📚 業界ノート

石油資源開発

【経済・石油・石炭製品】石油・石炭製品企業バリュエーション分析更新 2026-10-06

このページ

目次
  1. 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
  2. 上流と国内供給の二層構造
  3. 利益を動かす要因と資本の使い方
  4. 2026〜2035年度計画とFundare資産
  5. 2. 財務の実力
  6. 5期推移から見る収益と投資
  7. 9項目の財務健全性チェック
  8. 3. 市場評価を読む — バリュエーション
  9. 現値指標とNC 2軸
  10. EV/EBITDAと比較の読み方
  11. 倍率ベースの感応度
  12. 4. 同業比較 — 差分の論点
  13. 5. リスクと論点
  14. 6. バリュエーション統合と論点整理
  15. (a) 評価の差が生じる構造
  16. (b) 前提別の評価軸
  17. (c) 監視ポイント
  18. (d) M&A・出資検討で見る条件
  19. 7. 学びのポイント
  20. 📚 着眼点1: 商品感応度を利益と現金の連鎖で読む
  21. 📚 着眼点2: 買収期は現金残高だけでなく、投資後の稼ぐ力を見る
  22. 📚 着眼点3: 純利益は一時要因と操業利益に分ける
  23. 相場観テーブル
  24. 参考情報
  25. ガバナンスと株主構成
  26. データ時点
  27. 出典一覧

石油資源開発(1662)銘柄分析レポート

SUMMARY

原油・天然ガスの開発を軸に、国内ガス供給・LNG・電力と、海外生産資産を組み合わせて稼ぐ会社です。
FY2026/3は営業利益389億円と営業CF1,030億円を確保しましたが、大型取得を含む投資CFは2,005億円の支出でした(FY2026/3決算資料)。
分析上の最大論点は、Fundare取得と1.5兆円の成長投資を、生産量・投資後キャッシュフローへ結び付けられるかです(経営計画、取得完了)。


1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か

業界全体の構造は鉱業業界基礎ガイド(および同業界のセグメント分析・プレイヤー比較)を参照。本レポートは石油資源開発固有の事業構造に絞る。

上流と国内供給の二層構造

石油資源開発(JAPEX)は1955年設立。
国内外で原油・天然ガスの探鉱・開発・生産を行い、国内ではガス導管、LNG、電力、再生可能エネルギーも運営します。
CO₂回収・貯留などカーボンニュートラルも計画に含め、資源価格に連動する上流と国内供給インフラ、将来投資を併せ持ちます。

FY2026/3の地域売上では日本が72.9%を占めます。ただし地域区分と事業種類は一致しません。国内売上にはガス・LNG・電力などが含まれ、海外地域の売上は原油・天然ガス生産の影響を強く受けます。

地域 FY2026/3売上(億円) 構成比 セグメント利益(億円) FY2025/3売上(億円)
日本 2,481.9 72.9% 308.7 2,798.8
北米 523.8 15.4% 170.8 557.1
中東 316.9 9.3% 29.7 343.1
欧州 80.7 2.4% 16.3 191.8
地域合計 3,403.4 100.0% 525.5 3,890.8

出典: JAPEX FY2026/3有価証券報告書、EDINET DB地域別データ。
百万円を100で割り億円換算。
地域売上合計と連結売上の1百万円差は端数処理です。
地域利益は全社費用・調整等を含まないため、連結営業利益389.2億円とは一致しません。

**北米は売上構成15.4%に対しセグメント利益率が表示上32.6%、国内は売上構成72.9%に対し利益率12.4%です。
**地域別率は全社費用・調整等を含む連結利益と異なり、個々の油田や国内販売メニューの採算そのものではありません。

FY2026/3販売数量は国内ガス32,770百万cf、LNG231,386トン、電力3,361百万kWh、バイオマス732,870トン。
海外では北米の原油5,505千バレル・ガス3,951百万cf、欧州の原油566千バレル・ガス1,281百万cf、中東の原油3,038千バレルを販売しました。
販売量と価格を分けて確認します。

有報で主要顧客名・顧客別売上は特定できず、集中度と契約条件は、開示資料からは確認できません。
JAPEXの優位は地下データ・権益・井戸と国内導管・受入設備の運用を組み合わせる点にあります。
資源開発は道路・拠点・運行管理がそろって働く物流網に近く、個別資産だけでは同じ供給網を再現しにくい、という見方です。

