株式会社かんぽ生命保険
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- まず見る1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
- 次に読む三菱UFJフィナンシャル・グループ
目次
- 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
- 長期契約と資産運用で利益をつくる
- 日本郵便の販売・保全網
- 資産運用と契約区分
- 中期計画と事業の再設計
- 2. 財務の実力
- 5期の主要財務推移
- FY2027/3 Q1と会社予想
- 金利・評価差額・健全性
- 3. 市場評価を読む — バリュエーション
- 現値と主要倍率
- 4. 同業比較 — 差分の論点
- 5. リスクと論点
- リスクマトリクス
- 債券評価差と資本への経路
- 募集品質とグループ管理
- 6. バリュエーション統合と論点整理
- 乖離の構造分析
- 条件分岐シナリオ
- 監視ポイント
- 企業取得・出資のデューデリジェンス
- 7. 学びのポイント
- 📚 着眼点1: 契約ストックと新契約コストを分ける
- 📚 着眼点2: 債券の含み損を損益・資本・ESRに分ける
- 📚 着眼点3: かんぽ生命と国内上場生保の指標位置
- 参考情報
- ガバナンス要点
- 大株主構成(FY2026/3有価証券報告書)
- データ時点
- 出典一覧
株式会社かんぽ生命保険(7181)銘柄分析レポート
かんぽ生命は、個人向け生命保険と郵便局網の募集・保全、長期契約に対応する資産運用を組み合わせる単一セグメントの保険会社である。
FY2026/3は経常収益5,625,758百万円、経常利益271,946百万円、純利益168,798百万円。
新契約減少が続く一方、運用利差と保険金支払の変化が利益を押し上げた。
2026年11月2日終値1,735円に対する会社予想PERは13.33倍、純資産PBRは0.45倍。
最大の論点は、契約基盤の縮小と、9月末の対象債券含み損5兆454億円を負債・ESRとの関係からどう評価するかである。
| 指標 | 値 | 基準・定義 |
|---|---|---|
| 時価総額 | 1兆8,802億円 | 2026年11月2日株価×2026年6月末自己株控除後株数 |
| 予想PER | 13.33倍 | FY2027/3会社予想EPS 130.12円 |
| 予想EV/EBITDA | 非適用 | 運用資産・保険負債があり一般企業と比較困難 |
| 予想配当利回り | 2.88% | FY2027/3予想DPS 50円÷1,735円 |
| 標準NC比率 | 非適用 | 保険給付・準備金を支える運用資産を余剰扱いできない |
| 広義NCAV比率 | 非適用 | 責任準備金を一般負債と同様に扱えない |
| 健全性スコア | N/A | ESR・EV・基礎利益等の保険固有指標を参照 |
1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
業界全体の構造は 保険業業界基礎ガイド を参照。本レポートはかんぽ生命固有の事業構造に絞る。
長期契約と資産運用で利益をつくる
かんぽ生命は終身・養老・定期・学資保険などの個人向け生命保険を引き受け、保険料を長期運用しながら死亡・満期・入院等の給付を行う。
利益は新契約、保有契約の継続・給付、運用収益、責任準備金と募集費用の変化に左右される。
保険料収入だけでなく、契約期間全体の支払・費用・運用を一体で読む必要がある。
FY2026/3の新契約件数は個人保険42.8万件で46.1%減、個人保険の保有契約は民営化前の再受再契約を含め1,772.5万件で5.8%減だった。
新契約年換算保険料は個人保険973億円(44.4%減)、第三分野56億円(21.3%減)。
保有契約年換算保険料は個人保険2兆6,833億円(6.0%減)、第三分野5,123億円(4.7%減)。大きな契約ストックは収入基盤だが、縮小が続けば将来の保険料収入と運用資金をともに押し下げる。
FY2026/3経常収益は5兆6,258億円(8.8%減)、経常利益は2,719億円(59.7%増)。
保険料等収入2兆1,886億円(30.6%減)、資産運用収益1兆3,107億円(9.6%増)、その他経常収益2兆1,262億円(17.2%増)だった。
