📚 業界ノート

東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社

【経済・証券・商品先物】証券・商品先物企業バリュエーション分析更新 2026-10-22

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目次
  1. 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
  2. 2. 財務の実力
  3. 指標と業態別健全性チェック
  4. 3. 市場評価を読む — バリュエーション
  5. 4. 同業比較 — 差分の論点
  6. 5. リスクと論点
  7. 6. バリュエーション統合と論点整理
  8. 乖離の構造
  9. 条件分岐シナリオ
  10. 監視ポイント
  11. M&A・出資検討で確認する点
  12. 7. 学びのポイント
  13. 📚 着眼点1: 証券会社のNCは顧客資金と分けて読む
  14. 📚 着眼点2: 市場収益と継続手数料を分解する
  15. 📚 着眼点3: 相場観テーブルで指標の基準をそろえる
  16. 参考情報
  17. ガバナンス・株主構成
  18. データ時点と出典

東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社(8616)銘柄レポート

SUMMARY
  • 何で稼ぐ会社か: 東海東京証券を中核に、株式委託・トレーディングと投信/保険などの販売・管理手数料を組み合わせる金融グループである。
  • 財務の要点: FY2026/3の純利益は16,569百万円へ回復し、FY2027/3 Q1も増収増益。ただし通期利益予想は非開示である。
  • 最大論点: 現預金のみのNC代理値は−301,979百万円、広義NCAVは159,668百万円。顧客・取引関連の金融資産負債を含むため、どちらも一般事業会社の余剰現金や清算価値とは読めない。

1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か

東海東京フィナンシャル・ホールディングスは、東海東京証券を中核に、個人・法人向け証券売買、金融商品の募集・販売、引受、投信・保険、トレーディング、金融収支を組み合わせる。
有報上は「投資・金融サービス」の単一セグメントであり、下表はセグメント別売上ではなくFY2026/3の収益種類である(有価証券報告書、決算短信)。

FY2026/3の収益源 金額(百万円) 純営業収益に占める割合 前年比 収益を動かす主な要因
手数料 48,179 52.4% +17.0% 顧客売買、商品販売、預かり資産、引受
トレーディング損益 38,087 41.4% +3.2% 株式・債券・為替の価格と取引量
金融収支 5,653 6.1% +10.9% 金融収益11,449から金融費用5,796を差し引いた額
純営業収益 91,920 100.0% — 上記3区分の合計。百万円未満の丸め差あり

手数料では株式委託が20,425百万円、前年比35.1%増、投信代行が8,386百万円、14.7%増、保険が6,485百万円、3.6%増。
一方、引受は1,077百万円、28.2%減、投信販売は7,892百万円、1.1%減だった。
商品別に動きが分かれている。

**収益の4割強は市場変動を受けるトレーディング損益で、手数料にもフロー型と継続型が混在する。**株式市場の活況後も、投信代行、保険、資産管理、法人取引が収益を支えられるかが観察点となる。

FY2026/3の販売費・一般管理費は77,105百万円、前年比7.9%増。
人件費35,707百万円、取引関係費16,237百万円、事務費9,202百万円、不動産関係費8,018百万円で、専門人材、取引網、システムなど短期間で調整しにくい費用がある。
純営業収益が弱い局面では費用調整の速度が利益を左右する。
営業利益率はFY2026/3に15.2%へ戻ったが、FY2023/3は4.3%であり、単年度を標準としない。

資本集約度は設備投資型企業とは異なる。
総資産には金融商品や顧客取引・決済関連の資産負債が含まれ、FY2026/3減価償却費は3,763百万円。
投資CF−20,734百万円を設備投資とはみなせない。
売上債権・棚卸・仕入債務を使うCCCは適用しにくく、決済、預託、担保、資金調達の構造を確認する。

