📚 業界ノート

マネックスグループ株式会社

【経済・証券・商品先物】証券・商品先物企業バリュエーション分析更新 2026-09-13

このページ

目次
  1. 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
  2. FY2026/3セグメント別営業収益
  3. 証券事業: 米国TradeStationと国内マネックス証券
  4. デジタルアセット: リテール取引から機関投資家向けへ
  5. AM・WM: 市況循環を薄める第3の柱
  6. FP&A上の読み方
  7. 資本関係と経営の焦点
  8. 2. 財務の実力
  9. PL — 5期+予想
  10. BS — 5期
  11. CF — 5期
  12. 配当推移 — 5期+予想
  13. 健全性チェック(証券業向け)
  14. 3. 市場評価を読む — バリュエーション
  15. 時価総額・株価の基準
  16. 金融業向け適用区分
  17. 倍率ベース感応度(適用PERレンジ・円換算なし)
  18. バリュエーション乖離コメント
  19. 4. 同業比較 — 差分の論点
  20. FY2026/3比較テーブル
  21. 5. リスクと論点
  22. リスクマトリクス
  23. 6. バリュエーション統合と論点整理
  24. 乖離の構造分析
  25. 条件分岐シナリオ
  26. 監視ポイント
  27. M&A・出資検討の論点整理
  28. 7. 学びのポイント
  29. 📚 着眼点1: 金融持株会社ではNCではなく規制資本と収益源の質を見る
  30. 📚 着眼点2: 提携の評価は口座数から残高・継続利用への変換率に進む
  31. 📚 着眼点3: 指標ポジショニング(金融業としての評価軸)
  32. 参考情報
  33. ガバナンス要点
  34. 大株主・大量保有報告に基づく資本関係
  35. データ基準日の違い
  36. 出典一覧

マネックスグループ株式会社(8698)銘柄分析レポート

SUMMARY

マネックスグループは、日米の証券、暗号資産、AM・WM、投資を束ね、取引量・顧客資産・運用残高から収益を得る金融持株会社である。
2026-09-11時点の時価総額は 1,794.7億円、株価は714円である(現値マーケットデータ)。
FY2026/3実績EPS 43.41円に対する株価収益率は16.4倍、PBRは1.42倍、FY2027/3の会社配当予想30.8円に基づく配当利回りは4.31%である。
最大の分析論点は、顧客資産等を含む金融業のBSに事業会社型の標準NC・広義NCAV、EV/EBITDA、CCCを適用せず、規制資本と収益源の質で評価する点である。

指標 値 評価
時価総額 1,794.7億円 中型
予 PER 公開情報で未確認 FY2027/3利益予想・予想EPSが入力未取得
予 EV/EBITDA 非適用 証券業・IFRSで営業利益および事業会社型EVの比較非適用
配当利回り 4.31% FY2027/3会社予想DPS 30.8円ベース
標準 NC 比率 非適用 金融業のため
広義 NCAV 比率 非適用 金融業のため
健全性スコア N/A 証券業のため業態版チェックを使用

1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か

マネックスグループは証券、デジタルアセット、AM・WM、投資を併せ持つ金融持株会社である。
FY2026/3のセグメント別営業収益はOnline Brokerage 54,462百万円、クリプトアセット17,592百万円、AM・WM 7,735百万円で、取引・預り資産・運用残高が収益を動かす(出典: FY2026/3有価証券報告書、EDINET)。

FY2026/3セグメント別営業収益

セグメント 売上高(百万円) 構成比 営業利益(百万円) 営業利益率
Online Brokerage 54,462 65.14% 非開示 非開示
クリプトアセット事業 17,592 21.04% 非開示 非開示
Asset Management Wealth Management 7,735 9.25% 非開示 非開示
その他 3,626 4.34% 非開示 非開示
投資事業 190 0.23% 非開示 非開示
合計 83,605 100.00% 非開示 非開示

注: セグメント合計と連結営業収益83,606百万円との差異1百万円は丸めによる。営業利益は入力データにセグメント別開示なし。

(出典: EDINET DB—FY2026/3セグメント情報)

証券事業: 米国TradeStationと国内マネックス証券

Online Brokerageの中核は連結子会社TradeStationと持分法適用会社マネックス証券である。
TradeStationは取引手数料と顧客預り金の運用収益を得るため、取引量、米金利、預り金、ドル円が同時変数になる。
FY2027/3 Q1はDARTs 247,955件、受入手数料6,717百万円、金融収益6,954百万円であった(出典: FY2026/3有価証券報告書、2026年8月6日Q1決算短信)。

