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富士電機株式会社

【経済・電気機器】電気機器企業バリュエーション分析更新 2026-09-27

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目次
  1. 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
  2. 収益の組み立て
  3. 事業別の収益ドライバー
  4. コスト構造・運転資本・資本負担
  5. 顧客基盤・技術の強み
  6. 2. 財務の実力
  7. 受注高・経営者予想精度
  8. 3. 市場評価を読む — バリュエーション
  9. NCの定義と現値倍率
  10. 4. 同業比較 — 差分の論点
  11. 5. リスクと論点
  12. 最大論点: 半導体の次の利益水準
  13. 資本効率が評価に結び付かない可能性
  14. 6. バリュエーション統合と論点整理
  15. (a) 乖離の構造
  16. (b) 条件分岐シナリオ
  17. (c) 監視ポイント
  18. (d) M&A・出資検討の論点
  19. 7. 学びのポイント
  20. 📚 着眼点1: 半導体は需要成長だけで投資評価できない
  21. 📚 着眼点2: 総合力は投下資本利益率に表れるか
  22. 📚 着眼点3: 指標の位置づけを比べる
  23. 参考情報
  24. ガバナンス・会社概要
  25. 大株主(FY2026/3有価証券報告書)
  26. データ時点

富士電機株式会社(6504)銘柄分析レポート

エグゼクティブサマリー
  • 何で稼ぐ会社か: FY2026/3はインダストリーとエネルギーで売上の69.2%を占め、半導体・食品流通も含むパワーエレクトロニクス企業である。
  • 財務の要点: FY2026/3売上1兆2,276億円、営業利益1,366億円、営業利益率11.13%。親会社持分比率56.9%、営業CFは3期連続黒字。
  • 分析上の最大論点: 半導体事業は売上横ばいの中で営業利益が36.6%減り、連結設備投資の6割強を使った。投資回収と稼働率の回復が焦点となる。
指標 値 読み方・基準
株価 / 時価総額 13,615円 / 19,876.7億円 2026-09-25終値。価格×145,991,156株と整合。
FY2027/3予想PER 17.83倍 会社予想EPS763.74円に対する倍率。
EV/EBITDA 10.00倍 FY2026/3 EBITDAと現値時価総額、cash-only NC proxyによる。
配当利回り 1.47% FY2026/3実績DPS200円を2026-09-25価格で除した値。FY2027/3年間配当は未定。
標準NCの参考比率 FY2025/3 −0.41% / FY2026/3 +0.15% 現預金−明示有利子負債。短期有価証券が特定できず、完全な標準NCではない。
広義NCAV比率 FY2025/3 13.14% / FY2026/3 17.74% 流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計を現値時価総額で除した値。
財務健全性チェック 9項目中8項目を充足 営業利益率は選定同業3社の平均を下回る。業界全体の中央値ではない。
親会社持分比率 56.9% ✅基準>40%。
有利子負債<現預金 668.8<698.7億円 ✅cash-onlyで29.9億円上回る。
流動比率 191.65% ✅基準>150%。
利益剰余金 正 ✅FY2026/3連結貸借対照表。
営業CF3期連続黒字 FY2024/3〜FY2026/3 ✅848.6/1,449.2/1,235.6億円。
配当3期連続支払い 135/160/200円 ✅FY2024/3〜FY2026/3。
EPS成長率プラス 665.18円、+3.50% ✅FY2025/3は642.69円。
ROE 13.1% ✅基準>8%。
営業利益率>比較目安 11.13%対12.73% ❌選定3社平均を下回る。

注: 金額は億円。健全性スコアは別スナップショットで88/100もあり、更新・算定差から個別チェックを重視。財務FY2026/3、会社予想2026-07-30更新、株価2026-09-25。


1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か

業界全体の構造は電気機器業界基礎ガイド(同業界のセグメント分析・プレイヤー比較も含む)を参照。本章は富士電機固有の事業構造に絞る。

収益の組み立て

**富士電機はパワーエレクトロニクスを共通技術に、工場制御、電力設備、半導体、食品小売向け冷熱機器を展開。
**FY2026/3はインダストリー37.8%、エネルギー31.4%、半導体19.1%が売上を構成。
セグメント利益合計は連結営業利益を77.9億円上回り、全社費用等の調整がある。
〔出典: FY2026/3有価証券報告書〕

