📚 業界ノート

日本コークス工業

【経済・石油・石炭製品】石油・石炭製品企業バリュエーション分析更新 2026-10-31

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目次
  1. 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
  2. コークス: 数量回復が利益回復へつながるか
  3. 燃料・資源リサイクルとエンジニアリング
  4. 収益ドライバー・コスト・運転資本・資本集約度
  5. 2. 財務の実力
  6. 営業損益と最終損益を分けて読む
  7. FY2027/3見通しと予想の読み方
  8. 3. 市場評価を読む — バリュエーション
  9. 倍率の感度比較
  10. 4. 同業比較 — 差分の論点
  11. 5. リスクと論点
  12. 操業と顧客集中が重なる場合
  13. 資産価値と低収益の併存
  14. 脱炭素対応の進捗と残る確認点
  15. 6. バリュエーション統合と論点整理
  16. 値付けの差を生む構造
  17. 条件別に市場評価の軸が変わる場合
  18. 監視ポイント
  19. M&A・出資検討で見る論点
  20. 7. 学びのポイント
  21. 📚 着眼点1: 営業CFと投資後キャッシュは別の問い
  22. 📚 着眼点2: ネットキャッシュの符号と資産評価
  23. 📚 着眼点3: CCCの分母をたしかめる
  24. 相場観テーブル
  25. 参考情報
  26. ガバナンス・大株主
  27. データ時点と出典

日本コークス工業株式会社(3315)

SUMMARY

コークス・燃料資源・粉体機器の3領域で収益を得ており、FY2026/3は売上の61.4%を占めるコークス事業が営業赤字でした。
(FY2026/3有報) FY2026/3の連結営業利益は6.1億円まで回復した一方、減損等の損失で純損失76.8億円、純有利子負債は608.9億円です。
(FY2026/3有報・決算短信) 最大の論点は、FY2027/3以降の2炉団化による採算回復が、単一拠点の操業リスクと高い顧客集中を超えて継続するかです。
(FY2026/3有報・2026-05-27事業計画)

データ時点: 通期財務・事業構成はFY2026/3(2026-03-31)、株価は2026-10-30終値。
FY2027/3第1四半期短信(2026-08-07公表)を補足に使用。
金額は億円。
通期財務は有報・決算短信に基づきます。

1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か

鉄鋼需要の一般論は鉄鋼業界基礎ガイドを参照。
同社はコークス製造、輸入燃料販売・資源リサイクル、粉体処理装置等のエンジニアリングを運営します。
FY2026/3は売上の61.4%をコークスが占める一方、利益を支えたのは他の3事業でした。

セグメント FY2026/3売上高(億円) 構成比 FY2026/3営業利益(億円) 利益率 FY2025/3営業利益(億円)
コークス 561.3 61.43% -23.3 -4.15% -123.6
燃料・資源リサイクル 233.4 25.54% 26.3 11.27% 27.8
総合エンジニアリング 79.2 8.66% 14.8 18.66% 20.7
その他 39.9 4.37% 5.8 14.51% —
セグメント利益合計 — — 23.6 — —
全社費用・調整 — — -17.5 — —
連結合計 913.9 — 6.1 0.66% -85.6

出典: FY2026/3有報・EDINET DBセグメントデータ。セグメント売上の合計と連結売上の1百万円差は端数処理によります。全社費用・調整は連結営業利益とセグメント利益合計の差額です。

コークス: 数量回復が利益回復へつながるか

FY2026/3の生産は99.0万トン、販売は97.2万トンと数量が増えましたが、営業損失は23.28億円。
原料炭・運賃・為替と販売価格の差、炉稼働率や修繕費など固定費が採算を左右し、数量増だけでは利益回復につながりません。

会社は2025-11-11(FY2026/3中)、1B・2B炉団を休止し、生産能力を年200万トンから110万トンへ縮小。2024年稼働の2A炉・1A炉を軸に固定費・修繕費を減らす計画です。

FY2026/3に減損44.36億円を計上。コークス営業利益計画はFY2027/3 10億円、FY2028/3 30億円、FY2029/3 35億円です。3か年事業計画