マネックス証券はNTTドコモとの提携でID、カード積立、決済、店舗支援を接続した。
FY2026/3末の預かり資産は10.8兆円、2026年1月の新規口座は4.7万であり、口座を投信積立・預かり資産へ定着させられるかが焦点である(出典: FY2026/3有価証券報告書、マネックスグループIRニュース)。

デジタルアセット: リテール取引から機関投資家向けへ

デジタルアセット事業はCoincheck Group、コインチェック、3iQ、Aploで構成される。
FY2027/3 Q1は取引所売買代金4,978億円、販売所591億円、3iQ運用残高922百万カナダドルで、販売所取引と残高の減少が損失につながった一方、ステーキング収益462百万円を計上した。
2026年2月末の3iQ移管は時系列比較上の区分変更である(出典: Coincheck Group F-3、2026年8月6日Q1決算短信)。

KDDIは2026年6月にCoincheck Groupへ65百万ドル超を払い込み、普通株式14.9%を取得した。
顧客接点を広げる一方、上場子会社の少数株主を含む資本構造は複雑化した(出典: Coincheck Group 2026年6月10日6-K)。

AM・WM: 市況循環を薄める第3の柱

AM・WM事業は公募・私募運用、アクティビスト・ファンド、Westfield、富裕層向けPBから成る。
FY2026/3末の運用残高は1兆1,854億円で、残高連動・成功報酬は取引回転型よりストック性が高いが、市場価値にも左右される(出典: FY2026/3有価証券報告書、EDINET)。

FP&A上の読み方

収益ドライバーは取引・金利、口座・預かり資産、暗号資産取引・ステーキング、運用残高・成功報酬である。
システム、規制対応、人件費は固定費的に先行し、FY2027/3 Q1の販管費は16,657百万円であった。
CCCは非適用で、資本負担は取引・保管システム、サイバー対策、規制資本、人材に表れる(出典: 2026年8月6日Q1決算短信)。

顧客はTradeStationのアクティブ層、マネックス証券の個人、Coincheckの個人・機関、AM・WMの個人・機関・富裕層に分かれる。
認可、取引システム、運用実績を束ね、口座から継続預託と複数サービス利用へつなぐ金融プラットフォーム型である。

資本関係と経営の焦点

しずおかFGは20.0%、松本大氏・株式会社松本は合計8.99%、Oasisは5.15%を保有と報告した。
提携株主、創業者、アクティビストが同居するため、配当、自己株式、成長投資を結ぶ資本政策の透明性が重要である(出典: EDINET大量保有報告書 S100PAQ6、S100T2HT、S100YKJU)。


2. 財務の実力

PL — 5期+予想

IFRS任意開示のため、営業利益・経常利益は連続値が未取得である。FY2027/3の通期業績予想(売上高・純利益・EPS)は入力未取得。

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3 FY2027/3予想
売上高(百万円) 88,783 55,841 65,726 73,814 83,606 公開情報で未確認
営業利益(百万円) 非開示 非開示 非開示 非開示 非開示 公開情報で未確認
経常利益(百万円) 非開示 非開示 非開示 非開示 非開示 公開情報で未確認
税引前利益(百万円) 20,801 966 25,324 -4,626 15,758 公開情報で未確認
純利益(百万円) 13,017 3,392 31,293 -5,067 10,914 公開情報で未確認
EPS(円) 50.00 12.85 121.67 -19.79 43.41 公開情報で未確認
営業利益率 非開示 非開示 非開示 非開示 非開示 公開情報で未確認
前年比(売上) — -37.1% 17.7% 12.3% 13.3% 公開情報で未確認
前年比(純利益) — -73.9% 822.7% 赤字転落 黒字転換 公開情報で未確認

(出典: EDINET DB—5期財務時系列、金額は円から百万円へ換算)

BS — 5期

自己資本は各期ともshareholdersEquityを採用し、BPS・ROE・自己資本比率の分母定義を揃えた。証券業の自己資本比率は事業会社の安全性閾値と比較しない。