中期計画「Beyond Our Limits」はFY2027/3が最終年度。
地方銀行、電力・通信、金融機関、商社、不動産、大学、自治体などの顧客基盤と証券機能を組み合わせるアライアンス、新事業・機能「New Bonanza」、既存事業の高度化を掲げる(中期経営計画)。
成果は提携件数でなく、顧客獲得、預かり資産、継続手数料、費用回収で確認する。

**確認した有報・決算資料では上位顧客の売上比率を確認できず、顧客集中度は定量判定しない。**業界全体は証券・商品先物業界基礎ガイドと主要プレイヤー比較を参照されたい。


2. 財務の実力

FY2026/3は営業収益97,716百万円、営業利益14,815百万円、純利益16,569百万円。
FY2023/3の低収益から回復したが、業績は市況に応じて振れた。
連結財務は有報ベースで、単位は百万円、EPSとDPSのみ円(EDINET DB財務系列、FY2026/3決算短信)。

指標 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
営業収益 80,975 73,383 89,201 86,328 97,716
営業収益前年比 — −9.4% +21.6% −3.2% +13.2%
営業利益 9,881 3,159 15,304 11,739 14,815
営業利益率 12.2% 4.3% 17.2% 13.6% 15.2%
経常利益 12,979 6,346 18,397 15,120 20,492
親会社株主帰属純利益 13,150 1,953 10,189 11,048 16,569
純利益率 16.2% 2.7% 11.4% 12.8% 17.0%
EPS(円) 52.94 7.85 40.86 44.08 65.82
総資産 1,581,231 1,056,020 1,400,360 1,409,429 1,526,284
流動資産 1,505,707 979,880 1,312,677 1,322,176 1,434,585
負債合計 1,395,663 874,672 1,207,425 1,214,601 1,316,755
純資産 185,568 181,348 192,935 194,828 209,529
自己資本比率(有報値) 10.9% 16.0% 12.8% 12.9% 12.8%
営業CF 5,672 107,307 12,814 20,779 4,737
投資CF −23,011 −18,620 −42,571 −24,361 −20,734
財務CF 32,355 −57,593 −4,530 17,662 −2,737
現金及び現金同等物 98,442 130,423 96,651 111,345 92,623
機械的FCF(営業CF+投資CF) −17,339 88,687 −29,757 −3,582 −15,997
減価償却費 2,902 3,280 3,435 3,677 3,763
DPS(円) 24 16 28 28 50

FY2026/3営業収益は前年比13.2%増、営業利益26.2%増、純利益50.0%増。
利益成長には収益構成と費用の双方が影響した。
FY2023/3の低迷、FY2024/3の回復、FY2025/3の弱含みを挟み、FY2026/3は強い実績だが、5年で線形成長したわけではない。

FY2027/3 Q1(2026年4〜6月、8月7日公表)は営業収益30,072百万円(前年比53.3%増)、純営業収益28,085百万円(52.4%増)、営業利益8,090百万円、経常利益8,943百万円、純利益7,192百万円、EPS28.34円。
**FY2027/3通期利益予想は市況変動を理由に非開示。
**過去3期の会社予想と実績を同一基準で照合するデータは未取得のため、予想精度も評価していない。

指標と業態別健全性チェック

**連結自己資本比率12.8%と証券子会社の自己資本規制比率は別の指標であり、業態に合う規制資本・収益性・配当継続・資金フローを見る。
**健康スコアは一般事業会社向けなので適用せず、下表は開示指標に基づく確認事項である。
業界目安はFY2026の証券業29社中央値(ROE9.20%、営業利益率19.57%、純利益率19.25%、自己資本比率40.61%、売上成長率15.26%、配当利回り5.76%、配当性向55.76%)であり、業態差を含む参考値に限る(EDINET DB業種別指標)。

