📚 業界ノート

株式会社プレイド

【経済・情報・通信業】情報・通信業企業バリュエーション分析更新 2026-09-28

このページ

目次
  1. 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
  2. KARTEの収益の仕組み
  3. 2. 財務の実力
  4. 5期の推移
  5. 収益性・安全性・効率性
  6. FY2026/12 Q3と修正予想
  7. 9項目の財務健全性チェック
  8. 3. 市場評価を読む — バリュエーション
  9. 現在の評価指標と2軸のネット資産
  10. 倍率ベースの感応度
  11. 4. 同業比較 — 差分の論点
  12. 5. リスクと論点
  13. 6. バリュエーション統合と論点整理
  14. 乖離の構造
  15. 条件分岐シナリオ
  16. 監視ポイント
  17. M&A・出資を検討する買い手の視点
  18. 7. 学びのポイント
  19. 📚 着眼点1: SaaSのARRと会計売上を混同しない
  20. 📚 着眼点2: 決算期変更は比較対象の長さを変える
  21. 📚 着眼点3: SaaSのキャッシュ循環はCCCだけでは読めない
  22. 相場観テーブル
  23. 参考情報
  24. ガバナンスと資本配分
  25. FY2025/9時点の大株主上位5者
  26. データ時点
  27. 出典一覧

株式会社プレイド(4165)銘柄分析レポート

エグゼクティブサマリー

何で稼ぐ会社か: 顧客企業のウェブ・アプリ行動を解析し、個客に合わせた接客や施策へつなぐSaaS「KARTE」と関連支援を提供します。
財務の要点: FY2025/9は売上高13,396百万円・営業利益率10.7%・営業CF1,377百万円と、売上成長と営業キャッシュ創出がそろいました(FY2025有報)。
分析上の最大論点: FY2026/12は15か月の移行年度で、Q3累計は増収減益、修正後の通期営業利益予想も1,600百万円となりました(FY2026/12 Q3短信)。


1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か

KARTEの収益の仕組み

プレイドは、ウェブ・アプリ行動をユーザー単位で分析し、個客向けの案内や施策へつなぐ「KARTE」を提供します。
FY2025有報ではSaaS単一セグメントとして開示され、 製品群・プロフェッショナルサービス別の売上・利益は分かりません。

収益・運営の要素 開示事実・規模 財務に結びつく見方
事業区分 SaaS単一セグメント。FY2025売上高13,396百万円 製品別の増減や採算は外部から分解できない
料金の基礎 有報は月額利用料を基本とし、契約条件により過去12か月の平均月間アクティブユーザー数を基準とする設計を説明 顧客内の利用範囲拡大は契約単価を押し上げうる一方、データ処理・支援負担も増える
顧客拡張 FY2026 Q2資料ではARR1,000万円超の顧客246社(2026年3月) 大口顧客の社数とNRR、解約を合わせて継続収入の質を見る
継続指標 FY2026 Q1資料、Q2資料は期末NRRを107%→109%(FY2026 Q2末はFY2026 Q1末より2pt高い)と開示 1年以上契約する既存顧客の当該月の月次サブスクリプション売上を、同じ顧客群の1年前の同じ月と比べる会社定義。NRRだけでは解約・アップセルの個別額は分からず、将来の継続も保証しない
主要コスト 開発、営業、カスタマーサクセス、人材採用、クラウド基盤、顧客支援 粗利率だけでなく販管費と人員増を含めた営業利益率で投資回収を見る
運転資本 FY2025末の契約負債1,063百万円、棚卸資産はほぼない 顧客からの前受を一般的な仕入債務と混同しない

出典:FY2025有報、FY2026 Q2説明資料、Q2説明会Q&A。

料金設計は、顧客の接点や利用の拡大が契約単価に反映される余地を持ちます。ただし全契約が同じ従量条件とは限らず、会社全体の売上増を利用量増だけで説明することはできません。