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
総資産(百万円) 1,607,761 1,504,110 761,642 709,641 746,768
流動資産(百万円) 17,279 10,560 38,113 23,439 21,677
固定資産(百万円) 101,328 102,939 79,542 89,525 101,696
負債合計(百万円) 1,503,475 1,404,469 629,930 585,657 620,371
株主資本(百万円) 104,286 99,641 131,712 123,984 126,397
自己資本比率 6.5% 6.6% 17.3% 17.5% 16.9%
BPS(円) 391.64 388.67 511.38 490.65 502.84

注: 総資産には金融商品取引業に固有の資産を含む。固定資産は非流動資産の入力値であり、総資産−流動資産と一致しない年度があるため、表示区分の差異を含む。

CF — 5期

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
営業CF(百万円) 51,701 -30,977 8,055 13,300 17,806
投資CF(百万円) -6,026 -21,873 -86,353 -32,178 -14,571
財務CF(百万円) 13,763 -34,156 -5,106 -25,191 -5,008
FCF(百万円) 42,411 -39,338 -559 8,731 9,402

注: FCF = 営業CF − 設備投資。金融業では営業CFが金融資産・負債の変動の影響を受けるため、企業価値算定への単純適用はしない。

配当推移 — 5期+予想

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3 FY2027/3予想
1株配当(円) 15.3 15.7 23.0 40.3 30.7 30.8
配当利回り(現値714円ベース) 2.14% 2.20% 3.22% 5.64% 4.30% 4.31%
配当性向 30.6% 122.2% 18.9% 非算定(赤字) 70.7% 公開情報で未確認

注: FY2022/3〜FY2026/3の利回りは各期DPSを2026-09-11株価714円で除した参考値であり、各期末実績利回りではない。

健全性チェック(証券業向け)

事業会社基準(自己資本比率 >40%、流動比率、営業CF連続黒字、標準NC等)は証券業に一切適用しない。自己資本規制比率等の規制ベース指標は入力未取得のため公開情報で未確認とする。

チェック項目 FY2026/3値・状況 判定
自己資本規制比率(証券) 公開情報で未確認 —
規制ベース自己資本比率 公開情報で未確認 —
連結株主資本(百万円) 126,397 参考
ROE 8.7% 参考
BPS(円) 502.84 参考
FY2026/3純利益(百万円) 10,914 参考
FY2026/3営業CF(百万円) 17,806 参考
FY2026/3配当(円) 30.7 支払い
FY2027/3予想配当(円) 30.8 予想あり
FY2026/3配当性向 70.7% 参考

3. 市場評価を読む — バリュエーション

時価総額・株価の基準

時価総額・株価は2026-09-11の現値マーケットデータを使用した。
714円 × 251,363,684株 = 179,473,670千円(千円未満四捨五入)であり、取得時価総額179,473,662千円との差異は丸めの範囲内である。

指標 値 算定・時点
株価(円) 714 2026-09-11
発行済株式数(株、自己株控除後) 251,363,684 2026-08-06開示スナップショット
時価総額(百万円) 179,474 株価×自己株控除後株式数、2026-09-11
FY2026/3 EPS(円) 43.41 EDINET DB、実績
実績PER(倍) 16.4 714円÷43.41円
FY2026/3 BPS(円) 502.84 EDINET DB、実績
PBR(倍) 1.42 714円÷502.84円
FY2027/3予想DPS(円) 30.8 2026-08-06決算短信
予想配当利回り 4.31% 30.8円÷714円

(出典: EDINET DB—FY2026/3有価証券報告書・2026-08-06決算短信、現値マーケットデータ—2026-09-11)

金融業向け適用区分

証券業では顧客分別金信託、預り金、トレーディング資産・負債等が総資産・負債に含まれ、現預金・流動資産から有利子負債または総負債を控除する事業会社型の余剰資金算定は資本余力を表さない。
このため以下を非適用とする。

指標・手法 判定 理由
標準NC(現預金+短期有価証券−有利子負債) 非適用 預り資産・金融負債を含む証券業BS
広義NCAV(流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計) 非適用 総負債の控除は金融仲介残高を含み業態不整合
CN-PER 非適用 標準NC比率が非適用
EV/EBITDA 非適用 IFRS任意開示で営業利益未取得、金融業のEV比較も限定的
CCC 非適用 売上債権・棚卸資産・仕入債務による運転資本モデルに非該当

倍率ベース感応度(適用PERレンジ・円換算なし)

