📚 業界ノート

今日の学習テーマ「年度予算と最新見通しは、いつ別の数字にするか?」

実務家の視点 · · 執筆: KID

このコーナーについて

CFO・経営企画デイリーの『実務家の視点』と『IPO実務』は、ニュースではありません。経営・CFO・経営企画・ファイナンス・M&A・IPO など、企業を動かす仕事をしている人のための学習コンテンツです。毎回ひとつの学習テーマを決め、実務家が公開している記事や公的な資料を読み比べて、ルールの上でどう考え、どう工夫しているかを整理します。最後に、明日から自社で確かめることをまとめます(実務家の視点では、編集部が創作した架空のケースで知恵の使い方も練習します)。

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概要

定例確認と変更時更新の事例から、編集部は目標を残して変わった前提を見通しに反映する進め方を提案します。明日は差異の理由を現場と確かめます。

このテーマを選んだ理由: 予算を守ることと、今の着地を正直に示すことがぶつかる場面、ありますよね。会議で使う数字を、いつ、どんな根拠で直すかを考えます。

この記事で学べること:

  • 読み終えると、年度予算と最新見通しを並べて使う意味が分かる。
  • 読み終えると、定例の確認と変更時の更新をどう組み合わせるか判断できる。

前提: KPMGは、過去の予実差異を分析する管理から、着地見込みと次の行動を考える管理への転換を説明しています。着地見込みは、期末の予測です。ここでは法的な義務ではなく、社内管理の進め方を扱います。

ひとことで言うと: 目標を残し、前提が変わったところから見通しを直す。その変更理由を現場と確かめることが大切です。

詳細

たとえば、予算より支出が少ないのに、担当部署からは「いずれ使います」とだけ返ってくるとしましょう。残りの予算をそのまま足してよいのか、会議で説明に迷いませんか。

ルールの上では

入口になるのが、KPMGの『業績予測・着地見込を活用した業績管理高度化』です。公開本文では、月次で着地見込みを更新し、将来の行動へつなげる考え方を紹介しています。

予実差異は計画からのずれ、着地見込みはこの先の予測です。では、担当者は残った計画をどう確かめているのでしょうか。

現場ではこうしている

まず、支出の時期を確かめる例です。パーソルキャリア株式会社(以下、パーソルキャリア)の高木史氏は、techtektの記事『IT予算管理のプロに聞く柔軟な運用術』で、IT費用の最新予測を月初に経営企画へ提出しています。当月から期末までを確認し、案件の確定や未確定に応じて配分・時期を調整しています。

でも、定例で数字を集めるだけでは足りません。株式会社メディアジーン(以下、メディアジーン)の寺尾 洋之氏は、Diggleの『魂のこもった予算運用を事業部が実施するように』で、現場から差異理由が返らず、実績に残りの計画を足すだけだった状況を説明しています。その後は事業部に運用責任を伝え、計画変更時に直接入力する運用へ変えました。

次は、差異から根拠を探す例です。株式会社フレクト(以下、フレクト)の河田 紘史氏と髙橋 和博氏は、Diggleの『投資家との想定問答作成にも「Diggle」を活用。精緻な予実・見込管理がIR活動にも貢献。』で、大きな差異や普段は出ない差異を明細まで調べ、必要に応じて事業部に理由や誤りを確認すると説明しています。当初計画との比較に加え、前週からの見込変化も報告に使っています。

集計日を待たずに直す例もあります。株式会社アイシン・デジタルエンジニアリング(以下、アイシン・デジタルエンジニアリング)の今井 康一氏と磯貝 悠氏を取材したDiggleの『エクセルの多重管理から脱却し、データ管理や予実業務が迅速に。さらに蓄積された経営データの活用も実現。』では、各部が変更の都度、見込を直しています。以前は月次集計時にしか出せなかった通期見通しを、最新の状態で見られるようになったと説明しています。

