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水産・農林業主要プレイヤー比較

【経済・水産・農林業】水産・農林業プレイヤー比較

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目次
  1. 1. 比較の枠組み
  2. 比較対象とその選定理由
  3. 評価軸
  4. 2. 全社財務サマリー(最新FY)
  5. 3. 財務比較(5か年推移)
  6. 売上高推移(億円)
  7. 営業利益推移(億円)
  8. 純利益推移(億円)
  9. 営業利益率推移(%)
  10. ROE推移(%)
  11. 営業キャッシュフロー推移(億円)
  12. 自己資本比率推移(%)
  13. 有利子負債推移(億円)
  14. D/Eレシオ推移(倍)
  15. 配当性向推移(%)
  16. 1株当たり指標(最新期FY2025・EPS / BPS)
  17. 4. セグメント別収益構成(最新期)
  18. 5. 各社個別評価
  19. 6. 比較サマリー — どこが勝っているか
  20. 評価マトリクス
  21. 勝者と理由
  22. 注目すべき構造変化
  23. 関連レポート

水産・農林業主要プレイヤー比較


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水産・農林業(水産大手×種苗×きのこ・農産加工×食肉畜産×農業)の上場10社を横断比較します。結論は §6「どこが勝っているか」(評価マトリクス)にあります。

  1. §1–2 枠組み・全社サマリー — 比較軸と最新期(FY2025)の主要指標(詳細な財務マトリクスは折りたたみ)
  2. §3 財務比較 — 成長性・収益性・キャッシュ・健全性・株主還元を5か年推移+グラフで
  3. §4–5 セグメント・各社個別評価 — 業態別収益構成と各社の個別評価(集約図に集約)
  4. §6 総合評価 — 評価マトリクスで「どこが勝っているか」を結論づけ

社名について: マルハニチロ株式会社は Umios株式会社 へ商号変更しました(EDINET コード E00015 は同一)。
本ページの表は現商号で表記し、沿革・歴史の記述は当時の社名のままとしています。
自己資本の定義: 一次資料で確認した行の意味に従い、JGAAPは純資産−非支配持分、IFRSは親会社の所有者に帰属する持分を用います。
APIで非支配持分が欠ける期は有価証券報告書でゼロか開示なしを区別して補完しています。

水産・農林業は水産大手・種苗・きのこ・畜産・農業という業態の異なる企業の混成で、業態間の構造差が極めて大きい。横断比較は傾向把握用であり、各社は同じ業態の中で読むのが本質。
FP&A 7項目読み替えと投資視点は補足編§7。


1. 比較の枠組み

比較対象とその選定理由

# 企業名 証券コード 選定理由
1 Umios株式会社 1333 対象水産3社で売上最大(1.08兆円)、総合食品・冷凍食品を展開
2 ニッスイ 1332 対象水産3社で売上2位(8,861億)、冷凍食品・すり身・養殖を展開
3 極洋 1301 水産専業(売上3,027億)、鮮魚・冷凍魚専門で業態純度が高い
4 サカタのタネ 1377 種苗業態の利益率代表(OPM13.2%)、海外ロイヤリティ収入モデル
5 カネコ種苗 1376 種苗業態の国内完結型、東日本の芝・野菜種苗での展開
6 ホクト 1379 きのこ業態代表(えのき・ぶなしめじ)、工場栽培の設備型収益
7 ユキグニファクトリー 1375 きのこ・農産加工(まいたけ・加工野菜)、対象10社でROE最高
8 アクシーズ 1381 食肉・畜産(鶏肉処理・養鶏)、直販モデル・高自己資本比率が特色
9 秋川牧園 1380 食肉・畜産(鶏肉・鶏卵・加工品)、動物福祉先行の小規模専業
10 ホーブ 1382 農業(イチゴ苗・施設園芸)、品種開発からの苗供給専業

10社は「単一の農業業界」ではなく専門分野が全く異なる企業の集合。
共通項は「TOPIX-17『水産・農林業』に分類される一次産業関連企業」であること。
期末は3月・5月・6月が混在し、ユキグニファクトリーのみIFRS、ほかはJGAAP。異業種混成のため横断比較は傾向把握用で、同一業態内(水産3社/種苗2社/きのこ2社/畜産2社)の比較が本質的理解の前提。

評価軸

本レポートでは以下の観点で各社を評価する:


2. 全社財務サマリー(最新FY)

