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株式会社バンダイナムコホールディングス

【経済・その他製品】その他製品銘柄レポート更新 2026-08-08

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目次
  1. 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
  2. FP&Aカード(収益ドライバー / コスト構造 / 運転資本 / 資本集約度)
  3. バンダイナムコホールディングスの事業構成
  4. 主要取引先
  5. 競争優位性の比喩的説明
  6. 固有事象・資本関係の詳細分析
  7. 2. 財務の実力
  8. PL — 5期+予想
  9. BS — 5期
  10. BS 詳細主要科目(百万円) — 5期
  11. CF — 5期
  12. 減価償却費・設備投資明細(百万円) — 5期
  13. 受注高・受注残高(FY2026)
  14. 運転資本分析(CCC)
  15. 配当推移 — 5期+予想
  16. 経営者予想精度
  17. 健全性チェック(事業会社基準・10項目)
  18. 3. 市場評価を読む — バリュエーション
  19. 時価総額・株価の基準
  20. 標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移
  21. 広義 NCAV 計算 — 5期推移
  22. CN-PER(キャッシュニュートラル PER)
  23. EV/EBITDA 分析
  24. EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別・バンダイナムコHD)
  25. 倍率ベース感応度(適用 PER レンジ・円換算なし)
  26. バリュエーション乖離コメント
  27. 4. 同業比較 — 差分の論点
  28. 競合選定基準
  29. 最新期比較テーブル(FY2026 / 現値ベース)
  30. 競合 3期推移(売上・営業利益率)
  31. 運転資本効率(CCC)— 競合比較
  32. 5. リスクと論点
  33. リスクマトリクス
  34. 最大リスクの深掘り
  35. バリュートラップリスクの深掘り
  36. 6. バリュエーション統合と論点整理
  37. 乖離の構造分析
  38. 上方に振れる場合の前提と評価軸
  39. 会社予想並みで着地する場合の評価軸
  40. 下方に振れる場合の前提と評価軸
  41. 監視ポイント
  42. M&A・出資検討の論点整理
  43. 7. 学びのポイント
  44. 📚 着眼点1: IP軸戦略は財務諸表のどこに現れるか
  45. 📚 着眼点2: 期初ガイダンスの保守性をどう読むか
  46. 📚 着眼点3: 指標ポジショニング
  47. 参考情報
  48. ガバナンス要点
  49. 大株主構成
  50. データソースの時点差
  51. 出典一覧

株式会社バンダイナムコホールディングス(7832)銘柄分析レポート

SUMMARY

現値時価総額は34,621億円(2026-08-08時点、株価5,398円)。
予想PER 26.6倍・実績PER 24.8倍・PBR 4.02倍は、FY2023-26の増収増益トレンドを反映した水準。
標準NC比率は11.6%、広義NCAV比率は16.3%とキャッシュポジションを厚めに持つ財務構成。
配当利回りは1.35%(FY2026実績DPS 73円ベース)、配当性向33.56%・総還元性向51.0%・DOE5.46%。
健全性スコアは93/100(レーティングS)。

指標 評価
時価総額 34,621 億円 大型
予 PER 26.6倍 割高寄り
EV/EBITDA(実績) 12.9倍 中位
配当利回り 1.35% 中位
標準 NC 比率 11.6% 中程度
広義 NCAV 比率 16.3% 中程度
健全性スコア 93/100 高い

1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か

業界全体の構造は その他製品業界基礎ガイド(および同業界のセグメント分析・プレイヤー比較)を参照。本レポートは株式会社バンダイナムコホールディングス固有の事業構造に絞る。

株式会社バンダイナムコホールディングスは純粋持株会社であり、単体従業員はわずか80名、連結では11,457名を擁する事業グループの司令塔として機能する。
稼ぐ力の源泉は一言で言えば「IP軸戦略」である。
ガンダム・ドラゴンボール・ワンピース・たまごっち・アイドルマスター・パックマンなど600以上に増加した展開IPを、トイホビー・デジタル・アミューズメント・映像音楽という性質の異なる4つの事業に横断的に配分し、同じキャラクター資産から複数の収益機会を引き出す構造を持つ。

FP&Aカード(収益ドライバー / コスト構造 / 運転資本 / 資本集約度)

収益ドライバーは事業ごとに性質が異なる。
トイホビー事業はガンプラ・一番くじ・トレーディングカードといった物販の「数量×単価」フローが中心で、FY2026/3期はハイターゲット(大人)層向け商品の伸長により売上前年比+12.41%・営業利益前年比+24.20%という牽引役となった。
デジタル事業はネットワークコンテンツの継続収益と、家庭用ゲームの新作タイトル編成という単発フローが混在する構造で、この編成差が業績のブレを生みやすい(後述)。
アミューズメント事業は施設数と既存店売上(FY2026/3期実績で国内既存店前年同期比107.0%)に規定され、映像音楽事業はライセンス・興行・配信の組み合わせで、FY2026/3期は「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」のヒットが牽引した。

コスト構造は事業により固定費・変動費比率が大きく異なる。
トイホビーは原材料・生産委託費が原価の主要因で、生産地域の集中度が原価変動リスクに直結する。
デジタルはゲーム・映像の制作費が開発期間に応じて先行計上される投資型コスト構造で、開発期間の長期化がそのまま損益分岐点を押し上げる。
アミューズメントは人件費と施設賃借料が主要固定費で、人件費上昇が利益率の下押し要因となる。

運転資本については、CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)が51.96日(売上債権39.57日+棚卸資産57.82日-仕入債務45.44日)と、比較対象の任天堂102.23日・サンリオ107.84日・タカラトミー68.59日の中で最短である。
トイホビーの見込生産比率が高い一方、玩具流通網との取引条件および需要予測精度の向上(データユニバース構想)が回転効率を支えている構造と読める。
5期推移でもFY2022の67.11日からFY2026/3期の51.96日まで一貫して改善しており、単発の在庫圧縮ではなくトレンドとしての効率化である。