FY2026/3セグメント 売上(億円) 構成比 営業利益(億円) セグメント利益率 売上成長率
インダストリー 4,643.5 37.83% 443.8 9.56% 17.06%
エネルギー 3,852.6 31.38% 595.1 15.45% 10.80%
半導体 2,342.5 19.08% 235.2 10.04% 0.31%
食品流通 1,055.7 8.60% 131.3 12.44% −3.38%
その他 381.5 3.11% 38.7 10.13% 5.33%
連結 12,276.0 100.00% 1,366.2 11.13% 9.27%

FY2026/3のセグメント売上合計は連結と0.02億円差、利益合計は連結営業利益を77.9億円上回る。エネルギー・インダストリーが増益をけん引し、半導体は36.6%減益。

事業別の収益ドライバー

インダストリーは工場向けインバーター、モーター、受配電・制御機器を扱う。
設備投資・自動化・更新が販売を動かし、FY2026/3は売上17.1%、営業利益30.7%増、利益率は9.56%へ改善した。
〔出典: 富士電機レポート2026〕

エネルギーは発電・変電・配電設備、UPS、電力変換を担い、大型案件では工期・検収・原価見積りが損益を左右する。
政策資料が扱うデータセンター・半導体工場の電力需要増は機会だが、受注・採算は顧客投資や競争に左右される。
FY2026/3は売上10.8%増、営業利益64.1%増、利益率15.45%。
〔出典: 経済産業省、資源エネルギー庁〕

半導体はIGBT等をEV・産業機器・電力変換向けに供給する。
FY2026/3は売上横ばい、営業利益36.6%減、設備投資353.9億円、償却393.9億円、減損29.5億円。
高耐圧IGBT・SiCの開発を進めるが、需要と量産のずれは固定費を残す。
〔出典: 富士電機CFOメッセージ、FY2026/3決算資料〕

食品流通は自動販売機、冷凍・冷蔵ショーケースが中心で、FY2026/3は売上3.4%減、営業利益5.5%減、利益率12.44%だった。
2026年7月、冷凍冷蔵設備の特定顧客向け取引について公取委の立入検査を受けたと会社が公表した。
会社は調査に全面協力している。
違反認定・処分は確定しておらず、顧客・受注への影響も未確認である。
〔出典: 富士電機の立入検査に関する説明〕

コスト構造・運転資本・資本負担

収益は標準機器、顧客仕様の電力・制御システム、更新・保守、半導体の出荷構成で決まる。
人件費、調達価格、為替、物流制約は共通リスクで、半導体は稼働率、大型設備は工期・設計変更・保証費用が採算を左右する。
固定費比率や損益分岐点、主要顧客別売上は非開示のため定量評価できない。

CCCはFY2025/3の101.78日からFY2026/3の108.57日へ長期化。
式は売上債権÷売上高×365+棚卸資産÷売上原価×365−仕入債務÷売上原価×365。
内訳は順に80.99+108.13−87.34日、81.24+106.16−78.83日。
比較先は安川269.62、横河107.92、アズビル73.97日。
安川の在庫が平均を押し上げる。
期末残高近似で業界中央値は不明。

FY2026/3の連結設備投資567.1億円のうち半導体は353.9億円(約62%)。
簡易FCFは509.5億円の黒字だが、投資回収が延びれば利益・資金創出を圧迫する。
事業別に投下資本利益と稼働率を見る。

顧客基盤・技術の強み

停止損失の大きい設備では仕様適合・品質・保守実績が選定軸となる。更新時の再設計・認証・工事調整が導入実績を強みにしうる。顧客名・継続率は非開示で、切替コストの収益寄与は特定できない。

半導体から変換機器・制御システムまで持ち、顧客には「電力設備の一括窓口」となりうる。
会社は機器・システム・半導体の連携でGX・DX需要を取り込む方針。
実効性はセグメント採算と投下資本利益率で確かめる。
〔出典: 富士電機レポート2026〕

