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株式会社サイバーエージェント

【経済・情報・通信業】情報・通信業企業バリュエーション分析更新 2026-10-26

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目次
  1. 要約
  2. 1. 事業構造
  3. 4事業と収益のつくり方
  4. セグメント採算の推移
  5. 2. 財務の推移と現状
  6. 5年間の連結実績
  7. 最新開示と会社予想
  8. 財務健全性の確認項目
  9. 3. バリュエーション
  10. スナップショットの基準
  11. NC・NCAVと倍率
  12. 4. 競合・市場ポジション
  13. 5. リスクと反証材料
  14. 6. 評価の統合と感応度
  15. 7. 投資家が学べる点
  16. 参考情報
  17. 経営・株主・従業員
  18. 今後確認する開示
  19. 主な出典と数値の基準

株式会社サイバーエージェント(4751)

要約

1. 事業構造

4事業と収益のつくり方

同社は広告、配信・IP、ゲーム、投資育成を展開する。FY2025/9末の連結子会社は86社、持分法適用会社は9社。FY2025有価証券報告書

セグメント採算の推移

FY2025/9の外部売上では広告が最大だが、営業利益率は約4%。
ゲームは外部売上の約4分の1ながら利益率が高い。
FY2026/9 Q3累計ではゲームとメディア&IPが増益し、広告は増収でも利益がわずかに減った。FY2025決算資料 FY2026 Q3決算短信

セグメント FY2025 外部売上 / 利益 / 利益率(百万円) FY2025前年比(売上 / 利益) FY2026 Q3累計 セグメント売上 / 利益(百万円) Q3累計前年比(売上 / 利益)
インターネット広告 438,811 / 17,602 / 4.0% +6.2% / -14.0% 363,687 / 15,425 +4.9% / -1.7%
メディア&IP 217,164 / 7,291 / 3.4% +16.6% / 黒字転換 183,931 / 13,178 +8.9% / +88.0%
ゲーム 216,391 / 60,063 / 27.8% +10.6% / +96.5% 193,391 / 50,923 +37.8% / +44.8%
投資育成 1,663 / -1,515 / -91.1% -73.8% / 赤字拡大 243 / -1,648 -83.0% / 赤字拡大

FY2025/9の外部売上合計874,029百万円と連結売上874,030百万円の1百万円差は開示単位の端数差。
表のFY2025利益率はセグメント利益を外部売上で割った計算値である。
FY2026 Q3資料のセグメント売上は社内取引等を含み、連結売上とは単純合算できない。

FY2025/9のセグメント営業利益は合計83,441百万円で、全社費用・消去等の調整後に連結営業利益71,702百万円となる。
ゲームの60,063百万円はセグメント利益合計の72.0%を占め、利益の寄与が大きい。
FY2025/9は広告売上が増えた一方、AI新規事業投資や下期の大口顧客離脱等により同事業の利益は減った。
ゲームは複数タイトルのヒットや海外展開が寄与し、メディア&IPはABEMA開局から10年を経てセグメント黒字となった。

FY2026 Q3累計では、ゲームの主力タイトルとグローバルでのカジュアルゲームのヒットが利益を押し上げた。
メディア&IPではAbemaTVの黒字化等が増益要因として説明されている。
広告は直近四半期以降、前年同期比の増収率が高まったと会社は述べる。
今後は広告利益率の改善、大口顧客離脱の影響、配信コンテンツの投資回収を分けて追う。
FY2026 Q3短信には監査法人レビューが付されていない。

2. 財務の推移と現状

5年間の連結実績

FY2025/9は増収・大幅増益となったが、過去5年間の営業利益は大きく変動している。現在の利益水準だけで成長の持続性を判断しない。

以下は会社公式の最新5年推移に掲載されるFY2021/9〜FY2025/9の数値。
FY2021〜FY2023の一部損益値は、FY2025に行われた子会社会計の調査・過年度訂正を反映した現行系列である。
古いデータベース取得値と混ぜず、現行の会社開示にそろえた。会社公式5年推移

