📚 業界ノート

株式会社T&Dホールディングス

【経済・保険業】保険業企業バリュエーション分析更新 2026-09-15

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目次
  1. 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
  2. グループ各社の役割とFY2026/3実績
  3. 2. 財務の実力
  4. PL・BS・CF統合推移
  5. 保険業の財務健全性・指標統合
  6. 3. 市場評価を読む — バリュエーション
  7. 現値指標と検算
  8. 倍率ベース感応度(株価水準へ換算しない)
  9. 4. 同業比較 — 差分の論点
  10. 5. リスクと論点
  11. リスクマトリクス
  12. 6. バリュエーション統合と論点整理
  13. 乖離の構造分析
  14. 条件分岐シナリオ
  15. 監視ポイント
  16. M&A・出資検討の論点整理
  17. 7. 学びのポイント
  18. 📚 着眼点1: 会計利益・修正利益・ESRを並べて読む
  19. 📚 着眼点2: 販売チャネルの分散と採算の複雑性
  20. 相場観テーブル
  21. 参考情報
  22. ガバナンス要点
  23. 大株主構成(2026年3月31日現在)
  24. データ時点差
  25. 開示を読む接続点
  26. 出典一覧

株式会社T&Dホールディングス(8795)銘柄分析レポート

SUMMARY

FY2026/3の連結経常収益は3,482,214百万円、親会社株主に帰属する純利益は138,968百万円、ROEは9.2%(TDNet決算短信・EDINET DB)。
2026-09-15の株価は5,009円、時価総額は2,376,802,762,752円。
FY2027/3会社予想EPS 281.33円に対する予想PERは17.8倍、予想DPS 164円に対する配当利回りは3.27%。
保険持株会社のため、標準NC・広義NCAV・EV/EBITDA・CCCは保険負債と資産運用勘定により歪むため非適用。
FY2026/3のグループ修正利益は158,500百万円、会社内部管理ESRは222%(EDINET有価証券報告書)。


1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か

業界全体の構造は 保険業業界基礎ガイド(および同業界のセグメント分析・プレイヤー比較)を参照。本レポートは株式会社T&Dホールディングス固有の事業構造に絞る。

T&Dホールディングスは、生命保険子会社の経営管理、グループ資本配分、リスク統括を担う保険持株会社である。
コアは太陽生命、大同生命、T&Dフィナンシャル生命の国内生保3社であり、市場・販売チャネル・商品を分けている。
持株会社単体の営業収益では連結経常収益を説明できず、各生保の保険料、運用収益、保険金・給付金、責任準備金の動きを一体で読む必要がある。

FY2026/3の連結経常収益は3,482,214百万円、経常利益は257,191百万円、グループ修正利益は158,500百万円であった。
収益側では新契約、既契約の継続、商品構成、金利・クレジット・株価等に左右される資産運用収益が主要因となる。
費用側では保険金等支払、責任準備金、資産運用費用、営業職員・代理店への手数料、システム・事務費が重要である(FY2026/3決算短信)。

グループ各社の役割とFY2026/3実績

会社 主な市場・チャネル 経常収益
(百万円)
経常利益
(百万円)
収益上の特徴
太陽生命 家庭市場・営業職員 1,275,387 116,588 死亡・医療・介護保障。対面と非対面を組み合わせ、契約保全と新契約を収益基盤とする。
大同生命 中小企業市場・営業職員、税理士等代理店 1,246,058 134,680 経営者向け保障。税理士・会計士団体等との提携網が募集基盤となる。
T&Dフィナンシャル生命 乗合代理店市場・金融機関、来店型ショップ等 912,827 12,328 外貨連動型等の貯蓄性商品と保障性商品。金利・為替と代理店の商品選択に影響される。
T&Dユナイテッドキャピタル(連結) 海外投資・運用関連 4,218 -1,816 海外クレジット、オルタナティブ資産等を扱い、流動性・評価・為替管理を要する。

各社数値は連結消去前を含むため、単純合算や構成比の算出には用いない。出典はEDINET DBセグメント情報およびFY2026/3有価証券報告書。グループストラクチャー・ビジネスモデルも参照した。

