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スカイマーク株式会社

【経済・空運業】空運業銘柄レポート更新 2026-07-11

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目次
  1. 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
  2. FP&Aカードで見るスカイマークの稼ぎ方
  3. スカイマークの事業構成
  4. 主要取引先・チャネル
  5. 固有事象・資本関係の詳細分析
  6. 2. 財務の実力
  7. 3-1. PL 5期+予想(百万円、EPSのみ円)
  8. 3-2. BS 5期(百万円、比率%、円)
  9. 3-3. BS 詳細主要科目 5期(百万円)
  10. 3-4. CF 5期(百万円)
  11. 3-5. 減価償却費明細 5期(百万円)
  12. 3-6. 受注高・受注残高
  13. 3-7. 運転資本分析(CCC・簡易法)
  14. 3-8. 配当推移 5期+予想
  15. 3-9. 経営者予想精度(期中改定+季節性)
  16. 3-10. 健全性チェック(事業会社基準・9項目)
  17. 3. 市場評価を読む — バリュエーション
  18. 1-1. 時価総額・株価の基準
  19. 1-2. 標準NC 5期推移
  20. 1-3. 広義NCAV 5期推移
  21. 1-4. CN-PER
  22. 1-5. EV/EBITDA 競合比較
  23. 1-6. EV/EBITDA 5期推移・感応度
  24. 1-7. 倍率ベース感応度(PERレンジ内の位置づけ)
  25. 1-8. DCF前提入力枠
  26. 1-9. 乖離コメント(事実の並置)
  27. 4. 同業比較 — 差分の論点
  28. 4-1. 競合選定基準
  29. 4-2. 最新期比較テーブル(FY2026)
  30. 4-3. 競合3期推移
  31. 4-4. CCC 競合比較(簡易法・売上高分母で統一)
  32. 5. リスクと論点
  33. リスクマトリクス
  34. 6. バリュエーション統合と論点整理
  35. (a) 乖離の構造分析
  36. (b) 条件分岐シナリオ(前提と市場評価の変化)
  37. (c) 監視ポイント(開示スケジュール)
  38. (d) M&A・出資検討の論点整理
  39. 7. 学びのポイント
  40. 📚 着眼点 1: なぜスカイマークは低PBR(0.77倍)なのか
  41. 📚 着眼点 2: 航空会社のネットデットと契約負債(前受金)の読み方
  42. 📚 着眼点 3: スカイマークの指標ポジショニング(相場観テーブル)
  43. 参考情報
  44. ガバナンス要点
  45. 大株主構成(上位5位)
  46. データソースの時点差
  47. 出典一覧

スカイマーク株式会社(9204)銘柄分析レポート

SUMMARY

スカイマークの現値時価総額は 261.7億円 (435.0円 × 発行済株式数60,157,170株)。
実績PER(FY2026)16.0倍に対し、FY2027会社予想(大幅減益ガイダンス)ベースの予想PERは 32.7倍 まで跳ね上がる。
予想EV/EBITDA(D&A横置き想定)は7.58倍。
配当利回りは実績ベースで 1.61% (FY2027予想配当は未定)。
標準NC比率は -44.7% 、広義NCAV比率は -167.0% でいずれも大幅マイナス(資産バリュー系の割安要因なし)。
健全性スコアは 55/100 (事業会社基準・レーティングC)。

指標 評価
時価総額(現値) 261.7億円 小型
実績PER(FY2026) 16.0倍 適正〜やや割高
予想PER(FY2027) 32.7倍 割高
予想EV/EBITDA(FY2027E) 7.6倍 適正
配当利回り(実績) 1.61% 中位
標準NC比率 -44.7% 資産バリューなし
広義NCAV比率 -167.0% 資産バリューなし
健全性スコア 55/100 中位(レーティングC)

1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か

業界全体の構造は 空運業業界基礎ガイド を参照。本レポートはスカイマーク固有の事業構造に絞る。

FP&Aカードで見るスカイマークの稼ぎ方

収益ドライバー: 収益の構造は「有償旅客数 × 座席利用率 × 旅客単価」である。
FY2026/3の有償旅客数は7,995,697名(前年比-1.8%)、有償座席利用率は80.1%で、旅客収入107,218百万円が営業収益の97.0%を占める単一路線型ビジネスである。
羽田を拠点に旅客収入の約56%・旅客数の約52%・便数の約49%を集中させる「羽田依存型」の収益構造であり、羽田発着枠の保有量が収益の天井を規定する。
附帯事業収入(3,192百万円・2.9%)は座席指定料・手荷物料等の周辺収益で、旅客収入への依存を緩和する柱として位置づけられるが、金額規模は限定的である。

コスト構造: 人件費・機材リース料・整備費・空港施設使用料・燃料費が主要な固定費・準固定費であり、長年のコスト削減により追加削減余地は限定的とされる。
燃油サーチャージを導入していないため、燃料費上昇分を運賃に直接転嫁せず自社吸収する構造で、損益分岐点となる座席利用率の感応度が高い。
季節性として第1四半期(4-6月)は構造的に赤字になりやすい単一機種・単一路線型ビジネスの典型的な収益パターンを持つ。

運転資本: CCC(簡易法)は7.6日(FY2026/3)で、同型ピアのスターフライヤー(1.9日)より長い。
ただし航空券の事前販売に伴う契約負債(前受金)17,071百万円が実質的な無利子の運転資本源泉として機能しており、CCCの数値だけでは資金繰りの実態を捉えきれない点に注意が必要である。

