📚 業界ナレッジ

陸運業中期経営計画方向性分析

【経済・陸運業】陸運業セグメント分析更新 2026-05-07

このページ

目次
  1. 1. Executive Summary
  2. 2. 中経サマリー比較表
  3. 3. 社別の中経詳細と方向性分析
  4. 3-1. ヤマトホールディングス(E04187)
  5. 3-2. NIPPON EXPRESSホールディングス(E36706)
  6. 3-3. SGホールディングス(E32292)
  7. 3-4. セイノーホールディングス(E04198)
  8. 3-5. センコーグループホールディングス(E04179)
  9. 3-6. 山九(E04324)
  10. 3-7. SBSホールディングス(E04224)
  11. 3-8. 福山通運(E04334)
  12. 4. 業界横断の方向性パターン
  13. 4-1. 目標達成力の評価
  14. 4-2. 共通する戦略方向
  15. 4-3. 格差の拡大
  16. 5. 投資視点での中経読解
  17. 5-1. 中経目標とバリュエーションの対比
  18. 5-2. 注目ポイント
  19. 6. データソース・手法
  20. §7 FP&A 7 項目で見るセグメント別構造
  21. 7-1 収益ドライバーのセグメント別差異
  22. 7-2 コスト構造のセグメント別差異
  23. 7-3 運転資本のセグメント別差異
  24. 7-4 資本集約度のセグメント別差異
  25. 7-5 評価手法のセグメント別差異
  26. 7-6 経営の打ち手のセグメント別差異
  27. 7-7 規制・産業政策のセグメント別差異
  28. 関連レポート

陸運業 中期経営計画(中経)方向性分析

作成日: 2026-05-07 | データソース: EDINET有報(get_text_blocks_structured) 対象: 陸運業上場8社の最新中期経営計画とKGI比較


1. Executive Summary

陸運業8社の中期経営計画(中経)をEDINET有報から抽出・比較した結果、業界全体で収益性向上とROE重視への明確な方向転換が進んでいる。
特に2024年問題を契機に、各社とも従来の「規模拡大」から「利益率・資本効率」へのシフトが鮮明。

重要な発見:

  1. ヤマトHDが中経目標(営業利益率6%・ROE12%)に対しFY2025実績0.8%・6.8%と大幅未達。新中経"ST2030"への進捗は道半ば
  2. SG HDが最も野心的な目標(ROE15%・ROIC10%)を掲げ、FY2031年に売上2.2兆円を目指す
  3. 山九が営業利益率8%・ROIC10%(FY2030)とニッチトップならではの高利益率目標を設定
  4. 日通HDがFY2028に売上3兆円・ROE10%の回復目標。FY2025のROE0.3%からのV字回復が鍵

2. 中経サマリー比較表

社名 中経名称 対象年度 売上目標(億円) 営業利益率目標 ROE目標 ROIC目標 配当性向目標
ヤマトHD ST2030 1st Stage FY2030 24,000 6.0% 12.0% 8.0% 40%以上
日通HD - FY2028 30,000 - 10.0% - 40%以上
SG HD SGH Story 2024 FY2031 22,000 - 15.0% 10.0% -
セイノーHD - 3-5年 - - 8.0% - -
センコーGHD - FY2025 9,100 4.4% - - -
山九 中計2026(見直し) FY2026 6,600 7.1% - 8.0% 40%水準
山九 長期目標 FY2030 7,000+ 8.0% - 10.0% 40%水準
SBS HD Harmonized Growth 2030 FY2030 7,000 4.5%† - - -
福山通運 Change & Growth 2026 FY2026 - 5.3% 6.5% - -
福山通運 中長期 - - - 8.0% - -

† 物流セグメントの営業利益率(連結全体ではない)


3. 社別の中経詳細と方向性分析

3-1. ヤマトホールディングス(E04187)

現行中経: "サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~"

