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澁澤倉庫株式会社

【経済・倉庫・運輸関連業】倉庫・運輸関連業企業バリュエーション分析更新 2026-10-21

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目次
  1. 1. 事業構造
  2. 物流を中核に、不動産賃貸が利益を補う
  3. 収益ドライバーと費用構造
  4. 事業開発と資本政策
  5. 2. 財務分析
  6. 5期損益とFY2027/3会社予想
  7. 資産構成と流動性
  8. キャッシュフローと健全性
  9. 3. バリュエーション
  10. 期末評価とNCの推移
  11. FY2027/3予想を使った倍率と限界
  12. 4. 同業比較
  13. 比較対象と期末指標
  14. 5. リスク
  15. 利益率と成長の両方を揺らす要因
  16. 6. バリュエーション統合
  17. 市場評価と業績条件を分けて考える
  18. 上方条件
  19. 基準条件
  20. 下方条件
  21. M&Aを評価する際の論点
  22. 監視ポイント
  23. 7. 学びのポイント
  24. 着眼点1: 物流では売上数量と採算を分けて追う
  25. 着眼点2: 持合株の縮減は売却後の資金配分まで見る
  26. 着眼点3: 財務指標の位置取り
  27. ガバナンス・株主構成
  28. 出典

澁澤倉庫株式会社(9304)銘柄レポート

レポート日: 2026-10-21
基準: 連結・日本基準。
1株指標は2025年10月1日の1対4株式分割を調整。
財務・市場評価はFY2026/3末を基準とし、最新の会社開示は2026年9月4日までを反映。

要約
  • 澁澤倉庫は売上の92.75%を物流で稼ぎ、売上構成の小さい不動産事業が高い利益率で利益構成を補う会社である。
  • FY2026/3は売上高797.40億円、営業利益40.97億円、営業利益率5.14%で、自己資本比率は57.3%となった。
  • 最大の分析論点はFY2027/3の成長予想に買収寄与と料金改定が含まれる一方、人件費等の費用転嫁、本業利益率、時点の古い市場評価を切り分けることである。

市場データの留保: 2026年10月21日の現値は取得できていない。
以下の時価総額・PER・PBR・利回りは、FY2026/3末のEDINET開示スナップショットに基づく。
1株換算値1,317円は時価総額を発行済株式数で割った計算値で、実際の終値・現値ではない。


1. 事業構造

物流を中核に、不動産賃貸が利益を補う

業界全体の構造は倉庫・運輸関連業業界基礎ガイドを参照。 本稿では澁澤倉庫固有の収益構造に絞る。

同社は倉庫、港湾運送、陸上輸送、国際輸送、3PLと不動産賃貸を営む。
FY2026/3の売上高の大半は物流事業である。
一方、不動産事業は売上規模が小さくても営業利益率が高く、物流の薄い利益率を補っている。
セグメント営業利益は本社費用・消去前のため、連結営業利益へ単純加算できない。

事業・業務 FY2026/3売上高 構成比 FY2026/3営業利益 営業利益率 開示された動き
物流事業 739.60億円 92.75% 36.63億円 4.95% FY2027/3予想に名鉄ワールドトランスポートの9か月寄与
不動産事業 57.80億円 7.25% 31.34億円 54.22% 神戸の冷蔵倉庫は共同開発の検討段階

物流の売上は保管量、荷役件数、輸送量、稼働率、料金、顧客の委託範囲で変わる。
FY2027/3 Q1の3PLは売上高105.62億円(FY2026/3 Q1比+5.4%)、営業利益7.97億円(+36.5%)。
四半期累計値である。
会社はFY2027/3 Q1から3PL業務区分を新設し、前年同期比較も組替後の区分で示した。
顧客別売上高は特定できず、顧客集中度は未評価。
FY2027/3 Q1決算短信・p.4。

収益ドライバーと費用構造

FY2027/3会社予想の増収要因には、既存顧客の荷量、医療機器などの新規案件、料金改定、施設稼働、名鉄ワールドトランスポートの連結寄与が含まれる。
売上の増加だけでなく、単価・稼働率の上昇が人件費や協力会社への運送費を吸収できるかが採算を左右する。

費用の主因は人件費、協力会社運賃、燃料、賃料、減価償却、修繕、エネルギー。
固定費・変動費の構成比や損益分岐点は、参照した公開資料から分解できないため定量化しない。
FY2026/3の減価償却費30.24億円、設備投資支出21.31億円、総資産回転率0.668回。
FY2024/3・FY2025/3の設備投資支出は各66.44億円、65.12億円だった。