データ基準日: 財務 = 各社 FY2025(期末は3月・5月・6月) 単位: 金額は億円、比率は %、EV/EBITDA は倍。
自己資本比率・ROE・D/E の分母は**自己資本 = 純資産 − 非支配持分(親会社株主帰属持分)**で統一。
会社公表の自己資本比率と一致する。
異業種混成のため、横断比較は傾向把握用。
各指標は同一業態内で読むのが本質。

指標 FY2025
Umios株式会社
FY2025
ニッスイ
FY2025
極洋
FY2025
サカタのタネ
FY2025
カネコ種苗
FY2025
ホクト
FY2025
ユキグニファクトリー
FY2025
アクシーズ
FY2025
秋川牧園
FY2025
ホーブ
売上高 10,786 8,861 3,027 929 645 831 345 264 80 24
営業利益 304 318 111 123 15 66 24 21 0 0
営業利益率 2.8% 3.6% 3.7% 13.2% 2.3% 8.0% 7.0% 8.0% -0.0% 1.6%
純利益 233 254 67 97 12 44 15 17 0 0
ROE 10.1% 9.2% 10.1% 6.0% 4.8% 8.0% 12.1% 8.0% 1.3% 3.3%
自己資本比率 33.7% 43.6% 36.5% 84.5% 50.7% 52.8% 32.7% 86.1% 30.6% 70.7%
営業CF 392 404 58 51 2 122 55 29 7 0
EV/EBITDA — — — — — — — — — —

業態典型値チェック: 水産3社(Umios・ニッスイ・極洋)のOPMは2.8〜3.7%。
対象10社ではサカタのタネがOPM13.2%で最高、ホクト8.0%・ユキグニ7.0%・アクシーズ8.0%が続きます。ROEと営業利益率の乖離: サカタのタネは自己資本比率84.5%でROE6.0%、ユキグニは自己資本比率32.7%でROE12.1%が10社最高。
EV/EBITDAは今回の一次資料セットでは同一基準に照合できないため全社「—」。

📊 最新期 財務マトリクス(科目 × 全10社/クリックで展開)

単位: 金額は億円(円÷1億・四捨五入)。DSO/DIO/DPO/CCC は日数、利益率・自己資本比率・ROE は %、EV/EBITDA は倍。FYは各社FY2025(期末は3月・5月・6月)。

科目 FY2025
Umios株式会社
FY2025
ニッスイ
FY2025
極洋
FY2025
サカタのタネ
FY2025
カネコ種苗
FY2025
ホクト
FY2025
ユキグニファクトリー
FY2025
アクシーズ
FY2025
秋川牧園
FY2025
ホーブ
【PL】
売上高 10,786 8,861 3,027 929 645 831 345 264 80 24
売上原価 9,330 7,469 2,639 344 550 593 — 198 60 19
営業利益 304 318 111 123 15 66 24 21 0 0
営業利益率 2.8% 3.6% 3.7% 13.2% 2.3% 8.0% 7.0% 8.0% -0.0% 1.6%
純利益 233 254 67 97 12 44 15 17 0 0
【CF】
営業CF 392 404 58 51 2 122 55 29 7 0
減価償却費 173 251 26 46 5 56 23 18 5 0
【資産】
流動資産 4,146 3,326 1,343 1,138 383 386 115 131 29 9
売掛金 1,333 1,074 369 221 197 68 25 25 9 6
棚卸資産 2,180 1,950 754 531 107 76 18 22 9 0
現預金 484 187 75 224 16 151 39 77 10 3
有形固定資産 1,582 1,809 286 488 79 568 178 109 39 1
のれん 57 21 11 6 — — 54 — — —
総資産 6,812 6,349 1,821 1,910 493 1,076 379 251 71 11
【負債・純資産】
流動負債 2,369 2,262 750 200 230 248 95 29 27 2
買掛金 450 564 100 69 209 17 29 5 5 1
固定負債 1,689 1,228 388 92 13 260 158 5 22 2
総負債 4,058 3,489 1,138 292 243 508 255 35 49 3
有利子負債 2,659 2,153 649 29 — 231 169 1 34 0
純資産合計 2,754 2,859 684 1,618 250 568 124 216 22 8
非支配持分 458 89 18 5 0 0 2 0 0 0
自己資本 2,296 2,770 665 1,613 250 568 122 216 22 8
自己資本比率 33.7% 43.6% 36.5% 84.5% 50.7% 52.8% 32.7% 86.1% 30.6% 70.7%
D/E比 1.16 0.78 0.98 0.02 — 0.41 1.36 0.00 1.57 0.01
【運転資本】
DSO(日) 45 44 45 87 112 30 — 35 43 87
DIO(日) 85 95 104 563 71 47 — 41 56 9
DPO(日) 18 28 14 73 139 11 — 9 30 18
CCC(日) 113 112 135 576 44 66 — 67 68 78
【収益性】
ROE 10.1% 9.2% 10.1% 6.0% 4.8% 8.0% 12.1% 8.0% 1.3% 3.3%
EV/EBITDA(倍) — — — — — — — — — —