指標 中経目標 FY2025実績 ギャップ
営業収益 24,000億円 17,627億円 -6,373億円
営業利益率 6.0%以上 0.8% -5.2pt
ROE 12.0%以上 6.8% -5.2pt
ROIC 8.0%以上 N/A -
配当性向 40%以上 41.1% 達成

方向性: 宅配便事業の利益率悪化が深刻。
FY2022の"Oneヤマト2023"(営業利益1,200億円目標)に対し、FY2025実績はわずか142億円。
新中経ではセグメント再編(EXP Business・Contract Logistics・Global・Mobility)で構造改革を進める。
配当性向目標は達成しているが、これは利益減少に伴う見かけ上の達成に過ぎない。

前任中経との比較:

3-2. NIPPON EXPRESSホールディングス(E36706)

中経目標(FY2028):

指標 目標 FY2025実績 ギャップ
売上収益 3兆円 25,748億円 -4,252億円
事業利益 1,500億円 515億円 -985億円
ROE 10.0%以上 0.3% -9.7pt
配当性向 40%以上 927.0% 異常値
総還元性向 55%以上 - -

方向性: FY2025の純利益26億円(ROE0.3%)は構造的な赤字ではなく、為替・のれん減損等の一時的要因。
FY2026予想では純利益600億円・ROE約7%に回復見込み。
アセット売却(セール・アンド・リースバック)でROIC5%未満資産を順次処分中。
欧州のcargo-partner統合・Simon Hegele参入でグローバル網を拡大。
配当性向はFY2026に正常化(約40%)の見込み。

3-3. SGホールディングス(E32292)

現行中経: "SGH Story 2024"(FY2031目標)

指標 FY2031目標 FY2025実績 ギャップ
営業収益 22,000億円 14,792億円 -7,208億円
営業利益 1,400億円 879億円 -521億円
純利益 980億円 581億円 -399億円
ROE 15.0% 10.4% -4.6pt
ROIC 10.0% N/A -

方向性: 業界で最も野心的な目標。
FY2025時点でROE10.4%は既に高水準。
佐川急便の宅配No.2地位とSGムーバー(引越・物流)の総合力を活かす。
前任計画(FY2025: 売上1.65兆円・営業利益1,600億円)に対し売上は未達だが利益は健全。
2024年問題を逆手に取った「佐川急便の選別強化・運賃改定」が利益率改善の主因。

3-4. セイノーホールディングス(E04198)

目標: PBR1倍超の早期実現に向け、3-5年でROE8.0%以上

指標 目標 FY2025実績 ギャップ
ROE 8.0% 5.3% -2.7pt

方向性: 具体的な中経名称の開示が控えめで、定性目標中心。
全国路線網の強みを活かしつつ、2024年問題への対応として共同配送・ターミナル統合を推進。
前任"バリューアップチャレンジ2020"では売上6,090億円・営業利益300億円を目標に、売上は達成(7,374億円)したが利益は辛うじて達成(299億円)。

3-5. センコーグループホールディングス(E04179)

目標(FY2025年度):

指標 FY2025目標 FY2025実績 達成度
営業収益 9,100億円 8,546億円 93.9%
営業利益 400億円 350億円 87.4%
営業利益率 4.4% 4.1% 93.2%

方向性: 3PL特化の成長企業として着実に目標に近づいている。
前任"SIP21"(FY2021目標: 売上7,000億円・営業利益280億円)を売上で未達だったが、FY2025には売上8,546億円と当時の目標を超過。
物流事業・商事貿易事業の2本柱で安定成長。
年次目標方式(1年ごとに更新)を継続採用。

3-6. 山九(E04324)

現行中経: "中期経営計画2026"(見直し版)+ 長期目標FY2030

指標 FY2026目標 FY2030目標 FY2025実績
売上高 6,600億円 7,000億円+ 6,068億円
営業利益率 7.1% 8.0% 7.2%
ROIC 8.0% 10.0% N/A
配当性向 40%水準 40%水準 56.2%
海外売上成長 +25%UP +65%UP -

