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株式会社大和証券グループ本社

【経済・証券・商品先物】証券・商品先物銘柄レポート更新 2026-08-15

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目次
  1. 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
  2. セグメント別売上構成(直近期)
  3. 2. 財務の実力
  4. PL 5期時系列(百万円・JP-GAAP連結)
  5. BS 5期時系列(百万円)
  6. BS詳細主要科目(百万円)
  7. CF 5期時系列(百万円)
  8. 減価償却明細
  9. 受注高
  10. 運転資本CCC(参考・分母統一注記)
  11. 経営者予想精度
  12. 配当推移
  13. 業態版 健全性チェック(証券・その他金融/事業会社基準は不適用)
  14. 3. 市場評価を読む — バリュエーション
  15. 時価総額・株価の基準
  16. 標準NC計算 5期推移(現預金+短期有価証券−有利子負債、百万円)
  17. 広義NCAV計算 5期推移(流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計、百万円)
  18. CN-PER
  19. EV/EBITDA分析(大和 vs 野村 vs SBI)
  20. EV/EBITDA感度(NC定義別)
  21. 倍率ベース感応度(適用PERレンジ)
  22. バリュエーション乖離コメント
  23. 内部整合性チェック(±5%)
  24. 4. 同業比較 — 差分の論点
  25. 競合選定基準
  26. 最新期比較テーブル(FY2026)
  27. 競合3期推移
  28. CCC競合比較
  29. 5. リスクと論点
  30. 6. バリュエーション統合と論点整理
  31. 7. 学びのポイント
  32. 📚 着眼点1: 「フロー収益」と「ストック収益」を分けて見る目
  33. 📚 着眼点2: 「金利のある世界」で銀行機能を取り込む意味
  34. 📚 着眼点3: 相場観テーブル
  35. 参考情報
  36. 出典一覧

株式会社大和証券グループ本社(8601)銘柄分析レポート

SUMMARY

大和証券グループ本社(8601)は現値1,801円・時価総額2,500,812百万円(¥2.50兆)
会社は通期業績予想を非開示のため、予想PER・予想EV/EBITDAはFY2026実績ベースで算出する。
実績PER14.29倍(EPS 126.04円)、実績PBR1.42倍(BPS 1,272.72円)、EV/EBITDA17.88倍(現預金のみ控除基準・NC定義により9.37倍まで圧縮)、配当利回り3.55%(1株配当64円)。
標準NC比率5.67%・広義NCAV比率26.35%(いずれも現在時価総額比・参考値)。
健全性スコアはN/A(金融業のため事業会社スコアは非適用)、業態版健全性チェック(後掲)は主要9項目すべて充足。

指標
時価総額(現値) 2,500,812百万円
予想PER(実績ベース) 14.29倍
予想EV/EBITDA(実績ベース) 17.88倍(NC定義別9.37〜17.88倍)
配当利回り(現値) 3.55%
標準NC比率 5.67%(参考値)
広義NCAV比率 26.35%(参考値)
健全性スコア N/A(金融業)

1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か

業界全体の構造は同業界の業界基礎ガイド・プレイヤー比較を参照。本レポートは大和証券グループ本社固有の事業構造に絞る。

セグメント別売上構成(直近期)

FY2026(純営業収益/経常利益、百万円)

セグメント 純営業収益 構成比 経常利益 前年比(純営業収益)
ウェルスマネジメント部門 295,788 41.1% 112,033 +15.6%
グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門 257,395 35.7% 58,995 +9.9%
アセット・マネジメント部門 111,930 15.5% 65,432 +9.2%
その他・調整等 55,313 7.7% -1,950 該当年度は損失
連結計 720,427 100.0% 234,510 +11.5%

アセット・マネジメント部門内訳: 証券AM 70,722百万円/経常利益376億円・不動産AM 36,885百万円/経常利益330億円・オルタナティブAM 4,321百万円/経常損失52億円。