予想EPSと業界PERベンチマークが入力にないため、予想PERの感応度レンジは公開情報で未確認とする。

適用PER水準 倍率 位置づけ
レンジ下限(保守的) 公開情報で未確認 同業・自社実績の比較可能な予想PERデータ未取得
中央(現状据え置き) 16.4倍 FY2026/3実績EPSに対する現値PER
レンジ上限(楽観的) 公開情報で未確認 同上
参考: 業界平均PER データなし 数値ベンチマークなし
参考: 自社5期PERレンジ 7.3〜37.1倍 EDINET DBの各期末市場値ベース、現値比較ではない

バリュエーション乖離コメント

NC考慮EV/EBITDA法およびCN-PER法は、いずれも金融業のBS・収益認識構造に対して非適用である。
したがって両手法の乖離は比較不能である。
現値に基づく定量参照値は、FY2026/3実績PER16.4倍、PBR1.42倍、FY2027/3会社予想配当利回り4.31%である。


4. 同業比較 — 差分の論点

FY2026/3比較テーブル

松井証券はオンライン証券、東海東京FGは証券持株会社であり、いずれも同一EDINET業種かつ対象会社の時価総額0.3〜5倍の範囲にある。

指標 マネックスグループ 松井証券 東海東京FG
時価総額(億円) 1,794.7 3,042.2 2,256.4
売上高(億円) 836.1 526.6 977.2
営業利益率 非開示 44.6% 15.2%
自己資本比率 16.9% 6.1% 12.8%
実績PER(現値÷FY2026/3 EPS) 16.4倍 19.6倍 13.5倍
PBR(現値÷FY2026/3 BPS) 1.42倍 3.71倍 1.15倍
ROE 8.7% 19.6% 8.8%
配当利回り(FY2026/3 DPS÷現値) 4.30% 4.23% 5.62%
EV/EBITDA 非適用 非適用 非適用
標準NC比率 非適用 非適用 非適用
営業CF(億円) 178.1 34.7 47.4
FCF(億円) 94.0 -10.1 2.6

注: 金融業のため、EV/EBITDA・標準NC比率は比較対象外。各社の市場データは2026-09-11、財務はFY2026/3。

(出典: EDINET DB—各社FY2026/3有価証券報告書、現値マーケットデータ—2026-09-11)


5. リスクと論点

リスクマトリクス

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的影響シナリオ 対応状況
市場・金利・為替変動 高 高 米国取引量、顧客預り金運用、暗号資産取引量が同時に低下し、収益構成の複数項目が弱含む 月次指標とQ1開示で取引・金融収益を分解して確認
デジタルアセットの規制・サイバー 高 中 交換業の監督強化、事故、AML/CFT対応の追加負担がサービス拡張や費用に影響 登録・分別管理・サイバー体制の開示を確認
提携の収益化遅延 中 中 ドコモ・KDDI等の顧客接点が口座・残高・取引へ転換しない 口座数だけでなく預かり資産、積立、サービス利用を確認
AM・WMの成功報酬変動 中 中 市場下落や運用成績低下で残高連動報酬・成功報酬が縮小 運用残高と報酬構成をセグメント別に確認
グループ再編・少数株主持分 中 中 Coincheck GroupのNASDAQ上場子会社を含む再編で、連結比較と資本配分の理解が難しくなる セグメント再表示、関連当事者取引、資本政策の説明を確認

最大の定性リスクは、デジタルアセットの収益変動と規制・保管責任が重なる点である。
Q1では取引所・販売所の売買代金が減少し、3iQの運用残高も低下した。
加えて、2026年6月には暗号資産サービス仲介業制度が開始され、制度環境はサービス拡張を可能にする一方、登録・委託・利用者保護の実務を継続的に要求する(出典: 金融庁の制度案内)。

事業会社型のバリュートラップは本件に機械的に適用できない。
標準NC・広義NCAV・EV/EBITDAが非適用なのは、顧客資産や金融負債を余剰現金・通常の有利子負債と同一視できないためである。
資本効率は、連結ROE8.7%に対する会社のROE15%目標、規制資本、持分法会社・NASDAQ上場子会社への資本配分、配当下限年30円と自己株式取得方針の整合で検討する(出典: FY2026/3有価証券報告書、2026年8月6日Q1決算短信)。


6. バリュエーション統合と論点整理

乖離の構造分析

NC考慮EV/EBITDA法とCN-PER法は金融業のBS・収益構造に非適用で、両手法の乖離は比較できない。
評価の中心はFY2026/3実績PER16.4倍、PBR1.42倍、FY2027/3予想配当利回り4.31%を、利益源の循環性と資本配分の質に照らして読むことである。