資本集約度: FY2026/3のcapexは33,637百万円と売上高の約3割に達する水準で、737-8型機導入の本格化に伴う建設仮勘定18,538百万円・PPE32,043百万円が積み上がっている。
資産回転率は0.91で、減価償却負担の重い資本集約型ビジネスである実態を裏付ける。

スカイマークの事業構成

セグメント情報:非開示(単一セグメント・航空事業)。事業ドメインは営業収益の内訳で代替把握する。

収益区分 金額(百万円) 構成比
旅客収入 107,218 97.0%
貨物収入 31 0.0%
附帯事業収入 3,192 2.9%

(出典: 定量分析(EDINET有報・FY2026/3実績))

12空港23路線・1日158便(2026年夏ダイヤ)をボーイング737-800単一機材で運航し、羽田を軸とした国内線ネットワークにレジャー・帰省(VFR)需要中心の非ビジネス色の強い旅客構成を持つ。
ビジネストラベルマネジメント(BTM)接続を通じた出張需要の取り込みが進行中で、大手旅行会社との連携強化により法人需要の比率引き上げを図っている局面にある。

主要取引先・チャネル

個人向け販売は自社予約サイト(マイページ登録者数が2025年12月に100万人突破)を軸としつつ、旅行商品としてはJTB・阪急交通社・エイチ・アイ・エス・エアトリ等の大手旅行代理店が重要な販売チャネルである。
国際チャーター便(神戸=台北)の販売も同様に大手旅行代理店が窓口となっている。
法人向けはBTM接続先の大手旅行会社経由の出張需要が今後の成長軸として位置づけられる。

💡 単一機種運用という「一つの工具箱で全てをこなす」経済学

スカイマークはボーイング737-800(今後737-8へ移行)の単一機種でフリートを構成する。
整備士は1機種の訓練だけで済み、部品在庫も1種類に集約できるため、複数機種を抱える航空会社より整備・訓練・部品調達のコストを構造的に抑えられる。
一方で、単一機種であるがゆえに当該機種に品質問題や納入遅延が生じた場合、フリート全体が同時に影響を受ける「集中リスク」を併せ持つ。

固有事象・資本関係の詳細分析

スカイマークは2015年1月に民事再生手続を申し立て、投資ファンド・インテグラルの主導とANAホールディングスの出資(最大19.9%・議決権20%未満に抑制することで発着枠の独立性を維持する設計)を経て再建した経緯を持つ。
ANAの持株比率はその後の再上場・株式希薄化等を経て12.93%(2022年12月20日報告)まで低下しているが、政策投資として取引関係の維持・発展を目的とする保有姿勢が続いている。

一方、鈴与株式会社(静岡の物流・総合商社グループ、傘下にフジドリームエアラインズを持つ)は2023年11月に議決権比率13.01%で筆頭株主に浮上し、以後段階的に保有を積み増して2026年5月12日の変更報告書時点で鈴与グループ計25.31%(鈴与株式会社18.96%+鈴与ホールディングス6.18%+鈴木與平0.17%)に達している。
スカイマークは2025年11月時点で鈴与ホールディングスとの間に資本関係・人的関係・取引関係はないと説明しているが、フジドリームエアラインズとは一部地方空港での地上業務委託という実務上の接点がある。
羽田枠を持つスカイマークと地方ネットワークを持つFDAという補完関係が、ANA・JALに対する「第3極連合」としての存在感を高める狙いとの見方が業界内にある(出典: 東洋経済オンライン)。

FY2026/3の固有事象としては、737-8型機の日本初導入(2026年4月30日受領・5月28日就航)による燃費改善(従来737-800比で燃料消費・CO2排出量を約15%削減)と、5年ぶりとなる国際線再参入(2025年10月4日〜10日、神戸=台北(桃園)間の国際チャーター便を8便運航)が挙げられる。
神戸空港は2026年4月18日に第2ターミナル供用開始とともに国際線が解禁され、中国・韓国・台湾方面で週40便規模の運航が始まっており、スカイマークの国際線事業可能性検討はこの神戸空港国際化の波に位置づけられる。

⚠️ 本レポートの全FY表記は「FY2026/3」(financials_as_of 2026-03-31)「FY2027/3」(会社予想・TDNet短信2026-05-15開示)の絶対表記で統一する。
有報と直近通期短信のFYは同一であり、混在注記は不要である。


2. 財務の実力

3-1. PL 5期+予想(百万円、EPSのみ円)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026 FY2027予想
売上高 47,147 84,661 104,075 108,893 110,441 120,800
営業利益 -16,694 3,453 4,668 1,826 1,801 1,500
経常利益 -15,079 3,713 7,463 760 2,907 800
当期純利益 -6,729 5,726 2,997 2,146 1,638 800
EPS(円) -145.78 111.88 49.93 36.14 27.21 13.3
SGA(販管費) 4,639 5,488 6,029 6,878 7,455
前期比・売上 +79.6% +22.9% +4.6% +1.4% +9.4%
前期比・営業利益 黒字転換 +35.2% -60.9% -1.4% -16.7%
前期比・純利益 黒字転換 -47.7% -28.4% -23.7% -51.2%

*売上原価は空運業の慣行により非開示(粗利非開示)。
予想前提: 為替1ドル=155円(ヘッジ後146.1円)、ドバイ原油75ドル/バレル(ヘッジ後70.8ドル)。
原油1ドル変動の通期燃油費感応度 約100百万円。