大和証券グループ本社は、証券・銀行・資産運用の3機能を一体運営する総合金融グループである。
FY2026(2026年3月期)の収益構成をみると、4部門の性格は大きく異なる。ウェルスマネジメント(WM)部門は純営業収益295,788百万円・構成比41.1%・経常利益112,033百万円を稼ぐ最大部門で、大和証券のリテール資産管理と大和ネクスト銀行の預金運用利鞘からなる。
個人の預り資産残高に連動するストック収益が中心で、相場が荒れても解約が一巡すれば残高そのものは残るという性質を持つ。
対照的にグローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング(GM&IB)部門は純営業収益257,395百万円・構成比35.7%・経常利益58,995百万円で、機関投資家向けセールス&トレーディングと引受・M&Aアドバイザリーからなるフロー収益が主体であり、市況・案件量に応じて四半期ごとの振れが大きい。アセット・マネジメント(AM)部門は純営業収益111,930百万円・構成比15.5%・経常利益65,432百万円で、証券AM70,722百万円・不動産AM36,885百万円・オルタナティブAM4,321百万円に細分される、AUM(運用資産残高)連動フィーのストック収益である。その他・調整等(大和総研=リサーチ・システム)は純営業収益55,313百万円・構成比7.7%・経常利益▲1,950百万円となる。
市場分野別の成長動向は、WM部門が◎(資産形成需要の拡大局面)、AM部門が○(AUM積み上げ継続)、GM&IB部門は市況次第で振れ幅が大きい○という位置づけである。

経営はこの「フロー×ストック」のミックスを強く意識しており、WM・証券AM・不動産AMの経常利益合計を「ベース利益」と呼ぶ独自指標で管理する。
FY2026実績のベース利益は1,827億円で、中期経営計画「Passion for the Best 2026」の目標1,500億円を上回って着地した。
市況に左右されにくい収益の比率を高めることで、GM&IB部門の変動を吸収する経営の骨格になっている。

コスト構造は人件費(賞与部分は業績連動)とシステム・不動産の固定費が大きく、証券業は総じて固定費型のビジネスである。
市況が長期に低迷すれば固定費が収益を上回る採算割れリスクは、有価証券報告書のリスク項目としても開示されている。
運転資本については、CCC15.67日(FY2026)が参考値として存在するが、証券会社のバランスシートは担保金融取引や自己勘定ポジションが中心であるため、CCCを在庫回転の文脈で読む事業会社的な解釈は限定的である。
資本集約度は高く、総資産38兆円規模の巨大バランスシートを抱え、減価償却は年間約444億円にとどまる一方で自己勘定・担保金融取引が資産の大半を占める。

主要な取引先は、個人投資家(富裕層・職域)・機関投資家・事業法人(引受・M&A)に加え、ファンドラップの外部提携先としてゆうちょ銀行・あおぞら銀行・岩手銀行等が並ぶ。
ウェルスマネジメントでは総資産コンサルティングアプリ「D-Port」を軸に、ラップ関連契約資産残高がFY2027第1四半期(2026年6月期)時点で過去最高の6兆7,650億円に達し、大和ネクスト銀行の預金残高も5兆3,085億円・口座数237万まで積み上がっている。

TIP

大和のようなフルライン証券グループの参入障壁は、単一の技術や商品ではなく「対面の総合コンサルティング×デジタル基盤×銀行機能」を同時に持つ総合力そのものにある。
証券・銀行それぞれの免許・規制対応コストと、長年の取引を通じた顧客との信認は、新規参入者が短期間で模倣できるものではない。
ネット証券が手数料競争で先行する一方、富裕層向けの複合提案(証券+信託+融資)は対面型総合証券の方が組み立てやすい領域として残っている。

この総合力を一段引き上げる動きが、2026年8月3日に完了した大和ネクスト銀行によるオリックス銀行(銀行業)の全株式取得(3,700億円)である。
大和ネクスト銀行は預金は潤沢だが運用対象に乏しく、日銀当座預金として滞留する余資を抱えていた一方、オリックス銀行は不動産関連融資・信託に強みを持つが預金基盤は限られていた。
両行の合併を見据えたこの統合は、「金利のある世界」で銀行機能を厚くし、証券市況の変動をグループ全体の収益で平準化する狙いを持つ。
総資産9兆円規模・自己資本4,000億円規模の銀行が誕生し、5年で預金2兆円増・資金収支350億円改善というシナジーが公表されている一方、不動産与信の集中度・PMI(経営統合)の進捗・のれん計上の水準は、今後の開示を追う必要がある論点である。


2. 財務の実力

PL 5期時系列(百万円・JP-GAAP連結)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026(直近実績)
純営業収益(revenue) 502,093 464,226 590,910 645,990 720,427
営業利益 115,534 66,273 153,705 166,742 207,333
経常利益 135,821 86,930 174,587 224,716 234,510
親会社株主純利益 94,891 63,875 121,557 154,368 175,281
EPS(円) 63.06 43.53 84.94 109.53 126.04
ROE(公式) 7.0% 4.6% 8.3% 9.8% 10.3%

