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長距離輸送を1社で抱え込まない — トラック中継制度が11月に動き出す

深堀投資-決算2026-10-19

【経済・陸送物流】連載・投資・決算【政治・規制改革】

#logistics#relay-transport#driver-shortage

目次
  1. 新制度は、すべてのトラックに中継を義務付けるものではありません
  2. 運転手の働き方を変えるには、会社間の運行設計が要ります
  3. 運送会社には稼働率、荷主には運賃の論点が生まれます
  4. 制度の利用は支援策と現場の合意で決まります
  5. 見立てと監視ポイント
  6. 腹落ち確認の問い
  7. もっと詳しく知りたい人へ

長距離輸送を1社で抱え込まない — トラック中継制度が11月に動き出す

会社横断のトラック中継制度の概要

長距離トラックの輸送力は、走れる車両だけでなく、長時間運転を担える人をどう確保するかにも左右されます。政府は10月16日、会社をまたいだ中継輸送を進める改正法の施行日を11月1日と決めました。

新制度は、すべてのトラックに中継を義務付けるものではありません

今回の日程決定は、物流効率化法の一部を改正する法律を11月1日に施行する政令の閣議決定です。
改正法そのものは5月20日に公布済みで、10月16日の発表で施行日が確定しました。
法律が新たに成立した日と、制度が始まる日を混同しないことが大切です。

制度の中心は、複数の運送会社が共同で中継輸送の計画を作り、国の認定を受けられる枠組みです。
中継輸送とは、長距離の一行程を複数の運転手で分担する方法で、途中の施設で運転手を交代したり、別の車へ荷物を積み替えたりします。
認定計画には関連する手続きの特例が設けられ、施設の整備や事業の実施を支える仕組みも含まれます。

この制度は全路線への一律導入ではありません。
事業者や荷主などに連携への努力を求める一方、実際に中継を導入するかは、輸送経路、荷物、車両、拠点の条件を合わせて決めます。
認定を受けたから運行コストが必ず下がるわけでもありません。
手続きの特例は認定計画に含まれる事業に結び付き、すべての路線や営業所の許認可をまとめて免除する制度ではありません。
運転手の労務管理、安全確認、荷物の受け渡し責任も、参加会社の間で決めておく必要があります。
さらに、共同拠点の運営主体や、繁忙時に各社が使う時間帯、遅延や破損の負担を決めなければ、認定書があっても日々の配車は回りません。
制度は共通の手続きを整えますが、運行上の取り決めまでは代行しません。

運転手の働き方を変えるには、会社間の運行設計が要ります

長距離輸送を一人の運転手が往復で担う形は、拘束時間や休息の確保が難しくなりやすい構造です。
2024年4月から時間外労働の上限規制が運転手にも適用され、人手不足と合わせて、従来の長距離運行を続けにくくなっています。
国交省はこの課題への対応として、一つの長距離輸送を複数の運転手で分担する中継を法改正の目的に掲げました。

ただし、道の途中で運転手を替えれば終わりではありません。
運送会社が違えば、車両の仕様、運行管理、荷物の受け渡し、保険や責任範囲もすり合わせる必要があります。
会社をまたぐ計画を認定し、手続きの束ね方や施設支援を定めたのは、個社の努力だけでは調整しにくい部分を共通の枠に乗せるためです。
さらに、拠点の固定資産税の特例や資金面の支援策も用意されますが、認定計画であることや各制度の要件が条件です。
用地取得費や運行管理システムの費用が自動的に補われるわけではありません。
税負担の軽減は施設投資の初期負担を和らげても、毎日の人件費、保守費、荷役費を埋めるものではありません。
利用会社や取扱量が十分に集まり、施設の稼働率が上がるかは別の経営判断として残ります。

中継輸送の便益と追加コスト

西濃運輸と福山通運は2026年1月、浜松で運転手が相手会社の車両に乗り換える実証を行いました。
従来は宿泊を伴った運行を日帰りに変えられたと報告しています。
ただし、これは新法の認定を受けた運行として発表されたものではなく、会社側も費用削減額を公表していません。
現場で実施可能な型を試した例として読むのが適切です。
実証では車両の仕様をできる限りそろえ、双方の運行管理システムを使って位置を追跡しました。
会社間の運転手交代は、運行距離だけでなく、車両の操作差や運行情報の共有まで設計して初めて成立することが分かります。