FY2026/3末の売掛金は139.55億円、買掛金は59.66億円。
棚卸資産・売上原価が不足しCCCは未算出。
複数拠点、運営ノウハウ、輸送網との接続や取引関係は参入障壁になりうる一方、顧客が委託先を分散する可能性もある。
物流拠点は荷物の流れを受け止める結節点であり、輸送網との接続力が価値をつくる。

事業開発と資本政策

2026年5月29日に名鉄ワールドトランスポートの全株式取得を完了し、澁澤ワールドトランスポートへ改称した。
フォワーディング、北米網、アジア2拠点が加わり、FY2027/3会社予想に9か月寄与する。
FY2026/3有報の重要な後発事象では、取得株式の対価0百万円、取得債権の対価2,550百万円、取得原価2,550百万円と記載されている。
FY2026/3有報・p.95。

松戸営業所は2026年7月30日に稼働し、多品種小ロットに対応する。
神戸の冷蔵倉庫はTC神鋼不動産との共同開発を検討中。
7月にはTDG等とフィリピン人特定技能ドライバーの供給事業を始めた(会社発表一覧)。
会社は2030年度(FY2031/3)に営業収益1,000億円を掲げる(Shibusawa 2030ビジョン)。


2. 財務分析

5期損益とFY2027/3会社予想

FY2026/3売上高は1.42%増の797.40億円、営業利益は12.24%減の40.97億円で、営業利益率は5.14%へ低下した。
純利益63.33億円には投資有価証券売却益47.99億円が含まれるため、営業利益と分けて読む。
決算短信。

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3 FY2027/3会社予想
売上高(億円) 717.46 785.04 734.17 786.20 797.40 900.00
営業利益(億円) 45.16 48.94 42.71 46.68 40.97 53.00
経常利益(億円) 69.24 58.47 50.91 55.83 48.58 60.00
純利益(億円) 52.57 37.59 37.28 49.08 63.33 72.00
調整EPS(円) 86.45 61.95 61.52 84.31 111.65 128.87
営業利益率 6.29% 6.23% 5.82% 5.94% 5.14% 5.89%
売上高YoY — +9.42% -6.48% +7.09% +1.42% +12.87%
営業利益YoY — +8.37% -12.73% +9.29% -12.24% +29.36%
年間DPS(円、調整後) 17.50 21.25 25.00 35.00 56.00 90.00*

*FY2027/3会社予想のDPS90円には普通配当80円と記念配当10円を含む。
会社は累進配当と配当性向50%以上を基本方針としている。
FY2026/3配当性向は50.2%、FY2027/3予想は69.8%。
いずれも2025年10月の株式分割を遡及調整した1株指標である。

FY2022/3〜FY2026/3の売上高CAGRは2.68%。
2026年7月30日修正のFY2027/3会社予想はFY2026/3比で売上高12.9%、営業利益29.4%、純利益13.7%増。
買収寄与と既存事業の採算改善を分けて確認する。

資産構成と流動性

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
総資産(億円) 1,089.91 1,158.31 1,127.72 1,174.46 1,193.01
流動資産(億円) 370.94 413.66 284.53 288.84 278.94
流動負債(億円) 157.40 232.64 168.28 162.35 225.51
負債合計(億円) 553.36 579.59 501.45 521.18 508.60
純資産(億円) 536.55 578.72 626.27 653.28 684.41
自己資本比率 48.9% 49.3% 54.7% 54.8% 57.3%
流動比率 235.7% 177.8% 169.1% 177.9% 123.7%
利益剰余金(億円) 343.04 368.47 392.07 424.07 462.27
現預金(億円) 201.46 223.24 95.47 85.21 79.00
短期有価証券(億円) 30.00 30.00 — — —
投資有価証券(億円) 191.79 212.76 253.84 278.22 316.66
有利子負債(億円) 358.84 373.93 272.22 300.13 275.09
BPS(円、調整後) 876.94 941.66 1,018.50 1,118.11 1,200.89

FY2024/3〜FY2026/3の短期有価証券は未確認のため「—」とし、ゼロとはみなさない。 FY2026/3有利子負債275.09億円は借入金・社債の合計で、リース債務を含めない。

