理解度チェック_セグメント編
このページ
目次
小売業セグメント分析 クイック確認
小売業セグメント分析_1_業態区分と市場規模・小売業セグメント分析_3_FP&A断面と投資視点を読んだ後の理解度チェック(全9問)。
🟦=基礎 / 🟨=応用。
各問の解答・採点観点は折りたたみ内。
第1部 業態区分と市場規模(小売業セグメント分析_1_業態区分と市場規模)
Q1. 8業態の分類と収益性の頂点 🟦
問題: 小売業の8業態をすべて挙げよ。また、FY2025でOPMが最も高い企業と、自己資本比率が最も堅牢な企業をそれぞれ答えよ。
解答と採点観点
解答: 8業態 = SPA(ファーストリテイリング・良品計画)/CVS(セブン&アイ)/GMS(イオン)/ドラッグ(マツキヨ・ツルハ・サンドラッグ・クスリのアオキ)/HF(ニトリ・PPIH)/家電量販(ビックカメラ・ノジマ)/食品SM(ライフ)/ディスカウント(PPIH・トライアル)。
OPM最高はファーストリテイリング(16.6%)、自己資本比率最堅牢はしまむら(88.3%)(FR 58.9%・ニトリ 65.0%・サンドラッグ 60.7%も上位)。
採点観点: ①8業態を列挙(業種の代表企業も含めて) ②OPM最高=FR 16.6% ③自己資本比率最堅牢=しまむら88.3%
出典: 第1部 §業態定義・§財務比較
Q2. 売上規模と収益性の逆相関 🟦
問題: 小売業15社は「売上規模が大きいほどOPMが低い」という逆相関が成立する。売上上位3社(セブン&アイ・イオン・FR)のOPMはどれか。この逆相関の構造的理由を1つ述べよ。
解答と採点観点
解答: セブン&アイ売上119,728億円でOPM 3.5%、イオン売上101,349億円でOPM 2.3%、FR売上34,005億円でOPM 16.6%。
逆相関の理由:GMS・CVS連結(大型売上)は薄利多売の業態構造(仕入小売、粗利25〜35%)なのに対し、FR(売上3位)は垂直統合SPA(中間マージン排除、粗利45〜50%)という業態の差が最大要因。
採点観点: ①3社の売上・OPM数値 ②逆相関の理由として「垂直統合(SPA)vs仕入小売(GMS)の粗利差」を指摘
出典: 第1部 §財務比較
Q3. 開示の落とし穴(イオンPER・しまむらROE)🟨
問題: イオンのPER 109.7xが「割高」を意味しない理由を述べよ。また、しまむらのROE 8.6%が「低収益」を意味しない理由を説明せよ。
解答と採点観点
解答: イオンのPER 109.7xは連結純利益の分母が「親会社帰属純利益」(非支配持分=子会社少数株主帰属を除く)であり極めて小さいから。
実態評価はEV/EBITDA 9.7xが業界中央値水準で正当。
しまむらのROE 8.6%は自己資本比率88.3%の「無借金経営の副作用」——ROE = OPM × 総資産回転率 × 財務レバレッジで、レバレッジが1.13xと最低水準ゆえ、OPM 8.9%・総資産回転率1.0xでも積算が低くなる。
ROEが低いのではなく、財務リスクを取らない経営の結果。
採点観点: ①イオン=非支配持分構造で純利益歪み・EV/EBITDAが実態 ②しまむら=無借金/レバレッジ最低の副作用でROE抑制
出典: 第1部 §財務比較・バリュエーション
競争構造・バリューチェーン(第1部)
Q4. 参入障壁と業態別競争構造 🟦
問題: 小売業8業態のうち、新規参入の脅威が最も低く競争が寡占となっている業態を2つ挙げよ。その障壁の正体は何か。
解答と採点観点
解答: SPA(FR・ユニクロ)とHF(ニトリ)。
SPAの障壁は垂直統合の模倣困難性(企画力×グローバルOEMサプライチェーン×直営店経験値の蓄積が参入に30〜40年かかる)。
HFの障壁はPB比率90%の商品企画力と自社物流・大型倉庫型店舗ノウハウ(ニトリが40年かけて構築)。
採点観点: ①SPA・HFの2業態 ②SPAの障壁=垂直統合の模倣困難性 ③HFの障壁=PB比率と自社サプライチェーン
出典: 第1部 §競争構造・5フォース
Q5. CCCの業態間逆転 🟨
問題: 小売業の中で「CCCがマイナス(負)の業態」と「CCCがプラス(正)の業態」それぞれ2つずつ挙げ、その理由を説明せよ。
解答と採点観点
解答: CCCマイナス(サプライヤー資金で在庫を回す):食品SM(DSO 0〜3日・DIO 10〜20日・DPO 30〜45日、CCC −15〜−30日)、ディスカウント(DPO 50〜80日の仕入交渉力、CCC −20〜−40日)。CCCプラス(自己資金で在庫を持つ):SPA(シーズン在庫でDIO 90〜120日、CCC +30〜+50日)、HF(大型家具の海上輸送リードタイムでDIO 100〜130日、CCC +30〜+60日)。
理由:現金回収がほぼ即時の業態はDSOが短く、支払サイトが長いほどCCCがマイナスに。
在庫回転が遅い(季節性・海外調達)業態はCCCがプラスになる。