設備は北九州事業所に集中し、停止が全体へ波及しえます。

2025-12-31の搬送ベルト火災後に炉は保温待機となり、1A炉は2026-01-07に再開。
FY2026/3の数量は回復しましたが、安全対策、2A炉稼働、修繕費を確認します。火災と操業再開に関する会社開示

燃料・資源リサイクルとエンジニアリング

燃料・資源リサイクルは売上233.43億円、営業利益26.30億円(利益率11.27%)。
私有岸壁・石炭ヤードを使い、輸入燃料の大口調達、国内小口転送、灰処理までを担います。
FY2026/3は数量減でも利益を確保。
燃料転換に合わせバイオマス等へ広げられるかが課題です。

総合エンジニアリングは売上79.17億円、営業利益14.77億円(利益率18.66%)。
粉体処理装置・ビーズミルを設計、製造、保守し、FY2026/3受注高77.35億円、受注残47.32億円(売上の59.8%)。
売上・採算は案件別で、茶葉粉砕機「ティーマイスターミル」はFY2027/3第1四半期も受注堅調と会社が説明しています。

2026-09-29、米国企業から高濃度スラリー向け測定装置「アコーストサイザ」の独占製造・販売ライセンスを取得。
製造ライン内測定システムを商品化し、2026-11-25〜27の展示会で実演予定です。
電池材等を想定しますが、売上時期・受注額は未開示のためFY2027/3予想には加算しません。会社発表

収益ドライバー・コスト・運転資本・資本集約度

収益ドライバー: コークス・燃料は販売量と販売価格−調達費・運賃・為替の差が主因。
日本製鉄向けはFY2026/3売上347.76億円(38.1%)。
長期契約は販売基盤ですが顧客集中を伴い、会社は他高炉・電炉・製鉄外へ販路を広げる計画です。

コスト構造: 原料炭・運送の変動費と炉の修繕・要員等の固定費を持ちます。FY2026/3営業損失23.28億円からFY2027/3計画10億円への回復は、安定稼働と固定費吸収にかかります。

運転資本: CCCは110.7日(FY2025/3)から117.8日(FY2026/3)へ延長。
棚卸資産は4.5%増、売上原価は16.8%減で、日数上昇には分母縮小も含みます。
式: 売上債権÷売上高×365+棚卸資産÷売上原価×365−仕入債務÷売上原価×365。

資本集約度: FY2026/3有形固定資産766.40億円、減価償却費60.09億円、設備投資71.00億円(FY2025/3は156億円)。維持更新費は未開示で、安全・環境投資も確認します。

2. 財務の実力

5期推移は、FY2024/3黒字化、FY2025/3の大幅赤字、FY2026/3営業損益回復と利益変動の大きさを示します。

項目 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
売上高(億円) 1,247.1 1,740.6 1,351.5 990.5 913.9
売上高前年比 — +39.6% -22.4% -26.7% -7.7%
営業利益(億円) 122.5 -4.0 43.9 -85.6 6.1
営業利益率 9.8% -0.2% 3.2% -8.6% 0.7%
経常利益(億円) 114.5 -7.5 36.4 -102.7 -2.8
親会社株主帰属純利益(億円) 73.8 -10.8 19.0 -139.1 -76.8
EPS(円) 25.36 -3.70 6.52 -47.79 -26.39
純資産(億円) 573.4 542.8 563.6 416.0 348.0
自己資本比率 44.5% 38.7% 40.0% 31.8% 27.5%
BPS(円) 197.04 186.50 193.65 142.94 119.57
現預金(億円) 50.2 56.2 61.6 51.1 63.9
有利子負債(億円) 231.9 463.3 459.3 658.2 672.8
棚卸資産(億円) 352.6 466.7 427.4 271.4 283.7
売上債権 / 仕入債務(億円) 186.5 / 298.8 134.6 / 242.2 128.9 / 207.0 108.7 / 75.6 91.2 / 96.0
営業CF(億円) 46.1 -124.0 108.3 -31.8 85.1
投資CF(億円) -41.6 -80.9 -98.8 -166.9 -86.8
簡便FCF(営業CF+投資CF、億円) 4.5 -205.0 9.5 -198.6 -1.7
減価償却費 / 設備投資(億円) 60.9 / 30.0 53.8 / 79.0 45.4 / 115.0 52.4 / 156.0 60.1 / 71.0
1株配当(円) 7 0 3 0 0

