📚 業界ノート

株式会社コーセーホールディングス

【経済・その他製品】その他製品企業バリュエーション分析更新 2026-10-19

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目次
  1. 1. 事業構造 — ブランドを国内外の顧客へ届ける
  2. 2. 財務の実力 — 高い財務余力と利益回復の検証
  3. 指標と健全性チェック
  4. 運転資本と会社予想の読み方
  5. 3. 市場評価を読む — 期末スナップショットとNC 2軸
  6. 4. 同業比較 — 利益率と投資段階の違い
  7. 倍率の参照レンジ
  8. 5. リスクと論点 — ブランド力が利益へ届くか
  9. 6. バリュエーション統合と論点整理
  10. 乖離の構造
  11. 条件分岐シナリオ
  12. 監視ポイント
  13. M&A・出資検討の論点
  14. 7. 学びのポイント
  15. 📚 着眼点1: NCは算式と株式価値のbasisを揃えて読む
  16. 📚 着眼点2: 利益率・ROE・FCFは別の問いに答える
  17. 📚 着眼点3: 海外比率は為替影響を分けて考える
  18. 相場観の確認表
  19. 参考情報
  20. 出典
  21. 数値の期間と留保

株式会社コーセーホールディングス(4922)銘柄分析レポート

SUMMARY
  • コーセーは「コスメデコルテ」「雪肌精」などの化粧品ブランドと日常消費向けコスメタリー商品を、国内外で販売して収益を得る。
  • FY2025/12は売上高330,193百万円、営業利益18,467百万円、自己資本比率72.2%。ただしROE5.4%、FCFは-6,606百万円で、資産余力と資本収益性に差がある。
  • 最大の論点は、FY2026/12上期に営業減益となった状態から通期計画へ戻せるか、そして2030年の営業利益率12%目標へ向けて利益率とROICを継続的に引き上げられるか。

1. 事業構造 — ブランドを国内外の顧客へ届ける

コーセーは1946年創業の化粧品グループで、2026年1月1日に純粋持株会社体制へ移行した。
持株会社がグループ戦略・資本配分・ガバナンスを担い、各事業会社がブランド運営と顧客接点を維持する設計を掲げている(会社概要、トップメッセージ)。
FY2025/12末の連結従業員は13,135人で、契約・パート等を含む。

収益の中心は化粧品である。
高価格帯のスキンケア・メイクアップを含む「コスメデコルテ」「雪肌精」「ONE BY KOSÉ」「アルビオン」などに加え、海外ではTarte、Pañpuri等を展開する。
日常使いの商品を幅広く扱うコスメタリーが第2の柱となる。
ブランド間で価格帯や販売チャネルが異なるため、連結売上の伸びだけでなく、どのブランド・地域の商品構成が利益に寄与したかを見る必要がある。

FY2025/12セグメント 売上高(百万円) 売上構成比 営業利益(百万円) 営業利益率 FY2026/12上期 売上高/対FY2025/12上期増減 FY2026/12上期 営業利益/対FY2025/12上期増減
化粧品 262,303 79.44% 16,768 6.39% 133,305 / +4.2% 7,875 / -19.5%
コスメタリー 64,493 19.53% 6,252 9.69% 30,185 / -3.4% 1,411 / -62.6%
その他 3,396 1.03% 1,695 49.91% 1,425 / +5.5% 614 / -15.0%

(注: セグメント利益には連結調整等があり、合計は連結営業利益と一致しない。出典: FY2025/12有価証券報告書、FY2026/12半期報告書)

FY2025/12売上の約79%を化粧品が占める一方、営業利益率はコスメタリーが高かった。 FY2026/12上期は化粧品の増収が減益となり、コスメタリーは減収と大幅減益が重なった。
価格・商品構成、販売促進費、原価や為替のどの要因が利益を押し下げたかは、このセグメント数値だけでは分解できない。
次回開示では売上成長と利益率を分けて確認したい。

