📚 業界ノート

電通グループ

【経済・サービス業】サービス業企業バリュエーション分析更新 2026-09-25

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目次
  1. 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
  2. 2. 財務の実力
  3. 3. 市場評価を読む — バリュエーション
  4. 標準NC — 5期分解
  5. 広義NCAV — 5期分解
  6. 4. 同業比較 — 差分の論点
  7. 5. リスクと論点
  8. 6. バリュエーション統合と論点整理
  9. 乖離の構造分析
  10. 条件分岐シナリオ
  11. 監視ポイント
  12. M&A・出資検討の論点
  13. 7. 学びのポイント
  14. 📚 着眼点1: 減損は事業ポートフォリオの検証結果である
  15. 📚 着眼点2: 広告サービスのCCCと資金余力を分ける
  16. 📚 着眼点3: 指標ポジショニング
  17. 参考情報
  18. 大株主構成
  19. データ時点と出典

株式会社電通グループ(4324)銘柄分析レポート

SUMMARY

電通グループは、メディア、クリエイティブ、顧客体験管理、テクノロジーを組み合わせて顧客企業の成長課題を扱う。
FY2025/12は日本が売上高の42.4%を占めた(EDINET有価証券報告書、FY2025/12)。
FY2025/12は営業損失2,892.1億円、親会社所有者帰属損失3,276.0億円、親会社所有者帰属持分374,849百万円であった。
FY2026/12会社予想は営業利益1,526.0億円、親会社所有者帰属利益697.0億円である(TDNet、2026年8月14日)。
2026年9月24日終値3,561円、時価総額9,243.9億円、FY2026/12予想PER13.3倍、予想配当利回り0.00%、健全性スコア45/100である。
標準NC比率・広義NCAV比率・CN-PER・EV/EBITDAは必要なBS内訳または正の分母を欠くためN/Aとした。


1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か

業界全体の構造は サービス業業界基礎ガイド(および同業界のセグメント分析・プレイヤー比較)を参照。本レポートは電通グループ固有の事業構造に絞る。

電通グループは広告枠の仲介だけでなく、マーケティング、メディア、クリエイティブ、顧客体験管理(CXM)、テクノロジー、コンサルティングを束ねる「Integrated Growth Solutions」を中核に置く。
収益ドライバーは顧客のブランド・販促予算、案件量、提供機能の範囲、専門人材の稼働率である。
主要顧客別の売上高は確定資料で非開示のため、顧客集中度は判定できない。

セグメント(FY2025/12) 売上高(百万円) 構成比 セグメント利益(調整後営業利益、百万円) 利益率
日本 608,310 42.4% 121,105 19.9%
Americas 369,666 25.8% 72,310 19.6%
EMEA 338,401 23.6% 33,832 10.0%
APAC 112,199 7.8% 2,720 2.4%

(出典: EDINET有価証券報告書、FY2025/12。構成比は連結売上高1,435,245百万円に対する比率。セグメント合計と連結損益は調整・減損等により一致しない。)

コストの中心は専門人材の給与、媒体・外部パートナーへの支払、拠点・本部機能、データ基盤である。
人件費の固定性が高く、案件減少時には稼働率低下が利益率へ波及する。
会社は2027年度に年間500億円規模のコスト削減を掲げ、重複本部の見直し、地域本部の再定義、AI・アウトソーシングを進める。
削減額と同時に、顧客接点と専門性を維持できるかが実行評価の軸になる(有価証券報告書、2026年3月26日提出)。

運転資本は媒体等への支払と顧客回収の時間差に左右される。
FY2025/12の売上債権は1,818,316百万円、仕入債務は1,655,434百万円で、期末残高による簡易CCCは▲2,064.3日となる。
ただし、代理取引の表示や勘定科目定義の影響が大きく、競合との単純比較には適さない。
資本集約度は工場型企業より低い一方、過去の買収で取得したのれん・無形資産、人材、データ能力への投資が重い。
FY2025/12の米州・EMEAののれん減損3,101億円は、買収時に見込んだ収益の回収可能性が主要論点である(会社開示)。