出典: EDINET DB EDINET 財務データ 5期値をFY2026/3有報で照合。簡便FCFは営業CF+投資CF。FY2027/3予想・市場価格は次章で別表示します。

収益性・安全性・効率性を選定2社と照らすと、利益率と財務余力が主要な弱点です。健全性は9項目を開示値・計算値で判定し、業界中央値がない項目は近似2社との比較にとどめます。

指標・基準 FY2026/3値 目安・比較 判定・留保
営業利益率 > 業界平均 0.7% ユシロ8.8%、MORESCO6.8% ❌ 業界中央値未取得
自己資本比率 > 40% 27.5% 近似2社73.5%、57.7% ❌ 低下傾向
有利子負債 < 現預金 672.77億円 > 63.88億円 純有利子負債608.89億円 ❌
流動比率 > 150% 83.2% 流動資産÷流動負債 ❌ 1倍未満
利益剰余金 > 0 260.90億円 FY2026/3末 ✅
営業CF 3期連続黒字 FY2024/3 +108.27億、FY2025/3 -31.78億、FY2026/3 +85.11億 3期連続黒字 ❌
配当3期連続支払い FY2024/3 3円、FY2025/3・FY2026/3 0円 3期連続支払い ❌ FY2027/3予想未定
EPS前年比プラス -47.79円→-26.39円(+21.40円) 損失縮小 △ 利益化ではない
ROE > 8% -20.1% 近似2社10.5%、6.8% ❌
CCC 117.8日 ユシロ89.3日、MORESCO111.7日 業界中央値未取得

EDINET DBルールベース健全性スコアは45/100、評価Cです。参考指標であり信用格付ではありません。

営業損益と最終損益を分けて読む

FY2026/3は売上913.86億円(7.7%減)、営業利益6.07億円(FY2025/3は営業損失85.62億円)へ改善しましたが、利益率は0.7%。
経常損失2.76億円、純損失76.78億円には特別損失70.57億円(減損44.36億円)が影響。
減損は現金収入ではありません。

営業CF85.11億円に対し投資CFは-86.84億円、簡便FCFは-1.73億円。
減損・減価償却等の非資金費用や運転資本が営業CFを支えており、黒字CFだけでは投資後の余力を示しません。
財務CFは+14.50億円、期末現金63.88億円です。

FY2026/3の有利子負債672.77億円、純有利子負債608.89億円、自己資本比率27.5%、流動比率83.2%。
営業利益÷支払利息8.69億円の利息カバーは約0.70倍で、返済・借換余力の確認が必要です。
会社は2026-04-24/30にコミットメントライン・借入契約の期限と財務特約を変更しました。
資金調達枠の継続に関わる開示ですが、財務余裕を示すものではなく、変更後の指標と余裕幅を追います。IR開示一覧

FY2027/3見通しと予想の読み方

FY2027/3 Q1(2026-08-07)は売上201.93億円、営業損失2.63億円(FY2026/3 Q1は7.40億円)、経常損失6.41億円、純損失6.96億円。
コークス損失は14.14億円から7.02億円へ縮小し、燃料・資源リサイクル利益は6.52億円から3.94億円へ減少しました。

一方、FY2026/3末比で商品・製品は33.32億円、売掛金等は7.11億円増加しました。損益改善と合わせて運転資本への資金拘束も追います。

通期予想は売上1,016億円、営業利益36億円、経常利益20億円、純利益5億円、EPS1.72円、配当未定で据え置きです。第1四半期短信

第2四半期累計の営業利益計画は8億円、通期36億円。
第1四半期は2.63億円の営業赤字で、残る3四半期の利益積上げが大きい状況です。
工事完了・単月生産回復の説明を四半期利益、販売数量、安全操業で確かめます。

予想精度は2観測のみ。
FY2024/3は2023年11月予想比で売上15.0%、営業利益30.3%下振れ。
FY2026/3は2026-02-20修正予想比で売上0.7%下振れ、純損失は7.22億円縮小。
営業利益予想は0円で乖離率を算出できず、FY2025/3も比較データが不足するため一般化しません。

