📚 業界ノート

藤倉コンポジット株式会社

【経済・ゴム製品】ゴム製品企業バリュエーション分析更新 2026-10-13

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目次
  1. 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
  2. 売上の大きさと利益の源泉は異なる
  3. 収益ドライバーと投資の方向
  4. 2. 財務の実力
  5. 5期の利益・キャッシュ推移
  6. 収益性・安全性・効率性のチェック
  7. 3. 市場評価を読む — バリュエーション
  8. 倍率の感応度 — 円換算なし
  9. 4. 同業比較 — 差分の論点
  10. 5. リスクと論点
  11. 6. バリュエーション統合と論点整理
  12. 値付けの背景
  13. 条件分岐シナリオ
  14. 監視ポイント
  15. M&A・出資検討の論点
  16. 7. 学びのポイント
  17. 📚 着眼点1: 売上構成と利益構成のずれ
  18. 📚 着眼点2: 利益回復と価格転嫁の質
  19. 指標ポジショニング
  20. 参考情報
  21. ガバナンス・会社概要
  22. 大株主(FY2026/3有報、2026年3月31日時点)
  23. データ時点と主な出典

藤倉コンポジット株式会社(5121)銘柄分析レポート

SUMMARY

産業用資材が売上の過半を占める一方、利益の柱は高採算のスポーツ用品であり、救命設備などの引布加工品も展開する複合材料メーカーである。
FY2026/3は売上高40,239百万円に対して営業利益4,839百万円、営業利益率12.0%。
営業CF5,739百万円、自己資本比率76.2%と財務余力を保った。
最大の分析論点は利益の事業集中である。
スポーツ用品のセグメント利益4,705百万円に対し産業用資材は727百万円であり、前者の需要循環と後者の価格転嫁が利益の質を左右する。


1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か

ゴム・樹脂の複合化技術を基に、工業用品、制御機器、救命設備、カーボンシャフト、アウトドア用品を供給する。
自動車、住設、空圧制御、医療、救命資材、スポーツ用品等に展開。
業界構造はゴム製品業界基礎ガイドに譲り、利益構成をみる。

売上の大きさと利益の源泉は異なる

FY2026/3の外部売上とセグメント利益は次の通り。セグメント利益合計は全社費用・消去などの連結調整を含まないため、連結営業利益とは一致しない。

FY2026/3 売上高(百万円) 構成比 セグメント利益(百万円) 利益率
産業用資材 23,178 57.6% 727 3.14%
スポーツ用品 12,822 31.9% 4,705 36.69%
引布加工品 3,893 9.7% 165 4.24%
その他 346 0.9% 23 6.62%
連結 40,239 100.0% 4,839 12.02%

出典: FY2026/3有価証券報告書、FY2026/3決算短信。セグメント利益合計5,620百万円と連結営業利益との差約△782百万円は全社費用・消去等による。

産業用資材は売上規模が最大だが、利益率は3.14%にとどまる。 自動車部品や住設関連、工場設備の需要に加えて、原材料費を顧客へ転嫁できる時期が採算を左右する。
会社説明ではFY2026/3の増益に値上げ効果が寄与した。
営業利益はFY2025/3比264.9%増えたものの、利益額は727百万円であり、低採算からの回復途上という見方が残る。

スポーツ用品は売上31.9%から利益の大半を稼ぐ。
主力はゴルフ用カーボンシャフトで、VENTUS等を海外展開。
会社はツアー使用実績とブランド世界シェア50%超を説明する(独立調査値ではない)。
高利益率だが地域景気・商品世代に左右され、FY2026/3利益はFY2025/3比11.2%減。

引布加工品には航空機・船舶向け救命設備、ライフジャケット、産業用膜材等が含まれる。
FY2026/3は電気・電子、自動車部品の受注が堅調で、救命いかだや救命胴衣の更新、防衛関連案件も利益回復に寄与した。
更新需要や用途別仕様が事業を下支えするが、受注の時期と採算が四半期業績に与える影響は継続確認が必要である。

