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鹿島建設

【経済・建設業】建設業銘柄レポート更新 2026-06-15

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目次
  1. 1. 事業概要
  2. 業界の系統分解
  3. 鹿島建設の事業構成
  4. 主要取引先
  5. 競争優位性の比喩的説明
  6. 鹿島建設の固有事象・資本関係の詳細分析
  7. 業界のビジネスモデルと着目点
  8. 2. バリュエーション分析
  9. 時価総額・株価の基準(現値ベース)
  10. 標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移(百万円)
  11. 広義 NCAV 計算 — 5期推移(百万円)
  12. CN-PER(キャッシュニュートラル PER)
  13. EV/EBITDA 分析(百万円・倍)
  14. EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別・鹿島・百万円)
  15. 成長率モデル適正 PER(参考)
  16. DCF 前提入力枠(空欄許容)
  17. バリュエーション乖離コメント
  18. 3. 財務分析
  19. PL — 5期+実績+予想(百万円・円・%)
  20. BS — 5期(FY2021〜FY2025・有報ベース、百万円)
  21. BS 詳細主要科目 — 5期(百万円)
  22. CF — 5期(FY2021〜FY2025、百万円)
  23. 減価償却費明細 — 5期(百万円)
  24. 受注高・受注残高(建設業=受注産業のため必須)
  25. 運転資本分析(CCC)
  26. 配当推移 — 5期+実績+予想
  27. 経営者予想精度(過去2期、百万円)
  28. 健全性チェック(事業会社基準・9項目)
  29. 4. 同業他社比較
  30. 競合選定基準
  31. 最新期比較テーブル
  32. 競合 3期推移(売上・営業利益率、FY2023→FY2025)
  33. 運転資本効率(CCC)— 競合比較(FY2025/3、日数)
  34. 5. リスク評価
  35. リスクマトリクス
  36. リスク因果関係
  37. 最大リスクの深掘り
  38. バリュートラップリスクの深掘り
  39. 6. 投資判断
  40. バリュエーション乖離コメントの補強
  41. バリュエーション手法別の目標株価
  42. シナリオ別の詳細根拠
  43. 推奨アクションの構造化
  44. カタリスト・タイムライン
  45. 7. 学習コーナー
  46. 📚 着眼点 1: シクリカル銘柄の「ピーク益×低PER」の罠
  47. 📚 着眼点 2: 純有利子負債とCN-PER ― 建設業はキャッシュリッチではない
  48. 📚 着眼点 3: 受注残高1.6年分が意味する「将来売上の可視性」
  49. 📚 着眼点 4: 「資本コスト経営」と政策保有株式の縮減
  50. 📚 着眼点 5: 鹿島建設の指標ポジショニング(相場観テーブル)
  51. 🤔 自分への問い
  52. 参考情報
  53. ガバナンス情報
  54. 大株主構成(5%以上の大量保有報告書ベース)
  55. 社外取締役の視点
  56. 免責事項
  57. データソースの時点差
  58. 出典一覧

鹿島建設(1812)銘柄分析レポート

SUMMARY

鹿島建設はスーパーゼネコン大手。
現在株価 5,521 円、時価総額 25,674 億円 の大型株。
FY2026/3 本決算(2026-05-14 開示)は売上 3兆672億円・営業利益 2,407 億円(前期比 +58.5%)と過去最高益を更新し、中計の FY2027 純利益1,300億円目標を1年前倒し達成。
一方 FY2027/3 会社予想は開発事業売却益の反動で減益見通し。
バリュエーションは予想 PER 15.1倍、予想 EV/EBITDA 16.4倍、配当利回り 2.64%、PBR 1.82倍。
建設業のため有利子負債が現預金を上回り標準 NC 比率は -16.6%(純有利子負債)、広義 NCAV 比率は 9.3%。
健全性スコア 73/100(レーティング A)。

指標 評価
時価総額 25,674 億円 大型
予 PER 15.1倍 適正
予 EV/EBITDA 16.4倍 やや割高
配当利回り 2.64% 中位
標準 NC 比率 -16.6% マイナス(純有利子負債)
広義 NCAV 比率 9.3% 低い
健全性スコア 73/100 高い

1. 事業概要

業界の系統分解

日本のゼネコン(総合建設会社)は、施工する建物の規模・元請力・技術開発力でピラミッド構造をなす。
最上位が「スーパーゼネコン5社」(鹿島建設・大林組・大成建設・清水建設・竹中工務店)で、いずれも単体売上1兆円超・超高層/大型インフラ/海外プロジェクトを直接元請けできる技術と財務体力を持つ。
その下に「準大手」(長谷工・前田建設・五洋建設・戸田建設等)、「中堅」「地場ゼネコン」が続く。
スーパーゼネコンの差別化要素は、①難工事を完工できる施工技術と研究開発力、②大型案件の与信・運転資本を支える財務基盤、③発注者との長期信頼関係に基づく「特命」(競争入札によらない指名)受注比率の高さ、の3点である(出典: onecareer.jp スーパーゼネコン業界研究)。

鹿島はこのスーパーゼネコンの中で、FY2026/3 に建設業界で初めて単体売上3兆円を突破し、売上規模で首位に立った(出典: nikkei.com 2026-05、biz-journal.jp)。
技術立社を標榜し、トンネル自動化施工「A4CSEL」、CO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM」、立体音響「OPSODIS」など研究開発発の独自技術で差別化を図る点が、他のスーパーゼネコンと比べた鹿島の色である。

鹿島建設の事業構成

セグメント別売上構成(FY2025/3):

セグメント 売上高(百万円) 構成比 営業利益(百万円) 営業利益率
海外関係会社 1,114,353 38.3% 20,070 1.8%
建築事業 1,052,902 36.2% 51,225 4.9%
土木事業 404,143 13.9% 35,703 8.8%
国内関係会社 242,463 8.3% 16,403 6.8%
開発事業等 97,953 3.4% 27,838 28.4%

注: 内部売上を含むセグメント合計(revenueShare ベース)。
海外関係会社が売上最大(38.3%)だが営業利益率は1.8%と低い。
開発事業等は売上構成比3.4%ながら営業利益率28.4%で最も収益性が高い。
土木事業も利益率8.8%と国内建設の柱。

事業ドメイン別の位置づけと成長動向:

セグメント 売上構成比 営業利益率 位置づけ
海外関係会社 38.3% 1.8% 売上最大・低マージン(北米・東南アジア・豪州)
建築事業 36.2% 4.9% 国内建築の中核(工場・再開発)
土木事業 13.9% 8.8% 高マージン(インフラ・トンネル・国土強靭化)
国内関係会社 8.3% 6.8% 専門工事・リース・ビル賃貸
開発事業等 3.4% 28.4% 最高マージン(不動産開発・売却)
分野 評価 背景
半導体・データセンター ◎急成長 Rapidus IIM-1(北海道)施工中、キオクシア四日市等。AI・国策半導体投資が建築需要を牽引
国内土木・国土強靭化 ◎堅調 インフラ更新・防災、高速道路更新(SDR工法)、電力関連
都市再開発 ○堅調 八重洲二丁目・赤坂・品川等の大型再開発に開発主+施工で参画
海外不動産開発 ○成長領域 米国流通倉庫の投資→売却サイクル確立。中計の成長エンジン
建築(一般) △横ばい 大型工事の施工初期は減収局面。利益率改善が課題

注: EDINET get_financials の最新通期は FY2025/3(financials_as_of: 2025-03-31)。
上記セグメント表は FY2025/3 ベース。
FY2026/3 は TDNet 決算短信(2026-05-14 開示)の通期実績で、有報未提出のため本レポートの財務テーブルは FY2021〜FY2025 の 5 期構成を維持している。

主要取引先

鹿島の顧客は官公庁(防衛省・高速道路会社・自治体)と大手民間企業に大別される。
FY2025 完工の代表例として、西日本鉄道(ONE FUKUOKA BLDG.)、日本原子力発電(東海第二発電所防潮堤)、キオクシア(四日市工場新製造棟)、Rapidus(IIM-1 半導体工場)、阪神高速道路、日立ハイテク等が挙げられる(出典: 有報「完成工事高」)。
特定の相手先で売上総額の10%以上を占める先はなく、顧客分散が効いている。
半導体・データセンター・再開発という高単価・先端分野で指名(特命)受注を取れる技術力が、参入障壁の源泉である。

競争優位性の比喩的説明

参入障壁=「失敗できない工事を任される信頼」

スーパーゼネコンの堀は、原発防潮堤・半導体クリーンルーム・超高層といった「失敗が許されない難工事」を完工してきた実績そのものである。
発注者にとって工事の失敗は数百億円の損失と操業停止に直結するため、価格より「確実に完成させられるか」が選定基準になる。
新規参入者がいくら安値を出しても、この信頼の蓄積(=特命受注の土壌)は数十年の完工実績がなければ得られない。
鹿島の土木事業の特命比率や半導体工場の連続受注は、この堀の厚さの表れである。

鹿島建設の固有事象・資本関係の詳細分析

「資本効率経営」へのシフト=政策保有株式の前倒し縮減

鹿島は中期経営計画(2024〜2026)で「政策保有株式を連結純資産の20%未満に」という目標を掲げたが、FY2025/3 末に19.8%まで縮減し、目標年度(FY2027/3末)より2年前倒しで達成した(FY2025は34銘柄を203億円で売却)。
さらに約500億円規模の追加売却を2年で進める方針で、売却原資を自己株式取得に充てる「機動的還元」を実施している。
これは東証の「資本コストを意識した経営」要請への正面対応であり、ROE10%以上の継続・FY2026から役員報酬の評価指標にROE採用、という規律強化と一体である(出典: 有報 経営方針、kabureturn.jp)。
支配株主・創業家は5%以上の大株主に不在で、機関投資家(ブラックロック6.3%、三井住友トラストAM 5.1%等)中心の株主構成。

業界のビジネスモデルと着目点

ゼネコンの収益は「受注 → 工事進行(数年)→ 完工・引渡し → 代金回収」のサイクルで、①受注時の利益率(採算)と②工期中の建設コスト変動の2点が損益を左右する。
近年は資機材・労務費の高騰が逆風だったが、旺盛な建設需要を背景に受注競争が緩和し、「受注時の利益率改善」が進んだことで FY2026/3 は売上総利益率が大きく改善(営業利益+58.5%の主因)。
鹿島はここに、開発事業の「投資→売却益」という不動産デベロッパー的な収益源を重ね、建設の安定収益+開発のスポット利益で利益水準を底上げしている点が着目点である。


2. バリュエーション分析

時価総額・株価の基準(現値ベース)

項目 出典
現在株価 5,521 円 price_fetcher (yfinance) 1812.T
時価総額(現値) 2,567,415 百万円(25,674 億円) price_fetcher
発行済株式数 465,027,220 株 price_fetcher
market_data_as_of 2026-06-15 取得日

⚠️ EDINET get_company.marketCap(1,606,050 百万円=FY2025/3 期末固定値)は現値と約 +60% 乖離するため不使用。
本セクションの全倍率は現値時価総額 2,567,415 百万円・株価 5,521 円ベース。

内部整合性チェック(±5% 以内):

検算 計算 結果 判定
株価 × 株式数 ≒ 時価総額 5,521 × 465,027,220 2,567,415 百万円 ✅ 一致
予想PER × 予想EPS ≒ 株価 15.1 × 364.85 5,509 円 ✅ (−0.2%)
PBR × BPS ≒ 株価 1.82 × 3,036.89 5,527 円 ✅ (+0.1%)

標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移(百万円)

標準 NC = 現預金 + 短期有価証券 − 有利子負債。有利子負債 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + コマーシャルペーパー。投資有価証券は含めない。

項目 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
現預金 300,991 267,733 282,253 350,064 349,540
短期有価証券 325 187 383 170 193
有利子負債 307,032 359,904 537,745 577,391 777,213
標準 NC -5,716 -91,984 -255,109 -227,157 -427,480
標準 NC 比率(÷現値時価総額) -0.2% -3.6% -9.9% -8.8% -16.6%

注: 建設業は運転資本(売上債権・未成工事支出金)が重く、開発事業投資も外部資金を活用するため、有利子負債が現預金を上回る純有利子負債が常態。
FY2025 の有利子負債内訳合算は 777,213 百万円(MD&A 記載の連結有利子負債残高は 7,920 億円=1年内償還社債等を含む広義値)。

広義 NCAV 計算 — 5期推移(百万円)

広義 NCAV = 流動資産 + 投資有価証券 × 0.7 − 負債合計。

項目 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
流動資産 1,262,942 1,390,711 1,751,584 1,917,988 2,137,129
投資有価証券 × 0.7 245,246 249,110 249,300 309,745 278,235
負債合計 1,280,000 1,384,175 1,708,573 1,911,494 2,176,604
広義 NCAV 228,188 255,646 292,311 316,239 238,760
広義 NCAV 比率(÷現値時価総額) 8.9% 10.0% 11.4% 12.3% 9.3%