資本集約度は、設備投資53,399百万円に対し減価償却費47,204百万円とほぼ均衡した水準にあるが、中期計画では3年間で約6,000億円の成長投資(ゲーム・映像制作等の原価投資、金型等の設備投資、戦略投資「360」投資)を計画しており、今後は投資が減価償却を上回る局面に移行する可能性がある。
トイホビー事業では2025年に稼働を開始したバンダイホビーセンター新工場がFY2026/3期の本格稼働により2023年度比約35%の生産能力増強を計画しており、需要超過による機会損失リスクの緩和と資本集約度の上昇の両方に寄与する(出典: 早耳ガンプラ情報局)。
総資産回転率1.133回は在庫・生産設備を抱える製造業としては高水準で、IPライセンス収益の比率の高さを反映している。

バンダイナムコホールディングスの事業構成

⚠️ FY2025に「IPプロデュース事業」→「映像音楽事業」へ名称変更(FY2024実績は旧名称ベース)。

FY2026:

セグメント 売上高(百万円) 構成比 営業利益(百万円) 営業利益率 売上前年比 営利前年比 減価償却 設備投資
トイホビー事業 646,180 47.93% 126,938 19.64% +12.41% +24.20% 27,516 34,270
デジタル事業 470,714 34.91% 56,682 12.04% +4.58% −17.29% 7,199 6,887
アミューズメント事業 151,759 11.26% 10,106 6.66% +12.98% +19.77% 9,203 14,667
映像音楽事業 73,251 5.43% 12,181 16.63% −3.13% +3.42% 1,169 418
その他 6,340 0.47% 2,819 44.46% −4.62% +68.70% 789 911
合計 1,348,246 100.0% +8.6%

FY2025(前期比較用):

セグメント 売上高(百万円) 構成比 営業利益(百万円) 営業利益率
トイホビー事業 574,837 46.30% 102,202 17.78%
デジタル事業 450,088 36.25% 68,527 15.23%
アミューズメント事業 134,324 10.82% 8,438 6.28%
映像音楽事業 75,615 6.09% 11,778 15.58%
その他 6,647 0.54% 1,671 25.14%

⚠️ 営業利益率はセグメント間取引消去後の外部売上ベース。全社費用(FY2026調整額−3,726百万円相当)は各セグメントに未配賦。

事業 売上高(百万円) 構成比 営業利益(百万円) 営業利益率 売上前年比 営業利益前年比
トイホビー事業 646,180 47.93% 126,938 19.64% +12.41% +24.20%
デジタル事業 470,714 34.91% 56,682 12.04% +4.58% −17.29%
アミューズメント事業 151,759 11.26% 10,106 6.66% +12.98% +19.77%
映像音楽事業 73,251 5.43% 12,181 16.63% −3.13% +3.42%
その他 6,340 0.47% 2,819 44.46%

(出典: バンダイナムコホールディングス FY2026/3期決算短信 セグメント情報)

FY2025/3期からFY2026/3期にかけて、トイホビー事業の構成比は46.30%から47.93%へ上昇し、デジタル事業は36.25%から34.91%へ低下した。
デジタル事業の営業利益率はFY2024/3期の1.71%からFY2025/3期に15.23%まで急回復したのち、FY2026/3期は12.04%へ再び低下しており、家庭用ゲームのタイトル編成に応じて大きく振れる構造が続いている。
なお映像音楽事業はFY2025/3期に「IPプロデュース事業」から名称変更されたセグメントである。

主要取引先

有価証券報告書の販売実績注記によれば、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先は存在しない。
特定の卸売業者・小売業者・プラットフォーマーへの依存が構造的にない点が特徴である。
もっとも、これは「顧客集中リスクがない」ことを意味する一方で、デジタル事業に限ってはゲーム機メーカーやアプリストアといったプラットフォーマーへの技術的・商流的な依存が存在する。
これは特定の取引先への売上依存とは性質が異なり、プラットフォームの審査基準・手数料体系・配信方針の変更が事業運営に影響しうるという別種の依存構造である。

競争優位性の比喩的説明

同じ井戸から複数の管で水を汲む構造

バンダイナムコホールディングスの強みは、1つの深い井戸(IP)を掘り当てたら、そこから玩具・ゲーム・映像・アミューズメント施設という複数の管を引いて水(収益)を汲み上げられる点にある。
競合の多くは井戸1本に管1本(例えば玩具専業、ゲーム専業)だが、同社は600本以上の井戸それぞれに最大4本の管を持ちうる。
1本の管が渇いても(デジタル事業の編成落ち込みなど)、別の管(トイホビーの好調)が補う構造が、事業ポートフォリオ全体の変動を吸収している。

固有事象・資本関係の詳細分析

FY2026/3期以降で最大の資本関係トピックは、サウジアラビアを拠点とするアヤル・ファースト・インベストメント・カンパニー(Ayar First Investment Company)による株式取得である。
同社は2026-01-09付で大量保有報告書を初回提出し、32,837,100株・保有比率5.05%を「純投資」目的で保有する旨を開示した。
Web検索による確認では、アヤル社はサウジアラビア公共投資基金(PIF: Public Investment Fund)と関連するリヤド拠点の投資会社で、同時期にカプコン(6.6%)・ネクソン(10.71%)・コーエーテクモホールディングス(9.3%)など日本の複数のゲーム・エンタメ企業株式を取得したとの報道が複数確認できる。
PIFは2022年に「National Gaming and Esports Strategy」を掲げ、ゲーム・eスポーツの世界的ハブとなることを国家戦略の一部としており、アヤル社の一連の取得はその流れに沿うとの観測がある(出典: gamebiz)。
ただし、この「PIF関連」との位置づけは報道に基づく観測であり、事実として確定しているのは大量保有報告書に記載された保有比率5.05%・保有目的「純投資」のみである点には留意が必要である。