利益を動かす要因と資本の使い方

上流の利益は生産量、実現価格、為替、権益比率、操業日数、ロイヤルティや生産費に左右されます。
JAPEXはFY2027/3営業利益の感応度を、原油価格が1米ドル/bbl動く場合に±7.6億円、為替が1円/米ドル動く場合に±4.7億円と示しています。
これは会社が置く生産・価格前提に基づく感応度で、二つの数字を単純に足して業績予想とすることはできません。
国内販売ではLNG販売数量、調達価格と販売条件の時間差、電力の調達・発電構成も利益に影響します。

FY2026/3の売上原価は2,636.0億円、探鉱費19.7億円、販管費358.6億円。
固定費・変動費の内訳と損益分岐点は非開示です。
減価償却470.5億円に対し有形固定資産取得支出は286.3億円。
平均総資産ベースの回転率は0.44回ですが、取得で資産が増えたため平常値とは限りません。

資本支出は探鉱・開発設備、パイプライン等の供給インフラ、資産取得で変動します。
FY2026/3は営業CF1,029.8億円に対して投資CF2,004.9億円の支出となり、現預金はFY2025/3末1,409.3億円から499.5億円へ減少しました。
投資CFには子会社取得支出1,577.1億円等が含まれ、FCF(営業CF+投資CF)はマイナス975.2億円。
通常の維持投資だけで生じた赤字ではなく、取得を含む資金の段差として読みます。

FY2026/3 CCCは約62日。探鉱から生産開始までの時間差があるため、CCCだけでは資源開発の運転資本効率を測りにくい。

2026〜2035年度計画とFundare資産

JAPEXは2026年4月に2026〜2035年度の経営計画を公表しました。
成長投資は総額1.5兆円で、E&Pに1.16兆円、カーボンニュートラル領域に3,000億円、インフラ・ユーティリティ領域に400億円を配分する計画です。

会社は2031年度に日量10万boe、2035年度に18万boe(2025年度比4倍)の生産規模、CO₂累積貯留800万トン以上、2035年度の純利益1,000億円超・ROE12%以上を掲げています。
これは会社の目標であり、確定した生産量や利益ではありません。2026〜2035経営計画

計画では2026〜2030年を中核資産の形成期、2031〜2035年を収益寄与の拡大期と位置付けています。
検証点は、前半の資本支出が後半の操業開始、生産量、営業利益、投資後キャッシュフローへつながるかです。
計画達成を先取りして評価するのではなく、投資額、稼働開始時期、生産の減退、操業費を順に照合する必要があります。

Fundare関連4社のタイトオイル・ガス資産取得は2026-10-02に完了しました。
2026-08-06の発表時点で取得対価は約3.2億米ドル、2026年1〜3月の平均ネット生産量は日量9,500boeでした。
会社はFY2027/3営業利益への寄与を10億円以上、FY2028/3以降を年150億円と試算しています。
これらは会社見込みであり、取得後実績ではありません。取得発表/取得完了

北米生産の拡大は既存の事業基盤を活用できる可能性があります。
一方、既存井の自然減退、掘削・処理設備、取得後の追加投資、操業コスト、埋蔵量と権益条件によって、同じ生産量でも投資回収は変わります。
取得後の生産量と営業キャッシュフローを、会社が示した利益寄与見込みと並べて確認することが大切です。


2. 財務の実力

5期推移から見る収益と投資

指標(億円) FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
売上高 2,491.4 3,364.9 3,258.6 3,890.8 3,403.4
売上高前年比 — 35.1% -3.2% 19.4% -12.5%
営業利益 198.1 620.9 552.5 620.1 389.2
営業利益率 7.9% 18.4% 17.0% 15.9% 11.4%
純利益 -309.9 673.9 536.6 811.5 534.3
総資産 4,719.4 5,681.8 6,609.3 6,816.0 8,624.7
純資産 4,027.7 4,571.7 5,375.7 5,572.6 6,588.97
営業CF -10.5 1,045.8 905.6 1,307.7 1,029.8
投資CF 520.7 -527.2 -996.6 -1,070.8 -2,004.9
FCF(営業CF+投資CF) 510.2 518.6 -91.0 236.9 -975.2
現預金 1,445.1 1,861.7 1,526.0 1,409.3 499.5

