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HOYA株式会社

【経済・精密機器】精密機器銘柄レポート更新 2026-06-20

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目次
  1. 1. 事業概要
  2. 業界の系統分解
  3. HOYAの事業構成
  4. 主要取引先
  5. 競争優位性の比喩的説明
  6. HOYAの固有事象・資本関係の詳細分析
  7. 業界のビジネスモデルと着目点
  8. 2. バリュエーション分析
  9. ⚠️ 時価総額・株価の基準(本体準拠)
  10. 標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移
  11. 広義 NCAV 計算 — 5期推移
  12. CN-PER(キャッシュニュートラル PER)
  13. EV/EBITDA 分析
  14. EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別)
  15. 成長率モデル適正 PER(参考)
  16. DCF 前提入力枠(空欄許容)
  17. バリュエーション乖離コメント
  18. 3. 財務分析
  19. PL — 5期+予想
  20. BS — 5期
  21. BS 詳細主要科目(百万円) — 5期
  22. CF — 5期
  23. 減価償却費明細(百万円) — 5期
  24. 受注高・受注残高
  25. 運転資本分析(CCC)
  26. 配当推移 — 5期+予想
  27. 経営者予想精度(3期分)
  28. 健全性チェック(事業会社基準)
  29. 4. 同業他社比較
  30. 競合選定基準
  31. 最新期比較テーブル
  32. 競合 3期推移(売上・純利益率)
  33. 運転資本効率(CCC)— 競合比較
  34. 5. リスク評価
  35. リスクマトリクステーブル
  36. リスク因果関係の mermaid 図
  37. 最大リスクの深掘り callout
  38. バリュートラップ/高バリュエーションリスクの深掘り callout
  39. 6. 投資判断
  40. バリュエーション乖離コメントの補強
  41. バリュエーション手法別の目標株価
  42. シナリオ別の詳細根拠
  43. 推奨アクションの構造化 callout
  44. カタリスト・タイムライン
  45. 7. 学習コーナー
  46. 📚 着眼点 1: 「複占の堀」がもたらす超過利潤——情報・通信セグメント利益率54%の正体
  47. 📚 着眼点 2: 「業績予想を出さない会社」の哲学と、初開示が意味する転換
  48. 📚 着眼点 3: SVA(Shareholders Value Added)——HOYAが資本コストにこだわる理由
  49. 📚 着眼点 4: 「ボルトオンM&A」と自社株買い消却——複利成長の二つのエンジン
  50. 📚 着眼点 5: HOYAの指標ポジショニング(相場観テーブル)
  51. 🤔 自分への問い
  52. 参考情報
  53. ガバナンス情報テーブル
  54. 大株主構成テーブル(FY2025有報)
  55. 社外取締役の視点 callout
  56. 免責事項 callout
  57. データソースの時点差テーブル
  58. 出典一覧

HOYA株式会社(7741)銘柄分析レポート

SUMMARY

HOYAは光学技術を軸にライフケア(眼鏡・コンタクト・医療機器)と情報・通信(半導体マスクブランクス・HDDガラス基板・映像)の2本柱を展開する精密機器の高収益コングロマリット。
FY2026は売上 9,477億円(+9.4%)・当期利益 2,514億円(+24.6%)と過去最高を更新、ROE 25.4%・純利益率 26.5% はセクター随一。
時価総額 9.1兆円 の大型株で、現値 PER 36.6倍・EV/EBITDA 25.0倍と成長プレミアムを織り込んだ高バリュエーション。
財務は自己資本比率 78.4%・ネットキャッシュ 5,319億円と最上級。
NC/NCAV はディープバリュー指標としては低位(大型優良株のため想定通り)。
来期(FY2027)会社予想は 未提示(FY2026は初の通期見通しを開示したが、FY2027ガイダンスは出していない。アナリストコンセンサスは営業利益+4%)。

指標 評価
時価総額 91,138 億円 大型
予 PER 36.6倍(実績EPS基準、会社予想非開示) 割高
予 EV/EBITDA 25.0倍 割高
配当利回り 1.08% 中位
標準 NC 比率 5.8% 低い(大型株)
広義 NCAV 比率 7.5% 低い(大型株)
健全性スコア 90/100 高い

1. 事業概要

業界の系統分解

HOYAは単一業界の企業ではなく、「光学技術」という共通の中核能力(コアコンピタンス)を軸に、性質の異なる複数事業をぶら下げたポートフォリオ経営の会社である。
同社が属する精密機器・医療機器・半導体部材の各市場は、プレイヤーの系統がまったく異なる。

HOYAの立ち位置は「各ニッチ市場で1位か2位の高シェアを取り、価格決定力と高採算を確保する」という、創業以来の「小さな池の大きな魚(big fish in a small pond)」戦略に集約される。
汎用品の量で勝負せず、技術障壁の高い領域に絞る。

HOYAの事業構成

(出典: 有報MD&A。get_segments は空のため補完。外部顧客売上、百万円)

セグメント 売上高(百万円) 構成比 セグメント利益(百万円) セグメント利益率
ライフケア 590,680 62.3% 129,531 21.9%
情報・通信 354,751 37.4% 192,325 54.2%
その他 2,318 0.2% 4,321 (音声合成ソフト、2025/10譲渡完了)
合計 947,749 100.0%

各セグメントの中身: ライフケア=メガネレンズ・コンタクト・医療内視鏡(PENTAX)・眼内レンズ/情報・通信=半導体マスクブランクス・FPDフォトマスク・HDDガラス基板・映像/その他=音声合成ソフト(2025年10月譲渡完了)。

注: 売上の主力はライフケア(62%)だが、利益の源泉は情報・通信(セグメント利益率54.2%)。半導体マスクブランクスの寡占的地位が桁外れの採算を生む。会社全体ではこの2本柱が利益をほぼ二分する。

市場分野別の成長動向(定性評価):

事業分野 成長性 ドライバー
半導体マスクブランクス(情報・通信) ◎急成長 EUV/DUV需要、生成AI・データセンター投資、2ナノ世代の微細化
HDD用ガラス基板(情報・通信) ○堅調 データセンター向けニアライン3.5インチの大容量化(2.5インチは減)
メガネレンズ(ライフケア) ○堅調 高齢化・若年層視力低下、高付加価値レンズ・ボルトオンM&A
眼内レンズ・内視鏡(ライフケア) ◎好調 低侵襲医療の普及、欧州での売上成長
FPDフォトマスク(情報・通信) ○回復 中国工場立ち上がりで大幅増収