2025-05-08には、ソニーグループ・バンダイナムコホールディングス・Gaudiy(ガウディ)の3社が戦略的パートナーシップを開始し、ソニーグループと当社を引受先としてGaudiyが総額100億円の資金調達を実施した。
GaudiyはファンとIPをつなぐコミュニティプラットフォーム「Gaudiy Fanlink」を展開し、2025年には海外利用比率99%・登録会員1,950万人規模のアニメ・マンガコミュニティサイト「MyAnimeList」をグループに迎えている。
この提携は2025年4月新設の「CW360」部署が主導する初の対外パートナーシップ案件と位置付けられている(出典: PR TIMES)。
加えて映像音楽ユニットでは、米LEGENDARYと共同投資契約を締結した実写映画「GUNDAM(仮称)」の制作に向け、2025年4月に北米法人Bandai Namco Filmworks America, LLCを設立している(出典: 日本経済新聞)。

会計面ではFY2027/3期第1四半期において、2026-04-30付の自己株式5,000,000株消却に伴い資本剰余金が負値となり、資本剰余金をゼロとしたうえで負値分を利益剰余金から減額する処理が行われた。
総還元性向50%以上を基本方針とし、DOE(純資産配当率)3.60%を配当下限とする株主還元姿勢のもとで自己株取得・消却が継続的に行われてきた結果としての会計事象である。

政策保有株式(特定投資株式)は簿価合計127,272百万円、純資産861,424百万円に対して14.8%の水準にある。
5期推移ではFY2024/3期の89,391百万円からFY2025/3期に145,824百万円へ一時増加したのち、FY2026/3期は127,272百万円へ縮小した。
東京証券取引所は2023年3月以降、PBR1倍割れ企業を中心に資本コストを意識した経営を要請しており(出典: レイヤーズ・コンサルティング)、同社は毎期、保有先ごとの便益と資本コストの見合いを検証したうえで保有継続の妥当性を確認する枠組みを開示している。
同社自身が資本コストを8%程度と認識している中で、政策保有株式の水準が今後の検証でどう評価されるかは、資本効率面での論点として残る。


2. 財務の実力

PL — 5期+予想

⚠️ FY2023の1:3株式分割によりEPSが非連続(FY2022分割調整後EPS=140.70円)。FY2022のYoYは前データなしのため「—」。

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026 FY2027予想
売上高(百万円) 889,270 990,089 1,050,210 1,241,513 1,348,246 1,350,000
営業利益(百万円) 125,496 116,472 90,682 180,229 189,517 185,000
経常利益(百万円) 133,608 128,006 104,164 186,470 201,923 190,000
当期純利益(百万円) 92,752 90,345 101,493 129,301 140,651 130,000
EPS(円) 422.09 136.88 153.85 197.88 217.49 202.69
営業利益率 14.11% 11.76% 8.63% 14.52% 14.06% 13.70%
前年比(売上) +11.34% +6.07% +18.21% +8.60% +0.1%
前年比(営利) −7.19% −22.14% +98.75% +5.15% −2.4%

BS — 5期

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
総資産(百万円) 862,650 926,358 971,838 1,102,636 1,190,494
流動資産(百万円) 577,206 592,637 642,622 704,942 780,901
固定資産(百万円) 285,443 333,720 329,215 397,694 409,593
負債合計(百万円) 278,417 274,225 272,015 309,420 329,070
純資産(百万円) 584,233 652,133 699,823 793,216 861,424
自己資本比率(official) 67.7% 70.4% 72.0% 71.9% 72.3%
BPS(円) 2,654.81 987.58 1,069.29 1,225.02 1,342.11

BS 詳細主要科目(百万円) — 5期

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
投資有価証券 113,261 140,706 116,127 173,350 161,418
現預金 277,891 276,288 311,264 360,960 412,416
短期有価証券 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし
有利子負債 21,046 10,770 0 7,392 12,125
売上債権 122,742 99,007 118,190 123,998 146,181
棚卸資産 124,248 152,222 140,596 128,710 129,442
仕入債務 99,810 99,244 99,254 98,068 101,717

CF — 5期

⚠️ FCF = 営業CF + 投資CF の定義で統一。

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
営業 CF(百万円) 121,212 95,625 88,906 187,337 164,719
投資 CF(百万円) −27,136 −40,878 +10,136 −62,004 −41,154
財務 CF(百万円) −25,450 −59,524 −75,237 −77,347 −82,966
FCF(百万円) 94,076 54,747 99,042 125,333 123,565

減価償却費・設備投資明細(百万円) — 5期

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
減価償却費 25,726 28,671 38,364 40,216 47,204
設備投資(capex) 27,967 36,477 38,325 55,476 53,399
研究開発費 29,494 30,363 32,316 36,535 35,987

受注高・受注残高(FY2026)

⚠️ 当社は受注産業ではない(受注高は売上高1,348,246百万円の5.2%に過ぎない見込生産中心のビジネス)。有報に開示があるため参考掲載。

セグメント 受注高(百万円) 前年比 受注残高(百万円) 前年比
トイホビー事業 53,104 −1.3% 21,840 +8.9%
デジタル事業 16,433 +85.8% 742 −65.9%
映像音楽事業 771 −50.2% 1,725 −49.9%
アミューズメント事業 0 −100.0% 0 −100.0%
合計 70,309 +9.3% 24,308 −5.7%

運転資本分析(CCC)

⚠️ 分母統一ルール: 売上債権回転日数=売上債権/売上高×365、棚卸資産回転日数=棚卸資産/売上原価×365、仕入債務回転日数=仕入債務/売上原価×365(厳密法)。

