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米国のウラン生産が2鉱山に広がった — 年間生産を上回る販売は在庫が支えた

深堀投資-決算2026-09-30

【国際・海外企業】連載・投資・決算米国【経済・鉱物資源】

#投資-決算

目次
  1. 事実:2つの生産拠点と在庫販売が並んだ
  2. 構造:生産の拡大と販売の量は別の時間軸
  3. 米国の供給回復と契約の見え方
  4. 含意:在庫と新しい生産設備を一緒に見る
  5. 見立てと監視ポイント
  6. 腹落ち確認の問い
  7. もっと詳しく知りたい人へ

米国のウラン生産が2鉱山に広がった — 年間生産を上回る販売は在庫が支えた

2つの生産拠点の立ち上げが販売在庫を支える流れ

ウランを売る量が、その年に掘り出した量を上回ることがあります。
米国のUranium Energy Corp(UEC)が9月29日に公表した2026年度決算では、2つの鉱山で生産を増やす一方、販売量の一部を過去に積み上げた在庫から賄いました。

事実:2つの生産拠点と在庫販売が並んだ

UECの2026年度は2025年8月から2026年7月までです。
同社はこの期間に、ウラン鉱石を処理した精鉱を229,294ポンド生産し、会計年度の終わりまでに生産を始めてからの累計は359,260ポンドになりました。
1ポンド当たりの通期総費用は39.94米ドル、減価償却などを除く現金費用は34.24米ドルでした。
どちらも同社独自の指標で、採掘費用を共通ルールで比較できる業界標準値ではありません。

ここでいう精鉱は、鉱石から取り出したウランを乾燥させ、ドラム缶に詰めたU3O8(イエローケーキ)です。原子炉で使う燃料そのものではなく、転換・濃縮・燃料加工へ進む前の材料です。

生産の勢いは年度末に上がりました。
ワイオミング州のChristensen Ranchとテキサス州のBurke Hollowを合わせた第4四半期の生産は82,744ポンドで、第3四半期の32,195ポンドから157%増えました。
同社独自の生産費用指標は1ポンドあたり54.61米ドルから36.54米ドルへ33%下がりました。

Burke Hollowは第4四半期に初めて丸々1四半期の生産を記録しました。
生産量は17,352ポンドです。
新しい生産区画全体を使い切った数字ではなく、会社は一部の井戸で水の流れや薬液の条件を確かめながら立ち上げていると説明しています。

一方、販売は400,000ポンドでした。
UECは販売分を在庫から出し、平均実現価格93.13米ドルで売ったと発表しています。
これにより年度売上は37.3百万米ドル、粗利益は16.9百万米ドルになりました。
生産量との差170,706ポンドは単純な引き算です。
購入や期首在庫の出入りもあるため、この差をそのまま「当年度に取り崩した在庫量」とは読めません。

構造:生産の拡大と販売の量は別の時間軸

ウラン鉱山では、生産が始まってすぐに設計能力へ届くわけではありません。UECは井戸の列を少しずつ増やし、設備の稼働条件を確かめながら段階的に出力量を上げています。

同社が採用するISR(地層内回収)は、地上から井戸を通して溶液を地下へ送り、鉱石の中のウランを溶かして、別の井戸から地上へ戻す方法です。
通常の採掘のように鉱石を地上へ運び出さず、地下の鉱石をその場で処理します。

地下で溶かしたウランを井戸と処理施設で製品にする流れ

Burke Hollowでは地下から回収したウランを樹脂に吸着させ、その樹脂をHobson中央処理施設へ運んで精鉱に仕上げます。
井戸群の立ち上げと、製品を出荷できる状態にする工程の両方がそろって初めて、販売可能な量になります。

生産費用の数字にも注意が要ります。
UECの「総費用/ポンド」は、当期生産分に対応する在庫への費用計上額を当期生産量で割った、会社独自の指標です。
米国会計基準に基づく標準指標ではなく、売却した鉱石の原価を示す数字でもありません。

そのため、販売価格93.13米ドルから生産費用39.94米ドルを引いて、1ポンドあたりの利益とみなすことはできません。
販売した在庫がいつ生産・購入されたか、在庫にどの費用を割り当てたかが異なるためです。
売値と生産費の差だけで、年度の採算を決めつけると実態を取り違えます。

販売の背景には、期をまたぐ在庫の使い方があります。
UECは2026年7月末にU3O8在庫1,256,000ポンドを持ち、別に2つの処理施設内に製品化済みの精鉱359,260ポンドを保有していました。
報告書の「流動資産」753百万米ドルには現金495百万米ドルだけでなく、上場株式と市場価格で評価したウラン在庫も含まれます。
会社に借入金がない点は資金繰りの余地を示しますが、753百万米ドル全額をすぐ使える現金と考えるのは誤りです。

