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株式会社LIXIL

【経済・金属製品】金属製品銘柄レポート更新 2026-08-05

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目次
  1. 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
  2. FP&A カード(収益ドライバー / コスト構造 / 運転資本 / 資本集約度)
  3. 株式会社LIXIL の事業構成
  4. 主要取引先
  5. 競争優位性の比喩的説明
  6. 株式会社LIXIL の固有事象・資本関係の詳細分析
  7. 2. 財務の実力
  8. PL — 5期+予想
  9. BS — 5期
  10. BS 詳細主要科目(百万円) — 5期
  11. CF — 5期
  12. 減価償却費・設備投資明細(百万円) — 5期
  13. 受注高・受注残高
  14. 運転資本分析(CCC = 売上債権回転日数 + 棚卸資産回転日数 − 仕入債務回転日数)
  15. 配当推移 — 5期+予想
  16. 経営者予想精度(2期分)
  17. 健全性チェック
  18. 3. 市場評価を読む — バリュエーション
  19. 標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移
  20. 広義 NCAV 計算 — 5期推移
  21. CN-PER(キャッシュニュートラル PER)
  22. EV/EBITDA 分析
  23. EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別・LIXIL)
  24. 倍率ベース感応度(適用 PER レンジ・円換算なし)
  25. バリュエーション乖離コメント
  26. 4. 同業比較 — 差分の論点
  27. 競合選定基準
  28. 最新期比較テーブル
  29. 競合 3期推移(売上・営業利益率)
  30. 運転資本効率(CCC)— 競合比較
  31. 5. リスクと論点
  32. リスクマトリクス
  33. のれん減損リスクの深掘り
  34. 財務レバレッジ・配当持続性の深掘り
  35. 6. バリュエーション統合と論点整理
  36. 乖離の構造分析
  37. 監視ポイント
  38. M&A・出資検討の論点整理
  39. 7. 学びのポイント
  40. 📚 着眼点 1: EV/EBITDAでは同業並みなのにPERでは突出する会社の読み方
  41. 📚 着眼点 2: 配当性向215.6%(FY2027/3予想)が持続可能かをFCFで読む
  42. 📚 着眼点 3: 株式会社LIXIL の指標ポジショニング(相場観テーブル)
  43. 参考情報
  44. ガバナンス要点
  45. 大株主構成
  46. データソースの時点差
  47. 出典一覧

株式会社LIXIL(5938)銘柄分析レポート

SUMMARY

現値(2026-08-05)ベースの時価総額は 4,946.6億円
FY2027/3会社予想(純利益12,000百万円)ベースの予想PERは41.22倍、EV/EBITDA(FY2026/3実績EBITDAベース)は8.60倍。
予想配当利回りは 5.23%(1株配当90円÷現在株価1,720円)。
標準NC比率は-93.85%、広義NCAV比率は-97.51%といずれもマイナス(ネットデット)。
健全性スコアは 75/100(格付相当A)で、同業3社(TOTO93・三和HD93・タカラスタンダード88)を下回る。

指標 評価
時価総額 4,946.6億円 大型
予 PER 41.22倍 割高
EV/EBITDA(FY2026/3実績EBITDA) 8.60倍 適正
配当利回り 5.23% 高利回り
標準 NC 比率 -93.85% ネットデット
広義 NCAV 比率 -97.51%
健全性スコア 75/100 中位

1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か

業界全体の構造は 金属製品業界基礎ガイド(および同業界のセグメント分析・プレイヤー比較)を参照。本レポートは株式会社LIXIL固有の事業構造に絞る。

株式会社LIXILは、水まわり(水栓・衛生陶器)と住宅建材(サッシ・ドア・エクステリア)を軸に、国内リフォームと海外新築の双方から収益を得る複合建材メーカーである。
FY2027/3(2027年3月期)の各数値は会社予想または第1四半期(2026年4-6月)実績であり、確定した通期実績ではない点に注意して読む必要がある。

FP&A カード(収益ドライバー / コスト構造 / 運転資本 / 資本集約度)

収益ドライバーは、国内では新設住宅市場とリフォーム市場の需給バランス、海外ではウォーターテクノロジー事業(水栓・衛生陶器、売上構成比53.54%)を軸にした数量×単価とブランドミックスである。
FY2026/3実績で欧州・中東は GROHE ブランドのハイエンド化により単価が支えられた一方、日本の新設住宅市場は着工戸数の減少という数量要因が直接売上を押し下げる構造にある。
FY2027/3 Q1(2026年4-6月)では、供給不安を背景に顧客が新築工事を優先したためリフォーム向け売上構成比が低下し、国内売上そのものが前年同期比で減少するという、収益ドライバーの逆回転が起きた。

コスト構造は、売上総利益率34.1%(515,150 ÷ 1,510,704)に対し販管費率31.6%(476,650 ÷ 1,510,704)という水準で、粗利は一定確保できるものの、5社統合由来の重い販管費構造がその大半を吸収し、営業利益率は1.88%にとどまる。
原材料はアルミ・銅・樹脂への依存度が高く、FY2027/3 Q1では国内ハウジング事業がアルミをはじめとする原材料価格の高騰で収益性を落とした(出典: LIXIL 2027年3月期第1四半期決算)。
固定費比率が高いため、数量減少局面では損益分岐点割れの感応度が相対的に高くなりやすい構造といえる。