項目(日数) FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
売上債権回転日数 50.38 36.50 41.08 36.45 39.57
棚卸資産回転日数 85.08 89.41 75.55 62.95 57.82
仕入債務回転日数 68.35 58.29 53.33 47.96 45.44
CCC 67.11 67.62 63.29 51.44 51.96

配当推移 — 5期+予想

⚠️ FY2022のDPS212円は分割前(分割調整後70.67円)。
FY2023の配当性向150.5%は分割期の一時的な数値。
FY2027の会社予想年間DPSは未開示(Q1で中間25円のみ公表)。
配当利回りは現値株価5,398円基準で各期DPSを除して算出(実績時価との対比ではない)。

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026 FY2027予想
1株配当(円) 212.0 206.0 60.0 71.0 73.0 未開示
配当利回り(現値株価5,398円基準) 3.93% 3.82% 1.11% 1.32% 1.35% 未算出
配当性向 50.23% 150.50% 38.99% 35.88% 33.56%

経営者予想精度

⚠️ FY2024/FY2025の期初予想は取得データに含まれず。2期分のみ記載、それ以前は予想精度データなし。

予想公表日 予想売上 実績売上 乖離 予想営利 実績営利 乖離 予想純利 実績純利 乖離
FY2026 期初 2025-05-08 1,200,000 1,348,246 +12.4% 145,000 189,517 +30.7% 100,000 140,651 +40.7%
FY2026 Q3時点 2026-02-05 1,300,000 1,348,246 +3.7% 181,000 189,517 +4.7% 130,000 140,651 +8.2%
FY2027 期初 2026-05-13 1,350,000 進行中 185,000 進行中 130,000 進行中

参考: FY2027 Q1実績(2026-08-06開示)売上328,494百万円(+9.3%、通期予想比進捗率24.3%)/営業利益69,204百万円(+33.3%、進捗率37.4%)/純利益51,135百万円(+33.4%、進捗率39.3%)。
Q1は3ヶ月・通期予想は12ヶ月のため上記は「進捗率」であり「達成率」ではない(線形ペース基準はQ1=25%)。
Q2累計予想は2026-08-06に上方修正(通期予想は据置)。

健全性チェック(事業会社基準・10項目)

(当社は事業会社。金融業の業態版チェックは非適用)

チェック項目 基準 FY2026実績値 判定
自己資本比率>40% 40%超 72.3%
有利子負債<現預金 IBD<現預金 12,125 < 412,416
流動比率>150% 150%超 266.28%(780,901/293,300)
利益剰余金>0 プラス 755,714百万円
営業CF 3期連続黒字 3期連続黒字 FY2024〜FY2026 全て黒字
配当3期連続支払い 3期連続支払 FY2024〜FY2026 全て支払
EPS前年比プラス プラス 217.49円(前期197.88円、+9.9%)
ROE>8% 8%超 17.0%
営業利益率 vs 業界平均 業界平均比 14.06%(get_analysis評価: 良好な収益力。業界平均具体値データなし)
健全性スコア 参考値 93/100(レーティングS)

3. 市場評価を読む — バリュエーション

時価総額・株価の基準

バリュエーション指標(標準NC比率/広義NCAV比率/CN-PER/EV/EBITDA/予想PER/配当利回り/PBR)の時価総額・株価は現値マーケットデータ(market_data_as_of 2026-08-08)を使用する。
EDINET marketCap(有報=決算期末固定値、2,497,003百万円)は使用しない。

内部整合性チェック: 株価×株数 0.00%一致/予想PER×予想EPS 0.00%一致/PBR×BPS −0.06% — いずれも±5%以内で合格。

EDINET期末値との乖離注記: EDINET marketCap 2,497,003百万円(2026-03-31期末)は現値比−35.8%。
EDINET提供のPER17.8倍/PBR2.88倍/EV/EBITDA8.86倍/配当利回り1.89%はそのまま引用しない。

標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移

(現預金 + 短期有価証券 − 有利子負債。短期有価証券は全期「該当なし」。有利子負債内訳: FY2022=短期借入10,810+長期借入10,236/FY2023=短期借入10,770/FY2024=0/FY2025=リース債務7,392/FY2026=リース債務12,125) ⚠️ 標準NC比率の分母は現値時価総額 3,462,093百万円で全期統一。

項目(百万円) FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
現預金 277,891 276,288 311,264 360,960 412,416
短期有価証券 0 0 0 0 0
有利子負債 21,046 10,770 0 7,392 12,125
標準 NC 256,845 265,518 311,264 353,568 400,291
標準 NC比率(現値時価総額比) 7.42% 7.67% 8.99% 10.21% 11.56%

広義 NCAV 計算 — 5期推移

(流動資産 + 投資有価証券 × 0.7 − 負債合計)

項目(百万円) FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
流動資産 577,206 592,637 642,622 704,942 780,901
投資有価証券×0.7 79,283 98,494 81,289 121,345 112,993
負債合計 278,417 274,225 272,015 309,420 329,070
広義 NCAV 378,072 416,906 451,896 516,867 564,824
広義 NCAV比率(現値時価総額比) 10.92% 12.04% 13.05% 14.93% 16.31%

CN-PER(キャッシュニュートラル PER)

CN-PER = 予想PER × (1 − 標準NC比率) または (時価総額 − 標準NC) ÷ 予想純利益

指標
予想 PER 26.63 倍
標準 NC 比率(標準NC ÷ 現値時価総額) 11.56%
CN-PER(標準 NC ベース) 23.55 倍
参考: CN-PER(広義 NCAV ベース) 22.29 倍

EV/EBITDA 分析

⚠️ 4社とも現値時価総額と各社の標準NCを使用。EBITDA = 営業利益(FY2026実績)+ 減価償却費(FY2026実績)。

指標 バンダイナムコHD 任天堂 サンリオ タカラトミー
時価総額(億円) 34,620.93 92,725.60 16,937.65 3,103.63
標準 NC(億円) 4,002.91 17,417.34 776.60 434.80
EV(億円) 30,618.02 75,308.26 16,161.05 2,668.83
EBITDA(億円) 2,367.21 3,759.71 807.31 320.04
EV/EBITDA 12.93倍 20.03倍 20.02倍 8.34倍

EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別・バンダイナムコHD)

NC 定義 NC(億円) EV(億円) EV/EBITDA
標準 NC(現預金+短期有価証券−有利子負債) 4,002.91 30,618.02 12.93倍
広義 NCAV(流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計) 5,648.24 28,972.69 12.24倍

倍率ベース感応度(適用 PER レンジ・円換算なし)

⚠️ 円建ての理論株価水準や株価対比の数値は出さない。倍率レンジのみ。

適用 PER 水準 倍率 位置づけ
レンジ下限(保守的) 17.8倍 自社5期PERレンジ下限(FY2026期末値)
中央(現状据え置き) 24.82倍 実績PER(現値ベース)近辺
レンジ上限(楽観的) 25.3倍 自社5期PERレンジ上限(FY2025期末値)
参考: 同業3社 現値実績PER 平均 26.8倍 任天堂22.1倍 / サンリオ30.8倍 / タカラトミー27.4倍 の単純平均
参考: 自社 5 期 PER レンジ 17.8〜25.3倍 各期末株価ベースの実績PER振れ幅

⚠️ 「同業3社平均」は業界平均PERの代用値(get_analysisから業界平均PERが取得できないため)。

バリュエーション乖離コメント

NC考慮EV/EBITDA法(標準NCベース)では当社のEV/EBITDAは12.93倍となり、同業4社中で任天堂20.03倍・サンリオ20.02倍を下回り、タカラトミー8.34倍を上回る水準に位置する。
CN-PER法では予想PER26.63倍から標準NC比率11.56%分を控除したCN-PERは23.55倍となり、広義NCAVベースでは22.29倍とさらに低下する。
両手法とも、単純な予想PER・実績PERよりキャッシュポジションを考慮すると倍率が切り下がる方向で一致する。
ただしEV/EBITDA法は事業価値を収益力(EBITDA)で評価し、CN-PER法は純利益ベースで評価するため、両者の絶対水準は単純比較できない点に留意。


4. 同業比較 — 差分の論点

競合選定基準

社名 ティッカー EDINETコード 業種 選定理由
任天堂 7974 E02367 その他製品 自社IPをゲーム専業で垂直統合するIP収益化の最大手。デジタル事業(売上構成35%)の直接比較対象
サンリオ 8136 E02655 卸売業 IPライセンス特化型(自社製造を持たない)。IP軸戦略の収益性上限を示すベンチマーク
タカラトミー 7867 E02450 その他製品 玩具専業の国内2位。主力のトイホビー事業(売上構成48%)の直接比較対象

時価総額レンジ確認: 対象34,621億円に対し任天堂92,726億円(2.68倍)/サンリオ16,938億円(0.49倍)/タカラトミー3,104億円(0.09倍)。
⚠️ タカラトミーは「0.3-5倍」レンジを下回る(0.09倍)が、トイホビー事業の唯一の上場純粋比較対象であるため採用。

最新期比較テーブル(FY2026 / 現値ベース)

⚠️ 全社とも2026-08-08現値ベース。EDINET期末値のPER/PBRは使わない。サンリオのEPS/BPS/DPSは1:5株式分割の調整後値。

指標 バンダイナムコHD 任天堂 サンリオ タカラトミー
時価総額(億円) 34,620.93 92,725.60 16,937.65 3,103.63
売上高(億円) 13,482.46 23,130.51 1,940.88 2,704.55
営業利益率 14.06% 15.57% 40.12% 8.96%
自己資本比率 72.3% 77.63% 66.4% 68.0%
実績 PER(現値) 24.82倍 22.07倍 30.82倍 27.42倍
予想 PER(現値) 26.63倍 29.91倍 26.55倍 17.38倍
PBR(現値) 4.02倍 3.14倍 10.87倍 2.84倍
ROE 17.0% 14.94% 41.6% 10.7%
配当利回り(現値) 1.35%(実績DPS73円) 2.72%(実績DPS219円) 1.15%(予想DPS16円、実績DPSデータなし) 1.78%(実績DPS64円)
EV/EBITDA(現値) 12.93倍 20.03倍 20.02倍 8.34倍
標準 NC 比率(現値) 11.56% 18.78% 4.59% 14.01%
営業 CF(億円) 1,647.19 2,897.89 525.54 200.53
FCF(億円) 1,235.65 797.35 316.95 119.99

競合 3期推移(売上・営業利益率)

企業 FY2024 売上(億円) FY2025 売上(億円) FY2026 売上(億円) FY2024 営利率 FY2025 営利率 FY2026 営利率
バンダイナムコHD 10,502.10 12,415.13 13,482.46 8.63% 14.52% 14.06%
任天堂 16,718.65 11,649.22 23,130.51 31.64% 24.25% 15.57%
サンリオ 999.81 1,449.04 1,940.88 26.96% 35.75% 40.12%
タカラトミー 2,083.26 2,502.35 2,704.55 9.03% 9.94% 8.96%

運転資本効率(CCC)— 競合比較

⚠️ 業界中央値は取得できないため「データなし」。

指標(日数) バンダイナムコHD 任天堂 サンリオ タカラトミー 業界中央値
売上債権回転日数 39.57 23.27 47.30 38.45 データなし
棚卸資産回転日数 57.82 140.32 97.99 56.95 データなし
仕入債務回転日数 45.44 61.37 37.45 26.81 データなし
CCC 51.96 102.23 107.84 68.59 データなし

注: 棚卸資産回転日数は任天堂が突出(140.32日)で在庫回転が最も遅く、CCCも4社中最長(102.23日)。バンダイナムコHDはCCCが4社中最短(51.96日)。


