クレディセゾン
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目次
株式会社クレディセゾン(8253)銘柄レポート
レポート日:2026年9月29日
1. 事業概要
- 事業:カード決済を顧客接点に、信用保証・ローン、リース、不動産、海外金融へ展開する総合金融会社です。
- 財務:FY2026/3は純収益が11.8%増えた一方で親会社所有者帰属利益は7.0%減り、金融資産減損損失はFY2025/3の433億円から624億円へ増えました。
- 最大論点:FY2027/3会社計画に基づく予想PER8.75倍・PBR0.87倍を、信用費用と海外事業の利益回復、金融会社の資本効率でどう評価するかです。
会社の位置づけと稼ぎ方
同社は1951年設立、3月決算の上場金融会社です。
カード会員を基盤に、信用保証・ローン、リース、不動産、海外融資へ展開します。
2030年に「金融をコアとしたグローバルな総合生活サービスグループ」を目指しています。
業界構造はその他金融業業界基礎ガイドを参照してください。
カード事業は会員・加盟店網が取扱高を生みますが、手数料競争、還元費、貸倒れ、システム投資が利益を左右します。
金融事業では貸付・保証残高に加え、貸倒費用と調達費用を引いた利ざやが重要です。
海外は成長余地と同時に、与信、為替、規制、現地パートナーの影響を受けます。
FY2026/3のセグメント実績を、FY2025/3との比較で示します(億円、表示値は四捨五入)。
| セグメント | 純収益 FY2025/3→FY2026/3 | 事業利益 FY2025/3→FY2026/3 | 増減の要点 |
|---|---|---|---|
| ペイメント | 2,528→2,772 | 301→306 | 純収益+9.7%、事業利益+1.9%;純収益の約59%を占める |
| リース | 133→148 | 41→47 | 純収益+11.0%、事業利益+13.6% |
| ファイナンス | 726→827 | 389→473 | 純収益+14.0%、事業利益+21.5% |
| 不動産 | 283→313 | 163→192 | 純収益+10.5%、事業利益+18.2% |
| グローバル | 515→624 | 34→△14 | 純収益+21.2%でも、事業利益は黒字から赤字へ |
| エンタテインメント | 67→70 | 14→26 | FY2026/3までの報告区分。FY2027/3から区分変更 |
| 調整額 | △24→△27 | △6→△10 | 連結合計は純収益4,728億円、事業利益1,020億円 |
ファイナンスと不動産が増益をけん引する一方、ペイメントは増収幅に比べ利益の伸びが小さく、グローバルは赤字に転じました。
事業利益は会社が定める経営上の利益指標で、IFRS上の営業利益と同義ではありません。
FY2026/3には家賃保証事業の報告区分がペイメントからファイナンスへ移され、FY2025/3との比較は組替後の会社資料に基づきます。
FY2027/3第1四半期にはエンタテインメント区分がなくなり、FY2026/3比較値も新しい区分へ組み替えられています。
市場環境と競争の軸
経産省によると2025年のキャッシュレス比率は58.0%(162.7兆円)、うちカードは82.7%(134.6兆円)でした。政府は2030年65%を目標にしています。
市場拡大が個社利益に直結するとは限らず、加盟店手数料、還元費、与信精度、会員継続率の競争が採算を左右します。
比較会社は事業範囲で選びます。
カード・ショッピングクレジットに近いジャックスと、リース・金融・投資の比重が高い東京センチュリーを並べますが、事業構成が異なるため同質の比較対象とは扱いません。
2. 財務分析
5年間の業績・財政状態
FY2022/3からFY2026/3までIFRSを継続適用しています。下表は連結値で単位は億円、EPS・BPS・配当は円です。FY2026/3の数値は2026年6月5日訂正後の開示を採用しました。
純収益はIFRSの収益から原価を控除した会社表示、事業利益は会社定義です。
| 指標 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 |