運送会社には稼働率、荷主には運賃の論点が生まれます

制度を使う上場運送会社には、西濃ホールディングス、NIPPON EXPRESSホールディングス、SGホールディングスなど、長距離路線や物流拠点を持つ企業があります。
複数社が幹線で連携できれば、運転手をより短い区間で交代させ、車両や人員を別の運行に回せる可能性があります。
西濃運輸の例はその一つですが、これらの企業が新制度に基づく認定を申請した、または採算が改善したという発表ではありません。
制度から推定できるのは、既存の拠点や運行網を他社と共同利用できる会社ほど、受け渡し場所や運行枠を調整する役割を担いやすいことです。
その場合も、拠点運営の費用と他社利用の対価が釣り合うかは個別に検証が必要です。

中継地点では荷物の積み替えや運転手の引き継ぎが増え、施設の確保、作業員、運行管理の費用が発生します。
衆議院の審議で国交省は、中継によって積み替えが増えれば費用が上がる場合がある一方、帰り荷の確保や運転手の拘束時間短縮が期待できると説明しました。
上昇分を荷主へ適切に転嫁できるよう取り組むとも答弁しています。

このため、物流会社側では「運転時間を短くできたか」だけでなく、荷物一個あたりの追加作業費、施設の稼働率、空車や帰り荷の減少が、追加費用を上回るかが採算を決めます。
会社が複数になると、運行情報をどの時点で共有するか、遅れを次の会社へどう伝えるかも運営コストになります。
西濃運輸の実証が位置情報を共有したのは、荷物が受け渡し地点へ着く時刻を双方で合わせる必要があるためです。
車両や人員を別の路線へ回せる便益は、共通の配車と情報連携を継続できるかにかかります。
荷主の製造・小売部門では、輸送を確保できる代わりに中継料金や運賃の見直しを受けることがあります。
配送費の予算を組むときは、運賃改定だけでなく、拠点での荷待ちや積み替えによる納期も同じ経路ごとに見積もる必要があります。
たとえば運送会社は、従来の運転時間と空車距離に、中継拠点の利用料、荷役の追加時間、車両の稼働回数を重ねて路線別の採算を見ます。
荷主側は同じ路線の運賃、納期、荷待ち時間を改定前後で比べ、運賃上昇がどの工程の追加費用に対応するかを確認できます。

制度の利用は支援策と現場の合意で決まります

認定計画には、関連手続きの特例や施設整備に関する支援措置があります。
これにより、複数の会社が使う拠点を整備する際の制度面・資金面の選択肢は増えます。
ただし、支援は認定や別途の申請・要件と結び付くため、すべての中継施設が自動的に補助を受けるわけではありません。

輸送サービスの買い手である荷主の協力も欠かせません。
積み替えに耐える梱包、到着時刻の柔軟性、追加費用の契約反映がそろわなければ、運送会社だけが作業と費用を引き受けることになります。
物流効率化法の新しい枠組みは、運送会社の生産性を一方的に高める政策ではなく、荷主も含めた運行と費用の分担を変える仕組みです。

見立てと監視ポイント

制度施行は会社横断の中継を広げる入口ですが、利益改善が決まった段階ではありません。
実際の認定計画、運行実績、料金交渉の三つがそろって初めて、輸送力の改善が利益や荷主のコストにどう表れるかを判断できます。

腹落ち確認の問い

中継で運転手の拘束時間が短くなったとき、会社の採算も改善したと判断するには何を見ればよいでしょうか。

考え方

運転時間の短縮だけでは足りません。
路線ごとの積み替え費用や拠点利用料、空車距離、運行本数、運賃への転嫁を合わせて見る必要があります。
短くなった時間を別の運行に使え、追加費用も運賃に反映できた場合に、輸送力の改善が利益へつながりやすくなります。

もっと詳しく知りたい人へ

出典