3-2. BS 5期(百万円、比率%、円)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
総資産 93,559 107,837 110,790 103,888 121,103
流動資産 23,776 34,433 44,473 39,424 43,465
固定資産 69,782 73,403 66,317 64,464 77,638
負債合計 84,260 83,920 82,933 76,769 87,159
流動負債 60,590 61,378 57,019 49,897 55,379
固定負債 23,669 22,541 25,913 26,871 31,780
純資産 9,299 23,917 27,857 27,119 33,944
株主資本 4,184 23,917 25,481 26,835 28,292
自己資本比率(%) 9.9 22.2 25.1 26.1 28.0
BPS(円) 196.67 396.46 472.57 450.32 564.26
利益剰余金 -6,815 5,726 8,421 8,858 10,315
流動比率(%) 39.2 56.1 78.0 79.0 78.5

3-3. BS 詳細主要科目 5期(百万円)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
現預金 9,282 22,519 26,909 26,018 24,481
短期有価証券
投資有価証券
短期借入金 32,000 30,000 20,000 20,000 20,000
1年内返済長期借入金 1,250 1,750 6,500
長期借入金 3,000 1,000 9,250 7,500 9,179
リース債務(流動) 147 153 146 108 100
リース債務(固定) 725 572 450 497 396
有利子負債合計 35,872 31,725 31,096 29,855 36,175
売上債権 3,480 5,062 5,752 5,467 6,615
棚卸資産 18 18 70 56 34
仕入債務 6,165 4,140 4,050 3,805 4,346
建設仮勘定 3 941 1,478 4,743 18,538
PPE(有形固定資産) 15,514 14,829 13,899 15,762 32,043
契約負債 6,664 12,165 13,688 13,862 17,071
繰延税金資産 16,795 22,897 17,067 19,478 14,588

*有利子負債合計=短期借入+1年内返済長期+長期借入+リース債務(流動+固定)。FY2026=36,175百万円はMD&A記載値と一致。投資有価証券・短期有価証券の計上なし。

3-4. CF 5期(百万円)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
営業CF -12,459 5,911 8,179 7,182 11,601
投資CF -380 -2,269 -2,186 -5,011 -19,315
財務CF 8,852 9,608 -2,326 -2,949 5,679
capex(設備投資) 2,464 3,298 6,176 33,637
FCF(営業CF+投資CF) -12,839 3,642 5,993 2,171 -7,714

*FY2026投資CF -19,315百万円(有形固定資産取得22,558百万円=737-8新型機導入本格化)。FY2026 FCFはマイナス(積極投資型のCFパターン)。

3-5. 減価償却費明細 5期(百万円)

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
減価償却費 2,806 2,407 2,474 2,730 3,496
前期比 -14.2% +2.8% +10.3% +28.1%

3-6. 受注高・受注残高

該当なし(非受注産業。旅客・貨物運送収入は都度発生型のため受注残高の概念なし)。

3-7. 運転資本分析(CCC・簡易法)

売上原価が非開示(空運業)のため、売上債権・棚卸資産・仕入債務のいずれも「売上高」を分母とする簡易法に統一(表注)。

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
売上債権回転日数 26.9 21.8 20.2 18.3 21.9
棚卸資産回転日数 0.1 0.1 0.2 0.2 0.1
仕入債務回転日数 47.7 17.8 14.2 12.8 14.4
CCC(日) -20.7 4.1 6.2 5.8 7.6

*算式: 各回転日数=該当科目÷売上高×365。CCC=売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-仕入債務回転日数。棚卸資産は極小(FY2026=34百万円)。

3-8. 配当推移 5期+予想

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026 FY2027予想
1株配当(円) 0 5.0 29.0 3.0 7.0 未定
配当性向(%) 4.5 58.1 8.3 25.7
発行済株式数(株) 47,286,000 60,329,400 60,329,400 60,329,400 60,329,400
配当利回り(現値ベース、参考) 1.61%

*FY2027予想の1株配当は「未定」。有報上、外部環境の変動を踏まえ従来の配当方針を見直し中で、新方針はFY2027配当より適用予定(決定次第開示)。

3-9. 経営者予想精度(期中改定+季節性)

通期予想の期中改定履歴(FY2026/3期中)

時点 売上高 営業利益 経常利益 純利益 対Q3予想比(売上/営業利益)
Q3短信予想(2026-02-14) 111,000 1,600 1,000 100
通期実績(2026-05-15) 110,441 1,801 2,907 1,638 99.5% / 112.6%

四半期実績の季節性(百万円)

時点 営業利益 経常利益 純利益 備考
FY2026 Q1(2025-08-12) -1,630 -3,113 -2,774 第1四半期は季節的赤字
FY2026 Q2中間(2025-11-13) 1,213 491 475
FY2026 Q3累計(2026-02-14) 458 985 961
FY2026 通期(2026-05-15) 1,801 2,907 1,638
参考: FY2025 Q1(2024-08-09) -2,182 前年も第1四半期赤字

*初期通期予想(各年度期初予想)の時系列データは取得範囲に含まれないため、予想精度は期中改定と季節性の事実記述に留める。第1四半期赤字→通期黒字化の強い季節性(夏季・年末年始需要偏重)がある。

3-10. 健全性チェック(事業会社基準・9項目)