保険業では、売上債権・棚卸資産・仕入債務を用いるCCCは事業実態を表さない。
資本集約度は工場設備ではなく、長期保障を引き受けるための規制資本、責任準備金、資産負債の金利・為替・信用リスク管理に現れる。
したがって、資本効率はROE、修正ROE、グループ修正利益、経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR)と還元方針を組み合わせて確認する。

長期ビジョンFY2026〜FY2030では、5年平均のグループ修正利益に対して60%程度の現金配当、自己株式取得を含む総還元性向も中長期的に60%程度を目指す。
FY2027/3の会社予想年間配当は164円である。株主還元情報 政策保有株式は太陽生命・大同生命で業務提携・協業先等を除き2030年度をめどにゼロとする方針であり、縮減の進捗は株式リスクと資本配分の実行度を測る材料となる。


2. 財務の実力

PL・BS・CF統合推移

項目 FY2022/3実績 FY2023/3実績 FY2024/3実績 FY2025/3実績 FY2026/3実績
連結経常収益(百万円) — — 3,207,991 3,730,479 3,482,214
経常利益(百万円) — — 159,809 198,595 257,191
親会社株主に帰属する純利益(百万円) — — 98,777 126,411 138,968
EPS(円) — — 183.13 241.72 279.64
経常利益率 — — 5.0% 5.3% 7.4%
総資産(百万円) 17,813,408 16,773,877 17,207,110 16,712,943 17,318,329
負債合計(百万円) 16,423,902 15,780,196 15,797,184 15,303,879 15,700,692
純資産(百万円) 1,389,506 993,681 1,409,926 1,409,064 1,617,637
株主資本(百万円) 898,301 706,952 714,342 730,762 705,720
自己資本比率(公式値) 7.8% 5.9% 8.2% 8.4% 9.3%
BPS(円) 2,461.66 1,803.27 2,648.22 2,739.81 3,359.12
営業CF(百万円) -396,882 -307,631 262,754 -359,867 150,221
投資CF(百万円) 283,196 665,960 -180,245 94,269 -261,502
財務CF(百万円) -57,747 -106,580 -79,227 -87,340 -14,685
FCF(営業CF+投資CF、百万円) -113,686 358,329 82,509 -265,598 -111,281

PLのFY2022/3・FY2023/3は、開示資料の持株会社単体に近い営業収益とTDNetの連結経常収益を混在させないため空欄とした。
PL・BS・CFの末尾実績はいずれも財務データ基準日: 2026-03-31に対応するFY2026/3である。
保険料・保険金・資産運用によるCF変動を含むため、FCFは事業会社と同じ資本配分指標として扱わない。

2026年8月7日開示はFY2027/3第1四半期であり、通期実績ではない。
FY2027/3会社予想は連結経常収益3,000,000百万円、経常利益235,000百万円、親会社株主に帰属する純利益135,000百万円、EPS 281.33円、グループ修正利益172,000百万円である。
FY2027/3第1四半期実績は連結経常収益904,341百万円、経常利益76,260百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益42,296百万円であり、単純年換算は行わない。

保険業の財務健全性・指標統合

項目 FY2026/3の値 保険業での比較軸 判定・注記
ESR(会社内部管理) 222% ストレス後資本と還元方針との整合 ✅
サープラス 43,421億円 経済価値ベースの資本余力 ✅
エコノミック・キャピタル 19,563億円 引受リスクに必要な資本 ✅
グループ修正利益 158,500百万円 持続的な利益創出力 ✅
修正ROE 10.5% 修正利益ベースの資本効率 ✅
ROE(公式値) 9.2% 同業3社7.1〜11.1% ✅
自己資本比率(公式値) 9.3% 事業会社の40%基準は非適用 ✅
生保3社合算基礎利益 239,800百万円 保険本業の基礎的収益 ✅
生保3社合算順ざや額 145,900百万円 運用利回りと予定利率の差 ✅
1株配当 130円 FY2027/3会社予想164円、5年平均修正利益との整合 ✅

ROE・BPS・自己資本比率はEDINET DBの公式値を採用した。
純資産は非支配株主持分を含む連結純資産、株主資本はその他の包括利益を含まない狭義の区分であり、いずれもBPSの分母と同一ではない。
BPSは親会社株主に帰属する広義の自己資本、ROEはその期首・期末平均を基礎とするため、FY2026/3末の純資産または狭義株主資本だけで置き換えない。
保険業では事業会社向けの自己資本比率、有利子負債、流動比率、営業CF連続黒字、CCCによる一律判定を行わない。