9月期(百万円) 売上高 営業利益 親会社株主帰属利益 総資産 純資産 自己資本比率 営業CF 投資CF 財務CF 現金同等物
FY2021/9 666,149 104,070 41,242 382,225 193,792 33.6% 109,609 -28,537 374 184,082
FY2022/9 709,923 67,552 22,901 381,933 221,245 37.3% 17,946 -31,412 -2,801 168,035
FY2023/9 719,451 22,351 3,540 475,222 228,450 29.7% 20,822 -40,290 53,491 201,780
FY2024/9 801,236 40,083 15,977 516,686 250,504 30.1% 53,231 -38,331 -5,195 211,135
FY2025/9 874,030 71,702 31,667 557,162 275,681 32.3% 79,518 -30,825 -33,860 226,151

FY2025は売上高が前年比9.1%増、営業利益78.9%増、親会社株主帰属利益98.2%増。
会社説明では28期連続増収となった。
営業利益率はFY2023/9の約3.1%からFY2025/9の約8.2%へ回復したが、FY2021/9の約15.6%には届かない。
利益は売上のように滑らかには伸びず、FY2023/9に大きく落ち込んだ後の回復過程にある。
5年間で売上規模は拡大した一方、利益の質と安定性はゲームのヒット、広告採算、メディア投資の回収に左右されている。

営業CFはFY2022/9に17,946百万円へ縮小した後、FY2025/9は79,518百万円まで増加した。
FY2025/9の営業CFは親会社株主帰属利益の約2.51倍だが、年度間の変動が大きく、一年分だけで継続性は判断できない。

投資CFは5年間を通じてマイナスで、投資活動を通じた支出が続く。
FY2023/9は財務CFが53,491百万円のプラスだった。
資金調達の内訳と投資回収を確認しながら、利益成長が営業CFに反映されるかを追う。

最新開示と会社予想

2026-08-07公表のFY2026/9 Q3短信は、2025-10-01から2026-06-30までの累計を対象とする。
売上高709,272百万円、営業利益67,449百万円、経常利益69,182百万円、親会社株主帰属利益36,035百万円だった。

前年同期比はそれぞれ+12.2%、+38.2%、+42.3%、+49.5%。
総資産551,172百万円、純資産297,897百万円、自己資本204,990百万円、自己資本比率37.2%である。
これは9か月累計で、通期実績ではない。FY2026 Q3決算短信

同日に会社はFY2026通期予想を修正した。Q3累計と会社予想の進捗率を並べると、営業利益と親会社利益は売上高より高い。残りQ4に必要な金額は会社予想との差分であり、独自の四半期予測ではない。

FY2026/9(百万円、EPS・配当は円) Q3累計実績 前年同期比 2026-08-07改定通期予想 予想進捗
売上高 709,272 +12.2% 950,000 74.7%
営業利益 67,449 +38.2% 77,000 87.6%
経常利益 69,182 +42.3% 78,000 88.7%
親会社株主帰属利益 36,035 +49.5% 41,000 87.9%
1株当たり利益 71.07(希薄化後67.10) — 80.85 —
年間配当 — — 20.00 —

予想の残額は売上高240,728百万円、営業利益9,551百万円、経常利益8,818百万円、親会社株主帰属利益4,965百万円。
Q3時点の利益進捗は高いものの、Q4のゲーム収益、広告需要、メディア&IPの継続的な利益、税・特別損益などが通期着地に影響する。
会社予想の改定は2026-08-07時点の会社判断であり、予想と実績が同じとは限らない。
FY2026/9通期の実績はレポート日現在未開示である。

FY2025/9末の現金同等物は226,151百万円、現金及び預金の貸借対照表残高は229,849百万円。ネットキャッシュ計算にはキャッシュフロー計算書上の現金同等物を使う。

FY2025/9末の短期借入金600百万円、長期借入金52,418百万円に加え、転換社債型新株予約権付社債40,353百万円を有利子負債として扱う。
現預金が厚い一方、転換社債の返済・転換条件、成長投資、配当を同じ資本配分の枠内で見る必要がある。

FY2026 Q3末には現金及び預金212,081百万円、短期借入金2,003百万円、長期借入金54,616百万円、転換社債40,239百万円。
現預金からこれら負債を引いた単純差額は115,223百万円で、FY2025/9末から縮小している。
ただしFY2025の標準NCと現金の定義をそろえた時系列ではないため、単純比較に留める。