収益ドライバーと投資の方向

産業用資材は自動車、住宅設備、半導体・工場設備の投資と価格改定に左右される。
会社によれば、中国の自動車・住設、北米の汎用エンジンは弱い一方、国内自動車・住設と蓄電池工場向け設備の引合いは回復。
台湾AI半導体設備投資の一服、中国LCD設備の低調もあり、売上成長だけでは利益の方向を読めない。

採算は合成ゴム・樹脂・炭素繊維、加工・人件費、物流、稼働率、為替で動き、価格改定の遅れは利益率を押し下げる。
スポーツ用品は新モデル・ブランド、アウトドア用品は天候・季節性、引布加工品は安全性・用途別仕様・認証が差別化要因となる。

FY2026/3の研究開発費は1,493百万円、設備投資額は1,771百万円。
小高工場の設備を整え、EV熱マネジメント、精密流体、半導体、医療部材、液体漏れセンサー等を新領域に掲げる。
2025年にIoT企業と資本業務提携し、2026年4月に新事業開発部を設置。
QUALIQや液体検知センサーは発表段階で、売上・利益寄与は未分離のため数値化せず、量産・顧客認証・継続受注・投資回収を待つ。

主要顧客名や契約期間の個別開示は確認できず、推定で補わない。


2. 財務の実力

5期の利益・キャッシュ推移

FY2026/3は減収でも営業利益が5期最高となった。 売上高は0.9%減、営業利益は4.7%増。
粗利益率31.1%、販管費率19.1%、営業利益率12.0%で、売上総利益の大幅増なしに営業利益が伸びた。
価格・製品構成・費用管理が採算を支えたと読めるが、値上げ寄与を数量増や継続的な生産性改善と同一視しない。

指標(百万円、比率は%) FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
売上高(成長率) 36,445(—) 40,691(+11.7) 37,670(△7.4) 40,611(+7.8) 40,239(△0.9)
営業利益(利益率) 4,161(11.4) 4,432(10.9) 3,625(9.6) 4,622(11.4) 4,839(12.0%)
純利益(純利益率) 3,929(10.8) 3,934(9.7) 3,232(8.6) 3,736(9.2) 3,987(9.9)
営業CF 4,767 2,418 5,265 6,877 5,739
投資CF △419 △857 △1,057 △3,170 △1,902
FCF(営業CF+投資CF) 4,348 1,561 4,208 3,707 3,837
現金及び現金同等物 6,905 7,229 10,229 10,878 11,879
総資産 37,751 40,374 44,076 47,828 50,690
純資産 27,473 33,342 36,499 34,434 38,605
自己資本比率 72.8 82.6 82.8 72.0 76.2

出典: EDINET FY2026/3有価証券報告書、FY2026/3決算短信。FCFは営業CF+投資CFとして計算。金額は百万円に統一。

FY2027/3 Q1(2026年4〜6月、8月10日開示)は売上高10,687百万円(FY2026/3 Q1比+3.1%)、営業利益1,700百万円(+12.8%)、純利益1,305百万円(+6.4%)。
通期会社予想40,800/5,400/3,800百万円に対する進捗は26.2/31.5/34.3%。
四半期累計を通期予想で割った値で、季節性を含むため予想超過や線形達成を意味しない。
会社予想は据え置き。

FY2026/3の営業CFは5,739百万円、投資CFは△1,902百万円で、FCFは3,837百万円。
設備投資額1,771百万円と研究開発費1,493百万円を維持しながらFCFを確保した。
財務CFは△2,898百万円で、配当支払1,264百万円などを反映する。
現金はFY2025/3末から約1,001百万円増えた。
利益剰余金は27,293百万円、現金は借入金残高2,800百万円を上回るため、短期的な債務返済余力は大きい。