出典: EDINET DB EDINET 財務データ(XBRL直接・2026-06-20取得)。
金額は円→億円換算(円÷1億・四捨五入)。自己資本はJGAAPでは純資産−非支配持分、IFRSでは親会社の所有者に帰属する持分。
自己資本比率=自己資本÷総資産、ROE=純利益÷期末自己資本、D/E=有利子負債÷自己資本
。
DSO=売掛金÷売上高×365、DIO=棚卸資産÷売上原価×365、DPO=買掛金÷売上原価×365、CCC=DSO+DIO−DPO。
有利子負債はローカルEDINETスナップショット(XBRL由来)の統一定義(借入金+社債+リース債務等)。
カネコ種苗は有利子負債が取得不能のためD/Eは「—」、ユキグニファクトリーは売上原価非開示のため運転資本指標は「—」。
各社 総資産=総負債+純資産合計 を検証済み。


3. 財務比較(5か年推移)

計算規約・出典(クリックで展開)
  • 5か年推移・最新期マトリクスとも出典は EDINET DB EDINET 財務データ(XBRL直接・2026-06-20取得・各社有報 FY2021〜FY2025)。金額は円→億円換算(円÷1億)。すべて生データからの導出で推測値は含まない。
  • 自己資本はJGAAPでは純資産−非支配持分、IFRSでは親会社の所有者に帰属する持分。自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産。ROE = 純利益 ÷ 期末自己資本。D/E = 有利子負債 ÷ 自己資本。配当性向 = 配当総額 ÷ 純利益。
  • DSO = 売掛金 ÷ 売上高 × 365、DIO = 棚卸資産 ÷ 売上原価 × 365、DPO = 買掛金 ÷ 売上原価 × 365、CCC = DSO + DIO − DPO。
  • 期末は3月・5月・6月が混在し、ユキグニファクトリーはIFRS、ほかはJGAAP。純損失期・データ欠落の配当性向/指標は「—」または▲表記。各社 総資産 = 総負債 + 純資産 を検証済み。
  • 異業種混成のため、業態を跨いだ単純比較は避け、同一業態内(水産/種苗/きのこ/畜産)で読むこと。

5か年推移は 行 = 企業 / 列 = 年 で表示(前年比の把握が容易)。
最新期の全科目(PL・CF・BS・運転資本・収益性)を縦に並べた詳細マトリクスは、§2 直下のトグル「最新期 財務マトリクス」を参照。

📈 3-1 成長性 売上・営業利益・純利益(5か年)

売上高(棒・左軸)と営業利益(線・右軸)の5か年推移(10社)

売上高推移(億円)

社名 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 4Y CAGR
Umios株式会社 8,090 8,667 10,205 10,307 10,786 +7.5%
ニッスイ 6,150 6,937 7,682 8,314 8,861 +9.6%
極洋 2,492 2,536 2,722 2,616 3,027 +5.0%
サカタのタネ 692 730 773 887 929 +7.6%
カネコ種苗 608 607 622 616 645 +1.5%
ホクト 739 709 730 794 831 +3.0%
ユキグニファクトリー 320 304 295 324 345 +1.9%
アクシーズ 212 217 241 258 264 +5.7%
秋川牧園 64 66 71 74 80 +5.5%
ホーブ 30 26 25 25 24 -5.6%

水産3社はいずれもFY2025まで増収基調で、ニッスイ(+9.6%)が海外食品の伸長で最速、マルハニチロ(+7.5%)も価格転嫁と冷食需要で続く。
種苗はサカタのタネ(+7.6%・海外ロイヤリティ・円安)とカネコ種苗(+1.5%・国内横ばい)で明暗が分かれる。
きのこ・畜産は数%の安定成長だが、農業のホーブ(▲5.6%)だけは需要縮小で減収。水産=漁業・養殖・食品加工の垂直統合が増収を支える業態である点が読み取れる。