運転資本はCCCが5期で34.53日から75.94日へと41日悪化しており、特に仕入債務回転日数が短縮した点(過去5期の推移で129.33日から89.75日への圧縮)が運転資本悪化の主因の一つである。
仕入先への支払サイト短縮は、原材料調達難や価格交渉力の変化を映している可能性があり、キャッシュ創出力への負荷として読む必要がある。

資本集約度は、減価償却費83,083百万円が営業利益28,403百万円2.9倍に達する重さが特徴で、設備投資60,855百万円、のれん256,410百万円という蓄積された資産の上に立つビジネスである。

株式会社LIXIL の事業構成

FY2026/3セグメント別売上構成:

セグメント 売上収益(百万円) 構成比 営業利益(百万円) 営業利益率
ウォーターテクノロジー事業 808,842 53.54% 45,438 5.62%
ハウジングテクノロジー事業 518,432 34.32% 26,710 5.15%
Living Business 183,430 12.14% 7,842 4.28%
合計 1,510,704 100% 79,990

注: セグメント営業利益合計79,990と連結営業利益28,403の差額は全社費用・調整額。
FY2025/3にセグメント区分を変更(Living Businessを新設分離)したためFY2024/3以前とは非連続。

市場分野別の動向(FY2026/3実績+FY2027/3 Q1時点の傾向):

事業領域 動向 評価
中東・インド(ウォーターテクノロジー) 大幅な売上成長を達成
GROHE(欧州ハイエンド) 景気回復は鈍いがブランド力でハイエンドのシェア拡大
日本 リフォーム 需要シフトを志向するが、FY2027/3 Q1は供給不安で顧客が新築を優先しリフォーム構成比が一時後退
日本 新設住宅(ハウジング) 着工戸数前年比-12.9%(FY2025年度・国土交通省統計)と大幅減 ×
米国 浴槽事業のAmerican Bath Groupへの完全移管で最適化が進む一方、住宅着工そのものは金利高・関税で逆風

FYラベルについての注記

本レポートはEDINET有価証券報告書最新期(FY2026/3・2026年6月17日提出)とTDNet最新通期決算短信(FY2026/3・2026年4月30日開示)が一致しており、両者の混在の心配はない。
一方でFY2027/3として言及する数値は、2026年4月30日公表・2026年7月31日開示のQ1短信で据え置かれた会社予想、またはQ1(4-6月累計)実績のいずれかであり、確定した通期実績ではない。
本文中のFY参照はすべて絶対表記とし、「前期」「当期」等の相対表記は用いない。

主要取引先

販売チャネルは、住宅メーカー・工務店向けの新築ルート、建材流通(卸)経由のリフォームルート、リフォーム専門店、量販店・EC、ショールーム直販の多層構造である。
新築ルートは住宅メーカーとの長期取引関係に基づく設計仕様への組み込みが強みとなる一方、リフォームルートは工務店・施工業者のネットワークへの依存度が高く、価格競争にさらされやすい。
米国のASD Holding Corp.は、施工業者への拡販、ショールームを活用した体験訴求、自社ECを組み合わせたチャネル戦略をとっており、有報は同社の拡販計画が計画通り進まない場合ののれん減損リスクを名指ししている。

競争優位性の比喩的説明

たとえるなら「配管の中の主治医」

水栓や衛生陶器は一度施工されると容易に交換されにくく、修理・部材供給の継続性が求められる「配管の中の主治医」のような性格を持つ。
長期にわたる部材供給とアフターサービスの実績が、住宅メーカーや工務店との取引継続の理由になっている。
ただしこの参入障壁は「代替コストの高さ」であって「価格決定力」を保証するものではなく、LIXILの営業利益率1.88%が同業3社平均8.94%を下回っている事実は、障壁の存在と収益性の高さが別問題であることを示している。

株式会社LIXIL の固有事象・資本関係の詳細分析

現在のLIXILは、2011年にトステム・INAX・新日軽・サンウエーブ工業・東洋エクステリアの国内5社が統合して発足した経緯を持つ。
この成り立ちが、重複するブランド・販売網・管理機能を抱える構造につながり、売上総利益率34.1%に対し販管費率31.6%という「粗利は取れるが販管費で消える」コスト構造の一因になっていると解釈できる。

海外ではGROHE(ドイツ、2013年子会社化)とAmerican Standard(米州・アジア)を傘下に収めており、のれん256,410百万円(親会社所有者持分664,838の38.57%)の相当部分はこの2買収に帰属する。
有報はASD Holding Corp.(米国)とLIXIL Europe S.à r.l.が保有するGROHEブランドの両方について、拡販計画未達・ブランド価値毀損時ののれん減損可能性を明記している。

米国では浴槽事業のAmerican Bath Groupへの完全移管がFY2026/3に完了し、人員配置・販売戦略の最適化の成果が出始めていると有報MD&Aは記す。
資本政策では、政策保有株式が38,708百万円から25,434百万円へ5期で-34%縮減されており、東証の「資本コストや株価を意識した経営」要請を踏まえた動きと位置づけられる。

ガバナンス面では、LIXILは指名委員会等設置会社であり、2018年10月に瀬戸欣哉氏(社長兼CEO)の退任発表を契機に創業家(潮田家)出身の取締役との対立が表面化し、2019年6月の株主総会で瀬戸氏が社長兼CEOに復帰した経緯がある。
復帰後、社外取締役が指名委員会委員長に就く体制が構築され、ガバナンスの独立性強化が図られた(出典: 日経ビジネス「LIXILお家騒動の教訓」)。
現在の代表執行役社長は瀬戸欣哉氏である。