補足: 「営業収益」総額(金融費用等控除前)はFY2026で1,467,983百万円。証券業では純営業収益(720,427百万円)を売上相当として扱う。

会社予想: 通期業績予想は非開示(証券業の市況依存性のため業績予想を公表しない慣行)。
予想PER/予想EV/EBITDAはFY2026実績ベースで算出済み(次章参照)。
中期経営計画「Passion for the Best 2026」FY2026数値目標: 連結経常利益2,400億円以上・連結ROE10%程度・ベース利益1,500億円 → FY2026実績(経常利益2,345億円・ROE10.3%・ベース利益1,827億円)は目標超過。

FY2027 Q1実績(2026-08-06短信・累計3ヶ月、百万円): 営業収益434,364(+33.1%YoY)・純営業収益220,399(+42.0%)・営業利益77,512(+114.3%)・経常利益88,089(+101.5%)・親会社株主純利益56,414(+80.6%)・EPS 40.68円。

BS 5期時系列(百万円)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
総資産 27,531,089 26,413,248 32,027,299 36,024,346 38,077,646
流動資産 26,009,638 24,872,860 30,439,313 34,275,746 36,219,548
固定資産 1,521,450 1,540,388 1,587,986 1,748,600 1,858,097
負債合計 25,891,201 24,737,759 30,238,641 34,101,059 36,031,837
純資産 1,639,888 1,675,489 1,788,658 1,923,287 2,045,809
自己資本比率(会計上) 5.0% 5.3% 4.8% 4.6% 4.6%
BPS(円) 925.81 968.93 1,086.20 1,158.82 1,272.72
株主資本 1,286,467 1,292,309 1,318,227 1,442,079 1,485,835
非支配株主持分 257,497 258,855 259,515 277,204 276,419

BS詳細主要科目(百万円)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
現預金 4,554,375 3,835,559 4,351,951 3,739,698 3,772,624
有価証券(短期) 1,177,898 1,131,682 1,410,877 1,586,939 2,140,789
投資有価証券 443,446 455,317 492,226 618,456 673,079
短期借入金 2,155,782 1,292,848 1,272,859 1,415,334 2,033,926
長期借入金 1,237,048 1,706,985 2,020,812 2,036,629 1,850,739
社債 1,563,631 1,304,543 1,276,312 1,218,490 1,031,024
1年内償還予定社債 446,760 485,029 159,780 399,531 459,397
コマーシャルペーパー 116,000 261,300 440,000 322,500 396,500
売上債権(受取手形売掛金) 22,420 22,062 29,627 33,044 38,211
棚卸資産(仕掛品) 768 853 839 759 861
仕入債務(支払手形買掛金) 6,361 8,120 8,507 8,471 8,131

有利子負債(テンプレ定義+CP算入、百万円): FY2022=5,519,221 / FY2023=5,050,705 / FY2024=5,169,763 / FY2025=5,392,484 / FY2026=5,771,586。

CF 5期時系列(百万円)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
営業CF -353,467 -183,745 705,124 -454,066 438,963
投資CF -218,534 7,457 -223,986 -353,443 -583,599
財務CF 377,090 -565,878 -2,847 199,019 199,423
FCF(営業CF+投資CF) -572,001 -176,288 481,138 -807,509 -144,636

注: 証券業の営業CFはトレーディング資産・担保金融の増減で大きく振れる(構造特性)。単年FCFの水準解釈には留意。

減価償却明細

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
減価償却費(百万円) 44,612 43,954 45,274 44,353 44,418

受注高

該当なし(非受注産業)。

運転資本CCC(参考・分母統一注記)

売上原価が非開示のため、分母を純営業収益(売上高相当)に統一した参考値として算出する。証券業は商品売買を伴わないため、CCC日数の事業会社的解釈(在庫回転・仕入決済サイクル)は限定的。

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
DSO(売上債権回転日数) 16.30日 17.35日 18.30日 18.67日 19.35日
DIO(棚卸資産回転日数) 0.56日 0.67日 0.52日 0.43日 0.44日
DPO(仕入債務回転日数) 4.62日 6.39日 5.25日 4.79日 4.12日
CCC(DSO+DIO-DPO) 12.23日 11.64日 13.56日 14.31日 15.67日