需要を左右するのは、ブランドごとの認知・継続購買、新商品、商品ミックス、国内の店頭・EC・免税などの販売接点、海外市場での受容である。
会社は「日本を基盤にしつつ、地域ごとに適した成長を目指す」方針と、外部のブランドや地域資産を取り込む成長を掲げる。
TarteやPañpuriは自社内の開発だけに依存しない成長の例として位置づけられる。
ブランドを増やすだけでなく、取得後の顧客維持、販促費、在庫、投下資本利益率を測ることが重要となる。
2030年目標は売上高CAGR5%以上、営業利益率12%以上、EBITDAマージン18%以上、ROIC10%以上(中長期ビジョン)。

FY2025/12の海外売上比率は34.8%。
FY2026/12上期は海外売上比率38.6%だった。
上期の地域別売上は日本101,196百万円で対FY2025/12同期比-3.4%、アジア26,141百万円で+24.0%、北米32,658百万円で+5.9%、その他4,918百万円で+28.3%。
地域構成の変化は成長機会となる一方、為替換算、各市場の消費環境、現地流通、規制の違いも連結収益に反映される。

FY2025/12の売上総利益率は約69.0%、販管費率は約63.45%、研究開発費率は約2.10%。
ブランド販促、販売網、研究開発・品質保証、物流、海外販社運営が利益率を動かすが、費用の固定・変動やブランド別配賦は特定できない。
設備に加え、ブランド資産や販促投資も収益を支える。
運転資本では在庫が大きく、需要予測と地域・チャネル間の配置が資金回転を左右する。
業界のバリューチェーンは化学業界基礎ガイドを参照。

2. 財務の実力 — 高い財務余力と利益回復の検証

財務の要点は、厚い自己資本と利益回復の途上が併存していることだ。 売上高はFY2021/12〜FY2025/12に増加。
営業利益はFY2022/12が高く、FY2023/12に低下し、FY2025/12まで回復途上。
FY2024/12純利益は中国関連減損の影響を受けたため、FY2025/12の増益は営業成長と減損影響一巡を分けて見る。

項目 FY2021/12 FY2022/12 FY2023/12 FY2024/12 FY2025/12
売上高(百万円) 279,389 289,136 300,406 322,758 330,193
売上高成長率 — +3.5% +3.9% +7.4% +2.3%
営業利益(百万円) 13,294 22,120 15,985 17,364 18,467
営業利益率 4.8% 7.6% 5.3% 5.4% 5.6%
営業利益成長率 — +66.4% -27.7% +8.6% +6.4%
純利益(百万円) 11,986 18,771 11,663 7,510 15,114
EPS(円) 210.11 329.03 204.43 131.62 264.84
総資産(百万円) 308,386 359,600 371,657 386,793 393,454
流動資産(百万円) 205,031 244,481 256,732 240,336 228,947
負債合計(百万円) 67,087 84,251 88,619 94,517 88,670
純資産(百万円) 241,299 275,349 283,038 292,276 304,784
自己資本比率(会社開示) 73.1% 72.0% 71.6% 70.4% 72.2%
現金(百万円) 80,051 94,063 105,669 107,757 90,747
営業CF(百万円) 23,280 20,261 30,443 18,379 11,138
投資CF(百万円) -5,850 -6,311 -11,227 -8,932 -17,744
FCF(営業CF+投資CF、百万円) 17,430 13,950 19,216 9,447 -6,606
財務CF(百万円) -7,363 -7,313 -9,677 -8,684 -10,000
減価償却費(百万円) 10,379 9,743 9,557 9,778 10,879
設備投資(年報開示額、百万円) 10,188 6,847 5,815 31,774 21,223
売上原価(百万円) 77,465 83,620 89,209 100,185 102,219
売上債権(百万円) 39,420 52,451 44,405 50,020 56,075
棚卸資産(百万円) 57,337 69,076 70,881 69,632 73,019
仕入債務(百万円) 6,733 7,913 8,628 7,356 9,204
CCC(日、期末残高ベース) 289.9 333.2 308.7 283.5 289.9
1株配当(円) 120 140 140 140 140
配当性向 57.1% 42.5% 68.5% 106.4% 52.9%

(出典: EDINET、株式会社コーセーホールディングスFY2021/12〜FY2025/12有価証券報告書。CF/FCF、成長率は記載値から算出)