CN-PER(キャッシュニュートラル PER)

指標
予想 PER(FY2027) 15.1 倍
標準 NC 比率(標準NC ÷ 現値時価総額) -16.6%
CN-PER(標準 NC ベース) 17.6 倍
参考: CN-PER(広義 NCAV ベース、比率 9.3%) 13.7 倍

注: 標準 NC がマイナス(純有利子負債)のため、CN-PER = 予想PER ×(1 − NC比率) = 15.1 ×(1+0.166) = 17.6 倍 と予想 PER より高くなる。
実質的な負債を加味した株主の取得倍率は表面 PER より割高。

EV/EBITDA 分析(百万円・倍)

EBITDA = 営業利益 + 減価償却費。EV = 時価総額 + 純有利子負債(標準 NC の符号反転)。

指標 鹿島建設 大林組 大成建設
時価総額 2,567,415(現値) 1,426,883(EDINET期末) 1,213,105(EDINET期末)
純有利子負債 427,480 -106,367 -62,952
EV 2,994,895 1,320,516 1,150,153
EBITDA(営利+減価償却) 182,733 175,899 136,551
EV/EBITDA 16.4 7.5 8.4

注: 鹿島は現値ベース、大林組・大成建設は EDINET 期末株価ベース(FY2025/3)のため倍率の単純比較は不可。
鹿島の EV/EBITDA が高いのは①現値が期末比で大きく上昇していること②建設業の中で純有利子負債が大きいこと(開発事業投資)による。
大林・大成は純有利子負債がマイナス(実質ネットキャッシュ)。

EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別・鹿島・百万円)

NC 定義 NC EV(時価総額 − NC) EV/EBITDA
標準 NC(現預金+短期有価証券−有利子負債) -427,480 2,994,895 16.4
広義 NCAV(流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計) 238,760 2,328,655 12.7

成長率モデル適正 PER(参考)

理論 PER = 1 / (r − g)。r = 株主資本コスト 8%(中計の自社認識 7〜8% の上限)。

成長率仮定 理論 PER 備考
g = 0%(ゼロ成長) 12.5 倍 PER 下限の目安
g = 3%(インフレ並み) 20.0 倍
g = 5%(中程度成長) 33.3 倍
鹿島の過去5期 EPS CAGR(FY2021→FY2025, 8.4%) n/a(g>r で発散) 実績成長率が r を上回り単純モデルは適用不可

注: 過去5期 EPS CAGR 8.4%(193.13円→266.49円)は仮定 r=8% を上回り、ゴードン型単純モデルでは理論 PER が発散する。
これは①過去の高成長が将来も続く保証はないこと②建設業は受注変動が大きく永続成長率の設定が難しいことを示す。
実務的には g を保守的に 1〜3% に置いて評価するのが妥当(その場合理論 PER 14〜20倍)。

DCF 前提入力枠(空欄許容)

⚠️ 疑似精度禁止: 自信が低い前提は「要調査」と明記し、勝手に数値を生成しない。

項目 出典/備考
無リスク金利(%) 約 1.5 日本10年国債利回り(直近水準)
β 要調査 get_analysis 未提供。類似ゼネコンから推定要
市場リスクプレミアム(%) 5-6 日本市場慣行値
株主資本コスト Ke(%) 7-8(自社認識) 中計記載の株主資本コスト認識を参考併記。Ke=Rf+β×ERP で要再計算
負債コスト Kd 税引後(%) 約 2.0 FY2025 支払利息22,016 ÷ 有利子負債777,213 ×(1−0.30)=2.0%
自己資本比率(時価ベース) 約 77% E=時価総額2,567,415 ÷(E+D 3,344,628)
WACC(%) 要算出 Ke×E/(E+D)+Kd×D/(E+D)。Ke確定後
永続成長率 g(%) 要調査 1-3% が保守圏(WACC×0.4 以下)
法人税率(%) 30 標準実効税率。海外比率高で調整余地
明示予測期間(年) 5

5期 FCF 入力枠(FCF = NOPAT + 減価償却 − 設備投資 − 運転資本増加):

t+1 t+2 t+3 t+4 t+5
FCF(百万円) 要調査 要調査 要調査 要調査 要調査

注: 鹿島は開発事業の「投資→売却回収」サイクルで FCF が年度ごとに大きく振れる(FY2025 営業CF 306億円 vs FY2024 1,237億円)ため、単年 FCF の外挿は危険。
正規化 FCF の設定が要調査。

計算式: 企業価値 = Σ FCF_t/(1+WACC)^t + TV/(1+WACC)^nTV = FCF_{n+1}/(WACC−g)

参照: DCF分析 / WACC算出 / ターミナルバリュー / 感応度・シナリオ分析

バリュエーション乖離コメント

  1. NC考慮 EV/EBITDA 法: 現値 EV/EBITDA 16.4倍。標準 NC がマイナス(純有利子負債4,275億円)のため EV が時価総額を上回り、表面の倍率より割高に映る。
  2. CN-PER 法: 17.6倍(標準NCベース)。予想PER 15.1倍に純有利子負債を加味すると割高方向に補正される。
  3. 成長率モデル: 過去 CAGR 8.4% は r=8% を上回り発散。保守的な g=1〜3% なら理論 PER 14〜20倍で、現値はレンジ内。

乖離パターン: 「EV/EBITDA・CN-PER では純有利子負債が効いて割高方向、成長率モデルでは保守仮定でレンジ内」→ 評価は g 前提と純有利子負債(開発事業投資の質)の解釈に依存。


3. 財務分析

PL — 5期+実績+予想(百万円・円・%)

項目 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 直近実績(FY2026) 来期予想(FY2027)
売上高 1,907,176 2,079,695 2,391,579 2,665,175 2,911,816 3,067,275 2,900,000
営業利益 127,298 123,382 123,526 136,226 151,882 240,780 200,000
経常利益 139,729 152,103 156,731 150,112 160,663 240,420 206,000
当期純利益 98,522 103,867 111,789 115,033 125,817 177,334 170,000
EPS(円) 193.13 208.00 227.98 238.76 266.49 379.81 364.85
営業利益率 6.7% 5.9% 5.2% 5.1% 5.2% 7.9% 6.9%
前年比(売上) +9.0% +15.0% +11.4% +9.3% +5.3% -5.5%
前年比(営利) -3.1% +0.1% +10.3% +11.5% +58.5% -16.9%