主要取引先

取引関係の特徴は「替えが利かない(switching cost が極めて高い)」こと。
半導体マスクブランクスは欠陥品質が歩留まりに直結するため、顧客は容易にサプライヤーを切り替えられない。
これがHOYAの価格決定力の源泉である。

競争優位性の比喩的説明

参入障壁=「世界に2社しか作れない、半導体の設計図の元板」

半導体マスクブランクスは、半導体回路を露光で焼き付ける際の「原版(フォトマスク)」のさらに元になる、欠陥ゼロに限りなく近い超平滑ガラス基板である。
EUV世代では、原子レベルの欠陥1個が数十億円のチップ生産をダメにする。
これを量産できるのは事実上HOYAと信越化学の2社だけ。
例えるなら「世界中の最先端工場が使う製図用の特殊な定規を、地球上で2社しか作れない」状態。
新規参入には数千億円の投資と十数年の歩留まり改善ノウハウが要り、後発が追いつくのは至難。
HOYAの情報・通信セグメント利益率54%は、この「複占の堀」が生む超過利潤である。

HOYAの固有事象・資本関係の詳細分析

「業績予想を出さない会社」が、初めて予想を出した転換点

HOYAは長年、通期業績予想を開示しないことで知られた稀有な日本企業だった(市場の短期視点に振り回されず、ポートフォリオ経営の長期最適を優先する哲学)。
ところがFY2026(2026年3月期)について、同社は初めて通期の利益見通し(純利益2,540億円)を開示した(出典: 日経 純利益26%増・今期最高)。
これは東証の「資本コストを意識した経営」要請やグローバル機関投資家(株主の大半が信託銀行経由の海外機関)への情報開示充実という時代の流れに、保守的だった同社がついに歩み寄った象徴的な変化である。
実績は売上947,749百万円・純利益251,451百万円で、開示した見通しにほぼ着地(売上+0.8%上振れ、純利益は一過性要因の反動で△1.0%)。
投資家にとっては「予想の手がかりが得られるようになった」一方、HOYAの長期主義が薄れたわけではない点に留意。

資本政策の特記事項:

業界のビジネスモデルと着目点

HOYAの収益構造の本質は「技術障壁の高いニッチで高シェア→価格決定力→高採算→潤沢なFCF→M&Aと自社株買いで複利成長」というフライホイールである。

HOYAが強いのは「資本効率(ROE25%)」と「キャッシュ創出力(FCF2,700億円)」を、無借金(自己資本比率78%)のまま実現している点。
これは規律ある資本配分(撤退判断を含む)の結果である。

ポートフォリオ経営=「景気の波が違う事業を組み合わせる」

HOYAの2本柱は性格が正反対。
情報・通信(半導体)は景気・半導体サイクルに敏感で振れ幅が大きいが超高採算。
ライフケア(医療・メガネ)は高齢化という構造需要に支えられ景気感応度が低く安定。
例えるなら「波の高いサーフィン(半導体)と、流れの穏やかなカヌー(医療)を1艘の船に積む」ようなもの。
一方が谷でも他方が支えるため、全社の利益が極端に振れにくい。
これがHOYAの利益の安定性と、撤退(音声合成ソフト売却)・参入(M&A)を機動的に行える土台になっている。



2. バリュエーション分析

⚠️ 時価総額・株価の基準(本体準拠)

本パックのバリュエーション指標は market_data_as_of = 2026-06-19 時点の現値(price_fetcher / yfinance)を使用。
EDINET get_company.marketCap(有報=期末固定値)は不使用。

内部整合性チェック(±5%以内):

⚠️ 来期会社予想は非開示: HOYAは業績予想を開示しない方針(既知)。
FY2026 通期短信に翌期予想なし。
以下の「予 PER」「予 EV/EBITDA」は FY2026 実績 ベース(trailing)であり、将来予想ではない点に留意。

標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移

(現預金 + 短期有価証券 − 有利子負債。出典: EDINET DB get_financials + 有報MD&A) ⚠️ 有利子負債は EDINET IFRS feed で明細非開示。
直近期は有報MD&A 記載値(借入金+リース負債含む 42,241 百万円)を採用。
過年度は明細不明のため「—」。

項目(百万円) FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
現預金 419,404 405,888 525,162 533,967 574,092
短期有価証券
有利子負債 42,241
標準 NC 531,851
標準 NC比率 5.8%

注: 過年度の有利子負債は非開示だが、EDINET D/Eレシオ FY2026=0.041 が示すとおり一貫してほぼ無借金経営。標準NCはほぼ現預金全額に近い。

広義 NCAV 計算 — 5期推移

(流動資産 + 投資有価証券 × 0.7 − 負債合計。出典: EDINET DB get_financials) ⚠️ 投資有価証券は EDINET IFRS feed で非開示のため 0 として算出(保守的・過小評価方向)。

項目(百万円) FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
流動資産 682,965 710,155 856,635 879,731 960,752
投資有価証券×0.7
負債合計 188,988 210,005 235,865 260,255 280,437
広義 NCAV 493,977 500,150 620,770 619,476 680,315
広義 NCAV比率 5.4% 5.5% 6.8% 6.8% 7.5%

CN-PER(キャッシュニュートラル PER)

指標
予想 PER(実績EPS基準, 会社予想非開示) 36.6 倍
標準 NC 比率(標準NC ÷ 時価総額) 5.8%
CN-PER(標準 NC ベース) 34.5 倍
参考: CN-PER(広義 NCAV ベース) 33.8 倍

注: 大型優良株のため NC 比率が低く、CN-PER は素の PER からほとんど下がらない(≒ キャッシュよりも事業価値で評価される企業)。

EV/EBITDA 分析

(EBITDA = 営業利益 285,241 + 減価償却費 58,218 = 343,459 百万円。営業利益は TDNet短信、EDINET IFRS feed では null)

指標 HOYA オリンパス ニコン テルモ
時価総額(億円) 91,138 16,573※ 5,063※ 41,418※
標準 NC(億円) 5,319 データなし データなし データなし
EV(億円) 85,820
EBITDA(億円) 3,435 データなし データなし データなし
EV/EBITDA 25.0