営業利益推移(億円)

社名 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
Umios株式会社 162 238 296 265 304
ニッスイ 180 271 245 297 318
極洋 47 64 81 88 111
サカタのタネ 97 112 109 105 123
カネコ種苗 17 18 18 15 15
ホクト 60 20 ▲29 32 66
ユキグニファクトリー 78 50 22 28 24
アクシーズ 34 25 19 16 21
秋川牧園 3 1 0 0 0
ホーブ 1 1 1 0 0

ホクトはきのこの設備型ゆえFY2023に営業赤字(▲29億)へ転落し、価格改定・省エネ投資で66億まで急回復——菌床・電力コストが固定費構造に直撃する設備型の脆さと立ち直りを象徴する。
水産3社は5年で利益水準が継続改善(極洋は47→111億と2倍超)。
ユキグニファクトリーはFY2021の78億から24億へ正常化したが、これはきのこ価格の高騰一巡による。きのこ=設備型(固定費が利益変動を増幅)、水産=食品加工シフトで漸増という業態差で読むと構造が見える。

純利益推移(億円)

社名 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
Umios株式会社 58 169 186 209 233
ニッスイ 144 173 212 239 254
極洋 38 46 58 59 67
サカタのタネ 76 123 95 162 97
カネコ種苗 14 13 14 12 12
ホクト 40 25 ▲20 35 44
ユキグニファクトリー 47 30 12 14 15
アクシーズ 24 19 14 12 17
秋川牧園 2 2 2 1 0
ホーブ 1 1 1 0 0

水産大手は純利益でも安定増益(マルハニチロは58→233億と4倍)。
サカタのタネはFY2024に162億(資産売却益等の特殊要因)→FY2025に97億へ反落と純利益の振れが大きいが、種苗本業は黒字を維持。
ホクトはFY2023に▲20億の純損失を計上した唯一の社で、設備型の業績変動リスクを再確認させる。
畜産・農業(秋川牧園・ホーブ)は規模が小さく純利益は1億円未満まで縮小。

💰 3-2 収益性 営業利益率・ROE

営業利益率推移(%)

社名 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
Umios株式会社 2.0 2.7 2.9 2.6 2.8
ニッスイ 2.9 3.9 3.2 3.6 3.6
極洋 1.9 2.5 3.0 3.4 3.7
サカタのタネ 14.0 15.3 14.1 11.8 13.2
カネコ種苗 2.7 3.0 2.9 2.4 2.3
ホクト 8.1 2.8 ▲4.0 4.0 8.0
ユキグニファクトリー 24.4 16.4 7.4 8.6 7.0
アクシーズ 15.9 11.3 7.9 6.1 8.0
秋川牧園 4.1 1.7 0.3 0.2 -0.0
ホーブ 3.5 5.7 5.4 1.3 1.6

業態別の収益性序列が構造的に安定している。種苗のサカタのタネ(11〜15%)が品種権ロイヤリティモデルで突出、きのこ・畜産(7〜8%)、水産(2〜4%・天然資源コストの上限)、国内種苗のカネコ種苗(2〜3%)、農業・薄利畜産(0〜2%)の順。
ホクトの▲4.0%(FY2023)は設備型の固定費が赤字を増幅した結果で、価格改定後8.0%へ戻している。種苗=無形資産で価格決定力、水産=原料コストで薄利という業態の本質がそのまま利益率に表れる。

ROE推移(%)

社名 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
Umios株式会社 4.0 10.5 10.4 10.1 10.1
ニッスイ 8.5 9.1 9.8 9.6 9.2
極洋 9.5 10.9 12.2 10.1 10.1
サカタのタネ 6.8 9.8 6.9 10.1 6.0
カネコ種苗 6.6 5.8 6.1 4.8 4.8
ホクト 7.5 4.6 ▲4.0 6.4 8.0
ユキグニファクトリー 51.4 28.5 11.3 11.8 12.1
アクシーズ 13.9 10.4 7.1 6.0 8.0
秋川牧園 8.9 7.8 7.3 4.5 1.3
ホーブ 18.8 19.8 14.0 2.6 3.3