|---|---|---|---|---|---|
| 純収益 | 2,990 | 3,226 | 3,616 | 4,228 | 4,728 |
| 事業利益 | 523 | 610 | 719 | 936 | 1,020 |
| 税引前利益 | 499 | 610 | 980 | 928 | 900 |
| 親会社所有者帰属利益 | 354 | 436 | 730 | 664 | 617 |
| 基本的EPS | 226.35 | 278.92 | 453.08 | 423.02 | 425.13 |
| 1株当たり親会社所有者帰属持分 | 3,598.22 | 3,827.22 | 4,323.36 | 4,740.04 | 5,296.01 |
| 資産合計 | 36,108 | 38,961 | 43,359 | 46,711 | 49,522 |
| 負債合計 | 30,484 | 32,978 | 36,308 | 39,655 | 41,915 |
| 親会社所有者帰属持分 | 5,624 | 5,983 | 7,051 | 7,057 | 7,606 |
| 親会社所有者帰属持分比率 | 15.58% | 15.36% | 16.26% | 15.11% | 15.36% |
| 営業活動CF | △704 | △1,301 | △2,134 | △2,492 | △1,357 |
| 投資活動CF | △516 | △438 | △858 | △153 | △269 |
| 財務活動CF | 1,293 | 2,245 | 2,467 | 2,973 | 1,391 |
| 配当(年間) | 55 | 70 | 105 | 120 | 130 |
FY2022/3からFY2026/3までに純収益は58.1%、事業利益は95.0%増え、利益率は17.5%から21.6%へ上昇しました。
親会社所有者帰属利益はFY2024/3の730億円をピークにFY2026/3は617億円です。
FY2026/3はFY2025/3比で純収益が11.8%、事業利益が8.9%増えた一方、税引前利益は3.0%、親会社所有者帰属利益は7.0%減りました。
EPSは自己株式数の影響もあり0.5%増えています。
利益の中身と足元の開示
FY2026/3の金融資産減損は624億円で、FY2025/3の433億円から約44%増えました。
グローバル事業は純収益が伸びても赤字となり、投資回収の進み方が利益を左右します。
FY2026/3決算は6月5日に訂正され、親会社所有者帰属利益は627.5億円から617.3億円へ変更されました。本レポートは訂正後の数値を使います。
最新開示はFY2027/3第1四半期(4月1日〜6月30日、8月12日公表)です。
純収益1,225億円(FY2026/3第1四半期比12.4%増)、事業利益304億円(32.7%増)、親会社所有者帰属利益218億円(35.1%増)、EPS151.42円でした。
通期計画は純収益5,075億円、事業利益1,100億円、親会社利益755億円、EPS525.68円で据え置き。第1四半期の利益進捗率はそれぞれ27.7%、28.8%です。
第1四半期セグメントでは、ペイメント純収益は710億円(5.5%増)、事業利益は117億円(3.7%減)でした。
会社は貸倒関連費用等の増加を説明しています。
ファイナンスは純収益234億円・事業利益138億円、グローバルは192億円・23億円でした。
カード取扱高だけでは信用コストを相殺できない点に注意します。
事業区分の見直し後のため、通期セグメント値とは単純連結しません。
会社計画に対する実績
FY2025/3とFY2026/3について、期初計画に対する実績を確認します。FY2025/3の計画はFY2024/3決算時、FY2026/3の計画はFY2025/3決算時に会社が開示した数値です。
- FY2025/3(2024年5月計画):純収益4,130億円→4,228億円(+2.4%)、事業利益770億円→936億円(+21.6%)、親会社所有者帰属利益520億円→664億円(+27.7%)。