※競合時価総額は EDINET 期末株価基準の概算(純利益 × PER)。
現値ではない。
競合の標準NC・EBITDA は EDINET IFRS feed で営業利益・有利子負債が非開示のため算出不能(データなし)。
競合の倍率比較は §4 の PER ベースで行う。

EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別)

NC 定義 NC(億円) EV(億円) EV/EBITDA
標準 NC(現預金+短期有価証券−有利子負債) 5,319 85,820 25.0
広義 NCAV(流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計) 6,803 84,335 24.6

成長率モデル適正 PER(参考)

理論 PER = 1 / (r − g)。r = 株主資本コスト(仮定 8%)、g = 利益成長率。

成長率仮定 理論 PER 備考
g = 0%(ゼロ成長) 12.5 倍 PER 下限の目安
g = 3%(インフレ並み) 20.0 倍
g = 5%(中程度成長) 33.3 倍 現値PER 36.6倍はこの近傍
HOYA FY22-26 純利益CAGR 11.1% モデル適用外(g > r) 高成長によりゴードンモデル発散。成長持続性が前提のレンジ

注: 過去5期の純利益CAGR 11.1%・売上CAGR 9.4% は仮定 r=8% を上回り、単純ゴードンモデルでは理論PERが発散する。
現値PER 36.6倍は g=5%(持続的中成長)想定とほぼ整合し、市場が中長期の高成長持続を織り込んでいることを示す。

DCF 前提入力枠(空欄許容)

⚠️ 疑似精度禁止: 確度が低い前提は 要調査 のまま。

項目 出典/備考
無リスク金利(%) 要調査 日本10年国債利回り(直近1.5%前後想定)
β 要調査 get_analysis にβ提供なし。精密機器セクター類似企業から推定要
市場リスクプレミアム(%) 5-6 日本市場慣行値
株主資本コスト Ke(%) 上記から算出 Ke = Rf + β × ERP
負債コスト Kd 税引後(%) 要調査 支払利息非開示。ほぼ無借金のため WACC への寄与小
自己資本比率(時価ベース) 約 99.5% E=91,138億円, D≒422億円 → E/(E+D)≒0.995
WACC(%) ≒ Ke 無借金のため WACC ≒ 株主資本コスト
永続成長率 g(%) 要調査 業界・GDP成長率参考。WACC×0.4以下が安全圏
法人税率(%) 30 日本標準実効税率。海外売上比率高く実効はやや低い可能性
明示予測期間(年) 5

5期 FCF 入力枠(FCF = NOPAT + 減価償却費 − 設備投資 − 運転資本増加):

t+1 t+2 t+3 t+4 t+5
FCF(百万円) 要調査 要調査 要調査 要調査 要調査

参考: FY2026 実績 FCF(営業CF278,446 + 投資CF△7,586)= 270,860 百万円。

計算式: 企業価値 = Σ FCF_t/(1+WACC)^t + TV/(1+WACC)^nTV(永続成長) = FCF_{n+1}/(WACC-g)

参照: DCF分析 / WACC算出 / ターミナルバリュー / 感応度・シナリオ分析

バリュエーション乖離コメント

  1. NC考慮 EV/EBITDA 法: 25.0倍(標準NC)。大型グロース株として高め。
  2. CN-PER 法: 34.5倍。NC比率が低い(5.8%)ため素のPER 36.6倍からほぼ下がらない。
  3. 成長率モデル適正 PER: g=5%想定で33.3倍。現値PER 36.6倍はこれをやや上回る。

乖離パターン: 3手法とも「割高〜やや割高」で方向は一致。
NC比率が低くキャッシュクッションが効かない一方、過去CAGR 11%・ROE 25%という質の高さが高倍率を正当化しうる。
鍵は「現在の高成長(特に情報・通信=半導体マスクブランクス/HDD基板)が中長期持続するか」「ライフケアの構造成長が利益率を支えるか」。
成長持続前提の感応度分析が必要。



3. 財務分析

PL — 5期+予想

(get_financials 5期 + 有報MD&A。営業利益は TDNet短信。来期は会社予想非開示)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026 来期予想
売上高(百万円) 661,466 723,582 762,610 866,032 947,749 非開示
営業利益(百万円) 255,800※ 285,241 非開示
税引前利益(百万円) 259,965 327,668 非開示
当期純利益(百万円) 165,322 168,788 182,566 201,750 251,451 非開示
EPS(円) 446.45 469.76 515.48 581.45 743.93 非開示
営業利益率 29.5%※ 30.1%
前年比(売上) +9.4% +5.4% +13.6% +9.4%
前年比(純利益) +2.1% +8.2% +10.5% +24.6%

※FY2025 営業利益は短信YoY(FY2026営利285,241、前期比+11.5%)から逆算した概算(255,800)。
EDINET IFRS feed は営業利益 null。
FY2026 大幅増益は中国・白内障用眼内レンズ合弁の将来持分取得見積額が市場環境変化で下回り、差額を一過性収益計上した要因を含む(MD&A)。
来期欄「非開示」は、HOYAが FY2026 通期決算時に FY2027 のガイダンスを提示しなかったため(同社は長く業績予想を開示しない方針を採り、FY2026 で初めて通期見通しを開示した経緯がある)。
FY2027 はアナリストコンセンサス(営業利益約340〜341十億円、+4%)を §6 投資判断で参照する。

BS — 5期

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
総資産(百万円) 992,839 1,028,326 1,203,623 1,234,278 1,300,897
流動資産(百万円) 682,965 710,155 856,635 879,731 960,752
固定資産(百万円) 309,874 318,171 346,988 354,547 340,145
負債合計(百万円) 188,988 210,005 235,865 260,255 280,437
純資産(百万円) 803,851 818,321 967,758 974,023 1,020,460
自己資本比率 81.0% 79.6% 80.4% 78.9% 78.4%
BPS(円) 2,201.68 2,311.72 2,760.91 2,841.73 3,041.71

注: 純資産は「親会社の所有者に帰属する持分」で全期統一(IFRS、非支配持分除く)。自己資本比率も同基準。

BS 詳細主要科目(百万円) — 5期

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
投資有価証券
現預金 419,404 405,888 525,162 533,967 574,092
短期有価証券
有利子負債 42,241
売上債権
棚卸資産 91,441 105,150 119,076 124,550 132,482
仕入債務
のれん 39,648 46,818 52,742 52,174 54,405
有形固定資産 169,665 178,648 198,225 210,890 235,653