OPMとROEの逆相関が業態差を映す: サカタのタネはOPM13.2%でも自己資本比率84.5%の低レバレッジでROE6.0%に留まる一方、ユキグニファクトリーはOPM7.0%でも自己資本比率32.7%の高レバレッジでROE12.1%が10社最高。
水産3社は適度な財務レバレッジでROE9〜10%を維持。
秋川牧園はFY2025に1.3%まで低下(飼料高で本業がほぼゼロ利益)。
ユキグニのFY2021・51.4%は当時の高OPMと薄い自己資本の合成で、その後は正常化している。

💵 3-3 キャッシュ創出 営業キャッシュフロー

営業キャッシュフロー推移(億円)

社名 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
Umios株式会社 334 192 0 536 392
ニッスイ 459 291 34 545 404
極洋 60 ▲11 ▲62 ▲17 58
サカタのタネ 114 100 84 70 51
カネコ種苗 23 6 ▲16 22 2
ホクト 105 59 47 84 122
ユキグニファクトリー 82 56 31 53 55
アクシーズ 29 20 26 37 29
秋川牧園 8 4 4 4 7
ホーブ 4 1 1 ▲2 0

CFは純利益より会計操作の影響を受けにくく稼ぐ力の実態を映す。極洋はFY2022〜FY2024に営業CFが3期連続マイナスで、水産の在庫負担の重さが表れている。
対象水産大手2社はFY2023に営業CFが急減(Umiosはほぼゼロの小幅マイナス、ニッスイ34億)後、FY2024に大きく回復。
ホクトは設備型ながら減価償却が厚く営業CF122億を創出。水産=在庫変動でCFが荒れやすく、きのこ=設備型で減価償却が厚いという業態差が出る。

CCC(運転資本の重さ)横棒

同じ種苗でもCCCが576日(サカタのタネ)と44日(カネコ種苗)に割れる——「種苗だから」では説明できない。両社の差は事業モデルの違いに分解できる。

  • サカタのタネ CCC576日(DSO87・DIO563・DPO73): 海外売上が過半を占めるグローバル種苗企業で、欧米・アジア各地の作付けシーズンに合わせ、北米・南米等の採種地から数年分の種子を計画生産して世界中に備蓄する。種子は適切に保管すれば数年間発芽率を保てるため、不作・需要変動に備えた安全在庫を厚く積めること自体が競争力(DIO563日)。海外子会社経由の販売で回収も長め(DSO87日)。運転資本の非効率ではなく、グローバルIPビジネスの設計上の必然で、自己資本比率84.5%・ネットキャッシュだからこそ自己資金で賄える。
  • カネコ種苗 CCC44日(DSO112・DIO71・DPO139): 東日本中心の国内完結型で海外備蓄が不要なうえ、JA・農業資材ルートの仕入を買掛金209億・DPO139日と極端に長く回す商習慣で棚卸(DIO71日)を相殺し、CCCを44日まで圧縮。低マージンの国内種苗ゆえ運転資本を仕入先ファイナンスで賄う構造で、これも「効率が良い」というより業態・商流の特性。

他業態も同様に分解できる: 水産3社のCCC112〜135日は冷凍在庫の長期保管(DIO85〜104日)、きのこ・畜産のCCC66〜68日は工場栽培・直販の速い回転を反映。CCCは業態平均で括らず、各社の在庫政策×グローバル展開度×仕入決済条件で読むのが要点。
ユキグニファクトリーは売上原価非開示のため運転資本指標は算出不能(「—」)。

🛡️ 3-4 財務健全性 自己資本比率・有利子負債・D/E

自己資本比率推移(%)

社名 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
Umios株式会社 26.7 29.2 28.0 30.8 33.7
ニッスイ 35.6 37.5 39.5 41.1 43.6
極洋 34.7 32.7 32.5 36.7 36.5
サカタのタネ 83.9 84.9 85.7 83.1 84.5
カネコ種苗 45.7 46.3 50.3 50.2 50.7
ホクト 54.0 51.9 48.6 53.0 52.8
ユキグニファクトリー 25.9 29.0 31.3 29.9 32.7
アクシーズ 85.8 87.7 87.2 84.8 86.1
秋川牧園 35.7 36.3 35.2 31.0 30.6
ホーブ 59.2 66.5 71.1 68.5 70.7

有利子負債推移(億円)