No チェック項目 基準 実績(FY2026) 判定
1 自己資本比率 >40% 28.0%
2 有利子負債<現預金 有利子負債が現預金以下 36,175 > 24,481
3 流動比率 >150% 78.5%
4 利益剰余金 >0 10,315百万円
5 営業CF3期連続黒字 FY2024〜2026 8,179 / 7,182 / 11,601(全黒字)
6 配当3期連続 FY2024〜2026 29.0円 / 3.0円 / 7.0円(全期支払)
7 EPS前年比プラス FY2026 vs FY2025 27.21円 < 36.14円
8 ROE >8% 5.36%
9 営業利益率 >業界平均 1.63%(大手8-10%、同型ピアのスターフライヤー3.10%)

判定サマリー: 9項目中 ✅3 / ❌6。


3. 市場評価を読む — バリュエーション

1-1. 時価総額・株価の基準

項目 備考
現在株価 435.0円 market_data_as_of = 2026-07-10(金曜終値)
現値時価総額 26,168百万円(261.7億円) 435.0 × 60,157,170株 = 26,168,368,950円 ≈ 26,168百万円
発行済株式数(自己株控除) 60,157,170株 バリュエーション分母に採用
発行済株式数(自己株含む) 60,329,400株 EPS/BPS等の開示数値算出に使用(業界標準)
自己株式数 172,230株
EDINET期末時価総額(get_company) 22,817百万円 FY2026期末固定値。現値と +14.7% 乖離のため本パックでは不採用

1-2. 標準NC 5期推移

標準NC = 現預金 + 短期有価証券(該当なし=0) − 有利子負債。5期とも投資有価証券・短期有価証券の計上なし。

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
現預金(百万円) 9,282 22,519 26,909 26,018 24,481
有利子負債合計(百万円) 35,872 31,725 31,096 29,855 36,175
標準NC(百万円) -26,590 -9,206 -4,187 -3,837 -11,694
標準NC比率(%)* -101.6 -35.2 -16.0 -14.7 -44.7

*分母は現値時価総額26,168百万円で全期間統一(過去期の実勢時価総額データ未取得のため、時系列比較目的で現値を分母固定)。全期間ネットデット(NC比率マイナス)。

1-3. 広義NCAV 5期推移

広義NCAV = 流動資産 + 投資有価証券×0.7(該当なし=0) − 負債合計。

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026
流動資産(百万円) 23,776 34,433 44,473 39,424 43,465
負債合計(百万円) 84,260 83,920 82,933 76,769 87,159
広義NCAV(百万円) -60,484 -49,487 -38,460 -37,345 -43,694
広義NCAV比率(%)* -231.1 -189.1 -147.0 -142.7 -167.0

*分母は標準NC比率と同様、現値時価総額26,168百万円で統一。
全期間大幅マイナス。
資産バリュー系(NC/NCAV)指標では割安要因は見られない(航空業は機材リース・借入依存の高レバレッジ資本集約型のため。深掘り解釈は後述の定性分析を参照)。

1-4. CN-PER

項目 算式
予想PER(現値ベース) 32.7倍 26,168 ÷ FY2027予想純利益800百万円
標準NC比率 -44.7% 上記1-2参照
CN-PER 47.3倍 (時価総額26,168 − 標準NC(-11,694)) ÷ 予想純利益800 = 37,862 ÷ 800

標準NC比率が負のため、CN-PERは予想PERより高い水準となる(ネットデット分だけ実質PERが切り上がる)。

1-5. EV/EBITDA 競合比較

項目 スカイマーク(現値) スターフライヤー(期末) ANA HD(期末) JAL(期末)
EV/EBITDA 7.15倍 3.53倍 4.92倍 n.a.(get_company未提供)
EBITDA(百万円) 5,297 n.a.(未提供) n.a.(未提供) n.a.(未提供)
データ基準 現値時価総額ベース EDINET期末スナップ EDINET期末スナップ EDINET期末スナップ

*競合3社のEV/EBITDA・PER・PBRはEDINET期末スナップベース(現値ではない)。スカイマークのみ現値ベースであり、単純比較には基準差がある点に留意。

1-6. EV/EBITDA 5期推移・感応度

項目 FY2022 FY2023 FY2024 FY2025 FY2026 FY2027E
営業利益(百万円) -16,694 3,453 4,668 1,826 1,801 1,500(会社予想)
減価償却費(百万円) 2,806 2,407 2,474 2,730 3,496 3,496(横置き想定*)
EBITDA(百万円) -13,888 5,860 7,142 4,556 5,297 4,996
EV/EBITDA(EV=37,862百万円で固定)** n.a.(EBITDA負) 6.46倍 5.30倍 8.31倍 7.15倍 7.58倍

*FY2027予想の減価償却費は会社予想に含まれないため、FY2026実績値を横置きと仮定した参考値。
FY2026はcapex 33,637百万円(新型機737-8導入)による建設仮勘定積み上がりがあり、実際のFY2027 D&Aはこれより上振れる可能性がある(事実の提示に留め、解釈は後述の定性分析を参照)。
**過去期のEVは実勢データ未取得のため、現在のEV(37,862百万円)を分母固定して時系列を参考表示。

1-7. 倍率ベース感応度(PERレンジ内の位置づけ)

区分 PER倍率 出所
保守(自社5期PERレンジ下限) 10.6倍 FY2023実績PER(get_analysis参照)
中央(業界平均PER) 13.9倍 get_analysis業界ベンチマーク
楽観(自社5期PERレンジ上限) 20.3倍 FY2024実績PER(get_analysis参照)
現在の実績PER(FY2026) 16.0倍 435.0 ÷ EPS27.21円
現在の予想PER(FY2027予想) 32.7倍 435.0 ÷ 予想EPS13.3円