政策資料はデータセンター・半導体工場の電力需要増と供給網整備を扱う。市場機会ではあるが売上の保証ではない。受注、案件採算、納期に結び付いたかを追う。


2. 財務の実力

FY2026/3は売上9.3%増、営業利益16.1%増、営業利益率11.13%だった。営業利益率はFY2022/3の8.22%から5期連続で上昇したが、純利益は6.3%、EPSは3.5%の伸びにとどまった。 親会社持分比率56.9%、現預金698.7億円、有利子負債668.8億円。
個別健全性チェックは9項目中8項目を充足する。

最新開示のFY2027/3 Q1(2026-07-30)は売上2,732.6億円(FY2026/3 Q1比+10.2%)、営業利益250.2億円(+38.3%)、親会社株主利益207.0億円(+89.4%)、EPS141.09円。
FY2027/3通期会社予想は順に1兆3,000億円、1,565億円、1,115億円、763.74円。
売上・営業利益・純利益進捗は21.0/16.0/18.6%だが、季節性があり達成を断定しない。
〔出典: FY2027/3第1四半期決算短信〕

指標 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
売上高(億円) 9,102.3 10,094.5 11,032.1 11,234.1 12,276.0
売上成長率 — 10.9% 9.3% 1.8% 9.3%
営業利益(億円) 748.4 888.8 1,060.7 1,176.5 1,366.2
営業利益率 8.22% 8.81% 9.61% 10.47% 11.13%
営業利益成長率 — 18.8% 19.3% 10.9% 16.1%
親会社株主利益(億円) 586.6 613.5 753.5 922.4 980.3
EPS(円) 410.68 429.50 527.57 642.69 665.18
総資産(億円) 11,171.1 11,815.5 12,711.7 13,121.8 14,066.7
親会社持分(億円) 4,729.0 5,170.9 6,025.2 6,917.7 8,001.6
親会社持分比率 42.3% 43.8% 47.4% 52.7% 56.9%
現預金・現金同等物(億円) 913.5 841.7 655.4 626.8 698.7
明示有利子負債(億円) 1,462.6 954.8 753.6 707.9 668.8
営業CF(億円) 768.1 1,161.6 848.6 1,449.2 1,235.6
投資CF(億円) −223.5 −495.0 −624.2 −633.8 −726.1
簡易FCF(億円) 544.6 666.7 224.4 815.4 509.5
減価償却費(億円) 399.7 459.4 518.8 573.4 617.8
設備投資(億円) 593.2 841.5 683.1 851.9 567.1
年間DPS(円) 100 115 135 160 200
CCC(日) 86.50 84.05 93.70 101.78 108.57

親会社持分は純資産から非支配株主持分を引いて5期を統一した。
FY2026/3は純資産8,429億円−非支配株主持分428億円=親会社持分8,002億円。
親会社持分比率56.9%とBPS5,428.63円は同じ定義に整合する。
企業基本情報の59.9%は非支配株主持分を含む比率である。
ROEは13.1%。
〔出典: FY2026/3有価証券報告書〕

簡易FCF=営業CF+投資CF。
投資CFは設備投資以外の支出・回収を含み、設備投資控除後の営業キャッシュとは一致しない。
FY2026/3営業CF1,235.6億円はFY2025/3の1,449.2億円を下回るが、FY2024/3〜FY2026/3は3期連続黒字。
DPSは同期間135円、160円、200円、FY2026/3配当性向30.07%。
FY2027/3は中間107円予想、期末・年間配当は未定。
〔出典: FY2026/3決算短信、FY2027/3第1四半期決算短信〕

受注高・経営者予想精度

FY2025/3の受注高はエネルギー2,924億円、半導体1,957億円、インダストリー1,932億円、食品流通1,075億円。
FY2026/3の受注高・受注残高は確認できず、事業区分変更もあるため年度間比較は行わない。
〔出典: FY2026/3決算資料〕

FY2026/3初回予想と実績の比較は1年分のみ。
売上1兆1,400億円→1兆2,276億円(+7.7%)、営業利益1,180億円→1,366億円(+15.8%)、純利益810億円→980億円(+21.0%)。
3年の予想精度は判定しない。