- FY2026/3(2025年5月計画):純収益4,790億円→4,728億円(△1.3%)、事業利益960億円→1,020億円(+6.2%)、親会社所有者帰属利益675億円→617億円(△8.6%)。
- FY2027/3(2026年5月公表計画):純収益5,075億円、事業利益1,100億円、親会社所有者帰属利益755億円。実績は未確定。
FY2025/3は3指標とも期初計画を上回りました。
FY2026/3は事業利益が計画超過、純収益・親会社所有者帰属利益は未達です。
年度途中にグローバル環境の変化とエンタテインメント事業撤退等が織り込まれ、利益計画が下方修正されました。
FY2027/3計画は第1四半期時点で据え置きですが、達成確認は決算後です。
金融会社向けの財務健全性チェック
製造業向けの売上総利益率、在庫回転、流動比率や一般的な運転資本サイクルを、そのまま金融会社の健全性判定に使うのは適切ではありません。ここでは利益、信用費用、資本比率、資金調達を中心に見ます。
表中の業界中央値はEDINETデータから得たその他金融業33社のFY2026/3ベンチマークで、同一企業群の中央値です。
-
親会社所有者帰属持分比率:15.36%(業界中央値17.36%)で約2.0ポイント下回ります。製造業平均とは比較しません。
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ROE:8.42%(同9.16%)。年度利益÷期首・期末平均持分で、会社のFY2027/3以降ROE10%超目標との距離が残ります。
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ROA:1.28%(同1.65%)。親会社所有者帰属利益÷平均総資産で、資産収益性は中央値未満です。
-
有利子負債/親会社持分:4.71倍(同2.25倍)。借入・社債等を含む近似値で、金融事業の運転資金を含むため一般事業会社の過剰債務基準は当てはめません。
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金融資産減損損失:624億円、純収益の13.2%。FY2025/3の433億円から増加しており、延滞、貸倒実績、債権区分、引当の前提を次回開示で追います。
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営業活動CF/FCF(営業CF+投資CF):△1,357億円/△1,626億円。貸付・金融債権の増減を含むため、一般企業の現金創出力と同じ解釈はせず、資金源・流動性情報と合わせます。
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現金及び現金同等物:1,123億円。借入残高に対する単純な現金カバー率は、金融債権・調達枠・満期構成を見ずに健全性の結論に使えません。
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CCC・棚卸資産回転:該当しません。商品在庫を販売する業態ではなく、売掛・買掛・売上原価で計る運転資本サイクルは実態を表しません。
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流動比率・売上総利益率:単純比較は不適切です。金融債権と短期調達を含む貸借対照表、会社定義の純収益・事業利益に合わせた指標が必要です。
持分比率はFY2025/3の15.11%からFY2026/3に15.36%へ回復しました。
借入・社債は顧客向け金融資産の原資でもあり、残高だけで危険信号とは言えません。
調達コスト、満期、延滞率、引当、未使用融資枠、流動性ストレスを合わせて確認します。
公開資料で比較できない項目は未確認です。
3. バリュエーション
市場価格と予想倍率
2026年9月28日の東証終値は4,597円です。
市場データの発行済株式数は143,673,658株、時価総額は約6,605億円。
2026年3月31日時点の有報上の発行済株式数とは差がありますが、5月29日に自己株式24,342,202株が消却されており、時価総額計算には株価データ側の現行株数を採用しました。
会社計画のFY2027/3 EPS525.68円、親会社所有者帰属利益755億円を使うと予想PERは8.75倍です。