競争優位は、地域横断の顧客理解、メディア運用、クリエイティブ、CXMを同じ案件で編成する力にある。
その複雑さは参入障壁になる一方、組織統合、データ管理、コンプライアンスの難度も高める。
FY2025/12の日本は高いセグメント利益率を維持したが、EMEAとAPACの採算、米州CXMの案件回復がグループ全体の収益性を左右する。


2. 財務の実力

FY2021/12からFY2025/12まで売上高は増えたが、営業利益はFY2024/12から損失となり、FY2025/12は減損を主因に損失が拡大した。
FY2025/12の連結負債合計は公式連結BSの2,758,832百万円、親会社所有者帰属持分は374,849百万円である。
連結資本合計447,954百万円には非支配持分73,105百万円が含まれるため、BPS、PBR、親会社所有者帰属持分比率の分母には374,849百万円を用いる。

項目 FY2021/12 FY2022/12 FY2023/12 FY2024/12 FY2025/12
売上高(百万円) 1,085,592 1,246,401 1,304,552 1,410,961 1,435,245
営業利益(百万円) 241,841 117,617 45,312 -124,992 -289,212
親会社所有者帰属利益(百万円) 108,389 59,847 -10,714 -192,172 -327,601
EPS(円) 388.79 223.33 -40.52 -734.56 -1,262.04
総資産(百万円) 3,720,536 3,741,427 3,634,401 3,507,260 3,206,787
流動資産(百万円) 2,343,115 2,317,496 2,139,557 2,177,355 2,301,403
連結負債合計(百万円) 2,811,062 2,786,100 2,721,646 2,738,224 2,758,832
親会社所有者帰属持分(百万円) 845,034 880,267 841,651 696,838 374,849
親会社所有者帰属持分比率 22.7% 23.5% 23.2% 19.9% 11.7%
BPS(円) 3,088.16 3,329.62 3,182.97 2,684.57 1,444.02
現預金(百万円) 723,541 603,740 390,678 371,989 295,183
社債・借入金集計値(百万円) 579,189 532,429 494,445 547,273 468,241
営業CF(百万円) 139,715 80,896 75,267 59,984 117,972
投資CF(百万円) 262,226 -24,346 -146,297 -30,908 -2,856
財務CF(百万円) -232,189 -188,192 -153,681 -65,714 -180,473
FCF(百万円) 401,941 56,550 -71,030 29,076 115,116
減価償却費(百万円) 74,876 74,170 78,719 81,449 74,610
1株配当(円) 117.50 155.25 139.50 139.50 0.00
簡易CCC(日) — — -3,049.8 -2,287.6 -2,064.3

(出典: EDINET有価証券報告書、FY2021/12〜FY2025/12。FY2021/12〜FY2023/12の連結負債合計は総資産、親会社所有者帰属持分、非支配持分からの導出値。FY2024/12とFY2025/12は公式連結BS表示値。FCF=営業CF+投資CF。CCC=売上債権÷売上高×365+棚卸資産÷売上原価×365−仕入債務÷売上原価×365。売上原価は各FYの財務値、BS科目は期末残高を使用。)

FY2026/12会社予想は売上高1,491,500百万円、営業利益152,600百万円、親会社所有者帰属利益69,700百万円、EPS268.50円、DPS0円である(TDNet、2026年8月14日)。

FY 第3四半期時点予想売上 実績売上 差異率 予想営業利益 実績営業利益 差異率
FY2025/12 1,494,000 1,435,245 -3.9% 66,000 -289,212 -538.2%
FY2024/12 1,400,100 1,410,961 0.8% 167,700 -124,992 -174.5%

(単位: 百万円。FY2023/12は対応する予想値を取得できず比較対象外。売上差異が小さくても減損で利益差異が拡大しており、売上予想だけでは利益の予測可能性を評価できない。)

健全性チェック FY2025/12または明示したFYの値 目安 判定
親会社所有者帰属持分比率 11.7% 40%超 ❌
流動比率 107.3% 150%超 ❌
利益剰余金 49,511百万円 0超 ✅
営業CF FY2023/12〜FY2025/12で黒字 3期連続黒字 ✅
FY2025/12営業利益・親会社所有者帰属利益 ともに損失 ともに黒字 ❌
FY2026/12会社予想 営業利益152,600百万円、親会社所有者帰属利益69,700百万円 ともに黒字 ✅
DPS FY2025/12実績0円、FY2026/12予想0円 継続支払い ❌
現預金と社債・借入金集計値 295,183百万円対468,241百万円 現預金が上回る ❌
ROE FY2025/12は損失 8%超 ❌