注: FY2026 列は本決算短信(2026-05-14 開示)実績、FY2027 列は会社予想。
FY2026 は建設事業の売上総利益率改善で営業利益+58.5% と過去最高。
FY2027 予想減益は開発事業売却益の期ずれ等の反動。

BS — 5期(FY2021〜FY2025・有報ベース、百万円)

項目 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
総資産 2,164,806 2,337,741 2,769,718 3,135,149 3,454,592
流動資産 1,262,942 1,390,711 1,751,584 1,917,988 2,137,129
固定資産 901,863 947,030 1,018,133 1,217,160 1,317,462
負債合計 1,280,000 1,384,175 1,708,573 1,911,494 2,176,604
純資産 884,806 953,566 1,061,145 1,223,655 1,277,988
自己資本比率(公式) 40.4% 40.5% 38.0% 38.6% 36.4%
BPS(円) 1,731.16 1,920.45 2,165.12 2,514.97 2,672.64

注: 自己資本比率は開示ベース(広義自己資本=純資産−非支配株主持分 ÷ 総資産)。FY2025 は開発事業投資・運転資本増で総資産が膨らみ自己資本比率は36.4%へ低下。

BS 詳細主要科目 — 5期(百万円)

項目 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
投資有価証券 350,351 355,871 356,143 442,493 397,478
現預金 300,991 267,733 282,253 350,064 349,540
短期有価証券 325 187 383 170 193
有利子負債 307,032 359,904 537,745 577,391 777,213
売上債権 602,162 726,563 899,620 940,304 1,061,540
棚卸資産
仕入債務 445,589 501,962 603,867 583,998 631,710

注: 棚卸資産は建設業のため独立科目が EDINET から取得不可(未成工事支出金・販売用不動産・開発事業支出金等が別管理)。
MD&A によれば FY2025 末の販売用不動産2,807億円・賃貸等不動産3,437億円。
政策保有株式は FY2025 末2,535億円(純資産比19.8%・縮減目標を前倒し達成)。

CF — 5期(FY2021〜FY2025、百万円)

項目 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
営業 CF 153,097 30,215 -29,116 123,734 30,632
投資 CF -65,434 -51,166 -81,743 -62,925 -104,836
財務 CF -39,110 -20,930 111,893 -9,566 61,687
FCF(営業+投資) 87,663 -20,951 -110,859 60,809 -74,204

注: 営業 CF は年度変動が大きい(工事大型化に伴う支払先行・運転資本変動)。
FY2023・FY2025 は FCF マイナスで、開発投資と運転資本増を外部資金で補填(積極投資型 CF パターン)。

減価償却費明細 — 5期(百万円)

FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
19,080 22,611 24,711 27,270 30,851

受注高・受注残高(建設業=受注産業のため必須)

提出会社単独 受注高・繰越高(百万円・有報「生産・受注及び販売の状況」):

項目 FY2024 FY2025 前年比
期首繰越高 1,888,693 2,279,773 +20.7%
当期受注高 1,944,029 1,831,107 -5.8%
当期売上高 1,552,950 1,560,016 +0.5%
期末繰越高(受注残高) 2,279,773 2,550,864 +11.9%
受注残高 ÷ 当期売上高 1.47 年分 1.63 年分

連結建設事業受注高(MD&A ベース): FY2025 2兆6,245億円(前期比 -10.3%)→ FY2026 3兆2,639億円(前期比 +24.4%・過去最高)。
FY2025 提出会社単独 当期受注高内訳: 建築 1,334,668 / 土木 438,899 / 開発 57,539。
受注方法(FY2025・請負金額比): 建築 特命45.0%/競争55.0%、土木 特命27.8%/競争72.2%。

注: 受注残高1.6年分の積み上がりは将来売上の可視性が高いことを示す。FY2026 の建設事業受注高+24.4% は半導体工場・再開発・データセンター需要を反映。

運転資本分析(CCC)

⚠️ 分母統一: 売上債権回転日数 = 売上債権 / 売上高 × 365、棚卸資産回転日数 = 棚卸資産 / 売上原価 × 365、仕入債務回転日数 = 仕入債務 / 売上原価 × 365。

指標(日数) FY2024 FY2025
売上債権回転日数(÷売上高) 128.8 133.1
棚卸資産回転日数(÷売上原価) —(注) —(注)
仕入債務回転日数(÷売上原価) 89.8 89.1
CCC(売上債権−仕入債務、棚卸除く簡易) 39.0 44.0

注: 建設業は独立した棚卸資産科目が EDINET から取得不可(未成工事支出金等が別科目)のため、棚卸資産回転日数は算出不可(「—」)。
CCC は売上債権・仕入債務の2要素による簡易値。
FY2025 は売上債権回転が4.3日延び CCC が悪化(工事大型化に伴う代金回収の後ろ倒し)。

配当推移 — 5期+実績+予想

項目 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026実績 FY2027予想
1株配当(円) 54 58 70 90 104 146 146
配当利回り(現値5,521円基準) 2.64% 2.64%
配当性向 28.0% 27.9% 30.7% 37.7% 39.0% 38.4% 40.0%

注: 配当性向は配当 ÷ EPS。
中計の配当性向目安40%に沿って段階的に増配(FY2021 54円 → FY2026 146円、5年で2.7倍)。
配当利回りは現値株価ベースで FY2026・FY2027 のみ表示。

経営者予想精度(過去2期、百万円)

予想売上(期初) 実績売上 乖離率 予想営利(期初) 実績営利 乖離率
FY2025 2,800,000 2,911,816 +4.0% 140,000 151,882 +8.5%
FY2026 2,950,000 3,067,275 +4.0% 159,000 240,780 +51.4%

注: 鹿島は期初予想を保守的に置き実績で上回る傾向。特に FY2026 は営業利益が予想比 +51% と建設事業の売上総利益率改善で大幅上振れ。予想の下方バイアスはポジティブ・サプライズの源泉。

健全性チェック(事業会社基準・9項目)

項目 基準 鹿島(FY2025/直近) 判定
自己資本比率 > 40% 36.4% ❌(建設業標準水準)
有利子負債 < 現預金 NC プラス 有利子負債777,213 > 現預金349,540 ❌(建設業特性)
流動比率 > 150% 2,137,129 ÷ 1,696,974 = 125.9% ❌(建設業特性)
利益剰余金 > 0 970,255
営業CF 3期連続黒字 FY2023 -29,116 でマイナスあり
配当 3期連続支払い 5期連続増配
EPS 前年比プラス FY2025 +11.6% / FY2026 +42.5%
ROE > 8% 10.2%(株主資本ベース)
営業利益率 > 業界平均 5.2%(業界標準水準) ➖ 横ばい