確認項目 東海東京 業界/期間の比較 判定・読み方
営業収益成長率 FY2026/3 +13.2% 業界中央値+15.3% △ 利益は伸びたが、成長率は業界中央値未満
営業利益率 FY2026/3 15.2% 業界中央値19.6% △ 会社の5期レンジでは回復、業界中央値は下回る
ROE FY2026/3 8.8% 業界中央値9.2% △ 資本効率は業界中央値を小幅に下回る
東海東京証券の自己資本規制比率 2026/6末 419.2% FY2026/3末462.7% ✓ 規制資本の余裕を示すが四半期で43.5pt低下
配当継続 FY2022/3–FY2026/3 5期連続 — ✓ 5期すべてに年間配当実績
FY2026/3配当性向 76.0% 業界中央値55.8% △ 記念配当16円を含む。通常配当分は51.7%
営業CFの黒字年数 5期中5期 — ✓ ただしFY2023/3は107,307百万円と突出
機械的FCFの赤字年数 5期中4期 — △ 投資CFに金融商品の動きが含まれ、通常FCFとは異なる
通期利益予想 FY2027/3は未開示 — — 市況変動を理由に会社予想を開示せず
連結自己資本比率 12.8% 証券業中央値40.6% — 取引資産・負債を含むため単純な水準比較をしない

自己資本規制比率は主力子会社・東海東京証券の値で、連結自己資本比率とは異なる。
2026年6月末419.2%は2026年3月末462.7%から低下した。
市場・取引先・基礎的リスクの構成、劣後債務の算入を合わせて追う(6月末開示、3月末開示)。

営業CFは5期すべて黒字だが、FY2023/3の107,307百万円が系列を押し上げる。
機械的FCFは同年度以外の4期でマイナス。
顧客取引や資金調達がCFに反映されるため、営業CFと投資CFの合計を余剰キャッシュとはみなさない。

配当はFY2022/3からFY2026/3まで5期連続。
FY2026/3の50円は通常34円+記念16円で、配当性向76.0%、通常分では51.7%だった。
FY2027/3までの基本方針は配当性向50%または年24円の高い方。
9月18日にFY2027/3中間25円を公表したが、期末・年間合計は未定(株主還元方針)。


3. 市場評価を読む — バリュエーション

株価・倍率は2026年10月22日終値828円を使う。
時価総額はFY2026/3有報に記載された発行済株式260,582,115株に終値を掛けた215,762百万円であり、株価×発行済株式数の検算に一致する。
株式数には自己株式が含まれ、1株利益の加重平均株式数との分母差もあるため、時価総額÷FY2026/3純利益は13.02倍、株価÷EPSは12.58倍となる。
差は約3.5%で、5%以内である。

指標 結果 計算・比較の基準
終値・時価総額 828円・215,762百万円 2026-10-22終値×発行済株式260,582,115株
実績PER 12.58倍 828円÷FY2026/3 EPS65.82円。後方実績値
予想PER 算定不能 FY2027/3通期利益予想は会社未開示
PBR 1.07倍 828円÷FY2026/3 BPS770.74円
FY2026/3年間配当利回り 6.04% 実績DPS50円÷828円。記念配当16円を含む
通常配当のみの利回り 4.11% 通常DPS34円÷828円
現金のみNC代理値 −301,979百万円 現金92,623−借入・社債等394,602。短期有価証券は分離不能
現金のみNC代理比率 −140.0% 上記代理値÷時価総額
広義NCAV 159,668百万円 流動資産1,434,585+投資有価証券59,768×0.7−負債1,316,755
広義NCAV比率 74.0% 上記の機械値÷時価総額
CN-PER(現金のみ代理) 30.2倍 実績PER12.58×(1−(−140.0%))
CN-PER(NCAV機械値) 3.3倍 実績PER12.58×(1−NCAV比率74.0%)
PER倍率の参照レンジ 10.8–13.8倍 証券業中央値10.8倍、当社実績12.58倍、全上場中央値13.77倍
EV/EBITDA倍率の参照点 7.41–8.57倍 全上場中央値7.41倍、証券業中央値8.57倍。金融業特有のEV制約あり