BPS5,296.01円に対するPBRは0.87倍、計画配当160円に対する予想配当利回りは3.48%、予想配当性向は約30.4%です。
8.75倍のPERと0.87倍のPBRは、その他金融業の有報ベース中央値(PER11.25倍、PBR1.01倍)を下回ります。
ただし業界中央値は各社の最新有報時点株価から算出された値で、2026年9月28日の同時点市場倍率ではありません。
NC・NCAVの読み方
一般的な標準NCは「現金及び現金同等物+短期有価証券−有利子負債」、広義NCAVは「流動資産+有価証券の70%−負債合計」とします。
金融会社では負債が融資・割賦・保証の原資であり、現金余剰と営業負債を分けにくいため、NCとNCAVは資産余力を概観する参考値です。
| FY | 現金及び現金同等物(億円) | 有利子負債(近似値)(億円) | 現金のみの標準NC(億円) | 流動資産−負債合計(億円) |
|---|---|---|---|---|
| FY2022/3 | 1,090 | 25,690 | △24,601 | △93 |
| FY2023/3 | 1,597 | 28,052 | △26,455 | △373 |
| FY2024/3 | 1,087 | 30,488 | △29,401 | △1,577 |
| FY2025/3 | 1,394 | 34,044 | △32,650 | △2,950 |
| FY2026/3 | 1,123 | 35,828 | △34,705 | △4,076 |
取得した過年度データでは短期有価証券の内訳を確認できないため、標準NCは「現金のみを使った下限値」です。
FY2026/3の有報で投資有価証券536.6億円を確認し、70%を加味した広義NCAVは△3,700億円、時価総額に対し△56.0%です。
FY2022/3〜FY2025/3は投資有価証券の比較可能な内訳が取得資料から得られず、全期間の広義NCAVは計算していません。欠損値をゼロとは扱っていません。
9月28日株価にFY2026/3の現金と有利子負債近似値を結び付け、短期有価証券を含めない現金のみのNC比率は△525.4%です。
現金のみのNCで計算した標準CN-PERの近似値は、(時価総額−標準NC)÷FY2027/3計画利益で54.7倍となります。
広義NCAVを使った調整PERは13.65倍です。
FY2026/3事業利益に減価償却費346億円を足した簡便EBITDA近似値は1,366億円、時価総額−標準NCを企業価値近似値としたEV/EBITDAは30.2倍です。
ただし事業利益は会社独自の指標であり、金融会社の借入金を企業価値計算から差し引く手法も事業会社ほど意味が安定しません。
これらの指標は異常な倍率の原因を示すもので、PERやPBRに優先する価値尺度ではありません。
倍率の感応度は利益水準をFY2027/3会社計画のEPSに固定し、倍率だけを変えて整理します。
これは評価倍率の変化を見る枠組みで、将来価格や期待収益率を示しません。
実績EPS425.13円に対するFY2026/3実績PERは10.81倍で、2026年9月28日の株価と直近年度EPSを組み合わせた値です。
会社計画PER8.75倍との差は利益基準の違いから生じます。
DCFは、貸付債権と調達負債を含むキャッシュフローの事業価値と株主価値の切り分け、リスク調整後の割引率、長期成長率を一次資料でそろえられないため掲載しません。
- 8倍:信用費用と海外事業にリスク割引が残る場合の比較軸。
- 10倍:FY2026/3実績PER10.81倍に近い比較軸。
- 12倍:計画達成に加えROE改善と信用費用安定を評価する比較軸。
各倍率から価格や収益率を逆算していません。
4. 競合・相対比較
直接比較会社
比較株価は2026年9月28日終値、利益倍率はFY2027/3計画でそろえました。
クレディセゾンはIFRS、他2社は日本基準で利益定義も異なります。
| 会社 | 終値/時価総額 | 最新年度の利益・資本 | FY2027/3計画に基づくPER | PBR/予想配当利回り | 主な比較上の注意 |
|---|---|---|---|---|---|