注: 建設業は①工事代金回収まで運転資本が膨らむ②開発事業投資に外部資金を活用する構造のため、自己資本比率40%・流動比率150%・NCプラスといった製造業向け基準は構造的に未達となりやすい。
EDINET 健全性スコア73/100(レーティング A)・5期連続増配・ROE10.2% を踏まえると財務健全性は良好。
D/E レシオ0.63倍(中計目安0.7倍以内)。


4. 同業他社比較

競合選定基準

基準 内容
業種 建設業(スーパーゼネコン)
時価総額レンジ 鹿島の0.3-5倍内(大林1.4兆・大成1.2兆=いずれも該当)
選定理由 大林組・大成建設はともに「スーパーゼネコン5社」。事業構造(土木・建築・開発・海外)・規模・建設業セグメントが鹿島と直接競合。清水建設・竹中工務店も同格だが代表2社に絞る。

最新期比較テーブル

指標 鹿島建設 大林組 大成建設
時価総額(億円) 25,674(現値) 14,269(期末) 12,131(期末)
売上高(億円, FY2025/3) 29,118 26,201 21,542
営業利益率(FY2025/3) 5.2% 5.5% 5.6%
自己資本比率(FY2025/3) 36.4% 38.1% 35.7%
PER 15.1倍(現値・予想) 9.7倍(期末) 9.7倍(期末)
PBR 1.82倍(現値) 1.21倍(期末) 1.31倍(期末)
ROE(株主資本ベース) 10.2% 12.6% 13.8%
配当利回り 2.64%(現値) 4.10%(期末) 3.17%(期末)
EV/EBITDA 16.4倍(現値) 7.5倍(期末) 8.4倍(期末)
標準 NC 比率 -16.6% +7.5% +5.2%
営業 CF(億円, FY2025/3) 306 856 -138
FCF(億円, FY2025/3) -742 952 -33

⚠️ 倍率基準差: 鹿島は現値(2026-06-15)ベース、大林組・大成建設は EDINET 期末(FY2025/3)株価ベース。
PER/PBR/EV/EBITDA/配当利回りの単純比較は不可。
鹿島の倍率が高いのは現値が期末比で大きく上昇しているため。
絶対値(売上・利益率・ROE)と FY2026 短信実績の比較を主軸とすること。

FY2026/3 短信(直近開示)営業利益: 鹿島 240,780 / 大林組 194,678 / 大成建設 187,973 → 鹿島が最大。
純利益: 鹿島 177,334 / 大林組 173,759 / 大成建設 170,004。

競合 3期推移(売上・営業利益率、FY2023→FY2025)

企業 FY2023 売上 FY2024 売上 FY2025 売上 FY2023 営利率 FY2024 営利率 FY2025 営利率
鹿島建設 2,391,579 2,665,175 2,911,816 5.2% 5.1% 5.2%
大林組 1,983,888 2,325,162 2,620,101 4.7% 3.4% 5.5%
大成建設 1,642,712 1,765,023 2,154,223 3.3% 1.5% 5.6%

注: 3社とも FY2024 に建設コスト上昇で営業利益率が低下したが FY2025 で回復。
鹿島は利益率が5%台で安定(変動が小さい)、大成は FY2024 1.5%まで落ちた後 FY2025 で5.6%へ急回復(ボラティリティ大)。

運転資本効率(CCC)— 競合比較(FY2025/3、日数)

⚠️ 分母統一(売上債権=売上高ベース、棚卸資産・仕入債務=売上原価ベース)。

指標(日数) 鹿島建設 大林組 大成建設 業界中央値
売上債権回転日数 133.1 158.8 159.1 データなし
棚卸資産回転日数 —(注) 1.2 —(注) データなし
仕入債務回転日数 89.1 106.7 105.0 データなし
CCC 44.0 53.3 54.1 データなし

注: 鹿島・大成は棚卸資産独立科目が EDINET 未取得(未成工事支出金等が別科目)のため棚卸日数は算出不可(大林組のみ棚卸資産7,927百万円が計上)。
CCC は売上債権−仕入債務(+大林は棚卸込み)の簡易値。
業界中央値は get_analysis 未提供のため「データなし」。
鹿島の CCC44.0日は3社で最短=運転資本効率が相対的に良好。


5. リスク評価

リスクマトリクス

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的影響シナリオ 対応状況
建設コスト変動 資機材・労務費が請負金額に転嫁できず工事採算悪化。固定価格契約で損失計上 早期調達・物価スライド条項・受注時利益率の確保
担い手不足(2024年問題) 技能労働者減少+残業上限規制で施工体制維持困難→売上減・労務費上昇 重層下請構造改革・処遇改善・建設DX・自動化施工
海外事業リスク 為替・政治・現地一過性損失(豪州工事でコロナ起因損失の実例) 海外事業運営委員会・国際危機対策委員会
開発資産の価格下落 販売用不動産2,807億円・賃貸等不動産3,437億円・投資有価証券の時価下落で減損 案件別リスク量を自己資本対比で管理
受注変動(景気循環) 半導体・再開発の投資一巡で受注高が反落、繰越工事が枯渇 受注残高1.6年分の積み上げ・分野分散
開発事業売却益の期ずれ 売却タイミング次第で単年利益が大きく振れる(FY2027予想減益の主因) 複数物件の計画的売却・市況見極め

リスク因果関係

flowchart TD
    A[建設需要の高水準] --> B[受注競争の緩和]
    B --> C[受注時利益率の改善]
    C --> D[売上総利益率向上・最高益]
    E[資機材・労務費高騰] --> F[工事採算悪化リスク]
    F -.物価スライド条項.-> C
    G[2024年問題: 残業規制+担い手不足] --> H[施工体制維持コスト増]
    H --> F
    G -.建設DX・自動化施工.-> I[生産性向上]
    I --> D
    J[半導体・DC投資ブーム] --> A
    K[投資一巡リスク] -.受注残1.6年分.-> A
    L[開発事業売却益] --> D
    L -.期ずれ.-> M[単年利益のボラティリティ]
    M --> N[FY2027予想減益]

