AI導入を計画する企業が4社に1社、それでも半数は予定なし — カナダ統計局が見た実利用との距離
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AI導入を計画する企業が4社に1社、それでも半数は予定なし — カナダ統計局が見た実利用との距離

「AIを導入する予定がある」という企業は増えています。
ただし、計画の数字がそのまま導入の成果になるわけではありません。
カナダの企業調査では、1年以内の導入を見込む割合が上がる一方、過半数は予定を決めていません。
勢いだけを見て予算を積むと、実際に使われるまでの距離を見落とします。
1年以内に導入を計画する企業は25.2%
カナダ統計局が10月1日に公表した調査では、2026年第3四半期に「今後12か月以内にAIを使う予定」と答えた企業は全体の25.2%でした。
2025年第3四半期の14.5%、2024年第3四半期の10.6%から上昇しています。
一方、「使う予定はない」は2024年の71.8%から、2025年に66.7%、2026年に52.7%へ下がりました。
「分からない」は2026年に22.1%です。
計画ありは4社に1社まで広がりましたが、予定なしと未定を合わせると74.8%に達します。
導入の広がりと、まだ決めていない企業の多さが同時に見える調査です。
数字の対象は、カナダ国内の企業です。
調査回答は9,601件、回答率は対象21,161社に対して約45%でした。
回答は7月2日から8月6日に集められています。
これは企業への質問による見通しで、AIを使った結果や生産性の改善を直接測った数字ではありません。
計画する企業が考えている用途にも偏りがあります。
回答者のうち、データ分析は41.7%、大規模言語モデル(文章や指示を処理するAI)は39.3%、チャットボットは31.8%でした。
複数回答のため合計は100%を超えます。
これらは全企業に占める比率ではなく、AI導入を計画する企業の中で検討されている用途です。
計画と実利用を同じ数字として読めない理由
計画は先行指標、実利用は結果に近い指標です。
カナダ統計局の同じ資料では、2025年第3四半期に翌12か月の利用を計画した企業が14.5%だったのに対し、2026年第2四半期の調査では過去12か月に実際に使った企業が19.2%と報告されています。
前年の計画値より後の実利用値が大きい、という並びです。
しかし、これは「計画した14.5%の企業のうち、何社が使い始めたか」を追跡した結果ではありません。
調査時期が異なり、質問も未来の予定と過去の利用で違います。
企業の母集団が同じまま追跡された数字ではないため、14.5%から19.2%への差を計画達成率や導入成功率に置き換えることはできません。
実務では、この違いが予算の置き方を変えます。
導入計画の回答が増えても、利用料だけを先に全社分確保すればよいとは限りません。
データ整備、現場の業務手順の変更、アクセス権限、教育、利用状況の点検にも時間と費用がかかります。
まず小さな対象業務で試し、使う人、処理する仕事、導入前後で比べる指標をそろえる必要があります。

計画を実装に変えるには、技術を選ぶ前に業務の入口と効果の測り方を決めることが欠かせません。導入後に「使われた回数」だけを追うと、処理時間や品質が改善したかを判断できません。
大企業だけでなく、中堅企業にも広がる計画
企業規模で見ると、従業員1〜4人の企業でも25.6%が導入を計画していました。
5〜19人では21.0%、20〜99人では32.8%、100人以上では37.5%です。
最大規模の企業ほど割合は高いものの、計画が大企業だけに限られているわけではありません。
ただし、小規模企業の25.6%という数字は、従業員1〜4人の企業のうち導入を考えている割合です。
全企業のうち従業員1〜4人が占める割合でも、すでにAIを業務に組み込んだ割合でもありません。
少人数の会社では、専任の情報システム担当を置けない場合もあります。
導入の意思があっても、契約確認やデータ管理を誰が担うのかが実行速度を左右します。
業種差もはっきりしています。
専門・科学・技術サービスでは54.8%、情報・文化産業では48.0%、金融・保険では35.5%が導入を計画していました。
製造業は24.4%、小売は16.0%、建設は18.3%です。
デジタル業務の比重が高い業種では予定が先行し、現場作業や在庫を扱う業種では使い道を業務に合わせる検討が残っている可能性があります。