| クレディセゾン(8253) | 4,597円/6,605億円 | FY2026/3親会社利益617億円、BPS5,296円 | 8.75倍 | 0.87倍/3.48% | FY2027/3会社EPS計画525.68円、IFRS、複合金融 |
| ジャックス(8584) | 3,705円/1,659億円 | FY2026/3親会社利益153億円、BPS6,625円、ROE5.62% | 約16.6倍 | 0.56倍/5.40% | FY2027/3利益計画100億円。カード・クレジットが比較的近い |
| 東京センチュリー(8439) | 2,716.5円/1兆3,277億円 | FY2026/3親会社利益1,113億円、BPS2,293円、ROE10.4% | 約10.8倍 | 1.19倍/3.31% | FY2027/3利益計画1,230億円。リース・航空機・投資の規模が大きい |
ジャックスは会社計画EPS223.42円、年間配当200円を用いました。
東京センチュリーは計画EPS251.66円、配当90円を使用しています。
同じ定義のEV/EBITDAは、各社の有利子負債が金融資産を支える資金であり、公開資料だけで営業資金と余剰借入を切り分けにくいため比較対象外です。
ジャックスの営業収益はFY2026/3に微増したものの、金利上昇による金融費用と費用増で経常利益・親会社利益が減りました。
東京センチュリーは売上高6.5%増、営業利益26.7%増、親会社利益30.5%増と強い伸びでした。
セゾンの予想PERが相対的に低い背景には、FY2026/3親会社利益の減少、信用費用の上昇、海外事業の赤字、ROEが会社目標に届かないことがあります。
利益構成を確認せず、単純な倍率差を評価差と見なすべきではありません。
上場企業分布との位置
企業値にはFY2026/3実績かFY2027/3会社計画を使用します。
業界中央値はFY2026/3のその他金融業33社、全上場中央値は2026年9月29日時点の各社最新有報集計です。
株価指標は各社の株価基準日が異なり、同日比較ではありません。
| 指標 | クレディセゾン | その他金融業中央値 | 全上場中央値 | 読み方 |
|---|---|---|---|---|
| 予想PER | 8.75倍 | 11.25倍 | 13.76倍 | 株価日は9月28日。会社計画利益を前提にしたセゾン値と有報提出時点の分布を比較 |
| PBR | 0.87倍 | 1.01倍 | 1.17倍 | 親会社持分と9月28日株価から計算したセゾン値 |
| ROE | 8.42% | 9.16% | 8.21% | FY2026/3実績。業界中央値を下回り、全上場中央値を小幅上回る |
| ROA | 1.28% | 1.65% | 4.13% | FY2026/3実績。金融会社は資産構成が異なるため全上場比較の解釈に注意 |
| 親会社持分比率 | 15.36% | 17.36% | 56.88% | FY2026/3実績。全上場中央値との差は業種構造による部分が大きい |
| 事業利益率/営業利益率 | 21.57% | 12.12% | 6.37% | セゾンの分子は会社定義の事業利益、他社は営業利益系。直接比較ではない |
| 配当利回り | 3.48% | 3.56% | 3.10% | セゾンはFY2027/3計画配当と9月28日終値。中央値は有報記載株価・配当 |
| 配当性向 | 30.6%(FY2026/3) | 43.28% | 35.87% | セゾン実績は130円÷EPS425.13円。年度・母集団差を含む |
| FY2026/3純収益成長 | 11.8% | 12.53% | — | セゾン実績と業界売上成長中央値。全上場の統一比較値は取得できず未掲載 |
セゾンは業界中央値よりPER・PBRが低く、ROE・ROA・持分比率も低めです。割引を過小評価と読み替えず、信用損失と資本効率が持続的に改善するかを観察します。
5. リスク分析
| リスク | 損益・資本への経路 | 確認する開示・兆候 |
|---|---|---|
| 与信・貸倒れ | 延滞・貸倒が増え、引当と減損が純収益を圧迫する | 金融資産減損、貸倒引当、延滞債権、貸倒償却、債権残高の構成 |