FY2025/12売上は対FY2024/12+2.3%、営業利益は対FY2024/12+6.4%、営業利益率5.6%。
現金はFY2024/12末比で減り、営業CFは11,138百万円、FCFはマイナスだった。
年報設備投資21,223百万円とCF上の固定資産取得支出21,391百万円は別定義で、合算しない。

FY2026/12上期売上は164,915百万円で対FY2025/12上期+2.7%、為替影響を除くと+0.2%。
営業利益6,617百万円は-41.5%、経常利益8,816百万円は-8.2%、純利益5,682百万円は-19.9%。
FY2025/12上期には固定資産売却益2,715百万円があり、純利益比較には一過性要因も含まれる。

指標と健全性チェック

チェック項目 FY2025/12値または対象期間 判定基準 判定・留意点
自己資本比率 72.2% 40%超 ✅ 会社開示値
借入金と現金 借入金799/現金90,747百万円 借入金<現金 ✅ 取得済み科目では充足。欠測負債項目を含まない
流動比率 362.2% 150%超 ✅ 会社開示値
利益剰余金 250,470百万円 正 ✅
営業CF FY2023/12〜FY2025/12 3期連続黒字 ✅
配当 FY2023/12〜FY2025/12各140円 3期連続支払い ✅
EPS前年比 +101.2% プラス ✅ FY2024/12の減損影響を含む反動
ROE 5.4% 8%超を参考基準 ❌未達
営業利益率 5.6% 業界平均超 未判定。公式業界平均を取得できず

(出典: EDINET FY2025/12有価証券報告書、会社開示の2026-08-06第2四半期決算。目安は一般事業会社向けで、化粧品業界平均ではない)

健全性スコア88/100は9項目の独自チェックと別評価。

TIP

高い自己資本比率は財務上の耐久力を示すが、株主資本を効率よく利益へ変換できていることまでは示さない。
コーセーではROE5.4%、営業利益率5.6%、FY2025/12 FCFマイナスを並べ、現金の厚さと資本効率を別々に追う。

運転資本と会社予想の読み方

CCCは売上債権÷売上高×365+棚卸資産÷売上原価×365−仕入債務÷売上原価×365。
FY2025/12は売上債権日数62.0日、在庫日数260.7日、仕入債務日数32.9日、CCC289.9日。
FY2024/12の283.5日から小幅に伸び、在庫日数が大半を占める。
表のFY2021/12〜FY2025/12系列は期末残高による近似で季節性をならしていない。

FY2023/12〜FY2025/12の経営者予想精度は、取得した決算履歴から予想・実績を再構成できず誤差率を算出していない。
FY2026/12会社予想は売上350,000百万円、営業利益20,000百万円、経常利益21,000百万円、純利益12,100百万円、EPS213.21円、年間配当150円(2026年8月6日公表)。
上期営業利益6,617百万円から計画へ達するには下期に13,383百万円が必要で、FY2025/12下期の7,148百万円を大きく上回る。
利益計画の達成を断定せず、次の決算でセグメント別利益、販促費、為替、在庫を確認したい。

3. 市場評価を読む — 期末スナップショットとNC 2軸

株価データはFY2025/12末の有報スナップショットであり、2026年10月19日の評価ではない。 EDINET時価総額317,576.6百万円は発行済60,592,541株basisで、逆算価格相当は5,241.18円。
自己株3,518,215株を除く57,074,326株basisの株式価値は299,137.0百万円。
一株指標との整合には株数basisの違いを反映する。
2026年10月19日の市場評価ではない。

FY2025/12実績EPS264.84円に対する実績PERは19.79倍、会社のFY2026/12予想EPS213.21円に対する予想PERは24.58倍。
後者はFY2025/12末の価格proxyと2026年8月の業績予想を組み合わせた非同時点の参考値である。
FY2025/12 BPS4,979.35円に対するPBRは1.05倍。
FY2026/12予想配当150円を期末株価相当で割った予想利回りは2.86%となる。

