案の代替需要)が完全に剥落。Oasisとの対話が対立色を強めガバナンス懸念が表面化する。
  • 確率の根拠: ビジネスサプライ流通事業の営業利益率5.3%は元々低採算であり、FY2025のQ4営業利益+22.2%は構造要因ではなく一時的要因(同業障害)による特需だったことが有報MD&Aで明記されている。反動剥落は蓋然性が高い。
  • 投資家の対応: 下値メド(PBR1.0倍=585円)を意識した損切りラインの設定、または追加下落時のナンピン買い検討ポイントとして活用する。
SUMMARY

推奨アクションの構造化

  • 買いの根拠: ①標準NC比率39.0%・広義NCAV比率44.4%と資産面の割安度が極めて高い、②CN-PER10.5倍は同業水準以下で「事業価値だけ」なら割高ではない、③Oasisという明確なアクティビストカタリストが存在し資本政策改善の圧力が継続的にかかる、④累進配当方針で配当利回り2.96%の下支えがある。
  • 留意点: ①ROE8.3%の資本効率改善は道半ばで、Unite for Growth 2027の成長ペース(特にファニチャー事業)は計画対比で鈍化している、②ビジネスサプライ流通事業の一時的追い風の反動剥落リスク、③Oasisとの対話が対立に転じた場合のガバナンス混乱リスク、④中国景気減速の影響を継続的にモニタリングする必要がある。

カタリスト・タイムライン

時期 イベント 確認すべき数値 株価への影響
2026年8月中旬(想定) FY2026第2四半期(中間)決算発表 通期予想の修正有無、ファニチャー受注残の消化ペース 上方修正なら買い材料
2026年9月30日(予定) 大阪・迎賓館跡地の引渡し 特別利益計上額、売却資金の使途表明(自己株買い原資化するか) 使途が株主還元なら中立〜プラス
2026年11月中旬(想定) FY2026第3四半期決算発表 累計進捗率(会社予想比)、中国事業の減速度合い 進捗率70%未満なら警戒
2026年12月29日(想定) 期末配当の権利付き最終日(12月31日基準日の2営業日前) 年間配当24.5円(累進配当)の維持確認 減配なら大幅ネガティブ
2027年2月中旬(想定) FY2026本決算発表 着地営業利益27,000百万円との比較、NC活用策(自己株取得実績)の進捗 予想超過なら再評価のトリガー
2027年3月下旬(想定) 定時株主総会 Oasisからの株主提案・取締役選任議案の有無 提案ありなら短期ボラティリティ上昇
2027年9月30日(予定) 大阪旧本社本館土地建物の引渡し 特別利益計上額、NCへの上乗せ有無 軽微だがNC拡大要因
随時(継続監視) Oasisの大量保有報告書変更 保有比率10.52%からのさらなる積み増し(12か月以内5%超上乗せ表明)の実行有無 積み増し継続なら資本政策圧力継続のシグナル
2027年内(通期) Unite for Growth 2027最終年度 2027年目標(売上4,300億円・EBITDA430億円・ROE9%以上)の達成可能性 未達確定なら中計自体の信頼性低下

7. 学習コーナー

📚 着眼点1: NC比率39%なのにPBR1.41倍にしか評価されない「バリュートラップ」の構造

コクヨは標準NC 1,371億円(NC比率39.0%)、広義NCAV 1,559億円(NCAV比率44.4%)という潤沢な現金・金融資産を抱えながら、PBRはBPS585.0円に対し株価827.1円で1.41倍にとどまる。
もし市場がこの現金の価値を素直に評価していれば、事業価値部分だけを見たときにPBRはもっと低くなるはずだが、実際には逆にBPSへプレミアムが乗っている。

TIP

これは「銀行口座に1,371億円の現金を貯め込んでいる会社を、市場が『現金抜きの実力』だけで評価している」状態に近い。
財布の中身(現金)は評価されず、財布を持っている人の稼ぐ力(事業)にだけ値段がついているイメージである。

投資家への示唆: 「NCが多い=即座に割安」と短絡しないこと。
NCが市場評価に転換されるには、経営陣が使う意思を示すか、Oasisのような外部圧力が働くかのどちらかが必要である。
コクヨの場合は後者が現在進行形で作用している点が重要である。

📚 着眼点2: 大量保有報告書の読み方 — Oasisという物言う株主の観察ポイント

Oasisの保有比率は2024年11月の5.02%から、2026年2月時点で約10.28%(日経報道)、2026年5月13日付の変更報告書では10.52%(46,372,700株)まで段階的に上昇している。
保有目的欄には「取締役会実効性向上」「事業ポートフォリオ全体見直し」「上場維持是非の検討」といった踏み込んだ文言が並び、今後12か月で保有比率5%超の追加取得を予定とも明記されている。