現在の予想PER(32.7倍)は自社5期PERレンジの上限(20.3倍)・業界平均(13.9倍)をいずれも上回る水準に位置する(来期の大幅減益ガイダンスが要因)。
FY2022はEPSがマイナスのためPER算出対象外。

1-8. DCF前提入力枠

変数 備考
無リスク金利(Rf) 要調査 国債利回り未取得
ベータ(β) 要調査 個別銘柄ベータ未取得
株式リスクプレミアム(ERP) 要調査
株主資本コスト(Re) 要調査 算式: Re = Rf + β × ERP(CAPM)
有利子負債コスト(Rd) 要調査 平均調達金利の開示なし
実効税率 要調査 FY2026は法人税等調整額計上により単純な経常利益対比では算出不可
E(時価総額) 26,168百万円 現値ベース(確定)
D(有利子負債) 36,175百万円 FY2026期末(確定)
E/(E+D) 0.4196 26,168 ÷ 62,343
D/(E+D) 0.5804 36,175 ÷ 62,343
WACC 要調査 算式: WACC = E/(E+D)×Re + D/(E+D)×Rd×(1−実効税率)
予測5期FCF(DCF用) 要調査 会社予想はFY2027単年のみ開示。中期の複数期FCF予測データなし

過去実績のFCF(参考・DCFの入力ではなく実績確認用)は「3-4. CF5期」参照。

1-9. 乖離コメント(事実の並置)


4. 同業比較 — 差分の論点

4-1. 競合選定基準

⚠️ 競合3社の時価総額・PER・PBR・EV/EBITDAはEDINET期末スナップベース(現値ではない)。スカイマークのみ現値ベース。

4-2. 最新期比較テーブル(FY2026)

指標 スカイマーク(現値) スターフライヤー(期末) ANA HD(期末) JAL(期末)
売上高(百万円) 110,441 44,795 2,539,233 2,012,515
営業利益(百万円) 1,801 1,389 217,437 207,349
営業利益率(%) 1.63 3.10 8.56 10.30
経常利益(百万円) 2,907 684
純利益(百万円) 1,638 434 169,075 137,604
総資産(百万円) 121,103 36,896 3,955,128 3,198,757
純資産(百万円) 33,944 7,222 1,502,633 1,289,639
自己資本比率(%) 28.0 19.6 38.0 40.3
ROE(%) 5.36 7.5 12.8 12.2
EPS(円) 27.21 34.38 358.37 306.96
BPS(円) 564.26 n.a.(BPS異常値*) 2,853.6 2,586.99
PER 16.0倍(実績・現値) 58.09倍 7.8倍 8.3倍
PBR 0.77倍 n.a.(BPS異常値*) 0.98倍 0.99倍
EV/EBITDA 7.15倍(現値) 3.53倍 4.92倍 n.a.(未提供)
配当利回り(%) 1.61(実績) 0(無配) 2.33 3.77
1株配当(円) 7.0 0 65 96(予想)
健全性スコア 55 60 73 73
従業員数(名) 2,738 806 47,826 39,076
時価総額(百万円) 26,168(現値・確定) 7,573(算出値・参考**) n.a.(株式数未取得) n.a.(株式数未取得)

*スターフライヤーのEDINET BPSは-589.36円(過年度欠損等によるデータ異常値)。
純資産7,222百万円÷株式数3,791,891株≒1,905円/株が実勢。
PBRは信頼性低いためn.a.扱い(参考: 純資産ベースBPS 1,905円)。
**算出値: 株価(PER×EPS=58.09×34.38≒1,997.4円) × 株式数3,791,891株 ≒ 7,573百万円。
丸め誤差含む参考値。

4-3. 競合3期推移

指標 FY2024 FY2025 FY2026
スカイマーク売上高(百万円) 104,075 108,893 110,441
スカイマーク営業利益率(%) 4.49 1.68 1.63
スターフライヤー売上高(百万円) 40,019 42,900 44,795
スターフライヤー営業利益率(%) 0.22 2.87 3.10

*ANA HD・JALは3期推移データ未取得(FY2026単年スナップのみ)。

4-4. CCC 競合比較(簡易法・売上高分母で統一)

項目 スカイマーク(FY2026) スターフライヤー(FY2026)
売上債権回転日数 21.9 20.0
棚卸資産回転日数 0.1 7.3
仕入債務回転日数 14.4 25.3
CCC(日) 7.6 1.9

*ANA HD・JALは売上債権・棚卸資産・仕入債務の明細が本データセットに未提供のため「データなし」。業界中央値(get_analysis)もCCCの明示データなし。


5. リスクと論点

リスクマトリクス

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的影響シナリオ 対応状況
燃料費・為替の同時上昇 燃油サーチャージ未導入のため原油高・円安が直接費用増に転嫁され、商品スワップ・為替予約でも完全吸収は不可 一部ヘッジ(原油1ドル変動で通期約100百万円の感応度)、オーバーヘッジリスクあり
高固定費レバレッジ 座席利用率・旅客単価のわずかな低下が固定費比率の高さゆえに営業損益を急速に悪化させる 長年のコスト削減余地は限定的、737-8による燃費改善で費用構造の一部改善を企図
羽田発着枠依存 発着枠の再配分・規制変更があれば事業基盤の根幹に影響 羽田路線が旅客収入の約56%を占める構造は当面不変
737型機単一機種依存 特定機種の納入遅延・品質問題・安全性懸念がフリート全体に波及 737-8への段階移行中、2027年度以降737-10も計画
FY2027/3減益ガイダンスの織り込み 会社予想は経常利益72.5%減・純利益51.2%減で、為替差益の剥落と新機材移行コストが要因 会社予想前提(1ドル155円・原油75ドル)の実勢乖離を各四半期短信で確認