注: 投資有価証券・短期有価証券・売上債権・仕入債務は EDINET IFRS feed で非開示(「—」)。有利子負債は直近期のみ有報MD&A 値。

CF — 5期

(EDINET IFRS feed は CF が null。有報MD&A は FY2025/FY2026 のみ開示。FY2022-2024 は「—」)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
営業 CF(百万円) 235,113 278,446
投資 CF(百万円) △33,192 △7,586
財務 CF(百万円) △190,352 △261,259
FCF(百万円) 201,921 270,860

注: FY2026 財務CF △261,259 は自己株式取得・配当増加が主因(株主還元強化)。営業CF は税引前利益増で +18.4%。FCFは2,709億円と潤沢。

減価償却費明細(百万円) — 5期

FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
43,019 49,615 47,215 48,577 58,218

受注高・受注残高

該当なし(非受注産業)。HOYAは主として需要と現有設備を勘案した見込生産であり、有報でも受注実績の記載を省略している。

運転資本分析(CCC)

⚠️ 分母統一ルール: 本来は売上債権=売上高ベース、棚卸資産・仕入債務=売上原価ベースの「厳密法」が標準。
ただし本件は (1) 売上債権・仕入債務が EDINET IFRS feed で非開示、(2) IFRS表示上の売上原価が極端に狭い(FY2026 116,088 百万円=粗利率88%でメガネ・医療機器主体の事業実態を反映せず棚卸回転日数を歪める)ため、棚卸資産回転日数のみ「売上高ベース(簡易法)」で参考表示し、CCC は算出不能とする。

指標 FY2025 FY2026
売上債権回転日数(売上高ベース) データなし(非開示) データなし(非開示)
棚卸資産回転日数(売上高ベース・簡易法) 52.5日 51.0日
仕入債務回転日数(売上高ベース) データなし(非開示) データなし(非開示)
CCC 算出不能 算出不能

注: 棚卸資産回転日数は約51日で安定。売上債権・仕入債務が非開示のため CCC 全体は算出できない(有報・短信から補完可能なら参照)。

配当推移 — 5期+予想

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026 来期予想
1株配当(円) 110 110 110 160 295 非開示
配当利回り(現値27,245基準) 1.08%
配当性向 24.6% 23.4% 21.3% 27.5% 39.7%

注: FY2026 は前期160円から295円へ大幅増配(+84%)、配当性向も39.7%へ上昇。
DOE 9.9%。
株主還元を明確に強化。
配当利回りは現値ベースで1.08%(高PERのため利回りは低位)。

経営者予想精度(3期分)

予想売上 実績売上 乖離率 予想純利益 実績純利益 乖離率
FY2026(Q3時点予想 vs 実績) 940,000 947,749 +0.8% 254,000 251,451 △1.0%
FY2025以前 通期予想非開示 通期予想非開示

注: HOYAは通期業績予想を開示しない方針
唯一、FY2026 Q3短信が暫定的にFY2026通期見通し(売上940,000/純利益254,000)を示し、実績は売上+0.8%上振れ・純利益△1.0%(一過性差で僅差)。
予想精度の継続評価は方針上不可。

健全性チェック(事業会社基準)

# 項目 基準 実績 判定
1 自己資本比率 > 40% 78.4%
2 有利子負債 < 現預金 ネットキャッシュ 負債42,241 ≪ 現預金574,092
3 流動比率 > 150% 960,752/199,674 = 481%
4 利益剰余金 > 0 902,401 百万円
5 営業CF 3期連続黒字 黒字継続 FY2025/26 黒字(過年度非開示だが優良企業型CFパターン)
6 配当 3期連続支払い 継続 5期連続(増配基調)
7 EPS 前年比プラス 増加 5期連続増加(446→744円)
8 ROE > 8% 25.4%
9 営業利益率 > 業界平均 上回る 30.1%(精密機器セクター平均を大幅超)
10 EDINET健全性スコア 高位 90/100(信用レーティングS)

全10項目クリア。財務健全性は最上級。



4. 同業他社比較

競合選定基準

基準 内容
業種 精密機器・医療機器(EDINET 業種「精密機器」、industryPeersPreview から選定)
時価総額レンジ 対象 0.3-5倍を満たす(テルモ41,418億・オリンパス16,573億・ニコン5,063億)
選定理由 オリンパス=医療内視鏡で重複、ニコン=光学/半導体露光/映像で重複、テルモ=医療機器大手で収益性比較に有用

最新期比較テーブル

指標 HOYA オリンパス ニコン テルモ
時価総額(億円) 91,138(現値) 16,573※ 5,063※ 41,418※
売上高(億円) 9,477 10,107 7,153 10,362
当期純利益(億円) 2,515 682 61 1,170
純利益率 26.5% 6.7% 0.9% 11.3%
自己資本比率 78.4% 52.8% 57.4% 74.8%
PER 36.6倍(現値) 24.3倍※ 83.0倍※ 35.4倍※
PBR 8.96倍 データなし データなし データなし
ROE 25.4% 8.7% 0.9% 8.7%
配当利回り 1.08% データなし データなし データなし
EV/EBITDA 25.0倍 データなし データなし データなし
標準 NC 比率 5.8% データなし データなし データなし
healthScore 90 88 80 100

※競合の時価総額・PER は EDINET 期末株価基準の概算(現値ではない)。
PBR・配当利回り・EV/EBITDA・NC比率は EDINET IFRS feed で必要項目(株価現値・営業利益・有利子負債等)が揃わず「データなし」。

競合 3期推移(売上・純利益率)

企業 3期前 売上(億円) 2期前 売上 直近 売上 3期前 純利益率 2期前 純利益率 直近 純利益率
HOYA 7,626(FY24) 8,660(FY25) 9,477(FY26) 23.9% 23.3% 26.5%
オリンパス 9,258(FY24) 9,973(FY25) 10,107(FY26) 26.2% 11.8% 6.7%
ニコン 6,281(FY23) 7,172(FY24) 7,153(FY25) 7.1% 4.5% 0.9%

注: HOYAは純利益率が23-26%で高位安定かつ上昇。オリンパスは直近2期で利益率急落(26.2%→6.7%)、ニコンは7.1%→0.9%へ低下。HOYAの収益安定性が際立つ。