流動比率はFY2025/12の流動資産2,301,403百万円÷流動負債2,145,241百万円で算出した。
健全性スコア45/100とあわせ、黒字転換だけでなく親会社所有者帰属持分と流動性の回復を確認する必要がある。


3. 市場評価を読む — バリュエーション

株価と時価総額は2026年9月24日終値を使用する。FY2026/12予想PERは黒字転換予想を分母にするため、FY2025/12の損失実績と混同しない。

指標 値 時点・定義
現在株価 3,561円 2026年9月24日終値
自己株式控除後株式数 259,586,186株 2026年8月14日中間期決算短信
時価総額 924,386百万円 株価×自己株式控除後株式数
FY2026/12予想EPS 268.50円 会社予想
FY2026/12予想PER 13.3倍 3,561円÷268.50円
FY2025/12 BPS 1,444.02円 親会社所有者帰属持分ベース
PBR 2.47倍 3,561円÷1,444.02円
FY2026/12予想配当利回り 0.00% 予想DPS0円÷3,561円
標準NC N/A 現預金+短期有価証券−有利子負債4区分
広義NCAV N/A 流動資産+投資有価証券×0.7−連結負債合計
CN-PER N/A 標準NCが算定不能

(出典: 現値マーケットデータ、2026年9月24日; TDNet、2026年8月14日; EDINET有価証券報告書、FY2025/12。)

株価3,561円×259,586,186株は924,386.4百万円で、採用時価総額924,386百万円との差は丸めの範囲である。
13.3倍×268.50円は3,571.05円で株価との差は0.3%、2.47倍×1,444.02円は3,566.73円で差は0.2%であり、いずれも表示倍率の丸めで説明できる。

標準NC — 5期分解

項目(百万円) FY2021/12 FY2022/12 FY2023/12 FY2024/12 FY2025/12
現預金 723,541 603,740 390,678 371,989 295,183
短期有価証券 — — — — —
社債・借入金集計値(参考) 579,189 532,429 494,445 547,273 468,241
有利子負債4区分 — — — — —
標準NC 算定不能 算定不能 算定不能 算定不能 算定不能
標準NC比率 N/A N/A N/A N/A N/A

標準NC=現預金+短期有価証券−有利子負債(短期借入金、1年内返済予定長期借入金、長期借入金、社債)。短期有価証券と負債4区分を取得できず、集計値から推定しない。

広義NCAV — 5期分解

項目(百万円) FY2021/12 FY2022/12 FY2023/12 FY2024/12 FY2025/12
流動資産 2,343,115 2,317,496 2,139,557 2,177,355 2,301,403
投資有価証券×0.7 — — — — —
連結負債合計 2,811,062 2,786,100 2,721,646 2,738,224 2,758,832
投資有価証券反映前 -467,947 -468,604 -582,089 -560,869 -457,429
広義NCAV 算定不能 算定不能 算定不能 算定不能 算定不能
広義NCAV比率 N/A N/A N/A N/A N/A

広義NCAV=流動資産+投資有価証券×0.7−連結負債合計。
投資有価証券を取得できず推定しない。
FY2021/12〜FY2023/12の負債は導出値、FY2024/12・FY2025/12は公式連結BS表示値である。
標準NCが算定不能のためCN-PERもN/Aとした。

指標 電通グループ サイバーエージェント 博報堂DYホールディングス
時価総額(億円) 9,243.9 6,318.5 4,701.5
標準NC(億円) N/A 1,731.3 1,142.8
EV(億円) N/A 4,587.1 3,558.7
EBITDA(億円) -2,146.0 808.2 589.4
EV/EBITDA N/A 5.7倍 6.0倍

(出典: EDINET有価証券報告書と2026年9月24日現値マーケットデータ。電通グループはFY2025/12、サイバーエージェントはFY2025/9、博報堂DYホールディングスはFY2026/3。EBITDA=営業利益+減価償却費。)

電通グループはFY2025/12のEBITDAが負で、標準NCも算定できないため、EV/EBITDAを表示しない。
比較可能な倍率はFY2026/12予想PER13.3倍とPBR2.47倍に限られ、黒字化後の利益持続性と親会社所有者帰属持分の回復を併読する必要がある。