3. 市場評価を読む — バリュエーション

現値指標と検算

項目 値 時点・算式
株価 5,009円 2026-09-15
発行済株式数 474,506,449株 2026-09-15現値データ
時価総額 2,376,802,762,752円 2026-09-15現値データ
予想EPS 281.33円 FY2027/3会社予想
予想PER 17.8倍 5,009円÷281.33円
BPS 3,359.12円 FY2026/3実績
PBR 1.49倍 5,009円÷3,359.12円
予想DPS 164円 FY2027/3会社予想
予想配当利回り 3.27% 164円÷5,009円
グループ修正利益 158,500百万円 FY2026/3実績
ESR 222% FY2026/3会社内部管理値

5,009円×474,506,449株は2,376,802,803,041円で、取得時価総額との差は40,289円(0.000002%未満)である。
17.8倍×281.33円は5,007.67円、1.49倍×3,359.12円は5,005.09円で、いずれも株価との差は±5%以内である。
FY2026/3有価証券報告書基準の期末時価総額1,924,146,912,000円は現値評価に使用していない。

標準NCは「現預金+短期有価証券-有利子負債」、広義NCAVは「流動資産+投資有価証券×0.7-負債合計」と定義する。
しかし、保険契約負債は将来の保険金支払いを支え、運用資産と一体で管理されるため、両指標を余剰資産として算定しない。
CN-PERも「時価総額から標準NCを控除した額÷純利益」というNC前提の指標であるため非適用とする。
EV/EBITDAは「企業価値÷EBITDA」だが、保険業では有利子負債と運用勘定、EBITDAの比較可能性が限定的であり、同業各社にも適用しない。
CCCも保険契約に事業会社の回転日数を当てはめられないため非適用である。

倍率ベース感応度(株価水準へ換算しない)

評価状態 条件 PERの比較軸 PBR・ROE・ESRの比較軸
資本防御を優先 市場変動や保険収支悪化でESR・修正利益の安定性が低下 同業実績レンジ下部11.76〜11.90倍 PBRよりストレス後資本を優先
FY2027/3会社予想を基礎 修正利益172,000百万円の進捗とESR222%近辺の安定を確認 T&D予想PER17.8倍 PBR1.49倍、ROE9.2%、ESR222%を併読
資本効率の評価が強まる 修正利益、ESR、政策保有株式縮減、還元方針が整合 同業実績レンジ上部26.16倍を比較上限として参照 修正ROEとESRを伴うPBR評価を重視

同業PERは東京海上HD26.16倍、MS&ADHD11.76倍、第一ライフグループ11.90倍で、いずれもFY2026/3実績である。
T&Dの17.8倍はFY2027/3会社予想に基づくため、実績と予想の時点差を保った比較である。
感応度は倍率と評価軸だけを示し、株価水準には換算しない。


4. 同業比較 — 差分の論点

企業 時価総額
(百万円)
EDINET収益項目
(百万円)
PER PBR ROE 営業・経常利益率 自己資本比率 配当利回り EV/EBITDA NC比率
T&DHD 2,376,803 169,118 17.8倍* 1.49倍* 9.2% 経常利益率7.4%** 9.3% 3.27%* 非適用 非適用
東京海上HD 非掲載(現値データなし) 8,872,277 26.16倍 非掲載(現値データなし) 7.1% 定義差により非比較 24.1% 2.98% 非適用 非適用
MS&ADHD 非掲載(現値データなし) 7,653,030 11.76倍 非掲載(現値データなし) 8.7% 定義差により非比較 21.7% 3.97% 非適用 非適用
第一ライフグループ 非掲載(現値データなし) 334,518 11.90倍 非掲載(現値データなし) 11.1% 定義差により非比較 5.7% 3.82% 非適用 非適用