運転資本効率(CCC)— 競合比較

⚠️ HOYAは売上債権・仕入債務が非開示で CCC 算出不能。競合も EDINET IFRS feed で同項目が揃わず、横断比較は不能。

指標(日数) HOYA オリンパス ニコン テルモ 業界中央値
売上債権回転日数 データなし データなし データなし データなし データなし
棚卸資産回転日数(売上高ベース) 51.0 データなし データなし データなし データなし
仕入債務回転日数 データなし データなし データなし データなし データなし
CCC 算出不能 算出不能 算出不能 算出不能 データなし

注: HOYAの棚卸資産回転日数は約51日。get_analysis に業界中央値の提供なし。



5. リスク評価

リスクマトリクステーブル

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的影響シナリオ 対応状況
サイバー攻撃(ランサムウェア) 2024年3月の実例で生産・受注システムが停止しライフケア利益がFY2025 Q1に前年比△42%。再発すれば四半期業績に直撃 セキュリティ投資強化を有報の対処課題に明記。だが製造業の宿命的リスク
半導体市況の循環 EUV/DUV需要が後退すると情報・通信(利益率54%・全社利益の柱)が縮小、全社利益が大きく振れる 最先端領域は構造成長で下支え。ただし汎用メモリ向けは循環的
為替変動(円高) 海外売上比率が高く、円高は売上・利益を目減りさせる(換算・取引両面)。FY2026は為替差益が現金を押し上げた裏返し 多通貨での自然ヘッジ。ただし急激な円高局面では減益要因
競合のEUVブランクス参入 低〜中 信越化学・AGCがEUVで攻勢を強めると複占の超過利潤が縮小、情報・通信の高採算が崩れる 欠陥品質・位相シフトマスク等の次世代品で優位を維持する方針
医療規制・承認の遅延 各国当局の承認・認可が必要なメディカル製品で、規制対応の遅れが新製品投入を遅延させる 高度な品質管理体制が参入障壁でもあり両刃
高バリュエーションの調整 PER36倍は成長持続が前提。成長鈍化や金利上昇で株価が大きく調整するリスク(EDINET投資インサイトも「高PER・成長鈍化すると株価調整リスク」と指摘) ファンダメンタルズは堅固だが株価の下値余地は大きい

リスク因果関係の mermaid 図

flowchart TD
    A[半導体市況の後退] --> B[情報・通信セグメント減速]
    C[円高進行] --> D[海外売上の円換算目減り]
    E[サイバー攻撃再発] --> F[生産・受注システム停止]
    F --> G[ライフケア利益の急減]
    B --> H[全社利益の下振れ]
    D --> H
    G --> H
    H --> I[高PERの前提崩れ]
    I --> J[株価の大幅調整]
    K[競合のEUVブランクス参入] -.緩和: 次世代品で優位維持.-> B
    L[潤沢なFCF・無借金・自社株買い] -.緩和: 下値を支える.-> J
    M[ポートフォリオ分散<br/>ライフケア×情報通信] -.緩和: 一方が谷でも他方が支え.-> H

最大リスクの深掘り callout

最大の定性リスク: サイバーセキュリティ事故の再発と、その「事業集中ゆえの脆さ」

HOYAにとって最も現実味のある固有リスクは、2024年3月に実際に発生したランサムウェア感染の再発である(出典: 日経xTECH システム障害 / piyolog まとめ)。

  • シナリオA(生産停止の連鎖): 国内外の生産・受注システムが停止し、出荷が滞る。前回はライフケア(特にメガネレンズ)のセグメント利益がFY2025 Q1に前年同期比△42%へ急落し、納期遅れがレンズ業界全体に波及した。世界2位のレンズメーカーが止まると業界のサプライチェーンが揺らぐ=「集中の代償」。
  • シナリオB(情報漏洩と信認低下): 前回は2016〜2022年に関東圏4医療機関でPENTAX内視鏡検査を受けた約1,000人の個人情報が流出した(出典: security-next 個人情報流出)。医療機器企業にとって患者データ漏洩はブランド信認に直結する。
  • シナリオC(高採算事業への波及): 仮に情報・通信(半導体マスクブランクス)の生産ラインが標的になれば、全社利益の柱が止まり、四半期業績へのインパクトはライフケア以上になりうる。 対応として同社はセキュリティ投資を対処課題に掲げるが、製造業のサイバーリスクは構造的にゼロにできない。投資家は「四半期業績の一時的な落ち込み=買い場」と「再発の常態化=構造問題」を見極める必要がある。

バリュートラップ/高バリュエーションリスクの深掘り callout

高バリュエーション調整リスク(NC過剰ではなく「成長プレミアム剥落」型)

HOYAは小型ディープバリュー株とは逆の構造を持つ。
標準NC比率はわずか5.8%(定量分析)で、株価はキャッシュではなく事業価値と将来成長で評価されている。
したがって本銘柄の「バリュートラップ」リスクは「NCが溜まって放置される」型ではなく、「高い成長プレミアムが剥落する」型である。

  • 現値PER36.6倍はPER10年レンジ(9.11〜43.32倍)の上限近辺、PBR8.96倍も10年レンジ(1.37〜9.73倍)の上限近辺にある(出典: 銘柄スカウター 株価指標)。割安放置の懸念は小さいが、逆に「割高で買われすぎ」の調整リスクが主題。
  • アナリストのコンセンサス目標株価は約27,245円で現在株価とほぼ一致(乖離率−0.64%、出典: みんかぶ 7741)。市場は「概ね適正〜やや割高」と見ており、上値余地は限定的との見方。
  • 緩和要因: 大規模な自社株買い(消却付き)と大幅増配(FY2026配当+84%)が下値を支える。資本効率重視の規律ある経営が、典型的なバリュートラップ(資本死蔵)には陥りにくい体質を作っている。東証の資本コスト要請にも、初の業績予想開示・株主還元強化で先回り対応済み。


6. 投資判断

バリュエーション乖離コメントの補強

定量分析のバリュエーション乖離コメントは「3手法(EV/EBITDA 25.0倍、CN-PER 34.5倍、成長率モデルg=5%で33.3倍)とも割高〜やや割高で方向一致。鍵は高成長が中長期持続するか」であった。
これを定性的に補強する。