キャッシュフローと健全性

項目(億円) FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
営業CF 60.33 67.29 58.29 63.50 57.42
投資CF -8.68 -27.42 -69.41 -60.13 +3.17
財務CF -36.86 -20.35 -116.85 -14.10 -66.74
FCF(営業CF+投資CF) 51.65 39.87 -11.12 +3.37 +60.59
減価償却費 31.41 29.16 27.86 28.48 30.24
設備投資支出 8.65 13.07 66.44 65.12 21.31

FCFは営業CF+投資CF。 有価証券売却・償還を含みうるため、恒常的な余剰資金とは限らない。 営業CFはFY2024/3〜FY2026/3で3期連続黒字。

健全性スコアは93/100。
個別基準では、自己資本比率40%超(57.3%)、利益剰余金プラス(462.27億円)、営業CF3期連続黒字(FY2024/3〜FY2026/3)、配当3期連続支払い(同)、EPS増加(FY2026/3 111.65円、FY2025/3 84.31円)、ROE8%超(9.47%)を満たす。
有利子負債275.09億円は現預金79.00億円を上回り、流動比率123.7%は基準150%未満、営業利益率5.14%は倉庫・運輸関連業中央値5.89%を下回る。
ROEには売却益等が含まれ、継続収益力とは同一視しない。
過去3期の予想精度は未取得。
CCCは棚卸資産・売上原価の不足で未算出。
受注残分析は非受注産業のため対象外。

FY2027/3 Q1(2026年8月7日)は売上高209.30億円、営業利益11.95億円、経常利益18.16億円、純利益29.98億円。
純利益には物流施設移転の一時利益が含まれる。
3か月累計と通期予想は期間が異なる。
会社IR。


3. バリュエーション

期末評価とNCの推移

市場データはFY2026/3末の有報スナップショットで、2026年10月21日の現値ではない。
時価総額801.96億円÷発行済60,870,988株=1,317.47円は1株換算値で、実際の取引価格ではない。

標準NC=現預金+短期有価証券−有利子負債。 FY2024/3〜FY2026/3は短期有価証券が未確認のため既知項目小計を表示。 広義NCAV=流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計。

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
時価総額(億円、期末) 352.56 339.39 471.82 492.65 801.96
PER(提供値) 6.7倍 9.0倍 12.6倍 9.6倍 11.8倍
PBR 0.660倍 0.592倍 0.761倍 0.724倍 1.097倍
標準NC / 既知項目小計(億円) -127.38 -120.69 -176.75* -214.92* -196.09*
NC比率(時価総額比) -36.1% -35.6% -37.5%* -43.6%* -24.5%*
広義NCAV(億円) -48.17 -17.00 -39.23 -37.59 -8.00
広義NCAV比率 -13.7% -5.0% -8.3% -7.6% -1.0%

NC計算に使った現預金・短期有価証券・有利子負債は第2章のBS表を参照。
*短期有価証券欠損を含む既知項目小計。
短期有価証券をゼロとみなしていない。
FY2026/3の既知項目小計は-196.09億円であり、現預金より有利子負債が大きい。
投資有価証券は標準NCに含めていない。

FY2027/3予想を使った倍率と限界

FY2026/3末の時価総額801.96億円を純利益63.33億円で割ると12.66倍となる一方、提供値の実績PERは11.8倍である。
前者は時価総額と純利益、後者は株価と調整EPSの組み合わせであり、期末発行済株式数と期中平均株式数の分母差を含む。

調整EPS128.87円に対するFY2027/3予想PERは期末換算値で10.22倍。
予想純利益72億円で時価総額を割ると11.14倍で、差はEPSの加重平均株式数と発行済株式数・自己株式の分母差による。
いずれも現値倍率ではない。

FY2026/3配当56円の換算利回りは4.25%。 FY2027/3予想90円を同じ値に適用した6.83%は異時点の参考値で、現値利回りではない。 予想には記念配当10円を含む。

EV/EBITDA=(時価総額801.96億円+純有利子負債小計196.09億円)÷(営業利益40.97億円+減価償却費30.24億円)=14.02倍。
広義NCAVは-8.00億円のため、EV=時価総額−広義NCAV=809.96億円、EV/EBITDA=11.37倍。
広義NCAVは資産時価・売却費・運転資金を反映せず、実現可能価値ではない。
提供値14.05倍との差は現金・負債定義による。
CN-PER=予想PER×(1−標準NC比率)=12.72倍。
NC比率が負のため予想PERより高い。