収益性・安全性・効率性のチェック

指標 FY2026/3値 目安 判定・読み方
自己資本比率 76.2% 40%超 PASS。ゴム製品業中央値62.1%を上回る。
有利子借入金と現金 借入金2,800/現金11,879百万円 借入金<現金 PASS。リース債務577百万円は別掲し標準NC式には含めない。
流動比率 478% 150%超 PASS。流動資産29,870/流動負債6,246百万円。
利益剰余金 27,293百万円 正の値 PASS。過去の利益蓄積を維持。
営業CF FY2024/3〜FY2026/3で3期黒字 3期連続黒字 PASS。設備投資後もFCFは3期連続黒字。
配当 FY2024/3 70円、FY2025/3 64円、FY2026/3 76円 3期連続支払い PASS。FY2027/3会社予想は86円。
EPS 208.61円、FY2025/3比+9.5% FY2025/3比プラス PASS。FY2025/3の190.46円から増加。
ROE 10.3% 8%超 PASS。ゴム製品業中央値7.0%を上回る。
営業利益率 12.0% 業界中央値超 PASS。ゴム製品業中央値6.1%を上回る。

出典: 有価証券報告書とEDINET DB業界ベンチマーク。チェックは上記の定量条件に対する結果であり、利益の再現性を保証するものではない。

FY2026/3の売上債権回転日数は60.70日、棚卸資産回転日数88.70日、仕入債務回転日数22.04日、CCCは127.35日である。
売上債権は売上高、棚卸資産と仕入債務は売上原価を分母とする。
棚卸資産の供給維持機能がある一方、需要の弱い地域やモデル切替で滞留すると、現金化までの期間が長くなる。
全上場企業の同一定義によるCCC中央値は取得できていない。

会社は株主資本配当率(DOE)4.0%以上を目途とし、年間配当54円を下限としている。
FY2026/3の配当76円、配当性向36.4%、DOE3.86%に対し、FY2027/3は年間86円を予想する。
DOE方針値と直近実績の差、利益が弱含むときの下限配当の維持、研究開発・設備投資と株主還元の配分を確認したい。
過去3期の通期会社予想と実績を同じ定義で比較できる予想スナップショットが揃わず、予想誤差率は算出していない。


3. 市場評価を読む — バリュエーション

2026年10月13日の終値3,085円を起点に、最新のFY2026/3財務値とFY2027/3会社予想を組み合わせる。
Yahoo!ファイナンス表示の時価総額は発行済株式数20,074,968株(自己株式を含む)ベースで61,931百万円。
一方、FY2027/3 Q1開示時の自己株式控除後株式数18,476,594株で計算した株式価値は57,000百万円である。
企業価値とNC比率では自己株式控除後の値を使い、市場情報サイトの表示時価総額とは分母を分ける。

指標 値・計算 時点と読み方
東証終値 3,085円 2026-10-13。
市場情報サイト表示の時価総額 61,931百万円 発行済20,074,968株を使用、自己株式を含む表示値。
自己株式控除後の株式価値 57,000百万円 3,085円×18,476,594株。時価総額表示との差を区別。
会社予想PER 15.13倍 Yahoo!表示EPS203.94円。会社公表EPS201.93円と基準が異なる。
実績PBR 1.45倍 Yahoo!表示BPS2,134.27円。3,085÷2,134.27=1.45。
FY2027/3予想配当利回り 2.79% 年間DPS86円÷3,085円。
標準NC(FY2025/3→FY2026/3) 6,478→9,079百万円 現預金+短期有価証券−短期借入金−1年内返済予定長期借入金−長期借入金。
標準NC比率(FY2025/3→FY2026/3) 11.4→15.9% 両期のNCを2026-10-13自己株式控除後株式価値57,000百万円で除した参考比率。
広義NCAV(FY2025/3→FY2026/3) 17,847→20,976百万円 流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計。
広義NCAV比率(FY2025/3→FY2026/3) 31.3→36.8% 上記NCAVを同じ自己株式控除後株式価値で除す。
CN-PER(標準NCベース) 12.72倍 (57,000−9,079)÷予想純利益3,768百万円。
参考CN-PER(広義NCAVベース) 9.56倍 (57,000−20,976)÷予想純利益3,768百万円。
FY2026/3現値ベースEV/EBITDA 7.51倍 EV47,921百万円÷EBITDA6,381百万円。

株価出典: 2026-10-13時系列、株式情報。

決算出典: FY2027/3 Q1短信、FY2026/3有報。

有報上、短期借入金・短期有価証券の別建て計上はない。1年内返済予定長期借入金800百万円、長期借入金2,000百万円、投資有価証券4,560百万円、リース債務577百万円を確認した。