出典: EDINET DB FY2022/3〜FY2026/3財務データ、FY2026/3決算資料。金額は百万円を100で割り億円換算。FY2026/3のFCFは営業CF+投資CFです。

FY2026/3末の純資産÷総資産は76.4%(658,897百万円÷862,470百万円)ですが、会社開示の自己資本比率72.8%とは分子の定義が異なります。
純資産/総資産の計算値を自己資本比率と同じ指標として扱わないよう区別します。

**FY2026/3は売上高が12.5%減、営業利益が37.2%減、純利益が34.2%減でした。
**会社は原油・天然ガス価格の下落とLNG販売数量の減少を主因に挙げ、営業利益率はFY2025/3の15.9%から11.4%へ低下しました。
FY2025/3純利益には投資有価証券売却益456.98億円が含まれるため、純利益差には資産売却の影響が混ざります。

FY2027/3 Q1(2026-04-01〜06-30)は売上高651.1億円、営業利益62.0億円でした。
会社通期予想は売上高3,140億円、営業利益460億円、純利益650億円です。
Q1を単純年換算せず、季節性・資源価格前提と合わせて進捗を確認します。

取得の効果は利益寄与だけでなく、追加掘削・設備投資後のFCFで確認します。

9項目の財務健全性チェック

有報FY2026/3末の数値に、開示されたFY2024/3〜FY2026/3の推移を照合しました。業界平均が確認できない項目は、基準を満たしたと扱わず未確認として示します。

点検項目 判定 根拠
自己資本比率 >40% ✅ 72.8%(会社開示)
有利子負債 < 現預金 ✅ 有利子負債217.3億円、現預金499.5億円(リースを含む)
流動比率 >150% ✅ 174.0%(流動資産1,553.6億円÷流動負債892.9億円)
利益剰余金 >0 ✅ 4,860.9億円
営業CF 3期連続黒字 ✅ FY2024/3 905.6億円、FY2025/3 1,307.7億円、FY2026/3 1,029.8億円
配当 3期連続支払い ✅ 調整後DPS: FY2024/3 60円、FY2025/3 55円、FY2026/3 65円
FY2026/3 EPS > FY2025/3 EPS ❌ 208.74円 < 314.91円
ROE >8% ✅ 9.2%(FY2026/3会社開示)
営業利益率 >業界平均 ❌ 11.4%。同じ基準・期間の業界平均を確認できず、比較未確認

判定は上記基準の照合で、会社の信用格付けではありません。
利益率の比較未確認は低採算を意味せず、比較可能な平均値を取得できなかったことを示します。
FY2026/3のCCCは約62日(債権42.2日+在庫24.9日−仕入債務4.7日)。
データベース算出の健全性スコアは78/100で、補助指標です。

受注型ではなく、受注残高で売上を先読みしにくい事業です。
操業量・販売価格・為替・開発時期が予想を左右するため、価格前提と生産実績を分けて予想精度を確認します。
連結配当性向30%を目標、年間40円以上を基本とする会社方針に対し、FY2026/3実績DPS65円・調整後EPS208.74円の配当性向は31.1%(65円÷208.74円)でした。
FY2027/3会社予想DPSは45円で、利益と現金による裏付けを確認します。


3. 市場評価を読む — バリュエーション

現値指標とNC 2軸

株価は2026-10-06終値1,725円、時価総額は発行済株式257,000,380株を掛けた4,433.3億円です。
FY2026/3のBPS2,451.33円、FY2027/3会社予想EPS253.91円・DPS45円を用いるため、価格日と財務・予想の時点差があります。

