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日本ハム

【経済・食料品】食料品企業バリュエーション分析更新 2026-10-29

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目次
  1. 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
  2. 2. 財務の実力
  3. 3. 市場評価を読む — バリュエーション
  4. 4. 同業比較 — 差分の論点
  5. 5. リスクと論点
  6. 6. バリュエーション統合と論点整理
  7. 乖離の構造
  8. 条件分岐シナリオ
  9. 監視ポイント
  10. M&A・出資検討の論点
  11. 7. 学びのポイント
  12. 📚 着眼点1: 会社独自利益と会計利益を分ける
  13. 📚 着眼点2: 連結売上の大きさだけで収益源を判断しない
  14. 📚 着眼点3: 分割後の1株指標で倍率を計算する
  15. 参考情報
  16. ガバナンスと株主構成
  17. データ時点と出典
  18. 主な出典
3点要約
  • 何で稼ぐ会社か: FY2026/3売上の約67%を食肉事業が占め、加工食品とボールパーク事業を組み合わせる食品グループです。
  • 財務の要点: FY2026/3売上高は1兆4,574億円、会社定義の事業利益は683億円、親会社帰属利益は351億円でした。決算短信
  • 最大の論点: 食肉とボールパークが利益を押し上げる一方、加工食品の利益率は1.6%。FY2027/3会社計画では事業利益が減少し、原料・為替と加工食品の採算が評価の持続性を左右します。

1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か

日本ハムの稼ぎの中心は、牛・豚・鶏を調達して処理・販売する食肉事業です。
グループは畜産・集荷から処理、加工、物流、販売までをつなぎ、国内外の仕入先や販路を使って供給を組み立てます。
食肉は連結売上の約3分の2を占めるため、販売数量だけでなく、家畜相場、輸入為替、販売価格と商品構成が利益を動かします。
FY2026/3の各事業の売上と利益は次のとおりです。会社決算短信

FY2026/3セグメント 外部売上高(百万円) 売上構成比 セグメント利益(百万円) 利益率
食肉事業本部 979,609 67.22% 61,296 6.26%
加工事業本部 448,366 30.76% 7,183 1.60%
ボールパーク事業 27,785 1.91% 5,418 19.50%

報告3事業の外部顧客売上は合計1,455,760百万円です。
決算短信の「消去調整他」に外部顧客売上1,631百万円が計上されるため、1,455,760百万円に1,631百万円を加えると連結売上1,457,391百万円になります。
セグメント間内部売上139,739百万円は別行で同額が消去されており、この差額とは区別します。
セグメント利益合計73,897百万円と連結の会社定義事業利益68,342百万円との差は、「消去調整他」の△5,555百万円です。報告事業ごとの稼ぐ力と連結値の調整を分けて読む必要があります。会社決算短信

食肉事業のFY2026/3利益は61,296百万円で、会社開示では前年度比80.5%増でした。
豪州牛肉の販売や国内鶏肉価格の上昇が追い風になりました。
ただし、畜産物の調達価格、飼料、為替が販売価格を上回って動けば、売上が増えても利益率が下がる可能性があります。
調達地域や畜種の幅は供給を支えますが、市況変動そのものをなくすものではありません。

加工事業は売上規模が食肉事業に次ぐ一方、FY2026/3利益率は1.60%です。
会社開示では加工食品の利益が28.6%減少し、数量の弱さや工場稼働率が採算を押し下げました。
販売価格、商品構成、ブランド投資に加え、設備稼働と物流費を同時に見る必要があります。
売上が伸びるだけでなく、固定費を吸収できる数量へ戻るかが利益回復の条件です。

ボールパーク事業は連結売上の2%弱ですが、セグメント利益率は19.5%でした。
球場の試合日需要、非試合日の施設利用、周辺開発、食品事業とのブランド連携が収益源です。
FY2027/3からはスポーツ・エンターテイメント事業へ再編されるため、以後の開示では過年度の組替え範囲を確認します。
小さな売上比率でも利益構成へ寄与する一方、集客と設備稼働の変化を受けやすい事業です。中期経営計画2026進捗資料

