サカタのタネ
このページ
- まず見る1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
- 次に読む水産・農林業 の業界ハブ
目次
- 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
- FP&Aカード(サカタのタネ固有)
- サカタのタネの事業構成
- 主要取引先
- 競争優位性の比喩的説明
- サカタのタネの固有事象・資本関係の詳細分析
- 2. 財務の実力
- PL — 5期+予想
- BS — 5期
- BS 詳細主要科目(百万円) — 5期
- CF — 5期
- 減価償却費明細(百万円) — 5期
- 受注高・受注残高
- 運転資本分析(CCC)
- 配当推移 — 5期+予想
- 経営者予想精度(直近2期分・データ提供分のみ)
- 健全性チェック(事業会社基準)
- 3. 市場評価を読む — バリュエーション
- 時価総額・株価の基準
- 標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移
- 広義 NCAV 計算 — 5期推移
- CN-PER(キャッシュニュートラル PER)
- EV/EBITDA 分析
- EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別)
- 倍率ベース感応度(適用 PER レンジ・円換算なし)
- バリュエーション乖離コメント
- 4. 同業比較 — 差分の論点
- 競合選定基準
- 最新期比較テーブル
- 競合 3期推移(売上・営業利益率)
- 運転資本効率(CCC)— 競合比較
- 5. リスクと論点
- リスクマトリクス
- 6. バリュエーション統合と論点整理
- (a) 乖離の構造分析
- (b) 条件分岐シナリオ(確率・金額表記なし)
- (c) 監視ポイント
- (d) M&A・出資検討の論点整理
- 7. 学びのポイント
- 📚 着眼点1: 「育種10年+安全在庫」がCCC632日という異常値を生む構造
- 📚 着眼点2: 広義NCAV比率56%・低ROEの資本効率ジレンマ
- 📚 着眼点3: サカタのタネの指標ポジショニング(相場観テーブル)
- 参考情報
- ガバナンス要点
- 大株主構成(大量保有報告書ベース、5%以上)
- データ基準日の違い
- 出典一覧
サカタのタネ(1377)銘柄分析レポート
現値時価総額は 188,267百万円(1,882.67億円)、株価4,455円ベース。
予想PER(FY2027予想純利益10,000百万対比)は18.8倍、実績PER(FY2026 EPS284.46対比)は15.7倍。
予想EV/EBITDAは9.2倍(標準NCベース)。
配当利回りはFY2027予想90円ベースで2.02%。
標準NC比率は9.0%、広義NCAV比率は56.1%と資産の厚みが大きい。
健全性スコアは93/100(格付S)で自己資本比率82.3%と財務基盤は堅固。
| 指標 | 値 | 評価 |
|---|---|---|
| 時価総額 | 1,882.67 億円 | 中型 |
| 予 PER | 18.8倍 | 適正 |
| 予 EV/EBITDA | 9.2倍 | 適正 |
| 配当利回り | 2.02% | 中位 |
| 標準 NC 比率 | 9.0% | 中程度 |
| 広義 NCAV 比率 | 56.1% | 高い |
| 健全性スコア | 93/100 | 高い |
1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
種苗・農業関連の業界構造は別途の業界基礎ガイド(および同業界のセグメント分析・プレイヤー比較)を参照。本レポートはサカタのタネ固有の事業構造に絞る。
サカタのタネは「野菜と花の種を作って世界中に卸す会社」である。
稼ぎの実態は、海外卸売事業(構成比79.5%・営業利益率24.7%)が一手に担っている。
国内卸売事業は構成比こそ12.7%と小さいが営業利益率35.4%と社内最高マージンを誇り、国内の種苗商流を握る収益源になっている。
対照的に小売事業(ガーデンセンター・通販、構成比3.9%)は営業利益率-10.5%の恒常赤字であり、その他事業(造園緑花・人材派遣、構成比4.0%)は補完的な位置づけにとどまる。
FP&Aカード(サカタのタネ固有)
- 収益ドライバー: 数量×単価ではなく「品種数×採用国数×為替」の掛け算に近い。ブロッコリー種子で世界シェア約65%(Strainer調べ、出典: Strainer)を握るような育種力のあるF1品種を、19か国の生産拠点から170か国以上へ卸す。FY2026/5の売上高増収12.2%のうち、為替の売上寄与だけで+69.29億円に達しており、海外比率の高さが為替感応度を増幅する構造である。
- コスト構造: 育種(品種開発)は着手から品種登録・量産まで10年単位を要するため、費用は先行投資的に発生し、収益化までのタイムラグが長い。固定費性の強い研究開発・生産インフラ投資が土台にあり、単年度の天候・為替が変動費的に業績を振らす二層構造になっている。
- 運転資本: CCC632日(FY2026/5、定量分析で確定)。うち棚卸資産回転日数613日が支配的で、生きた種子を発芽率・純度が保証された状態で複数年ストックする「種子安全在庫」がその主因である。資材卸中心のカネコ種苗(CCC約44日)と比較すると15倍近い差があり、業態そのものが運転資本重量産業であることを示す。
- 資本集約度: 生産設備・育種研究施設(横浜研究農場ほか)への継続投資が必要な一方、自己資本比率82.3%・広義NCAV比率56.1%と、負債に頼らず内部資金で賄う財務体質である。設備投資の重さそのものよりも、種子在庫という「生物資産」を抱える資本集約度が特徴的である。