標準NCは通常「現預金+短期有価証券−有利子負債」だが、短期有価証券を分離できず、現金のみの下限代理を掲載した。
広義NCAVは「流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計」の機械値。いずれも顧客取引・トレーディング・決済残高を含み、清算価値や余剰現金を示さない。

FY2022/3からFY2026/3の現金のみNC代理値は−313,901、−231,936、−266,693、−276,914、−301,979百万円。
広義NCAVは140,988.2、137,354.1、141,498.7、146,933.2、159,667.6百万円。
FY2026/3の有利子負債・債券394,602百万円は短期借入198,335、長期借入159,700、社債20,500、1年内償還社債4,777、短期社債11,290で構成する。

CN-PERは現金のみ代理で30.2倍、広義NCAVで3.3倍。差は金融業BSへの一般企業向けNC調整の限界を示し、単独の評価基準にはしない。

NC指標を清算価値と読まない

短期有価証券と顧客取引残高を分離できず、現金NCは下限代理、NCAVは機械値である。

EV/EBITDAの構成 東海東京 丸三証券 マネックスG
現値時価総額(百万円) 215,762 78,856 163,067
有利子負債・現金の調整 394,602−92,623 同じ分類の負債内訳が不足 同一基準のネットデット確認が不足
EBITDA(百万円) 18,578 算定不能 比較用営業利益がN/A
EV/EBITDA 27.87倍(現金のみ代理) N/A N/A
比較上の注記 短期有価証券を控除せず、証券業の資金残高を含む 単体JGAAP、営業利益項目が未取得 連結IFRS、営業利益項目の定義が異なる

対象のEBITDAは営業利益14,815+減価償却費3,763=18,578百万円。
現金のみ代理EVは時価総額215,762+負債等394,602−現金92,623=517,741百万円、27.87倍。
短期有価証券を控除できず、顧客取引残高を含むため、**金融業の企業価値倍率として単純比較できない。
**丸三は営業利益、マネックスGはIFRSの比較用営業利益とネットデット構成がそろわず、Peer値は推定しない。
NCAVを時価総額から機械的に引いたNCAV調整EVは56,094.39百万円、EBITDA割3.02倍だが、顧客・取引資産を余剰財産と扱うため買収価値へ直接転用しない。

参照レンジは倍率比較に限る。
実績PER12.58倍は証券業中央値10.80倍超、全上場中央値13.77倍未満。
これは倍率据置・中央値近辺の参照であり、FY2027/3利益予想ではない。
EV/EBITDA代理値27.87倍も中央値を上回るが、NCの不完全性から差を結論に読み替えない。

DCFはWACC、永続成長率、5期FCFを裏付ける予測前提がそろわず、証券取引残高が営業・投資CFに入るためFCFの単純予測も適切でない。
完成したDCFとして提示できる条件に達していないため掲載しない。
会社はFY2027/3の通期利益予想を公表せず、FY2027/3のforward PERおよびforward EV/EBITDAも算定不能である。


4. 同業比較 — 差分の論点

比較対象は同業の丸三証券と、オンライン証券を持つマネックスグループ。
時価総額は対象の0.3〜5倍の範囲である。
東海東京は連結JGAAP、丸三は単体JGAAP、マネックスは連結IFRS。
市場価格は2026-10-22終値、財務はFY2026/3実績(価格履歴: 東海東京、丸三、マネックス)。

指標 東海東京 丸三証券 マネックスG
時価総額(百万円) 215,762 78,856 163,067
FY2026/3営業収益/売上(百万円) 97,716 21,725 83,606
営業利益率 15.2% N/A N/A
自己資本比率 12.8% 57.98% 16.9%
PER 12.58倍 15.46倍 14.93倍
PBR 1.07倍 1.51倍 1.29倍
ROE 8.8% 10.13% 8.7%
年間配当利回り 6.04% 5.98% 4.74%
EV/EBITDA 27.87倍(代理) N/A N/A
標準NC比率 −140.0%(現金のみ代理) N/A N/A