バリュエーション手法別の目標株価

定量分析の数値(実績EPS743.93円、EBITDA3,435億円、標準NC5,319億円、BPS3,041.71円、発行済株式334,514,496株、現在株価27,245円)を引用して算出する。

PER法(保守的/標準/楽観的)

シナリオ 適用 PER EPS(円) 目標株価(円) 現在株価比
保守的 25倍(10年レンジ中位・半導体減速時) 743.93 18,598 −31.7%
標準 32倍(10年レンジ上半・直近平均) 743.93 23,806 −12.6%
楽観的 40倍(10年レンジ上限近辺・成長持続) 743.93 29,757 +9.2%

PER選定根拠: 保守的=半導体市況後退時に意識される過去中位水準。標準=直近の市場評価レンジ中央(PER10年レンジ9.11〜43.32倍の上半)。楽観的=高成長持続を織り込む上限近辺。

EV/EBITDA法(保守的/標準/楽観的)

シナリオ EV/EBITDA EBITDA(億円) EV(億円) +標準NC=理論時価総額(億円) 理論株価(円) 現在株価比
保守的 18倍 3,435 61,830 67,149 20,074 −26.3%
標準 22倍 3,435 75,570 80,889 24,181 −11.2%
楽観的 28倍 3,435 96,180 101,499 30,342 +11.4%

注: 現値EV/EBITDA25.0倍(定量分析)は標準と楽観の中間。理論株価レンジ20,074〜30,342円は現在株価27,245円を内包し、市場評価が合理的レンジ内にあることを示す。

下値メド

PBR 1.0倍 = BPS 3,041.71円 を理論的下限として提示する。
ただしHOYAはROE25%の超高収益企業であり、PBR1.0倍(=ほぼ純資産清算価値)まで売られる現実性は極めて低い(PBR10年レンジ下限は1.37倍)。
実務的な下値メドは過去レンジ下限PBR1.5〜2倍(4,500〜6,100円水準)よりも、PER下限25倍前後(18,600円水準)の方が意識されやすい。

シナリオ別の詳細根拠

ベースケース(50%): 構造成長持続・コンセンサス並み着地

前提: EUV/データセンター需要が堅調を維持し、情報・通信が牽引。
ライフケアも高齢化・低侵襲医療で安定成長。
FY2027営業利益はコンセンサスの約340十億円(+4%)に着地。
確率の根拠: 半導体最先端領域は生成AI投資で構造的に拡大基調。
HDD大容量化(Seagate向け)も継続。
アナリストコンセンサス目標株価が現在株価とほぼ一致(乖離−0.64%)し、市場の中心シナリオもこの線。
投資家の対応: 現値はこのシナリオをほぼ織り込み済み。
新規は押し目で段階買い、保有者はホールド。

上振れケース(25%): AI半導体スーパーサイクル・EUV独占の収穫

前提: 生成AI・2ナノ世代の本格量産でEUVマスクブランクス需要が想定超で拡大。
HDDニアライン需要も加速。
情報・通信の超高採算が全社利益を押し上げ、PERが楽観レンジ(40倍・29,757円)へ。
確率の根拠: HOYAのEUVブランクス世界シェアはほぼ独占的で、AI投資の恩恵を直接享受する立場。
FY2026も「HDD向けがけん引」して純利益+26%を達成した実績。
投資家の対応: ブレイクなら一部利乗せも視野。
ただし高値追いは下振れ時の調整幅が大きい点に留意。

下振れケース(25%): 半導体循環の谷+サイバー事故+円高の複合

前提: 半導体市況が後退し情報・通信が減速、同時に円高進行で海外売上が目減り。
最悪はサイバー事故再発で生産停止。
成長プレミアムが剥落しPERが保守レンジ(25倍・18,598円)へ調整。
確率の根拠: 2024年のランサムウェア事故でライフケア利益が四半期△42%に落ちた実例があり、複合ショックは非現実的でない。
高PER(10年上限近辺)ゆえ調整余地が大きい。
投資家の対応: 18,600円(PER25倍)〜20,000円(EV/EBITDA18倍)が意識される下値メド。
むしろ優良企業を仕込む好機と捉え、分割買いの待ち場とする。

推奨アクションの構造化 callout

推奨アクション

買いの根拠

  • ROE25%・純利益率26.5%・無借金(自己資本比率78%)の最上級クオリティ。競合を圧倒する収益性。
  • EUVマスクブランクスの複占(信越化学と2社)+眼内レンズ世界1位・メガネレンズ世界2位という強固な堀。
  • 大規模自社株買い(消却付き)+大幅増配+初の業績予想開示で株主還元・情報開示を強化。 留意点
  • 現値PER36.6倍・PBR8.96倍は10年レンジ上限近辺。コンセンサス目標株価とほぼ一致=上値余地は限定的。
  • FY2026増益は一過性要因(中国眼内レンズ合弁の見積差)を含む。FY2027は+4%増益コンセンサスで成長鈍化見込み。
  • サイバー事故再発・半導体循環・円高の複合リスク。 結論: 高値追いせず、半導体サイクルの谷・円高・一時的ショックを待った押し目での段階買いが妥当。

カタリスト・タイムライン

時期 イベント 確認すべき数値 株価への影響
2026年6月27日頃 定時株主総会(3月決算企業の例年6月下旬) 増配・自社株買い消却・資本政策の説明 中(株主還元方針の確認)
2026年6月27日頃 FY2027 Q1 配当権利付き最終日の前段階確認 中間配当方針(FY2026は中間125円)
2026年8月上旬 FY2027 第1四半期決算(短信) 情報・通信セグメント利益 vs 前年、半導体需要動向 大(マスクブランクス需要の最新動向)
2026年9月29日頃 FY2027 中間配当 権利確定日(9月末・権利付き最終日は−2営業日) 中間配当の増減
2026年11月上旬 FY2027 第2四半期(中間)決算 通期見通しの更新有無、ライフケア利益率の回復度
2026年内(不定期) 追加自社株買い・消却の適時開示 取得上限額・消却株数 中〜大(需給改善)
2027年2月上旬 FY2027 第3四半期決算 EUV/DCサイクルの位置、為替前提
2027年3月末 FY2027 期末配当 権利確定日 年間配当(FY2026は295円)
2027年5月中旬 FY2027 通期決算+FY2028見通し 通期着地 vs コンセンサス、新年度ガイダンス 特大(年次の最大カタリスト)