TradeStationの取引・金利、マネックス証券の持分法利益、Coincheckの暗号資産、AM・WMの残高報酬は異なる循環を持つうえ、上場子会社の少数株主持分と3iQ移管が比較を複雑にする。
金融仲介・分別管理・規制資本を含むため、資産の換金価値より再現可能な収益力と資本配分を評価軸とし、ROE15%への経路を事業別利益として確認する必要がある。

条件分岐シナリオ

収益構成の改善シナリオ

前提: ドコモ連携が預かり資産・投信積立へ定着し、TradeStationが安定、AM・WM残高とデジタルアセットの収益源が広がる場合。
市場評価の変化: 取引量依存に加えて残高連動収益と顧客獲得力が評価され、収益再現性とROE改善に対するガバナンス割引が縮小しうる。

現状継続シナリオ

前提: FY2027/3業績予想が非開示のまま、各事業が市況に沿って変動し、配当方針と提携を維持する場合。
市場評価の変化: FY2026/3実績PER16.4倍、PBR1.42倍、配当利回り4.31%を基準に、取引量、金融収益、持分法利益、運用残高が評価を左右する。

収益・規制負荷の悪化シナリオ

前提: 暗号資産取引・3iQ残高が低迷し、規制・サイバー費用が増え、米国証券の金融収益も弱含む場合。
市場評価の変化: デジタルアセットの損失とROE目標との差が重くみられ、PERよりPBRと規制資本効率を重視する評価へ移りうる。

監視ポイント

時期 イベント 開示で確認すべき点
2026年9月30日 FY2027/3第2四半期末 取引量、預かり資産、暗号資産取引量、運用残高の推移
2026年10月31日 月次概況の公表想定 TradeStation DARTs、マネックス証券約定、Coincheck取引の方向性
2026年11月9日 FY2027/3第2四半期決算発表予定 セグメント利益、持分法利益、デジタルアセット損益、販管費
2026年12月25日 FY2027/3中間配当の権利付き最終日想定 中間配当15.4円予想の決定、自己株式取得方針、資本配分の説明
2026年12月30日 中間配当の権利確定日 配当原資とROE目標・成長投資の整合
2027年1月31日 月次概況の公表想定 ドコモ連携経由の口座・残高、Coincheckの取引回復度
2027年2月8日 FY2027/3第3四半期決算発表予定 会社方針の変更有無、3iQ・Aplo・カストディの進捗
2027年3月31日 FY2027/3期末 規制資本、運用残高、取引収益、持分法利益の通期像
2027年5月10日 FY2027/3通期決算発表想定 ROE15%への進捗、配当・自己株式、セグメント別資本配分
2027年6月29日 FY2027/3期末配当の権利付き最終日想定 期末配当15.4円予想、株主総会議案、資本政策

日付は公表IRスケジュールと通常受渡日程に基づく監視用であり、変更されうる(出典: マネックスグループIRスケジュール)。

M&A・出資検討の論点整理

買い手・出資者は通常のEVではなく、規制資本、顧客分別資産、持分法会社、上場子会社の少数株主持分を分解して許容水準を定める必要がある。
顧客接点、Coincheck基盤、3iQ・Aplo、AM・WM商品はシナジー候補となる一方、多国間規制、システム統合、顧客データ管理、少数株主保護はディスシナジーになりうる。
DDでは分別管理、規制資本、サイバー事故、AML/CFT、暗号資産保管、手数料率、のれん、関連当事者取引を確認する。


7. 学びのポイント

📚 着眼点1: 金融持株会社ではNCではなく規制資本と収益源の質を見る

FY2026/3現預金52,786百万円と有利子負債57,728百万円から標準NCを算定しないのは、顧客資産・分別管理・金融取引負債がBSに入るためである。
金融機関のBSは交通整理の台帳に近く、規制資本、顧客保護、損失吸収力、再現可能な収益源を見る。
同社ではROE8.7%と目標15%の差、事業別利益、配当下限年30円が接点となる。

📚 着眼点2: 提携の評価は口座数から残高・継続利用への変換率に進む

ドコモ連携は2026年1月の新規4.7万口座、FY2026/3末の預かり資産10.8兆円を伴うが、利益寄与は持分法投資利益で現れる。
FY2027/3 Q1の同利益は1,094百万円で、市況の影響も受ける。
提携を集客の看板ではなく、口座から積立・預かり・決済へ移す導線として捉え、各指標への寄与を同一時系列で確認する(出典: FY2026/3有価証券報告書、2026年8月6日Q1決算短信)。