最大リスクの深掘り

最大の定性リスク=「需要ピークアウト × コスト構造の硬直化」

現在の最高益は「半導体・データセンター・再開発」という建設需要ブームと「受注競争緩和による利益率改善」が重なった追い風局面の産物である。リスクは以下の2シナリオ:

  • シナリオ①(需要反落): AI・半導体投資が一巡し大型建築の新規受注が細ると、まず受注高が落ち(FY2025に建設事業受注高が前期比-10.3%へ反落した実例あり)、1〜2年後に売上・利益へ波及する。受注残高1.6年分が緩衝材になるが、繰越工事が捌けた後の端境期に利益が落ち込む。
  • シナリオ②(コスト再加速): 担い手不足が深刻化し労務費が再び急騰、かつ需要ピークアウトで受注競争が再激化すると、「コスト高×値下げ圧力」の挟み撃ちで売上総利益率が悪化する。2024年問題(残業上限規制)はこの構造リスクを長期で押し上げる。

バリュートラップリスクの深掘り

バリュートラップ/資本効率リスク

鹿島は建設業の特性上「ネットキャッシュ過剰」型ではなく、むしろ純有利子負債4,275億円(標準NCマイナス)を抱える。
したがって典型的な「NC溜め込みによる割安放置」リスクは小さい。
代わりの論点は以下:

  • 開発事業への積極投資(中計ネット投資5,400億円)が想定どおり売却益を生まなければ、膨らんだ総資産(FY2025末3.45兆円)に対し自己資本比率36.4%が一段と低下し、ROE改善どころか資本効率が悪化する。
  • シクリカル(景気循環)銘柄ゆえ、最高益局面の PER15倍が「ピーク益×低PER」のバリュートラップになりうる。利益がピークアウトすれば EPS 低下と PER 切り下げの二重の下押しが起きる。
  • 緩和要因として、政策保有株式の継続縮減・自己株取得・配当性向40%という株主還元規律と、東証要請・機関投資家の監視が資本効率の歯止めとして機能している。アクティビストの顕在化は確認されていない。

6. 投資判断

バリュエーション乖離コメントの補強

乖離整理: 「EV/EBITDA・CN-PER では純有利子負債が効いて割高方向、成長率モデルでは保守仮定でレンジ内」。この乖離の背景を定性で補強する。

現値の予想PER15.1倍・EV/EBITDA16.4倍が同業(大林・大成の期末ベース9.7倍・7〜8倍)より高く映るのは、第一に基準日差(鹿島のみ現値、競合は期末)であり単純比較不可。
第二に、鹿島が純有利子負債を抱えるためEV/時価総額が拡大し、CN-PERが表面PERを上回る点。
これは「キャッシュリッチで割安放置」とは逆の構図で、割安シグナルではない。
むしろ論点は「シクリカルのピーク益をどう評価するか」にある。
過去5期EPS CAGR8.4%は高いが、これは建設需要ブームと利益率改善という循環要因が大きく、永続成長率に外挿するのは危険。
保守的にg=1〜3%で見れば理論PER14〜20倍となり現値はレンジ内=「割安でも割高でもない適正圏」と判断するのが妥当。
投資家の対応は「業績ピークアウトの兆候(受注高・売上総利益率の反落)を確認しながらの段階的アプローチ」が現実的で、最高益・株高局面での一括追随は推奨しにくい。

バリュエーション手法別の目標株価

予想EPS364.85円、予想EBITDA1,827億円、標準NC -4,275億円、BPS3,036.89円を使用して算出。

PER法

シナリオ 適用 PER EPS(円) 目標株価(円) 現在株価比
保守的 10倍(同業期末ベース水準) 364.85 3,649 -34%
標準 13倍(過去レンジ中央・シクリカル中立) 364.85 4,743 -14%
楽観的 16倍(成長継続を織り込む現値水準) 364.85 5,838 +6%

選定根拠: 保守=スーパーゼネコンの期末PER水準(大林・大成9.7倍)に近い10倍。標準=シクリカルのピーク益に対する中立的13倍。楽観=半導体・開発の成長プレミアムを織り込む現値近辺16倍。

EV/EBITDA法

シナリオ EV/EBITDA EBITDA(億円) EV(億円) +標準NC=理論時価総額(億円) 理論株価(円) 現在株価比
保守的 8倍 1,827 14,616 10,341 2,223 -60%
標準 11倍 1,827 20,097 15,822 3,402 -38%
楽観的 14倍 1,827 25,578 21,303 4,581 -17%

注: 理論時価総額 = EV − 純有利子負債4,275億円(標準NCがマイナスなのでEVから負債を差し引く)。
理論株価 = 理論時価総額 ÷ 発行済株式4.65億株。
EV/EBITDA法はPER法より保守的な値が出るが、これは純有利子負債の控除が効くため。
鹿島はEBITDA倍率では割高に見える点に留意。

下値メド

PBR1.0倍 = BPS 3,036.89 円を理論的下限として提示。
現在株価5,521円に対しPBR1.82倍であり、下値メド3,037円までは約-45%の距離。
シクリカル銘柄は不況局面でPBR1倍割れもありうる点に留意。

シナリオ別の詳細根拠

ベースケース(確率50%): 会社予想並み着地

前提: FY2027/3 が会社予想(売上2.9兆円・営業利益2,000億円・純利益1,700億円)どおり着地。
開発事業売却益の反動で減益だが、国内建設の高水準受注残と利益率改善が下支え。
確率の根拠: 鹿島は期初予想を保守的に置き実績で上回る傾向(FY2025+4.0%/FY2026営利+51.4%上振れ)。
受注残高1.6年分が売上を担保。
AI・半導体投資は中長期拡大基調(中計・経営環境分析)。
投資家の対応: 配当利回り2.6%・累進的増配(5期連続)を享受しつつ保有継続。
受注高と売上総利益率の四半期トレンドを監視。

上振れケース(確率25%): 開発売却益+海外回復で再増益

前提: 米国流通倉庫の売却が前倒しで進み、海外建設(豪州)の業績回復が加速。
FY2027が予想を上回り再び増益・最高益更新。
確率の根拠: 海外開発は投資→売却サイクルが確立(FY2025は米国16件売却)。
FY2027は米国15件程度の売却を計画。
経営者予想の保守バイアス。
投資家の対応: 上方修正・増配・自己株取得の発表をカタリストとして押し目で積み増し。