会社は一次データを分析から顧客体験の改善へ結びつける価値を掲げ、接続・計測・施策・定着まで支援します。
複数ブランドへの展開は顧客単価を高め得ますが、大企業の審査や現場導入には時間がかかり、 人員費用が先行することもあります。

FY2026に会社はAIデータ基盤・AIエージェントを成長施策に掲げます。AI機能別の有料社数・売上・粗利は未開示で、収益化は仮説です。

会社はFY2026 Q2時点で対象候補約2,500社に対する市場浸透を約1割と推計します。独自の対象定義による概算で、独立調査値ではありません(Q2資料)。

FY2025粗利率73.1%に対し営業利益率は10.7%。
連結従業員数はFY2024の449人からFY2025に531人、平均年間給与は939.7万円でした(FY2025有報)。
人材増は供給力を高める一方、人件費が売上を超えて伸びれば利益率を下げます。

FY2025の営業CFは1,377百万円、投資CFは−385百万円。
設備支出だけではクラウド・データ処理・人員コストを測れません。
業界解説は情報・通信業業界基礎ガイド、MarTechはMarTechセグメント分析を参照してください。

2. 財務の実力

FY2025/9に利益と営業CFは回復しましたが、FY2026/12 Q3累計は増収減益で、利益回復の持続性が焦点です。

5期の推移

百万円(率は%) FY2021/9 FY2022/9 FY2023/9 FY2024/9 FY2025/9
売上高 5,444.8 7,295.2 8,633.6 10,992.7 13,396.5
売上成長率 — 34.0% 18.3% 27.3% 21.9%
売上総利益 3,993.5 5,367.2 6,236.8 7,869.8 9,788.3
売上総利益率 73.3% 73.6% 72.2% 71.6% 73.1%
営業利益 170.6 -882.5 -881.4 260.9 1,431.9
営業利益率 3.1% -12.1% -10.2% 2.4% 10.7%
親会社株主帰属純利益 -106.7 -930.8 -2,108.6 320.7 1,099.1
純利益率 -2.0% -12.8% -24.4% 2.9% 8.2%
総資産 6,984.0 7,091.3 6,219.4 7,299.9 9,649.0
現預金 4,172.1 4,240.6 3,827.4 4,744.9 6,602.0
純資産 4,953.5 4,070.1 2,748.8 3,203.0 4,812.4
自己資本比率(有報表示) 69.6% 57.2% 41.7% 43.0% 49.3%
営業CF 410.9 -809.2 -325.1 900.5 1,376.5
投資CF -1,330.0 -135.1 -89.0 -49.7 -384.7
FCF(営業CF+投資CF) -919.1 -944.3 -414.1 850.8 991.8

出典:EDINET FY2025有報。利益率は表示額から算出。FCFは営業CFと投資CFの単純合計で、 会社開示の定義済み指標ではありません。

FY2021/9は営業利益170.6百万円の黒字でしたが、FY2022/9〜FY2023/9は営業赤字で、親会社株主帰属純損失はFY2023/9まで続きました。
FY2024/9に営業・純利益が黒字化し、FY2025/9は売上21.9%増・営業利益1,432百万円となりました。
持続性はFY2026/12の減益も含めて見ます。

収益性・安全性・効率性

指標 FY2025/9 情報・通信業中央値 読み方
売上総利益率 73.1% 39.4% SaaS型の粗利構造が表れる。費用全体の効率とは別指標
営業利益率 10.7% 8.7% 業界中央値を上回るが、FY2026 Q3累計では低下
純利益率 8.2% 7.0% 特別損益・税負担を含む最終利益の比率
ROE 27.8% 12.2% 有報表示値。過年度の損失と自己資本の変動も影響
自己資本比率 49.3% 64.4% 業界中央値より低いが、FY2025の総負債に占める借入は限定的
流動比率 229.7% — 流動資産8,326÷流動負債3,624
標準NC 4,781百万円 — 現預金6,602−有利子負債1,821
広義NCAV 3,727百万円 — 流動資産8,326+投資有価証券339×70%−負債合計4,837
CCC 35.8日 — 契約負債・継続課金の影響を含まない伝統的な簡易指標
FCF 992百万円 — FY2025営業CF+投資CF