指標 値 定義・基準
株価 1,725円 2026-10-06終値
発行済株式数 257,000,380株 2026-10-06株探表示
時価総額 4,433.3億円 1,725円×257,000,380株
予想PER 6.79倍 1,725円÷FY2027/3会社予想EPS253.91円
PBR 0.70倍 1,725円÷FY2026/3 BPS2,451.33円
予想配当利回り 2.61% FY2027/3予想DPS45円÷1,725円
現預金・短期有価証券 529.5億円 FY2026/3末
有利子負債 199.9億円 FY2026/3末の短期CP。リース債務除外
標準NC 329.7億円 FY2025/3末1,649.3億円。現預金+短期有価証券−有利子負債
標準NC比率 7.44% FY2025/3末55.2%、現値時価総額に対するFY2026/3末NC比
広義NCAV 1,436.0億円 FY2025/3末2,326.9億円。流動資産+投資有価証券×70%−負債合計
広義NCAV比率 32.39% FY2025/3末77.9%、現値時価総額に対するFY2026/3末NCAV比
CN-PER(標準NC) 6.31倍 (時価総額−標準NC)÷FY2027/3予想純利益650億円
CN-PER(広義NCAV) 4.61倍 (時価総額−広義NCAV)÷FY2027/3予想純利益650億円
EV 4,103.6億円 時価総額−標準NC
EBITDA 859.7億円 FY2026/3営業利益389.2億円+減価償却470.5億円
EV/EBITDA 4.77倍 現値時価総額とFY2026/3末NC、FY2026/3実績EBITDA

標準NCは現預金と短期有価証券から有利子負債を控除し、投資有価証券を含めません。
広義NCAVは投資有価証券を70%評価して負債合計を差し引く簡便尺度で、換金性・含み損益・税を反映する現金同等物ではありません。
FY2026/3末比率は期末時価総額基準で標準NC4.9%、広義NCAV21.4%。
現値分母では7.44%、32.39%です。

FY2026/3末の短期CP19,988百万円を使ったEVは、同年度末の確定財務に対して現値時価総額を組み合わせた値です。
JAPEXは2026-09-09に額面200億円、利率2.745%、2031-09-09償還の無担保社債を発行し、Fundare資産取得も10月2日に完了しています。
これらの後発事象はFY2026/3末のNC計算には含まれていません。
最新の買収後負債・現金が開示されるまでは、EV/EBITDAを完全な取得後資本構成の倍率とみなさないことが重要です。社債情報

EV/EBITDAと比較の読み方

JAPEXの現値EV/EBITDAは4.77倍です。
FY2026/3末標準NC329.7億円を2026-10-06時価総額から差し引いたEV4,103.6億円を、FY2026/3実績EBITDA859.7億円で割った参考値です。
K&Oの参考値4.13倍と基準期・事業が異なり、INPEXは現預金・負債の定義差で算定を保留しています。
比較条件は4章にまとめました。

倍率ベースの感応度

適用PERの比較軸 倍率 位置付け
保守側の分析点 5.0倍 市況下落、Garraf停止、成長投資の負担が重なる条件を見る仮置き
FY2027/3会社予想基準 6.79倍 2026-10-06時価総額÷会社予想純利益、株価÷会社予想EPS
INPEX予想PER 8.43倍 上流主体だが規模・地域構成の異なる比較先
K&O予想PER 14.83倍 国内ガス・ヨウ素中心の隣接比較先。株探の10/5表示
業界平均・自社履歴 / EV/EBITDA PER履歴は比較不能、EV/EBITDAは4.13〜4.77倍 共通系列なし。EV/EBITDAはJAPEX/K&Oの異なる年度の実績

5.0倍はリスク条件を置いた比較点で、予測値ではありません。同業倍率は規模・利益構成・基準日が異なるため直接適用できず、円建て価値へ換算しません。


4. 同業比較 — 差分の論点

指標 石油資源開発 INPEX K&Oエナジー
価格基準日 2026-10-06 2026-10-06 2026-10-06
時価総額 4,433億円 約46,562億円 約1,070億円
最新通期売上 3,403億円(FY2026/3) 20,114億円(FY2025/12) 914億円(FY2025/3)
予想PER 6.79倍 8.43倍 14.83倍
PBR 0.70倍 0.84倍 0.92倍※
ROE 9.2% 8.2% 8.1%
営業利益率 11.4% 56.5% 11.6%
自己資本比率 72.8% 61.4% 82.4%
予想配当利回り 2.61% 3.03% 2.33%※
EV/EBITDA基準期 FY2026/3 FY2025/12 FY2025/3
標準NC 329.7億円 比較不可 373.3億円
EV 4,103.6億円 算定保留 696.6億円
EBITDA 859.7億円 14,868億円 168.9億円
EV/EBITDA 4.77倍 N/A 4.13倍
標準NC比率 7.44% N/A 34.9%