標準NCは現金11,879百万円から借入2,800百万円を控除した9,079百万円。
広義NCAVは流動資産29,870百万円+投資有価証券4,560百万円×70%−総負債12,086百万円で20,976百万円となる。

広義NCAVは現金残高を示さない

投資有価証券の換金性・価格変動を反映せず、資産処分価値や即時返済余力を保証しない参考値である。

CN-PERは自己株式控除後株式価値から各NCを控除し、予想純利益約3,768百万円(Yahoo EPS203.94円×18.477百万株)で除した参考倍率である。

現値ベースのEBITDAは営業利益4,839百万円+減価償却費1,543百万円。
EVは自己株式控除後株式価値57,000百万円から標準NC9,079百万円を控除した47,921百万円で、倍率は7.51倍となる。
借入金の定義にはリース債務を含めない。
リース負担を別に見る場合、企業価値はその分だけ異なる。

倍率の感応度 — 円換算なし

評価軸 倍率 根拠・位置づけ
PER・低位の参照 11.4倍 FY2026/3期末の記録値。利益集中や産業用資材の低採算を重くみる比較点。
PER・現状 15.13倍 2026-10-13の会社予想PER。市場が現在示す評価。
PER・高位の参照 17.0倍 同業2社の現値PERを上回る水準。事業利益の分散、資本効率の継続、新領域の売上化が確認された場合に比較軸となる。
EV/EBITDA・同業下側 4.15倍 バンドー化学FY2026/3期末のスナップショット。
EV/EBITDA・藤倉現値 7.51倍 FY2026/3実績EBITDAと2026-10-13の株式価値で算定。
EV/EBITDA・同業上側 10.18倍 Nitta FY2026/3期末のスナップショット。

出典: Yahoo!ファイナンス、各社FY2026/3期末のEDINET財務情報。期末倍率と現値倍率の時点差があるため、予測や到達値ではなく、利益前提と比較倍率が変わる幅を整理したもの。

WACC、永続成長率、将来5期のフリーキャッシュフローを一次資料で裏付けられる形に揃えられないため、DCFは掲載しない。
自社の期末PER履歴も市場価格の基準日と利益定義を統一した時系列が揃わず、ここではFY2026/3期末と現値の確認可能な点だけを使う。


4. 同業比較 — 差分の論点

比較対象は工業用ゴム・樹脂部材、伝動ベルト、ホース等を持つNitta(5186)とバンドー化学(5195)である。
両社は産業用資材の比較に向くが、藤倉のゴルフシャフト・救命設備・引布加工品と事業が完全に重なるわけではない。
タイヤ大手は規模と事業構成の差が大きいため直接競合として扱わない。

指標 藤倉コンポジット Nitta バンドー化学
時価総額(億円、10/13・自己株含む表示株数) 619 2,139 1,133
FY2024/3→FY2026/3売上高(億円) 377→406→402 886→903→918 1,083→1,156→1,193
FY2024/3→FY2026/3営業利益率 9.6→11.4→12.0% 5.0→5.7→6.4% 7.2→3.0→10.1%
予想PER(10/13) 15.13倍 13.37倍 13.04倍
実績PBR(10/13) 1.45倍 1.19倍 1.11倍
ROE(FY2026/3) 10.3% 8.5% 12.1%
自己資本比率(FY2026/3) 76.2% 85.6% 70.2%
予想配当利回り(10/13) 2.79% 約2.33% 約3.90%
EV/EBITDA(FY2026/3期末値) 6.15倍 10.18倍 4.15倍
標準NC比率 15.9% — —
営業CF(FY2026/3、億円) 57.4 96.1 155.9
FCF(営業CF+投資CF、億円) 38.4 64.8 118.9
CCC(FY2026/3、日) 127.35 114.53 81.13

財務出典: Nitta FY2026/3有報、バンドー化学FY2026/3有報。

株価出典: 藤倉、Nitta、バンドー化学。

事業内容出典: Nitta事業概要、バンドー化学。

時価総額は発行済株式数×終値、EV/EBITDAはFY2026/3期末値(藤倉現値7.51倍とは時点差)。
CCCは売上債権÷売上高、棚卸資産・仕入債務÷売上原価。
バンドー化学はIFRSのため会計基準差を含む概観比較。
競合NC比率は短期証券・借入金を確認できず未算定。