社名 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
Umios株式会社 2,598 2,506 3,011 2,844 2,659
ニッスイ 1,842 1,821 2,112 2,123 2,153
極洋 412 431 540 596 649
サカタのタネ 28 15 15 36 29
カネコ種苗 — — — — —
ホクト 223 272 300 323 231
ユキグニファクトリー 184 186 176 183 169
アクシーズ 1 2 1 1 1
秋川牧園 22 23 25 34 34
ホーブ 0 0 0 0 0

D/Eレシオ推移(倍)

社名 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
Umios株式会社 1.82 1.56 1.69 1.37 1.16
ニッスイ 1.09 0.96 0.97 0.85 0.78
極洋 1.02 1.01 1.14 1.01 0.98
サカタのタネ 0.02 0.01 0.01 0.02 0.02
カネコ種苗 — — — — —
ホクト 0.41 0.50 0.59 0.59 0.41
ユキグニファクトリー 1.99 1.78 1.69 1.60 1.36
アクシーズ 0.01 0.01 0.01 0.00 0.00
秋川牧園 1.12 1.12 1.17 1.54 1.57
ホーブ 0.05 0.02 0.02 0.01 0.01

バランスシート構成(各社・総資産=100%/資産は上から流動資産→固定資産の標準BS構造)

財務健全性は業態で二極化する。
種苗・畜産のサカタのタネ(自己資本比率84.5%・D/E0.02)とアクシーズ(自己資本比率86.1%・D/E0.00)が実質無借金の要塞型BS——種苗は長期在庫を自己資金で賄い、畜産直販は運転資本が軽いため。
一方、水産大手は遠洋・輸入魚の在庫と設備で有利子負債が重く、Umios(旧マルハニチロ。D/E1.16・有利子負債2,659億)・ニッスイ(0.78)・極洋(0.98)は自己資本比率34〜44%。
きのこのユキグニ(D/E1.36)と畜産の秋川牧園(1.57)が最もレバレッジが高い。
カネコ種苗は有利子負債が取得不能のためD/Eは「—」だが、買掛金主体の運転負債構造で実質無借金に近い。
自己資本比率は一次資料の公表値と一致する。

🎁 3-5 株主還元・1株価値 配当性向・EPS/BPS

配当性向推移(%)

社名 FY2021 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025
Umios株式会社 36.4 12.4 15.5 24.2 21.7
ニッスイ 18.4 20.7 23.4 26.1 31.9
極洋 19.6 18.6 16.8 18.1 17.7
サカタのタネ 19.3 14.9 22.0 16.5 31.6
カネコ種苗 22.9 26.1 23.6 30.3 31.1
ホクト 47.1 75.4 — 36.1 35.8
ユキグニファクトリー 11.7 56.0 101.2 20.8 34.6
アクシーズ 19.7 26.0 37.8 43.7 32.2
秋川牧園 12.2 25.9 26.7 42.2 147.1
ホーブ — 29.5 37.8 189.4 153.7

配当性向=配当総額÷親会社株主帰属純利益。純損失期・配当総額が確認できない期は「—」。FY2025は秋川牧園147.1%、ホーブ153.7%と利益を上回る配当水準になっている。

1株当たり指標(最新期FY2025・EPS / BPS)

社名 最新FY EPS(円) BPS(円)
Umios株式会社 FY2025 460.0 4,557.7
ニッスイ FY2025 81.2 891.3
極洋 FY2025 558.0 5,600.1
サカタのタネ FY2025 213.8 3,729.7
カネコ種苗 FY2025 101.9 2,244.9
ホクト FY2025 133.1 1,817.4
ユキグニファクトリー FY2025 37.6 310.0
アクシーズ FY2025 306.2 3,846.6
秋川牧園 FY2025 6.7 523.3
ホーブ FY2025 32.8 992.9

EPS = 純利益 ÷ 期末発行済株式数(自己株式控除後)、BPS = 自己資本 ÷ 同。
株式分割・自己株消却の影響で5か年時系列は連続比較できないため最新期のみ掲載。
極洋(558.0円)・マルハニチロ(460.0円)はEPS水準が高く、株式数が少ない(極洋1,208万株)ことを反映する。


4. セグメント別収益構成(最新期)