業界値は情報・通信業FY2026中央値。
FY2025 CCC35.8日は債権35.9日+棚卸0日−仕入債務0.1日(債権は売上高、ほかは売上原価を分母)。
契約負債1,063百万円を含まず、 他社定義も不明なためCCCだけで資金回収力は評価できません。

FY2026/12 Q3と修正予想

FY2026/12 Q3累計(2025年10月〜2026年6月)は売上11,920百万円(FY2025/9 Q1〜Q3累計比+21.2%)、営業利益842百万円(−32.3%)、経常利益719百万円(−39.8%)、

純利益317百万円(−63.9%)でした(Q3短信、 説明会)。売上増・利益減が併存しました。

2026年8月13日修正後の15か月予想は売上20,800、営業利益1,600、経常利益1,400、純利益600百万円、EPS14.62円、配当0円。
Q3累計進捗率は売上高57.3%、営業利益52.6%、親会社株主帰属純利益52.9%で、各Q3累計値を対応する通期予想で割った単純値です。
季節性や四半期ごとの利益偏重を調整していません。

修正前予想比で売上+1.1%、営業利益−26.7%、純利益−54.7%でした。

通期売上の予想→実績の観測例は、FY2022/9(Q3・2022-08-09)7,186→7,295、FY2023/9(Q3・2023-08-08)8,523→8,634、FY2024/9(Q2・2024-05-10)10,809→10,993、FY2025/9(Q3・2025-08-14)13,575→13,396百万円です。
FY2025/9 Q3公表の営業利益予想1,231→実績1,432百万円でした。
開示四半期と予想残存期間が異なり、以後の改定履歴も全てそろっていません。
同一条件での予想精度比較や通期予想の一貫した評価には使えません。

FY2025実績・FY2026予想とも配当は0円です。

財務期間の比較

FY2026/12は15か月の移行年度です。FY2025/9実績、FY2026/12予想、FY2026 Q3累計は期間をそろえて比べます。

9項目の財務健全性チェック

以下は事業会社向けの単純なしきい値判定です。EDINET DBの健全性スコア73/100も参照値であり、信用格付けではありません。

3. 市場評価を読む — バリュエーション

評価の焦点は、15か月分母のFY2026/12予想利益と、基準時点の異なる株価・資産価値を混同しないことです。

現在の評価指標と2軸のネット資産

2026年9月25日終値は669円。
買付713,500株をQ3発行済41,270,663株・自己株185,858株から控除し、参考株数40,371,305株、時価総額27,008百万円としました。
価格情報表示値27,203百万円との差0.72%は株数時点差を含みます(株価履歴、 買付終了開示)。

指標 値 算式・基準時点
株価 669円 2026-09-25終値
取得後株数(参考) 40,371,305株 FY2026 Q3発行済株数−Q3自己株−Q3後買付株数
参考時価総額 27,008百万円 株価×取得後株数
FY2025実績PER 24.8倍 669円÷FY2025 EPS26.99円
FY2026会社予想PER 45.8倍 669円÷FY2026/12・15か月EPS14.62円
FY2026予想PERの月割り参考値 57.2倍 15か月EPSを1.25で除した11.70円を分母
FY2025 EBITDA基準EV/EBITDA 15.5倍 参考EV22,901÷FY2025 EBITDA1,480百万円
PBR(買付額反映後参考) 5.9倍 669円÷参考BPS113.57円
FY2026予想配当利回り 0.0% 0円÷669円
標準NC(時価総額比) 4,108百万円(15.2%) FY2026/6 Q3末・買付額調整
標準NC(過年度金額) 4,781百万円/3,424百万円 FY2025/9末/FY2024/9末。各期末時価総額比は算出なし
広義NCAV(時価総額比) 2,793百万円(10.3%) FY2026/6 Q3末・買付額調整
広義NCAV(過年度金額) 3,727百万円/2,181百万円 FY2025/9末/FY2024/9末。各期末時価総額比は算出なし