5. リスクと論点

リスクマトリクス

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的影響シナリオ 対応状況
米国通商政策・関税 トイホビーの生産地域が集中する中、追加関税が発動・拡大すれば北米向け玩具の採算が悪化。FY2026/3期中間期には関税影響を受けた一方、FY2027/3期第1四半期には北米子会社で還付金を計上するなど影響は不安定に推移 自社生産拠点の増強・生産地域の分散を有報で明示
デジタル事業のタイトル編成依存 中〜高 新作大型タイトルの有無で営業利益率が大きく変動。FY2024/3期は1.71%まで低下、FY2025/3期は15.23%へ急回復、FY2026/3期は12.04%へ再低下 厳選タイトル開発・審査体制強化・ポートフォリオ構築を方針として明示
特定IP(ガンダム)への依存 ガンダム関連コンテンツの不振がトイホビー・デジタル・映像音楽の複数事業に同時波及しうる IP軸戦略でガンダム以外(ドラゴンボール・ワンピース・たまごっち等)への分散を志向
国内少子化とハイターゲット層シフトの持続性 国内玩具市場の子供向け需要縮小をハイターゲット(大人)層向け商品拡大で補う戦略が減速した場合、トイホビー事業の成長率が鈍化 グローバル展開・トレーディングカード等のカテゴリー拡大で対応
為替変動 海外売上比率50%目標に向けて拡大が進むほど円安・円高双方向の為替感応度が高まる 有報で「事業等のリスク」として明示のみ、具体的ヘッジ方針の定量開示は限定的

最大リスクの深掘り

デジタル事業のタイトル編成依存という構造リスク

デジタル事業の営業利益率はFY2024/3期1.71%→FY2025/3期15.23%→FY2026/3期12.04%と、3期で最大13ポイント超のブレを記録している。
この変動は不正会計や市場環境悪化ではなく、単に「その期にどれだけ大型新作タイトルが重なったか」という編成要因で説明できてしまう点が本質的なリスクである。
FY2027/3期第1四半期はデジタル事業のセグメント利益が前年同期比−30.8%となったが、これも前年に「ELDEN RING NIGHTREIGN」という大型タイトルがあったことの反動であり、下期以降の新作投入状況次第で通期の着地が大きく変わりうる。
開発期間の長期化と投資額の上昇という有報記載のリスクも、タイトル供給の谷間リスクを長期化させる方向に働く。

バリュートラップリスクの深掘り

本銘柄は「割安放置型」ではなく「評価軸切り下がり型」のリスク構造

実績PER24.82倍・予想PER26.63倍・PBR4.02倍・標準NC比率11.56%という水準は、現預金を積み上げたまま株価が放置される典型的なバリュートラップ(キャッシュリッチ小型株の割安放置)の構造には当てはまらない。
むしろ論点は逆向きで、「高い倍率が織り込んでいる成長期待が崩れた場合に、評価軸そのものが切り下がりうるか」である。
FY2027/3期の会社予想は営業利益185,000百万円(前期比−2.4%)という減益ガイダンスであり、この状態で予想PER26.6倍という高倍率が維持される条件は何かが問われる。
加えて、政策保有株式127,272百万円(純資産比14.8%)が東証の資本コスト経営要請のもとで今後どう扱われるか、総還元性向51.0%という水準が標準NC400,291百万円という厚みに対して十分な株主還元姿勢と評価されるかも、評価軸を左右する論点として並走する。


6. バリュエーション統合と論点整理

乖離の構造分析

EV/EBITDA(標準NCベース)12.93倍は、同業の任天堂20.03倍・サンリオ20.02倍より低く、タカラトミー8.34倍より高い中間的な水準にある。
一方で予想PER26.63倍は、自社5期PERレンジ(17.8〜25.3倍)の上限に近く、同業3社現値実績PER平均26.8倍とほぼ並ぶ水準にある。
「EV/EBITDAでは相対的に低いのに、PERでは高い」というねじれが生じている構造を分解すると、次の3つの要因が候補になる。
第一に、減価償却費47,204百万円が営業利益189,517百万円に対して大きく、EBITDAを押し上げてEV/EBITDA倍率の分母を厚くしている。
これは3年間で約6,000億円という成長投資計画に伴う資本集約度の上昇を反映したものであり、投資が本格化するほどEBITDAベースの倍率は相対的に低く見えやすい。
第二に、FY2027/3期の会社予想が減益ガイダンス(営業利益−2.4%、純利益−7.6%)であるため、予想EPS202.69円という分母が縮み、予想PERの分子(株価)が変わらなくても倍率が押し上げられる構造にある。
第三に、比較対象のサンリオは自社製造をほとんど持たないライセンス特化型のビジネスモデルで営業利益率40.12%という高マージンを実現しており、EBITDAマージンが構造的に厚いためEV/EBITDA倍率が高く出やすい。
逆に言えば、バンダイナムコホールディングスは製造・生産を伴う分だけEBITDA倍率が相対的に抑えられている面がある。
この乖離は「割安の放置」というより、当期の減益ガイダンスと将来投資の規模を市場がどう織り込むかという「評価軸の選択」の問題として整理するのが妥当である。

上方に振れる場合の前提と評価軸

FY2027/3期第1四半期は通期予想に対する進捗率が営業利益で37.4%(線形ペース基準25%を大きく上回る)に達しており、かつ同期に上期累計予想が大幅に上方修正された。
過去2期の実績でも、会社は期初に保守的なガイダンスを置き、期中に上方修正していく傾向が観察されている(詳細は次章参照)。
仮にこの傾向が踏襲され、通期の着地が期初予想を上回る形で確定した場合、予想PERの分母となるEPSが切り上がり、現行の高PER水準に対する評価は相対的に見劣りしにくくなる方向に働く。
加えて、実写映画「GUNDAM(仮称)」の制作進捗や、中期計画が掲げる海外売上比率50%目標の前倒し達成が確認できれば、EV/EBITDA倍率のレンジも同業上位(任天堂・サンリオの20倍近辺)に接近する評価軸の変化が正当化されうる。