倍率感応度は下限8〜9倍(自社期末PER履歴6.7〜12.6倍の保守域)、据え置き10〜12倍(FY2026/3末近辺)、上限13〜15倍(全上場中央値13.76倍を含む域)。
仮定別の比較幅であり予測ではない。
WACC・永久成長率・5年FCFの根拠不足によりDCF評価は行わない。


4. 同業比較

比較対象と期末指標

比較対象は倉庫・運輸関連業でFY2026/3決算、対象時価総額の0.3〜5倍。 9302・9303は約3.9倍、9310は対象に近い規模で、各社の会社名・FY・会計基準を確認した。

指標 澁澤倉庫 三井倉庫HD(9302) 住友倉庫(9303) 日本トランスシティ(9310)
時価総額(億円) 801.96 3,110.65 3,095.25 819.83
売上高(億円) 797.40 2,994.72 1,962.44 1,255.17
営業利益率 5.14% 7.38% 5.81% 6.81%
自己資本比率 57.3% 45.7% 61.2% 57.9%
PER 11.8倍 26.9倍 17.5倍 11.7倍
PBR 1.097倍 2.156倍 0.981倍 0.755倍
ROE 9.47% 8.6% 6.1% 6.9%
配当利回り 4.25%* 1.23% 2.55% 3.48%
EV/EBITDA(提供値) 14.05倍 10.415倍 15.480倍 6.734倍
標準NC比率 -24.45%* — — —
営業CF(億円) 57.42 — — —
FCF(億円) 60.59 — — —
CCC —* —* —* —*
売上高推移(億円、FY2024/3→FY2026/3) 734.17→786.20→797.40 2,605.93→2,807.42→2,994.72 1,846.61→1,933.98→1,962.44 1,225.55→1,247.65→1,255.17
営業利益率推移(FY2024/3→FY2026/3) 5.82%→5.94%→5.14% 7.97%→6.35%→7.38% 7.14%→6.86%→5.81% 5.09%→6.26%→6.81%

*対象の利回り・NC比率は期末スナップの参考値。 ピアのNC・CFは同じ定義で再構成できず推定しない。 対象のFCFは有価証券売却等を含みうる。

*CCCは売上債権・棚卸資産・売上原価を各社で同一定義にそろえられないため未算出。
標準NC・営業CF・FCFも各社の開示範囲または定義が異なり、対象以外は推定していない。
対象のFY2026/3営業利益率5.14%は選定3社中央値6.81%を下回り、ROE9.47%は中央値6.9%を上回るが純利益に売却益等を含む。
各社の事業・資産構成も異なり、単純な順位づけはできない。


5. リスク

利益率と成長の両方を揺らす要因

リスク要因 影響度 / 発生可能性 具体的な影響シナリオ 対応・確認事項
人手不足、賃金、協力運送費 高 / 中〜高 人員不足と賃金・外注費の上昇が料金改定を上回ると、物流事業の利益率が低下する 料金改定、採用、協力会社費、施設稼働
荷動き・景気・顧客の委託方針 高 / 中 荷量減少や顧客の内製化で倉庫・輸送設備の固定費吸収が弱まる 荷量、新規3PL、顧客分散の開示
M&A統合・海外・為替 中〜高 / 中 買収先で顧客・人材が流出し、のれん・統合費用・為替負担が計画利益を下回らせる 連結寄与、単独利益、のれん、統合費
災害・金利・政策保有株 中 / 中 地震・風水害で拠点が停止し、金利上昇が調達費を押し上げ、保有株の下落が資産価値を損なう BCP・耐震、借入条件、政策株縮減

最大の事業リスクは、人件費・外注費の上昇を料金改定で吸収できないこととみる。
FY2026/3の物流事業は売上の92.75%を占めながら営業利益率4.95%であり、費用転嫁が遅れると連結利益へ波及しやすい。
これは事業構成からの分析であり、会社が公表した利益感応度ではない。

2026年4月から改正物流効率化法の追加義務が全面適用され、対象となる荷主・物流事業者には中長期計画や定期報告等が求められる。
制度対応コストと同時に、積載率、待機時間、共同輸送、拠点配置の改善が進むかを追いたい。
国土交通省。

評価上の罠は、政策保有株の縮減や不動産価値に注目が集まっても、本業利益率と資産効率が改善しない場合に資産控除の評価が定着しないこと。
FY2026/3の標準NCは短期有価証券が不明なため既知項目小計でマイナス196.09億円となる。
純利益に含まれる売却益を反復可能な本業利益とみなさず、売却後の資金配分まで確認する必要がある。