採点観点: ①CCCマイナス2業態 ②CCCプラス2業態 ③理由としてDSO/DIO/DPOの業態差を指摘
出典: 第1部 §バリューチェーン・運転資本
Q6. 小売型P/L構造と業態別費目差 🟨
問題: 小売業(1-D 小売型)の売上から当期純利益までのP/L構造を順に述べよ。また、SPAとGMSで粗利率が20pt以上差がある理由と、ドラッグの利益源泉を答えよ。
解答と採点観点
解答: 売上高 − 売上原価(仕入) = 売上総利益(粗利)→ − 販管費(人件費・家賃・広告・物流)→ 営業利益 → ±営業外・特別損益 − 税 → 当期純利益。
SPA vs GMS 20pt差:SPAは企画→OEM製造→直販の垂直統合で「メーカーマージン+卸マージン」を内部化(仕入原価率50%、粗利50%)。
GMSは外部メーカーから仕入(仕入原価率70〜75%、粗利25〜30%)——差分は中間業者マージンの有無。
ドラッグの利益源泉はOTC医薬品の高粗利(30〜40%)と調剤技術料(粗利60%超)。
日用品や食品(粗利15〜25%)の薄利を医薬品・調剤で補う。
採点観点: ①売上総利益→販管費→営業利益→純利益の順 ②SPA-GMS粗利差の理由=垂直統合/中間マージン排除 ③ドラッグ=OTC高粗利+調剤技術料
出典: 第1部 §P/L構造・費目恒等式
第2部 FP&A断面と投資視点(小売業セグメント分析_3_FP&A断面と投資視点)
Q7. 業態別収益ドライバーの公式 🟦
問題: 小売業の収益ドライバー公式(売上=?)の一般式を示せ。さらに、SPA(FR)とCVS(セブン&アイ本部)それぞれの主要ドライバーを2つずつ述べよ。
解答と採点観点
解答: 売上 = 客数 × 客単価 × 店舗数 + EC売上(= 来店客数÷認知 × 買上点数×単価 × 出店数 + EC比率×総売上)。
SPA(FR)の主要ドライバー:①出店スピード×既存店売上成長(海外ユニクロ出店数×日販)、②海外比率(56.2%)の上昇(円安時の円換算売上増)。
CVS本部(セブン)の主要ドライバー:①FC加盟店数×日販(21,529店×67万円/日)、②ロイヤリティ率×加盟店売上(本部はFC手数料が「売上」)。
採点観点: ①一般式(客数×客単価×店舗数+EC)②SPAの出店×既存店成長・海外比率 ③CVSのFC加盟店数×日販・ロイヤリティ
出典: 第2部 §7-1
Q8. 人件費インフレの業態別感応度 🟨
問題: 最低賃金が+10%上昇した場合、食品SM(ライフ、OPM 3%・人件費率20%推計)とSPA(FR、OPM 16.6%・人件費率15%推計)への影響を比較せよ。
最低賃金影響を受ける非正規比率を60%と仮定した場合の感応度の差を定量的に示せ。
解答と採点観点
解答: 食品SM(ライフ):人件費 = 8,505×20% = 1,701億円。
影響対象 = 1,701×60% = 1,021億円。
+10%増分 = +102億円。
元OPM 254億円(3%)に対し−40%の利益圧縮(OPM 1.8%へ)。
FR:人件費 = 34,005×15% = 5,101億円。
影響対象 = 5,101×60% = 3,060億円。
+10%増分 = +306億円。
元OPM 5,643億円に対し−5%の利益圧縮(OPM 15.7%へ)。差の本質:薄利業態(OPM 3%)は人件費増の影響が非線形に拡大する。
OPM 3%の食品SMと16%のSPAでは感応度が8倍差になる。
採点観点: ①ライフの利益圧縮率(−40%) ②FRの利益圧縮率(−5%) ③OPM水準で感応度が非線形に差がつくことの指摘
出典: 第2部 §7-2・§8-1
Q9. 評価手法と業態別使い分け 🟨
問題: 小売業(在庫小売型)の第一の評価指標は何か。
また、FR(EV/EBITDA 19.3x)とノジマ(EV/EBITDA 4.3x)の大きな差はどう解釈すべきか。
ノジマを「超割安」と判断するのが誤りである理由を述べよ。
解答と採点観点
解答: EV/EBITDA+既存店売上成長率+ROEが基本(EV/EBITDAは出店投資サイクルを均し、既存店成長率は新規出店のかさ上げを除いた本質的収益力を測る)。
FR 19.3xはSPAの垂直統合プレミアム+海外成長軸の明確さへのプレミアム。
ノジマ 4.3xを「割安」と誤読するのが危険な理由:ノジマの売上の42.7%が**携帯代理店収益(キャリア手数料)**であり、電気通信事業法の規制強化(奨励金規制)でキャリア手数料が大幅減額されるリスクが構造的に存在する。市場は規制リスクを意識して低EV/EBITDAを付与している——これは「割安」ではなく「リスクプレミアムの控除」。
採点観点: ①EV/EBITDA+既存店成長率+ROEの3指標 ②FRプレミアム=垂直統合+海外成長 ③ノジマの低倍率=携帯規制リスクの織込(割安ではない)
出典: 第2部 §7-5・§7-7