**実績PER・PBRは2社より低く、配当利回りは高い一方でROEは丸三を下回る。
**記念配当、FY2027/3通期予想の非開示、市況感応度、証券取引残高を含むBSが倍率差の候補で、比較値だけでは原因を一つに絞れない。

丸三のROE10.13%、自己資本比率57.98%、DPS70円は単体JGAAP、マネックスのROE8.7%、自己資本比率16.9%、DPS30.7円は連結IFRS。
営業利益やネットデットの分類がそろわずEV/EBITDA・標準NC比率はN/Aとした。


5. リスクと論点

**最大の業績論点は、市場収益の反転が利益・資本・流動性に波及すること。
**主なリスクは市場収益、資本・流動性、オペレーションにまたがる。
有報は市場価格・金利・為替、取引先信用、規制、競争、システム、情報管理、災害、訴訟、人材、海外、評判、M&A/提携統合を挙げる(有価証券報告書)。

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的な影響シナリオ 開示/確認できる対応
市場価格・取引量 高 高 株式・債券・為替の変動や出来高の減少で委託手数料とトレーディング損益が縮む。固定費が残る場合、営業利益率が低下する 収益源別実績、取引損益、保有ポジションと市場リスクの開示を継続確認
資金調達・流動性・信用 高 中 市場変動や信用不安で担保価値・資金調達条件が悪化し、レポや銀行調達のコストと必要余力が増える FY2026/3に東海東京証券が43,000百万円のコミットメントラインを開示。自己資本規制比率と調達内訳も確認
規制資本・法令遵守 高 中 規制変更、顧客資産管理や商品販売の不備が業務制限、追加コスト、信用低下につながる 東海東京証券は自己資本規制比率を定期開示。2026年6月末419.2%をFY2026/3末462.7%と比較
システム・事務・サイバー 高 中 約定・清算・顧客情報の障害や漏えいが顧客損失、行政対応、取引停止に波及する リスク管理・システム管理の記載はある。障害訓練、外部委託、復旧時間など運用実績の開示を確認
競争・人材・提携 中〜高 中 オンライン手数料競争、人材流出、提携条件変更、統合遅延で継続手数料や想定シナジーが伸びない 中計はアライアンスと新機能を掲げる。提携の件数ではなく顧客/収益の進捗と費用を照合

最大の業績論点は、市場の活況が利益をどれだけ押し上げたかである。
FY2023/3営業利益3,159百万円からFY2026/3 14,815百万円へ回復し、FY2027/3 Q1も低い前年比較で8,090百万円となった。
通常市況での再現性は、売買手数料に加え、投信代行・保険、トレーディング、費用の伸びを併せて見る。

低PBRだけで資産の過小評価とは言えない。
PBR1.07倍は証券業中央値0.97倍超、全上場中央値1.17倍未満。
規制資本として維持する自己資本、顧客取引の資産負債、通期予想非開示や単一セグメント開示も評価要因になりうる。
ROE8.8%は業界中央値9.2%を下回り、資本政策と継続手数料の伸びが見えなければ、配当や簿価だけで評価差を説明しにくい。


6. バリュエーション統合と論点整理

乖離の構造

FY2026/3実績PER12.58倍は証券業中央値10.80倍より高く、全上場中央値13.77倍より低い。
PBR1.07倍は業界中央値0.97倍と全上場中央値1.17倍の間にある。
FY2026/3実績配当利回り6.04%には記念配当16円が含まれる。
FY2027/3は中間25円を公表したが期末・年間配当と通期利益予想は未定で、過年度値を外挿できない。

現金のみNC代理値は負、広義NCAVは正だが、顧客・トレーディング残高を余剰財産とはみなせない。EV/EBITDA代理値27.87倍も短期有価証券を控除できず、金融業の倍率として単純比較しない。