会社予想並みで着地する場合の評価軸

営業利益185,000百万円という会社予想通りの着地であれば、現行の予想PER26.63倍・EV/EBITDA12.93倍は「減益年度をすでに織り込んだ水準」として一定の説明力を持つ。
この場合、市場の関心は単年度の増減益よりも、FY2028/3期の中期計画目標(売上高1,450,000百万円・営業利益200,000百万円)に対する進捗確認と、3年間約6,000億円の成長投資がどの程度収益に転化しているかという、より長い時間軸の評価軸に移ると考えられる。

下方に振れる場合の前提と評価軸

米国通商政策の影響が本格化してトイホビーの採算が悪化する、あるいはデジタル事業のタイトル編成がFY2024/3期の営業利益率1.71%のような谷間に再び陥る、さらにガンダム関連コンテンツの反動が複数事業に同時波及するといった前提が重なった場合には、評価軸は自社5期PERレンジの下限(17.8倍)やPBRの下限方向への引き直しが正当化されうる。
標準NC比率11.56%という薄いネットキャッシュ水準では、業績悪化局面での評価下支え効果も限定的である点が、キャッシュリッチ小型株との構造的な違いとして意識される。

監視ポイント

時期 イベント 開示で確認すべき点
2026年11月上旬(目安、参考: FY2026/3期中間期は2025-11-06開示) FY2027/3期 第2四半期(中間期)決算発表 上期累計予想(上方修正後)の着地と、通期予想の見直し有無
2026-09-28(月、目安) 中間配当の権利付き最終日 配当方針(DOE下限3.60%)に変更がないか
2027年2月上旬(目安) FY2027/3期 第3四半期決算発表 デジタル事業の下期タイトル投入状況、通期進捗率
2027-03-29(月、目安) 期末配当の権利付き最終日 総還元性向50%以上の基本方針の維持
2027年5月中旬(目安) FY2027/3期 本決算発表 減益ガイダンスの着地確認、FY2028/3期中期計画目標(売上1兆4,500億円・営業利益2,000億円)への進捗
2027年6月中旬(目安) 有価証券報告書提出(FY2027/3期) 政策保有株式(FY2026/3期127,272百万円)の縮減状況
2027年6月下旬(目安) 定時株主総会 取締役の業績評価KPIへのEPS追加の運用状況
不定期 アヤル・ファースト・インベストメント・カンパニーの変更報告書提出 保有比率5.05%からの増減、保有目的(純投資)の変更有無
随時 トイホビー関連の月次・四半期開示、米国通商政策の動向 関税率・対象品目の変更、生産地域分散の進捗

M&A・出資検討の論点整理

買い手目線でみたときにEVの許容水準を規定する要因としては、まず標準NC400,291百万円という厚みのあるネットキャッシュが挙げられる。
一方でのれんは7,635百万円・無形固定資産は27,426百万円と、600以上に及ぶIPポートフォリオの実質的な価値に比してBS上は極めて薄く、BSに現れない無形資産価値をどう評価するかがEV算定上の最大の論点になる。
シナジーの論点としては、IPを軸にした多角展開のノウハウやグローバル流通網が挙げられる一方、ディスシナジーとしては事業ごとに大きく異なる収益特性(物販型のトイホビーと制作投資型のデジタル・映像音楽)を単一の経営体制で統合し続けることの複雑性がある。
デューデリジェンスで確認すべき事項としては、主要IPのライセンス契約条件(契約期間・独占性・ロイヤリティ体系)、クリエイター・制作人材のキーマン依存度、海外生産拠点の関税エクスポージャー、政策保有株式127,272百万円の処分制約(持合い関係の解消コスト)が挙げられる。
もっとも、現値時価総額が3兆4,621億円に達し、大株主構成も野村證券グループ・ブラックロック・ジャパングループ・三井住友トラスト・アセットマネジメントグループなど機関投資家中心で支配株主が不在という構造を踏まえると、現実的な買収可能性は極めて低い前提を置いたうえでの論点整理である。


7. 学びのポイント

📚 着眼点1: IP軸戦略は財務諸表のどこに現れるか

バンダイナムコホールディングスが展開するIPは600以上に及ぶが、これらの多くは自社創設のキャラクター資産であり、有報のBS上では無形固定資産27,426百万円・のれん7,635百万円という限られた金額でしか計上されていない。
会計基準上、自社創設のブランド・キャラクターは研究開発費や制作費として発生時に費用処理され、資産計上されないためである。
一方で、この「見えない資産」の実力はROIC41.10%・総資産回転率1.133回という効率性指標に現れる。
BSに乗らない資産が高い資産効率として損益計算書・キャッシュフロー計算書に滲み出す、というのが自己創設IPの会計の非対称性である。
分析上の含意は、IPビジネスをPBRやNC比率といったBSベースの指標だけで評価すると実態を過小評価しやすく、ROICやEBITDAマージンといったPL・キャッシュフロー起点の指標を併用する必要があるという点にある。