(出典: 有報「事業等のリスク」要約、TDNet決算短信2026-05-15、定量分析財務データ)

⚠️ 最大リスク: 高固定費レバレッジ×燃料/為替の同時悪化シナリオ

スカイマークの営業利益率は1.63%(FY2026/3)と薄く、人件費・機材リース・整備費・施設使用料という高固定費構造の上に、燃油サーチャージ未導入という価格転嫁の乏しさが重なる。
原油高と円安が同時に進行した場合、ヘッジ(商品スワップ・為替予約)でも完全には吸収できず、第1四半期の構造的赤字が他四半期にも波及して通期の営業損益が急速に悪化しうる。
座席利用率が80.1%(FY2026/3実績)からわずかに低下するだけでも損益分岐点を割り込みやすい薄利構造である点が、同業のANA・JAL(営業利益率8.56%・10.30%)との耐性差として現れる。

⚠️ バリュートラップの論点: 低PBR(0.77倍)は割安放置か構造的ディスカウントか

PBR0.77倍という水準は、ROE5.36%(東証の資本コスト経営要請が目安とする8%水準に未達)という資本効率の低さを映した構造的ディスカウントである可能性と、737-8移行による費用構造改善・国際線再参入という将来収益改善の織り込み不足である可能性の両面がある。
健全性チェック9項目中6項目が❌(自己資本比率28.0%・有利子負債36,175百万円>現預金24,481百万円・流動比率78.5%等)という財務プロファイルは、東証が求める資本コストを意識した経営の観点からは説明責任を伴う水準である。
一方で、繰延税金資産14,588百万円と税務上の繰越欠損金の存在は将来の法人税負担を軽減する含み価値でもあり、取り崩しリスクと表裏一体の論点として財務分析上は両睨みで見る必要がある。


6. バリュエーション統合と論点整理

(a) 乖離の構造分析

実績PER16.0倍(FY2026/3)に対し予想PER32.7倍(FY2027/3)と約2倍の開きがあるのは、FY2027/3の会社予想純利益が800百万円と前期比51.2%減という保守的なガイダンスに起因する。
経常利益段階では前期比72.5%減という大きな落ち込みが見込まれており、その主因はFY2026/3の経常利益が為替差益(+282.4%の押し上げ要因)を含んでいたのに対し、FY2027/3予想はこの一過性益を見込んでいないことにある。
加えて737-8導入本格化に伴う新機材移行コストも利益水準を圧迫する構造要因である。
予想PER32.7倍は業界平均PER13.9倍(get_analysis)を大きく上回るが、これは利益水準が一時的に圧縮された分母(EPS13.3円)に対する評価であり、収益力そのものの割高感を直接示すものではない点に留意が必要である。

PBR0.77倍という評価は、ROE5.36%という資本効率の低さを映す構造的ディスカウントの側面と、737-8による燃費改善・国際線再参入という中期的な収益改善余地が市場評価に十分織り込まれていない側面の両方から説明しうる。
時価総額約262億円という小型株規模ゆえのアナリストカバレッジの薄さ、単一セグメント開示(セグメント情報非開示)による情報の粒度の粗さも、市場が保守的な評価軸を適用する構造的な理由として働いている可能性がある。
自社の過去5期のPERレンジ(10.6〜20.3倍)と比較すると、現在の実績PER16.0倍はレンジの中位からやや上寄りに位置する。

(b) 条件分岐シナリオ(前提と市場評価の変化)

上方シナリオ: 737-8の燃費改善効果が本格寄与した場合の再評価軸

前提: 737-8型機への移行が計画どおり進捗し、燃料消費・CO2排出量15%削減の効果がコスト構造に本格的に寄与し、営業利益率が同型ピアのスターフライヤー水準(3.10%)まで回復する場合。
市場評価の変化: 収益性改善が確認されれば、現状の低ROEを理由とした構造的ディスカウント(PBR0.77倍)が縮小し、業界平均PER(13.9倍)近傍への評価軸のシフトが正当化されうる余地が生まれる。

ベースシナリオ: 会社予想並みの着地

前提: FY2027/3の会社予想(売上120,800百万円・営業利益1,500百万円・経常利益800百万円・純利益800百万円)どおりに着地し、為替1ドル155円・ドバイ原油75ドルの前提から大きく乖離しない場合。
市場評価の変化: 実績PER16.0倍から予想PER32.7倍への切り上がりが定着し、市場は一過性益の剥落を織り込んだ利益水準を基準に評価する状態が続きやすい。
PBRは資本効率の低さを理由とした現状水準に留まりやすい。

下方シナリオ: 燃料・為替悪化と利用率低下が重なった場合のPBR下限への引き直し

前提: 原油高・円安が会社予想前提(原油75ドル・1ドル155円)を上回って進行し、かつ座席利用率が80.1%から低下して赤字四半期が拡大する場合。
市場評価の変化: 高固定費レバレッジにより営業損益が急速に悪化し、自己資本比率28.0%というただでさえ薄い財務基盤への懸念から、PBRは現状の0.77倍からさらに下方のレンジへ引き直される評価軸が想定される。