経営者予想精度

会社は通期業績予想を非開示のため、予想精度データなし。

配当推移

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
1株配当(円) 33.0 23.0 44.0 56.0 64.0
配当性向 52.3% 52.8% 51.8% 51.1% 50.8%

連続増配3年(FY2024→FY2026)。配当性向は概ね50%台で安定(総還元性向は自己株取得含めさらに高い)。 現値配当利回り = 64円 ÷ 1,801円 = 3.55%

業態版 健全性チェック(証券・その他金融/事業会社基準は不適用)

  1. 連結総自己資本規制比率: 社内管理水準を上回る(FY2026速報・バーゼルIII最終化FY2025末適用)✅
  2. D-SIBs(国内システム上重要な銀行)指定 → 資本バッファー+0.5%上乗せ要求を満たす ✅
  3. 連結レバレッジ比率: 3.15%以上維持要求 → 充足 ✅
  4. 連結流動性カバレッジ比率(LCR): 125.8%(規制100%以上)✅
  5. 連結安定調達比率(NSFR): 125.3%(規制100%以上)✅
  6. ROE(東証定義): 10.3% → 東証プライム資本収益性基準(8%)クリア ✅
  7. 自己資本比率(会計上): 4.6%(※金融業では高レバレッジが正常。事業会社基準は非適用)
  8. 配当連続性: 3期連続増配・配当性向約50% ✅
  9. 純利益: FY2026過去最高益 ✅
  10. 純営業収益・経常利益とも増加傾向 ✅

※事業会社基準(自己資本比率>40%等)は証券業に一切適用しない。


3. 市場評価を読む — バリュエーション

時価総額・株価の基準

標準NC計算 5期推移(現預金+短期有価証券−有利子負債、百万円)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
現預金 4,554,375 3,835,559 4,351,951 3,739,698 3,772,624
短期有価証券 1,177,898 1,131,682 1,410,877 1,586,939 2,140,789
有利子負債(算定・短期借入+1年内償還社債+長期借入+社債+CP) 5,519,221 5,050,705 5,169,763 5,392,484 5,771,586
標準NC 213,052 -83,464 593,065 -65,847 141,827
標準NC比率(現在時価総額比・参考) 5.67%

※他4期は各期末時点の時価総額データを保有しないため比率算出は行わず金額のみ記載。
※証券業のバランスシートは自己勘定・担保金融取引を大量に含むため、NC/NCAVは事業会社と同義には解釈できない(参考値)。

広義NCAV計算 5期推移(流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計、百万円)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
流動資産 26,009,638 24,872,860 30,439,313 34,275,746 36,219,548
投資有価証券×0.7 310,412 318,722 344,558 432,919 471,155
負債合計 25,891,201 24,737,759 30,238,641 34,101,059 36,031,837
広義NCAV 428,849 453,823 545,230 607,606 658,866
広義NCAV比率(現在時価総額比・参考) 26.35%

※証券業のバランスシートは自己勘定・担保金融取引を大量に含むため、NC/NCAVは事業会社と同義には解釈できない(参考値)。

CN-PER

CN-PER = 予想PER(実績ベース14.29倍)× (1 − 標準NC比率5.67%) = 13.48倍

EV/EBITDA分析(大和 vs 野村 vs SBI)

項目 大和(JP) 野村(US-GAAP) SBI(IFRS)
時価総額(現値・百万円) 2,500,812 4,588,471 1,984,422
EBITDA(百万円) 251,751(営業利益+減価償却) 算出不可(会計基準差) 算出不可(会計基準差)
EV/EBITDA 17.88倍(現預金のみ控除) 算出不可(有利子負債内訳非開示・会計基準差) 算出不可(有利子負債内訳非開示・会計基準差)
参考: 実績PER 14.29倍 12.76倍 4.60倍
参考: 実績PBR 1.42倍 1.23倍 1.11倍
参考: ROE(公式) 10.3% 10.09% 28.0%
参考: 配当利回り(現値) 3.55% 3.25% 3.75%

※会計基準差(大和=JP-GAAP/野村=US-GAAP/SBI=IFRS)のため、営業利益・EBITDA概念は非対称。市場側指標(PER/PBR/ROE/配当利回り)を比較の主軸とする。