適用PER水準 倍率 位置づけ
レンジ下限(保守的) 13.3倍 FY2026/12会社予想EPSに対する現値倍率
中央(現状据え置き) 13.3倍 現値倍率。独立した中央推計は置かない
レンジ上限(楽観的) N/A 自社実績・業界PERレンジを取得できず推定しない
参考: 同業2社予想PER 16.2〜18.1倍 会計期・事業構成が異なる
参考: 自社5期PERレンジ N/A FY2023/12〜FY2025/12は損失、過去年の株価時点なし

円建ての理論値は置かず、PER、PBR、EV/EBITDAの比較可能性が成立する条件だけを示した。


4. 同業比較 — 差分の論点

比較対象は、同じサービス業で広告・メディア領域を持つサイバーエージェントと博報堂DYホールディングスである。
時価総額は同じ2026年9月24日終値へそろえ、財務値は各社の有価証券報告書のFYを明示した。

指標 電通グループ
FY2025/12
サイバーエージェント
FY2025/9
博報堂DY
FY2026/3
時価総額(億円) 9,243.9 6,318.5 4,701.5
売上高(億円) 14,352.5 8,740.3 8,610.0
営業利益率 -20.2% 8.2% 5.2%
自己資本比率 11.7% 32.3% 36.0%
予想PER 13.3倍 16.2倍 18.1倍
PBR 2.47倍 3.51倍 1.21倍
ROE N/A 18.9% 4.3%
予想配当利回り 0.00% 1.53% 2.44%
EV/EBITDA N/A 5.7倍 6.0倍
標準NC比率 N/A 27.4% 24.3%

(出典: 各社EDINET有価証券報告書、会社予想、2026年9月24日現値マーケットデータ。自己資本比率は各社開示定義に基づく。)

電通グループの3期の売上高はFY2023/12の13,045.5億円からFY2025/12の14,352.5億円へ増えたが、営業利益率は3.5%から▲20.2%へ悪化した。
サイバーエージェントは同じ3期で売上高7,194.5億円から8,740.3億円、営業利益率3.4%から8.2%へ改善し、博報堂DYは売上高9,467.8億円から8,610.0億円へ減少する一方、営業利益率は3.6%から5.2%へ改善した。
電通グループの倍率差には、FY2025/12の減損、海外回復の不確実性、低い親会社所有者帰属持分比率が反映される。

簡易CCCは電通グループ▲2,064.3日、サイバーエージェント▲5.8日、博報堂DY▲19.0日である。
電通グループは媒体取引に伴う巨額の売上債権・仕入債務を持つため、勘定科目定義と期末残高の影響が大きい。
資金効率の順位として使わず、営業CFと支払条件の変化を追う補助指標とする。


5. リスクと論点

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的な影響 対応状況
海外CXM・クリエイティブの回復遅延 高 中 米州・EMEAの案件化と稼働率が伸びず、収益改善が遅れる 事業見直し、メディアと親和性の高い能力への集中
のれん・無形資産の再評価 高 中 将来CF見通しの悪化が追加減損と親会社所有者帰属持分の減少につながる 投資選別と不振事業の縮小・撤退・売却
人材獲得・定着 高 中 AI・データ・顧客変革の専門人材不足が案件品質を下げる 職務・等級の共通化、育成、エンゲージメント施策
データ・サイバー・コンプライアンス 高 中 顧客データ事故や競争法上の問題が契約、訴訟、信用へ波及する グループリスク委員会、必須研修、内部統制
景気変動 中 中 顧客が広告・変革支出を抑え、稼働率と案件採算が悪化する 地域・サービス分散、コスト構造見直し

最大論点は海外事業の回復の質である。
米州CXMの受注率が改善しても、人件費、本部費用、価格競争を吸収して利益へ結び付くかを確認する必要がある。
回復が遅れれば、事業縮小、組織再編費用、資産再評価が重なる。
メディアの成長とCXMの採算改善が同時に進めば、減損後の資産基盤が生む収益を検証できる。