| 資金調達・金利 | 調達金利上昇が貸出金利へ転嫁されるまでの時間差で利ざやが縮小。調達市場の混乱は借換え費用を上げる | 金融費用、調達通貨と満期、固定・変動比率、社債・借入調達余力 |
| 海外・事業ポートフォリオ | 現地与信、規制、為替、資金回収や投資回収の遅れが損失・追加資金につながる | 国別・事業別利益、海外貸倒費用、投資残高、為替感応度、買収後利益、のれん減損 |
| 競争・顧客獲得 | 還元や加盟店手数料競争で獲得費が増え、会員数・利用額の伸びが利益に残らない | 有効会員数、カード取扱高、稼働率、会員単価、ペイメント事業利益率 |
| サイバー・規制・業務継続 | 不正利用、情報漏えい、障害、顧客保護・貸金規制の不備が補償・離反・行政対応を招く | 不正損失、障害時間、事故公表、委託先統制、復旧訓練、規制対応 |
信用費用と利益の感応度
FY2026/3の金融資産減損は純収益の13.2%でした。
FY2027/3第1四半期はペイメント純収益が5.5%増え、事業利益が3.7%減少しています。
利益回復は取扱高だけで判断せず、信用費用と延滞を確認します。
規制・顧客保護
決済・貸金・信用保証は個人情報、カード不正、貸金・割賦販売規制、マネーロンダリング対策に影響されます。
海外免許、資金調達、データ管理も確認点です。
有報は信用・金融・国別リスクと、監査上の主要検討項目である信用損失引当を示します。
6. バリュエーション統合と監視
評価倍率のずれを読む
予想PER8.75倍に対し標準CN-PER54.7倍、EV/EBITDA近似値30.2倍となる主因は、顧客金融資産の調達負債まで控除するNC・EVの構造です。
広義NCAVも負値で、清算資産余力は確認できません。
比較の焦点はFY2027/3計画、信用費用、ROE改善です。
ROE8.42%は業界中央値9.16%と会社の10%超目標を下回ります。利益成長に加え、信用費用を含む利益の再現性と資本効率の改善が倍率評価の条件です。会社計画の修正は予想PERにも反映されます。
シナリオ
シナリオに確率配分は置かず、各条件が利益評価と倍率の判断軸にどう影響するかを整理します。株価水準や値上がり幅は示しません。
上振れシナリオ:国内カードの利用額と有効会員が増え、ペイメントの利益率が戻る。
ファイナンスは残高成長を保ちながら信用費用がFY2026/3を下回り、海外事業が黒字化する。
事業利益1,100億円の計画を上回りROEが10%目標へ近づくなら、信用リスクや海外損益に対する割引を縮め、PER・PBRを評価する材料になります。
金融資産減損の減少、グローバル利益の黒字転換、計画を超える利益進捗を確認します。
基本シナリオ:国内決済とファイナンスが伸びても、海外損益と信用費用の振れは残る。
第1四半期の計画進捗が年間を通じておおむね続き、FY2027/3計画の事業利益1,100億円・親会社所有者帰属利益755億円に近づく場合、評価の基準は会社計画EPSと現行の利益リスクになります。
ROE改善が緩やかな間は低いPER・PBRを見直す材料が限られ、信用費用と利益計画の差を四半期ごとに確かめます。
下振れシナリオ:延滞と貸倒費用が増え、カード取扱高の成長が利益に結び付かない。
資金調達費用も上がり、海外事業の損失や投資回収の遅れが続けば、会社計画の下方修正と資本効率の低下が重なり得ます。
この場合、利益予想の低下に加えて信用・資本効率リスクへの割引が強まり、PERの低下やPBRの割引拡大を検討する局面になります。
信用リスク警告:FY2026/3の減損損失が既に大きく増えているため、景気悪化時に損失率がさらに上がると利益の変化は増幅します。
第1四半期に示されたペイメント利益の減少が一過性かを、貸倒れの発生額、延滞債権、引当率で確認します。
評価の罠に関する警告:PERが低いことだけで過小評価とは判断できません。
信用費用が高止まりし、海外事業の利益が戻らず、ROEが資本コストを上回る水準へ向かわなければ、低倍率は業績リスクの反映として長く残る可能性があります。
監視項目
決算発表日は未公表のため、表には開示カレンダーを再確認する日を記します。FY2027/3の年間配当計画は160円ですが、中間配当は確認できず、権利確定を前提にしません。