📚 着眼点2: 期初ガイダンスの保守性をどう読むか

FY2026/3期は期初予想(2025-05-08公表)で営業利益145,000百万円としていたところ、実績は189,517百万円と+30.7%の乖離で着地した。
同期のQ3時点予想(2026-02-05公表)でも営業利益181,000百万円に対し実績189,517百万円と+4.7%上振れており、期を追うごとに保守的な予想が上方修正されていくパターンが2期分のデータから読み取れる。
この文脈で見ると、FY2027/3期第1四半期に上期累計予想が大幅に上方修正されながら通期予想が据え置かれたという非対称性は、過去の傾向の再現である可能性と、今回は本当に通期を圧迫する下押し要因(関税・タイトル編成等)があるという可能性の両方を含んでいる。
予想PER26.63倍は「会社予想EPS202.69円」を分母にしている以上、この分母がどちらの方向に動くかによって、同じ株価でも倍率の見え方が変わってくる。
期初ガイダンスの水準そのものを鵜呑みにせず、その企業が過去何期にわたってどの方向にどれだけ外してきたかという「予想のクセ」を財務分析の一部として組み込む視点が、この銘柄の学びである。

📚 着眼点3: 指標ポジショニング

指標 バンダイナムコHDの値 同業3社平均 全上場中央値(概算目安) 評価コメント
実績PER 24.82倍 26.8倍 約15倍 同業平均をやや下回るが、全上場中央値との比較では高倍率グループに位置する
予想PER 26.63倍 データなし(実績PERのみ開示) 約15倍 減益ガイダンスを分母に織り込んだ水準である点に注意
PBR 4.02倍 データなし 約1.2倍 自己資本比率72.3%の厚みと高ROEを反映した高PBR
ROE 17.00% 22.41%(任天堂14.94/サンリオ41.6/タカラトミー10.7の単純平均) 約9% 全上場中央値は上回るが、サンリオの突出値が同業平均を押し上げている
ROIC 41.10% データなし(要調査) 約5% 資産効率の高さが際立つが同業比較データは未取得
営業利益率 14.06% 21.55%(任天堂15.57/サンリオ40.12/タカラトミー8.96の単純平均) 約5〜6% サンリオのライセンス特化型高マージンが同業平均を押し上げる
自己資本比率 72.3% 70.68%(任天堂77.63/サンリオ66.4/タカラトミー68.0の単純平均) 約40% 同業3社とも財務健全性は高水準で、グループ内では中位
EV/EBITDA(標準NCベース) 12.93倍 16.13倍(任天堂20.03/サンリオ20.02/タカラトミー8.34の単純平均) 約8倍 タカラトミーより高くサンリオ・任天堂より低い中間的水準
配当利回り 1.35% データなし 約2.3% 総還元性向51.0%だが自己株取得中心のため利回りは低め
CCC 51.96日 92.89日(任天堂102.23/サンリオ107.84/タカラトミー68.59の単純平均) 約90日 同業3社中で最短、在庫・債権回転効率が際立つ
標準NC比率 11.56% 約12.46%(任天堂18.78%/サンリオ4.59%/タカラトミー14.01%の単純平均、各社標準NC÷時価総額) 約5% キャッシュリッチ小型株の水準ではなく、大型優良企業としての相場観に位置する

(全上場中央値は一般的な目安値であり、厳密な統計値ではない)


参考情報

ガバナンス要点

バンダイナムコホールディングスは連結従業員11,457名・単体80名の純粋持株会社であり、監査法人は有限責任あずさ監査法人(四半期レビュー報告書より確認済み)である。
海外拠点は北米・中国内地を重点地域とし、実写映画「GUNDAM(仮称)」の制作投資窓口として北米に映像音楽事業会社(Bandai Namco Filmworks America, LLC)を新設している。
取締役会構成はFY2026/3期時点で男性12名・女性3名(女性比率20.0%)、役員報酬総額は1,261百万円である。
代表取締役名についてはWeb検索で確認できる公式情報の裏取りが本レポート内では完了しておらず、記載を見送る。

大株主構成

順位 株主名 保有比率 区分
1 野村證券グループ(野村アセットマネジメント7.31%等) 7.48% 信託財産の運用
2 ブラックロック・ジャパングループ(11社連名) 6.65% 純投資
3 三井住友トラスト・アセットマネジメントグループ(アモーヴァAM3.52%含む) 6.35% 投信・投資一任契約に基づく運用
4 アヤル・ファースト・インベストメント・カンパニー 5.05% 純投資
5 三菱UFJフィナンシャル・グループ(4社連名) 3.81% 純投資・政策投資

(各社の大量保有報告書の提出時点が異なるため、上表は「提出時点の比率」である点に留意。1位は2023-04-06、2位は2024-12-05、3位は2025-09-19、4位は2026-01-09、5位は2025-08-04の変更・新規報告書ベース)

データソースの時点差

データ種別 基準日 ソース
財務実績(FY2026/3期通期) 2026-03-31 有価証券報告書(2026-06-16提出)
決算短信開示 2026-03-31 決算短信(2026-05-13開示)
直近四半期実績(FY2027/3期第1四半期) 2026-06-30 決算短信(2026-08-06開示)
現値マーケットデータ 2026-08-08 市場データ

出典一覧

  1. EDINET DB — 企業基本情報・健全性スコア・最新決算(EDINET有価証券報告書ベース)
  2. EDINET DB — 5期財務時系列
  3. EDINET DB — セグメント別売上
  4. EDINET DB — 業界ベンチマーク
  5. TDNet 決算短信 — 速報値・会社予想(2026-05-13本決算 / 2026-08-06 Q1)
  6. EDINET DB — 大株主構成(大量保有報告書)
  7. 市場株価データ — 現値株価・時価総額(2026-08-08時点)
  8. EDINET DB — 競合他社(任天堂・サンリオ・タカラトミー)財務データ
  9. PR TIMES — ソニーグループ・バンダイナムコホールディングス・Gaudiyの戦略的パートナーシップ
  10. 日本経済新聞 — 実写映画「GUNDAM(仮称)」制作・北米法人設立
  11. gamebiz — アヤル・ファースト・インベストメント・カンパニーの株式取得
  12. 早耳ガンプラ情報局 — バンダイホビーセンター新工場の稼働状況
  13. レイヤーズ・コンサルティング — 東京証券取引所のPBR1倍割れ企業への資本コスト経営要請