バリュートラップの論点は過剰なNCではない。
標準NCと広義NCAVは必要な内訳を欠き、ゼロともプラスとも断定できない。
むしろ、FY2025/12の連結負債合計2,758,832百万円に対し親会社所有者帰属持分が374,849百万円まで低下したこと、FY2025/12実績とFY2026/12会社予想のDPSが0円であること、海外再建へ資本を振り向ける方針が評価を固定化する可能性に注意する。


6. バリュエーション統合と論点整理

乖離の構造分析

FY2025/12の営業損失によりEV/EBITDAの分母が負で、標準NC・広義NCAV・CN-PERも必要なBS内訳を欠く。
算定可能なFY2026/12予想PER13.3倍とPBR2.47倍を、同業2社の予想PER16.2〜18.1倍と比べる際には、会計期、事業構成、利益の持続性の差を考慮する必要がある。

2025年の巨額減損は、過去買収で見込んだ将来利益への信頼性を下げ、財務基盤と資本配分規律を同時に検証させた。
FY2026/12の黒字転換予想は回復の出発点であり、日本の収益基盤、海外メディア、米州CXMの案件採算、コスト削減を複数四半期で確かめる必要がある。
値付けの差は財務資産の厚みより、サービス能力と組織再構築の実行力へ結び付いている。

条件分岐シナリオ

SUCCESS

収益性回復が定着する場合: FY2026/12会社予想の売上高1,491,500百万円、営業利益152,600百万円の達成に加え、米州CXMの成長、海外メディアの付加価値向上、コスト削減が確認されることが条件である。
黒字化後の利益持続性を評価軸に置ければ、予想PERは同業レンジとの比較可能性が高まる。

INFO

会社予想に沿う場合: 国内の堅調さが海外のばらつきを補い、FY2026/12会社予想どおり黒字化することが条件である。
評価軸はPER13.3倍とPBR2.47倍を中心に、無配、親会社所有者帰属持分の回復、事業選別の進捗を併読する形になる。

WARNING

海外回復が崩れる場合: 顧客予算縮小、CXM受注停滞、再編費用増加、追加の資産再評価が重なることが条件である。
利益持続性への割引が強まり、PERよりPBRと親会社所有者帰属持分の回復速度が評価の中心になり得る。

監視ポイント

時期 イベント 開示で確認すべき点
2026年11月13日(想定) FY2026/12第3四半期決算 地域別成長、米州CXMの案件採算、通期予想
2026年12月29日 FY2026/12配当権利付き最終日 会社予想DPS0円からの変更と財務方針
2026年12月31日 FY2026/12期末 運転資本、親会社所有者帰属持分、資産回収可能性
2027年2月12日(想定) FY2026/12通期決算 会社予想対比、地域別採算、追加減損
2027年2月12日(想定) FY2027/12会社予想 海外回復、コスト削減、配当方針
2027年3月26日(想定) 有価証券報告書 連結負債、有利子負債、投資有価証券、主要リスク
2027年3月下旬(想定) 定時株主総会 取締役会・委員会構成、報酬KPI、資本政策
2027年5月14日(想定) FY2027/12第1四半期決算 日本と海外の成長差、コスト削減実績

想定日は過去の開示時期に基づく確認予定であり、会社の正式発表を優先する。

M&A・出資検討の論点

取得主体が許容できるEVは、現預金だけでなく連結負債、有利子負債の詳細、のれん・無形資産の減損可能性、再編に必要な現金支出で決まる。
標準NCを算定できないため、取得対価から控除できる資金余力を推定しない。
シナジー候補は、日本の顧客基盤と海外能力の接続、メディア・データ・CXM基盤の共通化、重複本部機能の統合である。
ディスシナジーは顧客利益相反、専門人材流出、地域別の契約・データ規制、既存のれんとの重複にある。
DDでは地域別受注、顧客別採算、偶発債務・訴訟、データ保護、キーマン定着、のれん評価、非支配持分を確認する。


7. 学びのポイント

📚 着眼点1: 減損は事業ポートフォリオの検証結果である

電通グループはFY2025/12に米州・EMEAののれん減損を計上し、営業損失2,892.1億円、親会社所有者帰属損失3,276.0億円となった。
減損は非現金項目だが、過去に取得した事業が想定収益を生むという仮説の見直しであり、親会社所有者帰属持分と資本配分の優先順位へ影響する。
分析では減損額を一時要因として外すだけでなく、対象地域の有機的成長、顧客維持、稼働率、再編費用を追う必要がある。