3. 市場評価を読む — バリュエーション

2026-09-25株価13,615円、時価総額1兆9,877億円、145,991,156株は相互に整合する。FY2027/3予想EPS763.74円に対するPERは17.83倍、FY2026/3実績EPS665.18円に対して20.47倍。 PBRは13,615円÷BPS5,428.63円=2.508倍。
実績DPS200円の利回りは1.469%で、FY2027/3年間配当の利回りではない。
〔出典: FY2027/3第1四半期決算短信〕

NCの定義と現値倍率

標準NC=現預金+短期有価証券−有利子負債。
短期有価証券を識別できないため、現預金−明示有利子負債のcash-only proxyを使う(短期有価証券をゼロ扱いしていない)。
FY2026/3は698.7−668.8=29.9億円、現値比0.15%。
FY2025/3は−81.1億円、同−0.41%。
過年度比率も現時価総額を分母とする。

広義NCAV=流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計。
FY2026/3は3,526.2億円(現値比17.74%)、FY2025/3は2,612.5億円(13.14%)。
債権・棚卸資産を含み現金・分配可能額ではない。
cash-only proxyベースのFY2027/3予想CN-PERは17.80倍(予想PER17.83倍)。
広義NCAV控除の14.66倍は回収・運転資本負担を反映しない。

FY2026/3 EBITDAは営業利益1,366.2億円+減価償却費617.8億円=1,984.0億円。
cash-only proxy控除後EVは1兆9,846.8億円、EV/EBITDAは10.00倍。
広義NCAV控除の参考倍率は8.24倍で、流動資産を現預金同様に扱う。

指標・感応度 富士電機 横河電機 アズビル 比較上の読み方
時価総額(億円) 19,876.7 11,801.7 7,375.3 2026-09-25市場価格。
cash-only NC proxy(億円) 29.9 1,842.0 880.4 現預金−確認できた有利子負債。短期有価証券は含まない。
EV proxy(億円) 19,846.8 9,959.7 6,494.8 時価総額−NC proxy。
FY2026 EBITDA(億円) 1,984.0 1,056.4 543.7 各社営業利益+減価償却費。
EV/EBITDA 10.00倍 9.43倍 11.95倍 富士電機は比較2社の間。
富士電機:広義NCAV控除EV(億円) 16,350.5 — — NCAV3,526.2億円控除の参考計算。
富士電機:広義NCAV控除EV/EBITDA 8.24倍 — — 流動資産を現金同様にみない。
PER感応度・下限比較軸 15倍 — — FY2025/3期末PER9.8倍、自社5期レンジ下端を参考にした倍率感応度。過去値と現値は時点が異なる。
FY2026/3実績PER 20.47倍 — — 現在の価格をFY2026/3実績EPSで除した倍率。
選定3社PER単純平均 24.44倍 — — 安川・横河・アズビル。事業差を含む限定比較。
自社5期PERスナップショット 9.8〜19.4倍 — — FY2022/3〜FY2026/3の各年度末データ。現在PERとは時点が異なる。

現値と直近通期を比較。
安川電機は債務内訳不足でEV/EBITDAなし。
PER感応度は倍率に限り、自社年度末と現値は時点差がある。
全上場PER中央値とDCF根拠(割引率・永久成長率・5期FCF)は確認できず、DCFは掲載しない。


4. 同業比較 — 差分の論点

時価総額が富士電機の0.3〜5倍の安川電機(駆動・FA)、横河電機(プロセス制御・エネルギー)、アズビル(自動制御・ビル管理)を選定。
5倍超の三菱電機は除外した。
事業構成は異なり、倍率・利益率の限定比較とする。
安川電機のFY2026/2は他社のFY2026/3より期末が1か月早い。