サカタのタネの事業構成
FY2026/5(決算短信、2026-07-13開示、通期実績)のセグメント別売上構成は以下の通り。
| 事業セグメント | 売上高(百万円) | 構成比 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|
| 海外卸売事業 | 82,862 | 79.5% | 24.7% |
| 国内卸売事業 | 13,193 | 12.7% | 35.4% |
| 小売事業 | 4,062 | 3.9% | -10.5% |
| その他(造園緑花・人材派遣) | 4,161 | 4.0% | 4.4% |
FY2025/5(有報・推移参考)
| セグメント | 売上高(百万円) | 構成比 | 営業利益(百万円) | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 海外卸売事業 | 71,977 | 77.5% | 20,021 | 27.8% |
| 国内卸売事業 | 12,661 | 13.6% | 4,760 | 37.6% |
| 小売事業 | 4,531 | 4.9% | -256 | -5.7% |
| その他 | 3,749 | 4.0% | 105 | 2.8% |
地域別売上(同FY2026/5、百万円): 日本21,417 / 米国17,146 / 北中米(米国除く)8,769 / 欧州・中近東26,007 / アジア15,995 / 南米10,442 / その他4,501。
欧州・中近東と米国が海外卸売の牽引役で、アジアは中国市況低迷の影響で相対的に減速している。
製品別売上(同FY2026/5、百万円): 種苗91,013 / 資材4,945 / その他8,320。売上の9割弱が種苗そのものであり、資材・その他は付随事業にとどまる。
注: 上表はFY2026/5(決算短信2026-07-13開示)の通期実績である。
後述の事業等のリスク7項目は最新の有価証券報告書(FY2025/5期分)記載の内容を要約しており、基準日が異なる点に留意する(データ基準日の違いは参考情報を参照)。
主要取引先
サカタのタネの販売網は種苗商・農協系統・大規模生産者・種苗ディストリビューターなど多層構造であり、特定の大口顧客への依存度は開示上目立たない。
むしろ「顧客」は世界170か国以上に分散する生産者・流通事業者であり、個社依存リスクよりも国・地域単位の需要変動(天候・農政)の影響を受けやすい取引構造である。
取引の性質は継続的な種子供給契約が中心で、生産者が一度採用した品種を作付計画の中に組み込むため、スイッチングコストは低くない。
競争優位性の比喩的説明
種子ビジネスの参入障壁は「ワインの熟成」に近い。
良いワインを造るには畑の管理からブレンドまで長年の蓄積が要るように、優良な種子品種を市場に出すには育種10年以上の年月と、北半球・南半球を使い分ける採種地の分散ノウハウが必要である。
後発企業が同じ品質の種子を短期間で用意することはできず、時間そのものが参入障壁になっている。
ブロッコリーで世界シェア約65%という数字は、この「時間資本」の蓄積が生んだ結果である。
サカタのタネの固有事象・資本関係の詳細分析
2026年7月13日、会社は創業以来初となる長期経営計画「PASSION2035」(FY2027/5〜FY2036/5の10カ年)を公表した。
最終年度(2036年5月期)の目標は売上高2,000億円・営業利益率17.5%・ROE10%以上、中間年度(2031年5月期)は売上高1,400億円・営業利益率13.9%・ROE8%以上としており、2031年5月期までに総額約500億円の成長投資を計画する(出典: サカタのタネ IRニュース)。
従来は天候変動・育種の長期性を理由に中長期の数値目標を非公表としてきた同社が、市場の資本効率可視化要請に応じて開示方針を転換した点が定性的に重要である。
同時に、株主資本配当率(DOE)2.5%以上、配当性向35%目安、今後5年間の総還元性向60%目安という株主還元の数値目標も示された。
これに先立ち2025年10月には自己株式に対する公開買付け(TOB)を実施しており(出典: kabukiso.com)、2026年7月13日にも新たな自己株式取得(上限100万株・上限50億円・取得期間2026年8月3日〜2027年5月28日)を決議した。
連続した自己株式取得と長期計画の同時公表は、資本効率改善を求める市場との対話を強化する意図の表れと読める。
2025年7月にはブラジルのタマネギ種子会社Agritu Sementes Ltda.を100%取得しており(のれん721百万円・10年償却)、南米事業の種目ポートフォリオ拡充(トマトに次ぐタマネギ市場でのシェア拡大)という個別の成長投資も進行している。
2. 財務の実力
PL — 5期+予想
| 項目 | FY2022/5 | FY2023/5 | FY2024/5 | FY2025/5 | 直近実績 FY2026/5 | 来期予想 FY2027/5 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高(百万円) | 73,049 | 77,263 | 88,677 | 92,920 | 104,280 | 110,000 |
| 営業利益(百万円) | 11,181 | 10,918 | 10,495 | 12,257 | 13,122 | 13,500 |
| 経常利益(百万円) | 12,114 | 12,304 | 11,124 | 12,311 | 14,278 | 13,500 |
| 当期純利益(百万円) | 12,256 | 9,489 | 16,162 | 9,711 | 12,163 | 10,000 |