EV/EBITDA感度(NC定義別)

ネット・デット定義 EV(百万円) EV/EBITDA
有利子負債−現預金のみ 4,499,774 17.88倍
有利子負債−(現預金+短期有価証券=標準NC定義) 2,358,985 9.37倍

※証券業のEVは担保金融取引の影響で解釈に留保が必要。控除対象の定義次第でEV/EBITDAは約2倍幅で変動する。

倍率ベース感応度(適用PERレンジ)

FY2026実績純利益175,281百万円に対する適用PERレンジ別の時価総額水準(参考・機械的感応度):

適用PER 含意時価総額(百万円)
10.0倍 1,752,810
12.0倍 2,103,372
14.29倍(実績PER) 2,504,266
16.0倍 2,804,496
18.0倍 3,155,058

バリュエーション乖離コメント

内部整合性チェック(±5%)

検算項目 左辺 右辺 乖離 判定
現在株価×株式数 ≒ 時価総額 2,500,812百万円 2,500,812百万円 0.00%
予想PER×EPS ≒ 株価 1,801.1円 1,801円 0.01%
PBR×BPS ≒ 株価 1,801.0円 1,801円 0.00%

4. 同業比較 — 差分の論点

競合選定基準

証券・その他金融の直接競合。時価総額レンジ(大和2.50兆の0.3〜5倍圏):

会計基準差(大和=JP/野村=US-GAAP/SBI=IFRS)のため、営業利益・EBITDA概念は非対称。比較は市場側指標(PER/PBR/ROE/配当利回り)を主軸とする。

最新期比較テーブル(FY2026)

項目 大和(8601) 野村(8604) SBI(8473)
会計基準 JP US-GAAP IFRS
株価(現値・円) 1,801 1,570 3,070
時価総額(現値・百万円) 2,500,812 4,588,471 1,984,422
EPS(円) 126.04 123.08 666.82
実績PER 14.29倍 12.76倍 4.60倍
BPS(円) 1,272.72 1,277.99 2,776.99
実績PBR 1.42倍 1.23倍 1.11倍
ROE(公式) 10.3% 10.09% 28.0%
自己資本比率(会計上) 4.6% 5.9% 4.7%
1株配当(円) 64.0 51.0 115.0
配当利回り(現値) 3.55% 3.25% 3.75%

※SBIはFY2026にROE28.0%と急伸(金融事業の評価益等特殊要因含む可能性)。BPS低下は株式分割等の影響(splitAdjustmentFactor 2.0)—水準差に留意。

競合3期推移

野村HD(8604・E03752・US-GAAP・百万円)

項目 FY2024 FY2025 FY2026
収益(revenue) 1,562,000 1,892,485 2,167,713
税引前利益 273,850 471,964 539,821
純利益 165,863 340,736 362,129
総資産 55,147,203 56,802,170 62,645,925
純資産(株主資本) 3,448,513 3,580,999 3,854,915
EPS(円) 54.97 115.30 123.08
ROE(公式) 5.1% 9.99% 10.09%
自己資本比率 6.1% 6.1% 5.9%
BPS(円) 1,127.72 1,174.10 1,277.99
1株配当(円) 23.0 57.0 51.0

※US-GAAPのため営業利益・営業CF概念が大和と非対称。営業利益率は非算出(税引前利益率24.9%を参考注記)。

SBIホールディングス(8473・E05159・IFRS・百万円)

項目 FY2024 FY2025 FY2026
収益(revenue) 1,210,504 1,443,733 1,896,607
税引前利益 141,569 282,290 516,667
純利益 87,243 162,120 427,577
総資産 27,139,391 32,113,430 38,290,797
純資産(株主資本) 1,262,209 1,261,408 1,794,942
EPS(円) 316.43 536.09 666.82
ROE(公式) 7.7% 12.8% 28.0%
自己資本比率 4.6% 3.9% 4.7%
BPS(円) 4,181.45 4,162.73 2,776.99
1株配当(円) 160.0 170.0 115.0

※IFRS。売上原価366,041百万円/粗利1,530,566百万円(FY2026)。BPS低下は株式分割等の影響(splitAdjustmentFactor 2.0)—比較時は水準差に留意。