条件分岐シナリオ

収益の継続性と資本政策が確認される場合

FY2027/3上期以降、委託手数料だけでなく投信代行など継続性のある手数料が広がり、費用増を吸収し、自己資本規制比率が安定する。
さらにFY2027/3後の資本・還元方針が明確になれば、実績PERの評価軸が証券業中央値10.8倍を超え、全上場中央値13.8倍近辺へ寄る見方や、PBR1倍超を継続的に評価する見方が正当化されうる。

現在の収益変動が続く場合

Q1の高い利益に市場環境や一時項目が含まれ、会社予想がない状態が続く。
収益の構成と配当方針がFY2026/3から大きく変わらないなら、実績PER12.6倍、PBR1倍前後を中心に評価される展開が考えられる。
会社計画がないため、これは利益予測ではなく現状倍率の据え置きを置いた条件整理である。

市場収益が反転し資本余力も縮む場合

株式・債券・為替の環境悪化で取引関連収益が減り、固定費の調整が遅れ、自己資本規制比率の低下が続く場合、FY2026/3の利益が一時的だったとの見方が強まりうる。
評価軸が証券業PER中央値10.8倍、PBR1倍未満を含む低いレンジへ移る可能性がある。
資金調達と顧客取引の安全性を数値で確認する必要がある。

監視ポイント

次回決算は2026年10月30日予定。未確定日は断定せず、期間末・基準日・確認日を分ける。権利付き最終日は通常のT+2で算出(決算予定、IRカレンダー)。

日付 イベント/節目 開示で確認すべき点
2026-09-28 FY2027/3中間配当の権利付き最終日(過去日) 2026-09-30基準日の対象者と中間配当25円の確定状況
2026-09-30 FY2027/3中間配当の基準日(過去日) 公表済み中間配当25円の決議と支払日
2026-10-30 FY2027/3第2四半期決算発表予定 純営業収益の源泉、営業/経常利益、一時項目、通期業績見通しの開示有無
2026-12-31 FY2027/3第3四半期の期間末 市況、トレーディング残高、顧客資金と調達残高の変化
2027-01-29 第3四半期発表時期の確認日。正式な発表日は未公表 会社の正式な発表日、上期からの手数料構成・費用の推移
2027-03-29 FY2027/3期末配当の権利付き最終日(2027-03-31基準日から算出) 年間配当、通常分と特別分、配当性向50%または年24円方針の適用
2027-03-31 FY2027/3期末・中期計画の最終年度末 通期利益、規制資本、FY2028/3以降の計画と還元方針
2027-06-30 FY2028/3第1四半期の期間末 次の公表時に利益継続性、継続手数料、取引資産負債、自己資本規制比率を確認

2027-01-29は発表予定日ではなく、過年度の1月末発表を参考に日程を再確認する日付である。

M&A・出資検討で確認する点

証券会社のEVは現預金と借入・社債だけでは定まらず、顧客勘定、トレーディング、預託金・担保、レポ、劣後債務を分解し、必要な規制資本・流動性を残す。
開示された43,000百万円のコミットメントラインも余剰現金ではない。
顧客・地域基盤や投信代行・保険の補完性はシナジー候補だが、統合費用と販売管理も伴う。
DDでは偶発債務、取引損失、担保、規制比率、顧客資産分別、サイバー、提携条件を確認し、市況サイクルを通じた利益を使う。


7. 学びのポイント

📚 着眼点1: 証券会社のNCは顧客資金と分けて読む

FY2026/3の現金のみNC代理値は−301,979百万円、広義NCAVは159,668百万円と符号が分かれる。
ただし流動資産と負債には顧客取引・トレーディング・決済関連が含まれ、短期有価証券も独立表示されない。
正のNCAVは株主に還元可能な現金余剰を意味しない。

証券会社のBSでは顧客取引を回す金融資産・負債が大きい。
一般企業のNC式を当てても、顧客預り金や決済資金を除外できなければ余剰財産を測れない。
現預金、短期売買商品、担保・預託資産、調達負債、規制資本を分けて確認する。
NC代理とNCAVの符号が逆になる例は、入力定義が評価結果を左右することを示す。