(c) 監視ポイント(開示スケジュール)

時期 イベント 開示で確認すべき点
2026年8月上旬 FY2027/3 第1四半期決算短信 座席利用率・旅客単価の実績、燃油費・為替前提(原油75ドル/1ドル155円)との乖離、第1四半期の季節的赤字幅
2026年9月下旬 神戸空港国際線動向の追加開示 神戸=台北チャーター便の定期便化検討状況、国際線事業の可能性検討の進捗
2026年11月中旬 FY2027/3 第2四半期(中間)決算短信 通期予想(経常利益800百万円)に対する進捗率、新配当方針の開示有無
2027年1月中旬 737-8導入機数の進捗開示 導入機数・燃費改善効果の定量的な言及有無
2027年2月中旬 FY2027/3 第3四半期決算短信 通期業績予想の修正有無、繰延税金資産14,588百万円の取り崩し有無
2027年3月末 FY2027/3期末 配当方針見直しの正式適用開始(新方針はFY2027/3配当より適用予定)
2027年5月中旬 FY2027/3本決算・FY2028/3会社予想開示 新配当方針(調整後当期純利益に対する配当性向35%程度+自己資本比率40%目標達成状況に応じた機動的追加還元)の具体的な適用結果
随時(月次) 月次輸送実績の開示 有償旅客数・座席利用率のトレンド、需要動向の先行指標

(出典: TDNet決算短信2026-05-15、スカイマーク公式IR、定量分析財務データ)

(d) M&A・出資検討の論点整理

買い手目線でスカイマークのEV許容水準を規定する要因としては、標準NC(現預金+短期有価証券−有利子負債)が-11,694百万円(ネットデット)であることから、企業価値評価はネットデット控除後の事業価値が基準となる。
有利子負債36,175百万円(短期借入20,000百万円・1年内返済長期6,500百万円・長期9,179百万円・リース496百万円)に加え、オフバランスの機材リース債務・機材返還時のリデリバリーコスト(整備・塗装等の原状回復費用)はデューデリジェンスで精査すべき重要項目である。
繰延税金資産14,588百万円と税務上の繰越欠損金は、将来の法人税負担軽減という含み価値をEV評価に織り込む余地がある一方、買収後の事業計画次第では取り崩しリスクとして評価減の対象になりうる。

シナジー論点としては、鈴与グループ(傘下フジドリームエアラインズとの地方ネットワーク補完)とANAホールディングス(政策投資としての取引関係維持)という既存の資本構成が、新規の買い手にとって統合コストとシナジー機会の両面で影響する要因となる。
羽田発着枠は事業基盤の根幹であるため、買収スキームにおいて発着枠の帰属・大手航空会社の議決権比率(20%未満に抑える必要性)が制度上の制約として存在する点もDD論点に含まれる。
財務コベナンツ(あおぞら銀行・横浜銀行等とのコミットメントライン契約に付随)の存在も、資本構成変更時の再交渉リスクとして確認すべき事項である。


7. 学びのポイント

📚 着眼点 1: なぜスカイマークは低PBR(0.77倍)なのか

スカイマークのPBR0.77倍は、ROE5.36%(FY2026/3)という資本効率の低さと、capex33,637百万円に対しFCFが-7,714百万円という積極投資フェーズにあることの組み合わせで説明できる。
PBRは「株価÷1株純資産」という単純な式だが、その背後にはROE(自己資本の収益力)と将来の資本効率改善期待という2つの要因が織り込まれている。
例えるなら、同じ土地を持っていても、その土地から毎年生み出す収益力が低ければ、市場はその土地に高い値段を付けない、という関係に近い。
スカイマークの場合、737-8導入という大型投資が先行してFCFがマイナスの局面にあり、投資の果実(燃費改善によるコスト削減効果)がまだ十分に決算数値に表れていないことが、低ROE・低PBRという評価に直結している。
この着眼点は、資本集約型ビジネスを分析する際に「投資局面の財務指標だけで資本効率を断定しない」という分析の型を教えてくれる。

📚 着眼点 2: 航空会社のネットデットと契約負債(前受金)の読み方

標準NC(現預金+短期有価証券−有利子負債)は-11,694百万円のネットデットであり、標準NC比率-44.7%は一見すると財務的な余裕のなさを示す数値に見える。
しかし航空会社のビジネスモデルには、契約負債(前受金)17,071百万円という航空券の事前販売に伴う無利子の運転資本源泉が存在する。
これは旅行会社や小売業の「前受金ビジネス」と同じ構造で、顧客が搭乗前に代金を支払うことで、企業は実質的に無利子の資金を先に受け取る形になる。
ネットデットの数値だけを見ると財務健全性への懸念に直結しがちだが、契約負債の存在を併せて見ることで、航空会社特有の資金繰り構造(有利子負債は機材投資のための長期資金であり、日々の運転資金は前受金でかなりの部分がまかなわれる)を正しく理解できる。
この着眼点は、業種特有の運転資本構造を無視して標準的な財務指標だけで健全性を判断することの危うさを示す事例である。

📚 着眼点 3: スカイマークの指標ポジショニング(相場観テーブル)