T&DのROE9.2%は比較3社の7.1〜11.1%の範囲内にある一方、予想PER17.8倍はFY2026/3実績PERが11倍台の2社を上回り、東京海上HD26.16倍を下回る。
差の解釈では、国内生保3社の利益構成、修正利益の再現性、ESRの説明、政策保有株式縮減と還元の実行を同時に見る必要がある。
保険業ではEV/EBITDAとNC比率を比較軸に戻さず、詳細な横比較は同業界のプレイヤー比較レポートに委ねる。


5. リスクと論点

リスクマトリクス

# リスク要因 影響度 発生可能性 具体的影響シナリオ 対応状況
1 金利・為替・信用スプレッドの急変 高 中 資産と保険負債の経済価値が異なる方向に動き、ESR、運用損益、ヘッジコストが変動する。 経済価値ベースのERMと資産負債管理を継続。
2 解約率・死亡率・医療給付の悪化 高 中 想定を超える解約や給付が保険収支、責任準備金、販売・保全費用に影響する。 商品別・チャネル別の収益管理と契約保全を実施。
3 中小企業市場・代理店チャネルの変化 中 中 大同生命の紹介基盤やT&Dフィナンシャル生命の代理店販売が弱含む。 団体・代理店との関係、デジタル手続、商品競争力を強化。
4 海外投資・クローズドブック投資の統合 高 低〜中 評価、流動性、規制、統合人材の論点が修正利益の変動要因となる。 持株会社の投資先管理と内部監査の対象とする。
5 経済価値ベース規制の本格運用 高 中 新たな評価・開示で資本余力の見え方が変わり、還元と成長投資の優先順位が問われる。 新規制に対応した外部検証・開示体制を整備。

最大の定性リスクは、資産負債の評価が市場変動を受ける局面である。
金利上昇だけを利益要因とせず、保険負債の割引、保有債券の評価、為替ヘッジ、商品別の最低保証を合わせて確認する必要がある。
経済価値ベース規制は2026年3月31日に適用され、比較可能性を高める一方、数値の変動理由を説明する開示の重要性を増す。金融庁の改正公表、生命保険協会の解説

保険持株会社の純資産や含み資産を事業会社のネットキャッシュと同じように扱うことはできない。
資産は将来の保険金支払いと資本規制を支えるため、余剰性の判断にはESR、資産負債のデュレーション、ストレス後資本、還元・成長投資の優先順位が必要となる。
修正利益や純資産が増えても、資本政策の実行とKPI開示が伴わなければ評価軸の改善に結び付かないバリュートラップとなりうる。


6. バリュエーション統合と論点整理

乖離の構造分析

FY2026/3は経常利益257,191百万円、グループ修正利益158,500百万円、ROE9.2%、修正ROE10.5%、ESR222%であった。
FY2027/3会社予想は経常収益3,000,000百万円、経常利益235,000百万円、親会社株主に帰属する純利益135,000百万円に対し、グループ修正利益172,000百万円を見込む。
会計上の収益・利益と、保険事業の持続的な利益・資本創出を示す修正利益を区別することが評価差の理解に不可欠である。

評価を複雑にする要因は、金利・信用・為替・解約率・給付率の感応度を単一倍率に畳みにくいこと、国内生保3社と海外投資先の収益モデルが異なること、ESRの分子・分母やヘッジを含む資本余力の説明が会計純資産より複雑なこと、還元・成長投資・政策保有株式縮減の順序を継続確認する必要があることに整理できる。
修正利益の積み上げ、ESRの安定、政策保有株式縮減、還元方針の実行が同時に進むかが、PBR・ROE・修正利益の整合性を左右する。

条件分岐シナリオ

資本創出と還元の整合が進む場合

前提: FY2027/3のグループ修正利益予想172,000百万円に沿って収益が進み、ESRが還元方針と整合的な水準で安定し、政策保有株式縮減と資本配分の開示が具体化する。
市場評価の変化: 修正ROE・修正利益・ESRを組み合わせた評価が強まり、資本効率に対するディスカウントが縮小しうる。

会社予想並みで資本余力が維持される場合

前提: 国内生保3社の保険収支と運用収益が会社想定の範囲に収まり、FY2027/3会社予想と配当方針に大きな変更がない。
市場評価の変化: 予想PER、PBR、予想配当利回りを基礎に、資本余力と修正利益の推移を確認する評価が続きやすい。