📚 着眼点2: 市場収益と継続手数料を分解する

FY2026/3はトレーディングが純営業収益の41.4%を占め、手数料内も株式委託+35.1%から投信販売−1.1%まで商品差があった。
FY2027/3 Q1は前年比53.3%増だが、前年同期利益は低く、市場環境や一時項目の影響も混在する。
総売上の伸びを通期へ外挿しない。

収益の質は伸び率だけで判定しない

株式委託手数料は取引量に動き、投信代行は残高に連動する。FY2026/3の両者の伸びを分けて追う。

株式委託やトレーディングは相場・出来高・顧客活動に反応し、投信残高や保険契約に連動する手数料には比較的継続性がある。両者とも市場や顧客行動の影響は受ける。

📚 着眼点3: 相場観テーブルで指標の基準をそろえる

全上場中央値は各社の最新有報ベース(FY2024/3〜FY2026/3)。
更新日はPER・PBR・ROE・EV/EBITDA・自己資本比率が2026-10-22、配当利回りが10-21。
観測数は順に3,322、3,317、3,744、3,114、3,794、2,889社。

PER・PBR・配当利回りの株価は有報期末値で、当社の10月22日終値とは日付・決算期が揃わない。
証券業中央値はFY2026業種別集計である(全上場PER、PBR、ROE、配当利回り、EV/EBITDA、自己資本比率)。

指標 東海東京 全上場中央値 証券業中央値 読み方
実績PER 12.58倍 13.77倍 証券業中央値10.80倍 全市場中央値を下回るが、FY2026/3利益を基準にした後方倍率
PBR 1.07倍 1.17倍 証券業中央値0.97倍 証券業内の中央値より高く、全市場中央値より低い
ROE FY2026/3 8.8% 8.20% 証券業中央値9.20% 全市場中央値に近く、証券業中央値を少し下回る
EV/EBITDA 27.87倍(代理) 7.41倍 証券業中央値8.57倍 現金のみ代理の調整が粗く、分布との単純比較はできない
実績配当利回り 6.04% 2.90% 証券業中央値5.76% 記念配当16円を含むFY2026/3実績。継続利回りとは異なる
通常配当のみの利回り 4.11% — 証券業中央値5.76% 会社通常配当34円で再計算した参考値
自己資本比率 12.8% 56.83% 証券業中央値40.61% 金融取引構造差が大きく、一般的な安全性順位には使わない
営業収益成長率 FY2026/3 13.2% — 証券業中央値15.26% 会社の増収率は業種中央値を下回る
営業利益率 FY2026/3 15.2% — 証券業中央値19.57% 5期の振れと単一セグメントの制約を踏まえる
配当性向 FY2026/3 76.0% — 証券業中央値55.76% 記念配当を含む。通常配当ベースは51.7%

中央値は適正水準を決めるものではない。証券業内の業態差を踏まえ、倍率の位置を収益継続性、資本規制、配当の一時性、BS構造に戻して読む。


参考情報

ガバナンス・株主構成

1929年設立、東京都中央区に本社を置く。
代表取締役会長は石田建昭氏、社長は春日井博氏。
2026年3月末の発行済株式は260,582,115株、親会社従業員155人、連結2,528人、親会社平均年収7,901,258円。

取締役9名中5名が社外・独立である(会社概要、役員一覧)。大株主比率は自己株式控除後の発行済株式数を分母とする(株式情報)。信託・カストディ銀行の名義は実質受益者と同義ではない。

順位 株主名(2026-03-31基準) 保有比率 区分
1 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.11% 信託銀行名義
2 三菱UFJ銀行 4.06% 銀行
3 日本カストディ銀行(信託口) 3.56% 信託銀行名義
4 横浜銀行 2.76% 銀行
5 日本生命保険 2.21% 生命保険

データ時点と出典