📚 着眼点2: 広告サービスのCCCと資金余力を分ける

FY2025/12の売上債権1,818,316百万円と仕入債務1,655,434百万円から求めた簡易CCCは▲2,064.3日である。
ただし、媒体等への支払、顧客回収、代理取引の表示、期末残高に左右されるため、大幅なマイナスを自由に使える現金と解釈できない。
営業CF117,972百万円の黒字と、標準NCが算定不能であることを分けると、キャッシュ創出力と資本構成の混同を避けられる。

📚 着眼点3: 指標ポジショニング

指標 電通グループ 同業2社 全上場中央値 分析上の含意
FY2026/12予想PER 13.3倍 16.2〜18.1倍 未取得 黒字転換予想が分母で、利益持続性の確認が必要
PBR 2.47倍 1.21〜3.51倍 未取得 FY2025/12の減損後BPSに対する倍率
FY2025/12営業利益率 -20.2% 5.2〜8.2% 未取得 減損を含む損失期で通常利益率との比較に限界
FY2026/12予想営業利益率 10.2% 未取得 未取得 海外再編費用と会社予想の達成が確認点
自己資本比率 11.7% 32.3〜36.0% 未取得 親会社所有者帰属持分の回復が財務評価の条件
FY2026/12予想配当利回り 0.00% 1.53〜2.44% 未取得 DPS0円で資本配分の優先順位が表れる
EV/EBITDA N/A 5.7〜6.0倍 未取得 負のEBITDAとNC未算定で比較不能
標準NC比率 N/A 24.3〜27.4% 未取得 必要なBS内訳を欠き、ゼロとは扱えない
FCF 1,151.2億円 486.9〜542.8億円 未取得 FY2025/12単年度値で、持続性は別途確認

比較対象はサイバーエージェント(FY2025/9)と博報堂DYホールディングス(FY2026/3)である。電通グループの実績指標はFY2025/12、予想指標はFY2026/12会社予想を使用した。


参考情報

FY2025/12有価証券報告書の提出時点で代表執行役社長グローバルCEOは五十嵐博であったが、2026年8月14日会社開示では佐野傑が同職に就いている。
創業日は1901年7月1日、持株会社単体従業員は135名(2025年12月31日現在)、監査法人は有限責任あずさ監査法人である。
指名委員会等設置会社で、FY2025/12有報提出時点の監査委員会は独立社外取締役で構成された(グループ情報、拠点情報)。

大株主構成

以下は会社公式の「大株主(上位10名・2026年6月30日現在)」から上位5名を転記したもので、FY2025/12期末の株主名簿ではない。

順位 株主名 保有比率 区分
1 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 11.57% 信託銀行
2 一般社団法人共同通信社 7.29% 事業関係法人
3 株式会社時事通信社 6.08% 事業会社
4 NORTHERN TRUST CO. (AVFC) RE SILCHESTER INTERNATIONAL INVESTORS INTERNATIONAL VALUE EQUITY TRUST 4.18% 海外機関投資家名義
5 株式会社日本カストディ銀行(信託口) 3.45% 信託銀行

(出典: 電通グループ株式情報、2026年6月30日現在。)

データ時点と出典

年次財務・セグメントはFY2025/12(2025年12月31日)、会社予想は2026年8月14日のFY2026/12中間期決算短信、市場データは2026年9月24日終値である。
FY2026/12中間実績・会社予想をFY2025/12年次実績へ混在させず、予想値にはFYを明記した。
同業比較は各社の有価証券報告書FYが異なる。

  1. EDINET DB — 電通グループおよび同業2社の有価証券報告書・財務時系列・セグメント情報
  2. TDNet — 電通グループFY2026/12第2四半期(中間期)決算短信、2026年8月14日
  3. 電通グループIRライブラリー — FY2025 Financial Report・決算資料
  4. 電通グループのれん減損等の開示、2026年2月13日
  5. 電通グループグループ情報 — 経営・ガバナンス情報
  6. 電通グループ拠点情報 — 地域運営情報
  7. 電通グループ株式情報 — 2026年6月30日大株主
  8. 現値マーケットデータ — 2026年9月24日終値、株価、時価総額、自己株式控除後株式数