2. 財務の実力

FY2026/3の売上高は前年比6.3%増の1,457,391百万円、親会社帰属利益は31.9%増の35,066百万円でした。
会社定義の事業利益は68,342百万円で前年比60.7%増です。
事業利益は売上高から売上原価・販管費を控除し、会社が定める為替差損益を加味したうえで、IFRS調整や非経常項目を除外する指標です。
IFRSの営業利益とは別の利益概念として扱います。

指標 単位 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
売上高 百万円 1,151,886 1,259,792 1,303,432 1,370,553 1,457,391
売上高前年比 % 4.1 9.4 3.4 5.1 6.3
会社定義事業利益 百万円 — — — 42,540 68,342
税引前利益 百万円 51,760 22,162 40,599 37,198 54,545
親会社帰属利益 百万円 48,049 16,637 28,078 26,585 35,066
総資産 百万円 909,213 937,155 958,237 949,272 997,477
流動資産 百万円 414,306 428,018 423,430 406,308 438,302
負債合計(IFRS) 百万円 419,659 434,374 419,035 412,200 445,785
期末現金・現金同等物 百万円 85,374 64,986 65,465 71,557 68,679
有利子負債 百万円 211,407 242,055 214,852 223,902 228,548
現金−有利子負債(標準NC下限) 百万円 −126,033 −177,069 −149,387 −152,345 −159,869
流動資産−負債合計(広義NCAV基礎額) 百万円 −5,353 −6,356 4,395 −5,892 −7,483
親会社所有者帰属持分 百万円 479,069 492,913 527,503 524,293 536,940
非支配持分 百万円 10,485 9,868 11,699 12,779 14,752
親会社持分比率 % 52.7 52.6 55.0 55.2 53.8
営業CF 百万円 33,387 11,331 86,586 77,441 82,344
投資CF 百万円 −22,837 −63,677 −39,224 −42,717 −34,044
財務CF 百万円 −12,162 28,417 −53,189 −29,851 −56,004
FCF(営業CF+投資CF) 百万円 10,550 −52,346 47,362 34,724 48,300
減価償却費 百万円 36,464 38,433 39,719 41,728 45,046

出典: EDINET提出有価証券報告書および各期決算短信。
日本ハムはIFRSを採用しています。
負債合計は総資産−親会社所有者帰属持分−非支配持分で再構成し、FY2026/3は会社決算短信の445,785百万円と照合しました。
FCFは営業CF+投資CFの簡便計算で、設備投資額だけを控除した営業FCFではありません。
FY2023/3の投資支出が大きい年を除き、FY2024/3〜FY2026/3は営業CFが安定して黒字でした。

**5期連続の増収と利益の振れは別に評価します。
**FY2023/3に親会社帰属利益が16,637百万円へ減少し、FY2024/3に28,078百万円へ回復、その後FY2025/3は26,585百万円、FY2026/3は35,066百万円でした。
FY2026/3の利益改善には食肉事業の回復が大きく寄与しました。

最新開示のFY2027/3第1四半期(2026年4月1日〜6月30日)は、売上と会社定義事業利益が伸びた一方、親会社帰属利益は減少しました。
会社は第1四半期発表時に通期計画を修正していません。第1四半期決算短信

指標 FY2027/3 Q1実績 前年同期比 FY2027/3会社計画 FY2026/3比
売上高(百万円) 384,946 +8.7% 1,500,000 +2.9%
会社定義事業利益(百万円) 19,415 +19.5% 61,000 −10.7%
税引前利益(百万円) 18,523 +0.6% 55,000 +0.8%
親会社帰属利益(百万円) 10,772 −5.6% 38,000 +8.4%
EPS(円) 114.46(分割前開示)→38.15(分割後) — 403.68(開示)→134.56(分割後) —