標準NCは現預金+短期有価証券−短期借入金−1年内返済予定長期借入金−長期借入金−社債で定義する。
リース負債は標準NC・標準EVの借入金控除から除外した。
短期有価証券・一部負債の独立値を取得できなかったため、下表の「既知科目NC」は現預金から取得できた短期借入金だけを引いた暫定値で、厳密なNCの上限・下限とは呼ばない。
広義NCAVは流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計で計算する。
FY2025/12は228,947+19,852×0.7−88,670=154,173百万円。

項目(百万円) FY2024/12 FY2025/12
現金及び現金同等物 107,757 90,747
短期有価証券 — —
投資有価証券 16,750 19,852
取得できた短期借入金 831 799
既知科目NC(現金−上記借入金) 106,926 89,948
既知科目NC比率 26.1% 30.1%
広義NCAV 157,544 154,173
広義NCAV比率 38.5% 51.5%

(出典: EDINET FY2024/12・FY2025/12有価証券報告書のBS・期末市場データ。算式は本レポートで計算。欠測科目をゼロ補完していない)

各比率は自己株控除後の年度末株式価値が分母。
短期有価証券の欠測はゼロ補完していない。
投資有価証券の70%評価は簡便係数で、換金額や含み損益を示さない。
NCの大きさと現金を利益率・ROIC改善へ結びつける力は別の論点である。

予想PERを使うCN-PERは「予想PER×(1−NC比率)」で計算し、既知科目NCベースで約17.19倍、広義NCAVベースで約11.91倍となる。
ただし標準NC側は欠測が残る暫定値で、広義NCAV側は流動資産を一律に評価した比率調整である。
いずれも換金価値や企業全体の適正倍率を直接示すものではない。

4. 同業比較 — 利益率と投資段階の違い

FY2025/12の営業利益率はPOLAを下回り、資生堂は営業赤字だった。 コーセーをPOLA・オルビス、資生堂とFY2025/12で比べる。
事業構成・会計基準・利益局面・株式価値basisに差があるため、倍率を業界標準とみなさない。
市場指標は各社の年度末値で、2026年10月19日時点ではない。

指標 コーセーHD POLA・オルビスHD 資生堂
FY2023/12→FY2025/12売上高(百万円) 300,406→322,758→330,193 166,307→173,388→170,285 973,038→990,586→969,992
営業利益(百万円) 18,467 15,693 -28,788
FY2023/12→FY2025/12営業利益率 5.3→5.4→5.6% 10.0→9.2→9.2% 2.9→0.8→-3.0%
FY2025/12末時価総額(百万円) 299,137(自己株控除後) 288,431(自己株控除後) —(未取得)
自己資本比率 72.2% 82.3% 47.4%
ROE 5.4% 5.8% -6.6%
PER 19.79倍 実績 / 24.58倍 FY2026/12予想proxy 30.4倍 FY2025/12 basis N/M 赤字
PBR 1.05倍 1.77倍 —
配当利回り 2.86% FY2026/12予想proxy 4.00% FY2025/12 basis —
標準NC比率 30.1% 既知科目 23.2% —
EV/EBITDA 7.13倍 標準NC basis 9.29倍 —
営業CF(百万円) 11,138 18,536 109,890
FCF(百万円) -6,606 26,414 66,466

(出典: EDINET各社FY2025/12有価証券報告書・年度末市場データ。時点・会計基準・市場価値のbasisには差がある)

FY2025/12はコーセーの売上規模がPOLAを上回る一方、営業利益率は下回る。資生堂はFY2025/12営業赤字のため倍率比較に限界がある。

標準NC控除後EV/EBITDAは、コーセーが自己株控除後時価総額299,137百万円から既知科目NC89,948百万円を差し引き、FY2025/12 EBITDA29,346百万円(営業利益18,467+減価償却10,879)で除した約7.13倍。
広義NCAVを控除した場合は約4.94倍となる。
POLAは標準NC66,856百万円、EBITDA23,863百万円を使い約9.29倍。
コーセーの標準NCは欠測項目があり、POLAの算定basisと完全に揃わない。
資生堂はFY2025/12営業赤字で算定を示さない。
業界CCC中央値も得られておらず、同業比較の運転資本効率は保留とする。