2. 財務の実力

PL — 5期+予想

IFRS適用のため経常利益は非開示。「税引前利益」を記載。

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3 FY2027/3 予想
売上収益(百万円) 1,428,578 1,495,987 1,483,224 1,504,697 1,510,704 1,600,000
営業利益(百万円) 69,471 24,903 16,351 29,687 28,403 37,500
税引前利益(百万円) 67,262 19,759 6,664 20,150 15,708 25,000
当期純利益(百万円) 48,603 15,991 -13,908 2,001 8,143 12,000
EPS(円) 167.21 55.54 -48.43 6.97 28.33 41.75
営業利益率 4.86% 1.66% 1.10% 1.97% 1.88% 2.34%
前年比(売上) +4.72% -0.85% +1.45% +0.40% +5.9%
前年比(営利) -64.15% -34.34% +81.57% -4.33% +32.0%

BS — 5期

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
総資産(百万円) 1,782,882 1,853,534 1,886,595 1,830,804 1,883,927
流動資産(百万円) 714,607 744,533 730,778 701,241 718,949
非流動資産(百万円) 1,068,275 1,109,001 1,155,817 1,129,563 1,164,978
負債合計(百万円) 1,170,497 1,228,101 1,244,084 1,212,918 1,219,089
親会社所有者持分(百万円) 612,385 625,433 642,511 617,886 664,838
自己資本比率 34.3% 33.7% 34.1% 33.7% 35.3%
BPS(円) 2,106.30 2,178.77 2,237.53 2,150.86 2,312.94

BS 詳細主要科目(百万円) — 5期

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
のれん 194,093 210,099 234,367 231,117 256,410
政策保有株式(帳簿価額) 38,708 27,212 35,648 35,837 25,434
現預金 100,404 106,677 124,485 123,527 115,624
短期有価証券
有利子負債 469,539 554,506 615,416 592,546 579,881
売上債権 280,409 291,736 300,179 283,914 289,172
棚卸資産 237,927 276,645 248,300 243,926 261,359
仕入債務 333,680 320,388 248,800 246,802 244,786

CF — 5期

FCF = 営業CF − 設備投資(capex)。

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
営業 CF(百万円) 118,296 15,005 47,990 100,002 82,689
投資 CF(百万円) -24,805 -29,319 -29,876 -28,127 -23,593
財務 CF(百万円) -108,094 19,839 -3,673 -72,470 -72,468
FCF(百万円) 56,834 -62,592 -12,965 36,420 21,834

減価償却費・設備投資明細(百万円) — 5期

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
減価償却費 80,722 81,900 81,330 83,193 83,083
設備投資 61,462 77,597 60,955 63,582 60,855
研究開発費 22,864 23,536 24,339 25,323 25,092

受注高・受注残高

該当なし(非受注産業)。LIXILは建材・住宅設備の量産型メーカーであり受注産業ではない。埋め込みデータにも受注高・受注残高の開示はない。

運転資本分析(CCC = 売上債権回転日数 + 棚卸資産回転日数 − 仕入債務回転日数)

分母: 売上債権回転日数=売上債権÷売上収益×365、棚卸資産回転日数=棚卸資産÷売上原価×365、仕入債務回転日数=仕入債務÷売上原価×365(厳密法)。
EDINET算出値はこの定義と一致することを検算済み。

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
売上債権回転日数 71.64 71.18 73.87 68.87 69.87
棚卸資産回転日数 92.22 98.29 89.69 88.45 95.82
仕入債務回転日数 129.33 113.83 89.87 89.49 89.75
CCC(日) 34.53 55.64 73.69 67.83 75.94

配当推移 — 5期+予想

配当性向=1株配当÷EPS。配当利回りは直近期・予想のみ現値株価1,720円ベースで算出し、過去期は「—」とした。

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3 FY2027/3 予想
1株配当(円) 85.0 90.0 90.0 90.0 90.0 90.0
配当利回り 5.23% 5.23%
配当性向 50.8% 162.1% 算出不可(赤字) 1291.2% 317.7% 215.6%

経営者予想精度(2期分)

3期目はデータ取得窓外のため「データなし」。

予想公表 対象期 予想売上 実績売上 乖離率 予想営利 実績営利 乖離率 予想純利益 実績純利益 乖離率
2024-04-30(期初) FY2025/3 1,570,000 1,504,697 -4.2% 25,000 29,687 +18.7% 8,000 2,051 -74.4%
2025-04-30(期初) FY2026/3 1,540,000 1,510,704 -1.9% 30,000 28,403 -5.3% 8,000 8,143 +1.8%
(3期目) データなし

期中修正履歴: FY2025/3は営利予想25,000(期初)→35,000(Q2上方修正)→着地29,687。
FY2026/3は営利予想35,000(期初〜Q2)→30,000(Q3下方修正)→着地28,403。

FY2027/3 Q1実績(2026-07-31開示・累計3ヶ月): 売上収益379,212百万円(前年同期比+4.0%・通期予想比進捗率23.7%)/営業利益1,762百万円(前年同期比-74.3%・進捗率4.7%)/税引前利益-881百万円/当期純利益-3,507百万円/EPS -12.20円。
進捗率は「通期予想に対する進捗率」であり期間スコープの異なる予想比達成率ではない(線形ペース基準はQ1=25%)。