更新の契機と変化を並べます。

誰が 条件・困りごと 何をしたか 結果・使い道
パーソルキャリア IT案件の確定時期が変わる 月初に期末までを再確認 枠内で配分・時期を調整
メディアジーン 現場から差異理由が返らない 事業部が変更時に直接入力 現場への運用の浸透を実感
フレクト 差異の理由と先行きの説明 明細・現場を確認し週次報告 当初計画・前週と比較
アイシン・デジタルエンジニアリング 月次集計まで通期見通しが出ない 各部が変更の都度更新 最新見込で会話できるように

共通点と違いを見ます。

比べて見えたこと

  • 定例で確かめる運用と、変更時に入力する運用があります。更新の契機と報告周期は分けて考えられそうです。
  • メディアジーンの経験では、毎月更新する要求があっても、現場の情報が戻らなければ見通しは形だけになっていました。
  • フレクトは当初計画と前週見込の両方を比較しています。目標との差と、直近で何が変わったかを別々に説明できます。

記事の本質はここ

上手いやり方・解釈のコツ

比べてみると、更新の頻度より、直す理由をつかむ仕組みが大切そうです。編集部は、この進め方を「前提差分の更新」と呼びます。年度予算を比較の基準として残し、案件や時期の前提が変わった部分を、最新見通しに反映する提案です。

案件確認、現場への責任づけ、差異調査を、こうつないでみます。

  • いつ:定例の確認を設けたうえで、担当部署が変更をつかんだら、その箇所を更新する。
  • 何を見る:計画どおり使う根拠、時期の確定状況、前回からの変更理由を現場に聞く。
  • どう判断する:最新の予測を直す話と、使える予算枠を変える話を会議で分ける。枠の変更が必要なら、自社の承認者へ議題を渡す。

鵜呑みにしない点

ただ、全社へ広げる前に、限界も押さえましょう。

  • IT支出の時期調整を、売上未達の判断へそのまま当てはめることはできません。受注や季節性と判断変更を結びつける経験は、今回の資料では分かりませんでした。
  • Diggleの掲載記事は製品提供側の導入事例です。アイシン・デジタルエンジニアリングは運用開始直後で、長期の予測誤差や更新負荷の改善を比べた資料ではありません。
  • 年度予算の正式変更を誰が承認するか、対外予想をいつ修正するかの基準は確認できません。IPO準備中と上場後の運用差も、ここからは結論を出せません。

自社に置き換えると

では、明日は「この見込は、残った予算を足しただけになっていないか」を聞いてみましょう。迷う案件から試しましょう。

  • 明日からの一歩:気になる差異を選び、担当部署と残りの計画の前提を確かめる。
  • 変更理由、確認した人、次に確かめる時点を、最新見通しと一緒に残す。
  • 会議では当初予算との差と前回見込との差を並べ、予算枠の変更判断が必要かを議題にする。

ケースで考える(編集部の創作)

この節は、上の事例の知恵を使うと仮にどうなるかを示すため、編集部が創作した架空のケースです。実在の会社・人物とは関係ありません。

A社の開発投資で試してみましょう。支出は予算を下回っていますが、経営企画は未消化分を後ろの月に置いています。案件担当に聞くと、着手条件がまだ決まっていませんでした。

そこで「前提差分の更新」を使い、当初予算を残したまま、最新見通しには着手条件と支出時期の仮定を添えます。枠を他へ回すかは、別途承認者に相談します。

仮に期内着手の裏づけが出れば、支出時期を見直します。条件が整わないなら、期内に使う仮定を再検討します。未消化を余裕と見誤らず、次の確認を話しやすくなると見込みます。

目標は残し、予測は前提に合わせて動かす。間をつなぐのは、現場の変更理由です。

まとめ

  • 年度予算と最新見通しは、役割を分けて並べる。
  • 更新頻度だけでなく、現場が前提を確かめて直す流れを決める。
  • 当初計画との差と前回見込からの変化を分けて見る。
  • 見通しの更新と予算枠の変更は、それぞれ判断する。

出典

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