Q1では事業利益が前年同期比19.5%増えた一方、親会社帰属利益は5.6%減りました。
短信の説明だけでは、為替・金融損益・税負担などへの要因分解を確定できないため、原因を特定しません。
過去3期の会社予想達成率も、比較可能な予想時点データを取得できず定量判定していません。

分割後の1株指標は、FY2026/3 EPS120.38円、BPS1,901.34円、DPS53.33円です。
FY2025/3の分割後EPS87.68円、DPS45円から増えました。
FY2026/3の配当性向は約44.3%。
FY2027/3会社予想DPSは分割後60円で、予想EPS134.56円に対する配当性向は約44.6%です。
配当だけで利益構造を評価せず、食肉・加工食品の採算、設備投資、キャッシュフローと併せて見ます。株式分割告知

財務チェックを同じ基準で並べると、資本と流動性には余裕がある一方、借入を含む有利子負債は現金を上回ります。次の表は判定基準を明示した要約です。

指標・チェック FY2026/3 目安・判定
ROE 6.61% 8%を上回らず。食品業中央値6.9%に近い
親会社持分比率 53.8% 40%超
自己資本比率(資本合計/総資産) 55.3% 食品業中央値60.8%を下回る(非支配持分を含む)
流動比率 177.4% 150%超。流動資産438,302÷流動負債247,066
有利子負債と現金 228,548 / 68,679百万円 負債が現金を上回る。現金のみの負債カバー率30.1%
利益剰余金 未取得 判定保留。親会社持分を代用しない
営業CF黒字 3期連続 FY2024/3〜FY2026/3で達成
配当継続 3期連続 FY2024/3〜FY2026/3で支払い
EPS前年比 +37.2% FY2026/3分割後120.38円、FY2025/3は87.68円
ROE 8%基準 6.61% 未達
事業利益率 4.69% 食品業の営業利益率中央値4.2%と利益定義が異なり、直接の合否判定はしない
営業CF/親会社帰属利益 2.35倍 会計利益を上回る営業CF。運転資本変動を継続観察

EDINET DB健全性スコア85/100は参考情報とし、上の明示的なチェック項目を優先します。
短期有価証券は未取得です。
簡便CCCは、売上債権・棚卸資産・仕入債務の各回転日数をすべて売上高を分母に計算した参考値で、FY2025/3の47.5日からFY2026/3の49.3日へ延びました。
売上原価の一貫した抽出値がなく、棚卸資産・仕入債務を売上原価で除す標準的な算定値ではありません。

受注残高は消費財の製造・販売、食肉供給、施設運営が中心のため該当しません。
FY2026/3は営業CF82,344百万円、投資CF−34,044百万円、減価償却45,046百万円で、継続的な投資負担が示されています。

3. 市場評価を読む — バリュエーション

2026年10月29日の終値は2,021円です。
日本ハムは10月1日効力で1株を3株へ分割しました。
FY2026/3までのEPS・BPS・DPSとFY2027/3会社予想EPS・DPSは分割前の開示値を3で割って揃えました。
発行済株数はFY2027/3第1四半期末の94,245,000株から自己株308,227株を除き、分割後281,810,319株としています。
時価総額は約5,695億円です。第1四半期決算短信 株価履歴

指標 FY2025/3 FY2026/3 市場評価・計算
分割後EPS(円) 87.68 120.38 FY2026/3実績PER16.79倍
分割後BPS(円) 1,766.52 1,901.34 終値÷BPSでPBR1.063倍
分割後DPS(円) 45.00 53.33 FY2026/3実績利回り2.64%
株価・時価総額 — — 2,021円・約5,695億円(2026-10-29)
FY2027/3会社予想EPS(円) — — 分割後134.56円、予想PER15.02倍
FY2027/3会社予想DPS(円) — — 分割後60円、予想利回り2.97%
標準NC比率(現金のみ) — — −28.1%(標準NC下限−1,599億円÷時価総額)
広義NCAV比率(証券除外基礎額) — — −1.3%(−75億円÷時価総額)