市場変動・保険収支の前提が崩れる場合

前提: 金利・為替・信用スプレッドの急変、ヘッジコストの上昇、解約・給付の悪化、海外投資先の評価低下により、ESRまたは修正利益の安定性が低下する。
市場評価の変化: PBRとROEの関係より資本の防御力が優先され、還元余力ではなくストレス後の資本十分性が中心的な評価軸となる。

監視ポイント

時期 イベント 開示で確認すべき点
2026年9月30日 FY2027/3中間配当の基準日 自己株式控除後の配当対象株式数と配当予想の変更有無。
2026年10月以降(予定) 統合報告書2026の詳細確認 長期ビジョンFY2026〜FY2030のKPI、海外投資、人的資本、資本配分。
2026年11月上旬(予定) FY2027/3第2四半期決算発表 修正利益の進捗、保険料等収入、資産運用損益、解約・給付。
2026年11月中(予定) 第2四半期決算説明会 ESR、ヘッジコスト、政策保有株式縮減、還元方針。
2026年12月末 経済価値ベース規制の四半期時点 金利・信用スプレッド変動を受けた資本余力と指標定義。
2027年2月上旬(予定) FY2027/3第3四半期決算発表 通期予想、修正利益、国内生保3社と海外投資の着地見通し。
2027年3月31日 FY2027/3期末配当の基準日 期末配当予想、自己株式、資本還元に関する決議。
2027年5月中旬(予定) FY2027/3通期決算発表 修正利益、ESR、総還元性向、政策保有株式縮減、FY2028/3方針。

決算・説明会時期は会社のIRスケジュールに基づく年間サイクルからの予定であり、確定日は会社公表で再確認する。

M&A・出資検討の論点整理

企業買収・出資の検討では、会計上の純資産ではなく、経済価値ベースの資本余力、保険契約負債のデュレーション、保有資産の含み損益・流動性、再保険・保証の偶発債務が許容水準を規定する。
クローズドブック、海外クレジット運用、代理店・デジタル顧客基盤では、必要資本と利益認識の時期が異なる。

シナジーは商品・チャネルの補完、運用専門性、システム・事務の共通化、既存顧客へのサービス拡張に求められる。
ディスシナジーは生命保険契約の移管、監督当局との調整、数理前提の差、代理店の定着、海外規制差に生じうる。
DDでは、資産負債管理の感応度、解約・失効率、死亡・給付率、ヘッジ契約、再保険回収可能性、未認識のシステム改修費、苦情・募集管理、主要代理店とキーマンへの依存、ESRへの影響を確認する。


7. 学びのポイント

📚 着眼点1: 会計利益・修正利益・ESRを並べて読む

T&DHDのFY2026/3はROE9.2%、修正ROE10.5%、グループ修正利益158,500百万円、ESR222%である。
ROEは会計上の資本に対する利益創出、修正利益は会社が経営実態を示すために用いる指標、ESRは経済価値ベースでリスクに対する資本余力を見る指標であり、同じものを測っていない。
保険会社の資産は自由な現金の山ではなく、将来の保険金支払いと市場ストレスに備える水槽の水位に近い。
水位、利益の流入、ストレスへの耐性を同時に読む必要がある。

FY2027/3会社予想は親会社株主に帰属する純利益135,000百万円、グループ修正利益172,000百万円である。
差を誤差とせず、運用・会計・保険契約に固有の一時要因と持続的利益の違いとして説明できるかが焦点となる。
ESRと配当、自己株式取得、成長投資、リスク削減の接続も資本配分の理解に欠かせない。

📚 着眼点2: 販売チャネルの分散と採算の複雑性

太陽生命は家庭市場の営業職員、大同生命は中小企業市場の営業職員・税理士等代理店、T&Dフィナンシャル生命は金融機関・来店型ショップを含む乗合代理店に特化する。
新契約の入口が分散する一方、顧客属性、商品構成、募集コスト、解約率は一律ではない。
各社の新契約・保有契約・解約・給付・事業費・運用収益を個別に確認し、グループ修正利益への寄与を追うことで、連結経常収益の増減を事業基盤の変化と混同しにくくなる。