📚 着眼点3: 指標ポジショニング(金融業としての評価軸)

指標 マネックスグループの値 松井証券 東海東京FG 評価コメント
時価総額 1,794.7億円 3,042.2億円 2,256.4億円 2026年9月11日市場データ。事業構成が最も多層的である
実績PER 16.4倍 19.6倍 13.5倍 FY2026/3 EPS基準。予想利益は非開示で、予想PERは公開情報で未確認
PBR 1.42倍 3.71倍 1.15倍 金融業では規制資本とROEの収益化を併読する
ROE 8.7% 19.6% 8.8% 会社目標ROE15%との進捗が主要論点
自己資本比率 16.9% 6.1% 12.8% 事業会社の安全性閾値で比較しない
配当利回り 4.30% 4.23% 5.62% FY2026/3 DPSを現値で参照。FY2027/3会社予想は4.31%
FY2027/3予想DPS 30.8円 データなし データなし 年30円下限と利益連動の配当方針を確認する
EV/EBITDA 非適用 非適用 非適用 金融負債と営業利益の性質が事業会社と異なる
標準NC比率 非適用 非適用 非適用 顧客資産・金融負債を余剰資金に置換しない
営業CF 178.1億円 34.7億円 47.4億円 金融資産・負債の増減を含むためDCFへ単純接続しない

(出典: 定量分析のFY2026/3同業比較及び2026年9月11日市場データ。全上場中央値は一次資料での同一基準値を確認できず記載しない。)


参考情報

ガバナンス要点

代表執行役社長CEOは清明祐子氏である。
事業拠点は日本、米国、カナダ、フランスにまたがる。
指名委員会等設置会社として指名・監査・報酬の各委員会を置き、持分法会社と上場子会社を含む資本配分・少数株主との利益相反を監督する。
設立年、連結従業員数、監査法人、主要取引銀行の最新一覧は公開情報で未確認である(出典: FY2026/3有価証券報告書、2026年8月6日Q1決算短信)。

大株主・大量保有報告に基づく資本関係

順位 株主名 保有比率 区分
1 しずおかフィナンシャルグループ 20.00% 資本業務提携(2022年10月7日報告)
2 株式会社松本 8.56% 創業者関係・安定株主(2024年3月15日報告)
3 Oasis Management Company Ltd. 5.15% 純投資(2026年6月30日報告)
4 松本大 0.43% 創業者・代表執行役(2024年3月15日報告)
5 野村アセットマネジメント 2.69% 信託財産の運用(2021年4月22日報告)

注: 上表はEDINETで確認できた大量保有報告書・変更報告書からの保有者であり、同一時点の株主名簿順位ではない。
第5位の報告日は古く、最新状況はFY2027/3有価証券報告書の大株主欄で要確認である。

データ基準日の違い

データ種別 基準日 ソース
財務・セグメント 2026年3月31日 FY2026/3有価証券報告書・定量分析
四半期の定性動向 2026年6月30日 / 2026年8月6日開示 2027年3月期Q1決算短信
市場データ 2026年9月11日 定量分析の現値マーケットデータ
大量保有 各表記の提出日 EDINET大量保有報告書

出典一覧

  1. EDINET DB — マネックスグループ株式会社(E03815)企業基本情報・FY2026/3最新決算・5期財務時系列
  2. EDINET DB — マネックスグループ株式会社(E03815)セグメント別売上
  3. EDINET DB — マネックスグループ株式会社(E03815)決算短信・会社配当予想
  4. EDINET DB — 松井証券株式会社(E03807)企業基本情報・3期財務時系列
  5. EDINET DB — 東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社(E03764)企業基本情報・3期財務時系列
  6. 現値マーケットデータ — マネックスグループ株式会社、松井証券株式会社、東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社、2026-09-11
  7. マネックスグループ IRニュース
  8. 2027年3月期Q1決算短信
  9. マネックスグループ IRスケジュール
  10. Coincheck Group 2026年6月10日6-K
  11. Coincheck Group F-3
  12. 金融庁: 電子決済手段・暗号資産サービス仲介業
  13. 金融庁: 暗号資産交換業者関係ガイドライン改正