下振れケース(確率25%): 需要ピークアウト+コスト再加速

前提: AI・半導体投資が一巡し大型建築受注が細る、または労務費再急騰で売上総利益率が悪化。
シクリカルのピークアウトでEPS低下+PER切り下げ。
確率の根拠: 建設需要は循環的(FY2025に受注高-10.3%の反落実例)。
2024年問題で構造的な労務費上昇圧力。
米通商政策・地政学リスクが海外事業に波及しうる。
投資家の対応: PBR1倍(BPS3,037円)を下値メドに意識。
受注高2四半期連続減・売上総利益率反落が確認されたら縮小。

推奨アクションの構造化

買いの根拠と留意点

買いの根拠

  • 建設業界初の単体売上3兆円・5期連続増収増益・6年連続増配と業績モメンタムが強い
  • 半導体・データセンター・国土強靭化という構造的成長テーマの直接受益者
  • 受注残高1.6年分で将来売上の可視性が高い
  • 政策保有株縮減・自己株取得・配当性向40%・役員報酬ROE連動と資本効率経営が前進 留意点
  • シクリカル銘柄でFY2026は循環ピーク益の可能性。現値PER15倍は「ピーク益×低PER」のバリュートラップになりうる
  • 純有利子負債4,275億円でEV/EBITDA・CN-PERは割高方向。キャッシュリッチ割安銘柄ではない
  • FY2027会社予想は減益。開発売却益の期ずれで単年利益のブレが大きい

カタリスト・タイムライン

時期 イベント 確認すべき数値 株価への影響
2026年8月上旬 FY2027/3 第1四半期決算 営業利益進捗率・受注高前年比
2026年9月26日(権利付き最終日 9月29日の2営業日前) FY2027 中間配当 権利付き最終日 中間配当額(FY2026は56円)
2026年11月中旬 FY2027/3 第2四半期(中間)決算 売上総利益率・通期予想の上方修正有無
2026年11月〜2027年2月 自己株取得の進捗開示 取得実績 vs 政策保有株売却額
2027年2月中旬 FY2027/3 第3四半期決算 通期予想修正・開発売却の進捗
2027年3月27日(権利付き最終日) FY2027 期末配当 権利付き最終日 年間配当・配当性向40%維持
2027年5月中旬 FY2027/3 本決算+次期中計(2027〜)発表 FY2028予想・新中計のROE/還元方針
随時 半導体・データセンター大型受注の適時開示 受注金額・分野構成
随時 政策保有株式の追加売却・大型再開発の着工 売却額・開発投資回収

注: 配当権利付き最終日は概算(東証スケジュールで要確認)。


7. 学習コーナー

📚 着眼点 1: シクリカル銘柄の「ピーク益×低PER」の罠

鹿島のFY2026/3は営業利益+58.5%・建設業界初の売上3兆円という最高益で、現値の予想PERは15.1倍。一見「高成長なのに低PER=割安」に見えるが、ここが最大の落とし穴である。

ピーク益はPERを「割安に見せる」

景気敏感(シクリカル)株では、利益がピークの年ほど分母EPSが大きくなりPERが低く出る。
逆に不況でEPSが落ちるとPERが跳ね上がる。
建設は受注→工事→完工の循環産業で、FY2026の最高益は半導体ブーム+受注競争緩和という追い風の重なり。
投資家への示唆: 鹿島のPER15倍を「割安」と即断せず、利益が正常化(あるいはピークアウト)したときのEPSで割り直す視点が必須。
シクリカルは「PERが低いとき=天井圏」のことがある。

📚 着眼点 2: 純有利子負債とCN-PER ― 建設業はキャッシュリッチではない

標準NCは -4,275億円(純有利子負債)で、CN-PERは17.6倍と表面PER15.1倍より高い。多くの小型割安株が「ネットキャッシュ>時価総額」で語られるのと正反対の構図である。

「負債を肩代わりして買う」感覚

株を時価総額で買っても、その会社が抱える純有利子負債は実質的に株主が引き受ける。
EV(=時価総額+純有利子負債)はこの「全部入りの買収価格」。
鹿島は開発事業投資のため有利子負債を積極活用しており、EVは時価総額を約4,275億円上回る。
投資家への示唆: 鹿島は「キャッシュリッチ割安株」ではなく「負債を使って開発で稼ぐ」ビジネス。
EV/EBITDAやCN-PERで見ると割高方向になるため、PER単独で割安と判断しないこと。

📚 着眼点 3: 受注残高1.6年分が意味する「将来売上の可視性」

鹿島の提出会社単体・期末繰越高(受注残高)はFY2025末で2兆5,509億円、当期売上1兆5,600億円の約1.63年分。
連結建設事業受注高はFY2026に3兆2,639億円(+24.4%)と過去最高。

受注残=「予約済みの売上」

レストランの予約台帳のように、受注残高は「これから工事して売上になることが確定した仕事」。
1.6年分あれば、来期の売上は今ある受注残でかなりの部分が見通せる。
製造業の在庫回転とは逆で、受注残が厚いほど業績の安定度が高い。
投資家への示唆: 鹿島の受注残トレンドは先行指標。
受注高が2四半期連続で前年割れし始めたら、1〜2年後の売上減のサインとして警戒する。

📚 着眼点 4: 「資本コスト経営」と政策保有株式の縮減

鹿島は政策保有株式を連結純資産の20%未満にする目標をFY2025末(19.8%)で2年前倒し達成、約500億円の追加売却を進め、売却原資を自己株取得に充当。
FY2026から役員報酬の評価指標にROEを採用した。

東証要請への「優等生対応」

政策保有株式(取引先との持ち合い株)は、本業に使われず資本効率を下げる「眠った資産」。
東証は2023年以降「資本コストと株価を意識した経営」を上場企業に要請しており、持ち合い解消+自己株取得+ROE目標が模範解答。
鹿島はこれを規律として制度化(役員報酬連動)している。
投資家への示唆: ROE10%以上の継続・還元拡充は株価の下支え要因。
ただし開発投資で総資産が膨らむとROE改善の足を引っ張るため、「分子(利益)と分母(自己資本・総資産)」の両面を見る。

📚 着眼点 5: 鹿島建設の指標ポジショニング(相場観テーブル)