米国の供給回復と契約の見え方

政府統計では、米国内の生産施設による2025年のU3O8生産は約2.1百万ポンドで、2024年の657,000ポンドから増えました。
ただしこれは暦年の施設生産量です。
UECの数字は7月末決算で、対象期間が一致しないため、単純な市場シェア比較には使えません。

同じく米国でISRを進めるUr-Energyは、2026年6月末時点で、10社への長期販売契約に基づき2026年から2033年に約5.75百万ポンドを納入する計画を開示しています。
これは8年間の累計で、年あたりの受注量ではありません。
比較すると、UECの開示は在庫を活用した当期販売と生産立ち上げに重心があり、Ur-Energyは複数年の納入予定を示しています。
いずれも、鉱山の生産能力だけでなく、在庫と契約をどう組み合わせるかが事業の進み方を左右します。

UECはさらに、米国家核安全保障局(NNSA)が情報提供依頼で示した年間4百万ポンドの米国産ウラン需要に応えられると発表しました。
納入開始時期は早ければ2030年とされていますが、これは市場調査のための情報依頼であり、UECが受注した契約ではありません。
会社の能力表明と実際の売上見込みは分けて読む必要があります。

含意:在庫と新しい生産設備を一緒に見る

この決算が示すのは、販売量の拡大と鉱山の増産が同時に起きても、同じ年度内でぴったり一致するとは限らないことです。
在庫を持つ会社は、需要がある時期に製品を出しながら、新しい井戸や処理工程を立ち上げられます。
ただし、販売を先行させれば在庫は減るため、翌期以降の供給余力を確かめる必要があります。

事業計画に当てはめるなら、販売数量、平均実現価格、期末在庫、鉱山別生産量を分けて予算化します。
平均販売価格が高くても、販売在庫の取得原価や在庫の評価額が違えば粗利の動きは異なります。
UEC自身も期末在庫を市場価格で評価した金額と、処理施設で製品化済みの数量を別々に開示しており、計画ではこの区分を保つ必要があります。

設備投資の見積もりにも段階差があります。
Burke Hollowは第4四半期に製品を出しましたが、最初は一部の井戸に限って運転条件を調整していました。
生産量が計画に届かない時、地質、許認可、井戸の追加、中央処理施設のいずれが原因かで、追加費用と立ち上がり時期は変わります。
プロジェクト管理では、生産量だけでなく許認可済みの井戸数や処理工程の稼働状況も分けて追うと、遅れの原因を切り分けやすくなります。

見立てと監視ポイント

次の決算では、まず第4四半期の生産ペースが新年度も続くかを確認します。
Burke Hollowの稼働範囲拡大、追加井戸の許認可、Christensen Ranchの生産量がそろって伸びれば、増産が一時的なものかどうかを判断しやすくなります。

次に見るのは、生産ポンドあたり総費用の定義を保ったまま比較できるかです。
費用指標が下がっても、州税や新しい井戸の立ち上げ費用、処理施設の稼働率が変われば意味は違います。
販売量と期末在庫が同時に減る場合は、現金化が進んだのか供給余力が縮んだのかを分けて確認します。

最後に、政府の情報依頼が正式な調達や複数年契約へ進むかを見ます。4百万ポンドという数字が契約量に変わらない限り、会社が示した能力表明だけで将来売上を積み上げることはできません。

腹落ち確認の問い

生産量を上回る販売を続ける会社を評価する時、どの数字を組み合わせて「成長」と「在庫の取り崩し」を見分けますか。

考え方

販売量だけでは判定できません。
鉱山別の生産量、期末在庫の数量、在庫からの販売であるか、平均実現価格、費用指標の定義を一緒に追います。
生産が増え在庫も維持されるなら供給能力の拡大が進んでいる可能性があります。
販売が伸びても生産が追いつかず在庫が減るなら、売上の伸びが次年度も続くかを別に検討します。

もっと詳しく知りたい人へ

出典(一次/二次の切り分け)

一次資料はUECの9月29日付通期決算、第3四半期決算、米国エネルギー情報局の2025年統計、Ur-EnergyのSEC提出書類です。
発表日・対象期間・ポンド数・費用指標の定義を照合しました。
UEC発表では「流動資産」に現金以外の株式とウラン在庫が含まれ、処理中在庫等は除外されます。
NNSAの年間4百万ポンドは情報提供依頼に記された需要で、落札・受注の事実ではありません。
World Nuclear Newsの記事は業界全体の動向を補う二次資料として参照しました。