有報は燃料・電力、金利、サイバー・個人情報、海外地政学、為替、退職給付前提、気候もリスクとして挙げる。 拠点停止時の業務代替、耐震投資、保険、事業継続計画を確認する。


6. バリュエーション統合

市場評価と業績条件を分けて考える

PER11.8倍、PBR1.097倍、FY2027/3予想EPSによる換算PER10.22倍はいずれも期末スナップで、10月21日現値ではない。
評価ではFY2026/3の売上高+1.42%・営業利益-12.24%、純利益の売却益、FY2027/3の買収寄与を分ける。

FY2026/3業界中央値に対して対象はROEが高く営業利益率が低い。 資産縮減・配当強化に加え、物流利益率、買収後の稼働・顧客維持、費用転嫁、政策株売却資金の用途が評価軸となる。

上方条件

FY2027/3会社予想の売上高900億円・営業利益53億円を達成し、名鉄ワールドトランスポートの顧客維持と利益率、政策保有株縮減後の資本効率改善が確認できれば、同業PER帯やPBRを考える材料が増える。

基準条件

FY2027/3会社計画に沿う着地と物流利益率の維持が確認される場合、FY2026/3末のPER近辺を比較の起点とし、利益成長の再現性と配当方針を見る。記念配当10円は恒常分と区別する。

下方条件

荷量減少、費用転嫁の遅れ、買収後の顧客・人材流出、政策保有株の評価損が重なる場合、利益の質、同業の低PBR帯、純資産価値を軸に倍率の前提を見直す必要が生じる。

これらは前提が変わった場合の倍率・評価軸を整理したもので、発生確率、株価水準、売買行動を示すものではない。

M&Aを評価する際の論点

取得主体にとっての許容EVは取得対価、対象純有利子負債、追加投資、運転資本、のれん償却、継続利益で決まる。
フォワーディング・北米網・アジア拠点は既存顧客との連携余地となる一方、顧客/代理店重複、顧客移管、システム統合はコスト要因となる。

有報記載の取得原価は25.50億円(第1章)。
買収先単独利益、のれん内訳、顧客維持率は参照資料から確認できない。
今後は償却・統合費、代理店契約、通関/制裁、為替ヘッジ、キーパーソン、運転資本の季節性を確認する。

監視ポイント

時期 イベント 開示で確認する点
2026年9月4日 自己株式取得終了を公表 742,700株・14億9,997万9,000円の取得と、2027年3月31日までの消却の進捗
2026年11月9日 FY2027/3中間決算の発表予定日(公開カレンダー掲載、会社IRで最終確認) 売上・営業利益の進捗、買収会社の連結寄与、通期予想の維持/変更。予定日出典:株探
2027年2月9日 FY2027/3第3四半期の確認目安(会社日程は未公表) FY2026/3第3四半期の開示日を参考にした確認目安。実際のIR日程と累計営業利益・買収寄与を確認
2027年3月29日 FY2027/3末配当の権利付最終日計算目安 3月31日基準日を仮定したT+2営業日計算。会社の株主名簿基準日・正式日程を確認
2027年3月31日 FY2027/3期末・自己株消却期限 取得株式の消却、配当方針、純有利子負債、政策保有株の残高
2027年5月11日 FY2027/3本決算の確認目安(会社日程は未公表) FY2026/3本決算の開示日を参考にした確認目安。通期会社予想との実績差、投資有価証券売却益と営業利益を分けた利益の質
2029年3月31日 政策保有株式の縮減目標期限 純資産比20%以下の進捗と売却資金の配分
2031年3月31日 2030年度(FY2031/3)の売上高1,000億円ビジョン時点 売上規模だけでなく営業利益率、ROE、買収後の統合効果

2027年2月9日、5月11日はFY2026/3の開示日を参考にした確認目安であり、会社の発表予定日ではない(IR決算資料一覧)。
2027年3月29日は2027年3月31日を基準日とした権利付最終日の暦日計算である。
JPX 2027年3月カレンダー。
FY2027/3 Q2の会社日程も公式カレンダーで確認する。


7. 学びのポイント

着眼点1: 物流では売上数量と採算を分けて追う

FY2026/3物流売上は739.60億円、全社の92.75%だが営業利益率は4.95%。
FY2027/3の増収要因には買収、既存荷量、料金改定が混在する。
料金と人件費・協力会社費、稼働率、既存事業と買収寄与の利益率を分けて追うと、規模拡大が採算改善につながるか分かる。