標準NC=現預金+短期有価証券−有利子負債。
Q3現金8,894−買付499.991−借入合計4,286=4,108百万円。
短期有価証券の独立値は得られず加算していません。
広義NCAV=(流動資産−買付)+投資有価証券×70%−負債合計=2,793百万円。
買付以外のQ3後変動は未反映です。

FY2025 EBITDA=営業利益1,431.874+減価償却47.856=1,479.730百万円。
参考EV=27,008−標準NC4,108=22,901百万円、EV/EBITDA15.5倍。
株価・残高・利益の基準は各々9月25日、 Q3末調整後、FY2025です。

FY2025 EPS26.99円のPERは24.8倍。
FY2026予想EPS14.62円では45.8倍(15か月分母)、12か月への機械換算57.2倍は季節性を含まない参考値です。
CN-PER=(時価総額−NC)÷予想純利益。
予想純利益600百万円で標準NC控除後38.2倍、広義NCAV控除後40.4倍です。

Q3末親会社持分5,085百万円から買付額を控除した参考BPSは113.57円、669円÷113.57円=PBR5.9倍(FY2025有報BPS116.07円なら5.8倍)。

DCFは掲載していません。検証可能なWACC、永久成長率、5年間の予測FCFを一式でそろえられず、過去の営業CF+投資CFを将来のFCF予測に置き換える根拠もありません。

倍率ベースの感応度

比較の幅は全上場中央値と同業2社平均から作った参照区間で、目標倍率ではありません。倍率だけを並べ、円建て理論値へは換算しません(PER中央値、

EV/EBITDA中央値)。

評価軸 参照倍率の幅 プレイドの実績・予想評価 比較上の注意
PER 13.76〜14.84倍(全上場中央値〜競合2社平均) FY2025実績24.79倍、FY2026/12予想45.76倍、12か月機械換算57.20倍 FY2026予想は15か月分母。12か月換算は季節性を調整しない。赤字年度を含むため過去5期の連続レンジは作らない
EV/EBITDA 6.82〜7.41倍(競合2社平均〜全上場中央値) 15.48倍(FY2025 EBITDA) 競合の個別値はジーニー6.77倍、ユーザーローカル6.87倍。対象はFY2025実績、競合は各社最新通期で会計範囲が異なる

全上場中央値は最新有報・決算期末株価を用いる表示値で、9月25日リアルタイム倍率ではありません(PER、 EV/EBITDA)。

4. 同業比較 — 差分の論点

プレイドの利益率回復は目立ちますが、競合の期間・会計範囲が違うため、単年の倍率差を事業品質の差とはみなしません。

比較対象は情報・通信業のジーニーとユーザーローカル。
価格は各社2026-09-25終値、財務はプレイドFY2025/9連結、ジーニーFY2026/3 IFRS連結、ユーザーローカルFY2026/6単体。
期末・会計基準・連結範囲は異なります。

指標 プレイド FY2025/9 ジーニー FY2026/3 ユーザーローカル FY2026/6
時価総額(百万円) 27,008 12,288 25,343
売上高(百万円) 13,396 13,377 5,343
売上成長率 21.9% 18.2% 16.6%
営業利益率 10.7% 11.5% 41.1%
純利益率 8.2% 6.5% 30.6%
自己資本比率 49.3% 36.0% 84.5%
実績PER 24.8倍 14.2倍 15.5倍
PBR 5.9倍 1.25倍 2.68倍
ROE 27.8% 9.8% 18.0%
EV/EBITDA 15.5倍 6.8倍 6.9倍
配当利回り 0.0% — —
標準NC/時価総額 15.2% -59.2% 38.5%
営業CF(百万円) 1,377 1,861 2,238
FCF(営業CF+投資CF、百万円) 992 -535 2,275

