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赤字1.6兆円でも株価は上がった — よみがえった半導体の巨人インテルと、『政府が株主』が生んだ見かけの大赤字

トピック分析投資-決算2026-07-26

【国際・海外企業】連載・投資・決算【経済・半導体電子部品】米国【国際・地政学】

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目次
  1. いま何が起きたか — 復活を映したのは売上と本業の黒字
  2. なぜ過去最大級の会計赤字が出たのか — 『政府が株主』の副作用
  3. 復活は本物か — 次の関門はファウンドリの黒字化
  4. 見立てと監視ポイント
  5. 腹落ち確認の問い
  6. 関連リンク

赤字1.6兆円でも株価は上がった — よみがえった半導体の巨人インテルと、『政府が株主』が生んだ見かけの大赤字

overview

この記事の要点
  • 2026年4-6月期の売上高は161億ドル(約2.4兆円)で前年比+25%。会計上は約110億ドルの純損失だが、これは米政府に渡す株式の評価損によるもので、本業ベースでは22億ドルの黒字だった。
  • 中身の主役はデータセンター・AI部門の+59%と、7期連続で自社予想を上回った実行力。株価は決算後に一時+12〜13%上がった。
  • ただし製造受託(ファウンドリ)部門はなお20.9億ドルの営業赤字。復活が本物になるかは、この部門の黒字化と外部顧客の獲得にかかる。

決算発表の日に、インテルは1.6兆円規模の最終赤字を計上しました。それでも株価は、時間外の取引で一時1割以上上がりました。

損失を出した会社の株が買われる——一見、話が逆に見えます。
けれど数字を開くと、この巨額赤字は現金が出ていく損ではなく、110億ドルの会計上の損失のうち大半が、米政府に渡す予定の自社株の「評価替え」で生じた非現金の項目でした。

本業の稼ぐ力はむしろ戻っていました。市場が反応したのは、赤字の見出しではなく、その下に隠れた復活の中身のほうです。

いま何が起きたか — 復活を映したのは売上と本業の黒字

この四半期のインテルは、7期連続で自社の見通しを上回るという実行力を数字で示しました。
売上高は161億ドル(約2.4兆円)で、前年同期の129億ドルから+25%。
四半期の伸び率としては2011年以来の速さです。

会計基準(GAAP)の純損益は110億ドルの赤字でしたが、一時項目を除いた非GAAPベースでは22億ドル(約3,300億円)の黒字で、1株利益は$0.42。
会社が示していた見通し($0.20前後)の2倍を超えました。
非GAAPの粗利率も41.8%と、前年から12.1ポイント改善しています。

売上の内訳を見ると、伸びの主役がはっきりします。

部門 四半期売上 前年比
クライアント・フィジカルAI(CCPG) $8.9B +13%
データセンター・AI(DCAI) $6.3B +59%
インテル製品 合計 $15.1B +28%
インテル・ファウンドリ(製造受託) $5.8B +31%
全社売上 $16.1B +25%

牽引したのはデータセンター・AI部門で、売上は前年比+59%
AI向けサーバーの需要が、長く低迷していたこの部門の数字を一気に押し上げました。
PCなどのクライアント部門も+13%と底堅く、製品事業の合計は151億ドル(約2.3兆円)で+28%です。

この+59%の伸びには、下地の低さもあります。
インテルのデータセンター事業は、AI向け半導体でNvidiaに、サーバー用CPUでAMDに、それぞれシェアを削られ続けてきました。低迷していた部門が、AIサーバーの爆発的な需要の波に、ようやく乗り始めた——今期の急伸は、その転換点として読めます。
前年(2025年)に会社全体で190億ドル規模の最終赤字を出した底からの回復であることを踏まえると、この四半期の非GAAP黒字と+25%成長の意味は大きくなります。

会社は次の四半期の見通しも引き上げました。
7-9月期の売上は158億〜168億ドル(中点163億ドル)で、市場予想の約151億ドルを上回る水準。
非GAAPの1株利益は$0.38を見込みます。
決算の合否というより、本業の回復と強気の見通しが重なったことが、この日の株価反応を作りました。