相場観テーブル

指標 T&DHD 全上場中央値 良い目安・比較軸 評価
予想PER 17.8倍(FY2027/3会社予想) 保険同業比較を優先 同業FY2026/3実績11.76〜26.16倍 実績・予想の時点差と修正利益を併読する。
PBR 1.49倍(FY2026/3 BPS基準) 保険同業比較を優先 ROEとESRの安定を伴うこと 純資産倍率だけで資本の自由度を判断しない。
ROE 9.2%(FY2026/3) 保険同業比較を優先 同業FY2026/3実績7.1〜11.1% ESRと還元・成長投資の配分まで含める。
修正ROE 10.5%(FY2026/3) 非適用 同一定義での継続性 会社独自指標の定義と再現性を確認する。
グループ修正利益 158,500百万円(FY2026/3) 非適用 FY2027/3会社予想172,000百万円 進捗と会計利益との差を確認する。
ESR 222%(FY2026/3) 非適用 資本配分方針とストレス耐性の整合 指標定義と還元への接続を確認する。
予想配当利回り 3.27%(FY2027/3会社予想) 保険同業比較を優先 同業FY2026/3実績2.98〜3.97% 5年平均修正利益の60%程度という方針と併読する。
1株配当 164円(FY2027/3会社予想) 非適用 5年平均修正利益との整合 ESR、成長投資、自己株式取得も合わせて見る。
EV/EBITDA 非適用 非適用 保険業では使用しない 保険負債と資産運用勘定のため比較性が乏しい。
CCC 非適用 非適用 保険業では使用しない 保険契約を事業会社の回転日数で評価しない。

参考情報

ガバナンス要点

代表取締役社長は森山昌彦、設立は2004年4月1日、持株会社単体の従業員数は184名(2025年9月30日現在)である。
会計監査人はEY新日本有限責任監査法人で、監査等委員会と内部監査部門を通じてグループを管理する。
持株会社はグループ戦略、経営資源配分、資本政策を担い、経済価値ベース規制対応と政策保有株式縮減を重点監査項目としている(会社概要、FY2026/3有価証券報告書)。

大株主構成(2026年3月31日現在)

順位 株主名 保有比率 区分
1 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 16.11% 信託銀行
2 株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.89% 信託銀行
3 GOLDMAN, SACHS & CO. REG 5.00% 外国法人等
4 STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 3.99% 外国法人等
5 JPモルガン証券株式会社 2.21% 金融商品取引業者

出典: T&Dホールディングス「株主構成」。自己株式を控除した持株比率であり、大量保有報告書由来の保有者一覧とは混同していない。

データ時点差

財務データ基準日: 2026-03-31と最新開示基準日: 2026-03-31は、FY2026/3通期実績の期末日を示す。
2026年8月7日の開示はFY2027/3第1四半期決算であり、FY2027/3数値は会社予想または第1四半期実績としてのみ記載した。
市場データは株価取得日: 2026-09-15、大株主は2026年3月31日を基準とする。
財務、直近通期実績、現値、大株主の時点を混在させず、それぞれの基準日を併記した。

開示を読む接続点

新契約と既契約では収益寄与が異なるため、販売件数だけでなく継続率・失効率・解約率を確認する。
保険収支は保険金等支払と責任準備金、運用収益は利息・配当とヘッジ後収益を組み合わせる。
資本政策はESR、修正ROE、総還元性向、成長投資、政策保有株式縮減が同じ資本配分方針に接続しているかを確認する。統合報告書2026


出典一覧

  1. EDINET DB — 企業基本情報、FY2022/3〜FY2026/3財務時系列、セグメント、競合財務
  2. TDNet決算短信 — FY2026/3連結決算、FY2027/3会社予想、FY2027/3第1四半期
  3. EDINET有価証券報告書 — FY2026/3セグメント、ESR、グループ修正利益、基礎利益、配当方針
  4. 現値マーケットデータ — 株価、時価総額、株式数(2026-09-15)
  5. 統合報告書2026
  6. IRスケジュール
  7. 長期ビジョン資料
  8. 株主還元情報
  9. 株主構成
  10. 会社概要
  11. グループストラクチャー・ビジネスモデル
  12. 金融庁・経済価値ベースのソルベンシー規制改正
  13. 生命保険協会・ディスクロージャー解説