方向性: 営業利益率7.2%は既にFY2026目標7.1%をクリア。
ニッチトップの重量物輸送で高い利益率を維持。
海外展開(+65%UP by FY2030)が成長の鍵。
前任"中計2020"の営業利益率5%目標を安定的に超過(6-7%で推移)しており、目標達成力が高い。

3-7. SBSホールディングス(E04224)

現行中経: "Harmonized Growth 2030"

指標 FY2030目標 FY2025実績 ギャップ
連結売上高 7,000億円 4,903億円 -2,097億円
物流セグ営業利益率 4.5% 4.3% -0.2pt

方向性: 3PL特化の中堅成長株。
前任計画の営業利益率5.5%・自己資本比率30%に対し、FY2025実績は4.3%・26.1%と未達。
M&Aを活用した規模拡大と3PL深化のバランスが課題。
新中経では"Harmonized Growth"(調和のとれた成長)を掲げ、利益率よりも成長に重きを置く方向に転換。

3-8. 福山通運(E04334)

現行中経: "Change & Growth 2026"

指標 FY2026経過目標 中長期目標 FY2025実績
営業利益率 5.3% - 2.4%
ROE 6.5% 8.0% 3.9%

方向性: 前任"Challenge, Change 2023"の営業利益率7.0%目標に対しFY2025実績2.4%と大幅未達。
中国・四国地盤の路線便事業者として、2024年問題の影響を直撃。
運賃改定・路線網再編が急務。
ROE8.0%の中長期目標は遠い道のり。


4. 業界横断の方向性パターン

4-1. 目標達成力の評価

社名 前任中経達成度 現行中経進捗 評価
ヤマトHD 大幅未達 早期・厳しい 要改善
日通HD 部分達成 回復軌道 注目
SG HD 概ね達成 順調 優秀
セイノーHD 達成 推移中 安定
センコーGHD 超過達成 順調 優秀
山九 安定達成 既に達成 最優秀
SBS HD 未達 出直し 要注視
福山通運 大幅未達 厳しい 要改善

4-2. 共通する戦略方向

  1. 2024年問題対応が全社の最優先課題: ドライバー確保・省力化投資・運賃改定
  2. ROE・ROIC重視へのシフト: 規模拡大から資本効率への明確な転換
  3. 3PL・ロジスティクスソリューションの強化: 物流DX投資が共通項
  4. 海外展開の強化: 日通HD(グローバル網)、山九(海外売上+65%)、SG HD(アジア展開)
  5. 配当・株主還元の強化: ヤマトHD(40%→維持)、日通HD(30%→40%引上げ)

4-3. 格差の拡大

業界内で明確な二極化が進行:


5. 投資視点での中経読解

5-1. 中経目標とバリュエーションの対比

社名 ROE目標 FY2025実績ROE PBR 目標達成時のPBR感
ヤマトHD 12.0% 6.8% 1.0x 1.5-2.0x
日通HD 10.0% 0.3% 1.2x 1.2-1.5x
SG HD 15.0% 10.4% 1.5x 2.0x+
山九 - 11.9% 1.6x 現状維持
SBS HD - 13.0% 1.8x 現状維持

5-2. 注目ポイント


6. データソース・手法


§7 FP&A 7 項目で見るセグメント別構造

陸運業 8 社の中期経営計画を FP&A 7 項目で横断比較し、セグメント(業態)ごとに何が経営の打ち手として効くかを整理する。

7-1 収益ドライバーのセグメント別差異

7-2 コスト構造のセグメント別差異

7-3 運転資本のセグメント別差異

7-4 資本集約度のセグメント別差異

7-5 評価手法のセグメント別差異

7-6 経営の打ち手のセグメント別差異

7-7 規制・産業政策のセグメント別差異


関連レポート


免責事項

本レポートは情報提供のみを目的としており、投資助言・推奨を構成するものではありません。中経目標は企業の計画値であり、実績を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いいたします。