健全性チェック

事業会社基準を適用。

項目 実績値 判定
自己資本比率 > 40% 35.3%
有利子負債 < 現預金 有利子負債579,881百万円 > 現預金115,624百万円
流動比率 > 150% 128.3%(流動資産718,949/流動負債560,487)
利益剰余金 > 0 199,431百万円
営業CF 3期連続黒字 FY2024〜FY2026 全て黒字(47,990/100,002/82,689)
配当 3期連続支払い FY2024〜FY2026 全て90.0円
EPS 前年比プラス FY2026 28.33円 > FY2025 6.97円
ROE > 8% 1.3%(EDINET算出)
営業利益率 > 業界平均(同業3社平均) LIXIL 1.88% < 同業3社平均8.94%(TOTO7.29%/三和11.97%/タカラ7.55%)
のれん / 親会社所有者持分 < 50% 38.57%(のれん256,410/持分664,838)
インタレストカバレッジ(営業利益÷支払利息)> 5倍 1.68倍(28,403/16,871)

3. 市場評価を読む — バリュエーション

時価総額・株価は現値マーケットデータ(market_data_as_of 2026-08-05・時価総額494,660百万円/株価1,720円)を使用。
EDINET get_company の期末固定値(marketCap 466,115百万円)および per/pbr/evEbitda/netCashRatio/ev/dividendYield は使用せず、素材から本レポート定義で再計算した。

内部整合性確認(±5%以内で整合): 1,720円×287,593,061株≈494,660百万円(時価総額)/予想PER41.22倍×予想EPS41.75円≈1,721円/PBR0.7437倍×BPS2,312.94円≈1,720円。

標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移

(現預金 + 短期有価証券 − 有利子負債。有利子負債=有利子負債(流動)+ 有利子負債(非流動)で、IFRS16のリース負債を含む。FY2026/3のリース負債は流動21,234+非流動46,097=67,331百万円で、これを除いた有利子負債は512,550百万円。短期有価証券はIFRS開示のため個別開示なし。標準NC比率は当期末時価総額が過去期分は不明のため、直近期(FY2026/3)のみ現値時価総額494,660百万円で算出し、それ以外は「—」とした。)

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
現預金 100,404 106,677 124,485 123,527 115,624
短期有価証券
有利子負債 469,539 554,506 615,416 592,546 579,881
標準 NC -369,135 -447,829 -490,931 -469,019 -464,257
標準 NC比率 -93.85%

広義 NCAV 計算 — 5期推移

(流動資産 + 投資有価証券×0.7 − 負債合計。IFRS適用のため投資有価証券の単独開示はなく、政策保有株式の帳簿価額合計を代替値として使用。広義NCAV比率も標準NCと同様、直近期のみ現値時価総額ベースで算出。)

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
流動資産 714,607 744,533 730,778 701,241 718,949
投資有価証券×0.7(代替値) 27,096 19,048 24,954 25,086 17,804
負債合計 1,170,497 1,228,101 1,244,084 1,212,918 1,219,089
広義 NCAV -428,794 -464,520 -488,352 -486,591 -482,336
広義 NCAV比率 -97.51%

CN-PER(キャッシュニュートラル PER)

CN-PER = (時価総額 − 標準NC) ÷ 予想純利益。標準NCがマイナス(ネットデット)のため、CN-PERは予想PERより高くなる。

指標
予想 PER 41.22 倍
標準 NC 比率(標準NC ÷ 時価総額) -93.85%
CN-PER(標準 NC ベース) 79.91 倍
参考: CN-PER(広義 NCAV ベース) 81.42 倍

EV/EBITDA 分析

(EBITDA = 営業利益 + 減価償却費。全社とも現値時価総額を使用)

指標 株式会社LIXIL TOTO 三和HD タカラスタンダード
時価総額(億円) 4,946.60 10,352.28 7,308.69 1,890.61
標準 NC(億円) -4,642.57 634.03 564.99 570.69
EV(億円) 9,589.17 9,718.25 6,743.70 1,319.92
EBITDA(億円) 1,114.86 881.19 938.29 267.14
EV/EBITDA 8.60倍 11.03倍 7.19倍 4.94倍

EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別・LIXIL)

NC 定義 NC(億円) EV(億円) EV/EBITDA
標準 NC(現預金+短期有価証券−有利子負債) -4,642.57 9,589.17 8.60倍
広義 NCAV(流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計) -4,823.36 9,769.96 8.77倍

倍率ベース感応度(適用 PER レンジ・円換算なし)

適用 PER 水準 倍率 位置づけ
レンジ下限(保守的) 15.9倍 同業3社(TOTO/三和HD/タカラ)の予想PER平均に整合する水準
中央(現状据え置き) 41.2倍 LIXILの現行予想PER(時価総額494,660÷予想純利益12,000)を据え置き
レンジ上限(楽観的) 60.7倍 FY2026/3実績PER(現在株価1,720円÷実績EPS28.33円)
参考: 同業3社の予想PER平均 15.95倍 現値÷FY2027/3予想EPSで算出(TOTO22.50倍/三和12.14倍/タカラ13.22倍)
参考: 自社 5 期 PER レンジ データなし 埋め込みデータに過去期末株価が含まれないため算出不可