3. 市場評価を読む — バリュエーション

市場価格は2026-10-30終値84円を使います。
株価×発行済株式302,349,449株で算出した時価総額は253.97億円。
発行済株式数は自己株控除前の市場慣行、BPS・EPSは自己株控除後の株式数を含む開示値です。株探の時系列と野村證券の価格ページで終値を照合しました。

指標 計算・対象 値 読み方
市場価格 / 時価総額 2026-10-30終値×発行済株式 84円 / 253.97億円 時価総額は自己株控除前株式数で算出
会社予想PER 84円÷FY2027/3予想EPS1.72円 48.8倍 利益予想が小さく、倍率が高く出やすい
PBR 84円÷FY2026/3 BPS119.57円 0.70倍 FY2026/3純資産基準
予想配当利回り FY2027/3会社配当予想 未定 FY2026/3実績配当は0円
有利子負債 / 現預金 FY2026/3 672.77 / 63.88億円 短期・長期借入金のみ。投資有価証券を除外
標準NC 現預金+短期有価証券−有利子負債 -608.89億円 短期有価証券の値が取得できず、加算していない
標準NC比率 標準NC÷時価総額 -239.7% 余剰現金ではなく純有利子負債
広義NCAV 流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計 -451.22億円 運転資産と負債全体の差
広義NCAV比率 広義NCAV÷時価総額 -177.7% 換金価値を保守的に置いた資産指標
企業価値(EV) 時価総額−標準NC 862.86億円 純負債を市場価値へ加算
FY2026/3実績EV/EBITDA EV÷(営業利益6.07億+償却60.09億) 13.0倍 EBITDAは66.16億円
FY2027/3予想EV/EBITDA EV÷(予想営業利益36億+償却代理値60.09億) 9.0倍 FY2026/3の償却を代理値に使用
EV/EBITDA(広義NCAV代替) (253.97−(−451.22))÷96.09 7.34倍 NCAVは運転資本の安全性指標で、標準EVの純負債調整とは異なる
CN-PER(標準NC) 48.84×(1−標準NC比率) 165.9倍 NCを調整した1株当たりPER
CN-PER(広義NCAV) 48.84×(1−広義NCAV比率) 135.6倍 広義NCAVを代替にした1株当たり参考値

短期有価証券の値は取得できず標準NCに加算していません。FY2025/3は標準NC-607.11億円、広義NCAV-421.71億円で、両期とも現金余剰ではありません。定義は表記載の通りです。

会社予想PER48.84倍×EPS1.72円は84円。
時価総額÷FY2027/3純利益は50.8倍で約4%差があり、期中平均株式数約2億9,102万株と発行済株式数約3億235万株の違いによります。
未丸めPBR0.7025倍×FY2026/3 BPS119.57円も84円となり、表は0.70倍に丸めています。

CN-PERは「会社予想PER×(1−NC÷時価総額)」のper-share式です。
NCが負のため純負債を評価額に加える方向に働きます。
標準NC版165.9倍とEV÷予想純利益5億円の172.6倍の差は、発行済株式数と期中平均株式数の違いによります。
FY2027/3予想に敏感な指標です。

FY2027/3予想EV/EBITDAは会社の償却予想がないためFY2026/3実績を代用しました。将来FCF・WACC・永続成長率を裏付ける入力も不足するためDCFは掲載しません。

倍率の感度比較

評価軸 低位レンジ 中央レンジ 高位レンジ 根拠と留保
会社予想PER 8倍 10倍 13倍 近似2社は9.0〜10.0倍。13倍は継続利益と負債低下が確認される場合の感度。業界中央値なし、自社5期レンジは赤字年が多く有効比較できない
会社予想EV/EBITDA 4倍 6倍 8倍 近似2社は4.2倍・7.0倍。対象の9.0倍は純負債、設備再編、利益回復の不確実性を含む。D&AはFY2026/3の代理値

感度表は適用倍率の比較です。近似2社は収益構造が異なるため、表の範囲を日本コークス工業の標準的倍率とは断定しません。

4. 同業比較 — 差分の論点

ユシロ(5013)とMORESCO(5018)は同じ東証分類で、時価総額は対象の0.3〜5倍です。金属加工油剤・特殊潤滑油等が主で事業構造は異なるため、規模・利益率・財務余力の参考比較に限ります。