藤倉はFY2024/3〜FY2026/3に売上377〜406億円、営業利益率9.6%から12.0%で推移した。
Nittaは売上増と利益率5.0%から6.4%、バンドーはFY2025/3の3.0%からFY2026/3に10.1%へ回復。藤倉の予想PERは両社より高く、スポーツ用品の高採算と産業用資材の低利益率が同時に評価へ影響する。

CCCは藤倉127.35日、Nitta114.53日、バンドー81.13日。藤倉の棚卸資産回転88.70日は3社で最長だが、受注形態が異なるため、在庫稼働と受注残をあわせてみる。


5. リスクと論点

リスクの中心は、利益の柱がスポーツ用品に集中し、売上過半の産業用資材は低採算であることだ。 素材費・為替・関税は両部門の採算と供給に波及する。

リスク要因 影響度 発生可能性(定性) 業績への伝わり方 確認材料・対応
スポーツ用品の利益集中 高 中 ゴルフシャフト需要、地域別景気、商品サイクルの低下が高利益率セグメントを通じ連結利益へ波及。 新モデル販売、地域別売上、スポーツ利益率、アウトドア在庫。会社はVENTUS等の製品展開を継続。
産業用資材の低採算と需要変動 高 中〜高 自動車・住宅設備・半導体設備の投資や価格転嫁の遅れが、売上の過半を占める部門の利益を圧迫。 セグメント営業利益率、受注残、価格改定と数量・ミックスの説明。
素材費、為替、関税・供給網 高 中〜高 原材料高や輸出規制・関税が調達費と顧客需要に波及し、価格改定に時間差が生じる。 FY2027/3予想の設定為替(2026-05-11公表: 1米ドル145円)、価格転嫁、供給途絶・関税影響。
新領域の商業化・投資回収 中 中 医療、半導体、EV熱マネジメント等で認証・量産・販路獲得が遅れれば研究開発費や設備負担が先行する。 新事業の売上・受注・量産開始・投資回収の開示。FY2026/3研究開発費1,493百万円。
株主対話・資本配分 中 中 Hibiki関連の保有増加を背景に、政策保有株、低採算事業、現金・投資の配分が資本政策の争点になる可能性。 株主提案、会社の対話・応答、政策保有株の縮減、DOE・自己株式方針。株主側の主張は会社事実と区別する。

影響度・可能性は定性的評価であり、会社の確率判断ではない。品質・安全、サイバー、人材も有報記載のリスク。スポーツの利益集中と産業用資材の回復の質を四半期ごとに確認する。


6. バリュエーション統合と論点整理

値付けの背景

2026年10月13日のPER15.13倍、PBR1.45倍は、FY2026/3営業利益率12.0%、ROE10.3%、高い自己資本比率と現金超過で説明できる。
一方、売上高はFY2025/3比0.9%減、FY2027/3会社予想は純利益減。
売上57.6%を占める産業用資材の利益率は3.14%で、利益はスポーツ用品に偏る。評価の焦点はスポーツの高利益率の持続と産業用資材の価格転嫁後の採算である。

会社の第7次中期経営計画(FY2026/3〜FY2028/3)は営業利益率10%、ROE10%、自己資本比率60%を目標とし、FY2026/3は達成。
PBR1倍超の維持には資本効率の持続、低採算事業の改革、新領域の利益化が問われる。FY2027/3以降の実績、事業構成、政策保有株の具体策を確認する。

また、2026年7月の大量保有関連資料にはHibiki Path Advisors SPC 9.23%、Hibiki Path Advisors 2 SPC 2.53%が記載され、両名義の合算保有は11.76%となった。
Hibiki側の記事は産業用資材の利益改善を価格転嫁によるものと捉え、工場・中国事業・設備投資を論点に挙げている。
これは同投資家の分析・主張であって、会社開示の見解ではない。
市場の評価が変わるかをみるには、会社が対話をどう開示し、事業別資本効率や株主還元をどの程度具体化するかを確認する。