社名 主要セグメント 収益構成・特色 補足
Umios株式会社 水産・加工 / 一般食品 / 商事 対象水産3社で売上最大。一般食品(冷凍食品・レトルト)も展開 輸入魚・遠洋漁業が主力
ニッスイ 水産・加工 / 食品 / ファインケミカル・養殖 すり身・冷食・海外食品・養殖・EPAを展開 代替タンパクにも投資
極洋 水産 / 加工食品 / 食品商事 鮮魚・冷凍魚の専業性が高い。カニ・エビ等甲殻類が高単価 商事部門で仕入と販売を垂直統合
サカタのタネ 野菜種苗 / 花卉種苗 / 海外 海外比率が高く、対象10社でOPM13.2%が最高 ブロッコリー・キャベツ等を展開
カネコ種苗 種苗 / 農業資材 / 芝草 東日本中心の国内型。芝種子をゴルフ場・公共工事向けに展開 海外展開は限定的
ホクト きのこ(えのき/ぶなしめじ)/ 加工品 工場栽培の設備型。FY2023赤字後に収益回復 FY2025 OPM8.0%
ユキグニファクトリー きのこ(まいたけ等)/ 農産加工 工場栽培+農産加工。ROE12.1%が業態内トップ。M&A由来ののれんを保有 高レバレッジが特色
アクシーズ 鶏肉処理 / 養鶏 / 精肉加工 一貫体制・直販モデルで自己資本86.1%。食肉業態内では高収益 鶏肉の生産から販売を垂直統合
秋川牧園 鶏肉 / 鶏卵 / 加工品 動物福祉・オーガニックで先行投資。OPMほぼ0%は構造的薄利 平飼い・無投薬養鶏
ホーブ イチゴ苗 / 施設園芸 イチゴ苗・施設園芸苗の極小専業。品種開発から苗供給まで手掛ける 需要縮小で減収傾向

業態の分化が明確。
水産大手(マルハニチロ・ニッスイ・極洋)・種苗グローバル(サカタのタネ)・国内種苗(カネコ種苗)・きのこ設備型(ホクト・ユキグニ)・畜産直販(アクシーズ・秋川牧園)・農業苗(ホーブ)。
「同じTOPIX-17水産・農林業でもビジネスモデルは全く別物」という点が最大の特徴。
セグメント別売上の数値データは別途(各社有報セグメント情報からの取得が必要)。


5. 各社個別評価

各社の個別評価サマリー(特色・強み・弱み・直近の動き)


6. 比較サマリー — どこが勝っているか

評価マトリクス

評価軸Umios株式会社ニッスイ極洋サカタのタネカネコ種苗ホクトユキグニファクトリーアクシーズ秋川牧園ホーブ
成長性★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
収益性★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
財務健全性★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ビジネスモデル★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
サイクル耐性★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
運転資本効率★★★★★★★★★★★★★★★★—★★★★★★★★★★★
総合★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

★が多いほど高評価(5段階)。色が濃い緑=強み、赤=弱み。総合は6軸を踏まえた結論。対象10社全社を掲載(業態混成のため、同一業態内で読むのが本質)。運転資本効率はCCCの短さ基準(種苗の長期在庫は構造要因のため低評価=非効率の意ではない/ユキグニファクトリーは売上原価非開示でCCC算出不能のため「—」)。

収益性ポジショニング(営業利益率 × ROE、バブル=売上規模)

勝者と理由

業態が異なるため「単一の勝者」は置かない。収益性と財務健全性ではサカタのタネが目立つ——営業利益率13.2%、自己資本比率84.5%、D/E0.02。
一方、ROEは6.0%、種子の長期在庫によりCCCは576日で、評価軸により見え方が変わる。

財務健全性の単年勝者はアクシーズ——食肉業態でOPM8.0%・自己資本比率86.1%・実質無借金(D/E0.00)という収益・財務構造。
一貫体制・直販モデルで運転資本も軽い(CCC67日)。
規模の小ささ(売上264億)と飼料相場感応度が弱点。

水産大手はROEで勝るが薄利・高在庫——極洋(ROE10.1%)・ニッスイ(9.2%)・Umios(旧マルハニチロ・10.1%)は適度なレバレッジでROE9〜10%を確保するが、営業利益率は2.8〜3.7%と薄く、有利子負債と冷凍在庫(CCC112〜135日)が重い。
成長性ではニッスイ(CAGR+9.6%・海外食品)が水産トップ。

きのこのホクトは設備型ゆえサイクル耐性が低い——FY2023の菌床危機(営業▲29億・純損失▲20億)で証明されたとおり、菌床・電力コストに業績が振れる。
FY2025は営業利益率8.0%・営業CF122億まで回復したが、設備型の固定費構造が変動リスクの源泉。

注目すべき構造変化


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