指標 日本コークス工業 ユシロ MORESCO
時価総額(億円、2026-10-30) 253.97 421.17 264.71
売上高(億円、直近通期) 913.86(FY2026/3) 511.65(FY2026/3) 348.71(FY2026/2)
営業利益率(直近通期) 0.7% 8.8% 6.8%
自己資本比率(直近通期) 27.5% 73.5% 57.7%
会社予想PER 48.8倍 10.0倍 9.0倍
PBR 0.70倍 0.83倍 1.07倍
ROE(直近通期) -20.1% 10.5% 6.8%
会社予想配当利回り 未定 3.70% 3.48%
予想EV/EBITDA 9.0倍 7.0倍 4.2倍
標準NC/時価総額 -239.7% +11.9% +8.9%

注: 売上・利益・CFは各社の最新通期実績で、MORESCOはFY2026/2、他2社はFY2026/3です。
会社予想は各社の開示時点が異なり、日本コークス工業はFY2027/3、ユシロはFY2027/3、MORESCOはFY2027/2。
時価総額は2026-10-30終値と発行済株式数から算出。
予想EV/EBITDAは営業利益予想に直近通期の減価償却費を加えた簡易値。
日本コークス工業の減価償却費もFY2026/3実績を使用しています。

日本コークス工業は近似2社より営業利益率・自己資本比率・ROEが低く、標準NCも負です。
予想PER48.8倍は予想純利益5億円で高く、EV/EBITDA9.0倍は2社の7.0倍・4.2倍を上回りますが、PBR0.70倍は下回ります。
利益回復・借入・設備投資・需要集中が異なり、単純比較はできません。
業界・全上場中央値は未取得です。

5. リスクと論点

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的な影響シナリオ 会社の対応・開示で確認する事項
炉・搬送設備の故障、安全事故 高 中 停止が長引き生産・納期が減り、修繕費や減損が増える。炉稼働の低下が固定費負担を重くする 2炉団への集約、火災後の復旧、安全対策、停止時間と月次生産を確認
高炉需要・主要顧客集中 高 中〜高 日本製鉄向け売上38.1%が減少すると、コークス数量と設備稼働率が同時に低下する 長期販売契約の条件、顧客別売上、他高炉・電炉・製鉄外向けの実績を確認
原料炭・運賃・為替の変動 高 中 調達コストの上昇を販売価格へ転嫁できず、コークスと輸入燃料の粗利が縮む 調達価格と販売価格の改定時差、調達先、ヘッジ方針、燃料構成の開示を確認
財務特約・借換・金利負担 高 中 利益低迷と資金繰り悪化が契約条件に触れ、資本投資・運転資金に制約がかかる FY2026/3純有利子負債608.89億円、流動比率83.2%。2026-04-24/30の条件変更後の指標と余裕幅を確認
石炭需要と脱炭素制度 高 中〜高 高炉技術や顧客燃料の転換でコークス・一般炭の需要が低下し、CO₂負担や設備評価が変わる 2026年GX法に沿う移行計画、排出量の算定範囲、オフセットを除く削減実績を確認

操業と顧客集中が重なる場合

コークスの収益は炉の稼働、搬送設備、主要顧客向け販売が連続した工程にあります。
2025-12-31のベルトコンベア火災では原料炭の搬送が止まり、炉が保温待機となりました。
主要顧客向け売上も連結の38.1%で、設備停止が長引く局面に顧客の高炉稼働が弱まれば、納期と販売数量の両面に影響します。
会社計画のFY2027/3コークス営業利益10億円に向け、月次の生産量、販売量、停止日数、代替販路の実績を確認します。

資産価値と低収益の併存

PBR0.70倍は帳簿純資産を下回る評価ですが、純有利子負債608.89億円、自己資本比率27.5%、ROE-20.1%が同時に存在します。
標準NCと広義NCAVはいずれも負であり、現金余剰が株価に反映されていない構図とは異なります。
FY2025/3・FY2026/3は無配、FY2027/3配当予想は未定です。
低PBRのみを価値の裏付けとせず、資産の稼働価値、今後の設備費、借入返済と利益率を合わせて評価します。