出典:FY2025有報、ジーニー訂正開示、 ユーザーローカルIR。
各倍率は取得財務値・2026-09-25株価から算出。
ユーザーローカルは有利子負債の独立値がなく、 標準NCは現金額のみの参考値。
競合2社の配当利回りは比較可能な基準値を取得できず「—」としました。

各社内の3期推移では、プレイド(FY2023–25)の売上高は8,634→10,993→13,396百万円、営業利益率は−10.2→2.4→10.7%へ回復しました。
ジーニー(FY2024–26)は8,013→11,322→13,377百万円、19.2→22.3→11.5%で最新期に低下し、ユーザーローカル(FY2024–26)は3,908→4,582→5,343百万円、44.2→43.0→41.1%と高率を保ちながら低下しました。
対象FY・会計範囲は異なり、各社内推移と利益率水準の比較にとどめます。

2社平均はPER14.8倍、PBR1.97倍、ROE13.9%、営業利益率26.3%、EV/EBITDA6.8倍。
ユーザーローカルが利益率を押し上げ、プレイドは利益回復後のROEが高い一方PERも上回ります。
CF転換が倍率差の焦点です。

FY2026 Q3累計は利益が減少し、通常12か月での持続性は未確認です。

5. リスクと論点

最大の懸念は、顧客基盤の拡大に伴う採用・支援費用を粗利と営業利益へ転換できるかです。

# リスク 影響 可能性 業績に表れる経路 確認事項
1 既存顧客の利用縮小、解約、新規獲得コスト上昇 高 中 NRR・ARR成長が鈍り、人員費用を吸収できない NRRの算式・対象期間、契約数、ARR顧客数、更新状況
2 利用拡大に伴うクラウド・データ処理費と顧客支援費の増加 高 中 利用量の伸びが価格収入を上回ると粗利率・営業利益率が低下 クラウド費、粗利率、サービス人員、契約単価の開示
3 個人データ・プライバシー・セキュリティ事故、クラウド停止 高 低〜中 顧客信頼、継続、導入審査、稼働率へ波及 FY2025有報の事業リスク、事故・統制・監査に関する開示
4 競合製品や生成AIによる機能標準化・価格圧力 中〜高 中 顧客が別製品へ移行し、AI開発費の回収が遅れる AI有料契約、解約抑制、顧客内利用拡張、開発費の回収
5 採用・買収統合のコストと実行 高 中 人員・統合費用が売上より先に増え、利益計画を下回る 採用数・人件費、アジト統合、のれん、営業CF

可能性の区分は定性的な分析評価です。顧客別売上や製品別粗利の開示がないため、影響額を確定できません。

バリュートラップは、FY2025の回復利益を持続利益とみなし、15か月年度とFY2026 Q3の減益を見落とす経路です。
実績PER24.8倍に対し、修正後予想PERは45.8倍(15か月)、 季節性を無視した月割り参考値は57.2倍です。
顧客獲得・採用・AI投資費用が続くかを確認し、FY2025の利益回復をそのまま標準値にしません。

現金超過は資金繰りの余力ですが、解約、収益性低下、倍率変動を相殺しません。NCと事業価値は別に読みます。

一次データの利用が広がるほど、同意・権限・委託先管理・監査が重要です。有報はセキュリティ、法令、クラウド依存のリスクを記載しています。これは事故発生の確認ではなく、統制と復旧策の確認項目です。

6. バリュエーション統合と論点整理

乖離の構造

EV/EBITDAはプレイド15.5倍、競合2社6.8〜6.9倍、全上場中央値7.41倍です。期・会計・範囲差はありますが、過去利益だけでは倍率差を説明しにくいです。

