第2号 日本のワインは本当に縮んでいるのか — FP&A目線で『数量・金額・人』を分解する
第3章視点6:縮むなら、お金はどこへ流れているのか
最後の断面は「代替」です。ワイン単体ではなく、お酒全体の「財布の奪い合い」で見ます。
日本の酒類消費は、1999年度をピークに長期で減少しています(人口減・高齢化・若者の酒離れ)。
その中で勝ち負けがはっきりしていて、ビールは長期で縮み、その需要はチューハイなどのRTD(缶で手軽に飲める酒)やハイボールへ流れました。
さらに近年はノンアル・微アル市場が拡大しています。
ワインはこの中で「大きく負けてはいない(横ばいで踏みとどまっている)」ポジションですが、可処分の“お酒予算”がRTDやノンアルへ向かう逆風の中にいます。
しかも2026年10月にはRTD(チューハイ等)の酒税が引き上げられる予定で、これまでRTDが持っていた「安さ」の優位が薄まります。
ここで価格の地図がまた書き換わる可能性があります。
FP&Aの読み筋は「代替財との価格弾力性と税制」です。ワインの競争相手はもはや他のワインだけでなく、RTDやノンアルも含む“1杯の選択肢”全体。税制が変われば、その選択は動きます。

まとめ:これは「縮小」ではなく「再編」
5つの断面を重ねると、日本のワイン市場の正体が見えてきます。「縮んでいる」のひと言では、半分しか当たっていません。
- 数量:ピークアウトして横ばい・微減(成長は鈍化)
- 金額:円安・高級化で単価上昇。数量と金額の「ワニの口」
- 輸入国:チリ⇄フランスの首位攻防。動かしているのは関税(EPA)
- 担い手:プロ志望は半減、造り手(ワイナリー)は倍増の二極化
- 世代:高齢層がボリューム、若年層は“体験・気分”が入口。高齢依存のリスク
- 代替:RTD・ノンアルと“財布”を奪い合う。税制が次の地図を書き換える
事業や分析で「どこに張るか」を考えるなら、ヒントはこの再編の中にあります。
- 数量より単価(プレミアム化・体験価値)で稼ぐ設計
- 国産クラフト(造り手増・地方・ストーリー)という濃いニッチ
- 若年層×自宅×SNS×シーン提案、そしてノンアル・低アルという隣接市場
最後に、どんな市場でも使えるFP&Aのチェックリストを置いておきます。気になる商品・業界があれば、これで分解してみてください。
- 数量(Q)と金額(P)を分けたか。どちらが伸び、どちらが縮んでいるか
- 単価(P)を動かしている要因は何か(為替・高級化・税)
- 供給側(担い手・参入者)の数はどう動いているか(先行指標)
- 需要の「質」は世代・性別でどう違うか(ボリューム源と先細りリスク)
- 代替財は何で、価格・税制でその選択はどう動くか
あなたの好きなワイン(産地や価格帯)は、この5つの断面のどこに立っているでしょうか。コメントで教えてください。
本記事は公開情報(国税庁『酒のしおり』『国内製造ワインの概況』、財務省貿易統計、日本ソムリエ協会、各社のワイン市場・飲用調査)に基づく分析であり、特定商品の購入や投資を推奨するものではありません。
数値は出典の最新公表値に基づきますが、各年の細部は一次資料で確認のうえご活用ください。
出典
- 国税庁『酒のしおり』(令和7年版ほか)— 果実酒(ワイン)課税移出+輸入数量、酒類別消費数量の推移
- 国税庁『国内製造ワインの概況』/日本ワイナリー協会 — 国内ワイナリー数の推移
- 財務省 貿易統計 — スティルワイン等の国別 輸入数量・金額
- 日本ソムリエ協会(J.S.A.)/wine-jyuken.com — ソムリエ・ワインエキスパート 受験者数・合格者数
- キリン/メルシャン ワイン市場レポート・飲用調査、アサヒビール 消費者動向調査、nippon.com(1人当たり消費量)
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