保険金等支払金は4兆4,177億円(15.1%減)、資産運用費用は4,448億円(59.4%増)、事業費は4,133億円(4.2%減)。増益を運用・給付・準備金・新契約コストに分けて読む。
日本郵便の販売・保全網
日本郵便株式会社は郵便局を通じた募集・契約保全の主要な担い手であり、都市部から遠隔地まで全国の顧客接点を担う。
委託契約には募集、保全、保険料収納等が含まれ、かんぽ生命は郵便局網を支える費用も負担する。商品・顧客データは保険リスクと結び付くため、ネットワークの維持と情報管理・募集品質が競争力の条件となる。
FY2026/3の代理店手数料等は898億円(FY2025/3 1,114億円、FY2024/3 1,237億円)。委託条件が契約獲得・継続にどう連動するかは確認点だ。
郵便局網は強みだが、委託先の人員やグループ取引への依存もあり、デジタル手続で費用効率と品質を両立できるかが論点となる。
資産運用と契約区分
FY2026/3末の総資産は58兆4,422億円。
有価証券44兆9,313億円、金銭の信託8兆398億円、貸付金2兆1,348億円、現預金1兆7,530億円を保有し、保険契約準備金は48兆1,024億円。
運用資産は将来給付と資本規制を支えるため、一般企業の現預金のような余剰資産とは扱えない。
設備投資417億円、減価償却費385億円(FY2026/3)で、資本の中心は金融資産運用と契約管理にある。
FY2026/3末のESRは181%で、会社が適切水準とする150〜220%の範囲内だった。ESRは会社内部モデルによる経済価値ベースの指標で、会社の暫定的な経済価値貸借対照表に基づく。
FY2026/3末のEmbedded Valueは4兆2,565億円、FY2027/3 Q1末は4兆4,479億円。
FY2026/3 Q4からEV算定方法が変更されており、期をまたぐ比較では計算前提の確認が必要である。
事業は「生命保険業」の単一報告セグメントである。FY2026/3末の個人保険契約には、会社が新たに引き受けた契約と、民営化前の簡易生命保険契約を管理機構から再保険で引き受けた旧区分が含まれる。
旧区分契約は制度・契約条件や事務負担が新契約と異なるため、保有件数をみるときは内訳と収益への寄与を分ける必要がある。
中期計画と事業の再設計
2026〜2028年度の中期経営計画は「成長・挑戦フェーズ」と位置づけ、郵便局と連携した顧客接点の拡大、運用収益の強化、社会課題に対応する投資、AI・デジタル・人材を含む経営基盤づくりを掲げる。
2026〜2028年度は原則減配せず、計画最終年度(2028年度/FY2029/3)に修正利益1,900億円・修正ROE10%程度・1株EV成長率3年平均8%以上を目標とする。
DPS62円以上は修正利益目標達成が前提、総還元性向は中期平均55%程度。
FY2027/3会社予想とは区別する。中期経営計画、株主還元方針
2. 財務の実力
FY2026/3は利益回復と契約縮小が併存した。両者を分けてみる。
5期の主要財務推移
金額は百万円、1株指標は円、ROE・自己資本比率は%。連結・日本基準で、1株指標は2026年4月の3分割後。
| 指標 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益(百万円) | 6,454,208 | 6,379,561 | 6,744,134 | 6,165,335 | 5,625,758 |
| 経常利益(百万円) | 356,113 | 117,570 | 161,173 | 170,293 | 271,946 |
| 親会社株主帰属純利益(百万円) | 158,062 | 97,614 | 87,056 | 123,472 | 168,798 |
| 基礎利益(百万円、会社IRの億円表示を換算) | 429,700 | 192,300 | 224,000 | 242,100 | 418,900 |
| 総資産(百万円) | 67,174,796 | 62,687,388 | 60,855,899 | 59,555,692 | 58,442,160 |
| 負債合計(百万円) | 64,753,733 | 60,312,011 | 57,460,155 | 56,314,266 | 54,288,532 |
| 純資産合計(百万円) | 2,421,063 | 2,375,377 | 3,395,744 | 3,241,426 | 4,153,628 |