なぜ過去最大級の会計赤字が出たのか — 『政府が株主』の副作用

巨額のGAAP赤字の正体は、インテルの株価が上がったこと自体でした。損失の中身は現金の流出ではなく、非現金の評価損です。

gaap-bridge

背景には、2025年に起きた資本構成の大転換があります。
米政府はCHIPS法の補助金を株式に振り替え、インテル株の約10%を1株$20.47(約4.3億株)で取得しました。
加えて半導体大手のNvidiaが約50億ドル、ソフトバンクグループが20億ドルを出資し、赤字続きの巨人に外部資本が相次いで入りました。

問題は、この政府向けの株式の会計処理です。
インテルは補助金の受け取りに応じて米商務省へ株式を渡す取り決めになっており、その渡す予定の株(エスクロー株)を毎期、時価で評価し直します。
株価が上がると、政府に手渡す株の価値も上がる——つまり会社から見れば「将来の持ち出しが増えた」ことになり、その差額が損失として計上されます。

この四半期はインテルの株価が大きく上がったため、エスクロー株の評価損は125億ドル(約1.9兆円)に膨らみました。
GAAPの純損失110億ドルは、ほぼこの一項目で説明がつきます。
現金は1ドルも出ておらず、本業のキャッシュを稼ぐ力とは別物です。

会計上の赤字が、皮肉にも「株価が回復した証拠」になっている——ここが、損失の見出しと株高が同居した理由です。だから市場は、GAAPの数字ではなく、非GAAPの黒字と本業の伸びのほうを見ました。

復活は本物か — 次の関門はファウンドリの黒字化

復活の本命は、まだ赤字が続く製造受託部門にあります。ここが黒字に転じるかどうかが、今回の決算の「その先」を決めます。

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インテル・ファウンドリ(他社の設計したチップを受託製造する部門)の売上は58億ドル(約8,700億円)で前年比+31%。
ただし、この部門はなお20.9億ドル(約3,100億円)の営業赤字です。
全社が非GAAPで黒字に届いたのは、稼ぐ製品部門が製造部門の赤字を埋めたからで、製造単体はまだ持ち出しが続いています。

それでも中身は前に進みました。
最先端の製造技術「18A」は2025年後半から量産に入り、その第1弾となるノートPC向けチップ「Panther Lake」の出荷が始まっています。
会社は、外部の顧客が次世代の「18A-P」「14A」で受託を打診し始めたと説明しました。
自社製品を作るだけの工場から、他社の注文を取る工場への転換が、ようやく数字と受注の両面で動き出した局面です。

この製造部門に、政府・ソフトバンク・Nvidiaがそろって資本を入れている意味は小さくありません。
米国内に先端半導体の製造能力を持つこと自体が、経済安全保障の観点から国家的な狙いになっているからです。
この構図を評価に置くなら、いまのインテルは「製品で稼ぎ、その利益で製造の赤字を埋めながら、製造を立ち上げ直している」段階だと読めます。
全体の黒字化は一歩進みましたが、次の一段は、外部顧客の量産受注でファウンドリ単体を黒字に乗せられるかです。
ここが、他社の工場(受託製造で先行するTSMC)に対して、インテルが「自社製品を作る工場」から「他社の注文で稼ぐ工場」へ転じられるかの分かれ目になります。

一方で、政府が株主になったことには、決算のたびに損益が揺れるという副作用も残ります。
株価が上がればエスクロー株の評価損が膨らみ、下がれば評価益が出る。
本業と無関係の要因でGAAPの最終損益が大きく振れる状態は、株式が政府へ順次放出されるまで続きます。
数字を読むときは、GAAPの純損益ではなく、非GAAPの利益と部門別の営業損益、そして現金の動きで実力を測る必要があります。