着眼点2: 持合株の縮減は売却後の資金配分まで見る

上場政策保有株の簿価はFY2026/3末170.25億円、純資産比24.9%。
FY2029/3まで20%以下を目指す。
資金を負債返済、設備、M&A、還元のどこに配分するかで、将来の資本効率・利益源泉が変わる。

売却額と売却益を分ける

FY2026/3の株式売却額55.94億円と売却益47.99億円は異なる金額であり、営業CFとも別の指標である。売却後の資金使途まで確認する。

着眼点3: 財務指標の位置取り

会社と選定3社はFY2026/3、全上場中央値は各社の最新有報を用いた混合集計(主にFY2024〜FY2026)。
市場評価の期末基準はFY2026/3末である。
全上場中央値は報告年度がそろった同時点比較ではなく、位置取りの参考値である。

指標 澁澤倉庫 選定3社中央値 全上場中央値 読み方
PER 11.8倍 17.5倍 13.76倍 FY末の期末値。10月21日現値は未反映
PBR 1.097倍 0.981倍 1.17倍 比較3社の範囲内。資本効率・資産構成も見る
ROE 9.47% 6.9% 8.20% 業界中央値6.64%超だが、売却益を含む
営業利益率 5.14% 6.81% 6.33% 比較社・全上場中央値を下回り、物流採算が論点
自己資本比率 57.3% 57.9% 56.85% 比較社中央値と近い
配当利回り 4.25%* 2.55% 2.90% *FY末換算値で、現値利回りではない
配当性向 50.2% — 36.03% FY2027/3記念配当を恒常分と分ける
ROA 5.31% — 4.09% 純利益÷期末総資産の簡便計算。一時利益に注意
売上高YoY 1.42% 1.47% — 倉庫・運輸関連業中央値2.32%を下回る

選定3社中央値は単純中央値。
全上場中央値はEDINET DBの最新有報集計で、指標ごとに算出社数・年度が異なる。
全上場分布。
倉庫・運輸関連業(FY2026/3、32社)の中央値はROE6.64%、営業利益率5.89%、自己資本比率59.20%、流動比率1.63倍、ROA3.44%、総資産回転率0.72回、売上成長率2.32%。
対象はROE・ROAで上回り、営業利益率・流動比率・売上成長率で下回る。
企業・業種比較。

ガバナンス・株主構成

1897年創業、1909年7月設立。本店は東京都江東区、代表取締役は大隅毅、資本金78.47億円。

FY2026/3末の連結従業員は1,320名(臨時139名)。海外拠点は香港・上海・ベトナムなど。

監査法人はEY新日本有限責任監査法人。主要取引銀行は参照した有報で特定できなかった。

2026年6月26日現在の会社概要に記載された取締役は11名、うち女性は1名。 会社沿革・会社概要・FY2026/3有報。

順位 FY2026/3末株主 保有比率 区分
1 パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス 10.01% 事業会社
2 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.86% 信託銀行
3 清水建設 5.18% 事業会社
4 みずほ信託銀行退職給付信託口 4.85% 退職給付信託
5 トーア再保険 4.51% 事業会社

株主名簿はFY2026/3末時点。別日付の大量保有報告とは合算していない。 FY2026/3有報・p.29。

財務実績・市場評価はFY2026/3末(10月21日現値は未取得)。
会社予想・四半期開示は2026年8月7日まで、最新会社開示は9月4日。
全上場中央値は10月20〜21日更新の各社最新有報(FY2024〜FY2026)。


出典

  1. 澁澤倉庫 FY2026/3有価証券報告書(EDINET書類S100YI5J、2026年6月24日提出。大株主p.29、従業員p.57、名鉄ワールドトランスポート取得原価p.95): 会社IR掲載PDF
  2. 澁澤倉庫 FY2027/3 Q1(3PL業務p.4)、予想修正、自己株式取得終了等: 会社IRニュース、決算短信一覧
  3. 物流効率化法: 国土交通省
  4. 9302、9303、9310の年次財務・期末評価: 三井倉庫HD、住友倉庫、日本トランスシティ
  5. 全上場中央値: EDINET DB 指標一覧
  6. 2027年3月のJPX営業日: JPXカレンダー
  7. 2026年11月9日の決算発表予定日掲載: 株探・澁澤倉庫決算情報。会社IRの正式日程としては扱わない。