注: 配当権利確定日は中間=9月末、期末=3月末(権利付き最終日はその−2営業日)。具体日は各年のカレンダーで要確認。



7. 学習コーナー

📚 着眼点 1: 「複占の堀」がもたらす超過利潤——情報・通信セグメント利益率54%の正体

HOYAの情報・通信セグメントは利益率54.2%(定量分析)という製造業ではあり得ない水準を叩き出す。
これは半導体マスクブランクス市場がHOYAと信越化学の複占であることに由来する。
EUVブランクスではHOYAが世界シェアをほぼ独占している。

なぜ2社しか作れないのか

マスクブランクスは半導体回路を焼き付ける「原版の元板」で、EUV世代では原子レベルの欠陥1個が許されない。
この超平滑・無欠陥ガラスの量産には数千億円の投資と十数年の歩留まりノウハウが要る。
「世界中の最先端工場が使う特殊定規を地球上で2社しか作れない」状態だから、価格決定力が圧倒的に高い。

投資家への示唆: HOYAの利益の質を測るとき、全社平均ではなくセグメント別に見るべき。
売上の37%しかない情報・通信が利益の柱であり、ここの「堀」が崩れない限り高採算は続く。
逆に競合のEUV参入ニュースは最重要のモニタリング対象。

📚 着眼点 2: 「業績予想を出さない会社」の哲学と、初開示が意味する転換

HOYAはFY2026まで通期業績予想を開示しないことで有名だった。
これは「四半期主義に流されず、ポートフォリオ経営の長期最適を貫く」という経営哲学の表れだった。
そのHOYAがFY2026で初めて通期見通しを開示した。

「予想非開示」は不親切ではなく規律だった

多くの日本企業が出す業績予想は、達成のために短期最適な経営判断(必要な投資の先送り等)を誘発しがち。
HOYAは予想を出さないことで「市場の期待値ゲーム」から距離を置き、撤退判断やM&Aをタイムリーに行ってきた。
初開示は東証の資本コスト要請・海外機関投資家対応への歩み寄りだが、長期主義そのものを捨てたわけではない。

投資家への示唆: HOYAを「予想未達/超過」で短期評価するのは同社の性格に合わない。
SVA(後述)やROE・FCFといった長期の資本効率指標で評価すべき。
初の予想開示は「IR姿勢の前進」とポジティブに捉えてよい。

📚 着眼点 3: SVA(Shareholders Value Added)——HOYAが資本コストにこだわる理由

HOYAは経営指標に**SVA(Shareholders Value Added)**を採用している(有報「経営方針」)。
これは「資本コストを上回る利益を生んだときに初めて企業価値が増大する」という考え方で、EVA(経済的付加価値)に近い概念。

「利益が出た」では不十分という考え方

普通の会社は「黒字なら成功」と考えがち。
だがSVAは「その利益は、株主が期待する最低リターン(資本コスト)を超えているか?」を問う。
例えるなら「定期預金より儲かって初めて株式投資の意味がある」のと同じロジックを、事業の一つひとつに適用する。
だからHOYAは資本コストを下回る事業からは撤退する(音声合成ソフト事業の2025年売却がその一例)。

投資家への示唆: HOYAのROE25%・無借金は偶然ではなくSVA経営の帰結。
東証が全上場企業に求める「資本コストを意識した経営」を、HOYAは数十年前から実践している。
この規律が高バリュエーションを正当化する一因。

📚 着眼点 4: 「ボルトオンM&A」と自社株買い消却——複利成長の二つのエンジン

HOYAの成長は、本業の有機成長に加え、(1)メガネレンズ等での中小企業の継続的買収(ボルトオンM&A)、(2)潤沢なFCFを使った自社株買い+消却、という二つのエンジンで駆動する。

自社株買い「消却」が一株価値を底上げする仕組み

HOYAは2025年に発行株の1.81%(620万株・1,000億円)を買い、これを消却する。
消却は株式を「消す」こと。
同じ利益を、より少ない株数で分け合うので、1株あたり利益(EPS)が自動的に上がる。
例えるなら「ピザの大きさは同じでも、切り分ける人数が減れば1切れが大きくなる」。
FCF2,700億円という稼ぐ力が、増配と消却の原資になる。

投資家への示唆: HOYAのEPS成長(446円→744円、5期)には、利益成長だけでなく株数減少の寄与もある。
自社株買い・消却の適時開示は株価カタリストとして注視すべき。
FCFが潤沢な限り、株主還元の持続性は高い。

📚 着眼点 5: HOYAの指標ポジショニング(相場観テーブル)

指標 HOYAの値 同業他社平均※ 全上場中央値(目安) 評価コメント
PER 36.6倍 約31倍(テルモ35・オリンパス24・ニコン83の歪み有) 約15倍 高成長・高ROEのため高いが、10年上限近辺で上値は重い
PBR 8.96倍 データ不足 約1.1倍 ROE25%の裏返しで構造的に高PBR。1倍割れは現実性ほぼ無
ROE 25.4% 約8%(オリンパス・テルモ8.7%、ニコン0.9%) 約8% セクター随一。SVA経営の成果で持続性が高い
純利益率 26.5% 約6.6%(3社平均) 約5% 複占の堀による超過利潤。質の高さの核心
自己資本比率 78.4% 約62%(3社) 約40% 無借金に近く財務健全性は最上級
EV/EBITDA 25.0倍 データ不足 約8倍 高いが成長・キャッシュ創出力を反映。割高だが質が伴う
配当利回り 1.08% データ不足 約2.5% 利回りは低い。還元は増配+自社株買いの総還元で見るべき
標準NC比率 5.8% 大型優良株のためディープバリュー指標は機能しない
健全性スコア 90/100(レーティングS) オリンパス88・ニコン80 信用力・安定性ともに最上位グループ

※同業他社平均はオリンパス・ニコン・テルモのEDINETデータ(定量分析)から。ニコンのPER83倍は利益急減による異常値のため平均は参考値。

高PER・高PBRを「割高」で片付けてはいけない理由

HOYAのPER36倍・PBR8.96倍は数字だけ見れば割高だが、これはROE25%という超高収益の必然的な裏返しである。
PBR=PER×ROEの関係上、ROEが高い企業はPBRが高くなる(資本を効率よく増やすから純資産以上の値が付く)。
例えるなら「同じ100万円の元手でも、年25%増やせる人(HOYA)と8%の人(競合)では、その元手の値段が違って当然」。
だからHOYAを評価する際は「PERが高い=危険」ではなく「この高PERを正当化する成長と収益性が続くか」を問うべき。
割高か否かは絶対水準ではなく、成長持続性との相対で決まる。