指標 スカイマーク値 同業平均(ANA/JAL/スターフライヤー) 全上場中央値目安 評価コメント
実績PER 16.0倍 業界平均13.9倍 14〜15倍程度 業界平均をやや上回るが、5期レンジ(10.6〜20.3倍)の中位圏
予想PER 32.7倍 ANA7.8倍・JAL8.3倍 14〜15倍程度 FY2027/3減益ガイダンスの分母縮小が主因で、収益力の割高感を直接示すものではない
PBR 0.77倍 ANA0.98倍・JAL0.99倍 1倍程度 低ROEを反映した構造的ディスカウントの可能性
ROE 5.36% ANA12.8%・JAL12.2%・スターフライヤー7.5% 8%程度 業界内でも低位、東証の資本コスト経営要請の目安を下回る
営業利益率 1.63% ANA8.56%・JAL10.30%・スターフライヤー3.10% 業種により差が大きい 高固定費構造ゆえの薄利体質が同業比で顕著
EV/EBITDA(実績) 7.15倍 業種によりレンジが異なる 7〜9倍程度 大手2社よりネットデット比率が重い分、評価はより慎重になりやすい
配当利回り(実績) 1.61% ANA2.33%・JAL3.77%・スターフライヤー無配 2%程度 FY2027/3配当は「未定」で新配当方針の適用待ち
自己資本比率 28.0% スターフライヤー19.6% 業種により差が大きい スターフライヤーよりは厚いが、健全性チェックでは❌評価
健全性スコア 55/100(C) ANA73・JAL73・スターフライヤー60 同業内で最も低く、財務レバレッジの重さを反映

(出典: 定量分析財務データ、EDINET有報、TDNet決算短信)

参考情報

ガバナンス要点

スカイマーク株式会社は1996年11月の設立で、1998年9月に羽田=福岡線で就航した。
2015年1月に民事再生手続を申し立て、投資ファンド・インテグラルの主導とANAホールディングスの出資により再建を果たした経緯を持つ。
従業員数は2,738名(FY2026/3)、事業は単一セグメント(航空事業)として運営されている。
取締役会の女性取締役は1名(取締役比率7.7%)である。
資本関係としては、鈴与グループが合計25.31%を保有する実質筆頭株主、ANAホールディングスが12.93%を保有する政策投資家として並存し、両者とも直接の資本業務提携・コードシェア契約には至っていない状態が続いている。

大株主構成(上位5位)

順位 株主名 保有比率 区分
1 鈴与株式会社 18.96% 事業会社(実質筆頭株主グループ)
2 ANAホールディングス株式会社 12.93% 政策投資(取引関係の維持・発展目的)
3 鈴与ホールディングス株式会社 6.18% 事業会社(鈴与グループ)
4 株式会社エアトリ 5.02% 投資目的
5 鈴木與平 0.17% 個人(鈴与グループ関係者)

(出典: 大量保有報告書・変更報告書、直近提出分2026-05-12。鈴与グループ計25.31%で実質筆頭株主)

データソースの時点差

データ種別 基準日 ソース
財務データ(PL/BS/CF・NC等) 2026-03-31(FY2026/3) EDINET有価証券報告書
直近開示(会社予想等) 2026-03-31(FY2027/3予想) TDNet決算短信(2026-05-15開示)
株価・時価総額 2026-07-10 市場終値

出典一覧

  1. price_fetcher / yfinance(現在株価・現値時価総額・発行済株式数、market_data_as_of=2026-07-10)
  2. EDINET DB get_company(企業基本情報・FY2026財務サマリー・EDINET期末時価総額、E38082 / E26084 / E04273 / E04272)
  3. EDINET DB get_financials(PL/BS/CF 5期時系列、単位百万円)
  4. EDINET DB get_segments(営業収益内訳・セグメント非開示の確認)
  5. EDINET DB get_analysis(健全性スコア・業界ベンチマーク・自社5期PERレンジ参照値)
  6. EDINET DB get_earnings(通期予想改定履歴・四半期実績)
  7. EDINET DB get_shareholders(大株主構成、大量保有報告書ベース)
  8. TDNet 決算短信(2026-05-15開示、FY2027会社予想)
  9. 有報MD&A記載値(有利子負債残高36,175百万円の内訳確認)
  10. 日本の航空会社として初めてボーイング737-8型機を受領(プレスリリース) — スカイマーク公式
  11. スカイマーク、日本初導入の737-8は2026年6月より東京/羽田~福岡線に投入へ — sky-budget
  12. 神戸から台湾へ新路線 神戸空港と台北を結ぶ国際チャーター便をスカイマークが運航表明 — 神戸市プレスリリース
  13. スカイマーク、本日2025年10月4日より国際チャーター便として神戸~台北/桃園線を運航 — sky-budget
  14. スカイマーク、鈴与が筆頭株主に ANAは2位 — Aviation Wire
  15. スカイマーク株を電撃取得、大株主「鈴与」の衝撃 ANA、政投銀が驚く「清水の親分」まさかの登場 — 東洋経済オンライン
  16. ANA、スカイマークに最大19.9%出資。5年以内の再上場目指す — ニュースイッチ
  17. 剰余金の配当に関するお知らせ(新配当方針・配当性向35%目標)— TDnet適時開示(BigGoファイナンス)
  18. スカイマーク【9204】、今期経常は72%減益へ — 株探ニュース
  19. インフレで揺らぐ格安モデル、LCCはANA・JALと価格差縮小 — 日経ビジネス
  20. 2026年燃油価格高騰と航空各社のヘッジ戦略 — 弾丸トラベルは怖くない!
  21. 燃料油の「緊急的激変緩和措置」— 資源エネルギー庁