バリュエーション乖離コメント

  1. NC考慮EV/EBITDA法: LIXILのEV/EBITDA(FY2026/3実績EBITDAベース)は8.60倍で、同業3社(TOTO 11.03倍・三和HD 7.19倍・タカラスタンダード4.94倍)のレンジ(4.94〜11.03倍)内に収まる。
  2. CN-PER法: LIXILの標準NCベースCN-PERは79.91倍(広義NCAVベース81.42倍)で、単純な予想PER41.22倍、および同業3社予想PER平均15.95倍のいずれよりも大幅に高い。
  3. 乖離の要因: LIXILは標準NCがマイナス(標準NC比率-93.85%=ネットデット)であるため、時価総額にネットデット額を加算する算式上、CN-PERは予想PERより高く出る。EV/EBITDA法(分母EBITDA)とCN-PER法(分母は支払利息控除後の予想純利益)とで金融費用の反映有無が異なる点も乖離の一因である。

4. 同業比較 — 差分の論点

競合選定基準

社名 ティッカー EDINETコード 業種 選定理由
TOTO 5332 E01138 ガラス・土石製品 衛生陶器・水まわり設備の国内最大の直接競合。ウォーターテクノロジー事業(LIXIL売上の53.5%)の対抗軸
三和ホールディングス 5929 E01385 金属製品 EDINET同一業種(金属製品)。シャッター・ドア等の建材でLIXILハウジングテクノロジー事業と競合
タカラスタンダード 7981 E02373 その他製品 キッチン・バス・洗面のホーロー建材専業。LIXILの住設・リフォーム領域と直接競合

時価総額レンジ: LIXIL 4,946億円に対しTOTO 1兆352億円(2.09倍)・三和HD 7,309億円(1.48倍)・タカラ 1,891億円(0.38倍)。

最新期比較テーブル

全社とも現値時価総額・現値株価を使用。PERはFY2027/3会社予想EPSベース(現値÷予想EPS)。

指標 株式会社LIXIL TOTO 三和HD タカラスタンダード
時価総額(億円) 4,946.60 10,352.28 7,308.69 1,890.61
売上高(億円) 15,107.04 7,374.41 6,607.12 2,527.56
営業利益率 1.88% 7.29% 11.97% 7.55%
自己資本比率 35.3% 63.8% 63.6% 68.8%
予想 PER(倍) 41.20 22.50 12.14 13.22
PBR(倍) 0.74 1.96 2.11 0.96
ROE 1.3% 7.7% 17.8% 7.7%
予想 配当利回り 5.23% 1.91% 4.17% 4.15%
EV/EBITDA(倍) 8.60 11.03 7.19 4.94
標準 NC 比率 -93.85% 6.13% 7.73% 30.18%
営業 CF(億円) 826.89 712.40 613.96 254.06
FCF(億円) 218.34 280.81 471.63 11.35
健全性スコア 75 93 93 88

競合 3期推移(売上・営業利益率)

社名 FY2024/3 売上 FY2025/3 売上 FY2026/3 売上 FY2024/3 営利率 FY2025/3 営利率 FY2026/3 営利率
株式会社LIXIL 1,483,224 1,504,697 1,510,704 1.10% 1.97% 1.88%
TOTO 702,284 724,454 737,441 6.09% 6.69% 7.29%
三和HD 611,107 662,380 660,712 10.70% 12.16% 11.97%
タカラスタンダード 234,738 243,380 252,756 5.29% 6.42% 7.55%

運転資本効率(CCC)— 競合比較

分母は本レポート標準(厳密法)に統一済み。業界中央値はEDINET DBのベンチマークにCCC項目が無いため「データなし」。

指標(日数) 株式会社LIXIL TOTO 三和HD タカラスタンダード 業界中央値
売上債権回転日数 69.87 51.08 66.12 50.23 データなし
棚卸資産回転日数 95.82 93.48 27.71 44.95 データなし
仕入債務回転日数 89.75 62.04 27.37 38.39 データなし
CCC 75.94 82.51 66.46 56.79 データなし

注: CCCは小さいほど資金効率が高いことを意味する。4社中、タカラスタンダードが最短(56.79日)、TOTOが最長(82.51日)。LIXIL(75.94日)は4社中2番目に長い。


5. リスクと論点

リスクマトリクス

有報「事業等のリスク」(15項目)から重要度の高い5項目を抽出する。

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的影響シナリオ 対応状況
のれん減損(ASD Holding Corp.) 米国子会社の拡販計画が未達となった場合、計上済みのれんの一部について減損損失が発生しうる 有報が個別に名指しし注記済み。投資審査委員会による定期モニタリング体制
のれん減損(GROHEブランド) 欧州のプレミアムブランド価値が毀損し売上成長鈍化・利益率低下が生じた場合、のれん減損損失が発生しうる 中東・インドへの販売拡大でブランド価値維持を図る
繰延税金資産の回収可能性 中→高 新設住宅着工減少が続き販売価格適正化・リフォーム戦略強化による増収シナリオが未達なら追加取り崩しの可能性 FY2026/3に一部取り崩し済み(実効税率44.2%の主因)。前提の再評価を継続
金利上昇 借入・社債中心の資金調達構造下で市場金利が著しく上昇した場合、金利負担増・調達難航のリスク 日本・中国・シンガポール・ドイツ・米国の4拠点リージョナル・トレジャリー・センター体制
原材料調達(アルミ・銅・樹脂等) 中→高 中→高 中東情勢緊迫化などで主要資材の価格高騰が続けば収益性がさらに圧迫される 価格転嫁とデリバティブヘッジ、代替素材・リサイクル素材への転換で対応