倍率の参照レンジ

評価軸 倍率 参照理由・比較上の制約
PERの低位参考 19.8倍 コーセーFY2025/12実績PER。期末株価proxyと実績EPSの組合せ
PERの中央参考 24.6倍 FY2026/12会社予想EPSに対する非同時点proxy
PERの高位参考 30.4倍 POLA FY2025/12基準。2社だけの比較で業界上限ではない
自社5期PER範囲 19.8〜74.5倍 FY2021/12〜FY2025/12年末。利益変動が大きく、安定した適正レンジを意味しない
EV/EBITDA・広義NCAV控除 4.94倍 現金・短期証券以外の流動資産も含む調整値
EV/EBITDA・既知科目NC控除 7.13倍 欠測項目があるFY2025/12標準NC proxy
EV/EBITDA・POLA参考 9.29倍 FY2025/12、2社比較の一方。会計/事業構成差を含む

(出典: EDINET FY2025/12市場データと有価証券報告書。倍率は本レポートの定義で再計算)

倍率は適正価格ではなく、利益指標・NC定義による違いを見る参照値。
FY2021/12〜FY2025/12の年末PERは74.53、43.83、51.73、54.54、19.79倍と振れが大きく、単一倍率を固定しにくい。
信頼できるWACC、永続成長率、5期FCFが揃わないためDCFは掲載しない。

5. リスクと論点 — ブランド力が利益へ届くか

要因 影響度 発生可能性 業績への経路・開示上の対応
ブランド競争、嗜好変化、新商品・デジタル対応 高 中 販売数量・商品ミックスの悪化や販促費増、値引き・在庫負担に波及。ブランド施策の効果を売上だけでなく利益率と在庫で確認
中国・海外需要、為替、地政学・貿易環境 高 中 現地販売、訪日需要、換算売上、販路や供給に影響。海外売上比率がFY2025/12の34.8%からFY2026/12上期38.6%へ上昇したため地域別開示を追う
原材料・水資源、気候、自然災害・供給制約 中〜高 中 調達コスト、工場稼働、物流、製品供給に波及。有報は原材料調達・水・気候・災害をリスクとして掲げる
品質・製品安全、法規制・表示、情報管理、人材 高 低〜中 回収・賠償・行政対応・信用毀損、販売中断や専門人材不足につながる。重大事案、再発防止、品質・人材関連の開示を確認

(出典: FY2025/12有価証券報告書「事業等のリスク」。影響度・発生可能性の区分は分析上の整理)

発生可能性の区分は有価証券報告書の記述を分析上整理したもので、会社が示した定量確率ではない。

WARNING

バリュートラップの論点は、NCの比率が高く見えても低いROE・利益率・FCFが長期化する場合に、資産余力が価値創出へつながらないこと。
FY2025/12の標準NCは欠測科目を含む暫定値であり、現金・短期証券の換金性や必要運転資金も別途見る必要がある。

FY2025/12は自己資本比率72.2%、現金90,747百万円、ROE5.4%、営業利益率5.6%、FCF-6,606百万円。
在庫日数は約261日。
ブランドや地域への投資は、売上だけでなく利益率・ROIC・在庫の現金化で見る。

6. バリュエーション統合と論点整理

乖離の構造

FY2025/12末の市場評価では実績PER19.79倍、PBR1.05倍だった。
FY2026/12予想PER24.58倍は、その期末価格相当と会社予想EPSを組み合わせた参考値である。
POLAのFY2025/12 PER30.4倍と比べると低いが、コーセーの利益率5.6%はPOLAの9.2%より低く、上期は営業利益が減少した。
資生堂は赤字で比較倍率を置けない。
よって倍率差をカバレッジやブランド力だけで説明せず、持続的な利益率、海外構成、上期後の回復、FY2025/12期末という古い価格basisを併せて読む。

