第2号 日本のワインは本当に縮んでいるのか — FP&A目線で『数量・金額・人』を分解する
第2章視点4:担い手の二極化 — プロ志望は半減、造り手は倍増
市場を「飲む人」だけでなく「関わる人」で見ると、もっとはっきり構造転換が見えます。2つの数字が正反対に動いています。
ひとつは、プロ志望の入口であるソムリエ試験の受験者数。
日本ソムリエ協会の試験は、2016年の5,520名をピークに、2025年は2,866名まで減りました。
ほぼ半減です。
一方で、愛好家向けのワインエキスパート試験は、近年3,400〜3,600名で横ばい。
つまり「仕事にしたい人(プロのパイプライン)」は細り、「趣味で深めたい人」は底堅い、という二極化が起きています。
もうひとつは、国産ワイナリーの数。
2015年の約280場から、2024年には約493場へ。
地方のクラフトワイナリーが続々と生まれ、「日本ワイン」という小さくても濃いカテゴリが育っています(日本ワインの流通構成比はまだ数%ですが、増加基調)。
FP&Aの目では、資格の受験者数は業界の「関与者パイプライン」の先行指標です。
プロ供給が細るのは飲食・流通の人手の先細りサインである一方、生産者が分散・小規模化して増えるのは、市場が「大量消費」から「多品種・少量・体験」へ移っていることの表れです。

視点5:世代・性別で違う「ワインとの付き合い方」
需要は「量」だけでなく「質(誰がどう飲むか)」も大事です。各社の飲用調査を重ねると、世代でワインとの付き合い方がくっきり分かれます。
- 飲用経験は年代が上がるほど高い(日本ワインを直近1年に飲んだ人は全体で約69%、高齢層が市場のボリュームを支える)
- ただし20〜30代も5割超は飲んでいる。動機が違うだけ
- 飲む理由:20代は「おしゃれだから」が27.0%、30代は「贅沢な気分を味わうため」が47.0%と高い。対して50代は「味や香りが好きだから」が73.5%
- 飲む場所:自宅が82.8%と圧倒的。レストランは42.1%で、女性が男性より10ポイント以上高く、最も高いのは30代女性の58.5%
FP&Aの読み筋は「需要の質」です。
ボリュームは高齢層が支え(=裏を返せば高齢層依存の先細りリスク)、若年層は「味」より「体験・気分・SNS映え」を入口にしている。
つまり同じ「ワインを売る」でも、世代ごとに刺さるレバーがまったく違う。
高齢層には品質・銘柄、若年層には体験・デザイン・シーン提案、という打ち分けが要ります。