TIP

大量保有報告書(変更報告書含む)は、いわば投資家から会社への「意思表示の手紙」である。
保有目的欄の文言のトーンが穏当(「純投資」等)か踏み込んでいる(「重要提案行為」「経営への関与」等)かで、対話の温度感を読み取ることができる。
コクヨのケースは明確に後者であり、しかも積み増しペースが加速している点に注目すべきである。

投資家への示唆: 保有比率の変化速度と保有目的欄の文言変化を継続的に追うことが、資本政策変化の先行指標になる。次回の変更報告書提出(保有比率がさらに上昇した場合)は重要なウォッチポイントである。

📚 着眼点3: CN-PER(キャッシュニュートラルPER)で見る「本当の割高・割安」

コクヨの予想PERは17.3倍だが、標準NC 1,371億円を時価総額から控除した後のCN-PERは10.5倍である。
この差(17.3倍→10.5倍)は、まさにコクヨの時価総額のうち約4割が現金・金融資産の評価であることを表している。

TIP

表面PERは「財布の中身も込みの価格」、CN-PERは「財布を除いた本業だけの価格」に相当する。
同業のオカムラ(予想PER10.1倍)・イトーキ(同12.0倍)と比較する際、コクヨの表面PER17.3倍だけを見ると割高に映るが、CN-PER10.5倍で比較すればほぼ同水準かそれ以下になる。

投資家への示唆: キャッシュリッチな企業を同業他社と比較する際は、必ずCN-PERやEV/EBITDA(コクヨは6.2倍で同業のオカムラ6.6倍・イトーキ8.4倍・三菱鉛筆8.0倍をいずれも下回る)など、現金の影響を除去した指標で比較すること。
表面PERのみの比較は誤った結論(割高判定)を導きやすい。

📚 着眼点4: 受注残高の伸びと中期経営計画の「答え合わせ」

ファニチャー事業の受注残高は4,688百万円(+51.9%)と急伸しており、一見すると強い先行指標に見える。
しかし第4次中期経営計画「Unite for Growth 2027」はファニチャー事業に2024年見込み1,618億円から2027年目標2,190億円へ、年平均約10.6%の成長を要求している。
FY2025実績は1,706.35億円で、2024年見込み対比+5.5%にとどまっており、計画が要求する成長ペースの半分程度に鈍化している

TIP

受注残高は「これから届く注文書の束」であり、短期の売上先行指標としては有効だが、中期経営計画のような複数年の成長率目標と比較する際は「単年度の受注残の伸び」と「複数年平均で必要な成長率」を混同しないことが重要である。

投資家への示唆: 受注残の伸び率だけで強気に傾かず、中期経営計画の中間年(2026年)・最終年(2027年)ごとに達成率を確認する習慣を持つこと。
中国減速要因を踏まえると、2027年目標未達のリスクは相応にある。

📚 着眼点5: コクヨの指標ポジショニング(相場観テーブル)

指標 コクヨの値 同業他社平均 全上場中央値(目安) 評価コメント
予想PER 17.3倍 13.7倍(オカムラ10.1/イトーキ12.0/三菱鉛筆18.9の単純平均) 13〜15倍程度(目安) 同業平均より割高に見えるが、CN-PER10.5倍で見れば同業並み以下
PBR 1.41倍 個別非開示 1.0〜1.2倍程度(目安) 自己資本比率70.9%の厚みに対し評価は妥当だが、NC/NCAVの割安さは未反映
ROE 8.3%(FY2025実績) 個別非開示 8〜9%程度(目安) 市場平均並みだが、自己資本比率の高さを踏まえると本来もっと高くあるべき水準
予想EV/EBITDA 6.2倍 7.67倍(オカムラ6.6/イトーキ8.4/三菱鉛筆8.0の単純平均) 同業平均より低く、キャッシュリッチな財務構造がEVを圧縮している証左。再評価余地あり
予想配当利回り 2.96% 個別非開示 2.2〜2.5%程度(目安) 市場平均を上回り累進配当方針も追い風だが、配当性向51%はまだ伸び代がある
CN-PER 10.5倍 個別非開示 標準NC控除後の実質収益倍率。Oasisの投資根拠の核心とみられる
標準NC比率 39.0% 個別非開示 10〜15%程度(一般的な事業会社の目安) 一般的な事業会社より大幅に高い現金・金融資産の滞留
広義NCAV比率 44.4% 個別非開示 グレアム基準のNCAVに近い資産価値の割安度。清算価値対比の安全余地が大きい
自己資本比率 70.9% 個別非開示 40〜50%程度(目安) 財務健全性は極めて高いが、裏返せば負債活用によるROE向上余地(レバレッジの未活用)を示す
TIP

このテーブルの読み方: 表面指標(PER・PBR)だけを見ると「同業並みかやや割高」に映るが、キャッシュを除去した指標(CN-PER・EV/EBITDA)で見ると同業を下回る。
この指標間のギャップこそがOasisの投資根拠の核心であり、コクヨを分析する際は必ず両方のレンズで指標を確認する必要がある。

🤔 自分への問い(C-3・必須3問)

問1: コクヨの最大の強みは何か? それが5年後も強みであり続けるための条件は?