指標 富士電機 安川電機 横河電機 アズビル
時価総額(億円) 19,876.7 11,619.7 11,801.7 7,375.3
売上高(億円) 12,276.0 5,421.2 6,048.3 2,989.3
PER(倍) 20.47実績 / 17.83予想 32.97 20.82 19.52
PBR(倍) 2.51 2.40 2.32 2.97
ROE(%) 13.1 7.7 11.77 15.7
営業利益率(%) 11.13 8.73 13.65 15.82
自己資本比率(%) 56.9 59.5 65.36 76.1
配当利回り(%) 1.47実績 1.52 1.65 2.16
EV/EBITDA(倍) 10.00 — 9.43 11.95
cash-only NC proxy / 時価総額(%) 0.15 — 15.61 11.94
CCC(日) 108.57 269.62 107.92 73.97
営業CF(億円) 1,235.6 — 859.5 380.3
簡易FCF(億円) 509.5 — 528.2 315.6

**富士電機は比較先3社の平均より営業利益率が低い一方、FY2026/3の売上成長率は選定各社平均を上回り、ROEも3社平均を上回る。
**安川電機は在庫日数が長くCCCが大きい。
EV/EBITDAは横河電機とアズビルの間だが、安川電機の債務情報を欠くため比較範囲は2社である。
NC比率は短期有価証券を含まないcash-only proxyで揃えた。
安川電機は有利子負債項目が確認できないため空欄とし、ゼロと扱わない。
各社のROE・自己資本比率は開示定義差を含む。


5. リスクと論点

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的な影響シナリオ 会社の対応・開示上の限界
半導体投資の稼働・回収遅れ 高 中〜高 自動車・産業需要の回復や新世代品の量産が遅れれば、固定費・償却・減損が販売増を上回る。FY2026/3は同事業が36.6%減益、減損29.5億円。 SiC、高耐圧IGBT等の開発・供給力強化を説明。製品別稼働率・回収期間の数値は限られる。
大型設備案件の工期・採算 高 中 顧客仕様変更、部材遅延、工期延伸、保証問題が重なると売上認識の後ずれや追加原価が生じる。 案件管理・品質・供給網対応を記載。案件別利益率やFY2026/3受注残高は確認できない。
冷凍冷蔵設備取引の競争法調査 高 発生済み・調査中 2026年7月、特定顧客向け取引をめぐって公正取引委員会の立入検査を受けた。調査結果・対象契約への影響は未確定で、法務費用、顧客関係、今後の受注条件へ波及する可能性がある。 会社は調査に全面協力し、社内調査で事実関係を確認すると公表。違反認定や処分が決定した事実として扱わない。
データセンター・GX投資の循環 高 中 電力需要見通しが強くても顧客投資や系統整備が遅れれば、受配電・UPS需要の具体化まで時間差が生じる。競合能力増強で価格競争も起こりうる。 エネルギー事業の拡大を進める。需要別受注・受注残の定量開示は限定的。
部材・為替・運転資本 中〜高 中 材料費・為替の変動を価格に反映できず、CCCが長期化すれば複数事業の利益率と資金効率を圧迫する。 為替予約、拠点分散、債権管理を説明。価格転嫁の期間や業界CCC中央値は不明。

最大論点: 半導体の次の利益水準

**半導体は売上の約2割、設備投資の6割強を占める。
**FY2026/3は営業利益36.6%減、償却393.9億円、設備投資353.9億円、減損29.5億円。
出荷回復だけでなく製品別利益率、稼働率、償却・減損、SiC等の量産時期を合わせて見る。

資本効率が評価に結び付かない可能性

FY2026/3のcash-only NC proxyは時価総額の0.15%。
広義NCAVは17.74%だが運転資本を含み、還元可能な現金ではない。
営業利益率はFY2022/3の8.22%からFY2026/3の11.13%へ上昇し、ROE13.1%、PBR2.51倍。
次期計画で事業別ROIC、投資回収、政策保有株売却資金の使途を示せるかが資本効率の論点となる。
〔出典: 富士電機CFOメッセージ、社長メッセージ〕


6. バリュエーション統合と論点整理

(a) 乖離の構造

FY2026/3実績PER20.47倍、FY2027/3予想PER17.83倍、PBR2.51倍。
ROE13.1%、営業利益率11.13%、EV/EBITDA10.00倍は選定比較の中間域だが、事業構成・成長率・資本負担は異なる。