継続課金、顧客内拡張、データと施策の連携が背景要因と考えられます。NRR109%、ARR1,000万円超顧客246社、AI方針の利益寄与は未検証です。

反証材料はQ3累計の減益、8月の利益予想引き下げ、累積損失、採用・支援費用です。成長、利益率回復、AI・M&A収益化を分けて確認します。

条件分岐シナリオ

  1. 顧客拡張と利益率回復: Q3累計の売上成長+21.2%前後が続き、会社説明のNRR109%前後を保ち、営業利益率がFY2025実績10.7%へ戻る場合、評価軸は売上倍率からEV/EBITDA・FCFへ移り得ます。
  2. 修正予想に沿った着地: 15か月のFY2026/12修正予想(売上20,800・営業利益1,600百万円、営業利益率7.7%)に沿う場合、FY2027の通常12か月年度で利益率とFCFが保てるかを確認する評価になります。
  3. 解約・価格圧力・情報事故: NRRが100%を下回る、大口ARR顧客がQ2の246社から減る、またはQ3累計営業利益率7.1%からさらに低下する場合、売上倍率の圧縮とEBITDA減少によるEV/EBITDA上昇が同時に起こり得ます。

各シナリオは条件と倍率・評価軸の変化を示し、確率・円建て水準は置いていません。

監視ポイント

時期 イベント 開示で確認すること
2026-09-30 FY2026/12 第4四半期末(2026-07〜09) Q4売上、粗利、採用費用、契約数、ARR・NRRの更新
2026-11-12 15:30 FY2026/12 第4四半期決算発表(会社IRカレンダー) 当日資料で対象期間を確認し、開示範囲内のQ4売上・利益・営業CFと、15か月通期予想に対する進捗を確認。15か月通期の最終値と予想差は期末後の決算資料で見る
2026-12-31 15か月移行年度の期末 残り3か月の売上・利益、現金・借入、契約負債、のれん
2027-03-31 FY2027 Q1の期間末 FY2027 Q1(2027-01〜03)の売上・営業利益をFY2026/12 Q2(2026-01〜03)と同期間比較
2027-06-30 FY2027 Q2の期間末 NRR、顧客内拡張、営業CF、売上債権と契約負債
2027-09-30 FY2027 Q3の期間末 通期計画、採用・人件費の伸びと利益率、クラウド費用
2027-12-31 FY2027通常年度末 12か月ベースの売上成長、営業利益、FCF、資本配分

11月12日15:30の発表予定は会社IRカレンダーに記載されています。
同カレンダーは発表の対象期間と15か月通期の最終発表日を示していません。
当日資料で対象期間を確認し、15か月通期の最終値と修正予想との差はFY2026/12期末後の決算資料で確認します(IRカレンダー)。

M&A・出資を検討する買い手の視点

買い手にとっての資産は顧客基盤、データ接続、分析・施策人材、契約更新と利用拡張の仕組み。許容EVはクロスセル粗利益から移行・二重システム・クラウド・統合費を控除したキャッシュ創出で考えます。

DDでは顧客継続・利用量・契約条件、データ権利、重複顧客、AI機能との重複、人材定着、のれん回収を確認します。
プレイドは2026年6月1日に完全子会社アジトを吸収合併し、 連結影響は軽微と説明しました(合併開示)。
合併後の顧客統合や製品連携を実績で確かめます。

FY2026/12 Q3末の連結のれんはFY2025/9末比583.586百万円増加しましたが、アジト合併単独への帰属は開示から確認できません(Q3短信)。
取得後の収益寄与や減損リスクは連結全体の残高・キャッシュフローで追います。

7. 学びのポイント

📚 着眼点1: SaaSのARRと会計売上を混同しない

ARRは時点の契約ランレート、売上高は期間中の会計認識額です。
FY2025 ARR12,166百万円と売上13,396百万円を構成比とせず、対象製品・更新条件・顧客コホートを確認します。
NRRも算式が異なれば他社比較の意味が変わります。

📚 着眼点2: 決算期変更は比較対象の長さを変える

FY2026は15か月です。
会社予想20,800百万円とFY2025の12か月売上13,396百万円は期間が違い、単純な月割りも季節性・検収・契約開始日を無視します。
9か月同士で比べ、 FY2027の通常12か月で成長率・利益率を見ます。