| 株主資本(百万円) | 1,544,511 | 1,570,502 | 1,622,055 | 1,707,640 | 1,753,470 |
| ROE(会社・EDINET表示) | 6.0% | 4.1% | 3.0% | 3.7% | 4.6% |
| 自己資本比率(EDINET表示) | 3.6% | 3.8% | 5.6% | 5.4% | 7.1% |
| 1株当たり純利益(円) | 125.05 | 83.16 | 75.82 | 107.52 | 152.55 |
| 1株当たり純資産(円) | 2,019.86 | 2,068.93 | 2,957.20 | 2,822.66 | 3,833.13 |
| 年間配当(円) | 30.00 | 30.67 | 31.33 | 34.67 | 41.33 |
| 営業CF(百万円) | −2,755,684 | −2,978,098 | −3,063,168 | −1,627,842 | −1,884,930 |
| 投資CF(百万円) | 3,111,700 | 3,216,799 | 2,721,796 | 2,386,460 | 1,786,069 |
| 財務CF(百万円) | −420,268 | −72,939 | 62,169 | 60,143 | −124,238 |
基礎利益は保険引受・運用を含む生保本業の指標で、FY2026/3は4,189億円。
過年度値は会社IRの億円表示を百万円へ換算した概数である。
経常利益2,719億円・純利益1,688億円とは定義が異なる。業績ハイライト
会社定義の修正利益は約1,715億円、修正ROEは約10.1%。修正利益は新契約初年度の標準責任準備金負担等を調整する。FY2026/3のキャピタル損益は債券売却損等を含みマイナス1,231億円。
経常利益・純利益の増加には運用・その他経常収益の伸びと保険金支払の減少が寄与した。**新契約成長だけの増益ではない。**契約数・年換算保険料を修正利益・基礎利益・運用利差と合わせ、持続性をみる。
営業CFは保険料・給付・責任準備金・運用資産取引に左右される。
FY2026/3のマイナス1兆8,849億円を一般企業の営業赤字と読まず、現金1兆7,530億円、有価証券44兆9,313億円、金銭の信託8兆398億円と合わせる。
事業会社型FCF・CCCは比較軸にならない。
FY2027/3 Q1と会社予想
2026年8月7日公表のFY2027/3 Q1(2026年4〜6月)は、経常収益1兆3,644億円、経常利益693億円、純利益341億円、EPS31.72円、修正利益366億円。
3か月実績を通期予想と単純比較・年率換算しない。
新契約16.7万件(前年同期比43.9%増)は5月の料率改定等が要因と会社は説明。
保有契約はFY2026/3末比1.0%減の1,754.7万件。直近の業績・見通し
FY2027/3の会社予想は経常収益5兆1,300億円、経常利益2,500億円、純利益1,410億円、EPS130.12円、年間配当50円、修正利益約1,550億円。
2026年4月1日に普通株式1株を3株へ分割しており、過年度EPS・BPS・DPSと株価の比較は分割後の単位にそろえた。2026年3月期決算短信
金利・評価差額・健全性
FY2026/3末の平均予定利率は1.59%、運用利回り2.14%、利差益2,555億円。ESR181%は会社が適切水準とする150〜220%の範囲内だった。
純資産4兆1,536億円のうちその他有価証券評価差額金は2兆4,485億円であり、純資産PBRと株主資本倍率は分けて読む。
2026年10月28日、会社はFY2027/3 Q2末(2026年9月30日)の含み損を公表した。対象は満期保有目的・責任準備金対応債券の国内上場分。
会社公表値:含み損5,045,450百万円、簿価26,522,079百万円、時価21,476,629百万円、含み益20,861百万円、差引損益マイナス5,024,588百万円。
含み損と含み益の単純差(マイナス5,024,589百万円)とは1百万円ずれるため、各値を別掲する。
この評価差は対象債券の時価変動であり、全額がFY2027/3損益または純資産の減少になったことを意味しない。
会社はFY2027/3の通期業績予想・配当予想を変更していない。
満期保有・責任準備金対応の区分、保険負債との経済価値の対応、債券売却・減損、ESRへの影響を次回決算で分けて確認する。2026年10月28日開示原文
3. 市場評価を読む — バリュエーション
