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家庭の電気代に網の維持費が乗る — 北海道電力の料金改定と利益予想をつなぐ数字

深堀投資-決算2026-09-26

【経済・電力】連載・投資・決算【政治・産業政策】

#投資-決算#送配電網#電気料金改定

目次
  1. 家庭のモデル料金は月481円、4.3%上がります
  2. 送配電網の値上げは、家庭へそのまま掛け算されません
  3. 背景にあるのは工事費と金利の上昇です
  4. 利益予想の上方修正を、料金値上げのもうけと読み違えない
  5. 家計と事業予算では、基本料金と使用量を別々に見ます
  6. 次は、実際の請求と送配電会社の費用回収を見ます
  7. 腹落ち確認の問い
  8. もっと詳しく知りたい人へ

家庭の電気代に網の維持費が乗る — 北海道電力の料金改定と利益予想をつなぐ数字

送配電網の費用が電気料金に移り、家計と会社の予算に届く流れ

発電所で使う燃料の値段が変わらなくても、電気を家まで運ぶ線や変電所を保つ費用が上がれば、毎月の請求は変わります。
北海道電力が9月25日に公表した料金改定は、電気代を「発電する費用」だけでなく「届け続ける費用」から読む必要を示しました。

家庭のモデル料金は月481円、4.3%上がります

北海道電力の試算では、従量電灯Bで契約電流30A、月230kWhを使う家庭の料金は、2026年11月分から月481円、4.3%上がります。
試算上の月額は11,115円から11,596円です。
消費税と再生可能エネルギー賦課金を含みますが、燃料費等調整額は含まれていません。

内訳を見ると、30A契約の基本料金は1,254円から1,716円30銭へ462円30銭上がります。
電力量料金は各段階で1kWhあたり8銭の引き上げです。
230kWhなら使用量に応じた増加は約18円となり、試算上の増額の大半は基本料金です。
節電して使用量を減らしても、契約容量に応じた部分は残ります。

実際の請求額が全家庭で481円増えるという意味ではありません。
使用量、燃料費調整額、再生可能エネルギー賦課金、料金メニューによって変わります。
北海道電力自身も、試算は標準的なモデルであり、実負担は利用状況により異なると説明しています。

送配電網の値上げは、家庭へそのまま掛け算されません

電気を運ぶ送電線や変電所、配電線を利用する料金を託送料金と呼びます。
発電所から家庭へ電気を届ける過程で、小売会社が送配電会社へ支払う費用です。
北海道電力は、北海道電力ネットワークの改定を受けて、規制料金や自由料金などに変動分を反映すると発表しました。

北海道電力ネットワークが示した需要側の低圧託送料金の平均単価は、税抜で1kWhあたり10円23銭から12円12銭へ上がります。
差は1円89銭です。
これはネットワーク全体の収入を販売電力量などで割った平均値で、家庭の請求額へそのまま1円89銭を掛ける料金表ではありません。
実際の小売料金には基本料金や燃料費調整などが別に組み合わさります。

同じ11月から、中国電力ネットワークも低圧の平均単価を税抜9円34銭から10円46銭へ改定する予定です。
引き上げ幅は1円12銭で北海道とは異なります。
送配電網を維持する同じ制度の下で、各社の設備や需要の条件を反映した地域別の料金になります。

中国電力ネットワークは、物価・労務費・金利の上昇に加え、人口減少や省エネによって電力需要が当初の想定を下回ったことも理由に挙げています。
北海道の発表が費用上昇を中心に説明しているのに対し、中国側は料金収入の減少も明記しました。
送配電網の費用は工事単価だけでなく、利用量が見込みを下回ると、同じ設備費を少ない電力量で負担する構造にも左右されます。

そのため、地域ごとの上げ幅を単純に比べて「どちらの電力会社が割高か」と結論づけることはできません。
平均単価の算定方法、需要密度、設備更新の時期、規制期間の前提が違うためです。
公表された単価は改定の方向を示す材料であり、個別家庭の請求額は各社の料金表と契約条件で確かめる必要があります。

送配電会社の費用が小売料金へ届く経路と、請求書で変わる項目

背景にあるのは工事費と金利の上昇です

北海道電力ネットワークは、物価上昇による資材費・人件費の増加と、金利上昇による資金調達費の増加を改定理由に挙げました。
送配電設備の更新や再生可能エネルギー導入のための増強を進めるなか、効率化だけでは費用上昇分をすべて吸収できないと説明しています。