財務健全性の確認項目

  1. 成長: FY2025/9売上は9.1%増。会社は28期連続増収を公表する一方、売上成長だけでは利益改善の持続性を判断できない。
  2. 収益性: FY2025/9営業利益率8.2%、FY2023/9の3.1%から回復。FY2021/9の15.6%前後と比べると、利益率にはなお循環性がある。
  3. 資本効率: FY2025/9 ROE18.9%、FY2023/9の2.5%から上昇。利益回復が続くか、会計訂正後の系列を継続して追う。
  4. 資本構成: FY2025/9自己資本比率32.3%。FY2026 Q3末は37.2%へ上昇。純資産には非支配株主持分が含まれるため、自己資本と純資産を混同しない。
  5. 流動性: FY2025/9流動資産390,215百万円、流動負債177,791百万円で流動比率2.20倍。現金同等物/流動負債は1.27倍。
  6. ネット資金: FY2025/9標準ネットキャッシュは132,780百万円。転換社債40,353百万円を負債に含めた。
  7. キャッシュ変換: FY2025/9営業CF79,518百万円、親会社利益との比率は約2.51倍。FY2022/9以降の年次振れを考慮する。
  8. 運転資本: 期末残高による簡便計算では、営業債権日数=88,514÷874,030×365=36.96日、在庫日数=10,304÷609,978×365=6.17日、買掛日数=81,747÷609,978×365=48.92日、CCC=36.96+6.17−48.92=マイナス5.79日(約-5.8日)。期中平均残高でなくFY2025/9末残高を用いた概算である。
  9. 株主還元・会計: FY2025/9配当17円、DOE5.1%。FY2026/9会社予想配当は20円。子会社不適切会計の調査・訂正を経たため、内部統制の運用状況と開示の一貫性も財務品質の観察項目となる。

3. バリュエーション

スナップショットの基準

2026-10-26時点の株価データを取得できなかったため、市場評価にはEDINETデータベースから得たFY2025/9基準のスナップショットを使う。
以下の時価総額・倍率はレポート日現在の市場価格ではなく、当日値として扱わない。
FY2025末の発行済株式数506.780百万株、BPS355.17円、FY2025実績EPS62.52円に基づく時点の倍率として参照する。

NC・NCAVと倍率

標準NCは「現金同等物+確認できた短期有価証券−有利子負債」。
短期有価証券の別建て残高を取得データから確認できないため加算していない。
有利子負債には借入金に加えて転換社債型新株予約権付社債を含める。
広義NCAVは「流動資産+非流動投資有価証券×70%−総負債」。
流動資産に含まれる営業投資有価証券と、非流動の投資有価証券46,298百万円は区分し、二重計上を避ける。

FY2025/9基準の計算(百万円、倍率は倍) 計算・結果
時価総額 900,210
現金同等物 226,151
有利子負債 600 + 52,418 + 40,353 = 93,371
標準NC 226,151 - 93,371 = 132,780
標準NC / 時価総額 14.75%
広義NCAV 390,215 + 46,298 × 70% - 281,481 = 141,143
広義NCAV / 時価総額 15.68%
FY2025実績PER / PBR / EV/EBITDA 28.41 / 5.00 / 9.50
FY2026会社予想利益を分母にしたPER 900,210 / 41,000 = 21.96
標準NC調整後CN-PER(実績 / 予想) 24.22 / 18.72
広義NCAV控除後PER(実績) 23.96

CN-PERはPER×(1−NC/時価総額)で求める参考値で、NCを時価総額から控除した残額を利益で割る形と同じである。
広義NCAV控除後も同様に、PER×(1−NCAV/時価総額)とする。
運転資本に必要な現金、転換社債の条件、非支配持分、将来投資を反映する企業価値評価ではなく、ネットキャッシュをそのまま株主に帰属する価値と見なすものでもない。

FY2025/9実績EV/EBITDAは取得値で9.50倍。
FY2026/9予想の参考EV/EBITDAは、FY2025末EV767,430百万円を、FY2026会社予想営業利益77,000百万円とFY2025減価償却費9,115百万円の合計で割ると約8.91倍となる。
ただし減価償却費はFY2025実績を据え置いた代理値で、会社予想EBITDAではない。
FY2026予想利益やFY2025末EVを使う簡便な参考倍率であり、Q4実績やレポート日の時価総額を反映しない。