標準NCの定義は現預金+短期有価証券−有利子負債です。
短期有価証券の確認値がないため、5期財務表には現金−有利子負債を下限値として示しました。
広義NCAVの定義は流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計ですが、投資有価証券の値が取得できず、同表では証券評価を加える前の基礎額を示しています。
いずれも正確な全項目値を推定で埋めていません。標準NC下限も広義NCAV基礎額もマイナスで、評価は資産余剰より事業利益の持続性に依存します。

時価総額から現金のみの標準NC下限を差し引いたEVは約7,294億円です。
FY2026/3の会社定義事業利益683億円と減価償却450億円を足したEBITDA代理値は1,134億円、EV/EBITDA代理値は6.43倍です。
この計算はIFRS営業利益ベースではありません。
競合との定義差を含めた比較は第4章にまとめました。
**予想利益38,000百万円に対する現金のみ基準CN-PERは(569,539−(−159,869))÷38,000=19.19倍、投資有価証券を除く広義NCAV基礎額ベースは(569,539−(−7,483))÷38,000=15.18倍です。
**どちらも欠測証券を含まない代理値で、完全な資産調整後倍率ではありません。

適用PER水準 倍率 位置づけ
保守側 12倍 自社の期末PERレンジ内。原料・為替と加工食品採算の悪化を強く見るケース
基準側 15倍 2026-10-29時点のFY2027/3予想PERに近い
改善側 18倍 過去の自社PER範囲の中央寄り。利益改善の継続を前提とする
参考: 食品業PER 公開中央値なし 比較2社のFY2026/3実績PERは13.49倍と24.66倍。利益構成の差に注意
参考: 自社5期PER 8.83〜23.61倍 FY2022/3〜FY2026/3、各期末開示指標

適用倍率は自社の過去範囲と比較会社の利益倍率を参照した分析用の幅で、企業の将来価値を一点に決めるものではありません。
FY2026/3実績利益を用いたPER16.79倍と、FY2027/3予想PER15.02倍の差は、会社計画上の利益回復と市場価格の組合せを表します。
DCFはWACC・永久成長率・5年分の予測FCFを検証可能な定義で揃えられないため掲載しません。

4. 同業比較 — 差分の論点

比較対象は食肉・加工食品を主力とする伊藤ハム米久ホールディングスとプリマハムです。
時価総額は2026年10月29日終値と自己株控除後株数から算出し、売上・利益・資本指標はFY2026/3実績を使いました。
日本ハムはIFRS、比較2社は日本基準です。

指標 日本ハム 伊藤ハム米久HD プリマハム
時価総額(億円、計算値) 5,695 2,730 1,133
FY2026/3売上(億円) 14,574 10,714 4,756
FY2026/3実績PER 16.79倍 13.49倍 24.66倍
FY2026/3実績PBR 1.06倍 0.93倍 0.93倍
ROE 6.61% 7.0% 3.8%
利益率 4.69%* 2.66% 1.92%
自己資本比率 55.3% 56.2% 50.5%
FY2026/3実績配当利回り 2.64% 6.65%** 3.55%
EV/EBITDA代理値 6.43倍* 8.16倍 6.04倍
現金のみNC比率 −28.1% −26.0% −11.6%
FY2026/3営業CF(億円) 823 137 198

出典: 各社FY2026/3決算短信・EDINET財務データ、株価は2026-10-29終値。
時価総額は終値×自己株控除後株数。
*日本ハムの利益率は会社定義事業利益率、EBITDA代理値は事業利益+減価償却。
比較2社は日本基準営業利益+減価償却。
**伊藤ハム米久HDのFY2026/3配当320円には記念配当175円を含みます。
FY2027/3普通配当予想155円で計算した利回りは約3.22%です。

