📚 業界ナレッジ
第3号 表紙

第3号2026-06-21

SaaSの広告宣伝費は本当に効いているのか — FP&A目線で『測れなさ』を分解し、AI時代のマーケ予算を組み替える

SaaS企業は、売上のおよそ3〜5割を営業とマーケティングに注ぎ込みます。急成長期の会社なら6〜7割に達することも珍しくありません。これは製造業ではまず見ない、けた違いの比率です。

ところが、その巨額の支出のなかで「本当に効いているのか」が最も分からないのが、ブランド・PR・認知への投資です。
検索広告なら「クリック何件・申込何件」と即座に数えられますが、テレビCMや展示会、地道なPRが何件の受注を生んだのかは、誰も自信を持って答えられません。

しかも今、その前提そのものが揺れています。
AIが検索結果を要約し、ユーザーがリンクをクリックしなくなり、さらにAIエージェントが買い物まで代行し始めました。
「広告を出して認知を買う」という当たり前が、構造から崩れかけているのです。

では、SaaSの広告宣伝費は削るべきなのか、それとも増やすべきなのか。

先に結論を置きます。
答えは、そのどちらでもありません。
正解は「組み替え」です。
流れて消えていくフロー型の支出(出し続けないと止まる広告)から、積み上がって減衰しにくいストック型の資産(ブランド・自社メディア・顧客事例・リアルな関係)へ。
予算の総額ではなく中身を組み替えることが、AI時代の費用対効果を決めます。

私は普段、事業の数字を分解して「何にいくら使い、それがどう効いているのか」を読み解く仕事(FP&A=経営企画・財務計画)をしています。
この記事は、その目線で、公開された一次データだけを使って「SaaSの広告宣伝費は効いているのか」を検証します。
投資家として銘柄を薦めるのではなく、予算を配る側=事業のCFOやマーケ責任者が「どこに張るか」を読めるようになることを目指します。

なお、本稿で「SaaS」と呼ぶのは、月額課金のソフトだけを指しません。
BPaaS(業務代行とソフトを組み合わせたサービス)やAIサービス企業まで——「営業・マーケに重く投資し、しかもブランドの効きめが測りにくい」という同じコスト構造を持つ、クラウド/ソフト系ビジネス全般を念頭に置いています。

むしろ、最近よく聞く「SaaSは終わった」という声——AIが従来型のSaaSを呑み込むという見立て——こそ、本稿のど真ん中のテーマです。
AIがソフトの売り方そのものを変えるなら、まっ先に見直すべきは予算の使い方。
だからこそ「削る・増やす」ではなく「組み替え」が、いま効いてくるのです。

この記事で読めること