📚 着眼点3: SaaSのキャッシュ循環はCCCだけでは読めない

FY2025 CCCは35.8日、在庫・仕入債務は小さく、契約負債は1,063百万円です。前受を含まないCCCだけでは資金循環を表せず、債権日数・契約負債・更新・営業CFを合わせて見ます。

相場観テーブル

指標 プレイド 競合2社平均 全上場中央値 比較の目安・読み方
実績PER 24.8倍 14.8倍 13.76倍 FY2025実績/競合最新通期
PBR 5.9倍 1.97倍 1.17倍 Q3自己資本・買付反映後
EV/EBITDA 15.5倍 6.82倍 7.41倍 Q3現預金・負債を調整
ROE 27.8% 13.9% 8.21% 赤字後の回復と併読
営業利益率 10.7% 26.3% 6.38% 情報通信中央値8.70%、競合平均はUL寄与大
自己資本比率 49.3% 60.2% 56.8% 情報通信中央値64.4%
売上成長率 21.9% 17.4% — 情報通信中央値8.49%、全市場値なし
純利益率 8.2% 18.5% — 情報通信中央値7.04%、全市場値なし
FCF利回り 3.7% 2.3% — FY2025 FCF÷時価総額、全市場値なし
標準NC比率 15.2% -10.4% — 対象Q3調整、競合最新通期
配当利回り 0.0% — 2.89% 対象FY2026予想、競合平均なし

全上場中央値はリンク先の最新開示・期末株価ベースで、対象現値とは時点が異なります。競合平均は2社単純平均。中央値は比較軸であり目標値ではありません。

収益性を見る順序

顧客数やARRが伸びたかだけでなく、顧客内の利用拡張が粗利へつながり、その粗利が開発・営業・支援人員を吸収して営業利益と営業CFへ転じたかを順に確かめます。

参考情報

ガバナンスと資本配分

FY2025/9時点の取締役は8人、女性1人(12.5%)。
創業者の倉橋健太氏が筆頭株主で、上位株主の保有も大きい。
長期の製品投資を支え得る一方、少数株主との利害調整、取締役会の監督、 投資・資本配分の説明が確認点です。
株主比率は2025-09-30時点で、2026年9月の保有を示しません。

2026-08-14〜09-10に713,500株、499,990,800円を取得し、9月11日に終了を公表しました。
総額は上限500百万円に近い水準です。
一度の取得実績で、 将来も同規模・条件で取得する方針は示しません(取得終了開示)。

FY2025/9時点の大株主上位5者

順位 株主 持株比率
1 倉橋 健太 26.75%
2 柴山 直樹 17.24%
3 田畑 正吾 9.51%
4 株式会社日本カストディ銀行 3.48%
5 Google International LLC 3.46%

出典:FY2025有報、アジト吸収合併開示。基準日は2025-09-30。上位5者の合計は60.44%。

データ時点

財務はFY2025/9末(2025-09-30)、最新開示はFY2026/12 Q3累計・Q3末(2026-06-30)、市場価格は2026-09-25終値669円です。
作成日は2026-09-28の東京市場寄り付き前。
Q3後は自己株買付額のみ株数・現金の参考計算へ反映し、そのほかの現金変動は含めていません。

出典一覧

  1. FY2025有報
  2. FY2026 Q3短信・説明会書き起こし
  3. FY2026/12 Q1説明資料・FY2026 Q2説明資料・Q&A
  4. 自己株取得終了開示・アジト合併開示
  5. IRカレンダー・4165株価履歴
  6. 比較企業:ジーニー訂正開示・ユーザーローカルIR
  7. 全上場中央値:PER、PBR、EV/EBITDA、ROE、営業利益率、自己資本比率、配当利回り
  8. 情報・通信業FY2026ベンチマーク(n=336)