日本ハムは売上規模や食肉・スポーツ事業の構成が比較2社と異なります。
自己資本比率は資本合計/総資産で統一し、非支配持分を含めました。
伊藤ハム米久HDのFY2026/3 PERは日本ハムより低い一方、配当には記念配当175円が含まれ、普通配当ベースでは利回り差が縮まります。
プリマハムはFY2026/3利益率とROEが低く、利益減少年度のPERが高く出やすい点に注意が必要です。

**同業比較の倍率や利益率には会計基準と利益定義の違いが残ります。
**日本ハムの利益率4.69%は会社独自定義の事業利益率です。
日本基準の営業利益率と比較すると、IFRS調整・為替損益・非経常項目の扱いが異なります。
EV/EBITDAも同社だけ事業利益を使うため、6.43倍を直接的な優位性とせず、利益定義をそろえた追加確認が必要です。
標準NCは3社とも現金のみの下限値で、短期有価証券を足す前の比較です。

5. リスクと論点

リスクの影響度と発生可能性の高低は、FY2026/3開示・実績と事業構成を踏まえた定性評価です。会社が示した発生確率ではありません。

要因 影響度 発生可能性 想定される経路 開示・対応状況
原料価格・円安 高 高 食肉・飼料・輸入費上昇が価格転嫁を遅らせ、主力事業利益率を圧迫 複数地域・畜種の調達と販売価格の運営。ヘッジ比率の定量情報は未確認
加工食品の低採算 中〜高 高 数量・稼働率の低迷が製造固定費を吸収しにくくする 中期経営計画で商品・販売戦略と構造改革を掲げる。FY2026/3利益率1.60%
食品安全・家畜疾病 高 中 供給停止、廃棄・追加費用、信用低下へ波及 品質管理・トレーサビリティを運用。発生確率や損失額は未開示
物流・人件費・エネルギー 中〜高 高 コールドチェーン・工場・配送費が値上げを上回る 省力化・効率化が必要。会社は物流費・労務費上昇を経営環境に記載
ボールパーク集客・施設稼働 中 中 来場や非試合日の利用が弱いと固定費回収・周辺開発が遅れる 非試合日魅力向上や施設周辺開発を事業戦略に掲げる

FY2026/3の利益回復とFY2027/3計画の事業利益減少が、評価の持続性を分ける最大の論点です。計画は売上高+2.9%に対し事業利益−10.7%。
食肉の採算が反落し、加工食品の利益回復も遅れれば、低い見かけの利益倍率が業績ピークを反映する
バリュートラップ
になりえます。
反対に、調達環境が悪化しないことだけでなく、加工食品の工場稼働と利益率が改善すれば、利益の分散が進みます。

6. バリュエーション統合と論点整理

乖離の構造

2026-10-29終値のFY2027/3予想PERは約15倍、PBRは1.06倍です。
食品業中央値はPBR1.15倍、ROE6.9%、自己資本比率60.8%。
日本ハムの自己資本比率は55.3%で、中央値をやや下回ります。
自己資本比率は非支配持分を含む資本合計/総資産で、会社開示の親会社持分比率53.8%とは分子が異なります。
食品業中央値はFY2026、PBRはEDINET DBの2026-10-27更新値で、日本ハムのFY2026/3・10月29日終値とは時点が異なります。PBR・ROE・自己資本比率

資産面では親会社持分比率53.8%を維持していますが、現金のみで借入を引いた標準NC下限はマイナスです。
投資有価証券を含めた正確なNC・NCAVも確認できず、資産余剰を主根拠にする評価は難しい状況です。
評価の中心は、主力食肉事業の利益がどこまで続くか、加工食品の採算が回復するか、設備・運転資本を使いながらROEを改善できるかにあります。

**FY2027/3予想PERが実績PERを下回る形は、会社計画の利益が実現する前提に立ちます。
**実績PER16.79倍から会社予想PER15.02倍への低下だけを見ると、FY2026/3の利益回復とFY2027/3計画の事業利益減少、Q1の親会社利益減少を同時に捉えられません。