のれん減損リスクの深掘り

のれん256,410百万円(親会社所有者持分の38.6%)の減損リスク

有報はASD Holding Corp.(米国)とGROHEブランド(欧州)を名指しして減損の可能性に言及している。
この会社はFY2024/3に当期純損失-13,908百万円を計上した実績があり、FY2026/3には繰延税金資産の一部取り崩し(実効税率44.2%の主因)も発生している。
仮に米国事業の拡販計画未達やGROHEのブランド価値毀損という有報の想定シナリオが顕在化した場合、のれんの一部減損は損益計算書だけでなく親会社所有者持分(自己資本比率35.3%の分母)を直接毀損し、PBR算定の基礎となる純資産水準そのものを切り下げる点に注意が必要である。

財務レバレッジ・配当持続性の深掘り

ネットデット構造下の財務レバレッジと配当持続性の論点

LIXILは有利子負債579,881百万円に対し現預金115,624百万円というネットデット(標準NC比率-93.85%)の会社であり、インタレストカバレッジは1.68倍と薄い。
支払利息は5期で6,151百万円から16,871百万円へ2.7倍に拡大した。
1株配当90円据え置きに対し配当性向はFY2025/3の1291.2%からFY2026/3は317.7%、FY2027/3予想でも215.6%という高水準が続く。
FY2026/3の配当支払額25,862百万円に対しFCFは21,834百万円にとどまり、当期のフリーキャッシュフローだけでは配当を賄いきれていない。
東証が求める「資本コストや株価を意識した経営」の文脈では、PBR0.74倍・ROE1.3%という現状と、配当をキャッシュフローでどこまで支え続けられるかが併せて論点になる。


6. バリュエーション統合と論点整理

乖離の構造分析

定量分析が確定した3つの乖離コメントを踏まえる。

  1. NC考慮EV/EBITDA法: LIXILのEV/EBITDAは8.60倍で、同業3社(TOTO 11.03倍・三和HD 7.19倍・タカラスタンダード 4.94倍)のレンジ(4.94〜11.03倍)内に収まる。
  2. CN-PER法: 標準NCベースCN-PERは79.91倍(広義NCAVベース81.42倍)で、予想PER 41.20倍、同業3社予想PER平均15.95倍のいずれよりも大幅に高い。
  3. 乖離の要因: 標準NCがマイナス(ネットデット)であるため、時価総額にネットデット額を加算する算式上CN-PERは予想PERより高く出る。EV/EBITDA法(分母EBITDA)とCN-PER法(分母は支払利息控除後の予想純利益)とで金融費用の反映有無が異なる点も乖離の一因である。

この構造が示すのは、「営業レベルのキャッシュ創出力は同業並みに評価されているが、減価償却・支払利息・税金を差し引いた後の株主帰属利益が薄いため、純利益ベースの倍率だけが跳ね上がる」という現象である。
EV/EBITDAという分母の広い指標では横並びに見える会社が、PERという分母の狭い指標では突出するのは、利益の「薄さ」が倍率を機械的に押し上げるためであり、それ自体は収益性の評価とは独立した算式上の帰結である。

同時に、PBR0.74倍と予想PER41.2倍が同居する構造も特徴的である。
資産は簿価割れで評価されている一方、単年度の利益水準が薄いために利益倍率は高く出る。
これが「市場が単に見落としている割安の放置」なのか、「資本効率の構造的な低さを織り込んだバリュートラップ」なのかは、ROE1.3%・ROIC2.37%という現状値と、会社自身が掲げる長期目標(事業利益率10%・ROIC10%)とのギャップの大きさ、そしてTSR(累積)が5期で0.672に低下する一方、同期間のTOPIX配当込指数は2.022まで上昇したという相対劣後の大きさを踏まえると、後者(構造的な資本効率の低さの反映)としての性格が強いと判断できる。
ただし東証要請下での資本政策変化(政策保有株式縮減など)や価格転嫁の進捗次第で、この構造評価自体が変化しうる余地は残る。

上方シナリオ

FY2027/3下期に有報・決算資料が示す価格改定とコスト削減の効果が計画通り現れ、GROHEの中東・インドでの成長が継続し、のれん減損が発生しない場合、営業利益率の同業とのギャップ縮小が意識され、EV/EBITDA倍率は現在の同業レンジ内でも上限側(TOTO 11.03倍に近い水準)へ位置づけが変化しうる。
利益の絶対水準が回復すれば、PER・CN-PERの分母が厚くなり、両指標の突出度自体が縮小する方向に働く。

ベースシナリオ

会社予想(営業利益37,500百万円、前年比+32.0%)通りに着地した場合でも、Q1進捗率は4.7%にとどまり、線形ペース基準(Q1=25%)から大きく下振れている。
下期偏重の計画が計画通り進むかどうかが市場の疑念として残りやすく、EV/EBITDA・PERとも現状に近いレンジでの評価が続く可能性がある。
日本の新設住宅着工-12.9%という数量要因と米国関税という外部要因の帰趨が、この「計画通り」の実現可能性を左右する。