条件分岐シナリオ

上振れ条件 — 事業利益の分散

産業用資材の利益率改善、スポーツ用品の採算維持、医療・半導体等の継続売上化が進む場合。ROE10%以上とDOE方針も続けば、予想PER約15倍を支える事業の再現性が高まる。

基準条件 — FY2027/3会社予想に沿う

会社予想(売上高40,800百万円、営業利益5,400百万円、純利益3,800百万円)に沿い、事業構成も大きく変わらない場合。
予想PER15倍前後やFY2026/3期末EV/EBITDAを参照し、利益集中と運転資本を考慮する。

下振れ条件 — 需要・価格転嫁が崩れる

ゴルフシャフト需要の弱含み、産業用資材の価格効果剥落、関税・素材費・供給制約が重なる場合。
利益の一時性が意識され、資産価値やキャッシュの質を重視し、PBR・EV/EBITDAの同業下側を参照する理由が強まる。

いずれも事業前提と市場評価の関係を整理した条件分岐である。

監視ポイント

時期 イベント 開示で確認すべき点
2026年11月10日 FY2027/3第2四半期決算(市場情報サイト掲載予定日) 産業用資材の利益率、価格と数量の寄与、スポーツ用品の販売・地域別動向、通期予想の変更、受注残の推移。
2026年11月16日 半期報告書の提出状況を確認する目安(提出日は未公表) 営業CF、設備投資、現預金・借入金、棚卸資産、政策保有株、関税・為替リスクの記述。
2026年12月31日 FY2027/3第3四半期末 半導体・自動車・住宅設備の発注、在庫日数、受注残の変化。
2027年2月10日 第3四半期決算の確認目安(会社発表日未公表) 通期営業利益5,400百万円・純利益3,800百万円に対する累計進捗と季節性、セグメント採算、予想修正。
2027年3月29日 FY2027/3期末配当の権利付き最終日 年間DPS86円、中間・期末各43円の前提と還元方針。
2027年3月31日 FY2027/3期末・期末配当基準日 現金、借入金、自己株式、投資有価証券、棚卸資産、利益率の着地。
2027年5月11日 本決算の確認目安(会社発表日未公表、2026年の発表日に基づく) 売上高40,800百万円・営業利益5,400百万円の差、FY2028/3予想、中期計画2年目の投資・資本配分。
2027年6月25日 定時株主総会の確認目安(会社未公表、2026年の開催時期を参考) Hibiki関連の対話・株主提案、取締役選任、政策保有株、DOEと現金活用の説明。

2027年3月31日は水曜日であり、権利付き最終日は2営業日前の3月29日とした。
11月16日、2月10日、5月11日、6月25日は会社が確定公表した日ではなく、確認目安である。
11月10日の予定日はYahoo!ファイナンス掲載情報による。

M&A・出資検討の論点

FY2026/3標準NCは現金11,879百万円−借入2,800百万円=9,079百万円。
ただしリース債務577百万円、更新投資、運転資本を考慮する前で、全額を余剰資金とみなせない。
政策保有株4,560百万円も換金性・取引制約・含み損益を確認するまで加算しない。
買い手のEV許容水準はスポーツ利益の持続性、産業用資材の改善余地、共通費用、追加投資から検討する。

シナジー候補は複合化技術、カーボンシャフト設計・加工、調達・品質保証、海外網、救命・医療用途。ブランドや販売契約、医療衛生品質、安全認証、工場別顧客承認を損なえばディスシナジーとなる。

DDでは顧客集中、価格条項、受注残の取消条件・採算、在庫、政策保有株、リース・退職給付・環境債務、品質事故・回収、工場稼働率・更新投資、輸出管理・関税、キーマン、Hibikiを含む株主対話を確認する。
医療・救命用途は認証と品質履歴も点検する。