条件分岐シナリオ

基準シナリオ — FY2027/3会社計画へ近づく

食肉事業の利益が大きく崩れず、加工食品の利益率も大幅には悪化しない場合、FY2027/3会社予想利益に対する約15倍の評価が比較の中心になりえます。
株主還元は分割後DPS60円の会社予想を基準に、営業CFと投資支出の両立を確認します。

改善シナリオ — 利益源の幅が広がる

豪州牛肉・国内鶏肉の採算が保たれ、加工食品で数量・稼働率・商品構成が改善し、球場の非試合日利用も伸びる場合、利益の再現性が高まります。
市場は自社過去PER範囲の中央から上側や、継続性の高いセグメント利益を反映するEV/EBITDAを参照しやすくなります。

悪化シナリオ — 原料・為替と低採算が重なる

食肉原料や輸入為替が悪化し、価格改定に時間がかかるうえ加工食品の低利益率が続く場合、会社計画の利益未達と運転資本負担が同時に強まります。
市場評価は自社過去PER範囲の下側や、低い利益持続性を反映するEV/EBITDAへ寄る可能性があります。

監視ポイント

時期 イベント 開示で確認する内容
2026年11月頃 FY2027/3第2四半期 事業利益の計画進捗、親会社帰属利益との違い、分割後EPS表記
FY2027/3第3四半期 四半期決算 食肉の調達・販売採算、加工食品利益率、債権・在庫の日数
FY2027/3通期 通期決算 CFO・投資CF・配当・自己株、FY2028/3の事業利益計画
中期経営計画2026総括 計画期間の進捗 加工食品改革、海外成長投資、スポーツ事業再編の数値目標と結果

M&A・出資検討の論点

**事業の評価では利益定義、資本負担、時点を揃えて比較します。
**買い手の視点で対象を評価する場合は、調達地域・畜種の分散、食肉処理・冷蔵物流・販路の相互利用、ブランドと小売チャネル、設備稼働率の改善余地を検証します。
売上シナジーだけではなく、原料価格が逆風の時期にも残る利益、追加設備・品質保証・統合費用、在庫・債権などの運転資金を含めて投資採算を測る必要があります。
球場・周辺施設への出資では、試合日以外の稼働と開発計画を食品事業のキャッシュフローから分けて評価します。

7. 学びのポイント

📚 着眼点1: 会社独自利益と会計利益を分ける

**会社定義利益と会計利益を混同しないことが同業比較の前提です。
**日本ハムは事業利益を管理指標として開示します。
これは売上・原価・販管費に会社定義の為替差損益を加味し、IFRS調整と非経常項目を除く指標です。
IFRS税引前利益や親会社帰属利益と同じものではありません。
利益の成長を読むときは、どの利益段階が増えたのかを確認し、同業他社の営業利益と単純比較しないことが重要です。

📚 着眼点2: 連結売上の大きさだけで収益源を判断しない

**売上構成比と利益構成比は必ずしも揃いません。
**食肉事業は売上の67%を占め、FY2026/3セグメント利益61,296百万円を計上しました。
加工食品は売上の31%に対して利益7,183百万円、ボールパークは売上2%弱で利益5,418百万円です。
売上構成と利益構成の違いを見ると、会社全体の成長がどの事業の採算で支えられているかが分かります。

📚 着眼点3: 分割後の1株指標で倍率を計算する

**株式分割をまたぐ倍率は、株数と1株指標を同じ基準へ揃えて計算します。
**株式分割で会社全体の利益や純資産は変わりませんが、株数と1株当たり指標は動きます。
FY2027/3予想EPS403.68円を分割後の株価2,021円へそのまま当てるとPERを誤ります。
EPSを3で割った134.56円と、BPS1,901.34円・DPS53.33円を使うことで、PER・PBR・配当利回りの計算基準を揃えられます。