PBR約5倍は簿価純資産に対する評価が高いことを示す。
広告運用、人材、配信サービス、ゲームIP等の事業資産は会計上の簿価だけで測れない面がある一方、これらの無形的な強みが将来利益を生む保証もない。
PERはFY2023/9の利益低迷期からFY2025/9に回復した利益を分母としているので、利益の正常化水準をどこに置くかで見え方が変わる。
FY2026会社予想を使うとPERは下がるが、会社計画の達成と株価更新を確認する必要がある。

DCFは本稿に設けない。
複数年の根拠あるFCF見通し、資本コストを構成する入力値、長期成長率の一式を同じ精度で確認できないためである。
数値の不足を仮のWACCやターミナル成長率で補うと、出力の精密さが根拠を上回る。

4. 競合・市場ポジション

サイバーエージェントは比較対象より売上規模が大きいが、広告・メディア&IPを併営するため、DeNAとスクウェア・エニックスHDはゲーム・デジタル娯楽の部分比較となる。
対象のFY2025/9に対し、両社はFY2026/3。
会計基準、事業構成、時価総額の取得時点が異なる。
倍率は各社のEDINET年次スナップショットであり、レポート日現在の市場比較ではない。

その制約を踏まえて、9つの指標を並べる。

指標 サイバーエージェント FY2025/9 DeNA FY2026/3 スクウェア・エニックスHD FY2026/3
時価総額(十億円) 900.2 297.2 921.0
売上高(十億円) 874.0 147.7 297.7
営業利益率 8.2% 12.7% 18.4%
ROE 18.9% 8.0% 8.7%
自己資本比率 32.3% 69.8% 79.6%
PER 28.4倍 14.2倍 30.5倍
PBR 5.00倍 1.13倍 2.59倍
EV/EBITDA 9.50倍 8.15倍 10.17倍
営業CF/純利益 2.51倍 1.75倍 1.74倍

各社の直近3年度の売上高と営業利益を並べる。サイバーエージェントはFY2023/9〜FY2025/9、比較企業はFY2024/3〜FY2026/3で、値は十億円単位に丸めた。

会社 売上高の3年推移(十億円) 営業利益の3年推移(十億円)
サイバーエージェント 719.5 → 801.2 → 874.0 22.4 → 40.1 → 71.7
DeNA 136.7 → 164.0 → 147.7 -28.3 → 29.0 → 18.7
スクウェア・エニックスHD 356.3 → 324.5 → 297.7 32.6 → 40.6 → 54.7

サイバーエージェントは3年間で売上と営業利益がともに増加した。
DeNAはFY2025/3に増収・黒字転換した後、FY2026/3は売上・営業利益が前年から減少した。
スクウェア・エニックスHDはFY2025/3・FY2026/3の2期連続で減収となる一方、営業利益は増加した。
これらの推移は決算期・会計基準・事業構成が異なるため、事業別の原因を同じものとして解釈しない。

サイバーエージェントは比較対象に対して自己資本比率が低く、ROEと営業CF/純利益が高い。
高いROEはFY2025/9利益の回復を含み、利益率の安定性を保証しない。
PERはDeNAを上回りスクウェア・エニックスHDに近い水準だが、FY・事業ミックスが異なる。
EV/EBITDAは3社の範囲内にある。
比較の示す差は事業構成を調整していないため、単独で割安・割高を結論づける材料ではない。

5. リスクと反証材料

利益の変動を左右する主な要因は、広告顧客・媒体環境、ゲームタイトルの入れ替わり、配信・IPの投資回収、会計統制である。各リスクを売上と利益への経路に分けて整理する。