出典: EDINET DB、各社開示、株探。
JAPEX・K&OのEV/EBITDAはFY2026/3・FY2025/3財務に2026-10-06時価総額を組み合わせた参考値。
INPEXは現預金・負債の項目定義を合わせられず算定保留です。
※K&OのPBR・配当利回りは2026-10-05表示値。
価格は翌10月6日終値。
INPEX予想EPS438.82円・年間配当112円は2026-08-07開示。
各社の決算期と指標基準日は異なります。

**JAPEXの予想PERは3社で最も低い一方、事業構成は異なります。**評価差は利益率低下、Garraf停止、現金減少、成長投資の回収と併せて読みます。


5. リスクと論点

# 要因 影響度 発生可能性 経路・確認事項
1 原油・天然ガス価格と為替 高 高 営業利益感応度は原油1米ドル/bbl当たり±7.6億円、為替1円/米ドル当たり±4.7億円。販売量・ヘッジ・実現価格と併せて確認
2 海外の操業・地政学 高 中〜高 Garrafは不可抗力で停止、FY2027/3予想に収入を含めず。再開時期は未定。国別許認可・治安も操業に影響
3 Fundareと大型成長投資 高 中 取得後生産、既存井の減退、単位費用、追加投資、調達金利を確認。会社の利益寄与見込みは取得後実績ではない
4 埋蔵量・開発遅延・資産除去 高 中 探鉱結果や設備の遅れ、埋蔵量改定、廃坑費用の見積りが投資採算と資金負担に影響
5 政府保有株と資本政策 中 中 経済産業大臣が37.84%保有。将来の保有縮減は需給の論点だが、時期・数量は開示資料から確定できない

発生可能性は事業構造と会社開示に基づく相対評価です。原油・為替、海外操業、資産除去は利益・投資・配当へ波及するため、埋蔵量と廃坑費用の前提も確認します。

バリュートラップは予想PERだけでは解消しない

FY2026/3末の標準NCは現時価総額の7.44%、FCFは買収を含んでマイナスでした。
FY2025/3純利益に含まれた有価証券売却益456.98億円、Garraf操業停止、Fundare取得後の資金負担、長期投資計画の規模を合わせ、利益の再現性と資産価値の両面から確認します。


6. バリュエーション統合と論点整理

(a) 評価の差が生じる構造

2026-10-06株価とFY2027/3会社予想から算出した予想PERは6.79倍、FY2026/3 BPS基準のPBRは0.70倍です。
これらの倍率だけでは、資源権益の価値、国内供給インフラ、商品価格の変動性、将来の開発投資を分けて評価できません。
過去の一時利益や停止中資産が利益の基準を揺らすため、将来利益の見えやすさも倍率に関わります。

JAPEXの予想PERがINPEX・K&Oより低いことは観察できますが、両社は規模と利益構成が異なります。
市場がJAPEXを評価する理由を一つに決めず、利益変動、資本需要、海外操業、成長計画の進捗に分けて考えます。

財務基準日と市場データ日の差も重要です。
FY2026/3末の現預金・CPを用いた標準NCは329.7億円ですが、同基準日の後に200億円社債を発行し、Fundare取得を完了しました。
これらを反映したネット負債は最新確定資料で再構成できないため、**現値EV/EBITDA4.77倍は取得後資本構成を反映した倍率とは言えません。
**現金の減少と負債の増加を追う際は、決算期末値と取引後の更新値を混ぜず、同一時点に揃える必要があります。

(b) 前提別の評価軸

生産拡大と投資回収が開示で確認されるケース

Fundareの生産量・単位費用が会社見込みに沿い、既存北米資産と国内供給が安定し、2031年度・2035年度の生産目標へ向けた進捗が続く場合、市場は単年度の資源価格連動利益だけでなく、複数年の生産量・埋蔵量・投下資本利益率を評価軸に加えやすくなります。
投資後FCFと利益の再現性が確かめられれば、予想PERの比較軸が現在の6.79倍からINPEXの8.43倍を含む比較帯に近づく議論が成り立ちます。

市況横ばいで国内供給が下支えするケース

原油・為替が会社想定の近辺で推移し、国内ガス・LNG・電力が安定する一方、海外の成長資産の寄与が段階的に表れる場合、評価は一桁台PERとEV/EBITDAを中心に、配当の持続性と投資回収を併せて見る構図が続き得ます。
FY2027/3会社予想の年間DPS45円が利益と現金で支えられるか、取得後の現預金・有利子負債がどの水準に落ち着くかが前提になります。