短期有価証券を識別できず、cash-only NC proxyは時価総額の0.15%。
CN-PER17.80倍は予想PER17.83倍に近く、現金は評価差を説明しにくい。 エネルギー増益と半導体減益が併存し、顧客・案件採算は非開示。
次期計画の事業別ROIC、稼働、投資回収が資本効率を測る材料となる。
〔出典: 富士電機CFOメッセージ、中期経営計画〕

(b) 条件分岐シナリオ

上方条件: エネルギー成長と半導体採算が両立

FY2027/3予想の売上1兆3,000億円・営業利益1,565億円を達成し、エネルギー高採算と半導体稼働回復が両立すれば成長の質が高まる。
資本効率改善時は選定社PER平均24.44倍が比較軸となりうる(実績条件ではない)。

基準条件: 会社予想に沿って利益率を引き上げる

FY2027/3計画が実現し、営業利益率がFY2026/3の11.13%から約12.04%へ上がる一方で半導体投資が続く場合、予想PER17.83倍・実績PER20.47倍の持続性を検証する。
現金化と運転資本も見る。

下方条件: 設備投資と需要回復の時間差が拡大

半導体回復やエネルギー案件が投資・系統整備・納期の遅れを受ければ固定費負担が増す。予想未達時は利益持続性・投下資本利益率を重く見て、半導体の利益率・減損、エネルギー受注・採算で確かめる。

(c) 監視ポイント

IRカレンダーにFY2027/3第1四半期以降の日程は未掲載。過去の開示日を参考にした未確定の確認日を示す。〔出典: 富士電機IRカレンダー〕

時期 イベント 開示で確認する点
2026年9月30日 FY2027/3上期の対象期間末 事業別の売上・営業利益率、受注・納期、棚卸資産の増減。
2026年10月30日(未公表・2025-10-30決算を参考) FY2027/3第2四半期決算の公表確認 売上・営業利益の進捗、7月更新予想、半導体利益率、年間配当方針。
2026年12月31日 FY2027/3第3四半期の対象期間末・競争法調査の状況確認日 エネルギー案件の検収、運転資本、納期遅延・保証費用に加え、当局・会社から調査状況や影響範囲の公表があるか。
2027年1月29日(未公表・2026-01-29決算を参考) FY2027/3第3四半期決算の公表確認 通期予想進捗、半導体稼働・減損、設備投資、期末配当。
2027年3月29日(2営業日前ルールによる予定日) FY2027/3期末の権利付き最終日 期末配当の決議額、基準日、会社予想からの変更。
2027年3月31日 FY2027/3期末・株主名簿基準日 通期実績、資産・有利子負債、期末配当の確定。
2027年4月28日(未公表・2026-04-28決算を参考) FY2027/3通期決算の公表確認 計画差、セグメント利益・受注残、次期計画、投資・減損・配当。
2027年5月27日(未公表・2026-05-27説明会を参考) 次期中期計画・事業戦略説明の公表確認 事業別ROIC、半導体投資回収、政策保有株、還元・成長投資。

表の日付は正式日程ではない。FY2027/3末は2027年3月31日で、権利付き最終日は2営業日前の3月29日と算出した。

(d) M&A・出資検討の論点

現預金−有利子負債は29.9億円、広義NCAV3,526.2億円は債権・棚卸資産を含むため、設備投資・運転資本を踏まえた収益力が主軸。
EV/EBITDA proxy10.00倍、NCAV控除参考値8.24倍は回収リスクを反映しない。
半導体・電力設備・保守網は補完候補だが、製品重複、品質・納期は統合リスク。
DDでは半導体の世代別稼働・認定・減損、案件原価・工期・保証、在庫評価、製品責任、知財、供給網・技術者を確認する。
顧客別売上・受注残・案件粗利は非開示。


7. 学びのポイント

📚 着眼点1: 半導体は需要成長だけで投資評価できない

FY2026/3の半導体は売上横ばい、営業利益36.6%減。
設備投資353.9億円、償却393.9億円、減損29.5億円だった。
設備事業では成長率だけでなく稼働率、製品世代、単位粗利、償却負担を見て、出荷が固定費を吸収し投下資本利益へ届くかを確かめる。