リスク 業績・価値への経路 反証・継続観察
広告需要と顧客集中 広告主の予算、媒体環境、上位顧客の出稿変化が売上と利益率に影響。FY2025下期に大口顧客の離脱を会社が説明。 広告売上と利益率、離脱影響、顧客構成の開示範囲を確認する。主な顧客データは今回の抽出で確認できず、集中度を断定しない。
ゲームのヒット・タイトル交代 FY2025営業利益の大部分をゲームが生み、主力タイトルの減速や新作不振が利益を大きく動かす。 タイトル別の寄与、既存作の継続、新作の開発・販促費、海外売上の再現性を追う。
配信・IPへの先行投資 コンテンツ制作・配信権費用が先行し、広告・課金・二次利用による回収が遅れる可能性。 メディア&IP利益の継続、ABEMA等の利用・収入・費用の説明、権利更新後の採算を見る。
デジタル規制・個人情報 広告表示、消費者保護、個人情報、プラットフォーム取引規制の変更が運用コストやサービスに影響。 法令・ガイドライン変更、行政対応、データ利用の説明を確認する。
システム障害・サイバー攻撃 配信や広告サービスの停止、情報漏洩が収益・信頼を損なう。 障害や漏洩の発生、復旧時間、再発防止に関する会社説明を確認する。
生成AIと権利 制作・広告運用の効率化機会がある一方、学習データ・著作権・出力物の権利処理や競争変化が生じる。 利用方針、権利処理、顧客・権利者との紛争、効率化が利益に反映されたかを確認する。
会計・内部統制 FY2025に子会社の不適切会計を受けて過年度数値を調査・訂正。再発時は数値の信頼や監査負荷に影響する。 調査後の統制運用、再発防止の実装、過年度訂正や決算開示への影響を見る。
M&A・新規事業・人材 買収価格、簿外債務、統合、減損、未成熟事業への投資、専門人材の採用・定着が資本効率を左右する。 買収後の利益・CF、減損・撤退、採用・人員構成、主要人材への依存度を追う。

複数セグメントやスタジオの保有は事業機会を広げる一方、リスクを消すわけではない。
会社が対策を掲げている事項でも、効果を示す定量データがない場合は解決済みと評価しない。
特に広告とゲームは、成長率だけでなく粗利・販促・人件費等を含む営業利益の変化で確認する必要がある。

6. 評価の統合と感応度

この会社の価値を読む際には、売上成長と利益構成の両方が焦点となる。
広告の売上規模は大きいが利益率が低く、ゲームは利益貢献が大きいがタイトルの波を受ける。
メディア&IPは黒字化後の利益が続くかが評価の変化点となる。
FY2026 Q3累計の改善は前向きな事実だが、通期の最終利益や投資回収が確定したものではない。

FY2025末の標準NCは時価総額の14.75%、広義NCAVは15.68%相当である。
これらは評価の一部を構成するが、成長投資や事業運営に必要な資金を無視して機械的に株主価値から引ける金額ではない。
利益ベースの見方では、FY2025実績PER28.41倍に対して、FY2026会社予想利益を分母にしたPERは21.96倍。
後者が示すのは予想達成を前提にした倍率であり、レポート日現在の株価を更新した値ではない。
市場スナップショットの古さを踏まえ、倍率だけで評価判断を完結させない。

以下はFY2026会社予想EPS80.85円に対するPER感応度の幅である。数値レンジは利益・事業条件の変化を倍率で比較する枠組みであり、価格水準や予測確率を示さない。

条件シナリオ PERレンジ 前提として見る事業条件
弱含み 17〜20倍 ゲーム利益の正常化が速く、広告採算も伸び悩む。メディア&IPの利益成長が先行投資を吸収しきれない。
会社計画近傍 20〜24倍 FY2026会社計画に近い着地。ゲームの高成長は落ち着くが、メディア&IPの黒字維持と広告の安定が見える。
利益成長が続く条件 24〜28倍 ゲーム成長が続き、ABEMA等の利益寄与が増え、広告の利益率も改善する。

これらの幅は競合倍率の参考レンジとFY2026会社予想EPSを起点に置いた感応度である。
実際の市場評価には、当日の株価、予想変更、金利、需給、事業ごとの利益持続性が反映される。
本稿では当日株価を確認できていないため、倍率レンジから価格水準を逆算しない。
会社予想が達成されても、利益のゲーム依存が高まれば適用倍率が下がる可能性がある。
反対にメディア&IPの利益が定着し、広告採算が改善すれば、利益源の分散を評価しやすくなる。
どちらも今後の開示で検証すべき条件である。