市況下落と投資負担が重なるケース

油価や為替が会社前提を下回り、Garrafの停止が長引く、またはFundareの生産・費用が計画から外れる場合、利益予想の分母が縮みPERは上昇します。
投資支出や追加債務も増えれば、評価軸はPERだけでなく、資産価値、EV/EBITDA、投資後FCFへ移ります。
成長投資、債務返済、配当の資金配分を同時に維持できるかが焦点です。

条件別の評価軸を示したもので、倍率の到達値を予測するものではありません。

(c) 監視ポイント

時期 イベント 開示で確認すべき点
2026-11-12 FY2027/3 Q2決算(会社公表予定) 価格・為替前提、利益進捗、Garraf収入の扱い、営業CF
2026-12-31 Fundare取得後の暦年末 取得後の生産量、実稼働日、既存井の減退、買収資金・RBL
2027-03-29 FY2027/3期末配当の権利付き最終日 3月31日基準日からのカレンダー計算。会社予想45円の方針と資本政策
2027-03-31 FY2027/3期末 会社予想との差、営業CF、投資総額、現金、ネット有利子負債
2027-06-30 FY2027/3有報・株主総会資料の確認目安 埋蔵量、操業停止、資産除去債務、政府保有株、投資進捗
2027-06-30 FY2028/3 Q1対象期間末 Fundare寄与、取得会計、減価償却・探鉱費、会社予想
2028-03-31 FY2028/3期末 Fundare年150億円寄与見込みの売上・営業利益・営業CFへの反映
2032-03-31 FY2032/3期末(2031年度)の事業計画確認点 生産量10万boe/日目標、投下資本と利益の接続
2036-03-31 FY2036/3期末(2035年度)の長期計画確認点 2035年度の生産18万boe/日、CO₂累積貯留800万トン以上、利益・ROE

11月12日は会社公表の決算予定日です。
期末日や資料確認日は、今後の開示を確認するためのカレンダー上の点で、目標進捗が保証されるものではありません。
2027年3月29日は3月31日を基準日とするカレンダー計算です。

(d) M&A・出資検討で見る条件

取得側は現値EV/EBITDA4.77倍をそのまま取得基準とせず、長期価格、埋蔵量、自然減退、追加掘削、廃坑・環境債務、為替・ヘッジ、税・ロイヤルティを織り込んだ正常化EBITDAとFCFから許容EVを考えます。
成長投資と既存案件の資本配分も合わせて検証します。

Fundareでは、取得対価約3.2億米ドル、取得資産の日量9,500boe、FY2027/3・FY2028/3の会社寄与見込みを実績と照合します。
操業・調達の共通化はシナジー候補ですが、井戸の減退、操業費、追加掘削、権益条件、RBL金利・担保、廃坑責任が効果を左右します。
DDでは生産履歴、埋蔵量、権原、輸送能力、撤去債務、ヘッジ、投資予算を確認します。


7. 学びのポイント

📚 着眼点1: 商品感応度を利益と現金の連鎖で読む

商品価格のニュースから利益へつなぐ

JAPEXの会社感応度はFY2027/3営業利益について、原油価格1米ドル/bbl当たり7.6億円、為替1円/米ドル当たり4.7億円です。
感応度は価格前提を利益へつなぐ道筋を示しますが、実現価格、生産量、ヘッジ、操業日、権益比率、費用を通じて実績に届きます。商品価格のニュースだけで利益を決め付けず、会社前提、実現販売量、営業利益、営業CFの順に確認するのが要点です。

📚 着眼点2: 買収期は現金残高だけでなく、投資後の稼ぐ力を見る

FY2026/3営業CFは1,029.8億円でしたが、取得を含む投資CFは2,004.9億円の支出で、現預金は1,409.3億円から499.5億円に減りました。
標準NCもFY2025/3末1,649.3億円からFY2026/3末329.7億円へ縮小しました。
これは営業の現金創出だけでなく資産取得・投資の選択を映します。
取得資産が価値を生むかは、生産量や利益の発表に加え、取得後の維持・開発投資を引いたFCFで確かめます。