| EPS(円) | 276.02 | 213.98 | 365.22 | 222.58 | 284.46 | 236.63 |
| 営業利益率 | 15.31% | 14.13% | 11.84% | 13.19% | 12.58% | 12.27% |
| 前年比(売上) | +5.5% | +5.8% | +14.8% | +4.8% | +12.2% | +5.5% |
| 前年比(営利) | +15.0% | -2.4% | -3.9% | +16.8% | +7.1% | +2.9% |
注: FY2026/5純利益は前年比+25.2%。
FY2027/5予想純利益は前年比-17.8%(前期FY2026/5計上の特別利益〔投資有価証券売却益16.90億円・受取和解金5.50億円〕剥落による減益、会社発表による)。
BS — 5期
| 項目 | FY2022/5 | FY2023/5 | FY2024/5 | FY2025/5 | 直近期 FY2026/5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 総資産(百万円) | 147,423 | 160,715 | 192,717 | 190,986 | 216,778 |
| 流動資産(百万円) | 89,229 | 96,137 | 116,846 | 113,848 | 129,228 |
| 固定資産(百万円) | 58,193 | 64,577 | 75,870 | 77,137 | 87,550 |
| 負債合計(百万円) | 21,957 | 22,635 | 32,184 | 29,218 | 37,795 |
| 純資産(百万円) | 125,466 | 138,080 | 160,533 | 161,768 | 178,983 |
| 自己資本比率 | 84.9% | 85.7% | 83.1% | 84.5% | 82.3% |
| BPS(円) | 2,821.58 | 3,104.40 | 3,650.73 | 3,729.66 | 4,223.03 |
BS 詳細主要科目(百万円) — 5期
| 項目 | FY2022/5 | FY2023/5 | FY2024/5 | FY2025/5 | 直近期 FY2026/5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 投資有価証券 | 14,077 | 16,261 | 19,720 | 18,464 | 20,326 |
| 現預金 | 21,747 | 20,334 | 20,264 | 22,445 | 22,518 |
| 短期有価証券 | — | — | — | 99 | 49 |
| 有利子負債 | 1,490 | 1,465 | 3,636 | 2,868 | 5,582 |
| 売上債権 | 18,181 | 18,352 | 21,779 | 22,144 | 25,734(+電子債権1,430) |
| 棚卸資産 | 37,616 | 41,926 | 50,355 | 53,102 | 63,756 |
| 仕入債務 | 5,208 | 5,336 | 5,666 | 6,930 | 7,927 |
CF — 5期
| 項目 | FY2022/5 | FY2023/5 | FY2024/5 | FY2025/5 | 直近期 FY2026/5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業 CF(百万円) | 10,039 | 8,351 | 6,966 | 5,100 | 9,174 |
| 投資 CF(百万円) | 468 | -8,107 | -4,248 | 4,066 | -5,495 |
| 財務 CF(百万円) | -4,581 | -2,828 | -4,218 | -6,669 | -5,183 |
| FCF(百万円)(営業CF−設備投資) | 4,702 | 2,126 | -1,044 | -3,396 | 2,346 |
減価償却費明細(百万円) — 5期
| FY2022/5 | FY2023/5 | FY2024/5 | FY2025/5 | 直近期 FY2026/5 |
|---|---|---|---|---|
| 3,467 | 3,810 | 4,468 | 4,610 | 5,479 |
受注高・受注残高
該当なし(非受注産業。種苗の生産・卸売事業のため受注管理指標は開示されていない)
運転資本分析(CCC)
⚠️ 分母統一(厳密法): 売上債権回転日数=売上債権÷売上高×365、棚卸資産・仕入債務回転日数=棚卸資産・仕入債務÷売上原価×365。
| 項目 | FY2025/5 | FY2026/5 |
|---|---|---|
| 売上債権回転日数 | 87.0日 | 95.1日 |
| 棚卸資産回転日数 | 562.9日 | 613.1日 |
| 仕入債務回転日数 | 73.4日 | 76.2日 |
| CCC | 576.5日 | 632.0日 |
注: 種子の安全在庫確保(事業等のリスク記載の生産分散策)を要因に棚卸資産回転日数が500日超と極端に長く、CCCを押し上げている。カネコ種苗(後掲・CCC約44日)との対比が業態差を端的に示す。
配当推移 — 5期+予想
| 項目 | FY2022/5 | FY2023/5 | FY2024/5 | FY2025/5 | 直近実績 FY2026/5 | 来期予想 FY2027/5 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1株配当(円) | 45.0 | 55.0 | 65.0 | 75.0 | 85.0 | 90.0 |