7. 投資家が学べる点

事業規模だけでなく、利益がどの事業から生まれ、投資後に現金へ変わるかを確かめることが学習上の焦点となる。

  1. 売上構成と利益構成を分ける: 広告は外部売上の約半分を占めるが、ゲームがFY2025/9の利益を大きく押し上げた。売上シェアだけを成長性や収益性と読み替えず、事業別の利益率と調整後連結利益を追う。
  2. 先行投資事業は利用規模だけで評価しない: ABEMAやIP事業では、視聴者数や話題性だけでなく、制作・配信権等の費用と広告・課金・ライセンス収入の組み合わせ、セグメント利益の定着を見る。
  3. 多角化と分散効果を区別する: ゲームスタジオが複数あっても、利益が特定のタイトルやヒット期に偏れば連結利益は変動する。複数事業を持つこと自体を利益安定化と同一視せず、事業間の利益変動が相殺されたかを確認する。

参考情報

経営・株主・従業員

2025年12月に藤田晋氏が代表取締役会長、山内隆裕氏が代表取締役社長となる経営体制が公表された。
創業者が会長として関与を続けながら社長職を移行する体制で、意思決定の継続性と執行の分担を観察する。会長・社長体制に関する公表 経営体制の公表

会社が公表する2026-03-31時点の株主構成上位には、信託銀行口や創業者が含まれる。
EDINET大量保有報告書(提出書類S100Z5ZH、2026-10-07提出)は基準日や制度が異なるため、同じ時点の株主一覧として合算しない。
Orbisは2026-10-07提出の報告で4.90%を保有とした。
株主一覧の3月末データと10月の大量保有報告を分けて示す。会社公式株主情報

会社公式株主一覧(2026-03-31) 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 16.8%
藤田晋 16.6%
日本カストディ銀行(信託口) 6.5%
CEPLUX Orbis SICAV 3.0%
BNY GCM Client Account 2.1%

FY2025/9末のグループ従業員は8,150人(臨時従業員3,448人を含む)、単体従業員は2,588人(臨時従業員407人を含む)。
単体の平均年齢33.8歳、平均勤続年数6.5年、平均年間給与9.138百万円である。FY2025有価証券報告書

単体と連結では集計範囲が違うため、人数や報酬を混同しない。事業横断で人材を確保する会社であり、技術者・広告運用者・クリエイターの採用と定着は投資機会の実行力に関わる。

配当方針はDOE5%以上を基本とし、FY2025/9は17円、DOE5.1%。
FY2026/9会社予想配当は2026-08-07時点で20円。
DOE方針は利益が変動する企業の還元の目安になるが、将来配当を保証しない。
資金を成長投資、M&A、既存株主への還元にどう配分するかを、営業CFと財務CFと合わせて追いたい。

今後確認する開示

会社IRカレンダーでは次の通期決算を2026-11-11 15:30に予定する。
2027年の決算発表日はまだ公表されていないため、次表の2027年の日付は会計期間末であり、開示予定日ではない。会社IRカレンダー

確認時点 確認する項目 開示で見る点
2026-11-11予定 FY2026通期実績 売上950,000百万円・営業利益77,000百万円・親会社利益41,000百万円の達成度と差異
2026-11-11予定 FY2027会社計画 セグメント別の成長・利益前提、投資計画、配当予想。公表前の数値は置かない
2026-11-11予定 ゲーム採算 FY2026通期のゲーム利益構成、主力作と海外カジュアルゲームの寄与
2026-11-11予定 メディア&IP ABEMA等の黒字寄与が通期でも維持されたか、先行投資額との関係
2026-11-11予定 広告採算 増収率と利益率の差、大口顧客離脱の影響
2026-11-11予定 現金・投資 営業CF、設備・コンテンツ投資、M&A、現金と転換社債の推移
2026-12-31(FY2027 Q1期末) FY2027初期進捗 開示日未発表。各事業の売上・利益構成と通期計画との差
2027-03-31(FY2027上期末) 上期進捗 開示日未発表。メディア&IP・ゲームの利益持続と広告採算
2027-06-30(FY2027 Q3期末) Q3進捗・予想修正 開示日未発表。通期進捗、セグメント利益、会社計画の変更
2027-09-30(FY2027期末) 年度末の資本配分 FY2027実績は未公表。現金残高、投資・M&A、配当方針

主な出典と数値の基準

本稿で確認できなかった顧客別売上、FY2026/9通期実績、レポート日現在の株価は未確定事項として扱った。
FY2026会社計画はQ3進捗と差額で示し、過去の期初計画との誤差比較は同じ基準の資料が揃わないため定量化していない。
会社の過年度系列更新、事業構成、決算期、株価基準日の違いを残したまま、数字を同一時点のものとして並べない。