📚 着眼点3: 純利益は一時要因と操業利益に分ける

FY2025/3純利益811.5億円には有価証券売却益456.98億円が含まれ、FY2026/3純利益は534.3億円でした。
FY2025/3からFY2026/3への純利益減少を操業だけの変化と考えると、原油・天然ガス価格、LNG数量、資産売却の影響が混ざります。
営業利益、営業CF、投資CF、特別損益を分け、反復しやすい利益を見極める方法が学べます。

相場観テーブル

指標 石油資源開発 全上場中央値 良い目安・確認方法 評価・留保
予想PER 6.79倍 N/A 商品価格をならした利益で比較 FY2027/3会社予想を分母とする
PBR 0.70倍 N/A ROEと資本コストを同時に見る ROE9.2%だけで結論を出さない
ROE 9.2% N/A 特別損益・市況をならし複数年で確認 FY2026/3会社表示
営業利益率 11.4% N/A 同じ商品・期間・利益定義で比較 FY2025/3の15.9%から低下
自己資本比率 72.8% N/A 有利子負債・投資需要と併読 FY2026/3有報会社表示
配当利回り 2.61% N/A 予想配当の利益・CF裏付けを見る FY2027/3会社予想45円
標準NC比率 7.44% N/A 買収後の資金と同一時点で比較 FY2026/3末NC÷2026-10-06時価総額
広義NCAV比率 32.39% N/A 投資有価証券の換金性・負債を点検 有価証券を70%評価する簡易尺度
EV/EBITDA 4.77倍 N/A 価格をならしたEBITDAでも比較 FY2026/3実績EBITDA、現値EV

全上場中央値と業界平均について、同じ指標定義・期間の検証済みデータを確認できなかったため数値を補っていません。業種や商品価格が異なる企業同士では、中央値よりも比較条件の一致を先に確認します。


参考情報

ガバナンスと株主構成

代表取締役社長は山下通郎、設立は1955年、従業員は1,670人(連結)・993人(単体、2026-03-31)、監査法人はEY新日本有限責任監査法人です。
海外事業は北米・ノルウェー・中東などに広がり、主要設備所在地にヒューストン・スタヴァンゲルが記載されています。
確認資料では主要取引銀行を特定できません。
社外取締役5名は有報記載の2026-06-19時点で、6月23日総会後の体制は最新資料で確認が必要です。

経済産業大臣は2026-03-31時点で37.84%を保有し、会社は将来の政府保有縮減可能性をリスクとして記載しています。保有縮減の具体的な時期・数量は同資料から確定できません。

順位 株主(2026-03-31) 保有比率 区分
1 経済産業大臣 37.84% 政府
2 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.45% 信託銀行
3 State Street Bank and Trust Company 505223 2.63% 海外カストディ
4 Custody Bank of Japan(信託口) 2.42% 信託銀行
5 State Street Bank and Trust Company 505001 2.29% 海外カストディ

出典: FY2026/3有価証券報告書。名義人と実質保有者は一致しない場合があります。

データ時点

財務諸表はFY2026/3有報(2026-03-31)を基準とし、最新の決算開示はFY2027/3 Q1(対象期間2026-04-01〜06-30、2026-08-06開示)です。
株価・時価総額は2026-10-06終値を用いています。

Fundare取得は2026-10-02に完了し、無担保社債は2026-09-09発行(200億円、利率2.745%、2031-09-09償還)です。
いずれもFY2026/3末財務諸表には未反映です。
EPS・BPS・DPSは2024-10-01の5分割調整後で、現値PER・PBR・配当利回りとFY2026/3財務は基準日が異なるため、各指標の基準を明示しました。


出典一覧

  1. EDINET DB E00041 石油資源開発 — FY2022/3〜FY2026/3財務、FY2027/3 Q1、セグメント。
  2. 株探 1662 石油資源開発、1605 INPEX、1663 K&O — 株価・市場倍率。
  3. JAPEX FY2026/3決算、FY2027/3 Q1、FY2026/3有報。
  4. JAPEX 2026〜2035年度経営計画、Fundare取得発表、取得完了。
  5. JAPEX 社債情報、会社情報。
  6. EDINET DB E00043 INPEX FY2025/12、E30048 K&O FY2025/3。INPEX FY2026/12 Q2、K&O 株式情報。