日本の送配電料金には、必要な投資とコスト効率化を両立させるレベニューキャップ制度があります。
これは国の審査を受けた複数年の事業計画に基づき、送配電会社が確保できる収入の見通しを定める仕組みです。
北海道ネットワークが公表した2023〜2027年度の5年間の収入見通しは、従来の1兆59億円から544億円増えて1兆603億円になりました。
これは5年分の合計で、1年ごとに544億円増える意味ではありません。

利益予想の上方修正を、料金値上げのもうけと読み違えない

北海道電力は同じ日に2027年3月期の業績予想も修正しました。
7月末時点の予想と比べ、売上高は9,700億円から1兆250億円へ、営業利益は480億円から610億円へ、経常利益は300億円から460億円へ、純利益は220億円から330億円へ引き上げました。

会社は売上高の増加について、燃料価格上昇に伴う燃料費等調整額や他社への販売電力料の増加、託送料金の見直しを挙げています。
経常利益についても託送料金の見直しなどを修正理由にしています。
ただし、会社は託送料金改定だけの利益寄与を分けていません。
値上げ額がそのまま小売会社の利益になるわけでもありません。
送配電会社側には設備・工事費の増加があり、小売料金には燃料費の変化も同時に反映されます。

修正後の純利益330億円は、前期実績の約440億円をなお下回ります。
7月予想からの改善と、前年からの減益見込みは両立します。
予算や決算を読む際は、電気料金の改定による売上増と、燃料費・調達費・設備費の増加を分け、どの項目が利益に残るかを追う必要があります。

前年の純利益から見ると、修正後予想は約25%低い水準です。
7月時点の予想を上回ったという比較は、期初予想に近づいたことを表しますが、事業環境が前年より改善したことを意味しません。
株主や取引先が業績を読むときも、予想修正率だけでなく、燃料費が落ち着いた場合やネットワーク費用を反映した後の利益率を確かめます。

また、送配電会社が回収する収入は、設備更新と安定供給を支える原資です。
認可された収入見通しが上がったからといって、親会社の小売部門に同額の利益が増えるとは限りません。
送配電会社の費用増、小売会社の支払増、需要家への料金反映が別々の法人・勘定を通るためです。
開示に寄与額の内訳がない間は、全体予想の増額を料金改定だけの成果に割り当てない読み方が安全です。

家計と事業予算では、基本料金と使用量を別々に見ます

今回の家庭モデルでは、増額の多くを契約容量に応じる基本料金が占めました。
会社や店舗の高圧契約でも、北海道電力が公表した一般料金の基本料金は1kWあたり月2,880円20銭から3,157円10銭へ上がります。
仮に請求の基準となる契約電力が100kWなら、この基本料金部分の差は月27,690円です。
実際の請求は契約種別や力率などにも左右されます。

家計なら、料金プラン、契約アンペア、月ごとの使用量を並べると、節電で減らせる部分と固定的に残る部分が分かります。
工場や店舗なら、使用電力量だけでなく契約電力とピーク需要も確認します。
予算では燃料費調整を除く固定・従量料金の変更を先に分け、燃料価格のシナリオを別に置くと、値上げの影響を一つの数字へ混ぜずに済みます。

たとえば電力費の予算を更新する際は、月間の使用電力量、契約電力、電力単価、燃料費調整を別々の行にします。
使用量が前年と同じでも基本料金だけ上がる場合と、猛暑で空調の使用量が増える場合では、打ち手が違います。
契約電力を下げられるかは最大需要や操業計画の確認が必要ですが、料金表の改定を反映しておけば、価格の上昇と使い方の変化を分けて説明できます。

次は、実際の請求と送配電会社の費用回収を見ます

改定が始まった後は、料金メニューごとの実請求、燃料費調整額、電力使用量の変化を確認します。
送配電会社については、物価・金利と工事費の動向、規制期間内の設備投資、効率化でどこまで費用を吸収できたかが次の焦点です。
北海道電力の決算では、料金改定で売上が増えた分と、燃料・電力調達費などの増減を切り分け、利益予想の修正が実績に表れたかを追います。

腹落ち確認の問い

電気料金が上がり、電力会社の利益予想も上がったとき、料金改定が利益を押し上げたと判断するには、どの費用と売上を追加で確かめますか。

考え方

料金改定による小売売上だけでなく、送配電会社へ支払う託送料金、燃料費等調整額、電力調達費を分けます。
利益への寄与額が会社から示されていない場合は、同じ日に上方修正があったことだけで因果を決めません。
実績の部門別利益や次の会社説明で、費用と売上の両方を確認します。

もっと詳しく知りたい人へ

出典