7. 学びのポイント

📚 着眼点1: 売上構成と利益構成のずれ

FY2026/3の売上構成トップは産業用資材57.6%だが、同事業のセグメント利益は727百万円。
スポーツ用品は売上の31.9%から4,705百万円のセグメント利益を生み、利益率は36.69%である。
連結売上や市場成長率だけを追うと、利益の担い手を取り違える。
売上構成と利益構成を並べ、利益率の高い事業の需要循環がどの程度連結へ波及するかを確認することが、この会社を読む基本となる。

📚 着眼点2: 利益回復と価格転嫁の質

産業用資材の営業利益はFY2026/3にFY2025/3比264.9%増えたが、利益額は727百万円、利益率は3.14%である。
低い比較基準からの増益率は大きく見えやすい。
価格改定、販売数量、製品構成、工場稼働率を分けて追わなければ、値上げ効果が一巡した後の利益水準を見誤る。
利益の「伸び率」と「絶対額」を同時に読む分析手順が必要である。

指標ポジショニング

指標 藤倉コンポジット ゴム製品業中央値 市場参考レンジ* 良い目安 評価コメント
予想PER 15.13倍 — 約15倍 同業・利益成長と併読 現在の予想利益を前提とする。スポーツ利益への集中が続くかで同じ倍率の意味が変わる。
PBR 1.45倍 — 約1.4倍 1倍超は簿価超評価の参考 FY2026/3のROE10.3%が背景となるが、資本効率の持続性を要確認。
ROE 10.3% 6.99% 約8〜9% 8〜10%超 業界中央値・一般目安を上回る。利益の事業集中を併記する。
営業利益率 12.0% 6.12% 約5〜6% 10%前後 連結は高い一方、産業用資材は3.14%。連結率だけでは事業差を隠す。
自己資本比率 76.2% 62.07% 約40〜45% 40%超 安全性は高い。現金や投資の使途は別の資本配分論点。
純利益率 9.9% 4.58% 約4〜5% 黒字維持 業界中央値より高いが、特別損益と税負担も確認する。
予想配当利回り 2.79% 3.64% 約2.3% 一律の適正値なし 一般目安は上回るが、同業中央値は下回る。DOE方針と配当額を併読。
CCC 127.35日 データなし 約90〜100日 業態・受注条件と比較 同業2社の114.53日、81.13日より長い。棚卸資産回転の確認が重要。
売上高成長率 △0.9% 1.73% 比較可能値なし 事業別の継続成長 FY2026/3はFY2025/3比で減収。利益増を数量成長と同一視しない。

注: *市場参考レンジは過去の国内上場会社レポートで用いられた分析上の目安を本稿に置いたもので、同時点・同一定義の全上場統計ではない。
中央値とはみなさず、相場観の補助に限る。
ゴム製品業中央値はFY2026/3の13社データ。

出典: EDINET DB業界ベンチマーク、2026-10-13株価。


参考情報

ガバナンス・会社概要

会社は1901年創立。
会社概要は連結2,509人(2026年3月末)、有報は就業人員2,252人と臨時従業員の年平均257人を開示する。
合計値は2,509人だが、臨時従業員は年平均であり、同一定義の期末人数とは確認できない。会社概要、FY2026/3有報。

資本金38億429万円、子会社16社・関連会社2社。
社長は森田健司氏、有報監査人は太陽有限責任監査法人。
海外子会社は米国、中国、ベトナム、韓国、欧州。
DOE4.0%以上を還元目途とする。
主要取引銀行は特定できず記載しない。拠点一覧。

大株主(FY2026/3有報、2026年3月31日時点)

順位 株主名 保有比率 区分
1 信託銀行(信託口) 9.49% 信託口
2 個人株主(氏名非表示) 7.78% 個人
3 藤倉株式会社 5.07% 事業会社
4 個人株主(氏名非表示) 4.42% 個人
5 個人株主(氏名非表示) 3.87% 個人

有報の上位株主表と、2026年7月提出の大量保有関連資料は基準日が異なる。
後者ではHibiki Path Advisors SPCが9.23%、Hibiki Path Advisors 2 SPCが2.53%を保有すると記載されている。
合算11.76%は同一ファンド名義の保有合計であり、2026年3月末の上位5株主表には反映されない。
出典: 有価証券報告書、Hibiki Path Advisors。

データ時点と主な出典