ただし、この業種差だけから導入障壁の原因までは特定できません。
同じ「AI導入」でも、文章の下書き、問い合わせ対応、予測、検査画像の判定では、必要なデータと誤りの影響が違います。
業種別の比率を自社の導入目標にそのまま当てはめるより、どの作業を置き換え、どの判断を人が持ち続けるかに分解する方が予算に結びつきます。
予算は利用料より「使える状態をつくる費用」から考える
企業のAI投資を検討するときは、ライセンス料と計算資源だけでなく、導入後に生じる作業も費用計画に含めます。
社内文書を検索させるなら、文書の更新頻度や閲覧権限を整理しなければなりません。
顧客データを扱うなら、外部サービスへの送信条件や保存期間も契約と運用の両方で確かめます。
比較しやすい単位は、全社一律の「AI予算」ではなく、業務ごとの試行です。
例えば問い合わせ対応なら、導入前の1件当たり処理時間、回答の修正率、担当者への引き継ぎ率を基準に置けます。
処理時間が短くなっても、確認作業や誤回答の対応が増えれば、利益への効果は小さくなります。
導入前に測り方を決めておけば、追加投資や契約更新の判断材料になります。
カナダ政府も、企業側の計画だけで実利用が進まない要因として、技能と実装支援を挙げています。
9月25日の発表では、企業でのAI活用と人材育成をつなぐ職場実習に、5年間で最大1億6,200万カナダドルを投じ、1万人の機会を支援するとしました。
これは成果の実績ではなく、2026〜27年度から始まる支援計画です。
企業の導入率と同時に、現場で試行を回す人材や支援策も政策課題になっています。
次に見るのは計画比率の先
この調査を次の判断につなげるには、少なくとも三つの変化を追いたいところです。
- 予定から実利用への移行: 次回以降の実利用率が上がるか。予定と実績の質問時期が違う点を踏まえ、同じ設問・母集団での比較ができるかも確認します。
- 規模・業種ごとの差: 小規模企業や製造、小売、建設で計画が実利用に変わるか。計画比率の上昇が特定の業種だけで起きていないかを見ます。
- 導入後の業務成果: 生産性、品質、顧客対応など、実際の改善を示す指標が公表されるか。利用社数だけでは投資効果を評価できません。
計画の広がりは、AIを試す企業が増えていることを示します。
ただし、各社が予算に反映する際に必要なのは、世の中の導入率を追いかけることではなく、自社のどの作業に使い、どの数値が動いたら継続するかを決めることです。
腹落ち確認の問い
自社のある業務でAI導入計画を立てるとしたら、利用料を承認する前に、どの指標を導入前後で比較すれば「使った」から「価値が出た」へ判断を進められるでしょうか。
考え方
まず業務の出発点を測ります。
問い合わせ対応なら処理時間だけでなく、修正率や担当者への引き継ぎ率も候補です。
導入後に同じ条件で測れば、時間短縮が確認作業の増加で相殺されていないかを確かめられます。
指標はAIの機能ではなく、業務上の目的から選びます。
もっと詳しく知りたい人へ
- カナダ統計局「企業のAI利用計画、2026年第3四半期」 — 計画率、回答期間、規模・業種別の内訳を確認できます。
- カナダ統計局「企業によるAI利用、2026年第2四半期」 — 過去12か月の実利用について、調査上の定義と推移を確認できます。
- カナダ政府「AI for All 国家戦略」 — AI人材、企業導入、国内計算基盤を政府がどう位置付けているかが分かります。
- カナダ政府「AI関連の職場実習1万人を支援」 — 企業導入を人材育成につなぐ施策の内容を確認できます。
出典
- 一次資料: Statistics Canada, Analysis on planned use of artificial intelligence by businesses in Canada, third quarter of 2026(2026-10-01公表)。計画率、調査期間・回答数、規模・業種別の値を照合しました。
- 政府発表: Innovation, Science and Economic Development Canada, AI-related work placements(2026-09-25)。支援額、期間、対象機会数を確認しました。
- 照合メモ: 2026年第3四半期の計画値と第2四半期の実利用値は、質問内容と調査時期が異なります。同一企業を追跡した転換率とは解釈していません。実利用の原ページは開けなかったため、同値は主資料内に掲載されたカナダ統計局の比較値として扱いました。