指標 鹿島の値 同業他社平均(大林・大成) 全上場中央値(目安) 評価コメント
予想PER 15.1倍(現値) 約9.7倍(期末ベース) 約15倍 基準日差あり。シクリカルのピーク益で割安に見える点に注意
PBR 1.82倍(現値) 1.2〜1.3倍(期末) 約1.2倍 スーパーゼネコン内では高め。最高益・株高を反映
ROE 10.2% 12.6%(大林)/13.8%(大成) 約8-9% 東証プライム基準クリアだが同業比やや低く改善余地
EV/EBITDA 16.4倍(現値) 7.5〜8.4倍(期末) 約8倍 純有利子負債が効き割高方向。倍率の単純比較不可
配当利回り 2.64%(現値) 3.2〜4.1%(期末) 約2.5% 株高で利回り低下。増配継続も株価上昇が上回る
配当性向 38-40% 同水準 約30% 中計目安40%。累進的・安定還元
自己資本比率 36.4% 35.7-38.1% 約40-50% 建設業特性で低め。製造業基準は不適
営業利益率 5.2%(FY25)/7.9%(FY26) 5.5-5.6% 約7% FY26は利益率改善でピーク。正常化水準は5%台
健全性スコア 73/100(A) 83(大林)/53(大成) 約50 良好。5期連続増配・D/E0.63倍

注: 同業他社平均はEDINET期末ベース(FY2025/3)、鹿島の倍率は現値ベースのため基準日が異なる。全上場中央値は概算の目安値。

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関連: 演習フォーマット §C-3 / 演習・チェックリスト index


参考情報

ガバナンス情報

項目 内容
業種 建設業(スーパーゼネコン)
設立 1840年創業 / 1930年会社設立(鹿島組)
従業員数 21,029名(連結, FY2025/3)
上場市場 東証プライム・名証(コード1812)
海外拠点 北米(カジマUSA)・欧州(カジマヨーロッパ)・アジア(シンガポール The GEAR 等)・大洋州(カジマオーストラリア)
子会社・関連会社 子会社215社・関連会社107社
経営理念 「科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展」

注: 代表取締役名・監査法人・主要取引銀行はEDINET役員情報未取得のため本レポートでは省略(IR要確認)。

大株主構成(5%以上の大量保有報告書ベース)

順位 株主名 保有比率 区分
1 ブラックロック・ジャパン グループ 6.33% 海外機関投資家(純投資)
2 野村アセットマネジメント グループ 5.11% 国内機関投資家(純投資)
3 三井住友トラスト・アセットマネジメント グループ 5.09% 国内機関投資家(純投資)
4 三菱UFJ FG グループ 3.75% 国内金融グループ(純投資)
(以下、大量保有報告書5%未満は未開示)

注: 大量保有報告書(5%以上)ベースのため上位10名すべては網羅できない。創業家・事業会社による支配的株主は5%以上に不在で、機関投資家中心の分散構造。アクティビストの顕在化は確認されていない。

社外取締役の視点

経営陣に問うべき3つの質問
  • Q1: FY2026の営業利益+58.5%・利益率7.9%のうち、循環要因(受注競争緩和・売却益)と構造要因(DX・生産性向上)の寄与はそれぞれ何割か。正常化後の利益率の巡航水準は5%台か7%台か。
  • Q2: 中計ネット投資5,400億円の開発事業について、想定IRR(内部収益率)と回収前提を示せ。総資産膨張でROEが希薄化しないための分母管理(自己株取得規模)はどう設計しているか。
  • Q3: FY2027予想が減益(純利益1,700億円)となる中で、6年連続増配・配当性向40%・自己株取得をどう両立させるか。減益局面でも累進配当を維持する財務余力はあるか。

免責事項

免責

本レポートはEDINET DB・price_fetcher(yfinance)・公開IR情報・Web検索を基にした分析であり、投資勧誘を目的とするものではない。
財務数値はEDINET有報(FY2025/3)およびTDNet決算短信(FY2026/3)に基づくが、最終的な投資判断は自己責任で行うこと。
株価・時価総額は2026-06-15時点の現値であり変動する。

データソースの時点差

データ種別 基準日 ソース
株価・時価総額(現値) 2026-06-15 price_fetcher (yfinance) 1812.T
通期実績(PL/BS/CF・最新) 2026-03-31(FY2026/3) TDNet 決算短信(2026-05-14 開示)
有報財務(5期時系列・BS明細) 2025-03-31(FY2025/3) EDINET 有価証券報告書
セグメント・受注・大株主・中計 FY2025/3 EDINET get_segments / get_text_blocks / get_shareholders
定性・業界動向 2026-05〜06 nikkei.com / kabutan.jp / kajima.co.jp IR / arc-navi

出典一覧

  1. EDINET DB MCP get_company(E00058) — 企業基本情報・健全性スコア・最新決算(FY2026/3短信)
  2. EDINET DB MCP get_financials(E00058, years=5) — 5期財務時系列(FY2021〜FY2025)
  3. EDINET DB MCP get_segments(E00058) — セグメント別売上
  4. EDINET DB MCP get_analysis(E00058) — 業界ベンチマーク・健全性
  5. EDINET DB MCP get_earnings(E00058) — TDNet決算短信・予想精度
  6. EDINET DB MCP get_shareholders(E00058) — 大株主構成
  7. EDINET DB MCP get_text_blocks(E00058) — 受注高・中計(事業の状況・経営方針)
  8. price_fetcher (yfinance) 1812.T — 現値株価5,521円・時価総額25,674億円(2026-06-15)
  9. 競合: EDINET DB MCP get_company/get_financials(E00055 大林組, E00052 大成建設)
  10. 鹿島建設 IR 中期経営計画(2024〜2026) https://www.kajima.co.jp/ir/newplan/index-j.html
  11. 鹿島建設 FY2026/3 決算短信 https://www.kajima.co.jp/ir/finance/pdf/kessan-20260514-j.pdf
  12. 鹿島建設 株主還元方針 https://www.kajima.co.jp/ir/dividend/index-j.html
  13. 日本経済新聞「鹿島の26年3月期、純利益最高益」 https://www.nikkei.com/article/DGXZRST0538263Z00C25A5000000/
  14. ビジネスジャーナル「鹿島が建設業初 売上3兆円」 https://biz-journal.jp/economy/post_394577.html
  15. 総合資格navi「2026 スーパーゼネコン5社決算概況」 https://www.arc-navi.shikaku.co.jp/column/details.php?column_id=6019
  16. ワンキャリア スーパーゼネコン業界研究 https://www.onecareer.jp/articles/1210
  17. 全日本不動産協会「建設業の時間外労働上限規制(2024年問題)」 https://magazine.zennichi.or.jp/commentary/15184
  18. かぶりたん 鹿島建設 株主還元方針 https://kabureturn.jp/housin/1812-h/