CCC競合比較

証券・金融業は担保金融取引を大量に含み、在庫・仕入債務概念が事業会社と非対称なため、CCC競合比較は簡略化し実施しない(前章の大和単独参考値のみとする)。


5. リスクと論点

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的影響シナリオ 対応状況
市況変動(相場・出来高) 株式売買代金・引受案件が細ると、フロー収益中心のGM&IB部門の経常利益が急減し、連結利益のブレ幅が拡大する ベース利益(WM+証券AM+不動産AM)でストック収益比率を高め、変動を平準化する経営指標を運用中
オリックス銀行統合・不動産与信集中 不動産関連融資に強みを持つオリックス銀行を取り込むことで、金利上昇局面での不動産担保価値下落や特定与信への集中度が高まる可能性がある 両行合併は将来時点に設定されており、統合計画・与信管理体制の詳細開示を待つ段階
規制自己資本・バーゼルIII最終化 連結レバレッジ比率・LCR・NSFR等の規制指標が最終化ルールで厳格化されれば、資本配分の自由度が制約される 連結自己資本規制比率は社内管理水準超・レバレッジ比率3.15%以上・LCR125.8%・NSFR125.3%を確保しD-SIBs指定に対応済み
オペレーショナル・サイバーリスク 低〜中 システム障害や不正アクセスが取引執行・顧客情報管理に影響すれば、信認低下や規制対応コストが発生する トップリスクとしてサイバー攻撃・マネロン対応不備を有価証券報告書で開示し継続的に監視
地政学・財政リスク(国債格下げ含む) 低〜中 通商政策や日本の財政不安が国債格下げ・スタグフレーションにつながれば、市場心理と資金調達コストの双方に波及する トップリスク開示に含め、国際紛争・通商政策・財政不安を経営レベルで監視
WARNING

最大の論点はオリックス銀行統合である。
楽観シナリオでは、大和ネクスト銀行の余資を不動産・証券担保ローンで運用し始めることで利ざやが改善し、5年で預金2兆円増・資金収支350億円改善のシナジーが計画通り実現する。
悲観シナリオでは、証券会社主体の企業文化と銀行融資審査の実務が噛み合わず、PMIが遅延したり、金利上昇局面で都市部不動産向け与信の集中リスクが顕在化してのれん減損に発展したりする可能性がある。
中間シナリオとしては、シナジーの実現ペースが計画より緩やかに進み、統合効果の顕在化に想定より時間を要するケースが考えられる。
いずれのシナリオが実現するかは、両行合併時期の決定や与信ポートフォリオの開示内容を追って判断する必要がある。

WARNING

PBR1.42倍は同業の野村(1.23倍)より高く、SBI(1.11倍)とも並ぶ水準にあり、一見「割安放置」の状態ではない。
しかし証券セクターは伝統的に市況感応度が高く、資本効率(ROE)の持続性そのものが市場から問われやすい業態である。
東証が求める「資本コストや株価を意識した経営」の要請はプライム市場全体に及んでおり、証券セクターも収益の質(ストック収益比率)を高め続けられるかが評価軸になる。
加えて大量保有報告書上、シルチェスター・インターナショナル・インベスターズが4.02%を保有し、増配や金庫株消却など資本政策の変更を要求することがあると開示している。
同ファンドは他の保有銘柄でも特別配当の実施を求めるなど対話姿勢を強めることがあると報じられており、資本効率改善への外部からの圧力が常時働く構造であることを示す。
収益の質の向上が市場評価に反映されるかどうかは、今後の開示・実績の積み上がりに依存する。


6. バリュエーション統合と論点整理

(a) 乖離の構造分析

大和のPER14.29倍・PBR1.42倍は、野村(PER12.76倍・PBR1.23倍)よりやや高い倍率で評価され、SBI(PER4.60倍・PBR1.11倍、ただしROE28.0%は特殊要因を含む可能性がある)とは業態としての立ち位置が異なる。
野村は国内最大手として規模の経済で評価され、SBIはネット証券主導の高ROE・低PERという組み合わせで市場から評価されている一方、大和は対面総合証券としてウェルスマネジメント・アセットマネジメントのストック収益比率が相対的に高いことが、野村を上回る倍率として市場に織り込まれている可能性がある。
ベース利益(WM+証券AM+不動産AM)が中期目標1,500億円を上回る1,827億円まで拡大したことは、証券会社に付きまとう「市況次第で利益が急変する」という評価軸を、ストック収益中心の総合金融グループとしての評価軸へ書き換えられるかどうかの分岐点である。
この構造転換が市場に十分認知されているかどうかが、現在の倍率が妥当な水準なのか、あるいは収益構造の変化を市場がまだ織り込み切れていない状態なのかを左右する。
この判断は本レポートの範囲では確定できず、後続の開示を継続的に確認する必要がある。