指標 日本ハム 全上場・食品業の参考値 目安の読み方
FY2027/3予想PER 15.02倍 食品業PER中央値は未取得。東証プライム総合の連結加重平均20.6倍(2026年9月末、中央値ではない) 会計年度・利益予想・集計方式が異なるため参考値
PBR 1.06倍 食品業中央値1.15倍(116社)、全社1.17倍(3,315社) EDINET DB更新2026-10-27、最新FY2024〜FY2026の期末値で株価基準日が異なる
ROE 6.61% 食品業6.9%(FY2026、98社)、全社7.7%(FY2025、4,132社) 8%は一般的な目安例。業態と年度差を考慮
自己資本比率 55.3% 食品業60.8%(FY2026、99社)、全社55.2%(FY2025、4,245社) 資本合計/総資産で比較。非支配持分を含む
利益率 4.69% 食品業営業利益率中央値4.2%(FY2026、95社、P25=2.7%)、全社6.0%(FY2025、4,023社) 日本ハムは会社定義事業利益率で、直接比較できない
FY2026/3実績配当利回り 2.64% 食品業2.3%(FY2026、99社)、全社3.1%(FY2025、2,932社) FY2027/3会社予想は分割後2.97%。同業には記念配当もある
流動比率 177.4% 全上場中央値は未取得 150%超は簡便チェック。資産の換金性も確認
現金/有利子負債 30.1% 全上場中央値は未取得 100%未満。短期有価証券の未取得分は含めない
CFO/親会社帰属利益 2.35倍 全上場中央値は未取得 1倍超だが、運転資本の一時変動に留意
FCF(CFO+CFI)/売上 3.31% 全上場中央値は未取得 正値。設備投資後のCFと同義ではない
簡便CCC 49.3日 全上場中央値は未取得 FY2025/3の47.5日より長く、社内推移で観察

各中央値の年度・母数は表中のとおりです。
食品業営業利益率中央値4.2%(P25=2.7%)と会社定義事業利益率4.69%は定義が異なります。
東証プライムPERは連結加重平均で、個社予想PERや業種中央値とは別の物差しです。

参考情報

ガバナンスと株主構成

2026-03-31上位株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)19.69%、日本カストディ銀行(信託口)7.57%、State Street Bank and Trust Co 505001 5.56%、百十四銀行3.94%、明治安田生命保険3.90%です。
信託銀行名義は最終受益者を示すとは限りません。
2026-04-30に自己株4,850,004株を消却し、10月1日に1株を3株へ分割しました。会社株主構成

データ時点と出典

主な出典

  1. 日本ハム 2026年3月期決算短信 — FY2026/3実績、セグメント、CF、配当。
  2. 日本ハム 2027年3月期第1四半期決算短信 — FY2027/3計画、Q1実績、6月末株数。
  3. 日本ハム FY2026/3有価証券報告書(EDINET E00334、S100YEEQ) — 事業・経営環境・リスク・ガバナンス。
  4. 中期経営計画2026進捗・FY2027/3事業戦略 — 加工食品、食肉、スポーツ事業の戦略。
  5. FY2026/3市場動向資料 — 豪州牛肉・食肉市況。
  6. 株式分割資料 — 1株から3株への分割。
  7. 株主構成 — 2026-03-31時点の上位株主。
  8. 日本ハム株価履歴 — 2026-10-29終値。
  9. 伊藤ハム米久HD株価履歴 — 2026-10-29終値。
  10. プリマハム株価情報 — 2026-10-29終値。
  11. 伊藤ハム米久HD 2026年3月期決算短信 および プリマハム 2026年3月期決算短信 — 同業の実績・配当。
  12. 食品業PBR、ROE、自己資本比率、営業利益率、配当利回り — 有報ベースの業種・全社中央値、年度・社数は表中に記載。
  13. 東証プライム総合PER — 2026年9月末、連結加重平均。KabuGraphがJPX「規模別・業種別PER・PBR」から集計。