| 時期 | イベント | 開示で確認すべき点 |
|---|---|---|
| 2026-09-29 | 本レポート時点の基準日 | 2026-09-28終値、9月末株主名簿関連の権利日程、会社発表の有無 |
| 2026-09-30 | FY2027/3上期末 | 決済・貸付残高、延滞・引当、通貨別資金調達、セグメント分類 |
| 2026-11-30 | 2Q発表日をIRカレンダーで再確認する期限 | 発表日は未公表。上期累計実績、通期計画修正、信用費用とグローバル損益 |
| 2026-12-31 | FY2027/3第3四半期累計の対象期間末 | 事業利益進捗、利益成長と現金・調達残高の関係 |
| 2027-02-28 | 3Q決算発表日を再確認する期限 | 発表日は未公表。FY2027/3計画の達成度、貸倒れ、海外黒字化、配当見通し |
| 2027-03-29 | FY2027/3期末配当の権利付最終日見込み | 3月31日基準日のT+2取引日から算定した見込み。会社の配当確定・変更と東証日程を再確認 |
| 2027-03-31 | FY2027/3期末・株主名簿基準日 | 年間配当160円計画の確定、発行済株数、FY2028/3以降の資本政策 |
| 2027-05-31 | FY2027/3通期決算発表日を再確認する期限 | 正式発表日は未公表。通期実績、訂正、FY2028/3計画、ROE目標への進捗 |
| 2027-06-30 | FY2027/3有価証券報告書の提出状況確認日 | 信用リスク注記、引当、満期構成、ガバナンス、株主構成、監査上の主要検討事項 |
取得側から見たM&A・投資採算
買収評価では、金融資産の規模だけを基にEVを比べず、顧客融資を支える有利子負債を識別します。
株主価値、純資産、正常収益、信用コスト調整後利益、調達条件、必要資本を分けて確認します。
決済・貸付・海外投資が混在するため、共通の売上倍率だけでは事業価値を説明できません。
取得後シナジーは、カード会員基盤を通じた顧客獲得費の抑制、決済データと与信モデルの共有、資金調達・事務処理の効率化、加盟店や金融商品のクロスセルに分解します。
想定シナジーは売上増より先に、顧客同意、データ統合、システム接続、審査基準、ブランド維持にかかるコストと実行期間を置いて検証します。
海外では現地免許、貸倒れ、為替、資本規制、少数株主との契約、資金回収を加えます。
デューデリジェンスでは延滞区分別債権、償却・引当履歴、金利・通貨・期間別調達、担保、顧客集中、関連当事者、データ同意、サイバー統制、のれん減損前提を照合します。
利益は循環的信用費用、一時費用、金利・為替、売却・撤退損益を分離します。
必要資本を踏まえ、ROE、回収期間、損失幅を確認します。
7. 学習メモ
この会社を読むための3つの概念
1. 信用コストは「売上の後」に利益を変える。
貸付・カード収益は債権残高と金利・手数料で積み上がりますが、信用リスクの変化は費用になります。
FY2026/3は減損損失が約191億円増え、親会社所有者帰属利益は減りました。
債権残高、延滞、引当・償却、貸倒費用を同時に追います。
2. 金融会社の負債は事業の原材料に近い。
ノンバンクでは借入・社債が顧客向け金融債権の原資です。
負債総額を現金から引くNCやEVはこの対応関係を省略するため、返済期日、調達源、金利、流動性、債権回収を合わせて判断します。
3. 事業利益と純利益の差は、ポートフォリオの収益品質を表す。
会社定義の事業利益から金融費用、減損、税金、撤退費用等を引いた後に親会社利益が残ります。
FY2026/3は事業利益が増えても親会社利益が減り、両者の差に信用費用や海外損益が表れました。
10指標で見るポジショニング
中央値は企業・業種の位置を知る参考値です。定義と時点の差を考慮し、同一定義でない利益率は比較上の制約を明記します。
| 指標/クレディセゾン | その他金融業中央値 | 全上場中央値 | コメント |
|---|---|---|---|
| 純収益成長11.8% | 12.53% | 比較値未取得 | FY2026/3。業界中央値に近い |
| ROE8.42% | 9.16% | 8.21% | 業界中央値を下回り、全上場中央値を小幅上回る |