能力先行の半導体は需要が遅れても償却・固定費が残る。富士電機はAI・電力変換用途を追う一方、車載回復も課題であり、製品構成・量産時期・稼働が利益化するかを見る。

📚 着眼点2: 総合力は投下資本利益率に表れるか

半導体、パワー機器、制御システムの一体提案は顧客価値になりうるが、FY2026/3はエネルギー増益と半導体減益が併存。売上・連結利益の成長だけでは資本効率を判定できない。

会社開示のFY2026/3 ROICは12.6%。事業別に成長、利益率、運転資本、設備負担を並べ、連携の説明と投下資本回転を照合する。

📚 着眼点3: 指標の位置づけを比べる

比較は安川電機・横河電機・アズビル(EV/EBITDAは2社)の単純平均。全上場中央値は同一基準の統計がなく未算出。決算期・事業構成差を踏まえ、順位より評価軸の差を見る。

指標 富士電機 選定同業平均 全上場中央値 読み方
実績PER 20.47倍 24.44倍 データなし 会社予想利益を使うFY2027/3予想PERは17.83倍。
PBR 2.51倍 2.56倍 データなし 同業平均に近く、ROE13.1%と合わせて読む。
ROE 13.1% 11.72% データなし 各社の算出定義・決算月が異なる。
EV/EBITDA 10.00倍 10.69倍 データなし 同業平均は横河・アズビル2社。
配当利回り 1.47%実績 1.78% データなし 年間DPS200円の実績値。FY2027/3年間配当は未定。
営業利益率 11.13% 12.73% データなし 富士電機は選定社平均未満だが5期で改善。
親会社持分比率 56.9% 66.99% データなし 各社の自己資本定義差を含む。
売上成長率 9.27% 2.63% データなし FY2025/3比。安川電機はFY2026/2。
CCC 108.57日 150.50日 データなし 選定平均は安川電機の在庫日数に影響される。
FY2027/3予想PER 17.83倍 — データなし 会社予想EPS763.74円を前提にした倍率。

CCCは安川電機の在庫で平均が高く、中央値107.92日も参照。単独指標で優劣を断定しない。


参考情報

ガバナンス・会社概要

1923年8月設立。
2026-04-01時点の会長CEOは北澤通宏氏、社長COOは近藤史郎氏。
FY2026/3末の従業員は26,955人(連結)・10,901人(単体)、平均44.9歳、勤続20.3年、単体平均給与840万9,855円。
監査人はEY新日本有限責任監査法人。
主要取引銀行は確認できず、海外拠点と地政学・為替リスク、拠点分散は会社説明に基づく。
〔出典: 富士電機役員紹介、FY2026/3有価証券報告書、富士電機レポート2026〕

CFOメッセージは資本コストと事業ポートフォリオを説明。
政策保有株は2019年3月末102銘柄、2025年3月末6銘柄、FY2026/3末は区分変更後8銘柄。
FY2026/3(2025年度)に上場株式244.4億円を売却した。
区分変更を含むため、単純な再拡大とせず売却・取得内訳と資金使途を確認する。
〔出典: 富士電機CFOメッセージ〕

大株主(FY2026/3有価証券報告書)

順位 株主名 保有比率 区分
1 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 19.00% 信託銀行
2 日本カストディ銀行(信託口) 11.13% 信託銀行
3 個人等(取得データ上、名称匿名) 3.45% 個人等・名称確認不可
4 朝日生命保険 2.70% 事業法人・保険
5 FANUC 1.82% 事業会社

別資料ではBlackRockグループが2026年8月20日提出の大量保有変更報告で8.48%を保有し、目的は投資運用と記載された。
FY2026/3有報の上位株主表と資料・基準日が異なるため、順位表へ混在させていない。

データ時点

データ種別 基準日 出典
財務諸表、株主、会社概要 2026年3月31日 FY2026/3有価証券報告書、提出2026年6月19日
直近業績・会社予想 2026年7月30日 FY2027/3第1四半期決算短信
株価・時価総額 2026年9月25日 市場終値・価格データ
競合財務 安川電機2026年2月末、横河電機・アズビル2026年3月末 各社直近通期開示
事業・資本戦略 2026年版 富士電機レポート、社長・CFOメッセージ