脱炭素対応の進捗と残る確認点

会社は2026-06-22、FY2025年度(FY2026/3期)のCO₂排出量がオフセット後262千t-CO₂、FY2013比41%減となり、2030年度の自主目標を達成したと公表しました。
2A炉更新と生産体制最適化、森林吸収等の会社算定を含む値で、排出量そのものだけの削減と同じではありません。
2026年4月施行のGX推進法に基づく排出計画は別途作るとしています。
制度移行後の算定境界、オフセット量、実際の操業エネルギー原単位を見ます。ロードマップ更新

6. バリュエーション統合と論点整理

値付けの差を生む構造

FY2027/3予想PER48.8倍とPBR0.70倍の併存は、予想純利益5億円・EPS1.72円が小さい一方、自己資本比率27.5%、純有利子負債608.89億円、設備稼働リスクが簿価の質を問う構造です。
片方だけでは説明できません。

FY2026/3は営業利益6.07億円、経常損失2.76億円、純損失76.78億円で、特別損失70.57億円(減損44.36億円)を計上。
予想EV/EBITDA9.0倍は償却費代理値によるため、標準NC比率-239.7%とともに読み、会社計画(コークス利益: FY2027/3 10億円、FY2028/3 30億円、FY2029/3 35億円)を稼働率・固定費・販路で検証します。

条件別に市場評価の軸が変わる場合

2炉団化と採算改善が継続する場合

FY2027/3に会社計画のコークス営業利益10億円を達成し、FY2028/3以降に30億円規模の利益が安定することが前提です。
安全操業と他顧客向け販売も確認できれば、評価軸はPERから設備投資・運転資本控除後のキャッシュ、正常化EBITDA、純負債低下へ移りうるでしょう。

非コークス事業が利益を支え、コークス採算が低位に残る場合

燃料・資源リサイクルとエンジニアリングがFY2026/3近辺の利益を維持する一方、コークス事業が計画利益に届かない想定です。
複数事業が連結損益を支えますが、売上規模の大きいコークス事業の採算、全社調整後利益、受注残の利益化を評価します。

設備停止・需要低下・財務条件の悪化が起きる場合

炉・搬送設備停止、主要顧客の減産、原料費転嫁の遅れ、借入条件余裕の縮小のいずれかが前提を崩す場合です。
利益低下でEV/EBITDAの分母が細り、赤字時はPERが使いにくくなります。
PBRも帳簿純資産だけでなく、減損・維持更新投資・負債返済後の資本価値で評価します。

監視ポイント

時期 イベント 開示で確認すべき点
2026-11-06 FY2027/3中間決算の発表予定 営業損益、通期36億円予想の維持、コークス黒字化、燃料・資源リサイクル数量
2026-11-10 鉄鋼連盟・鉄鋼需給統計月報 国内鋼材需要、生産・在庫と高炉向け需要の背景
2026-11-16 鉄鋼連盟・用途別受注統計 鉄鋼各分野の受注動向
2026-11-17 鉄鋼連盟・品目別出荷/在庫 出荷・在庫変化と需要の強弱
2026-11-20 鉄鋼連盟・鉄鋼生産速報 粗鋼生産とコークス販売数量の背景
2026-11-24 worldsteel粗鋼生産公表予定 海外生産・輸出入競争の変化
2026-11-25〜27 国際粉体工業展 アコーストサイザの実演、製造・販売開始、受注と売上計上時期
2026-11-30 鉄鋼連盟・需給速報/輸出入統計 国内在庫、輸出入、燃料・資源需要の背景
2026-12-31 FY2027/3第3四半期末 棚卸資産、売掛金、短期借入、CCC、炉の稼働状況
2027-03-29 FY2027/3期末配当の権利付き最終日 配当予想は未定。会社の配当方針・予想更新の有無
2027-03-31 FY2027/3期末・株主確定基準日 年間損益、純負債、自己資本比率、設備投資、配当方針

鉄鋼連盟の11月日程は統計公表ページに記載された予定です。
2026-11-06の決算日は2026-10-31時点の決算発表日程を参照。
会社の期末配当基準日は2027-03-31で、権利付き最終日は2営業日前として算出しました。株式基本情報

M&A・出資検討で見る論点

取得側の出発点は時価総額253.97億円+純有利子負債608.89億円=EV862.86億円。
予想EV/EBITDA9.0倍はFY2026/3償却費を代用した簡易値で、再編後の稼働率・設備寿命・維持費・運転資本の確認前に安定EBITDAとは扱えません。