会社予想PERは同業帯内だが、純資産PBRは低い。資本定義を分けて読む。
現値と主要倍率
| 指標 | 値 | 定義・算式 |
|---|---|---|
| 2026年11月2日終値 | 1,735円 | 株探時系列 |
| 自己株式控除後株数 | 1,083,672,718株 | 2026年6月30日会社開示 |
| 時価総額 | 1,880,172百万円 | 1,735円×1,083,672,718株 |
| FY2027/3予想EPS | 130.12円 | 2026年5月15日会社予想、分割後 |
| 予想PER | 13.33倍 | 1,735円÷130.12円 |
| FY2027/3予想DPS | 50円 | 会社予想、分割後 |
| 予想配当利回り | 2.88% | 50円÷1,735円 |
| FY2026/3純資産・BPS | 4,153,628百万円・約3,832.92円 | FY2026/3純資産÷2026年6月末株数 |
| 純資産ベースPBR | 0.453倍 | 時価総額÷純資産、または株価÷BPS |
| 株主資本ベースBPS・倍率 | 約1,618.08円・1.072倍 | FY2026/3株主資本1,753,470百万円÷株数、株価÷BPS |
| FY2027/3 Q1 EV・P/EV | 4,447,900百万円・0.423倍 | 2026年6月末EV44,479億円、時価総額÷EV |
| 標準NC・広義NCAV・CN-PER | 非適用 | 保険契約負債と運用資産を一体で評価する必要がある |
| EV/EBITDA・CCC | 非適用 | 保険業では一般事業会社との算定・比較可能性が低い |
時価総額は1,735円×1,083,672,718株=1,880,172,165,730円。
PER13.33倍×予想EPS130.12円は約1,734円、純資産PBR0.453倍×BPS3,832.92円は約1,736円で、株価と5%以内に整合する。
株価は11月2日、株数は6月30日、純資産はFY2026/3末基準。株価時系列
標準NCは現預金+短期有価証券−有利子負債、広義NCAVは流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計。
生保資産は給付・責任準備金に対応するため余剰資産とみなさず、NC・CN-PERは適用しない。
EV/EBITDAも保険負債を反映せず業種比較に適さない。
純資産PBR0.453倍の分母はFY2026/3末純資産4兆1,536億円(その他有価証券評価差額金2兆4,485億円を含む)。
株主資本1兆7,535億円基準では1.072倍。未償却のれん等を控除する会社独自の修正PBRとは区別し、会計純資産を経済価値資本や利益創出力と同一視しない。
DCFは掲載しない。
保険会社の営業CFを一般企業型FCFに置き換えられず、WACC・永久成長率・5期FCFの前提もそろわないため、仮定値による価値算定はしない。
PER・PBR・P/EVと修正利益・ESR・EVを併読する。
4. 同業比較 — 差分の論点
第一ライフグループとT&Dを比較対象とした。株価は2026年11月2日、予想指標はFY2027/3、実績・純資産はFY2026/3基準。
全上場中央値は比較可能な根拠がなく未確認。平均値は参考にとどめ、利益定義、連結構成、資本評価差、ESRモデルの違いを踏まえ、契約基盤・資本構成から倍率差を読む。
| 指標 | かんぽ生命 | 第一ライフグループ | T&D HD |
|---|---|---|---|
| FY2026/3経常収益 | 5,625,758百万円 | 11,308,275百万円 | 3,482,214百万円 |
| FY2026/3親会社株主帰属純利益 | 168,798百万円 | 436,597百万円 | 138,968百万円 |
| FY2026/3 ROE | 4.6% | 11.1% | 9.2% |
| FY2026/3の保険固有指標 | 基礎利益418,900百万円、修正ROE約10.1%、ESR181% | 内部ESR220% | 修正利益158,500百万円、ESR222% |
| 2026年11月2日終値 | 1,735円 | 1,792円 | 4,820円 |
| FY2027/3予想EPS | 130.12円 | 142.44円 | 281.33円 |
| FY2027/3予想PER | 13.33倍 | 12.58倍 | 17.13倍 |
| FY2026/3純資産BPS | 3,832.92円 | 1,181.36円 | 3,359.12円 |
| 純資産ベースPBR | 0.453倍 | 1.517倍 | 1.435倍 |
| FY2027/3予想DPS | 50円 | 72円 | 164円 |
| 予想配当利回り | 2.88% | 4.02% | 3.40% |
かんぽ生命は予想PERが同業2社の間、純資産PBRが低位。ただし利益構成、地域、資本・EVの定義、内部ESRモデルは異なる。
郵便局チャネル、第一ライフの海外事業、T&Dの国内生保を踏まえ、ROE・ESRの単純順位でなく利益の持続性・契約構成・資本余力・配当を比べる。
EV/EBITDAとNC比率は3社とも適用しない。
5. リスクと論点
契約縮小と金利・債券評価差の重なりが最大リスクである。含み損は保険負債・ESRと併せて評価する。
リスクマトリクス
| リスク要因 | 影響度 | 発生可能性 | 具体的な影響シナリオ | 対応状況・確認点 |
|---|---|---|---|---|
| 保有契約の減少と新契約回復の遅れ | 高 | 高 | 保険料収入と将来運用資金が減る一方、募集・保全の固定的費用が収益に対して重くなる。 | 2026年5月の料率改定、新契約数・年換算保険料・解約率・費用の推移を確認。 |
| 金利・債券評価・資産運用 | 高 | 中〜高 | 新規運用利回りの改善と既保有債券の評価損・売却損が同時に起こり、資産負債の経済価値差がESRや資本計画へ波及する。 | 2026年10月28日の含み損開示後、負債との対応・減損・売却・ESRを確認。 |
| 日本郵便チャネルへの依存 | 高 | 中 | 募集・保全の委託条件、人員、顧客接点が変化し、新契約数や保全品質、代理店費用へ影響する。 | FY2026/3の代理店手数料等898億円とサービス品質、契約更新条件を確認。 |
| 募集品質と顧客情報管理 | 高 | 中 | 認可前勧誘や非公開金融情報の不適切利用が再発すれば、顧客信頼・募集体制・当局対応へ波及する。 | 2019年問題からの改善に加え、2026年9月24日公表の是正措置と現場定着を確認。 |
| システム・サイバー・規制 | 高 | 中 | 情報漏えい、システム停止、保険業法・郵政民営化法の変更が契約管理、募集、資本運営に影響する。 | 会社のリスク管理委員会、ERM、システム・サイバー対策の実効性を確認。 |
発生可能性は会社公表値ではなく、FY2026/3有報と会社の定性開示に基づく。
会社はサイバー、経済・運用環境、日本郵便との関係、コンプライアンス、募集品質、情報漏えい、規制、システム、人材等を重要リスクに挙げる。事業等のリスク
債券評価差と資本への経路
対象債券の評価差は全額が損益・株主資本の減少を意味しない。範囲・金額は2章を参照。保有継続、売却・減損、負債割引率、ESRへの波及を次回開示で追う。
募集品質とグループ管理
2019年の不適切な契約乗換等は募集管理・評価制度・内部牽制を問う事例である。
2026年9月24日、グループの非公開金融情報取扱いとかんぽ生命の認可取得前勧誘に関する公表があった。
募集前承認、アクセス権限、代理店研修、取消・苦情開示から是正の定着を確認する。情報管理、認可取得前勧誘
6. バリュエーション統合と論点整理
乖離の構造分析
予想PER13.33倍は同業2社(12.58〜17.13倍)の間だが、純資産PBR0.453倍は下回る。
FY2026/3末純資産4兆1,536億円のうち評価差額金は2兆4,485億円で、株主資本ベース倍率は1.072倍。
契約縮小、金利感応度、郵便局チャネル・募集品質が倍率差の論点である。
会社はFY2026/3修正ROE10%に達し、修正PBRは1倍が見える水準と説明する一方、修正PER・P/EVに改善余地を認識した。
修正PBRは未償却のれん等を控除する会社独自定義で、通常PBRと分けて読む。
基礎利益・修正利益・純利益も別指標であり、還元目標を契約減少・債券評価差・ESRと両立する資本余力から評価する。
SCORとの覚書は旧契約の再々保険と再保険ビークル出資の検討段階で、確定取引ではない。SCORとの覚書
条件分岐シナリオ
| シナリオ | 成立条件 | 評価の焦点 |
|---|---|---|
| 上振れ | FY2027/3 Q1の新契約増が通年の年換算保険料へ表れ、FY2029/3の修正利益1,900億円・修正ROE10%程度に沿う。債券評価差と保険負債が整合し、ESR150〜220%を維持。 | 修正ROE・EV成長・ESRが裏付けられれば修正PBR・P/EV改善が材料となる。PERは同業帯12.6〜17.1倍内で、利益再現性と資本余力に見合う水準が焦点。 |
| 基準 | FY2027/3純利益1,410億円、修正利益約1,550億円、配当50円の会社予想に沿う一方、保有契約が減り運用収益が利益を支える。 | PER13.33倍、純資産PBR0.453倍、株主資本倍率1.072倍、P/EV0.423倍を区別。修正利益・ESRを伴う還元かを確認。 |
| 下振れ | 新契約回復が途切れて保有契約・年換算保険料が減り、債券評価損拡大で資産負債の経済価値対応が弱まる。ESRが150%へ接近、または下回る。 | 利益低下はPERに、ストレス後の資本創出力・ESR・EVはPBR評価に波及しうる。含み損全額を損益とみなさず、売却・減損・負債側の変化を分ける。 |
監視ポイント
| 時期 | イベント | 開示で確認する点 |
|---|---|---|
| 2026年9月24日 | 非公開金融情報・認可取得前勧誘に関する公表 | 情報利用範囲、募集前承認、是正措置の責任部署と進捗 |
| 2026年9月30日 | FY2027/3 Q2末 | 債券評価、運用収益、負債との金利感応度、ESR |
| 2026年10月28日 | Q2末有価証券含み損の開示 | 対象債券の内訳、売却・減損、業績・配当・資本見通し |
| 2026年11月13日(予定) | FY2027/3 Q2決算発表 | 経常利益・修正利益の進捗、新契約・年換算保険料、通期予想の変更有無 |
| 2026年12月31日 | FY2027/3 Q3累計期間末 | 保有契約、資産運用収益、金利差、募集品質 |
| 2027年3月29日 | FY2027/3期末配当の権利付き最終日 | 年間配当予想50円、自己株式控除後株数、配当方針の変更 |
| 2027年3月31日 | FY2027/3期末・配当基準日 | 契約業績、修正利益、ESR、EV、債券・保険負債評価 |
| 2029年3月31日 | 2028年度末(FY2029/3)・中期計画の最終年度末 | 修正利益1,900億円、修正ROE、1株EV成長、総還元方針の実績 |
権利付き最終日は3月31日基準日からT+2受渡しで算出。11月13日のQ2発表予定は11月2日時点の市場日程値で、変更時は会社IRで確認。株価・決算日程
企業取得・出資のデューデリジェンス
生保の価値は運用資産、責任準備金、規制資本、将来給付を一体で評価する。
現金控除型のネットキャッシュは使えない。
Embedded Valueは保有契約の将来利益と純資産等を組み合わせる保険固有指標で、一般的な企業価値EVとは異なる。
日本郵政は議決権49.75%を保有し、日本郵便が募集・保全を担う。取得・出資では支配関係、郵便局委託契約、業務継続、顧客情報、募集品質を価値算定に含める。
SCOR覚書は旧契約の移転対象、再保険料・担保、リスク残存、相手方信用、必要資本、契約保全、出資条件が確認点となる。
DDでは商品別の死亡・解約・給付・予定利率、責任準備金、資産負債の期間差・ヘッジ、債券評価差と負債の相殺、ESR感応度、再保険・偶発債務、顧客情報・システム、苦情・募集記録を確認する。
旧区分契約は条件・事務負担が異なるため、将来CFと資本負担を分ける。
7. 学びのポイント
📚 着眼点1: 契約ストックと新契約コストを分ける
FY2026/3は経常収益8.8%減、経常利益59.7%増、基礎利益73%増。運用収益、保険金支払、責任準備金、新契約初年度費用が利益を別々に動かす。
会社の修正利益は新契約初年度の標準責任準備金等を調整するため、純利益とは異なる。
基礎利益・修正利益と契約数・年換算保険料を同じFYで照合する。
新契約はFY2026/3に42.8万件、FY2027/3 Q1に16.7万件。
料率改定後の1四半期だけで回復とはみなさず、保有契約と募集費用を追う。
📚 着眼点2: 債券の含み損を損益・資本・ESRに分ける
10月28日開示の含み損5兆454億円はFY2026/3純利益の約29.9倍。
対象は満期保有・責任準備金対応債券の国内上場分で、通期予想・配当は据え置き。
全額を損益とみなさず、保険負債・評価差額金・売却損益・ESRへの影響を分けて確認する。
評価差は対象区分、簿価・時価、売却・減損、負債割引率、ESR・EVに分けて確認する。FY2027/3 Q1 EV4兆4,479億円は算定方法変更後の値。
📚 着眼点3: かんぽ生命と国内上場生保の指標位置
| 指標 | かんぽ生命 | 同業2社平均・範囲 | 全上場中央値 | 読み方 |
|---|---|---|---|---|
| FY2027/3予想PER | 13.33倍 | 平均14.86倍、12.58〜17.13倍 | 未確認 | 同業レンジ内。純利益と修正利益の差に注意。 |
| FY2026/3純資産PBR | 0.453倍 | 平均1.476倍、1.435〜1.517倍 | 未確認 | 純資産評価差額と株主資本倍率1.072倍を併読。 |
| FY2026/3会計ROE | 4.6% | 平均10.15%、9.2〜11.1% | 未確認 | 会計・利益定義が違うため単純順位にしない。 |
| FY2026/3修正ROE | 約10.1% | 同一定義の比較値なし | 未確認 | 会社独自の調整を含む。 |
| FY2026/3末ESR | 181% | 221% | 未確認 | 内部モデル・リスク許容度が異なる。 |
| FY2027/3予想配当利回り | 2.88% | 平均3.71%、3.40〜4.02% | 未確認 | 配当額と資本余力・修正利益を併読。 |
| FY2026/3基礎利益 | 418,900百万円 | 同一定義の比較値なし | 未確認 | 生保固有の保険・運用利益指標。 |
| FY2026/3修正利益 | 約171,500百万円 | 同一定義の比較値なし | 未確認 | 初年度準備金等を調整した会社指標。 |
| FY2027/3 Q1 P/EV | 0.423倍 | 同時点の比較値なし | 未確認 | EVの計算前提変更を考慮。 |
| FY2026/3純資産BPS | 約3,832.92円 | 1,181.36円・3,359.12円 | 未確認 | 株価とBPSの基準日をそろえる。 |
比較は第一ライフとT&D、株価は2026年11月2日、予想はFY2027/3、実績・純資産はFY2026/3。
全上場中央値は比較可能な根拠がなく未確認。
平均値は参考とし、利益・連結構成・資本評価差・内部ESRの定義差を踏まえて読む。
参考情報
ガバナンス要点
株式会社かんぽ生命保険は2006年9月設立、2007年10月に保険事業を開始。
2026年10月28日開示の代表執行役社長は大西徹。
資本金5,000億円、FY2026/3末従業員17,706人、支店82(2026年3月31日時点)。
サービス部は627か所(2026年4月1日時点)。
日本郵政が49.75%を保有し、日本郵便が募集・保全を担う。
指名委員会等設置会社で、取締役は男性30人・女性8人(21.1%)。
監査法人・主要取引銀行・海外拠点は確認資料になく推定しない。会社概要、従業員・支店・サービス部
大株主構成(FY2026/3有価証券報告書)
| 順位 | 株主名 | 保有比率 | 区分 |
|---|---|---|---|
| 1 | 日本郵政株式会社 | 49.75% | 親会社・事業会社 |
| 2 | 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 8.50% | 信託銀行・信託口 |
| 3 | 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 4.18% | 信託銀行・信託口 |
| 4 | 個人・不明(個別名非掲載) | 2.93% | 個人・不明 |
| 5 | 個人・不明(個別名非掲載) | 1.35% | 個人・不明 |
上位5位には個別名が開示されない株主が含まれるため、氏名を推測して補わない。日本郵政の保有比率と日本郵便の委託関係は、資本関係と営業チャネルの両面で事業前提となる。
データ時点
| データ種別 | 基準日 | ソース |
|---|---|---|
| 財務5期・株主構成・事業リスク | FY2026/3末(2026-03-31) | FY2026/3有価証券報告書・決算短信 |
| Q1実績・EV | 2026-06-30(2026-08-07公表) | FY2027/3 Q1決算・EV開示 |
| 対象債券の含み損 | 2026-09-30(2026-10-28公表) | 会社適時開示 |
| 株価 | 2026-11-02終値 | 株探株価時系列 |
| FY2027/3会社予想・配当 | 2026-05-15公表 | 2026年3月期決算短信・会社IR |