下方シナリオ

新設住宅着工の減少が続き、米国関税による建材コスト増が価格転嫁で吸収しきれず、ASD Holding CorpまたはGROHEのいずれかでのれん減損が発生した場合、親会社所有者持分(PBRの分母)と当期純利益(PER・CN-PERの分母)が同時に毀損される。
この場合、簿価が切り下がることでPBRの絶対水準自体が変化し、現状の「資産は簿価割れ、利益は薄い」という組み合わせの前提そのものが再構成されることになる。

監視ポイント

時期 イベント 開示で確認すべき点
毎月末 国土交通省「建築着工統計調査」月次公表 新設住宅着工戸数が前年比マイナス基調から反転する兆しの有無
随時 米国の関税政策・住宅市場統計の更新 建材輸入コストと米国住宅着工・住宅ローン金利の動向
2026年9月末(権利確定日の2営業日前を確認のうえ幅を持たせて記載) 中間配当の権利確定 1株配当45円(中間)の実施可否
2026年10月下旬〜10月末(例年10月末開示) FY2027/3 第2四半期(中間期)決算短信 営業利益の進捗率が線形ペース比でどこまで戻ったか、下期偏重計画の実現可能性
2026年10月下旬〜10月末 中間期決算説明会・投資家向け説明資料 価格改定・コスト削減施策の進捗、国内リフォーム売上比率の回復度合い
2026年内 米国ASD Holding Corp.の拡販計画の進捗開示 のれん減損テストの前提となる販売計画の達成状況
2027年1月末(例年1月末開示) FY2027/3 第3四半期決算短信 通期予想の据え置き・修正の有無、繰延税金資産の回収可能性の再評価
2027年4月末(例年4月末開示) FY2027/3 通期決算短信 のれんの減損テスト結果とASD・GROHE各CGUの見積り前提、政策保有株式の縮減進捗
例年6月中旬 定時株主総会 指名委員会の構成・取締役選任、資本政策方針の説明

M&A・出資検討の論点整理

買い手目線でこの会社の企業価値を検討する場合、EVの許容水準を規定する要因として、標準NCがマイナス464,257百万円である事実(引き受けるネットデットの大きさ)、のれん256,410百万円の内訳(ASD・GROHEへの帰属)、そして事業間シナジー余地の3点が軸になる。
シナジー面では、5社統合・2買収を経た複数ブランドの重複整理、国内外の販売チャネル統合、生産拠点の統廃合が論点となる一方、ブランドごとの顧客層の違い(GROHEの富裕層向けポジショニングと国内量販チャネルの違いなど)はディスシナジーの種にもなりうる。
デューデリジェンスで確認すべき事項としては、ASD・GROHE各CGUの減損テスト前提、繰延税金資産の回収可能性の見積り根拠、リース負債67,331百万円、退職給付債務76,732百万円、偶発債務の有無、そして2018-2019年のガバナンス対立を経た経営体制のキーマン依存度が挙げられる。


7. 学びのポイント

📚 着眼点 1: EV/EBITDAでは同業並みなのにPERでは突出する会社の読み方

株式会社LIXILでの具体例: LIXILの営業利益28,403百万円は、減価償却費83,083百万円(営業利益の2.9倍)を足し戻すとEBITDAベースでは同業と遜色ない水準になる。
しかしそこから支払利息16,871百万円(インタレストカバレッジ1.68倍)を差し引き、実効税率44.2%(繰延税金資産の一部取り崩しが主因)で課税されると、最終的な当期純利益は8,143百万円まで削られる。

背景と比喩: EBITDAは「建物の骨格」、純利益は「家賃を払い、ローンを返し、税金を納めた後に手元に残るお金」に例えられる。
骨格は同業と同じ大きさでも、ローン返済(支払利息)と税負担が重ければ、手元に残る額は同業より小さくなる。

分析上の含意: EV/EBITDAとPER(あるいはCN-PER)が同じ会社について逆方向のシグナルを示す場合、その差は「収益性の評価」の違いではなく「資本構成・税負担の重さ」を映していることが多い。
両指標を併用し、どちらが何を測っているかを切り分けて読む姿勢が分析の型として有効である。

📚 着眼点 2: 配当性向215.6%(FY2027/3予想)が持続可能かをFCFで読む

株式会社LIXILでの具体例: 1株配当90円は5期にわたり据え置かれてきたが、配当性向はFY2025/3の1291.2%、FY2026/3の317.7%、FY2027/3予想の215.6%と、いずれも100%を大幅に超える水準が続いている。
FY2026/3の配当支払額25,862百万円に対しFCFは21,834百万円にとどまり、利益剰余金は5期で267,920百万円から199,431百万円へ68,489百万円減少した。
なお、純資産を基準にしたDOE(純資産配当率)でみると3.9%となり、利益基準の配当性向とは異なる姿が見える。

背景と比喩: 配当性向だけを見ると「稼いだ以上に配ってしまっている家計」に見えるが、DOEという別の物差しに替えると「貯金全体からみればまだ小さな取り崩し」という見方も成立する。
1つの物差しだけで持続性を判断すると見誤る可能性がある。

分析上の含意: 配当の持続性を論じる際は、単年度利益基準の配当性向、フリーキャッシュフローとの比較、純資産基準のDOEという複数の物差しを併用し、利益剰余金の増減という「蓄積の変化」も合わせて確認する型が有効である。

📚 着眼点 3: 株式会社LIXIL の指標ポジショニング(相場観テーブル)