🤔 自分への問い

(自分の答え)

(自分の答え)

(自分の答え)

関連: 演習フォーマット §C-3 / 演習・チェックリスト index



参考情報

ガバナンス情報テーブル

項目 内容
設立年 1941年(光学レンズメーカーとして創業)
本社 東京都新宿区
会計基準 IFRS
従業員数 連結で多数(グローバル展開、ライフケア+情報・通信の2ドメイン)
海外拠点 欧州・米州・アジアにグローバル展開(海外売上比率が高い)
主要事業会社 HOYA Surgical Optics(眼内レンズ)、PENTAX Medical(内視鏡)、HOYA Vision Care(メガネレンズ)
監査法人 有報「監査の状況」に記載(要有報確認)

注: 代表者名・監査法人名はEDINET有報の「役員の状況」「監査の状況」に記載があるが、確定情報を引用できなかったため「要確認」とする(有報「役員の状況」「監査の状況」に記載あり)。

大株主構成テーブル(FY2025有報)

順位 株主名 保有比率 区分
1 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 19.46% 信託銀行
2 日本カストディ銀行(信託口) 7.39% 信託銀行
3 STATE STREET BANK AND TRUST 505001 3.58% 海外機関
4 STATE STREET BANK WEST CLIENT - TREATY 505234 2.15% 海外機関
5 DEUTSCHE BANK TRUST COMPANY AMERICAS 2.08% 海外機関
6 GOVERNMENT OF NORWAY 1.73% 政府系ファンド
7 STATE STREET BANK AND TRUST 505103 1.59% 海外機関
8 BNYM AS AGT/CLTS NON TREATY JASDEC 1.51% 海外機関
9 STATE STREET BANK AND TRUST 505025 1.49% 海外機関
10 JP MORGAN CHASE BANK 385781 1.45% 海外機関

特記: アクティビスト・ファンドや事業会社の支配的持分は見当たらず、信託銀行+海外機関投資家が中心。
ノルウェー政府系ファンド(GPFG)の保有は、HOYAがESG・ガバナンス面でグローバル基準を満たすと評価されている傍証。
海外機関投資家比率の高さが、初の業績予想開示・株主還元強化の背景にある。

社外取締役の視点 callout

経営陣に問うべき3つの質問
  • Q1: EUVマスクブランクスで信越化学・AGCの追い上げが続くなか、5年後も情報・通信セグメント利益率54%を維持できる具体的な技術ロードマップは? 次世代品(位相シフト等)の開発進捗を定量で示せるか。
  • Q2: 2024年のランサムウェア事故を踏まえ、生産・受注システムの冗長化とセキュリティ投資にいくら投じ、再発時の四半期業績影響をどこまで抑えられる体制を構築したか。
  • Q3: FY2026配当を+84%増配し1,000億円規模の自社株買いを実施したが、潤沢なFCF(2,700億円)の使途として、成長投資(M&A)と株主還元の最適配分をどう考えているか。SVA最大化の観点で説明せよ。

免責事項 callout

免責事項

本レポートはEDINET DB・price_fetcher・公開IR情報・報道に基づく分析であり、投資勧誘を目的としない。
株価・財務数値は作成時点のものであり、将来の成果を保証しない。
投資判断は自己責任で行うこと。
セグメント財務はEDINET get_segmentsが空のため有報MD&Aから取得しており、開示分類の差異に留意。

データソースの時点差テーブル

データ種別 基準日 ソース
株価・時価総額 2026-06-19(金曜終値) price_fetcher / yfinance
財務(PL/BS/CF) 2026-03-31(FY2026期末) EDINET DB get_financials / get_company / 有報MD&A
セグメント実績 2026-03-31(FY2026) 有報MD&A(get_segmentsは空)
大株主 FY2025有報 EDINET DB get_major_shareholders
定性・市況 2026-06(生成時点) WebSearch(日経・ロイター・HOYA IR・各種報道)


出典一覧

  1. EDINET DB MCP get_company(E01124) — 企業基本情報・健全性スコア90・最新決算・industryPeersPreview
  2. EDINET DB MCP get_financials(E01124, years=5) — FY2022-2026 PL/BS時系列
  3. EDINET DB MCP get_segments(E01124) — セグメントは「No segment data」→ 有報MD&Aで補完
  4. EDINET DB MCP get_analysis(E01124) — 信用スコア85/レーティングS・投資インサイト
  5. EDINET DB MCP get_earnings(E01124, include_qualitative_text=true) — TDNet短信FY2026 Q1-Q4・営業利益285,241・配当295
  6. EDINET DB MCP get_major_shareholders(E01124) — FY2025有報大株主
  7. EDINET DB MCP get_text_blocks(E01124) — 有報17セクション(MD&Aにセグメント実績・CF・有利子負債)
  8. 競合 EDINET DB get_company/get_financials(years=3): オリンパス(E02272)・ニコン(E02271)・テルモ(E01630)
  9. price_fetcher / yfinance (7741.T) — 現値株価27,245円・時価総額9.11兆円(market_data_as_of 2026-06-19)
  10. HOYA事業紹介 — メガネレンズ世界2位・眼内レンズ世界1位
  11. DIAMOND zai EUV関連銘柄 — EUV露光とマスクブランクス
  12. アセットアライブ マスクブランクス関連 — HOYA・信越化学の複占
  13. 日経 純利益26%増・今期最高 — 初の通期予想開示・自社株買い
  14. ロイター 自社株買い1.81%・1000億円
  15. HOYA 自己株式取得 適時開示
  16. Yahoo!ファイナンス FY2027アナリスト経常予想 — FY2027営業利益コンセンサス約340十億円
  17. 日経xTECH システム障害ほぼ復旧 — 2024年ランサムウェア
  18. piyolog HOYAシステム障害まとめ
  19. security-next 個人情報流出 — PENTAX内視鏡患者約1000人
  20. 銘柄スカウター 株価指標 — PER/PBR 10年レンジ
  21. みんかぶ 7741 目標株価 — コンセンサス目標株価