見立てと監視ポイント

この先は、赤字の見出しよりも、復活を「利益」と「受注」に変えられるかで評価が定まります。次の数四半期で輪郭が出るのは、以下の3点です。

腹落ち確認の問い

インテルは会計上、110億ドル(約1.6兆円)という巨額の純損失を出したのに、株価は決算後に上がりました。
損失を出した会社の株が買われるのは、一見おかしなことに見えます。
今回の赤字が「どういう種類の損失だったか」をふまえて、なぜ市場が赤字の見出しよりも別の数字を重く見たのか、考えてみてください。

考え方

鍵は「その赤字が現金の損なのか、評価替えの損なのか」の違いです。
今回のGAAP純損失110億ドルは、大半が米政府に渡す予定の自社株(エスクロー株)を時価で評価し直したことで生じた、非現金の評価損125億ドルによるものでした。
しかも、この評価損はインテルの株価が上がったからこそ膨らんだ——政府に手渡す株の価値が上がり、会社から見れば将来の持ち出しが増えたためです。
つまり、この赤字は「株価が回復した副作用」であって、本業が現金を失ったわけではありません。
実際、一時項目を除いた非GAAPベースでは22億ドルの黒字で、1株利益は自社見通しの2倍。
データセンター・AI部門は+59%で伸び、次の四半期の見通しも市場予想を上回りました。
市場は、会計基準がつくり出す見かけの赤字ではなく、その下にある本業の回復と強い見通しを見た——だから損失の見出しと株高が同居しました。
ただし、この会計の揺れは政府への株式放出が終わるまで続くため、実力は非GAAP利益・部門別の営業損益・現金の動きで測る必要があります。
とりわけ、まだ営業赤字が続く製造受託(ファウンドリ)部門が黒字に近づくかが、復活が本物になるかの分かれ目です。

関連リンク

出典
  • 一次(決算) — Intel「Second-Quarter 2026 Financial Results」(2026-07-23, SEC 8-K添付=intc.com一次)。売上$16.1B(前年$12.9B・+25%)/非GAAP EPS $0.42・非GAAP純利益$2.197B/GAAP純損失$(11.033)B・GAAP EPS $(2.16)(主因=CHIPS法Secure Enclave契約に基づくエスクロー株のmark-to-market損$12.529B)/非GAAP粗利率41.8%(+12.1pp)・GAAP粗利率40.4%/インテル製品$15.1B(+28%)=CCPG $8.9B(+13%)・DCAI $6.3B(+59%)/インテル・ファウンドリ$5.8B(+31%)・営業損失$(2.089)B/Q3ガイダンス売上$15.8-16.8B(中点$16.3B・コンセンサス約$15.1B)・非GAAP EPS $0.38・粗利率42.0%。CEO Lip-Bu Tan/CFO David Zinsner。WebFetch照合(r.jina.ai経由): https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/50863/000005086326000155/q226earningsrelease.htm
  • 二次(株価反応・資本構成) — CNBC(2026-07-23)ほかInvesting.com・DCD・tradingkey。決算後時間外で株価一時+12〜13%、7期連続の自社ガイダンス超過、18A量産・Panther Lake出荷、米政府10%出資(1株$20.47・433.3百万株)+5年ワラント$20・Nvidia約$5B・SoftBank $2Bを確認。https://www.cnbc.com/2026/07/23/intel-intc-earnings-report-q2-2026.html
  • source_confidence: High(Q2 2026の主要数値を決算リリース一次でWebFetch照合。株価反応・資本構成は複数二次で一致)
  • 反証1パス — GAAP巨額赤字は非現金の評価損(自社株高が政府渡し株の評価を押し上げる mark-to-market)であり、本業の現金流出ではない点を本文で明記。非GAAP黒字$2.2B・DCAI +59%・7期連続ビートがクリーンな実力。ファウンドリは売上+31%でも営業損失$2.089Bが続く点も本文で注記。
  • 注記: 円換算は1ドル=約150円で概算($16.1B売上≒2.4兆円、$11.03B純損失≒1.6兆円、$12.53B評価損≒1.9兆円、$5.8Bファウンドリ売上≒8,700億円、$2.089B営業損失≒3,100億円)。CCPG=Client Computing and Physical AI Group、DCAI=Data Center and AI、18A/18A-P/14A=インテルの先端製造プロセス世代。