貸借対照表には流動資産と現金が厚く積み上がり、広義NCAV比率は約51.5%となる。
一方でROEとFCFは弱く、流動資産の中には在庫や売上債権が含まれる。
株式価値から運転に必要な資本をどこまで切り離せるか、買収・販促・設備投資が利益とキャッシュを生むかが、資産倍率だけでは見えない評価差を生む。

条件分岐シナリオ

  1. 下期の利益が戻る場合:通期計画へ近づき、化粧品利益率が回復、コスメタリーの急減益が収束すれば、利益率・ROICも評価軸として重みを増し得る。差が広がる場合は、会社予想EPS、費用、商品ミックス、為替の持続性を確認する。
  2. 海外ブランドが収益を伴って伸びる場合:アジア・北米で為替換算以外の成長と利益率が保たれれば、地域分散と成長資産の評価が強まり得る。販促費や買収後費用が売上を上回る場合は、規模より利益率・投下資本効率が重視される。
  3. 構造改革が恒常的なキャッシュ改善に結びつく場合:退職後に固定費が下がり、一時損益を除く営業利益とFCFが改善すれば再編後の収益力が判断材料になる。一時的な利益計上にとどまれば、継続収益との区別が重要となる。

2026年10月9日、会社は早期退職募集に199人が応募したと発表した。
当初想定は約80人。
会社見込みはFY2026/12第3四半期に特別損失約25億円、資産売却収入約33億円・売却益約26億円で、同日の発表では通期予想を修正していない。
費用・売却益の計上と、FY2027/12以降の人員・固定費・営業力への影響を分けて追う(会社発表)。

監視ポイント

時期 イベント 開示で確認する点
発表日未定、FY2026/12第3四半期(対象期末2026-09-30) 3Q決算 通期営業利益20,000百万円に対する進捗、下期必要額13,383百万円、セグメント利益・為替・在庫
2026-12-31 FY2026/12期末・期末配当基準日 会社予想の着地、現金・在庫・売上債権、予想DPS150円に関する決議。権利付き最終日は別途営業日カレンダーで確認
2027-01-31 早期退職の実施予定日 応募199人のうち実際の退職数、追加費用、対象組織と事業運営への影響
発表日未定、FY2026/12通期決算 通期決算・次期見通し 約25億円の特別損失・約26億円の資産売却益の実際の計上、FY2027/12利益・資本配分
2027-03-31 FY2026/12有価証券報告書の法定提出期限 監査済み数値、セグメント・地域開示、リスク・株主・ガバナンス更新
2027-06-30 FY2027/12上期の期間末・中間配当基準日 地域別の為替除き成長、化粧品/コスメタリー利益率、在庫回転、配当決議

(出典: 2026-08-06決算短信、2026-10-09早期退職募集結果、会社IRの決算・配当情報。未公表日程は発表日未定と表示)

未公表の決算発表日は記載せず、対象期間末や法定期限と区別した。配当基準日も会社の今後の告知で確認する。

M&A・出資検討の論点

買い手にとっての価値は、ブランドの継続購買、販売網、研究開発・品質管理、海外展開力を維持し、買収後の利益とROICへ転換できるかに左右される。
ブランド間で顧客や販売チャネルが重なる場合、既存ブランドの独自性を損なったり、販促費が増えたりする可能性がある。
対価は連結利益の倍率だけでなく、ブランド別の正常利益、販促・設備投資、在庫の質、商標等の無形資産、地域規制、買収後の投下資本で評価する必要がある。
デューデリジェンスでは返品・値引き、販売チャネル別採算、在庫年齢、製品安全、ライセンスや代理店契約、主要人材、減損前提、買収後の資本配分を確認する。

7. 学びのポイント

📚 着眼点1: NCは算式と株式価値のbasisを揃えて読む

現預金から借入を差し引く標準NCは、短期有価証券や借入科目が欠けると不完全になる。
また、EDINETの時価総額は発行済株式basisである一方、EPSや自己株控除後の価値を使う計算には株式数の違いが入る。
今回はFY2025/12末時価総額317,576.6百万円と、自己株を引いた株式価値299,137.0百万円を区別した。
貸借対照表のNCと市場価値の分母を混ぜないことが、倍率比較の基本となる。