全上場企業の中央値は取得できていないため、比較列は「同業3社平均」のみとする(定量分析確定値の単純平均。中央値ではない)。

指標 LIXIL 同業3社平均 評価コメント
予想PER 41.20倍 15.95倍 純利益が薄いため倍率が機械的に高く出る面があり、単純な割高判断はできない
PBR 0.74倍 1.68倍 簿価割れ評価だが、ROEの低さ(後述)を織り込んだ評価である可能性に注意
ROE 1.3% 11.07% 差が大きい。自己資本比率の低さと利益率の薄さの両方が効いている
営業利益率 1.88% 8.94% 粗利率34.1%に対し販管費率31.6%という構造要因が大きい
EV/EBITDA 8.60倍 7.72倍 同業レンジ内でおおむね横並び。PERとの乖離の大きさが着眼点1の論点
予想配当利回り 5.23% 3.41% 利回りは高いが、配当性向・FCFとの関係(着眼点2)を併せて見る必要がある
自己資本比率 35.3% 65.4% 健全性チェックで基準(40%)未達の項目の一つ
標準NC比率 -93.85% 14.68% LIXILのみネットデット構造。同業3社は総じてネットキャッシュに近い
CCC 75.94日 68.59日 5期で41日悪化しており、同業平均との差も拡大基調
健全性スコア 75/100 91.33/100 同業3社(TOTO 93・三和HD 93・タカラスタンダード 88)と比べ相対的に低い

参考情報

ガバナンス要点

株式会社LIXILは2011年に国内建材5社(トステム・INAX・新日軽・サンウエーブ工業・東洋エクステリア)の統合により発足し、現在は指名委員会等設置会社として、代表執行役社長・瀬戸欣哉氏のもと連結48,073人(単体15,128人・臨時2,589人、平均年齢46.2歳、平均勤続20.3年、平均年収7,296,288円)の従業員を抱える。
役員は17名(女性比率35.3%)で、事業は150カ国以上に展開し、日本・中国・シンガポール・ドイツ・米国の4拠点にリージョナル・トレジャリー・センターを置く体制をとる。
2018-2019年に創業家(潮田家)出身の取締役との経営体制をめぐる対立があり、瀬戸氏の社長復帰後は社外取締役が指名委員会委員長を務める体制が構築された。
監査法人・主要取引銀行は本レポートの調査範囲では確認できていない。

大株主構成

大量保有報告書ベース(5%未満は含まない提出グループ単位)の上位5グループ。

順位 提出者グループ グループ合計保有比率 区分
1 ブラックロック・ジャパン グループ(8社連名) 5.09% 海外運用会社
2 三井住友トラスト・アセットマネジメント グループ 4.77% 国内運用会社
3 野村證券 グループ 4.56% 国内証券・運用
4 キャピタル・リサーチ・アンド・マネージメント グループ 4.50% 海外運用会社
5 野村アセットマネジメント グループ 4.08% 国内運用会社

注: 上表は大量保有報告書(5%以上の提出グループ)ベースであり、有価証券報告書の「上位10大株主」とは異なる。
保有目的はいずれも「純投資 / 投資信託・投資一任契約に基づく運用」であり、本データ範囲でアクティビストとしての表明を行っている提出者は確認されない。

データソースの時点差

データ種別 基準日 ソース
財務諸表(5期) 2026-03-31 EDINET有価証券報告書 FY2026/3(2026-06-17提出)
通期実績・会社予想 2026-03-31 TDNet決算短信(2026-04-30開示)
四半期実績 2026-06-30 TDNet決算短信 FY2027/3 Q1(2026-07-31開示)
株価・時価総額 2026-08-05 市場データ
大株主 2022-03-07〜2025-09-19(提出日は各グループで異なる) EDINET大量保有報告書

参考にした外部情報の出典: 国土交通省統計を引用した日経xTECH記事LIXIL 2027年3月期第1四半期決算先進的窓リノベ2026事業(環境省)水まわり・トイレ・衛生陶器業界の世界市場シェア分析日経ビジネス「LIXILお家騒動の教訓」第一生命経済研究所 米住宅着工レポート日経「主要資材の3分の2、国内価格上昇へ」


出典一覧

  1. EDINET DB — 企業基本情報・健全性スコア・最新決算(EDINET有価証券報告書ベース、FY2026/3・2026-06-17提出)
  2. EDINET DB — 5期財務時系列(FY2022/3〜FY2026/3)
  3. EDINET DB — セグメント別売上収益・営業利益
  4. EDINET DB — 業界ベンチマーク
  5. TDNet決算短信 — FY2026/3通期(2026-04-30開示)・FY2027/3 Q1(2026-07-31開示)・FY2027/3通期会社予想
  6. EDINET DB — 大量保有報告書(大株主構成)
  7. EDINET有価証券報告書 — 事業等のリスク・経営方針(FY2026/3)
  8. 株価・時価総額 — 市場データ(2026-08-05時点終値ベース)
  9. EDINET DB — 競合3社(TOTO/三和ホールディングス/タカラスタンダード)の財務・セグメント
  10. 国土交通省統計を引用した日経xTECH記事
  11. LIXIL 2027年3月期第1四半期決算
  12. 先進的窓リノベ2026事業(環境省)
  13. 水まわり・トイレ・衛生陶器業界の世界市場シェア分析
  14. 日経ビジネス「LIXILお家騒動の教訓」
  15. 第一生命経済研究所 米住宅着工レポート
  16. 日経「主要資材の3分の2、国内価格上昇へ」