(b) 条件分岐シナリオ3本

シナリオA(ストック収益拡大・統合シナジー実現): 前提は、ベース利益が中期目標を上回るペースで積み上がり、オリックス銀行統合のシナジー(預金2兆円増・資金収支350億円改善)が計画通り進捗すること。
この場合、証券会社特有の市況感応度ディスカウントが薄れ、総合金融グループとしての評価軸(ストック収益比率・ROEの安定性)で市場に見直される余地が生まれる。

シナリオB(中計並み進捗): 前提は、WM・AM部門が安定成長を続ける一方でGM&IB部門は市況に応じて変動し、オリックス銀行統合は計画通りのペースで進むこと。
この場合、現行の倍率レンジ(PER10倍台・PBR1倍台前半)が概ね維持され、同業他社との相対評価の中で推移する。

シナリオC(市況急落・統合難航): 前提は、株式市場の急落や出来高減少でGM&IB部門の収益が落ち込み、同時にオリックス銀行との統合が不動産与信の悪化やPMI遅延で難航すること。
この場合、証券セクター全体のディスカウントが再び強まり、PBRの評価レンジが下方に引き直される可能性がある。

(c) 監視ポイント

時期 イベント 開示で確認すべき点
2026年9月26日頃 中間配当の権利付き最終日(権利確定9月30日−2営業日) 配当方針の継続性
2026年11月上旬(想定) FY2027第2四半期決算短信 ベース利益・オリックス銀行統合関連費用の進捗
2027年2月上旬(想定) FY2027第3四半期決算短信 GM&IB部門の市況感応度・通期見通しに関する言及
2027年4月下旬(想定) FY2027通期決算短信 中期経営計画「Passion for the Best 2026」の最終年度実績集計
2027年6月(想定) 有価証券報告書提出 オリックス銀行のれん計上額・与信ポートフォリオの詳細開示
随時 大和ネクスト銀行・オリックス銀行の合併時期決定 PMI進捗・組織統合スケジュール
随時 自己株式取得枠の設定・消却状況 資本政策の変更有無
随時 大量保有報告書の変更(シルチェスター等) 主要株主の保有比率変化
2027年3月26日頃 期末配当の権利付き最終日(権利確定3月30日−2営業日) 通期配当の実績

(d) M&A・出資検討の論点整理

買い手目線で大和証券グループのEVを検討する場合、規制資本(連結自己資本規制比率・レバレッジ比率)の水準と、大量のトレーディング資産・保有有価証券の時価変動リスクをどう織り込むかが論点になる。
オリックス銀行のケースのように銀行を取り込む場合は、のれんの計上水準と与信ポートフォリオの質(不動産集中度)がデューデリジェンス上の焦点となる。
シナジー面では、証券の顧客基盤と銀行の融資・信託機能を組み合わせた複合提案力が期待される一方、企業文化の違いによるディスシナジー(人材の摩擦・システム統合コスト)も現実的なリスクである。
デューデリジェンス論点としては、簿外・偶発債務の有無、キーマン(経営陣・トップセールス人材)の継続性、金融商品取引法・銀行法上の規制承認プロセスの見通しが挙げられる。
これらはM&A・出資の検討フレームであり、当社株式の売買の是非を論じる趣旨のものではない。


7. 学びのポイント

📚 着眼点1: 「フロー収益」と「ストック収益」を分けて見る目

大和のGM&IB部門(セールス&トレーディング・引受)は市況次第で四半期ごとに大きく振れるフロー収益、WM部門(リテール資産管理・銀行預金利鞘)とAM部門(AUM連動フィー)は残高に紐づくストック収益である。
大和が「ベース利益」という独自指標をわざわざ切り出して開示しているのは、この2種類の収益を経営自身が明確に区別し、ストック収益の比率を高める方向に舵を切っていることの表れである。

比喩でいえば、フロー収益は天候に左右される露天の売上、ストック収益は会員制の月謝収入に近い。
証券会社の企業価値評価では、この2つの収益の質の違いをPERやPBRという単一の倍率だけで語ると見誤りやすい。
ベース利益のような分解指標を確認し、収益のどの部分がストックでどの部分がフローかを切り分けて読む習慣が、証券・金融セクター分析の基本になる。