(自分の答え)

問2: 自分ならコクヨに投資するか? その判断の根拠を3行で説明せよ。

(自分の答え)

問3: この分析で一番難しかった概念は何か? それを自分の言葉で1段落で説明せよ。

(自分の答え)

関連: 演習フォーマット §C-3 / 演習・チェックリスト index


参考情報

ガバナンス情報テーブル

項目 内容
代表者 代表執行役社長 黒田英邦(出典: 日経会社情報 適時開示 2024年11月27日付
設立 1905年創業(2025年で創業120周年)
従業員数 8,079名(連結・平均41.5歳・勤続15.4年・平均年収786万円)
監査法人 一次データ未取得のため本レポートでは非開示
主要取引銀行 一次データ未取得のため本レポートでは非開示
海外拠点 中国(上海ほか、Campus STYLE直営店)、香港、ASEAN、インド(カムリン)

大株主構成テーブル

順位 株主名 保有比率 区分
1 Oasis Management Company Ltd. 10.52% アクティビスト・ファンド(香港拠点、海外機関投資家)
2〜10 (非開示) 一次データ(get_shareholders・大量保有報告書)はOasisの5%超保有分のみ取得。日本マスタートラスト信託銀行・自社(自己株)・創業家系資産管理会社等が上位に想定されるが、本レポートでは一次データが確認できないため記載しない(創作した持株比率は書かない)

社外取締役の視点

WARNING

経営陣に問うべき3つの質問

  • Q1: 標準NC比率39.0%(1,371億円)に対し、2025-2027年累計の株主還元計画640億円(配当性向50%目安+自己株取得350億円)はNC全体の半分にも満たない。Oasisが求める「バランスシート最適化」をどの水準まで踏み込む方針か?
  • Q2: ROE8.3%(FY2025実績)は自己資本比率70.9%という高い資本の厚みを考慮すると本来もっと高くあるべきではないか。2027年目標のROE9%以上を、どのセグメントが主導して達成する計画か?
  • Q3: 大阪旧本社・迎賓館跡地の売却(合計57億円、売却益は報道ベースで42億円)の使途は成長投資か株主還元か。政策保有株式のさらなる売却について、規模・期限の数値目標は開示されているか?

免責事項

CAUTION

本レポートはコクヨ株式会社(7984)に関する定性分析であり、投資助言・勧誘を目的としたものではない。
記載内容は2026年7月4日時点で入手可能な公開情報(EDINET、TDnet適時開示、報道記事等)に基づくが、将来の業績・株価を保証するものではない。
投資判断は自己責任で行うこと。
特にOasis Managementとの資本政策協議は流動的であり、本レポート作成後の展開により前提が変化する可能性が高い点に留意されたい。

データソースの時点差テーブル

データ種別 基準日 ソース
財務諸表(PL/BS/CF、5期分) 2025-12-31(FY2025通期実績) EDINET有価証券報告書(get_financials)
現値マーケットデータ(株価・時価総額) 2026-07-04 現値ベース市場データ(定量分析)
Oasis大量保有変更報告書 2026-05-13 EDINET(get_shareholders)
Oasis保有比率10.28%報道 2026年2月 日本経済新聞
中期経営計画「Unite for Growth 2027」公表 2024-11-27 コクヨIR適時開示PDF
大阪旧本社・迎賓館跡地売却 2026-07-01(適時開示) BigGo Finance TDnet速報
アナリスト目標株価コンセンサス 2026-06-07 株予報Pro
同業他社PER/EV-EBITDA(オカムラ・イトーキ・三菱鉛筆) 定量分析確定値(現値ベース) EDINET DB(現値ベース・再掲)

出典一覧

  1. EDINET DB MCP get_company(E00670) — 企業基本情報・健全性スコア・最新決算
  2. EDINET DB MCP get_financials(E00670, years=5) — 5期財務時系列
  3. EDINET DB MCP get_segments(E00670) — セグメント別売上
  4. EDINET DB MCP get_analysis(E00670) — 業界ベンチマーク
  5. EDINET DB MCP get_earnings(E00670) — TDNet決算短信
  6. EDINET DB MCP get_shareholders(E00670) — 大株主構成
  7. 競合: get_company/get_financials(E02369 オカムラ・E02371 イトーキ・E02366 三菱鉛筆)
  8. 現値: price_fetcher/yfinance(2026-07-04)
  9. 中期経営計画|コクヨ
  10. 中期経営計画策定に関するお知らせ PDF
  11. 日本経済新聞「オアシス、コクヨ株を約10%に買い増し」
  12. 日経会社情報 適時開示 2024年11月27日付
  13. note「オアシスがコクヨ株10%取得で筆頭株主に」
  14. 株予報Pro コクヨ理論株価
  15. ジェトロ・インド市場戦略
  16. オフィス家具市場レポート2025-2026
  17. BigGo Finance TDnet速報