📚 着眼点2: 利益率・ROE・FCFは別の問いに答える

FY2025/12営業利益率5.6%は商品を売る事業の採算を、ROE5.4%は株主資本の利益創出を、FCF-6,606百万円は営業活動から投資後に残った資金をそれぞれ示す。
現金90,747百万円と高い自己資本比率だけでは、その現金が新商品、ブランド、設備、配当のどこへ向かい、どの程度の収益を生むかは分からない。
複数指標の弱さが同時に改善するかを追うと、財務の余裕と経営効率を混同しにくい。

📚 着眼点3: 海外比率は為替影響を分けて考える

FY2026/12上期売上は対FY2025/12同期比+2.7%だったが、為替影響を除くと+0.2%。
海外比率は38.6%で、地域別の伸びにも差があった。
円換算の成長だけを見ると、現地需要の変化と為替の寄与を取り違える。
売上、為替影響除き成長、セグメント利益率を並べると、地域拡大が利益へつながっているかを追いやすい。

相場観の確認表

指標 コーセー 全上場中央値 良い目安・評価の視点
売上高成長率 +2.3% 未取得 数量・価格・為替へ分け、継続性を確認
営業利益率 5.6% 未取得 同業・自社目標との距離を見る
ROE 5.4% 未取得 8%超は参考チェック基準。業界基準ではない
自己資本比率 72.2% 未取得 40%超は一般的な事業会社向け目安。業界基準ではない
流動比率 362.2% 未取得 150%超は参考チェック基準
CCC 約289.9日 未取得 短いほど資金効率は高い傾向。ただし販売形態で異なる
標準NC比率 30.1% 既知科目 未取得 現金・短期証券・負債定義を合わせて比較
広義NCAV比率 51.5% 未取得 流動資産の換金性と負債控除を確認
実績PER 19.79倍 未取得 利益局面・株価時点を揃えて読む
PBR 1.05倍 未取得 ROEと資本効率を併せて読む
配当性向 52.9% 未取得 利益と成長投資の両立を確認

全上場中央値は比較可能な出典がなく未取得。参考目安は化粧品業界平均ではなく、FY2025/12時点を読む補助情報である。

TIP

化粧品ブランド企業を見るときは、売上成長が営業利益率とキャッシュ創出へ届いているかを確かめる。
コーセーではFY2026/12上期の為替影響除き成長、セグメント減益、在庫日数、早期退職後の費用変化を同じ期間軸で追うと、売上の伸びと収益の質を切り分けやすい。

参考情報

コーセーは2026年1月の純粋持株会社移行で、グループ戦略とガバナンスを持株会社へ集めつつ、事業会社のブランド自主性を保つ方針を説明している。
2026年9月24日に公表された主要株主の異動資料では、一般社団法人コーセーマネジメントの議決権比率が9.98%から10.00%へ変化したと報告された。
変化日は2026年3月17日で、会社は自己株取得に伴う変動として直接の影響はないとの見解を示した。
株式持株比率と議決権比率は分母が異なるため、下表の持株比率と混同しない。

主要株主は会社掲載情報の2026年6月30日現在。持株数は千株未満切捨て、比率は小数第1位表示。自己株式は会社注記による別掲で、以下の順位表に含まない。

株主 持株数(千株) 持株比率
一般社団法人コーセーマネジメント 5,680 9.4%
一般社団法人ウッド 5,595 9.2%
一般社団法人MYMラボラトリーズ 5,491 9.1%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 4,985 8.2%
小林和夫 1,926 3.2%

(出典: コーセーホールディングス株式情報、2026-06-30現在)

会社は別途、自己株式3,842,095株、発行済株式の6.3%を保有すると記載している。株主順位表の比率は会社掲載の持株比率である。

出典

数値の期間と留保

財務はFY2025/12末、最新開示はFY2026/12上期、市場proxyはFY2025/12末。
FY2026/12会社予想は2026-08-06公表、退職・資産売却は2026-10-09時点の見込み。
NCには短期証券・負債科目の欠測がある。
予想精度、全上場/CCC中央値、2026-10-19倍率は未取得で、推定補完していない。