📚 着眼点2: 「金利のある世界」で銀行機能を取り込む意味

大和ネクスト銀行によるオリックス銀行買収は、単なる規模拡大ではなく、長らく続いた低金利環境から「金利のある世界」への移行を前提にした収益構造の作り直しである。
預金は潤沢だが運用対象に乏しい銀行(大和ネクスト)と、運用対象は持つが預金基盤が限られる銀行(オリックス銀行)を組み合わせることで、預貸利ざやという新しい収益源を厚くする狙いがある。

これは、金利のある世界では「お金を集める力」と「お金を貸し出す・運用する力」を両方持つプレイヤーが有利になる、という金融業界全般に通じる構造変化の縮図でもある。
証券会社が銀行機能を取り込む動きは大和に限らず、金利環境の変化が業界の競争構造そのものを書き換えつつある一例として捉えると理解が深まる。

📚 着眼点3: 相場観テーブル

指標 大和(8601) 同業平均(野村・SBI) 全上場中央値(参考) 評価コメント
PER(実績) 14.29倍 約8.7倍 - ストック収益比率の高さが野村・SBIより高い倍率として織り込まれている可能性
PBR(実績) 1.42倍 約1.17倍 - 東証の資本コスト経営要請下でも1倍超を維持
ROE 10.3% 約19.0% - SBIの28.0%は特殊要因を含む可能性があり単純比較は難しい
配当利回り 3.55% 約3.50% - 3期連続増配・配当性向約50%台で同業と概ね並ぶ水準
EV/EBITDA 17.88倍(NC定義別9.37〜17.88倍) - - 金融業のNC・EV/EBITDA解釈は事業会社と異なる点に留意
自己資本比率(会計上) 4.6% - - 金融業は高レバレッジが正常構造であり事業会社の目安と比較できない
格付(長期・R&I) A+ - - JCRはAA-(2026年上方修正)・S&PはBBB+(見通しポジティブ)
ベース利益 1,827億円 - - 中期目標1,500億円を超過達成
従業員数(連結) 14,984名 - - 平均勤続15.2年・平均年間給与1,793万円

参考情報

大和証券グループ本社は東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場し、金融商品取引法上の最終指定親会社として連結ベースでの自己資本規制の対象となっている。
監査法人は有限責任あずさ監査法人。
連結従業員数は14,984名(平均年齢41.6歳・平均勤続15.2年・平均年間給与1,793万円)で、欧州・アジア・米州に拠点を展開するグローバル体制を敷く。
取締役会は女性取締役比率が約32%まで高まっており、ガバナンス面での多様性確保が進んでいる。

主要株主構成(大量保有報告書ベース・5%以上開示)

順位 株主名 保有比率 区分
1 ブラックロック・ジャパン他グループ 7.66% 資産運用会社(2024年10月時点)
2 三井住友信託銀行他グループ 5.21% 金融機関(2025年9月時点)
3 野村證券他グループ 5.02% 証券会社(2024年1月時点)
4 シルチェスター・インターナショナル・インベスターズ 4.02% アクティビスト的ファンド(2023年10月時点・増配等の資本政策変更を要求することがあると開示)

データソースの時点差

項目 時点
財務データ(financials_as_of) 2026-03-31(FY2026本決算)
市場データ(market_data_as_of) 2026-08-15

出典一覧

  1. EDINET DB(財務データ・大量保有報告書・従業員数等)
  2. TDNet決算短信(FY2027 Q1実績)
  3. 中期経営計画「Passion for the Best 2026」開示資料
  4. 市場データ(price_fetcher・2026-08-15直近営業日終値)
  5. 2026年度 大和証券グループ経営方針 ~ Passion for the Best ~
  6. 大和証券Gのオリックス銀買収、金利ある世界の銀行再編と狙いを解く
  7. なぜ大和ネクストは、オリックス銀行を3,700億円で買ったのか
  8. 大和証券グループ、オリックス銀行を買収 3700億円で完全子会社化(日本経済新聞)
  9. ラップ口座のご案内(大和証券)
  10. 英シルチェスター、大和株5%取得(日本経済新聞)
  11. 東証の「資本コストや株価を意識した経営」要請から3年(第一生命経済研究所)
  12. 社債・格付情報(大和証券グループ本社)