| ROA1.28% | 1.65% | 4.13% | 金融会社と全上場の資産構造差に留意 |
| 親会社持分比率15.36% | 17.36% | 56.88% | 業界中央値をやや下回る。全上場との差には業種構造が大きく影響 |
| 有利子負債/親会社持分4.71倍 | 2.25倍 | 比較値未取得 | 金融事業の資金調達を含む 近似値。一般事業会社と同じ基準では読まない |
| FY2027/3計画PER8.75倍 | 11.25倍 | 13.76倍 | 会社計画利益を使用。中央値は各社有報時点の市場価格 |
| FY2026/3実績PER10.81倍 | 11.25倍 | 13.76倍 | 実績EPS425.13円ベース。計画PERとの差は利益基準の違い |
| PBR0.87倍 | 1.01倍 | 1.17倍 | 簿価割れだけでは資本収益性の課題を解消しない |
| 配当利回り3.48% | 3.56% | 3.10% | セゾンは計画配当と9月28日終値。他中央値は有報期末値 |
| 配当性向30.6% | 43.28% | 35.87% | セゾンFY2026/3実績。他中央値は開示最新年度の分布 |
同社の焦点は、ブランドや決済件数だけでなく、貸付残高の質、調達条件、成長投資後のROEを結び付けて見ることです。
ガバナンス・株主構成
FY2026/3の取締役会は12名(独立社外4名)、監査等委員会は3名(独立社外2名)で、取締役会は20回開催されました。
会計監査人は有限責任監査法人トーマツ。
指名・報酬の任意委員会の実効性は、委員構成、議論、資本効率目標の進捗から確認します。
大株主の割合は2026年3月31日時点、自己株式を除く発行済株式総数を分母とします。信託銀行名義の保有は受託名義であり、最終受益者や実質支配者を示すものではありません。
| 株主 | 所有比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 24.56% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 11.37% |
| 大和証券グループ本社 | 5.55% |
| スルガ銀行 | 5.17% |
| State Street Bank and Trust Company 505301 | 2.63% |
上位株主表と大量保有報告書は対象・基準日が異なります。2026年6月時点の野村グループ、BlackRock等の報告は、3月末表に合算していません。
出典・データ基準
| 情報 | 基準日・期間 | 出典 |
|---|---|---|
| 年次財務・訂正値・株主・リスク・統治 | FY2026/3、2026-06-16提出・6月5日訂正 | 有価証券報告書・訂正版決算短信 |
| 四半期・中期計画 | 2026-08-12公表、FY2027/3まで | 第1四半期IR資料・決算PDF・中期経営計画 |
| 過年度計画・実績 | FY2025/3・FY2024/3 | FY2025/3決算資料・FY2024/3決算資料 |
| 株価・株数・時価総額 | 2026-09-28終値 | 8253株価履歴 |
| 比較会社 | FY2026/3実績、FY2027/3計画 | ジャックス財務情報・IR資料・東京センチュリー決算短信 |
| 国内キャッシュレス市場 | 2025年実績、2026-03-31公表 | 経済産業省 |
| 指標分布・業界中央値 | 2026-09-29参照、各社最新有報値 | EDINET DB指標一覧、PER、PBR、ROE、ROA、自己資本比率、配当利回り、配当性向 |
株価・株数は2026年9月28日、財務実績はFY2026/3です。業界中央値はFY2026/3その他金融業33社、全上場中央値は各社最新有報の集計です。株価指標は同日比較ではありません。
取得データに日本基準とする誤った表示がありましたが、有報でFY2019/3以降のIFRS継続適用を照合しました。
数値は円単位から換算し、FY2026/3訂正後の有報・決算短信と突合しています。
事業利益と他社の営業利益は同じ定義ではありません。
派生値は本レポート記載の式で計算しています。