| 配当利回り(現在株価4,455円基準) | — | — | — | — | 1.91% | 2.02% |
| 配当性向 | 16.3% | 25.7% | 17.8% | 33.7% | 29.9% | 38.0%(概算) |
注: 過去期の配当利回りは当時の株価データが未取得のため算出不可(—)。予想配当性向は1株配当90円×発行済株式数42,259,696株÷予想純利益10,000百万円で概算。6期連続増配。
経営者予想精度(直近2期分・データ提供分のみ)
| 期 | 予想売上 | 実績売上 | 乖離率 | 予想営利 | 実績営利 | 乖離率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| FY2025/5(2025-01公表予想対比) | 95,500 | 92,920 | -2.7% | 11,000 | 12,257 | +11.4% |
| FY2026/5(2026-01公表予想対比) | 101,000 | 104,280 | +3.2% | 12,500 | 13,122 | +5.0% |
注: FY2024/5以前の期初予想データは本タスクの提供データに含まれないため「データなし」。直近2期は売上・営業利益とも上振れ傾向。
健全性チェック(事業会社基準)
| # | 項目 | 判定基準 | FY2026/5実績 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 自己資本比率 | >40% | 82.3% | ✅ |
| 2 | 有利子負債<現預金 | 有利子負債<現預金 | 5,582 < 22,518 | ✅ |
| 3 | 流動比率 | >150% | 流動負債の内訳データ未提供のため算出不可 | — |
| 4 | 利益剰余金 | >0 | 純資産161,768→178,983百万と毎期増加(内訳未提供だが正と推定) | ✅ |
| 5 | 営業CF 3期連続黒字 | 3期連続黒字 | FY2024:6,966 / FY2025:5,100 / FY2026:9,174 | ✅ |
| 6 | 配当3期連続支払い | 3期連続支払い | 6期連続増配中 | ✅ |
| 7 | EPS前年比プラス | 前年比プラス | FY2026 284.46円(FY2025比+27.8%) | ✅ |
| 8 | ROE | >8% | 約7.1%(純利益12,163÷期中平均純資産170,376) | ❌ |
| 9 | 営業利益率>業界平均 | 業界平均超 | 12.6%(真の同業カネコ種苗2.6%を大幅に上回る。業態非類似の水産大手ピア平均との比較は参考値) | ✅ |
3. 市場評価を読む — バリュエーション
時価総額・株価の基準
バリュエーション指標は全て現値マーケットデータ(株価取得日 2026-08-19、株価4,455円、現値時価総額188,267百万円、発行済株式数42,259,696株)を分母・基準に使用する。
EDINET marketCap(FY2025期末固定値156,869百万円)は使わない。
内部整合性チェック:
- 株価4,455円 × 発行済株式数42,259,696株 = 188,267百万円 ≒ 現値時価総額(整合)
- PBR(4,455÷4,223.03=1.055倍)× BPS(FY2026・4,223.03円)= 4,455円 ≒ 現在株価(整合)
- 予想PER(18.8倍)× 予想EPS(236.63円)= 4,449円 ≒ 現在株価4,455円(誤差0.1%、整合)
標準 NC(Net Cash)計算 — 5期推移
標準NC = 現預金 + 短期有価証券 − 有利子負債(有利子負債=短期借入金+長期借入金、社債なし)。標準NC比率は各年の標準NC ÷ 現値時価総額(188,267百万円、固定分母)で算出。
| 項目(百万円) | FY2022/5 | FY2023/5 | FY2024/5 | FY2025/5 | FY2026/5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 現預金 | 21,747 | 20,334 | 20,264 | 22,445 | 22,518 |
| 短期有価証券 | — | — | — | 99 | 49 |
| 有利子負債 | 1,490 | 1,465 | 3,636 | 2,868 | 5,582 |
| 標準 NC | 20,257 | 18,869 | 16,628 | 19,676 | 16,985 |
| 標準 NC比率(÷現値時価総額) | 10.76% | 10.02% | 8.83% | 10.45% | 9.02% |
広義 NCAV 計算 — 5期推移
広義NCAV = 流動資産 + 投資有価証券×0.7 − 負債合計。比率は各年の広義NCAV ÷ 現値時価総額(188,267百万円、固定分母)。
| 項目(百万円) | FY2022/5 | FY2023/5 | FY2024/5 | FY2025/5 | FY2026/5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 流動資産 | 89,229 | 96,137 | 116,846 | 113,848 | 129,228 |
| 投資有価証券×0.7 | 9,854 | 11,383 | 13,804 | 12,925 | 14,228 |
| 負債合計 | 21,957 | 22,635 | 32,184 | 29,218 | 37,795 |
| 広義 NCAV | 77,126 | 84,885 | 98,466 | 97,555 | 105,661 |
| 広義 NCAV比率(÷現値時価総額) | 40.97% | 45.08% | 52.30% | 51.82% | 56.13% |
CN-PER(キャッシュニュートラル PER)
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 予想 PER(現値時価総額÷FY2027予想純利益) | 18.8 倍 |
| 標準 NC 比率(FY2026・標準NC÷現値時価総額) | 9.0% |
| **CN-PER(標準 NC ベース)**=(188,267−16,985)÷10,000 | 17.1 倍 |
| 参考: CN-PER(広義 NCAV ベース)=(188,267−105,661)÷10,000 | 8.3 倍 |
EV/EBITDA 分析
EV = 現値時価総額 − 標準NC(FY2026基準)。
EBITDA = 営業利益 + 減価償却費(FY2026実績)。
カネコ種苗は唯一の上場種苗同業(業態は資材卸中心で非類似だが対比軸として参考)。
| 指標 | サカタのタネ | カネコ種苗(参考) |
|---|---|---|
| 時価総額(億円) | 1,882.67 | 178.97 |
| 標準 NC(億円) | 169.85 | 16.08(有利子負債少額のため現預金基準・概算) |
| EV(億円) | 1,712.82 | 162.89 |
| EBITDA(億円)(FY2026・営業利益+減価償却費) | 186.01 | 22.98(営業利益17.49億+減価償却費5.49億、D&AはFY2025値を代用) |
| EV/EBITDA | 9.2 倍 | 約7.1 倍 |
EV/EBITDA 感度テーブル(NC 定義別)
| NC 定義 | NC(億円) | EV(億円) | EV/EBITDA |
|---|---|---|---|
| 標準 NC(現預金+短期有価証券−有利子負債) | 169.85 | 1,712.82 | 9.2 倍 |
| 広義 NCAV(流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計) | 1,056.61 | 826.06 | 4.4 倍 |
倍率ベース感応度(適用 PER レンジ・円換算なし)
| 適用 PER 水準 | 倍率 | 位置づけ |
|---|---|---|
| レンジ下限(保守的) | 12.9倍 | カネコ種苗(唯一の上場同業、実績PER概算値)。業態非類似(資材卸中心・低マージン)である点に留意 |
| 中央(現状据え置き) | 15.7倍 | 自社実績PER(現在株価4,455円÷FY2026 EPS284.46) |
| レンジ上限(楽観的) | 18.8倍 | 自社予想PER(現在株価÷FY2027予想EPS236.63、来期減益予想を織り込んだ水準) |
| 参考: 業界平均 PER | 15.5倍 | 分析情報取得業界ベンチマーク値(水産・農林業カテゴリ、EDINET期末marketCap基準の参考値。業態非類似の水産大手中心のため目安に留まる) |
| 参考: 自社 5 期 PER レンジ | データなし | 過去年次の株価データが未取得のため算出不可 |
⚠️ 本表はPER倍率水準の比較に留め、金額換算後の株価水準との比較は記載しない。
バリュエーション乖離コメント
- NC考慮EV/EBITDA法(9.2倍、標準NCベース)は業界平均PER15.5倍と近い水準で、大きな割安・割高シグナルは出ていない。
- CN-PER法(標準NCベース17.1倍)は予想PER18.8倍からやや低下する程度で、標準NC比率9.0%自体は同業比較でカネコ種苗(約9.0%、概算)とほぼ同水準。一方、広義NCAVベースでは56.1%と資産の厚みが大きく、CN-PER(広義ベース)は8.3倍まで低下する。
- 倍率ベース感応度では、唯一の上場同業カネコ種苗(実績PER約12.9倍、業態非類似)が自社実績PER15.7倍を下回る位置にあり、業態差(サカタ=海外卸売型・高マージン、カネコ=国内資材卸型・低マージン高回転)を踏まえた解釈が必要である。
- NC考慮EV/EBITDAとCN-PERの両手法とも、広義NCAV(流動資産+投資有価証券×0.7)を分母に含めるかどうかで評価レンジが大きく変わる点が事実として並置される。
4. 同業比較 — 差分の論点
競合選定基準
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | EDINET業種分類は「水産・農林業」(種苗・園芸資材の生産・卸売) |
| 時価総額レンジ | サカタ1,882.67億円の0.3-5倍(565.8億〜9,413.4億円)にはカネコ種苗(178.97億円)は本来レンジ外だが、上場する唯一の種苗同業のため参考採用 |
| 選定理由 | カネコ種苗(1376)は種苗+農薬・農業資材卸中心の国内資材卸型・低マージン・高回転ビジネスで、サカタ(種苗開発・高マージン海外卸売型)との対比軸として妥当。EDINET業種ピア(ニッスイ・極洋等の水産大手)は業態非類似のため除外 |
最新期比較テーブル
| 指標 | サカタのタネ | カネコ種苗(参考) |
|---|---|---|
| 時価総額(億円) | 1,882.67 | 178.97 |
| 売上高(億円・FY2026) | 1,042.80 | 677.33 |
| 営業利益率(FY2026) | 12.6% | 2.6% |
| 自己資本比率(FY2026) | 82.3% | 50.7%(FY2025値、FY2026詳細BS未開示) |
| PER | 実績15.7倍/予想18.8倍 | 約12.9倍(実績ベース概算) |
| PBR | 1.055倍 | 約0.62倍(概算) |
| ROE | 約7.1%(FY2026概算) | 4.9%(FY2025 official、FY2026未算出) |
| 配当利回り | 2.02%(予想) | 約2.7%(概算) |
| EV/EBITDA | 9.2倍 | 約7.1倍 |
| 標準 NC 比率 | 9.0% | 約9.0%(有利子負債少額のため現預金基準概算) |
| 営業 CF(億円) | 91.74(FY2026) | 2.13(FY2025実績、FY2026未開示) |
| FCF(億円) | 23.46(FY2026) | 算出不可(設備投資データ未提供) |
競合 3期推移(売上・営業利益率)
| 企業 | FY2024/5 売上(百万円) | FY2025/5 売上(百万円) | FY2026/5 売上(百万円) | FY2024/5 営利率 | FY2025/5 営利率 | FY2026/5 営利率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| サカタのタネ | 88,677 | 92,920 | 104,280 | 11.84% | 13.19% | 12.58% |
| カネコ種苗 | 61,599 | 64,509 | 67,733 | 2.4% | 2.3% | 2.6% |
運転資本効率(CCC)— 競合比較
⚠️ 分母は本テンプレ標準(売上債権=売上高ベース、棚卸資産・仕入債務=売上原価ベース)。カネコ種苗はFY2026/5詳細BS科目が未提供のためFY2025/5データを使用。
| 指標(日数) | サカタのタネ(FY2026/5) | カネコ種苗(FY2025/5) | 業界中央値 |
|---|---|---|---|
| 売上債権回転日数 | 95.1 | 111.7 | データなし |
| 棚卸資産回転日数 | 613.1 | 71.0 | データなし |
| 仕入債務回転日数 | 76.2 | 139.1 | データなし |
| CCC | 632.0 | 43.6 | データなし |
注: サカタは種子の安全在庫確保により棚卸資産回転日数が突出して長くCCCが632日と資金効率上は重い。
カネコは資材卸中心・仕入債務回転日数139.1日と支払サイトが長く、CCCは44日弱と対照的に短い(在庫回転が速い高回転型ビジネスモデルの差)。
5. リスクと論点
リスクマトリクス
| リスク要因 | 影響度 | 発生可能性 | 具体的影響シナリオ | 対応状況 |
|---|---|---|---|---|
| 天候・自然災害 | 高 | 中 | 主要採種地(北半球・南半球の特定地域)で異常気象が重なると、翌シーズンの供給量・品質が同時に低下し、海外卸売事業の利益率24.7%を支える収量前提が崩れる | 採種地の南北分散で一部緩和も、気候変動で分散効果自体が弱まる可能性 |
| 育種競争・知財侵害 | 高 | 中 | ブリーダー流出や模倣品の流通により、ブロッコリー等の高シェア品目でシェアが侵食される | 品種登録・知財保護の強化、種苗法改正の動向注視 |
| 為替変動 | 中 | 高 | 海外卸売比率79.5%ゆえ、FY2026/5のように円安局面では+69.29億円の増収要因となる一方、円高局面では同規模の減収圧力に転じる | 現地通貨建て取引・為替前提(米ドル155円・ユーロ180円)の開示で市場との期待値調整 |
| 保有資産価値変動 | 中 | 中 | 種子安全在庫(棚卸資産回転日数613日)の陳腐化・評価損、政策保有株式の含み損化 | 広義NCAVの厚みが一定のバッファーになるが、在庫評価は業態固有の見えにくいリスク |
| 小売事業の恒常赤字 | 低 | 高 | 小売事業(構成比3.9%・営業利益率-10.5%)が連結利益率を継続的に押し下げる | 抜本的な構造改革の開示は現時点で確認できず、規模が小さいため連結インパクトは限定的 |
最大リスクとバリュートラップ構造
最大リスク(気候変動×採種地集中): サカタのタネの収益基盤は、特定の採種適地における大規模露地栽培に依存する。
北半球・南半球のリスク分散を実施しているとはいえ、気候変動が両半球で同時多発的に進行すれば、分散そのものの効果が薄れる。
海外卸売事業一本足打法(構成比79.5%)の構造下では、この供給リスクが顕在化した場合の連結インパクトは大きい。
もう一つの候補としては、バイエル・コルテバ・シンジェンタ等のグローバル種子メジャーとの育種競争激化があり、上位4社が種子市場の6割超を握る寡占構造(出典: SBBIT)の中で、サカタのタネはニッチ品目(ブロッコリー・トルコギキョウ等)での高シェア防衛が生命線になる。バリュートラップ論点: 標準NC比率9.0%・広義NCAV比率56.1%という資産の厚みに対し、ROEは約7.1%(東証プライム基準8%未達)、PBRは1.055倍にとどまる。
資産の分厚さが株価評価に十分反映されていない状態が続けば、市場から「資本効率の低い会社」として低位評価が固定化するバリュートラップの様相を呈しうる。
PASSION2035で掲げたROE8%以上(2031年5月期)・10%以上(2036年5月期)の達成過程と、連続する自己株式取得の実効性が、このディスカウントを解消できるかの分水嶺になる。
6. バリュエーション統合と論点整理
(a) 乖離の構造分析
定量分析で確定した通り、予想PER18.8倍・PBR1.055倍・CN-PER(標準NCベース)17.1倍という水準は、広義NCAV比率56.1%という資産の厚み、自己資本比率82.3%という財務健全性の高さに比して、必ずしも高い評価とは言えない。
この構造は複合的な要因で説明できる。
第一に、同社は長年にわたり中長期の数値目標を非公表としてきており、PASSION2035公表(2026年7月13日)以前はアナリストが将来の資本効率改善を織り込みにくい情報環境にあった。
第二に、ROEが東証プライムの資本コスト経営要請ライン(8%)を下回る水準で推移してきたことが、PBR1倍近辺というバリュエーションの重石になっている。
第三に、創業家の資産管理会社であるティーエム興産が14.55%を保有する安定株主構造は、経営の連続性という安心材料である一方、市場からは資本効率改善への外部圧力が働きにくい構造とも解釈されうる。
この乖離が「割安の放置」なのか「バリュートラップ」なのかは、PASSION2035の実行度合いに懸かる構造判断になる。
売上高2,000億円・ROE10%以上という2036年5月期目標が、総額約500億円の成長投資と連動して実現に向かうなら、資産の厚みが収益力に転化する「割安の解消過程」と評価しうる。
逆に目標未達が続けば、広義NCAVは含み資産のまま据え置かれ、低ROE・低PBRの構造が固定化する「バリュートラップ」的な評価にとどまる可能性がある。
いずれにせよ、この判断は初開示の長期計画の進捗検証を要する段階にあり、単年度の決算だけでは判定しきれない。
(b) 条件分岐シナリオ(確率・金額表記なし)
PASSION2035の中間目標(2031年5月期ROE8%以上)に向けた進捗が四半期ごとに確認され、自己株式取得が継続・DOE2.5%以上の還元が実行される場合、ガバナンス・資本効率面のディスカウントが解消に向かい、評価軸はPBR1倍近辺から広義NCAVの厚みや同業種平均に近いPBR・PER水準へ収斂する余地が生まれうる。
FY2027/5会社予想(売上高1,100億円・営業利益135億円・経常利益135億円・純利益100億円)通りに着地し、PASSION2035が計画線に沿って進捗する場合、現行の予想PER18.8倍・EV/EBITDA9.2倍前後の評価レンジがおおむね維持される公算が高い。
純利益の減益は特別利益の剥落という一過性要因が主因であるため、営業利益ベースの増益基調が確認される限り、評価軸の大きな変動要因にはなりにくい。
主要採種地での天候不順、円高への反転、中国等アジア市場のさらなる市況悪化が重なった場合、海外卸売事業(構成比79.5%)の収益性が同時に圧迫され、ROEが8%基準から一段と乖離する展開になりうる。
この場合、資産の厚みが評価に反映されないままPBR1倍を下回るレンジへ評価軸が引き直される可能性があり、バリュートラップ的な低評価が長期化するリスクがある。
(c) 監視ポイント
| 時期 | イベント | 開示で確認すべき点 |
|---|---|---|
| 2026年8月3日〜2027年5月28日 | 自己株式取得の実施期間 | 取得進捗(取得株数・取得額)が上限100万株・50億円に対しどの程度進んでいるか |
| 2026年9月頃(想定) | FY2027/5第1四半期決算 | 海外卸売事業の増収基調・為替前提(米ドル155円・ユーロ180円)との実際の乖離幅 |
| 2026年11月28日頃(想定・配当権利付最終日) | 中間配当の権利確定 | 権利確定日の2営業日前の株価動向・配当実施の確実性 |
| 2026年12月頃(想定) | FY2027/5第2四半期決算 | 通期予想(営業利益135億円)に対する進捗率、PASSION2035中間目標との整合性の初期シグナル |
| 2027年1月頃(想定) | 種苗法・品種登録制度の政策動向 | 自家増殖規制の運用状況が育種投資インセンティブに与える影響 |
| 2027年3月頃(想定) | FY2027/5第3四半期決算 | 通期純利益(会社予想100億円、前期特別利益剥落後)の着地確度 |
| 2027年5月28日 | 自己株式取得期間の満了 | 実際の取得実績と当初計画(上限50億円)との差異、未達の場合の理由開示 |
| 2027年7月頃(想定) | FY2027/5本決算・PASSION2035初年度実績公表 | 初年度実績が中間目標(2031年5月期)への軌道に乗っているか、ROE水準の変化 |
(d) M&A・出資検討の論点整理
買い手目線でサカタのタネのEV許容水準を規定する要因は、第一に広義NCAV1,056.61億円(時価総額比56.1%)という資産の厚みであり、清算価値に近い下限を提供する点である。
第二に、ブロッコリー世界シェア約65%に代表される育種資産・品種ポートフォリオそのものが、模倣困難な無形資産としてのれん評価に反映されうる。
シナジーの論点としては、種子生産のグローバル供給網(19か国生産・170か国以上販売)と、買い手側が持つ流通網・農薬等の周辺事業との組み合わせ余地が挙げられる一方、ディスシナジーとしては創業家14.55%保有という安定株主構造が経営統合の障壁になりうる点、育種研究者(ブリーダー)への依存が高くキーマンリスクが大きい点がある。
デューデリジェンスで確認すべき事項としては、種子安全在庫(棚卸資産613日分)の実質的な評価妥当性、政策保有株式の含み損益、Agritu Sementes買収で計上したのれん721百万円の減損可能性、種苗法・各国知財法制下でのブリーダー権の帰属関係が挙げられる。
7. 学びのポイント
📚 着眼点1: 「育種10年+安全在庫」がCCC632日という異常値を生む構造
サカタのタネのCCCは632日(FY2026/5)で、うち棚卸資産回転日数が613日を占める。
同業のカネコ種苗(資材卸中心・CCC約44日)と比較すると15倍近い差があり、一般的な製造業の常識では「在庫過多・非効率」と誤読されかねない水準である。
しかし種子は生きた商品であり、発芽率・純度を保証した状態で複数年分をストックする「安全在庫」が業態上不可欠である。
これはワイナリーがヴィンテージ違いのワインをセラーで数年寝かせるのに似ており、「時間をかけて品質を保証する」こと自体が商品価値の一部になっている。
分析上の含意としては、CCCの長さを単純な非効率指標として扱わず、業態特性(生物資産・育種10年という開発サイクル)とセットで評価する必要がある、という点である。
📚 着眼点2: 広義NCAV比率56%・低ROEの資本効率ジレンマ
広義NCAV比率56.1%(1,056.61億円/時価総額比)という数字は、時価総額の半分以上が実質的な清算価値クッションで裏付けられていることを意味する。
一方でROEは約7.1%にとどまり、東証プライムの資本コスト経営要請ライン(8%)を下回る。
これは「金庫に現金や換金性資産を厚く積んでいるのに、その資産を十分に稼ぐ力に転化できていない」状態であり、資産の分厚さと収益効率が両立しないジレンマである。
PASSION2035が掲げるROE8%以上(2031年5月期)・10%以上(2036年5月期)、DOE2.5%以上、自己株式取得の継続は、このジレンマを解消しようとする資本政策上の意思表示と読める。
分析上の含意は、単年度のROE水準だけでなく、資産の厚み(広義NCAV)と資本政策(自己株取得・DOE)の組み合わせで、資本効率改善の実現可能性を評価する視点が必要という点である。
📚 着眼点3: サカタのタネの指標ポジショニング(相場観テーブル)
| 指標 | サカタのタネ | カネコ種苗(同業) | 全上場企業の目安 | 評価コメント |
|---|---|---|---|---|
| 予想PER | 18.8倍 | 約12.9倍 | 14〜15倍程度 | 同業カネコより高PERだが、海外卸売比率79.5%・高マージン(24.7%)構造を織り込んだ水準 |
| 実績PER | 15.7倍 | ー | ー | 予想PERとの差はFY2027予想純利益の一過性減益(特別利益剥落)を反映 |
| PBR | 1.055倍 | 約0.62倍 | 1.1〜1.3倍程度 | 広義NCAV比率56.1%の資産厚みに対しては相対的に低位、ROE7.1%が重石 |
| ROE | 約7.1% | 約4.9% | 8〜9%程度 | 同業比では優位だが東証プライム基準8%は未達、PASSION2035の中間目標がこの水準 |
| ROIC | 8.62%(FY2025) | ー | ー | ROEを上回る水準で、資本構成(自己資本比率82.3%)の保守性が背景にある |
| EV/EBITDA | 9.2倍(標準NCベース) | ー | ー | ネットキャッシュの厚みを勘案した実質倍率、名目PERより低く出やすい構造 |
| 配当利回り | 2.02%(予想90円) | 約2.7% | 2.2〜2.4%程度 | 同業・市場平均をやや下回るが、DOE2.5%目標や自己株取得を含めた総還元性向で評価すべき |
| 自己資本比率 | 82.3% | ー | 40〜50%程度 | 業種平均を大きく上回る保守的な財務体質、PASSION2035では60%台への引き下げ方針 |
| 標準NC比率 | 9.0% | ー | ー | NC単体では厚みは中位、広義NCAVで見ると評価が一変する典型例 |
| 広義NCAV比率 | 56.1% | ー | ー | 時価総額の過半が清算価値クッションで裏付けられる水準、資本効率改善余地の源泉 |
参考情報
ガバナンス要点
サカタのタネは神奈川県横浜市に本社を置き、決算期は5月期、連結従業員数3,040名(FY2025連結)で、生産拠点19か国・販売網170か国以上・拠点23か国というグローバル体制を持つ。
代表取締役社長は坂田宏氏で、同氏は大株主であるティーエム興産の代表取締役も兼ねており、創業家(坂田家)による経営承継が続いている。
2026年7月には創業以来初の長期経営計画PASSION2035を公表し、経営の透明性向上とステークホルダー対話の強化を打ち出した。
大株主構成(大量保有報告書ベース、5%以上)
| 順位 | 株主名 | 保有比率 | 区分 |
|---|---|---|---|
| 1 | 有限会社ティーエム興産 | 14.55% | 創業家(坂田家)の資産管理会社、純投資目的 |
| 2 | みずほ銀行グループ | 6.11% | 金融機関グループ |
| 3 | SMBC日興証券グループ | 3.57%(5%未満のため参考) | 金融機関グループ |
注: 大量保有報告書は保有比率5%以上のみ提出義務があるため、上位5〜10位までの網羅的な株主構成は本レポートの参照データからは判明していない。SMBC日興証券グループは参考情報として付記した。
データ基準日の違い
| データ種別 | 基準日 | ソース |
|---|---|---|
| 事業等のリスク(7項目) | FY2025/5期分 | 有価証券報告書(EDINET DB) |
| セグメント・地域・製品別売上 | FY2026/5期(通期実績) | 決算短信(2026年7月13日開示) |
| 長期経営計画PASSION2035 | 2026年7月13日公表 | 適時開示・IR資料 |
| 市場データ(現在株価・時価総額・バリュエーション倍率) | 2026年8月19日 | 市場データ |
出典一覧
- EDINET DB — 企業基本情報・健全性スコア・最新決算(EDINET有価証券報告書ベース)
- EDINET DB — 5期財務時系列
- EDINET DB — セグメント別売上
- EDINET DB — 業界ベンチマーク
- EDINET DB — 大株主構成
- EDINET DB — カネコ種苗(1376)財務データ(競合比較)
- TDNet 決算短信 — 速報値・会社予想
- サカタのタネ IRニュース — PASSION2035公表資料
- kabukiso.com — 自己株式TOB関連情報
- Strainer — ブロッコリー種子世界シェアに関する記事
- SBBIT — 種子メジャー寡占構造に関する記事