シナジー候補は私有岸壁・ヤード、燃料調達・灰処理の物流、コークス製造、粉体装置・保守の顧客基盤です。
供給契約の競合、顧客集中、石炭・高炉需要縮小、GX費用、修繕・撤去費はディスシナジーになり得ます。
DDでは顧客別数量・価格式、火災後設備、変更後コベナンツ、原料・為替ヘッジ、在庫評価、減損資産計画、環境責任、ライセンス範囲・対価・量産費を確認します。

7. 学びのポイント

📚 着眼点1: 営業CFと投資後キャッシュは別の問い

TIP

FY2026/3は純損失76.78億円でも営業CF85.11億円でしたが、投資CF-86.84億円、簡便FCF-1.73億円。
減価償却60.09億円・減損44.36億円等の非現金費用があり、営業CF黒字は最終利益の黒字化を意味しません。
損益・運転資本・投資CF・財務CFを分けて読みます。

📚 着眼点2: ネットキャッシュの符号と資産評価

TIP

現預金63.88億円から有利子負債672.77億円を引くと標準NCは-608.89億円、広義NCAVも-451.22億円です。
PBR0.70倍だけでなく、借入・設備・将来利益が簿価を支えるかを見ます。

📚 着眼点3: CCCの分母をたしかめる

TIP

CCCは110.7日から117.8日へ延長。棚卸資産は4.5%増、売上原価は16.8%減で、在庫日数上昇には分母縮小も含みます。回転日数は残高と分母を併せて読みます。

相場観テーブル

近似2社平均は事業構造の異なるユシロ・MORESCOの単純平均で、同業全体の中央値ではありません。全上場中央値と業界中央値は確認できる同一基準データがなく「未取得」とします。

指標 日本コークス工業 近似2社平均 全上場中央値 評価・留保
会社予想PER 48.8倍(FY2027/3) 9.5倍 未取得 予想純利益が小さく倍率が高い
PBR 0.70倍(FY2026/3) 0.95倍 未取得 純負債と低ROEが併存
ROE -20.1%(FY2026/3) 8.7% 未取得 FY2026/3純損失によりマイナス
営業利益率 0.7%(FY2026/3) 7.8% 未取得 連結調整後の利益率が低い
自己資本比率 27.5%(FY2026/3) 65.6% 未取得 借入と利益回復が主要確認点
予想EV/EBITDA 9.0倍 5.6倍 未取得 日本コークスは償却費代理値を使用
配当利回り 未定(FY2027/3) 3.59% 未取得 FY2026/3は無配
標準NC/時価総額 -239.7% +10.4% 未取得 対象は純有利子負債が時価総額を超える
CCC 117.8日(FY2026/3) 100.5日 未取得 棚卸日数上昇には売上原価の分母効果がある
簡便FCF -1.73億円(FY2026/3) +29.90億円 未取得 営業CFの黒字と投資後CFを区別

参考情報

ガバナンス・大株主

FY2026/3有報は会計監査人をEY新日本有限責任監査法人と記載。
日本製鉄(22.55%)と住友商事(19.43%)は「その他の関係会社」で、日本製鉄向け売上は38.1%です。
長期契約による販路と顧客・株主集中の両面を確認します。
持株比率だけで支配や取締役会の独立性は断定しません。

順位 株主名(2026-03-31) 保有株数 持株比率 区分
1 日本製鉄株式会社 65,628,595 22.55% 事業会社・関係会社
2 住友商事株式会社 56,558,095 19.43% 事業会社・関係会社
3 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 16,179,000 5.55% 信託銀行
4 State Street Bank and Trust Company 5050014 4,883,750 1.67% 海外保管銀行
5 株式会社三井住友銀行 3,772,181 1.29% 金融機関

注: FY2026/3有価証券報告書の大株主欄。比率は自己株式を除いて計算。EDINET大量保有報告の検索結果は年次株主名簿の代替にしません。

データ時点と出典

通期PL・BS・CF・セグメント・大株主はFY2026/3基準(有報提出2026-06-25)。
FY2027/3第1四半期短信は2026-08-07公表、株価は2026-10-30。
会社は2026-09-29に測定装置ライセンスを取得しました。

主な出典: